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特許7498427洗浄剤組成物及び加工された半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物及び加工された半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/34 20060101AFI20240605BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20240605BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20240605BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C11D7/34
C11D7/32
C11D7/50
H01L21/304 622J
H01L21/304 622Q
H01L21/304 647A
H01L21/304 647Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020062933
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161196
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】荻野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】奥野 貴久
(72)【発明者】
【氏名】柳井 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】森谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】緒方 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】新城 徹也
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208767(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/092022(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190438(WO,A1)
【文献】特開2009-055020(JP,A)
【文献】特開2009-224793(JP,A)
【文献】特開2001-319913(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D1/00 -19/00
H1L21/304
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤残留物を除去するために用いられる洗浄剤組成物であって、第四級アンモニウム塩と、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物からなる金属腐食抑制剤と、有機溶媒とを含むことを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール誘導体、カルボキシ炭化水素基を含むイソチアゾール誘導体及びカルボキシ炭化水素基を含むチアジアゾール誘導体から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記カルボキシ炭化水素基が、カルボキシアルキル基又はカルボキシアルケニル基である請求項1又は2記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
上記カルボキシ炭化水素基が、カルボキシアルキル基である請求項3記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、直接又はエーテル基若しくはチオエーテル基を介して、チアゾール環、イソチアゾール環又はチアジアゾール環とカルボキシ炭化水素基とが結合した構造を含む請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、直接又はエーテル基若しくはチオエーテル基を介して、チアゾール環とカルボキシ炭化水素基とが結合した構造を含む請求項5記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、式(T1)で表される化合物である請求項5記載の洗浄剤組成物。
【化1】
(式中、Dは、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表し、Dは、カルボキシアルキル基又はカルボキシアルケニル基を表し、Dは、ベンゼン環に置換する置換基を表し、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシを表し、dは、置換基の数を表し、0~4の整数である。)
【請求項8】
上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸を含む請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項9】
上記第四級アンモニウム塩が、含ハロゲン第四級アンモニウム塩である請求項1~8のいずれか1項記載の洗浄剤組成物。
【請求項10】
上記含ハロゲン第四級アンモニウム塩が、含フッ素第四級アンモニウム塩である請求項9記載の洗浄剤組成物。
【請求項11】
上記含フッ素第四級アンモニウム塩が、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムである請求項10記載の洗浄剤組成物。
【請求項12】
上記フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムが、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム及びフッ化テトラブチルアンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項11記載の洗浄剤組成物。
【請求項13】
上記接着剤残留物が、基体上に残留するポリシロキサン系接着剤からなり、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)を含む接着剤組成物から得られた接着層の接着剤残留物である1~12のいずれか1項記載の洗浄剤組成物。
【請求項14】
バンプボールを有する半導体基板と、支持基板と、接着剤組成物から得られる接着層とを備える積層体を製造する第1工程、得られた積層体の半導体基板を加工する第2工程、加工後に半導体基板を剥離する第3工程、及び剥離した半導体基板上に残存する上記接着剤残留物を洗浄剤組成物により除去する第4工程を含む、加工された半導体基板の製造方法において、上記洗浄剤組成物として請求項1~13のいずれか1項記載の洗浄剤組成物を用いることを特徴とする、加工された半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体基板上に形成されたポリシロキサン系接着剤を用いて得られる接着層による仮接着を剥離した後の接着剤残留物を除去するために用いる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来2次元的な平面方向に集積してきた半導体ウエハーは、より一層の集積化を目的に平面を更に3次元方向にも集積(積層)する半導体集積技術が求められている。この3次元積層はシリコン貫通電極(TSV:through silicon via)によって結線しながら多層に集積していく技術である。多層に集積する際に、集積されるそれぞれのウエハーは形成された回路面とは反対側(即ち、裏面)を研磨によって薄化し、薄化された半導体ウエハーを積層する。
【0003】
薄化前の半導体ウエハー(ここでは単にウエハーとも呼ぶ)が、研磨装置で研磨するために支持体に接着される。その際の接着は研磨後に容易に剥離されなければならないため、仮接着と呼ばれる。この仮接着は支持体から容易に取り外されなければならず、取り外しに大きな力を加えると薄化された半導体ウエハーは、切断されたり変形したりすることがあり、その様なことが生じない様に、容易に取り外される。しかし、半導体ウエハーの裏面研磨時に研磨応力によって外れたりずれたりすることは好ましくない。従って、仮接着に求められる性能は研磨時の応力に耐え、研磨後に容易に取り外されることである。例えば研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)を持ち、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)を有する性能が求められる。また、加工工程で150℃以上の高温になることがあり、更に、耐熱性も求められる。
【0004】
このような事情の下、半導体分野においては、仮接着剤として、これらの性能を備え得るポリシロキサン系接着剤が主に用いられる。そして、ポリシロキサン系接着剤を用いたポリシロキサン系接着では、薄化した基板を剥離した後に基板表面に接着剤残留物が残存することがよくあるが、その後の工程での不具合を回避するために、この残留物を除去し、半導体基板表面の洗浄を行うための洗浄剤組成物に開発がなされてきており(例えば特許文献1、2)、昨今の半導体分野では、新たな洗浄剤組成物への要望が常に存在する。特許文献1には、極性非プロトン性溶剤と第四級アンモニウム水酸化物とを含むシロキサン樹脂の除去剤が開示され、特許文献2には、フッ化アルキル・アンモニウムを含む硬化樹脂除去剤が開示されているが、さらに効果的な洗浄剤組成物の出現が望まれている。
ところで、半導体ウエハーは、例えば金属の導電性材料からなるバンプボールを介して半導体チップと電気的に接続しており、このようなバンプボールを備えるチップを用いることで、半導体パッケージングの小型化が図られている。
この点、銅やスズといった金属からバンプボールは、耐腐食性に乏しいことから、支持体やウエハーの接着剤残留物を除去するための洗浄剤組成物で損傷を受けるという課題があり(特許文献3)、バンプボールを腐食しないことも、洗浄剤組成物についての要求特性の一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/092022号
【文献】米国特許第6818608号
