IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社堀場エステックの特許一覧

特許7498545吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法
<>
  • 特許-吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法 図1
  • 特許-吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法 図2
  • 特許-吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法 図3
  • 特許-吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法 図4
  • 特許-吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法 図5
  • 特許-吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法 図6
  • 特許-吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法 図7
  • 特許-吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20240605BHJP
【FI】
G01N21/3504
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019089177
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020183925
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】志水 徹
(72)【発明者】
【氏名】坂口 有平
(72)【発明者】
【氏名】南 雅和
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066477(JP,A)
【文献】特開2017-040655(JP,A)
【文献】特表2018-513968(JP,A)
【文献】特開2001-349812(JP,A)
【文献】特開2003-172700(JP,A)
【文献】特開2006-351318(JP,A)
【文献】特開2020-180912(JP,A)
【文献】特開2016-035385(JP,A)
【文献】特開2013-113664(JP,A)
【文献】特開平10-062339(JP,A)
【文献】特開昭54-017898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01J 3/42 - G01J 3/433
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/364
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定波長の光を吸収する測定対象ガス及び干渉ガスを含む混合ガスに光を照射する光源と、
前記混合ガスを透過した前記測定波長の光の強度を検出する検出器と、
光を照射した前記混合ガスの全圧を測定する全圧センサと、
前記混合ガス中に含まれる干渉ガスの分圧と、前記測定波長における前記干渉ガスの吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶する干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部と、
前記全圧センサで測定された全圧に基づき、光を照射した前記混合ガス中における前記干渉ガスの分圧を推定する干渉ガス分圧推定部と、
前記干渉ガス分圧推定部で推定された干渉ガス推定分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき、前記測定波長における前記干渉ガスの吸光度に変換する干渉ガス吸光度変換部と、
前記検出器の出力値と前記干渉ガス吸光度変換部で変換された干渉ガス吸光度とに基づき、前記測定波長における前記測定対象ガスの吸光度を算出する測定対象ガス吸光度算出部とを備えることを特徴とする吸光分析システム。
【請求項2】
前記干渉ガス分圧推定部が、前記全圧センサで測定された全圧を前記干渉ガスの分圧と推定するものである請求項1記載の吸光分析システム。
【請求項3】
前記ガス中に含まれる測定対象ガスの分圧と吸光度との関係を示す測定対象ガス分圧-吸光度関係データを記憶する測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部と、
前記測定対象ガス吸光度算出部で算出された測定対象ガス吸光度を、前記測定対象ガス分圧-吸光度関係データに基づき前記測定対象ガスの分圧に変換する測定対象ガス分圧変換部をさらに備える請求項1又は2のいずれかに記載の吸光分析システム。
【請求項4】
