(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】ガス回収設備、及びガス回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20240605BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240605BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20240605BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240605BHJP
【FI】
B01D53/62
B01D53/78
B01D53/18 130
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2020083254
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤川 宗治
(72)【発明者】
【氏名】藤平 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】宍田 健一
(72)【発明者】
【氏名】金久保 光央
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴至
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄樹
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-231921(JP,A)
【文献】特表2005-523800(JP,A)
【文献】特表2009-539595(JP,A)
【文献】特開2005-254233(JP,A)
【文献】特表2012-527992(JP,A)
【文献】特開2018-202298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/62
B01D 53/78
B01D 53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、前記吸収装置において二酸化炭素を吸収し
、吸収されている二酸化炭素の一部が放散された処理液を貯留する再生塔を備え、
前記ストリッピングは、前記再生塔に貯留されている処理液
の内部に、前記再生塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われるガス回収設備。
【請求項2】
前記再生装置は、
処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、
前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、
を備える請求項1に記載のガス回収設備。
【請求項3】
二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、
前記二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔と、
前記減圧塔と並設され、前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔と、
二酸化炭素が放散された処理液を前記減圧塔から前記ストリッピング塔へと供給する処理液供給手段と、
を備え、
前記ストリッピングは、前記処理液供給手段によって供給されて前記ストリッピング塔に貯留されている処理液
の内部に、前記ストリッピング塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われるガス回収設備。
【請求項4】
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える請求項1~3の何れか一項に記載のガス回収設備。
【請求項5】
前記液温調節手段は、前記吸収装置における前記処理液を10~30℃に調節する低温処理と、前記再生装置における前記処理液を40~80℃に調節する高温処理とを行う請求項4に記載のガス回収設備。
【請求項6】
前記液温調節手段は、前記処理液に送り込まれる前記ストリッピングガスの温度制御によって前記処理液の温度を調節する請求項4に記載のガス回収設備。
【請求項7】
二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生工程と、
を包含するガス回収方法であって、
前記吸収工程において二酸化炭素を吸収し
、吸収されている二酸化炭素の一部が放散された処理液が再生塔又はストリッピング塔に貯留されており、
前記再生工程は、前記再生塔又は前記ストリッピング塔に貯留されている処理液
の内部に、前記再生塔又は前記ストリッピング塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込む導入工程を含むガス回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収するガス回収設備、及びガス回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場、食品工場、ビール製造工場、家畜の飼育場等で生じる有機系廃棄物、例えば、汚泥、生ごみ、し尿等を、タンク内において35℃程度で発酵させることなどによって生物学的に処理すると、メタン、二酸化炭素、硫化水素等を含むバイオガスが発生する。近年、かかるバイオガスをエネルギー源として有効利用するために、バイオガス中の二酸化炭素の一部又は全量を除去・回収しメタンガスを濃縮して使用することが検討されている。
【0003】
また、火力発電所や製鉄所、ボイラ等の設備では、石炭、重油、超重質油等の燃料を多量に使用しており、燃料の燃焼に伴って排出される燃焼排ガス中の硫黄酸化物や、窒素酸化物、二酸化炭素等は、大気汚染防止や地球環境保全の見地から、放出に関する量的及び濃度的制限が必要とされている。特に、二酸化炭素は地球温暖化の主原因として問題視され、世界的にも排出を抑制する動きが活発化しており、燃焼排ガス中の二酸化炭素を大気中に放出せずに回収・固定化するための様々な研究が精力的に進められている。
【0004】