【文献】韓国特許公開2018-0066550号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、例えば半導体基板等の基板の洗浄を行う際、ポリシロキサン系接着剤を用いて得られる接着層による仮接着を剥離した後の接着剤残留物に対して良好な洗浄性を示すとともに、バンプボール等の金属に対する腐食性が抑制された洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、例えばポリシロキサン系接着剤を用いて得られる接着層、特にヒドロシリル化反応により硬化するポリシロキサン成分を含むシロキサン系接着剤から得られる硬化膜である接着層による仮接着を剥離した後の接着剤残留物が付着した半導体基板等の基板を洗浄するに際し、第四級アンモニウム塩と、金属腐食抑制剤と、有機溶媒と含む洗浄剤組成物を用いる場合において、金属腐食抑制剤として、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物を用いることで、金属腐食抑制剤を添加したことによる洗浄速度の低下を抑制でき、その結果、優れた洗浄能が実現可能であるとともに、バンプボール等の金属の腐食を抑止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.接着剤残留物を除去するために用いられる洗浄剤組成物であって、第四級アンモニウム塩と、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物からなる金属腐食抑制剤と、有機溶媒とを含むことを特徴とする洗浄剤組成物、
2.上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール誘導体、カルボキシ炭化水素基を含むイソチアゾール誘導体及びカルボキシ炭化水素基を含むチアジアゾール誘導体から選ばれる少なくとも1種を含む1の洗浄剤組成物、
3.上記カルボキシ炭化水素基が、カルボキシアルキル基又はカルボキシアルケニル基である1又は2の洗浄剤組成物、
4.上記カルボキシ炭化水素基が、カルボキシアルキル基である3の洗浄剤組成物、
5.上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、直接又はエーテル基しくはチオエーテル基を介して、チアゾール環、イソチアゾール環又はチアジアゾール環とカルボキシ炭化水素基とが結合した構造を含む1の洗浄剤組成物、
6.上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、直接又はエーテル基若しくはチオエーテル基を介して、チアゾール環とカルボキシ炭化水素基とが結合した構造を含む5の洗浄剤組成物、
7.上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、式(T1)で表される化合物である5の洗浄剤組成物、
【化1】
(式中、Dは、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表し、Dは、カルボキシアルキル基又はカルボキシアルケニル基を表し、Dは、ベンゼン環に置換する置換基を表し、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシを表し、dは、置換基の数を表し、0~4の整数である。)
8.上記カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物が、3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸を含む1の洗浄剤組成物、
9.上記第四級アンモニウム塩が、含ハロゲン第四級アンモニウム塩である1~8のいずれかの洗浄剤組成物、
10.上記含ハロゲン第四級アンモニウム塩が、含フッ素第四級アンモニウム塩である9の洗浄剤組成物、
11.上記含フッ素第四級アンモニウム塩が、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムである10の洗浄剤組成物、
12.上記フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムが、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム及びフッ化テトラブチルアンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む11の洗浄剤組成物、
13.上記基体上に残留するポリシロキサン系接着剤が、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)を含む接着剤組成物から得られた接着層の接着剤残留物である1~12のいずれかの洗浄剤組成物、
14.バンプボールを有する半導体基板と、支持基板と、接着剤組成物から得られる接着層とを備える積層体を製造する第1工程、得られた積層体の半導体基板を加工する第2工程、加工後に半導体基板を剥離する第3工程、及び剥離した半導体基板上に残存する接着剤残留物を洗浄剤組成物により除去する第4工程を含む、加工された半導体基板の製造方法において、上記洗浄剤組成物として1~13のいずれかの洗浄剤組成物を用いることを特徴とする、加工された半導体基板の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤組成物を用いることで、例えばポリシロキサン系接着剤を用いて得られる接着層、特にヒドロシリル化反応により硬化するポリシロキサン成分を含むシロキサン系接着剤から得られる硬化膜である接着層による仮接着を剥離した後の接着剤残留物が付着した半導体基板等の基板の洗浄を、バンプボール等の金属の腐食を抑制しつつ、短時間で簡便に行うことが可能となる。それ故、高効率で良好な半導体素子の製造を期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明の洗浄剤組成物は、第四級アンモニウム塩を含む。
第四アンモニウム塩は、第四級アンモニウムカチオンと、アニオンとから構成されるものであって、この種の用途に用いられるものであれば特に限定されるものではない。
【0011】
このような第四級アンモニウムカチオンとしては、典型的には、テトラ(炭化水素)アンモニウムカチオンが挙げられる。一方、それと対を成すアニオンとしては、水酸化物イオン(OH);フッ素イオン(F)、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲンイオン;テトラフルオロホウ酸イオン(BF );ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明においては、第四級アンモニウム塩は、好ましくは含ハロゲン第四級アンモニウム塩であり、より好ましくは含フッ素第四級アンモニウム塩である。
第四級アンモニウム塩中、ハロゲン原子は、カチオンに含まれていても、アニオンに含まれていてもよいが、好ましくはアニオンに含まれる。
【0013】
好ましい一態様においては、含フッ素第四級アンモニウム塩は、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムである。
フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムにおける炭化水素基の具体例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。
【0014】
本発明の好ましい一態様においては、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムは、フッ化テトラアルキルアンモニウムを含む。
フッ化テトラアルキルアンモニウムの具体例としては、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム(テトラブチルアンモニウムフルオリドともいう)等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、フッ化テトラブチルアンモニウムが好ましい。
【0015】
フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウム等の第四級アンモニウム塩は、水和物を用いてもよい。また、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウム等の第四級アンモニウム塩は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
第四級アンモニウム塩の量は、洗浄剤組成物に含まれる溶媒に溶解する限り特に制限されるものではないが、洗浄剤組成物に対して、通常0.1~30質量%である。
【0016】
本発明の洗浄剤組成物は、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物からなる金属腐食抑制剤を含む。
このようなカルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物は、例えば、チアゾール環、イソチアゾール環及びチアジアゾール環から選択される少なくとも1つを含み、且つ、カルボキシ基(-COOH)を1つ以上含む炭化水素基を1つ以上ものが挙げられる。
カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物は、典型的には、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール誘導体、カルボキシ炭化水素基を含むイソチアゾール誘導体又はカルボキシ炭化水素基を含むチアジアゾール誘導体である。
【0017】
チアゾール系化合物が含むカルボキシ炭化水素基としては、カルボキシ基を1つ以上含む炭化水素基である限り特に限定されるものではないが、カルボキシアルキル基又はカルボキシアルケニル基が好ましく、優れた洗浄能と腐食抑制能をより再現性よく実現する観点から、カルボキシアルキル基がより好ましい。
【0018】
カルボキシアルキル基は、1又は2以上のカルボキシ基で置換されたアルキル基である。
カルボキシ基が置換するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常1~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0019】
直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、メチル基が好ましい。
【0020】
環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