前記全圧センサで測定された全圧と前記測定対象ガス分圧変換部で変換された測定対象ガス分圧とに基づき、前記干渉ガスの分圧を算出する干渉ガス分圧算出部をさらに備える請求項3記載の吸光分析システム。
【請求項5】
前記干渉ガス分圧算出部で算出された干渉ガス算出分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき前記干渉ガスの新たな吸光度に変換する第2の干渉ガス吸光度変換部をさらに備えるものであり、
前記測定対象ガス吸光度算出部が、前記検出器の出力値と前記第2の干渉ガス吸光度変換部で変換された新たな干渉ガス吸光度とに基づき、前記測定対象ガスの新たな吸光度を算出するものである請求項4記載の吸光分析システム。
【請求項6】
所定の測定波長の光を吸収する測定対象ガス及び干渉ガスを含む混合ガスに光を照射する光源と、前記混合ガスを透過した前記測定波長の光の強度を検出する検出器と、光を照射した前記混合ガスの全圧を測定する全圧センサとを備える吸光分析システムに用いられるプログラムであって、
前記混合ガス中に含まれる干渉ガスの分圧と、前記測定波長における前記干渉ガスの吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶する干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部と、
前記全圧センサで測定された全圧に基づき、光を照射した前記混合ガス中における前記干渉ガスの分圧を推定する干渉ガス分圧推定部と、
前記干渉ガス分圧推定部で推定された干渉ガス推定分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき、前記測定波長における前記干渉ガスの吸光度に変換する干渉ガス吸光度変換部と、
前記検出器の出力値と前記干渉ガス吸光度変換部で変換された干渉ガス吸光度とに基づき、前記測定波長における前記測定対象ガスの吸光度を算出する測定対象ガス吸光度算出部とを備えることを特徴とする吸光分析システム用プログラム。
【請求項7】
所定の測定波長の光を吸収する測定対象ガス及び干渉ガスを含む混合ガスに光を照射する光源と、前記混合ガスを透過した前記測定波長の光の強度を検出する検出器と、光を照射した前記混合ガスの全圧を測定する全圧センサとを備える吸光分析システムに用いられるものであって、
前記混合ガス中に含まれる前記干渉ガスの分圧と、前記測定波長における前記干渉ガスの吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶する干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部と、
前記全圧センサで測定された全圧に基づき、光を照射した前記混合ガス中における前記干渉ガスの分圧を推定する干渉ガス分圧推定部と、
前記干渉ガス分圧推定部で推定された干渉ガス推定分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき、前記測定波長における前記干渉ガスの吸光度に変換する干渉ガス吸光度変換部と、
前記検出器の出力値と前記干渉ガス吸光度変換部で変換された干渉ガス吸光度とに基づき、前記測定波長における前記測定対象ガスの吸光度を算出する測定対象ガス吸光度算出部とを備えることを特徴とする吸光分析装置。
【請求項8】
所定の測定波長の光を吸収する測定対象ガス及び干渉ガスを含む混合ガスに光を照射する光源と、前記混合ガスを透過した前記測定波長の光の強度を検出する検出器と、光を照射した前記混合ガスの全圧を測定する全圧センサとを備える吸光分光システムを用いて前記ガス中に含まれる測定対象ガスの吸光度を測定する吸光度測定方法であって、
光を照射した前記混合ガス中に含まれる前記干渉ガスの分圧と、前記測定波長における前記干渉ガスの吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶する第1ステップと、
前記全圧センサで測定された前記混合ガスの全圧と、予測される前記干渉ガスの濃度とに基づき、光を照射した前記混合ガス中における前記干渉ガスの分圧を推定する第2ステップと、
前記第2ステップで推定された干渉ガス推定分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき、前記測定波長における前記干渉ガスの吸光度に変換する第3ステップと、
前記第3ステップで変換された干渉ガス吸光度と前記検出器の出力値とに基づき、前記測定波長における前記測定対象ガスの吸光度を算出する第4ステップとを備えることを特徴とする吸光度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸光分析システム、吸光分析システム用プログラム、吸光分析装置、及び、吸光度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセスにおける成膜装置のチャンバ等の供給先に供給されるガスに含まれる測定対象ガスの濃度を測定するものとして、ガスを透過する光の強度を検出する検出器と、ガスの全圧を測定する全圧センサとを備えた吸光分析システムがある。
【0003】