二酸化炭素の回収方法として、例えば、塩基性化合物による反応吸収を利用する化学吸収法が知られている。化学吸収法において、ガスに含まれる二酸化炭素とアミン系の吸収液(処理液)とを吸収塔で接触させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を吸収塔から再生塔へと送り、再生塔で吸収液から二酸化炭素を放散させて回収する二酸化炭素回収装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
特許文献1には、二酸化炭素を吸収した吸収液と水蒸気とを再生塔において対向流で接触させる水蒸気ストリッピングにより、吸収液から二酸化炭素を放散させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1での二酸化炭素の放散工程は、水蒸気を用いた水蒸気ストリッピングにより行われるため、水蒸気を発生させるのに要する熱エネルギーや、吸収液の温度上昇に要する熱エネルギー、吸収液から二酸化炭素を放出するのに要する熱エネルギー、吸収液の水分蒸発による熱損失を補うための熱エネルギー等が必要である。従って、吸収した二酸化炭素の放散に要するエネルギーが大きく、エネルギーコストが嵩むという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、吸収した二酸化炭素の放散に要するエネルギーを低く抑えつつ、二酸化炭素の回収効率を向上することができるガス回収設備、及びガス回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るガス回収設備の特徴構成は、
二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えることにある。
【0010】
本構成のガス回収設備によれば、吸収装置において、二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素が処理液(吸収液)に吸収される。再生装置では、二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧により、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を放散させるとともに、処理液に対するストリッピングガスを用いたストリッピングにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を放散させる再生処理が行われる。従って、従来の水蒸気ストリッピングによる二酸化炭素の放散と比べて、吸収した二酸化炭素の放散に要するエネルギーを低く抑えつつ、二酸化炭素の回収効率を向上することができる。また、再生装置での処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとによる処理により、処理液に吸収されている二酸化炭素を確実に放散させることができるので、二酸化炭素を十分に吸収できる状態に処理液を再生することができる。
【0011】
本発明に係るガス回収設備において、
前記再生装置は、
処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、
前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、
を備えることが好ましい。
【0012】
本構成のガス回収設備によれば、再生装置は、処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管を備え、切替手段は、減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、ストリッピングガスを用いたストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える。このような構成により、減圧により処理液から放散させた比較的高濃度の二酸化炭素と、ストリッピングにより処理液から放散させた比較的低濃度の二酸化炭素とをそれぞれ分取して回収することができる。従って、回収した二酸化炭素を用途に応じて濃縮したり希釈したりする処理を省略又は簡素化することができる。
【0013】
本発明に係るガス回収設備において、
前記再生装置は、
前記二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔と、
前記減圧塔と並設され、前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔と、
二酸化炭素が放散された処理液を前記減圧塔から前記ストリッピング塔へと供給する処理液供給手段と、
を備えることが好ましい。
【0014】
本構成のガス回収設備によれば、二酸化炭素を吸収した処理液が減圧塔に供給される。減圧塔内は減圧されているので、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を放散させて、比較的高濃度の二酸化炭素を回収することができる。減圧塔で二酸化炭素が放散された処理液は、処理液供給手段により、減圧塔からストリッピング塔へと供給される。ストリッピング塔の内部には、ストリッピングガスが導入され、これにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を放散させて、比較的低濃度の二酸化炭素を回収することができる。このように、減圧塔からは比較的高濃度の二酸化炭素を、ストリッピング塔からは比較低濃度の二酸化炭素を、個別に分けて回収することができるので、回収した二酸化炭素を用途に応じて濃縮したり希釈したりする処理を省略又は簡素化することができる。
【0015】
本発明に係るガス回収設備において、
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備えることが好ましい。
【0016】
本構成のガス回収設備によれば、処理液の温度を調節する液温調節手段を備えるので、処理液の温度を二酸化炭素の吸収/放散に適した温度に調節することができ、二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0017】
本発明に係るガス回収設備において、
前記液温調節手段は、前記吸収装置における前記処理液を10~30℃に調節する低温処理と、前記再生装置における前記処理液を40~80℃に調節する高温処理とを行うことが好ましい。
【0018】