カルボキシアルキル基の具体例としては、カルボキシメチル基、ジカルボキシメチル基、トリカルボキシメチル基、1-カルボキシエチル、2-カルボキシエチル基、2,2-ジカルボキシエチル基、2,2,2-トリカルボキシエチル基、3-カルボキシプロピル基、4-カルボキシブチル基、5-カルボキシペンチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
カルボキシアルケニル基は、1又は2以上のカルボキシ基で置換されたアルケニル基である。
カルボキシ基が置換するアルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常2~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0023】
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
カルボキシアルケニル基の具体例としては、2-ヒドロキシエテニル基、3-ヒドロキシ-1-プロペニル基、3-ヒドロキシ-2-プロペニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
カルボキシアルキル基及びカルボキシアルケニル基において、カルボキシ基が置換している、アルキル基及びアルケニル基は、有機溶媒への溶解性を高めるとともに、優れた洗浄能と優れた腐食抑制能を再現性よく実現する観点から、好ましくは直鎖状又は分岐状であり、より好ましくは直鎖状であり、また、好ましくは、少なくとも1つのカルボキシ基が、直鎖状又は分岐状アルキル基又はアルケニル基の末端の炭素原子に結合している。なお、末端の炭素原子とは、アルキル基又はアルケニル基におけるチアゾール系化合物における複素環に結合する結合手から最も遠い炭素原子を意味する。
【0026】
本発明の好ましい態様においては、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物は、直接又はエーテル基若しくはチオエーテル基を介して、チアゾール環、イソチアゾール環又はチアジアゾール環とカルボキシ炭化水素基とが結合した構造を含み、優れた洗浄能と腐食抑制能をより再現性よく実現する観点から、好ましくは、直接又はエーテル基若しくはチオエーテル基を介して、チアゾール環とカルボキシ炭化水素基とが結合した構造を含み、より好ましくは、チオエーテル基を介して、チアゾール環とカルボキシ炭化水素基とが結合した構造を含む。
【0027】
カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物の好ましい一例としては、式(T1)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
【0028】
式(T1)中、Dは、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表し、Dは、カルボキシアルキル基又はカルボキシアルケニル基を表し、Dは、ベンゼン環に置換する置換基(原子)を表し、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、dは、置換基の数を表し、0~4の整数である。
【0029】
は、硫黄原子が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アルキル基としては、上述したものと同じものが挙げられ、化合物の溶解性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~20のアリール基が挙げられ、化合物の溶解性の観点から、アリール基が好ましい。
アルコキシ基としては、上記アルキル基と酸素原子とから成るものが挙げられ、化合物の溶解性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基が好ましい。
アリールオキシ基としては、上記アリール基と酸素原子とから成るものが挙げられ、化合物の溶解性の観点から、フェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基が好ましい。
dは、化合物の入手容易性の観点、化合物の溶解性の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、より一層好ましくは1以下である。
【0030】
カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物の具体例としては、(2-ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物からなる金属腐食抑制剤の量は、洗浄剤組成物が含む有機溶媒に溶解する限り特に制限されるものではないが、洗浄剤組成物に対して、通常0.01~10質量%である。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物は、カルボキシ炭化水素基を含むチアゾール系化合物からなる金属腐食抑制剤以外の金属腐食抑制剤を含んでいてもよい。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物は、有機溶媒を含む。
このような有機溶媒は、この種の用途に用いられ、且つ、上記第四級アンモニウム塩と上記金属腐食抑制剤を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、優れた洗浄性を有する洗浄剤組成物を再現性よく得る観点、第四級アンモニウム塩や金属腐食抑制剤を良好に溶解させ、均一性に優れる洗浄剤組成物を得る観点から、好ましくは、1種又は2種以上のアミド系溶媒を含む。
【0034】
好ましいアミド系溶媒の一例としては、式(Z)で表される酸アミド誘導体が挙げられる。
【化3】
【0035】
式中、R0は、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基を表し、エチル基、基が好ましい。RA及びRBは、互いに独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す。炭素数1~4のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。これらのうち、RA及びRBとしては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0036】
式(Z)で表される酸アミド誘導体としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、N-エチル-N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチル酪酸アミド、N,N-ジエチル酪酸アミド、N-エチル-N-メチル酪酸アミド、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、N,N-ジエチルイソ酪酸アミド、N-エチル-N-メチルイソ酪酸アミド等が挙げられる。これらのうち、特にN,N-ジメチルプロピオンアミドが好ましい。
【0037】
式(Z)で表される酸アミド誘導体は、対応するカルボン酸エステルとアミンの置換反応によって合成してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0038】
好ましいアミド系溶媒の他の一例としては、式(Y)で表されるラクタム化合物が挙げられる。
【化4】
【0039】
上記式(Y)において、炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられ、炭素数1~6のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
上記式(Y)で表されるラクタム化合物の具体例としては、α-ラクタム化合物、β-ラクタム化合物、γ-ラクタム化合物、δ-ラクタム化合物等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明の好ましい一態様においては、上記式(Y)で表されるラクタム化合物は、1-アルキル-2-ピロリドン(N-アルキル-γ-ブチロラクタム)を含み、より好ましい一態様においては、N-メチルピロリドン(NMP)又はN-エチルピロリドン(NEP)を含み、より一層好ましい一態様においては、N-メチルピロリドン(NMP)を含む。
【0042】
本発明の洗浄剤組成物は、上述のアミド化合物とは異なる、1種又は2種以上のその他の有機溶媒を含んでいてもよい。
このようなその他の有機溶媒は、この種の用途に用いられるものであって、上述のアミド化合物と相溶性がある有機溶媒であれば特に限定されるものではない。
【0043】
好ましいその他の溶媒の一例としては、アルキレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
アルキレングリコールジアルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル(ジメトキシエタンともいう、以下同様)、エチレングリコールジエチルエーテル(ジエトキシエタン)、エチレングリコールジプロピルエタン(ジプロポキシエタン)、エチレングリコールジブチルエーテル(ジブトキシエタン)、プロピレングリコールジメチルエーテル(ジメトキシプロパン)、プロピレングリコールジエチルエーテル(ジエトキシプロパン)、プロピレングリコールジプロピルエーテル(ジプロポキシプロパン)等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルキレングリコールジアルキルエーテルは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
好ましい他の溶媒の他の一例としては、芳香族炭化水素化合物が挙げられ、その具体例としては、式(1)で表される芳香族炭化水素化合物が挙げられる。
【化5】
【0045】
上記式(1)において、炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
sは、ベンゼン環に置換する置換基R100の数を表し、2又は3である。
【0046】
本発明の好ましい一態様においては、式(1)で表される芳香族炭化水素化合物は、式(1-1)又は(1-2)で表される芳香族炭化水素化合物である。
【化6】
【0047】
100は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基を表すが、式(1-1)における3個のR100の炭素数1~5のアルキル基の合計炭素数は、3以上であり、式(1-2)における2個のR100の炭素数1~6のアルキル基の合計炭素数は、3以上である。
【0048】