なお、前記検出器は、例えば、流路を流れるガスに光を照射する光源と、光源から射出された光の波長のうちで測定対象ガスが吸収する波長(以下、測定波長ともいう)の光を透過するフィルタと、ガスを透過した測定波長の光の強度を検出する受光部とを備えた構造になっている。
【0004】
ところで、前記従来の吸光分析システムによって分析されるガス中には、測定対象ガス以外の他のガスとして測定波長の光を吸収する干渉ガスが含まれていることがある。この場合、検出器は、測定対象ガスのみならず干渉ガスも吸収した測定波長の光の強度を検出することになるため、測定対象ガスの濃度を正確に測定できなくなる。
【0005】
このため、前記従来の吸光分析システムにおいては、特許文献1に示すように、複数の測定波長の光の強度を検出できる検出器を用い、当該検出器で検出される各測定波長の光の強度に関する連立方程式を解いて、測定対象ガス及び干渉ガスの濃度を算出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-101416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数の測定波長の光の強度を検出する検出器を用いなくても、干渉ガスを含むガスを透過した光の強度から測定対象ガスの濃度を精度良く測定できる吸光分析システムを提供することを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る吸光分析システムは、ガスを透過した光の強度を検出する検出器と、前記ガスの全圧を測定する全圧センサと、前記ガス中に測定対象ガスと共に含まれる干渉ガスの分圧と吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶する干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部と、前記全圧センサで測定された全圧に基づき、前記干渉ガスの分圧を推定する干渉ガス分圧推定部と、前記干渉ガス分圧推定部で推定された干渉ガス推定分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき前記干渉ガスの吸光度に変換する干渉ガス吸光度変換部と、前記検出器の出力値と前記干渉ガス吸光度変換部で変換された干渉ガス吸光度とに基づき、前記測定対象ガスの吸光度を算出する測定対象ガス吸光度算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
このようなものであれば、全圧センサで測定された全圧に基づき干渉ガスの分圧を推定し、当該干渉ガス推定分圧を、予め記憶した干渉ガスの分圧と吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき干渉ガスの吸光度に変換し、その干渉ガス吸光度と検出器の出力値とに基づき、測定対象ガスの吸光度を算出するようにしたので、複数の測定波長の光の強度を検出する検出器を用いなくても、検出器の出力値から測定対象ガスの濃度を比較的精度良く算出することができる。
【0010】
なお、半導体製造プロセスにおいては、供給先に対し、干渉ガスの濃度に比べて測定対象ガスの濃度が低いガスを供給することが多く、この場合、全圧センサで測定される全圧を近似的に干渉ガスの分圧と推定することができる。なお、測定対象ガスの濃度を算出するにあたって、このような近似を行ったとしても、当該近似による誤差の影響は、検出器で検出される光の強度に対する干渉ガスの影響による誤差よりも小さくなるため、結果として、測定対象ガスの濃度を精度良く算出できる。
【0011】
ここで、干渉ガス分圧-吸光度関係データにおける吸光度は、吸光分析システムが備える検出器で検出された出力値に基づき算出される干渉ガスの吸光度を示している。
【0012】
そこで、前記干渉ガス分圧推定部が、前記全圧センサで測定された全圧を前記干渉ガスの分圧と推定するように構成してもよい。
【0013】
なお、前記吸光分析システムの具体的な構成としては、前記ガス中に含まれる測定対象ガスの分圧と吸光度との関係を示す測定対象ガス分圧-吸光度関係データを記憶する測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部と、前記測定対象ガス吸光度算出部で算出された前記測定対象ガス吸光度を、前記測定対象ガス分圧-吸光度関係データに基づき前記測定対象ガスの分圧に変換する測定対象ガス分圧変換部をさらに備えるものが挙げられる。また、前記全圧センサで測定された全圧と前記測定対象ガス分圧変換部で変換された測定対象ガス分圧とに基づき、前記干渉ガスの分圧を算出する干渉ガス分圧算出部をさらに備えるものが挙げられる。
【0014】
ここで、測定対象ガス分圧-吸光度関係データにおける吸光度は、吸光分析システムが備える検出器で検出された出力値に基づき算出される測定対象ガスの吸光度を示している。
【0015】
また、前記吸光分析システムにおいて測定対象ガスの濃度を更に精度良く算出したい場合には、前記干渉ガス分圧算出部で算出された干渉ガス算出分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき前記干渉ガスの新たな吸光度に変換する第2の干渉ガス吸光度変換部を備え、前記測定対象ガス吸光度算出部が、前記検出器の出力値と前記第2の干渉ガス吸光度変換部で変換された新たな干渉ガス吸光度とに基づき、前記測定対象ガスの新たな吸光度を算出するようにすればよい。