本構成のガス回収設備によれば、液温調節手段は、吸収装置における処理液を10~30℃に調節する低温処理と、再生装置における処理液を40~80℃に調節する高温処理とを行う。これにより、処理液に対する二酸化炭素の吸収が10~30℃で行われ、処理液に対する二酸化炭素の放散が40~80℃で行われることになる。こうして、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散の温度差を比較的小さく抑えて、二酸化炭素の回収に必要なエネルギーの消費量を抑えることができる。特に、ストリッピングガスの導入や減圧操作による処理を併用することで、放散温度を低くし、二酸化炭素の回収に必要なエネルギーを削減することができる。また、処理液によっては、100℃以上の温度で二酸化炭素の放散を繰り返し行うと、劣化が進むが、100℃より低い、40~80℃の温度域で二酸化炭素の放散を行うことにより、処理液の劣化を抑えることができるとともに、処理液の揮発を抑制することもできる。なお、再生装置において、必ずしも処理液を加熱する必要はなく、再生工程の際の処理液の温度は、吸収工程の際の処理液の温度と同程度であってもよい。
【0019】
本発明に係るガス回収設備において、
前記液温調節手段は、前記ストリッピングガスの温度制御によって前記処理液の温度を調節することが好ましい。
【0020】
本構成のガス回収設備によれば、液温調節手段は、ストリッピングガスの温度制御によって処理液の温度を調節するので、二酸化炭素の放散が促進される温度となるように処理液の温度を容易に調節することができる。従って、ストリッピングガスによるストリッピング効果も相俟って二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0021】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るガス回収方法の特徴構成は、
二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生工程と、
を包含することにある。
【0022】
本構成のガス回収方法によれば、吸収工程において、二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素が処理液(吸収液)に吸収される。再生工程では、二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧により、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を放散させるとともに、処理液に対するストリッピングガスを用いたストリッピングにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を放散させる再生処理が行われる。従って、従来の水蒸気ストリッピングによる二酸化炭素の放散と比べて、吸収した二酸化炭素の放散に要するエネルギーを低く抑えつつ、二酸化炭素の回収効率を向上することができる。また、再生工程での処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとによる処理により、処理液に吸収されている二酸化炭素を確実に放散させることができるので、二酸化炭素を十分に吸収できる状態に処理液を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係るガス回収設備の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第二実施形態に係るガス回収設備の概略構成を示す模式図であって、減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を回収する状態図である。
【
図3】
図3は、本発明の第二実施形態に係るガス回収設備の概略構成を示す模式図であって、ストリッピングガスを用いたストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を回収する状態図である。
【
図4】
図4は、本発明の第三実施形態に係るガス回収設備の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、
図1~
図4を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0025】
〔第一実施形態〕
<ガス回収設備の概略構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係るガス回収設備の概略構成を示す模式図である。
図1に示すガス回収設備1Aは、処理液(吸収液)を介して、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するものである。ガス回収設備1Aでは、処理液中のアルカリ性化合物と二酸化炭素とを反応させることにより、処理液中に二酸化炭素を吸収させる化学吸収法を採用している。
【0026】
ここで、アルカリ性化合物としては、例えば、アミン化合物が挙げられる。アミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのような第1級アミン類、ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールのような第2級アミン類、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのような第3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンのようなポリエチレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類のような環状アミン類、キシリレンジアミンのようなポリアミン類、メチルアミノカルボン酸のようなアミノ酸類等が挙げられ、これらを、1種単独で、又は2種以上を用いることができる。
【0027】
図1に示すように、ガス回収設備1Aは、吸収装置10と、再生装置20と、熱交換器30とを備えている。
【0028】
<吸収装置>
吸収装置10は、二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる装置であり、主として吸収塔11及びそれに付帯する配管等により構成されている。
【0029】
[吸収塔]