式(1)で表される芳香族炭化水素化合物の具体例としては、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,5-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、4-エチルトルエン、4-n-ブロピルトルエン、4-イソブロピルトルエン、4-n-ブチルトルエン、4-s-ブチルトルエン、4-イソブチルトルエン、4-t-ブチルトルエン等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、メシチレン、4-t-ブチルトルエンが好ましい。
【0049】
好ましいその他の溶媒の他の一例としては、環状構造含有エーテル化合物が挙げられる。環状構造含有エーテルとしては、環状エーテル化合物、環状アルキル鎖状アルキルエーテル化合物、環状アルキル分岐状アルキルエーテル化合物、ジ(環状アルキル)エーテル化合物が挙げられる。
【0050】
環状エーテル化合物は、環状炭化水素化合物の環を構成する炭素原子の少なくとも1つが、酸素原子に置換されたものである。
典型的には、鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素化合物がエポキシ化されたエポキシ化合物(すなわち、互いに隣り合う2つの炭素原子と酸素原子とが3員環を構成しているもの)や、炭素数が4以上の環状炭化水素化合物(但し、芳香族炭化水素化合物を除く。)の環を構成する炭素原子が酸素原子に置換されたエポキシ以外の環状エーテル化合物(エポキシ化合物は除かれる。以下同様。)が挙げられ、中でも、このような炭素数が4以上の環状炭化水素化合物としては、炭素数が4以上の環状飽和炭化水素化合物が好ましい。
【0051】
上記エポキシ化合物の炭素数は、特に限定されるものではないが、通常4~40であり、好ましくは6~12である。
エポキシ基の数は、特に限定されるものではないが、通常1~4であり、好ましくは1又は2である。
【0052】
上記エポキシ化合物の具体例としては、1,2-エポキシ-n-ブタン、1,2-エポキシ-n-ペンタン、1,2-エポキシ-n-ヘキサン、1,2-エポキシ-n-ヘプタン、1,2-エポキシ-n-オクタン、1,2-エポキシ-n-ノナン、1,2-エポキシ-n-デカン、1,2-エポキシ-n-エイコサン等のエポキシ鎖状又は分岐状飽和炭化水素化合物、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロヘプタン、1,2-エポキシシクロオクタン、1,2-エポキシシクロノナン、1,2-エポキシシクロデカン、1,2-エポキシシクロエイコサン等のエポキシ環状飽和炭化水素化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
上記エポキシ以外の環状エーテル化合物の炭素数は、特に限定されるものではないが、通常3~40であり、好ましくは4~8である。
酸素原子(エーテル基)の数は、特に限定されるものではないが、通常1~3であり、好ましくは1又は2である。
【0054】
上記エポキシ以外の環状エーテル化合物の具体例としては、オキサシクロブタン(オキセタン)、オキサシクロペンタン(テトラヒドロフラン)、オキサシクロヘキサン等のオキサ環状飽和炭化水素化合物、1,3-ジオキサシクロペンタン、1,3-ジオキサシクロヘキサン(1,3-ジオキサン)、1,4-ジオキサシクロヘキサン(1,4-ジオキサン)等のジオキサ環状飽和炭化水素化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
環状アルキル鎖状アルキルエーテル化合物は、環状アルキル基と鎖状アルキル基と両者を連結するエーテル基とからなるものであり、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常4~40であり、好ましくは5~20である。
環状アルキル分岐状アルキルエーテル化合物は、環状アルキル基と分岐状アルキル基と両者を連結するエーテル基とからなるものであり、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常6~40であり、好ましくは5~20である。
ジ(環状アルキル)エーテル化合物は、2つの環状アルキル基と、両者を連結するエーテル基とからなるものであり、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常6~40であり、好ましくは10~20である。
中でも、上記エポキシ以外の環状エーテル化合物としては、環状アルキル鎖状アルキルエーテル化合物、環状アルキル分岐状アルキルエーテル化合物が好ましく、環状アルキル鎖状アルキルエーテル化合物がより好ましい。
【0056】
鎖状アルキル基は、直鎖状脂肪族炭化水素の末端の水素原子を取り除いて誘導される基であり、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常1~40であり、好ましくは1~20である。
その具体例としては、メチル基、エチル基、1-n-プロピル基、1-n-ブチル基、1-n-ペンチル基、1-n-ヘキシル基、1-n-ヘプチル基、1-n-オクチル基、1-n-ノニル基、1-n-デシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
分岐状アルキル基は、直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素の水素原子を取り除いて誘導される基であって、鎖状アルキル基以外のものであり、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常3~40であり、好ましくは3~40である。
その具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
環状アルキル基は、環状脂肪族炭化水素の環を構成する炭素原子上の水素原子を取り除いて誘導される基であり、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常3~40であり、好ましくは5~20である。
その具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシル等のモノシクロアルキル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-7-イル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
環状アルキル鎖状アルキルエーテル化合物の具体例としては、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、シクロペンチルエチルエーテル、シクロペンチルプロピルエーテル、シクロペンチルブチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル、シクロヘキシルプロピルエーテル、シクロヘキシルブチルエーテル等を挙げることができるが、これらに限定されない。
環状アルキル分岐状アルキルエーテル化合物の具体例としては、シクロペンチルイソプロピルエーテル、シクロペンチルt-ブチルエーテル等を挙げることができるが、これらに限定されない。
ジ(環状アルキル)エーテル化合物の具体例としては、ジシクロペンチルエーテル、ジシクロヘキシルエーテル、シクロペンチルシクロヘキシルエーテル等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
上述のアミド化合物とは異なるその他の有機溶媒の量は、洗浄剤組成物に含まれる第四級アンモニウム塩、金属腐食抑制剤等の成分が析出又は分離せず、且つ、上述のアミド化合物と均一に混ざり合う限りにおいて、通常、洗浄剤組成物に含まれる溶媒中95質量%以下で適宜決定される。
【0061】
本発明においては、洗浄剤組成物が含む溶媒として有機溶媒のみを用いることにより、水に起因する金属汚染や金属腐食等の発生を低減して基板を再現性よく好適に洗浄することが可能となる。従って、本発明の洗浄剤組成物は、通常、溶媒として有機溶媒のみを含む。なお、「有機溶媒のみ」とは、意図して溶媒として用いられるものが有機溶媒のみという意味であり、有機溶媒やその他の成分に含まれる水の存在までをも否定するものではない。
換言すると、本発明の洗浄剤組成物は、実質的に水を含有しない点に特徴がある。ここで、実質的に水を含有しないとは、水を配合しないことであり、上述したとおり、他の成分の水和物としての水や成分と共に混入する微量水分を排除するものではない。
有機溶媒のみを溶媒として用いて本発明の洗浄剤組成物を調製する場合、得られる洗浄剤組成物の含水量は、用いる有機溶媒が予め脱水されたものであるか否か、用いる有機溶媒や固形分の吸水性が高いか否か、用いる第四級アンモニウム塩が水和物か否か等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常5質量%未満、好ましくは4質量%未満、より好ましくは3質量%未満である。なお、含水量は、例えば微量水分測定装置CA-200型((株)三菱ケミカルアナリテック製)を用いたカールフィッシャー法で、算出できる。
【0062】
本発明の洗浄剤組成物は、上述した第四級アンモニウム塩、上記金属腐食抑制剤、上記有機溶媒及び必要によりその他の成分を混合することで得られるものであり、各成分の混合する順序については、本発明の目的が達成できないような沈澱や液の分離等の不具合が発生する等の問題が生じない限り、任意の順序で混合することができる。即ち、洗浄剤組成物の全ての成分のうち、一部を予め混合し、次いで残りの成分を混合してもよく、或いは、一度に全部の成分を混合してもよい。また、必要があれば、洗浄剤組成物をろ過してもよく、或いは、混合した後の不溶成分を避けて上澄みを回収し、それを洗浄剤として用いてもよい。更に、用いる成分が、例えば吸湿性や潮解性がある場合、洗浄剤組成物の調製の作業の全部又は一部を不活性ガス下で行ってもよい。
【0063】
以上説明した本発明の洗浄剤組成物を用いることで、例えばシリコンウエハー等の半導体基板上に残留するポリシロキサン系接着剤を効果的に除去することができるため、上記半導体基板を短時間に洗浄できるだけでなく、半導体基板上のバンプ等の金属へのダメージを抑制することが可能となり、良好な半導体素子の高効率な製造を期待できる。
具体的には、洗浄速度については、室温(23℃)において、接着剤組成物から得られる接着層を本発明の洗浄剤組成物に5分間接触させた場合において接触の前後で膜厚減少を測定し、減少した分を洗浄時間で割ることにより算出されるエッチングレート[μm/min]が、通常4.5[μm/分]以上であり、好ましい態様においては5.0[μm/分]以上、より好ましい態様においては5.5[μm/分]以上、より一層好ましい態様においては6.0[μm/分]以上、更に好ましい態様においては6.5[μm/分]以上である。