【0016】
このようなものであれば、干渉ガス分圧算出部で算出された干渉ガス算出分圧は、干渉ガス分圧推定部で推定された干渉ガス推定分圧よりも実際の干渉ガス分圧に近づいたものとなる。このため、干渉ガス分圧算出部で算出された干渉ガス算出分圧を、干渉ガスの新たな吸光度に変換し、この新たな干渉ガス吸光度に基づき測定対象ガスの新たな吸光度を算出し直すことにより、より精度の高い測定対象ガスの濃度を算出することができる。
【0017】
また、本発明に係る吸光分析システム用プログラムは、ガスを透過した光の強度を検出する検出器と、前記ガスの全圧を測定する全圧センサとを備える吸光分析システムに用いられるプログラムであって、前記ガス中に測定対象ガスと共に含まれる干渉ガスの分圧と吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶する干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部と、前記全圧センサで測定された全圧に基づき、前記干渉ガスの分圧を推定する干渉ガス分圧推定部と、前記干渉ガス分圧推定部で推定された干渉ガス推定分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき前記干渉ガスの吸光度に変換する干渉ガス吸光度変換部と、前記検出器の出力値と前記干渉ガス吸光度変換部で変換された干渉ガス吸光度とに基づき、前記測定対象ガスの吸光度を算出する測定対象ガス吸光度算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る吸光分析装置は、ガスを透過した光の強度を検出する検出器と、前記ガスの全圧を測定する全圧センサとを備える吸光分析システムに用いられるものであって、前記ガス中に測定対象ガスと共に含まれる干渉ガスの分圧と吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶する干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部と、前記全圧センサで測定された全圧に基づき、前記干渉ガスの分圧を推定する干渉ガス分圧推定部と、前記干渉ガス分圧推定部で推定された干渉ガス推定分圧を、前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき前記干渉ガスの吸光度に変換する干渉ガス吸光度変換部と、前記検出器の出力値と前記干渉ガス吸光度変換部で変換された干渉ガス吸光度とに基づき、前記測定対象ガスの吸光度を算出する測定対象ガス吸光度算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る吸光度測定方法は、ガスを透過した光の強度を検出する検出器と、前記ガスの全圧を測定する全圧センサとを備える吸光分光システムを用いて前記ガス中に含まれる測定対象ガスの吸光度測定方法であって、前記ガス中に測定対象ガスと共に含まれる干渉ガスの分圧と吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶する第1ステップと、前記全圧センサで測定された全圧と、予測される前記干渉ガスの濃度とに基づき、前記干渉ガスの分圧を推定する第2ステップと、前記第2ステップで推定された干渉ガス推定分圧を前記干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき前記干渉ガスの吸光度に変換する第3ステップと、前記第3ステップで変換された干渉ガス吸光度と前記検出器の出力値とに基づき、前記測定対象ガスの吸光度を算出する第4ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した吸光分析システムによれば、複数の測定波長の光の強度を検出する検出器を用いなくても、干渉ガスを含むガスを透過した光の強度から測定対象ガスの濃度を精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る吸光分析システムの全体構造を示す模式図である。
図2】実施形態に係る吸光分析システムの検出器の構造を示す模式図である。
図3】実施形態に係る吸光分析システムの検出器の変形例の構造を示す模式図である。
図4】実施形態に係る吸光分析装置の機能を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る吸光分析装置に用いられる干渉ガス分圧-吸光度関係データの例を模式的に示すグラフである。
図6】実施形態に係る吸光分析装置の動作を示すフローチャートである。
図7】その他の実施形態に係る吸光分析装置の機能を示すブロック図である。
図8】その他の実施形態に係る吸光分析装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る吸光分析システムを図面に基づいて説明する。