吸収塔11は、塔本体12を備えている。塔本体12は、断面円環状で鉛直方向に延び、上端側及び下端側がそれぞれ閉鎖された縦長容器状に形成されている。塔本体12の下部には、被処理ガス導入口13が設けられている。塔本体12の頂部には、被処理ガス排出口14が設けられている。塔本体12の上部には、処理液導入口15が設けられている。塔本体12の底部には、処理液排出口16が設けられている。
【0030】
吸収塔11は、充填材17をさらに備えている。充填材17は、塔本体12の上下方向中間に位置するように塔本体12の内部に配設されている。充填材17は、気液接触の効率を高めるために設けられる。充填材17としては、金属製、樹脂製の何れであってもよく、気液接触面積を大きくするために、例えば、ラシヒリング、ベルルサドル、ポールリング等の不規則充填物が用いられ、その他、多孔構造やハニカム構造を有するものであってもよい。
【0031】
吸収塔11は、噴霧器18をさらに備えている。噴霧器18は、充填材17の上方に位置するように塔本体12の内部に配設されている。噴霧器18は、塔本体12の処理液導入口15を通して供給された処理液を充填材17に向けて噴霧することができるように構成されている。なお、吸収塔11としては、大量の処理液を循環しながら被処理ガス中の二酸化炭素を吸収するようにした洗浄塔(スクラバー)のような構造であってもよく、充填材17を備えていない、例えば、スプレー塔やプレート塔等であっても適用可能である。
【0032】
<再生装置>
再生装置20は、吸収装置10において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる装置である。再生装置20は、主として再生塔21及びそれに付帯する配管等により構成されている。
【0033】
[再生塔]
再生塔21は、塔本体22を備えている。再生塔21(塔本体22)の内部は、減圧手段として機能するポンプ53によって減圧されている。塔本体22は、断面円環状で鉛直方向に延び、上端側及び下端側がそれぞれ閉鎖された縦長容器状に形成されている。塔本体22の下部には、ストリッピングガス導入口23が設けられている。塔本体22の頂部には、回収ガス排出口24が設けられている。塔本体22の上部には、処理液導入口25が設けられている。塔本体22の底部には、処理液排出口26が設けられている。
【0034】
再生塔21は、充填材27をさらに備えている。充填材27は、塔本体22の上下方向中間に位置するように塔本体22の内部に配設されている。充填材27としては、前記充填材17と同様のものが用いられる。
【0035】
再生塔21は、噴霧器28をさらに備えている。噴霧器28は、充填材27の上方に位置するように塔本体22の内部に配設されている。噴霧器28は、塔本体22の処理液導入口25を通して供給された処理液を充填材27に向けて噴霧することができるように構成されている。
【0036】
<熱交換器>
熱交換器30は、吸収塔11と再生塔21との間に配設されている。熱交換器30は、伝熱管群入口31、伝熱管群出口32、ケーシング入口33、及びケーシング出口34を有し、伝熱管群入口31から伝熱管群出口32に向かって伝熱管群内を流れる流体と、ケーシング入口33からケーシング出口34に向かって流れる流体との間で熱交換を行わせる形式のものである。なお、両流体間で熱交換(加熱、冷却)を行わない場合もあり、この場合、熱交換器30は省略される。
【0037】
[ガス導入管/ガス排出管]
吸収塔11において、被処理ガス導入口13には、被処理ガス導入管41が接続され、被処理ガス排出口14には、被処理ガス排出管42が接続されている。再生塔21において、ストリッピングガス導入口23には、ストリッピングガス導入管43が接続され、回収ガス排出口24には、回収ガス排出管44が接続されている。
【0038】
[処理液供給管]
吸収塔11、熱交換器30及び再生塔21において、処理液排出口16と伝熱管群入口31とは、処理液供給管45によって接続され、伝熱管群出口32と処理液導入口25とは、処理液供給管46によって接続されている。再生塔21、熱交換器30及び吸収塔11において、処理液排出口26とケーシング入口33とは、処理液供給管47によって接続され、ケーシング出口34と処理液導入口15とは、処理液供給管48によって接続されている。
【0039】
[送風機、ポンプ]
被処理ガス導入管41には、送風機50が介設されている。被処理ガス排出管42には、ポンプ51が介設されている。ストリッピングガス導入管43には、ポンプ52が介設されている。回収ガス排出管44には、ポンプ53が介設されている。処理液供給管45には、ポンプ54が介設されている。処理液供給管47には、ポンプ55が介設されている。
【0040】
<液温調節手段(低温処理)>
処理液供給管48には、冷却器56が介設されている。冷却器56は、処理液供給管48を流れる処理液と熱媒との間での熱交換により、処理液を間接的に冷却する形式のものである。ここで、熱媒としては、例えば、空気や冷却水が用いられる。冷却器56は、熱媒の温度制御によって処理液の温度を10~30℃に調節する低温処理を行う液温調節手段として機能する。
【0041】
<液温調節手段(高温処理)>
ストリッピングガス導入管43の上流端は、例えば、空気や窒素ガス、水素等のストリッピングガスを供給するストリッピングガス供給源57に接続されている。ストリッピングガス導入管43には、ポンプ52の下流側に位置するように加熱器58が介設されている。加熱器58は、ストリッピングガス導入管43を流れるストリッピングガスと熱媒との間での熱交換により、ストリッピングガスを間接加熱する形式のものである。ここで、熱媒としては、例えば、ごみ焼却施設等で発生する排ガスや、ボイラで生成した水蒸気等が用いられる。加熱器58は、ストリッピングガスの温度制御によって処理液の温度を40~80℃に調節する高温処理を行う液温調節手段として機能する。加熱器58は、ストリッピングガスの温度制御によって処理液の温度を調節するので、二酸化炭素の放散が促進される温度となるように処理液の温度を容易に調節することができる。
【0042】
以上に述べたように構成されるガス回収設備1Aの作動について、
図1を用いて説明する。なお、
図1において、管路に付した矢印は、ガス又は液の通流方向を示す。
【0043】
ガス回収設備1Aにおいては、吸収装置10での吸収工程と、再生装置20での再生工程とが連続的に行われる。
【0044】
<吸収工程>