また、洗浄持続力については、室温(23℃)において、接着剤組成物から得られる接着性固体1gを、本発明の洗浄剤組成物2gに接触させた場合において、本発明の洗浄剤組成物は、通常12~24時間で接着性固体の大部分を溶解し、好ましい態様においては2~12時間で接着性固体を溶解し切り、より好ましい態様においては1~2時間で接着性固体を溶解し切る。
【0064】
以上説明した本発明の洗浄剤組成物を用いることで、半導体基板等の基板上に残留するポリシロキサン系接着剤を効果的に除去することが可能となり、その結果、上記基板を短時間で洗浄できるだけでなく、上記基板がバンプボールを有する場合には、バンプボールへの腐食を回避又は低減することもでき、その結果、高効率で、信頼性の高い基板洗浄を行うことができる。
【0065】
本発明の洗浄剤組成物は、半導体基板等の各種基板の表面を洗浄するために用い得る。その洗浄の対象物は、シリコン半導体基板に限定されるものではなく、例えば、ゲルマニウム基板、ガリウム-ヒ素基板、ガリウム-リン基板、ガリウム-ヒ素-アルミニウム基板、アルミメッキシリコン基板、銅メッキシリコン基板、銀メッキシリコン基板、金メッキシリコン基板、チタンメッキシリコン基板、窒化ケイ素膜形成シリコン基板、酸化ケイ素膜形成シリコン基板、ポリイミド膜形成シリコン基板、ガラス基板、石英基板、液晶基板、有機EL基板等の各種基板をも含む。
【0066】
例えば、半導体プロセスにおける本発明の洗浄剤組成物の使用例としては、TSV等の半導体パッケージ技術に用いられる薄化等の加工された半導体基板の製造方法における使用が挙げられる。
具体的には、半導体基板と、支持基板と、接着剤組成物から得られる接着層とを備える積層体を製造する第1工程、得られた積層体の半導体基板を加工する第2工程、加工後に半導体基板を剥離する第3工程、及び剥離した半導体基板上に残存する接着剤残留物を洗浄剤組成物により除去する第4工程を含む製造方法において、洗浄剤組成物として本発明の洗浄剤組成物が使用される。
【0067】
第1工程において接着層を形成するために用いられる接着剤組成物としては、上述の各種接着剤の組成物を使用し得るが、本発明の洗浄剤組成物は、ポリシロキサン系接着剤から得られる接着層を取り除くために効果的であり、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)を含むポリシロキサン系接着剤から得られる接着層を取り除くためにより効果的である。
従って、以下、ポリシロキサン系接着剤(接着剤組成物)を用いて得られる接着層を用いて加工された半導体基板を製造する際に、当該接着層を本発明の洗浄剤組成物によって取り除く例について説明するが、本発明は、これに限定されるわけではない。
【0068】
まず、半導体基板と、支持基板と、接着剤組成物から得られる接着層とを備える積層体を製造する第1工程について説明する。
【0069】
ある態様においては、かかる第1工程は、半導体基板又は支持基板の表面に接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する工程と、半導体基板と支持基板とを接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、半導体基板及び支持基板の厚さ方向の荷重をかけて密着させ、その後、後加熱処理を実施することにより、積層体とする工程とを含む。
その他の態様においては、かかる第1工程は、例えば、半導体基板のウエハーの回路面に接着剤組成物を塗布し、それを加熱して接着剤塗布層を形成する工程と、支持基板の表面に剥離剤組成物を塗布し、それを加熱して剥離剤塗布層を形成する工程と、半導体基板の接着剤塗布層と、支持基板の剥離剤塗布層とを、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、半導体基板及び支持基板の厚さ方向の荷重をかけて密着させ、その後、後加熱処理を実施することにより、積層体とする工程とを含む。なお、接着剤組成物を半導体基板に、剥離剤組成物を支持基板にそれぞれ塗布し、加熱したが、いずれか一方の基板に、接着剤組成物及び剥離剤組成物の塗布及び加熱をそれぞれ順次行ってもよい。
上記各態様において、加熱処理、減圧処理、両者の併用のいずれの処理条件を採用するかは、接着剤組成物の種類や剥離剤組成物の具体的組成、両組成物から得られる膜の相性、膜厚、求める接着強度等の各種事情を勘案した上で決定される。
【0070】
ここで、例えば、半導体基板がウエハーであり、支持基板が支持体である。接着剤組成物を塗布する対象は、半導体基板と支持基板のいずれか一方でも又は両方でもよい。
【0071】
ウエハーとしては、例えば直径300mm、厚さ770μm程度のシリコンウエハーやガラスウエハーが挙げられるが、これらに限定されない。
特に、本発明の洗浄剤組成物は、これを用いた洗浄方法によって、バンプ付き半導体基板を、そのバンプへのダメージを抑制しつつ、効果的に洗浄できる。
このようなバンプ付き半導体基板の具体例としては、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプ等のバンプを有するシリコンウエハーが挙げられ、通常、バンプ高さ1~200μm程度、バンプ径1~200μm、バンプピッチ1~500μmという条件から適宜選択される。
めっきバンプの具体例としては、SnAgバンプ、SnBiバンプ、Snバンプ、AuSnバンプ等のSnを主体とした合金めっき等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
支持体(キャリア)は、特に限定されるものではないが、例えば直径300mm、厚さ700mm程度のシリコンウエハーを挙げることができるが、これに限定されない。
【0073】
ポリシロキサン系接着剤(接着剤組成物)は、好ましい態様においては、接着剤成分として、ヒドロシリル化反応により硬化するポリオルガノシロキサン成分(A)を含み、より好ましい態様においては、ヒドロシリル化反応により硬化するポリオルガノシロキサン成分(A)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、上記ポリシロキサン(A1)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、上記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、上記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2)とを含む。
【0074】
~Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、互いに独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表す。
【0075】
’~R’は、ケイ素原子に結合する基であり、互いに独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、R’~R’の少なくとも1つは、アルケニル基である。
【0076】
”~R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、互いに独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、R”~R”の少なくとも1つは、水素原子である。
【0077】
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常1~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0078】
アルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。中でも、メチル基が好ましい。
【0079】
アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常2~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0080】
アルケニル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。中でも、エテニル基、2-プロペニル基が好ましい。
【0081】
上述の通り、ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)を含むが、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基と、ポリオルガノシロキサン(a2)に含まれる水素原子(Si-H基)とが白金族金属系触媒(A2)によるヒドロシリル化反応によって架橋構造を形成し硬化する。
【0082】
ポリオルガノシロキサン(a1)は、Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、上記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a1)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0083】
Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(Q’単位とM’単位)、(D’単位とM’単位)、(T’単位とM’単位)、(Q’単位とT’単位とM’単位)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
また、ポリオルガノシロキサン(a1)に包含されるポリオルガノシロキサンが2種以上含まれる場合、(Q’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(T’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(Q’単位とT’単位とM’単位)と(T’単位とM’単位)との組み合わせが好ましいが、これらに限定されない。
【0085】
ポリオルガノシロキサン(a2)は、Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、上記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a2)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0086】
Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(M”単位とD”単位)、(Q”単位とM”単位)、(Q”単位とT”単位とM”単位)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
ポリオルガノシロキサン(a1)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又はアルケニル基が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R’~R’で表される全置換基中におけるアルケニル基の割合は、好ましくは0.1モル%~50.0モル%、より好ましくは0.5モル%~30.0モル%であり、残りのR’~R’はアルキル基とすることができる。
【0088】
ポリオルガノシロキサン(a2)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又は水素原子が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R”~R”で表される全ての置換基及び置換原子中における水素原子の割合は、好ましくは0.1モル%~50.0モル%、より好ましくは10.0モル%~40.0モル%であり、残りのR”~R”はアルキル基とすることができる。
【0089】
ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)とを含むものであるが、好ましい態様においては、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)に含まれるSi-H結合を構成する水素原子とのモル比は、1.0:0.5~1.0:0.66の範囲である。
【0090】
ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の重量平均分子量は、それぞれ、通常500~1,000,000であるが、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは5,000~50,000である。
なお、本発明における重量平均分子量及び数平均分子量並びに分散度は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製 EcoSEC,HLC-8320GPC)及びGPCカラム(東ソー(株)製 TSKgel SuperMultiporeHZ-N, TSKgel SuperMultiporeHZ-H)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を0.35mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)を用いて、測定することができる。
【0091】
ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の粘度は、それぞれ、通常10~1000000(mPa・s)であるが、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは50~10000(mPa・s)である。なお、本発明における粘度は、25℃においてE型回転粘度計で測定した値である。
【0092】
ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)は、ヒドロシリル化反応によって、互いに反応して膜となる。従って、その硬化のメカニズムは、例えばシラノール基を介したそれとは異なり、それ故、いずれのシロキサンも、シラノール基や、アルキルオキシ基のような加水分解によってシラノール基を形成する官能基を含む必要は無い。
【0093】
好ましい態様においては、接着剤成分(S)は、上述のポリシロキサン(A1)とともに、白金族金属系触媒(A2)を含む。
このような白金系の金属触媒は、ポリオルガノシロキサン(a1)のアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)のSi-H基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
【0094】
白金系の金属触媒の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
白金とオレフィン類との錯体としては、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられるが、これに限定されない。
白金族金属系触媒(A2)の量は、通常、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、1.0~50.0ppmの範囲である。
【0095】
ポリオルガノシロキサン成分(A)は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制する目的で、重合抑制剤(A3)を含んでもよい。
重合抑制剤は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制できる限り特に限定されるものではなく、その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,1-ジフェニル-2-プロピオン-1-オール等のアルキニルアルコール等が挙げられる。
重合抑制剤の量は、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、通常、その効果を得る観点から1000.0ppm以上であり、ヒドロシリル化反応の過度な抑制を防止する観点から10000.0ppm以下である。
【0096】
本発明で用いる接着剤組成物は、剥離剤成分(B)を含んでいてもよい。このような剥離剤成分(B)を、本発明で用いる接着剤組成物に含めることで、得られる接着層を再現性よく好適に剥離することができるようになる。
このような剥離剤成分(B)として、典型的には、ポリオルガノシロキサンが挙げられ、その具体例としては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
剥離剤成分(B)であるポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、通常100000~2000000であるが、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは200000~1200000、より好ましくは300000~900000であり、その分散度は、通常1.0~10.0であるが、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは1.5~5.0、より好ましくは2.0~3.0である。なお、重量平均分子量及び分散度は、上述の方法で測定することができる。
【0098】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えばR1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D10単位)を含むものが挙げられる。
【0099】
11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
【0100】
また、エポキシ基を含む有機基におけるエポキシ基は、その他の環と縮合せずに、独立したエポキシ基であってもよく、1,2-エポキシシクロヘキシル基のように、その他の環と縮合環を形成しているエポキシ基であってもよい。
【0101】
エポキシ基を含む有機基の具体例としては、3-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0102】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D10単位)を含むものであるが、D10単位以外に、上記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
【0103】
好ましい態様においては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D10単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0104】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ基含有ポリジメチルシロキサンが好ましく、その重量平均分子量は、通常1,500~500,000であるが、接着剤組成物中での析出抑制の観点から、好ましくは100,000以下である。
【0105】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(A-1)で表される商品名CMS-227(ゲレスト社製、重量平均分子量27,000)、式(A-2)で表される商品名ECMS-327(ゲレスト社製、重量平均分子量28,800)、式(A-3)で表される商品名KF-101(信越化学工業(株)製、重量平均分子量31,800)、式(A-4)で表される商品名KF-1001(信越化学工業(株)製、重量平均分子量55,600)、式(A-5)で表される商品名KF-1005(信越化学工業(株)製、重量平均分子量11,500)、式(A-6)で表される商品名X-22-343(信越化学工業(株)製、重量平均分子量2,400)、式(A-7)で表される商品名BY16-839(ダウコーニング社製、重量平均分子量51,700)、式(A-8)で表される商品名ECMS-327(ゲレスト社製、重量平均分子量28,800)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
【化7】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0107】
【化8】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0108】
【化9】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0109】
【化10】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0110】
【化11】
(m、n及びoはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0111】