【0023】
本発明に係る吸光分析システムは、例えば半導体製造ライン等に組み込まれて供給先に供給されるガスに干渉ガスと共に含まれる測定対象ガスの濃度を測定するためのものである。
【0024】
本実施形態に係る吸光分析システム100は、図1に示すように、チャンバCH(供給先)にガスを供給するための流路Lと、流路Lに設置される全圧センサ10と、流路Lの全圧センサ10よりも下流側に設置される検出器20と、吸光分析装置Cと、を備えている。
【0025】
前記全圧センサ10は、流路Lを流れるガスの全圧を測定するものである。
【0026】
前記検出器20は、流路Lを流れるガスを透過する光の強度を検出するものである。検出器20は、具体的には、図2に示すように、流路Lを流れるガスに光を照射する光源21と、光源21から射出された光の波長のうちで測定対象ガスが吸収する波長(以下、測定波長ともいう)の光を透過するフィルタ22と、フィルタ22を透過した測定波長の光の強度を検出する受光部23と、を備えている。なお、検出器20は、流路Lにおける光源21から射出された光が透過する領域を測定領域Zとした場合、測定領域Zの一方側に光源21が配置され、測定領域Zの他方側にフィルタ22及び受光部23が配置されている。また、光源21と流路Lとの間、及び、フィルタ22と流路Lとの間には、それぞれ窓部材24が設けられている。これにより、光源21、フィルタ22及び受光部23が、流路Lを流れるガスと直接接触しないようになっている。そして、検出器20は、測定領域Zに存在するガスを透過した光の強度を示す受光部23の出力信号を出力値として出力する。
【0027】
なお、前記検出器20は、図3に示すように、測定領域Zの他方側にフィルタ22及び受光部23に加えて、材料ガスが吸収しない波長の光を透過するリファレンス用フィルタ22rと、リファレンス用フィルタ22rを透過した波長の光の強度を検出するリファレンス用受光部23rと、を備えるものであってもよい。この場合、検出器20の出力値として、受光部23の出力信号とリファレンス用受光部23rの出力信号との比を用いることもできる。
【0028】
前記吸光分析装置Cは、測定対象ガスの濃度等を算出するものであり、全圧センサ10と検出器20とに少なくとも接続されている。具体的には、CPU、メモリ、ADコンバータ、DAコンバータ、入力手段等を有したコンピュータであり、前記メモリに格納されたプログラムをCPUによって実行することによって、図4に示すように、干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部C1、干渉ガス分圧推定部C2、干渉ガス吸光度変換部C3、測定対象ガス吸光度算出部C4、測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部C5、測定対象ガス分圧変換部C6、測定対象ガス濃度算出部C7等としての機能を発揮するように構成されている。
【0029】
前記干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部C1は、干渉ガスの分圧と吸光度との関係を示す干渉ガス分圧-吸光度関係データを記憶するものである。例えば、干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部C1は、吸光分析システム100の出荷前や出荷後の測定前等に、流路Lに既知の濃度の干渉ガスを流し、この時、検出器20の測定領域Zに存在する干渉ガスの分圧と吸光度との関係を示すデータを予め取得し、当該データを干渉ガス分圧-吸光度関係データとして記憶するものである。なお、干渉ガスの分圧は、全圧センサ10で測定される全圧と干渉ガスの既知の濃度とに基づいて算出すればよい。また、干渉ガスの吸光度は、検出器20で検出される出力値に基づき算出すればよい。因みに、干渉ガス分圧-吸光度関係データは、例えば、図5に示すように、干渉ガス分圧と吸光度とを縦軸・横軸とし、干渉ガス分圧と吸光度との関係を示すグラフとして取得される。なお、干渉ガス分圧-吸光度関係データは、吸光分析システム100の出荷前に検出器20の校正に用いる校正ガスとして干渉ガスを使用した場合には、当該校正に用いた検量線データと一致する。なお、干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部C1には、入力部を介して干渉ガス分圧-吸光度関係データを入力できるようになっている。
【0030】
前記干渉ガス分圧推定部C2は、流路Lにガスを流した場合に、全圧センサ10で測定された全圧から干渉ガスの分圧を推定するものである。例えば、ガス中に含まれる測定対象ガスの濃度が低い場合には、干渉ガス分圧推定部C2は、全圧センサ10で検出される全圧を、干渉ガスの分圧と推定する。因みに、ガス中に含まれる測定対象ガスの濃度が低い場合とは、例えば、ガス中に測定対象ガスが数%含まれるような場合を示している。この場合、推定された干渉ガス分圧は、測定対象ガスの分圧による誤差を含む。また、ガス中に含まれる測定対象ガスの濃度が低いとはいえない場合には、干渉ガス分圧推定部C2は、予測される干渉ガスの濃度と前記全圧とから干渉ガスの分圧を推定する。
【0031】