図1に示すように、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)は、送風機50により被処理ガス導入管41を介して吸収塔11の内部に送り込まれる。一方、後述する再生工程によって再生された再生塔21内の処理液は、ポンプ55により、処理液供給管47、熱交換器30、及び冷却器56が介設された処理液供給管48を介して吸収塔11における噴霧器18に供給される。
【0045】
吸収塔11の内部に送り込まれた被処理ガスは、充填材17を通過するように上昇し、噴霧器18から噴霧される処理液と気液接触する。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に効率良く吸収される。二酸化炭素を吸収した処理液は、吸収塔11の下部に貯留される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)は、ポンプ51により、被処理ガス排出管42を介して吸収塔11の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。なお、「二酸化炭素が除去された被処理ガス」とは、「含まれている二酸化炭素の全部が取り除かれた被処理ガス」と、「含まれている二酸化炭素部の一部が取り除かれた被処理ガス」との両方を包含するものである。
【0046】
吸収塔11の下部に貯留されている処理液は、ポンプ54により、処理液供給管45、熱交換器30及び処理液供給管46を介して再生塔21における噴霧器28に供給される。ここで、熱交換器30においては、処理液供給管45から処理液供給管46へと流れる処理液と、処理液供給管47から処理液供給管48へと流れる処理液との間で熱交換が行われる。これにより、処理液供給管47から処理液供給管48へと流れる処理液が温熱源となって、処理液供給管45から処理液供給管46へと流れる処理液が熱交換器30によって、例えば、40~80℃に加熱される。こうして、後述する再生工程を実施する前段階において、処理液を加熱することにより、再生工程での二酸化炭素の放散効率を向上することができる。
【0047】
<再生工程>
熱交換器30を介して加熱された処理液は、再生塔21における噴霧器28に供給される。再生塔21の内部は、減圧手段として機能するポンプ53によって減圧されている(減圧工程)。減圧下にある再生塔21の内部において、噴霧器28からは、熱交換器30によって加熱された処理液が充填材27に向けて噴霧される。これにより、噴霧された処理液が充填材27を通して落下する間に、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。一方、充填材27を通して落下した処理液は、再生塔21の下部に一旦貯留される。
【0048】
再生塔21の下部に貯留されている処理液に対しては、ストリッピングガス供給源57からのストリッピングガスが、ポンプ52によりストリッピングガス導入管43を介して送り込まれる(導入工程)。このとき、加熱器58によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)となるよう調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果も相俟って二酸化炭素の放散効率をより向上することができる。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部が放散される。
【0049】
再生装置20では、同一の再生塔21において、二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとを実施することにより、処理液から二酸化炭素を放散させる再生処理が行われる。従って、第一実施形態のガス回収設備1Aによれば、簡易な構成で再生処理を実施することができる。
【0050】
再生塔21内で放散された二酸化炭素は、再生塔21内に吹き込まれた若干のストリッピングガスと共に、ポンプ53により回収ガス排出管44を介して再生塔21の外部に排出される(排出工程)。排出された二酸化炭素は、必要に応じて有効利用される。
【0051】
上記のように、吸収工程においては、二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に吸収される。再生工程では、二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧により、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を放散させるとともに、処理液に対するストリッピングガスを用いたストリッピングにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を放散させる再生処理が行われる。従って、従来の水蒸気ストリッピングによる二酸化炭素の放散と比べて、吸収した二酸化炭素の放散に要するエネルギーを低く抑えつつ、二酸化炭素の回収効率を向上することができる。また、再生工程での処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとによる処理により、処理液に吸収されている二酸化炭素を確実に放散させることができるので、二酸化炭素を十分に吸収できる状態に処理液を再生することができる。
【0052】
再生工程にて再生された処理液は、ポンプ55により、処理液供給管47、熱交換器30、及び冷却器56が介設された処理液供給管48を介して吸収塔11における噴霧器18に供給される。ここで、熱交換器30においては、処理液供給管47から処理液供給管48へと流れる処理液と、処理液供給管45から処理液供給管46へと流れる処理液との間で熱交換が行われる。これにより、処理液供給管45から処理液供給管46へと流れる処理液が冷熱源となって、処理液供給管47から処理液供給管48へと流れる処理液が熱交換器30によって冷却される。熱交換器30によって冷却された処理液は、さらに冷却器56により、例えば、10~30℃に冷却される。
【0053】