【化12】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0112】
【化13】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0113】
【化14】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0114】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R210220SiO2/2で表されるシロキサン単位(D200単位)、好ましくはR2121SiO2/2で表されるシロキサン単位(D20単位)を含むものが挙げられる。
【0115】
210及びR220は、ケイ素原子に結合する基であり、互いに独立して、アルキル基を表すが、少なくとも一方はメチル基であり、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
21は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。中でも、R21としては、メチル基が好ましい。
メチル基含有ポリオルガノシロキサンとの好ましい一例としては、ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0116】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D200単位又はD20単位)を含むものであるが、D200単位及びD20単位以外に、上記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
【0117】
ある態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D200単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0118】
好ましい態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D20単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0119】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの粘度は、通常1,000~2,000,000mm/sであるが、好ましくは10,000~1,000,000mm/sである。なお、メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、典型的には、ポリジメチルシロキサンからなるジメチルシリコーンオイルである。この粘度の値は、動粘度で示され、センチストークス(cSt)=mm/sである。動粘度は、動粘度計で測定することができる。また、粘度(mPa・s)を密度(g/cm)で割って求めることもできる。すなわち、25℃で測定したE型回転粘度計による粘度と密度から求めることができる。動粘度(mm/s)=粘度(mPa・s)/密度(g/cm)という式から算出することができる。
【0120】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、ワッカーケミ社製 WACKERSILICONE FLUID AK シリーズや、信越化学工業(株)製ジメチルシリコーンオイル(KF-96L、KF-96A、KF-96、KF-96H、KF-69、KF-965、KF-968)、環状ジメチルシリコーンオイル(KF-995)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R3132SiO2/2で表されるシロキサン単位(D30単位)を含むものが挙げられる。
【0122】
31は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基又はアルキル基を表し、R32は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
【0123】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D30単位)を含むものであるが、D30単位以外に、上記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
【0124】
好ましい態様においては、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D30単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0125】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、通常1,500~500,000であるが、接着剤組成物中での析出抑制の観点等から、好ましくは100,000以下である。
【0126】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(C-1)で表される商品名PMM-1043(Gelest,Inc.製、重量平均分子量67,000、粘度30,000mm/s)、式(C-2)で表される商品名PMM-1025(Gelest,Inc.製、重量平均分子量25,200、粘度500mm/s)、式(C-3)で表される商品名KF50-3000CS(信越化学工業(株)製、重量平均分子量39,400、粘度3000mm/s)、式(C-4)で表される商品名TSF431(MOMENTIVE社製、重量平均分子量1,800、粘度100mm/s)、式(C-5)で表される商品名TSF433(MOMENTIVE社製、重量平均分子量3,000、粘度450mm/s)、式(C-6)で表される商品名PDM-0421(Gelest,Inc.製、重量平均分子量6,200、粘度100mm/s)、式(C-7)で表される商品名PDM-0821(Gelest,Inc.製、重量平均分子量8,600、粘度125mm/s)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
【化15】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0128】
【化16】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0129】
【化17】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0130】
【化18】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0131】
【化19】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0132】
【化20】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0133】
【化21】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0134】
好ましい態様においては、本発明で用いる接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応により硬化するポリオルガノシロキサン成分(A)ととともに、剥離剤成分(B)を含み、より好ましい態様においては、剥離剤成分(B)として、ポリオルガノシロキサンを含む。
【0135】
本発明で用いる接着剤組成物は、接着剤成分(S)と剥離剤成分(B)とを、任意の比率で含むことができるが、接着性と剥離性のバランスを考慮すると、成分(S)と成分(B)との比率は、質量比で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
すなわち、ヒドロシリル化反応により硬化するポリオルガノシロキサン成分(A)が含まれる場合、成分(A)と成分(B)との比率は、質量比で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
【0136】
本発明で用いる接着剤組成物は、粘度の調整等を目的に、溶媒を含んでいてもよく、その具体例としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
より具体的には、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、メンタン、リモネン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸ブチル、ジイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ノナノン、5-ノナノン等が挙げられるが、これらに限定されない。このような溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0138】
本発明で用いる接着剤組成物が溶媒を含む場合、その含有量は、所望の組成物の粘度、採用する塗布方法、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、組成物全体に対して、10~90質量%程度の範囲である。
【0139】
本発明で用いる接着剤組成物の粘度は、25℃で、通常500~20,000mPa・s、好ましくは1,000~5,000mPa・sである。本発明で用いる接着剤組成物の粘度は、用いる塗布方法、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、用いる有機溶媒の種類やそれらの比率、膜構成成分濃度等を変更することで調整可能である。
【0140】
本発明で用いる接着剤組成物は、接着剤成分(S)と、用いる場合には剥離剤成分(B)及び溶媒とを混合することで製造できる。
その混合順序は特に限定されるものではないが、容易にかつ再現性よく接着剤組成物を製造できる方法の一例としては、例えば、接着剤成分(S)と剥離剤成分(B)を溶媒に溶解させる方法や、接着剤成分(S)と剥離剤成分(B)の一部を溶媒に溶解させ、残りを溶媒に溶解させ、得られた溶液を混合する方法が挙げられるが、これらに限定されない。なお、接着剤組成物を調製する際、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
本発明においては、異物を除去する目的で、接着剤組成物を製造する途中で又は全ての成分を混合した後に、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0141】
剥離剤組成物としては、この種の用途に用いられる剥離剤成分を含む組成物が挙げられる。