前記干渉ガス吸光度変換部C3は、前記干渉ガス分圧推定部C2で推定された干渉ガス推定分圧を、干渉ガス分圧-吸光度関係データに基づき干渉ガスの吸光度に変換するものである。
【0032】
前記測定対象ガス吸光度算出部C4は、流路Lにガスを流した場合に、検出器20の出力値と干渉ガス吸光度変換部C3で変換された干渉ガス吸光度とに基づき、測定対象ガスの吸光度を算出するものである。具体的には、測定対象ガス吸光度算出部C4は、検出器20の出力値から算出される吸光度から干渉ガス吸光度を差し引いた値を、測定対象ガス吸光度とする。
【0033】
前記測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部C5は、測定対象ガスの分圧と吸光度との関係を示す測定対象ガス分圧-吸光度関係データを記憶するものである。例えば、測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部C5は、吸光分析システム100の出荷前や出荷後の測定前等に、流路Lに既知の濃度の測定対象ガスを流し、この時、検出器20の測定領域Zに存在する測定対象ガスの分圧と吸光度との関係を示すデータを予め取得し、当該データを測定対象ガス分圧-吸光度関係データとして記憶するものである。なお、測定対象ガスの分圧は、全圧センサ10で測定される全圧と測定対象ガスの既知の濃度とに基づいて算出すればよい。また、測定対象ガスの吸光度は、検出器20で検出される出力値に基づき算出すればよい。なお、測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部C5には、入力部を介して測定対象ガス分圧-吸光度関係データを入力できるようになっている。
【0034】
前記測定対象ガス分圧変換部C6は、測定対象ガス吸光度算出部C4で算出された測定対象ガス吸光度を測定対象ガスの分圧に変換するものである。具体的には、測定対象ガス分圧変換部C6は、測定対象ガス吸光度を測定対象ガス分圧-吸光度関係データに基づき測定対象ガスの分圧に変換する。
【0035】
前記測定対象ガス濃度算出部C7は、全圧センサ10で測定された全圧10と、測定対象ガス分圧変換部C6で変換された測定対象ガス分圧と、に基づき測定対象ガスの濃度を算出し、表示部に表示するものである。
【0036】
次に、本実施形態に係る吸光分析装置Cの動作を説明する。
【0037】
先ず、流路Lにガスを流した状態で、吸光分析装置Cに測定開始信号が入力されると、干渉ガス分圧推定部C2が、全圧センサ10で測定される全圧を示す全圧信号を受付ける(ステップS1)。そして、干渉ガス分圧推定部C2は、受け付けた全圧信号が示す圧力に基づいて前記ガスに含まれる干渉ガスの分圧を推定する(ステップS2)。なお、ステップS2において、前記ガスに含まれる測定対象ガスの濃度が低い場合には、受け付けた全圧信号が示す圧力を前記ガスに含まれる干渉ガスの分圧と推定してもよい。
【0038】
次に、干渉ガス吸光度変換部C3が、干渉ガス分圧推定部C2で推定された干渉ガス推定分圧を、干渉ガス分圧-吸光度関係データを参照して干渉ガスの吸光度に変換する(ステップS3)。
【0039】
次に、測定対象ガス吸光度算出部C4が、検出器20の出力値から算出される吸光度を示すガス吸光度信号を受付ける(ステップS4)。そして、測定対象ガス吸光度算出部C4は、ガス吸光度信号が示すガス吸光度と干渉ガス吸光度変換部C3で変換された干渉ガス吸光度との差を、測定対象ガスの吸光度とみなす(ステップS5)。
【0040】
次に、測定対象ガス分圧変換部C6が、測定対象ガス吸光度算出部C4で算出された測定対象ガス吸光度を、測定対象ガス分圧-吸光度関係データを参照して測定対象ガス分圧へ変換する(ステップS6)。
【0041】
そして、測定対象ガス濃度算出部C7は、全圧センサ10で測定された全圧と測定対象ガス分圧変換部C6で変換された測定対象ガス分圧とに基づき、測定対象ガス濃度を算出する(ステップS7)。なお、測定対象ガス濃度算出部C7は、算出した測定対象ガス濃度を表示部に表示する(ステップS8)。
【0042】
<その他の実施形態> 前記実施形態における吸光分析装置Cの変形例として、干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部C1、干渉ガス分圧推定部C2、干渉ガス吸光度変換部C3、測定対象ガス吸光度算出部C4、測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部C5、測定対象ガス分圧変換部C6、測定対象ガス濃度算出部C7としての機能に加えて、干渉ガス分圧算出部C8、第2の干渉ガス吸光度変換部C9、変換回数カウント部C10、カウント回数判定部C11としての機能を更に発揮するものが挙げられる。
【0043】
前記干渉ガス分圧算出部C8は、全圧センサ10で測定された全圧と測定対象ガス分圧変換部C6で変換された測定対象ガス分圧とに基づき、干渉ガス分圧を算出するものである。具体的には、干渉ガス分圧算出部C8は、全圧と測定対象ガス分圧との差を、干渉ガス分圧とする。
【0044】