第一実施形態のガス回収設備1Aにおいて、熱交換器30及び冷却器56は、吸収装置10における処理液を10~30℃に調節する低温処理を行い、熱交換器30及び加熱器58は、再生装置20における処理液を40~80℃に調節する高温処理を行う。これにより、処理液に対する二酸化炭素の吸収が10~30℃で行われ、処理液に対する二酸化炭素の放散が40~80℃で行われることになる。こうして、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散の温度差を比較的小さく抑えて、二酸化炭素の回収に必要なエネルギーの消費量を抑えることができる。特に、ストリッピングガスの導入や減圧操作による処理を併用することで、放散温度を低くし、二酸化炭素の回収に必要なエネルギーを削減することができる。また、処理液によっては、100℃以上の温度で二酸化炭素の放散を繰り返し行うと、劣化が進むが、100℃より低い、40~80℃の温度域で二酸化炭素の放散を行うことにより、処理液の劣化を抑えることができるとともに、処理液の揮発を抑制することもできる。なお、再生装置において、必ずしも処理液を加熱する必要はなく、再生工程の際の処理液の温度は、吸収工程の際の処理液の温度と同程度であってもよい。
【0054】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係るガス回収設備1Bについて、
図2及び
図3を用いて説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする(後述する第三実施形態についても同様とする。)。
【0055】
図2は、本発明の第二実施形態に係るガス回収設備の概略構成を示す模式図であって、減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を回収する状態図である。また、
図3は、本発明の第二実施形態に係るガス回収設備の概略構成を示す模式図であって、ストリッピングガスを用いたストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を回収する状態図である。
【0056】
図2に示すように、第二実施形態のガス回収設備1Bにおいて、再生装置20は、処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管44b及び第二回収ガス排出管44cを備えている。第一回収ガス排出管44b及び第二回収ガス排出管44cは、三方向切替弁40及び主回収ガス排出管44aを介して、再生塔21の回収ガス排出口24に接続されている。第一回収ガス排出管44bには、ポンプ53が、第二回収ガス排出管44cには、ポンプ59が、それぞれ介設されている。なお、後述するストリッピングにおいて、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部又は全部を、処理液の内部に送り込まれるストリッピングガスと共に第二回収ガス排出管44cを介して排出することができる場合は、ポンプ59を設けなくてもよい。
【0057】
三方向切替弁40は、減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、再生塔21の塔本体22から主回収ガス排出管44a及び第一回収ガス排出管44bを通して外部に排出する状態と、ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、再生塔21の塔本体22から主回収ガス排出管44a及び第二回収ガス排出管44cを通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段として機能する。
【0058】
<再生工程>
第二実施形態に係るガス回収設備1Bにおいて、再生工程は、まず、三方向切替弁40の切り替え動作により、
図2に示すように、主回収ガス排出管44aから第一回収ガス排出管44bへの流路を開く一方で、主回収ガス排出管44aから第二回収ガス排出管44cへの流路を閉じた状態で行われる。このような状態において、熱交換器30を介して加熱された処理液は、再生塔21における噴霧器28に供給される。再生塔21の内部は、減圧手段として機能するポンプ53によって減圧されている(減圧工程)。減圧下にある再生塔21の内部において、噴霧器28からは、熱交換器30によって加熱された処理液が充填材27に向けて噴霧される。これにより、噴霧された処理液が充填材27の表面を伝って落下する間に、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。一方、充填材27を通して落下した処理液は、再生塔21の下部に一旦貯留される。
【0059】
減圧塔21内で放散された二酸化炭素は、ポンプ53により主回収ガス排出管44aから第一回収ガス排出管44bを介して再生塔21の外部に排出される(排出工程)。排出された二酸化炭素は、高濃度であるので、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備に貯蔵され、必要に応じ有効利用される。
【0060】
次いで、三方向切替弁40の切り替え動作により、
図3に示すように、主回収ガス排出管44aから第一回収ガス排出管44bへの流路を閉じる一方で、主回収ガス排出管44aから第二回収ガス排出管44cへの流路を開いた状態とする。このような状態において、再生塔21の下部に貯留されている処理液に対し、ストリッピングガス供給源57からのストリッピングガスが、ポンプ52によりストリッピングガス導入管43を介して送り込まれる(導入工程)。このとき、加熱器58によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)に調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果とも相俟って二酸化炭素の放散効率をより向上することができる。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部が放散される。
【0061】
再生塔21内で放散された二酸化炭素は、再生塔21内に吹き込まれた若干のストリッピングガスと共に、ポンプ59により主回収ガス排出管44aから第二回収ガス排出管44cを介して再生塔21の外部に排出される(排出工程)。排出された二酸化炭素は、低濃度であるので、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。
【0062】