【0142】
塗布方法は、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。なお、別途スピンコート法等で塗布膜を形成し、シート状の塗布膜を貼付する方法を採用してもよく、これも塗布又は塗布膜という。
【0143】
塗布した接着剤組成物の加熱温度は、接着剤組成物が含む接着剤成分の種類や量、溶媒が含まれるか否か、所望の接着層の厚さ等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常80~150℃、その加熱時間は、通常30秒~5分である。
【0144】
塗布した剥離剤組成物の加熱温度は、架橋剤、酸発生剤、酸等の種類や量、溶媒が含まれるか否か、所望の剥離層の厚さ等に応じて異なるため一概に規定できないが、好適な硬化を実現する観点から、120℃以上であり、過度の硬化を防ぐ観点から、好ましくは260℃以下であり、その加熱時間は通常1~10分である。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
【0145】
接着剤組成物を塗布し、それを加熱して得られる接着剤塗布層の膜厚は、通常5~500μmである。
【0146】
剥離剤組成物を塗布し、それを加熱して得られる剥離剤塗布層の膜厚は、通常5~500μmである。
【0147】
加熱処理は、接着剤塗布層を軟化させて剥離剤塗布層との好適に貼り合せを実現する観点、接着剤塗布層を形成する際の加熱では十分に硬化しない種類の接着剤を好適に硬化させる観点、剥離剤塗布層の好適な硬化を実現する観点等を考慮して、通常20~150℃の範囲から適宜決定される。特に、接着剤成分や剥離剤成分の過度の硬化や不要な変質を抑制・回避する観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは90℃以下であり、その加熱時間は、接着能や剥離能を確実に発現させる観点から、通常30秒以上、好ましくは1分以上であるが、接着層やその他の部材の変質を抑制する観点から、通常10分以下、好ましくは5分以下である。
【0148】
減圧処理は、半導体基板、接着剤塗布層及び支持基板を、又は半導体基板、接着剤塗布層、剥離剤塗布層及び支持基板を、10~10,000Paの気圧下にさらせばよい。減圧処理の時間は、通常1~30分である。
【0149】
本発明の好ましい態様においては、基板と塗布層とは又は塗布層同士は、好ましくは減圧処理によって、より好ましくは加熱処理と減圧処理の併用によって、貼り合せられる。
【0150】
半導体基板及び支持基板の厚さ方向の荷重は、半導体基板及び支持基板とそれらの間の層に悪影響を及ぼさず、且つこれらをしっかりと密着させることができる荷重である限り特に限定されないが、通常10~1000Nの範囲内である。
【0151】
後加熱温度は、十分な硬化速度を得る観点から、好ましくは120℃以上であり、基板、接着剤成分、剥離剤成分等の変質を防ぐ観点から、好ましくは260℃以下である。加熱時間は、硬化によるウエハーの好適な接合を実現する観点から、通常1分以上であり、さらに接着剤の物性安定化の観点等から、好ましくは5分以上であり、過度の加熱による接着層への悪影響等を回避する観点から、通常180分以下、好ましくは120分以下である。加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
なお、後加熱処理の一つの目的は、接着剤成分(A)をより好適に硬化させることである。
【0152】
次に、積層体の半導体基板を加工する第2工程について説明する。
積層体に施される加工の一例としては、半導体基板の表面の回路面とは反対の裏面の加工が挙げられ、典型的には、ウエハー裏面の研磨によるウエハーの薄化が挙げられる。このような薄化されたウエハーを用いて、シリコン貫通電極(TSV)等の形成を行い、次いで支持体から薄化ウエハーを剥離してウエハーの積層体を形成し、3次元実装化される。また、それに前後してウエハー裏面電極等の形成も行われる。ウエハーの薄化とTSVプロセスには支持体に接着された状態で250~350℃の熱が負荷されるが、本発明で用いる積層体が含む接着層は、通常、その熱に対する耐熱性を有している。
例えば、直径300mm、厚さ770μm程度のウエハーは、表面の回路面とは反対の裏面を研磨して、厚さ80~4μm程度まで薄化することができる。
【0153】
次に、加工後に半導体基板からなる半導体基板を剥離する第3工程について説明する。
積層体の剥離方法は、溶剤剥離、レーザー剥離、鋭部を有する機材による機械的な剥離、支持体とウエハーとの間で引きはがす剥離等が挙げられるが、これらに限定されない。通常、剥離は、薄化等の加工の後に行われる。
第3工程では、必ずしも接着剤が完全に支持基板側に付着して剥離されるものではなく、加工された基板上に一部取り残されることがある。そこで、第4工程において、残留した接着剤が付着された基板の表面を、本発明の洗浄剤組成物で洗浄することにより、基板上の接着剤残留物を十分に除去することができる。
【0154】
最後に、剥離した半導体基板からなる半導体基板に残存する接着剤残留物を洗浄剤組成物により除去する第4工程について説明する。
第4工程は、剥離後の半導体基板上に残存する接着剤残留物を、本発明の洗浄剤組成物により除去する工程であり、具体的には、例えば、接着剤が残留する薄化基板を本発明の洗浄剤組成物に浸漬し、必要があれば超音波洗浄等の手段も併用して、接着剤残留物を除去するものである。
超音波洗浄を用いる場合、その条件は、基板の表面の状態を考慮して適宜決定されるものであるが、通常、20kHz~5MHz、10秒~30分の条件で洗浄処理することにより、基板上に残る接着剤残留物を十分取り除くことができる。
【0155】
本発明の加工基板の製造方法は、上述の第1工程から第4工程までを備えるものであるが、これらの工程以外の工程を含んでいてもよい。例えば、第4工程では、本発明の洗浄剤組成物による洗浄の前に、必要に応じて、基板を各種の溶媒により浸漬したり、テープピーリングをしたりして、接着剤残留物を除去してもよい。また、第1工程から第4工程に関する上記構成要素及び方法的要素については、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々変更しても差し支えない。
【実施例
【0156】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるわけではない。なお、本発明で用いた装置は次の通りである。
(1)攪拌機(自転公転ミキサー):(株)シンキー製 自転公転ミキサー ARE―500
(2)粘度計:東機産業(株)製 回転粘度計TVE-22H
(3)撹拌機:アズワン製 ミックスローターバリアブル 1―1186-12
(4)撹拌機H:アズワン製 加温型ロッキングミキサー HRM-1
(5)接触式膜厚計:(株)東京精密製 ウエハー厚さ測定装置 WT-425
【0157】
[1]接着剤組成物の調製
[調製例1]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に(a1)として粘度200mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサンとビニル基含有MQ樹脂からなるベースポリマー(ワッカーケミ社製)150g、(a2)として粘度100mPa・sのSiH基含有直鎖上ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)15.81g及び(A3)として1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.17gを入れ、自転公転ミキサーで5分間撹拌した。
得られた混合物に、(A2)として白金触媒(ワッカーケミ社製)0.33gと(a1)として粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)9.98gを自転公転ミキサーで5分間撹拌して別途得られた混合物から0.52gを加え、自転公転ミキサーで5分間撹拌し、最終的に得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
【0158】
[2]洗浄剤組成物の調製
[実施例1]
テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物(関東化学(株)製)5gに、3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸0.5g及びN,N-ジメチルプロピオンアミド95gを加えて撹拌し、洗浄剤組成物を得た。
【0159】
[比較例1]
テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物(関東化学(株)製)5gに、コハク酸無水物0.5g及びN,N-ジメチルプロピオンアミド95gを加えて撹拌し、洗浄剤組成物を得た。
【0160】
[比較例2]
テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物(関東化学(株)製)5gに、アジピン酸0.5g及びN,N-ジメチルプロピオンアミド95gを加えて撹拌し、洗浄剤組成物を得た。
【0161】
[比較例3]
テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物(関東化学(株)製)5gに、グルタル酸0.5g及びN,N-ジメチルプロピオンアミド95gを加えて撹拌し、洗浄剤組成物を得た。
【0162】
[3]洗浄剤組成物の性能評価
優れた洗浄剤組成物は、接着剤残留物と接触した直後からそれを溶解させる高い洗浄速度を備える必要があることから、以下の評価を行った。より高い洗浄速度を備えることで、より効果的な洗浄が期待できる。
得られた洗浄剤組成物の洗浄速度を評価するためにエッチングレートの測定を行った。調製例1で得られた接着剤組成物をスピンコーターで12インチシリコンウエハーに塗布し、150℃で15分、次いで190℃で10分加熱し、接着層(厚さ100μm)を形成した。そして、膜形成付きウエハーを4cm角のチップに切り出し、接触式膜厚計を用いて膜厚を測定した。
その後、チップを直径9cmのステンレスシャーレに入れ、得られた洗浄剤組成物7mLを添加して蓋をした後、撹拌機Hに載せて、23℃で5分間撹拌及び洗浄した。洗浄後、チップを取り出し、イソプロパノール及び純水で洗浄し、150℃で1分間乾燥し、再度、接触式膜厚計で膜厚を測定した。そして、洗浄の前後で膜厚減少を算出し、減少した分を洗浄時間で割ることによりエッチングレート[μm/min]を算出し、洗浄力の指標とした。結果は表1に示す。
【0163】
【表1】