前記第2の干渉ガス吸光度変換部C9は、干渉ガス分圧算出部C8で算出された干渉ガス分圧を干渉ガス分圧-吸光度関係データを参照して干渉ガスの新たな吸光度に変換するものである。
【0045】
前記変換回数カウント部C10は、干渉ガス吸光度変換部C3及び第2の干渉ガス吸光度変換部C9における干渉ガス吸光度へ変換した回数をカウントするものである。
【0046】
前記カウント回数判定部C11は、変換回数カウント部C10のカウント回数が設定回数に達したか否かを判定するものである。具体的には、カウント回数判定部C11は、カウント回数が2回以上の予め設定された設定回数に達したか否かを判定する。
【0047】
次に、前記その他の実施形態に係る吸光分析装置Cの動作を説明する。
【0048】
本実施形態においては、前記実施形態の吸光分析装置Cの動作におけるステップS3とステップS4との間で、干渉ガス吸光度へ変換した回数をカウントする(ステップS9)。また、本実施形態においては、前記実施形態の吸光分析装置Cの動作におけるステップS6とステップS7との間で、干渉ガス吸光度へ変換した回数(カウント回数)が設定回数に達したか否かを判定する(ステップS10)。
【0049】
そして、干渉ガス吸光度へ変換した回数が設定回数に達したと判断した場合には、ステップS7、ステップS8へと進み測定対象ガス濃度を表示部に表示する。
【0050】
一方、干渉ガス吸光度へ変換した回数が設定回数に達していないと判断した場合には、干渉ガス分圧算出部C8が、全圧センサ10で測定された全圧と測定対象ガス分圧変換部C6で取得した測定対象ガス分圧に基づき、干渉ガス分圧を算出する(ステップS11)。そして、第2の干渉ガス吸光度変換部C9が、干渉ガス分圧算出部C8で算出された干渉ガス分圧を干渉ガス分圧-吸光度関係データを参照して干渉ガスの新たな吸光度に変換する(ステップS12)。この後、ステップS4~ステップS6を介して第2の干渉ガス吸光度変換部C8で変換された新たな干渉ガス吸光度に基づき測定対象ガス分圧が導出される。なお、ステップS9、ステップS4~S6、ステップS10~S12は、変換回数カウント部C10のカウント回数が設定回数に達するまでループして繰り返される。
【0051】
なお、前記その他の実施形態では、ループ回数をカウントし、カウント数が設定回数に達した場合にループを終了するように構成しているが、例えば、前ループ(例えば、一回前のループ)で算出された測定対象ガス分圧と現ループで算出された測定対象ガス分圧との差が所定値よりも小さくなっているか否かを判定し、所定値以下である場合にループを終了するように構成してもよい。
【0052】
このようなものであれば、第2の干渉ガス吸光度変換部C9における変換回数が増えるに従って、測定対象ガス分圧に含まれる誤差、具体的には、干渉ガス分圧推定部C2において全圧センサ10で測定された全圧に基づいて干渉ガス分圧を推定したことにより、当該推定された干渉ガス分圧中に含まれる測定対象ガスの誤差の割合少なくなる。その結果、測定対象ガス濃度の測定精度が向上する。
【0053】
また、前記実施形態においては、流路Lの検出器20よりも上流側に全圧センサ10を設置したが、この場合には、検出器20の測定領域Zと全圧センサ10の測定点との間に生じる圧損により、全圧センサ10において当該圧損の影響を受けた全圧しか測定できない。そこで、例えば、図2にて点線で示すように、全圧センサ10を、当該全圧センサ10の測定点が検出器20の測定領域Zと一致するように設置することが好ましい。具体的には、全圧センサ10を、当該全圧センサ10の測定点が検出器20の光源21から射出される光の光軸(図2中、一点鎖線にて示す)上に位置するように設置することが好ましい。
【0054】
なお、前記実施形態においては、測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部C5において、測定対象ガス分圧-吸光度関係データを取得する場合に、検出器20へ既知の濃度の測定対象ガスを流す方法を例示したが、これに限定されない。例えば、分圧と吸光度との関係が測定対象ガスと既知の相関関係にある代替ガスを検出器20へ流し、この時、検出器20の測定領域Zに存在する代替ガスの分圧と吸光度との関係を示すデータを予め取得する。その後、当該データと前記既知の相関関係とに基づき測定対象ガス分圧-吸光度関係データを取得してもよい。干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部C3についても同様のことが言える。
【0055】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
100 吸光分析システム
L 流路
10 全圧センサ
20 検出器
C 吸光分析装置
C1 干渉ガス分圧-吸光度関係記憶部
C2 干渉ガス分圧推定部
C3 干渉ガス吸光度変換部
C4 測定対象ガス吸光度算出部
C5 測定対象ガス分圧-吸光度関係記憶部
C6 測定対象ガス分圧変換部
C7 測定対象ガス濃度算出部
C8 干渉ガス分圧算出部
C9 第2の干渉ガス吸光度変換部
C10 変換回数カウント部
C11 カウント回数判定部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8