第二実施形態のガス回収設備1Bによれば、減圧により処理液から放散させた高濃度の二酸化炭素と、ストリッピングガスを用いたストリッピングにより処理液から放散させた低濃度の二酸化炭素とをそれぞれ分取して回収することができる。従って、回収した二酸化炭素を用途に応じて濃縮したり希釈したりする処理を省略又は簡素化することができる。特に、第二実施形態のガス回収設備1Bでは、同一の再生塔21を用いた上記再生工程により、高濃度の二酸化炭素と低濃度の二酸化炭素とを簡易な構成で分取・回収することができる。
【0063】
〔第三実施形態〕
図4は、本発明の第三実施形態に係るガス回収設備の概略構成を示す模式図である。
図4に示すように、第三実施形態のガス回収設備1Cにおいて、再生装置60は、吸収装置10において二酸化炭素を吸収した処理液が供給される減圧塔61と、減圧塔61と並設されるストリッピング塔71とを備えている。
【0064】
[減圧塔]
減圧塔61は、塔本体62を備えている。減圧塔61(塔本体62)の内部は、減圧手段として機能するポンプ91によって減圧されている。塔本体62は、断面円環状で鉛直方向に延び、上端側及び下端側がそれぞれ閉鎖された縦長容器状に形成されている。塔本体62の頂部には、回収ガス排出口64が設けられている。塔本体62の上部には、処理液導入口65が設けられている。塔本体62の底部には、処理液排出口66が設けられている。
【0065】
減圧塔61は、充填材67をさらに備えている。充填材67は、塔本体62の上下方向中間に位置するように塔本体62の内部に配設されている。充填材67としては、前記充填材17,27と同様のものが用いられる。
【0066】
減圧塔61は、噴霧器68をさらに備えている。噴霧器68は、充填材67の上方に位置するように塔本体62の内部に配設されている。噴霧器68は、塔本体62の処理液導入口65を通して供給された処理液を充填材67に向けて噴霧することができるように構成されている。
【0067】
減圧塔61において、回収ガス排出口64には、回収ガス排出管81が接続されている。減圧塔61及び熱交換器30において、処理液導入口65と伝熱管群出口32とは、処理液供給管82によって接続されている。
【0068】
[ストリッピング塔]
ストリッピング塔71は、断面円環状で鉛直方向に延び、上端側及び下端側がそれぞれ閉鎖された縦長容器状に形成されている。ストリッピング塔71の下部には、ストリッピングガス導入口73が設けられている。ストリッピング塔71の頂部には、回収ガス排出口74が設けられている。ストリッピング塔71の上部には、処理液導入口75が設けられている。ストリッピング塔71の底部には、処理液排出口76が設けられている。
【0069】
ストリッピング塔71において、ストリッピングガス導入口73には、ストリッピングガス導入管83が接続され、回収ガス排出口74には、回収ガス排出管84が接続されている。減圧塔61及びストリッピング塔71において、処理液排出口66と処理液導入口75とは、処理液供給管85によって接続されている。ストリッピング塔71及び熱交換器30において、処理液排出口76とケーシング入口33とは、処理液供給管86によって接続されている。
【0070】
回収ガス排出管81には、ポンプ91が介設されている。回収ガス排出管84には、ポンプ92が介設されている。処理液供給管85には、ポンプ93が介設されている。処理液供給管86には、ポンプ94が介設されている。なお、後述するストリッピングにおいて、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部又は全部を、処理液の内部に送り込まれるストリッピングガスと共に回収ガス排出管84を介して排出することができる場合は、ポンプ92を設けなくてもよい。
【0071】
以上に述べたように構成されるガス回収設備1Cの作動について、
図4を用いて説明する。なお、
図4において、管路に付した矢印は、ガス又は液の通流方向を示す。
【0072】
ガス回収設備1Cにおいても、前記ガス回収設備1Aと同様に、吸収装置10での吸収工程と、再生装置60での再生工程とが連続的に行われる。
【0073】
<吸収工程>
図4に示すように、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)は、送風機50により被処理ガス導入管41を介して吸収塔11の内部に送り込まれる。一方、後述する再生工程によって再生されたストリッピング塔71内の処理液は、ポンプ94により、処理液供給管86、熱交換器30、及び冷却器56が介設された処理液供給管48を介して吸収塔11における噴霧器18に供給される。
【0074】
吸収塔11の内部に送り込まれた被処理ガスは、充填材17を通過するように上昇し、噴霧器18から噴霧される処理液と気液接触する。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に効率良く吸収される。二酸化炭素を吸収した処理液は、吸収塔11の下部に貯留される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)は、ポンプ51により、被処理ガス排出管42を介して吸収塔11の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。
【0075】
吸収塔11の下部に貯留されている処理液は、ポンプ54により、処理液供給管45、熱交換器30及び処理液供給管82を介して減圧塔61における噴霧器68に供給される。ここで、熱交換器30においては、処理液供給管45から処理液供給管82へと流れる処理液と、処理液供給管86から処理液供給管48へと流れる処理液との間で熱交換が行われる。これにより、処理液供給管86から処理液供給管48へと流れる処理液が温熱源となって、処理液供給管45から処理液供給管82へと流れる処理液が熱交換器30によって、例えば、40~80℃に加熱される。こうして、後述する再生工程を実施する前段階において、処理液を加熱することにより、再生工程での二酸化炭素の放散効率を向上することができる。
【0076】
<再生工程>
熱交換器30を介して加熱された処理液は、減圧塔61における噴霧器68に供給される。減圧塔61の内部は、減圧手段として機能するポンプ91によって減圧されている(減圧工程)。減圧下にある減圧塔61の内部において、噴霧器68からは、熱交換器30によって加熱された処理液が充填材67に向けて噴霧される。これにより、噴霧された処理液が充填材67を通して落下する間に、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。一方、充填材67を通して落下した処理液は、減圧塔61の下部に一旦貯留される。
【0077】
減圧塔61内で放散された二酸化炭素は、ポンプ91により回収ガス排出管81を介して減圧塔61の外部に排出される(排出工程)。排出された二酸化炭素は、比較的高濃度であるので、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備で貯蔵され、必要に応じ有効利用される。
【0078】
減圧塔61の下部に貯留されている処理液は、ポンプ93により処理液供給管85を介してストリッピング塔71に供給される。ストリッピング塔71に供給された処理液は、ストリッピング塔71の下部に一旦貯留される。
【0079】
ストリッピング塔71の下部に貯留されている処理液に対しては、ストリッピングガス供給源57からのストリッピングガスが、ポンプ52によりストリッピングガス導入管83を介して送り込まれる(導入工程)。このとき、加熱器58によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)となるよう調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果も相俟って二酸化炭素の放散効率をより向上することができる。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素が放散される。
【0080】
ストリッピング塔71内で放散された二酸化炭素は、ストリッピング塔71内に吹き込まれた若干のストリッピングガスと共に、ポンプ92により回収ガス排出管84を介してストリッピング塔71の外部に排出される(排出工程)。排出された二酸化炭素は、比較的低濃度であるので、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。
【0081】
再生装置60では、減圧塔61において、二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧を実施し、ストリッピング塔71において、二酸化炭素を吸収した処理液に対するストリッピングガスを用いたストリッピングを実施することにより、処理液から二酸化炭素を放散させる再生処理が行われる。
【0082】
第三実施形態のガス回収設備1Cによれば、第一実施形態のガス回収設備1Aと同様の作用効果を得ることができるのは言うまでもない。さらに、第三実施形態のガス回収設備1Cによれば、減圧塔61からは比較的高濃度の二酸化炭素を、ストリッピング塔71からは比較低濃度の二酸化炭素を、個別に分けて回収することができるので、回収した二酸化炭素を用途に応じて濃縮したり希釈したりする処理を省略又は簡素化することができる。
【0083】
再生工程にて再生された処理液は、ポンプ94により、処理液供給管86、熱交換器30及び冷却器56が介設された処理液供給管48を介して吸収塔11における噴霧器18に供給される。ここで、熱交換器30においては、処理液供給管86から処理液供給管48へと流れる処理液と、処理液供給管45から処理液供給管82へと流れる処理液との間で熱交換が行われる。これにより、処理液供給管45から処理液供給管82へと流れる処理液が冷熱源となって、処理液供給管86から処理液供給管48へと流れる処理液が熱交換器30によって冷却される。熱交換器30によって冷却された処理液は、さらに冷却器56により、例えば、10~30℃に冷却される。
【0084】
第三実施形態のガス回収設備1Cにおいても、熱交換器30及び冷却器56は、吸収装置10における処理液を10~30℃に調節する低温処理を行い、熱交換器30及び加熱器58は、再生装置60における処理液を40~80℃に調節する高温処理を行う。これにより、処理液に対する二酸化炭素の吸収が10~30℃で行われ、処理液に対する二酸化炭素の放散が40~80℃で行われることになる。こうして、第三実施形態のガス回収設備1Cにおいても、二酸化炭素の回収に必要なエネルギーの消費量を抑えることができるとともに、処理液の劣化や揮発を抑えることができる。
【0085】
以上、本発明のガス回収設備、及びガス回収方法について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0086】
例えば、上記各実施形態において、
図1~
図4に示すように、吸収塔11、再生塔21、減圧塔61、及びストリッピング塔71の下部に伝熱ジャケット100,101を装着する態様もある。伝熱ジャケット100,101においては、図示されない熱媒導入口から導入された熱媒が、当該伝熱ジャケット100,101の内部を通って図示されない熱媒排出口から排出される間に、熱媒によって塔内の処理液を間接的に冷却したり、加熱したりすることができるようになっている。ここで、熱媒としては、冷却する場合、例えば、空気や冷却水が用いられ、加熱する場合、例えば、ごみ焼却施設等で発生する排ガスや、ボイラで生成した水蒸気等が用いられる。伝熱ジャケット100は、熱媒の温度制御によって処理液の温度を10~30℃に調節する低温処理を行う液温調節手段として機能する。伝熱ジャケット101は、熱媒の温度制御によって処理液の温度を40~80℃に調節する高温処理を行う液温調節手段として機能する。なお、伝熱ジャケット100,102を塔内部に設置し、塔内の処理液を直接的に冷却したり加熱したりすることで冷却効率や加熱効率を高めることが好ましい。
【0087】
上記各実施形態では、再生工程において、放散効率を向上するために、処理液を加熱する態様例を示したが、必ずしも処理液を加熱する必要はなく、再生工程の際の処理液の温度が、吸収工程の際の処理液の温度と同程度であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のガス回収設備、及びガス回収方法は、バイオガスや燃焼ガス等の二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1A,1B ガス回収設備
10 吸収装置
20 再生装置
30 熱交換器(液温調節手段)
40 三方向切替弁(切替手段)
43 ストリッピングガス導入管
44b 第一回収ガス排出管
44c 第二回収ガス排出管
53 ポンプ(減圧手段)
56 冷却器(液温調節手段)
58 加熱器(液温調節手段)
60 再生装置
61 減圧塔
71 ストリッピング塔
83 ストリッピングガス導入管
85 処理液供給管(処理液供給手段)
93 ポンプ(処理液供給手段)
91 ポンプ(減圧手段)