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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】抗炎症剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/08 20060101AFI20240605BHJP
   A61K 31/075 20060101ALI20240605BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61K31/08
A61K31/075
A61P43/00 105
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019174836
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050167
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】坂本 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 和哉
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-288827(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093481(WO,A1)
【文献】特表平11-501954(JP,A)
【文献】特開昭58-134049(JP,A)
【文献】特開2000-119205(JP,A)
【文献】特開昭63-077833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、IL1α及びIL1βの発現抑制剤(ただし、該IL1α及びIL1βの発現抑制剤はアゼラスチン又はその治療的に使用可能な塩を含む薬剤を除く)
【化1】
(式中、Rは炭素数6~8の直鎖アルキル基、炭素数6~8の分岐アルキル基、又は、炭素数6~8の脂環式アルキル基を表す。)
【請求項2】
一般式(1)のRが直鎖ヘキシル基である、請求項1のIL1α及びIL1βの発現抑制剤
【請求項3】
一般式(1)のRがシクロヘキシル基である、請求項1のIL1α及びIL1βの発現抑制剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体中の炎症作用に関する遺伝子発現の抑制作用及び抗炎症作用に関する遺伝子発現の促進作用を有する、抗炎症剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人体等の生体において、炎症とは、異物の侵入や組織の障害といった生体組織にとって好ましくない刺激が発生した時に免疫系が引き起こす局所的な防御反応であり、生体にとっての非自己の排除を助ける一方で、生体そのものにも一定の損傷や苦痛を引き起こす性質も有する。この損傷や苦痛が過剰に人体を傷つける症状は、アレルギー疾患、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患等といった炎症として知られている。このような炎症には様々な生理活性物質が関与していることが明らかとなってきており、例えば、炎症を引き起こす原因因子として関与する炎症性サイトカインとしてIL-1α、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α等が、炎症症状を抑制する働きをもつ抗炎症性サイトカインとしてIL-10、IL-12、インターフェロン、TGF-β等が、知られている。
【0003】
現在までに、抗炎症剤として、このような炎症性サイトカインの発現抑制や、抗炎症性サイトカインの発現促進に基づく抗炎症剤が各種開発されている(特許文献1~4)。また、プラスミノーゲン活性化因子阻害物質(PAI-1)の発現増強(特許文献5)や、神経成長因子(NGF)の発現増強(特許文献6)も、抗炎症剤の機能として有効と考えられている。このように、様々な作用機序に基づく抗炎症剤が知られているものの、その入手容易性や各種用途ヘの適用性、抗炎症効果等の観点から、市場ではより多種の抗炎症剤の開発・供給が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-093900号公報
【文献】特開2009-263308号公報
【文献】国際公開2011/007612号
【文献】国際公開2018/163716号
【文献】特開2015-017100号公報
【文献】国際公開2019/093481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、生体中の炎症作用に関する遺伝子発現の抑制作用及び抗炎症作用に関する遺伝子発現の促進作用を有する、新規な抗炎症剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者等は鋭意検討し、ある化合物が抗炎症作用を有することを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、抗炎症剤である。
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Rは炭素数6~8の直鎖アルキル基、炭素数6~8の分岐アルキル基、又は、炭素数6~8の脂環式アルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、生体中の炎症作用に関する遺伝子発現の抑制作用及び抗炎症作用に関する遺伝子発現の促進作用を有する、抗炎症剤を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の抗炎症剤は、下記の一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、抗炎症剤である。
【0011】
【化2】
【0012】
一般式(1)のRは、炭素数6~8の直鎖アルキル基、炭素数6~8の分岐アルキル基、又は、炭素数6~8の脂環式アルキル基を表す。本発明においては、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を有効成分として含むことで、生体中の炎症作用に関する遺伝子発現の抑制作用及び抗炎症作用に関する遺伝子発現の促進作用を発揮することができる。生体中の炎症作用に関する遺伝子発現の抑制作用効果及び抗炎症作用に関する遺伝子発現の促進作用効果の観点からは、一般式(1)のRは直鎖ヘキシル基又はシクロヘキシル基であることが好ましい。このとき、本発明の抗炎症剤としては、一般式(1)のRが直鎖ヘキシル基である化合物のみを含んでいても、一般式(1)のRがシクロヘキシル基である化合物のみを含んでいても、一般式(1)のRが直鎖ヘキシル基である化合物及び一般式(1)のRがシクロヘキシル基である化合物を含んでいてもよい。本発明の抗炎症剤が、一般式(1)のRが直鎖ヘキシル基である化合物及び一般式(1)のRがシクロヘキシル基である化合物を含む場合の各化合物の含有比率は特に限定されないが、例えば、一般式(1)のRが直鎖ヘキシル基である化合物と一般式(1)のRがシクロヘキシル基である化合物とを質量比で99:1~1:99の範囲で含んでいてもよい。
【0013】
一般式(1)で表される化合物を製造する方法としては、公知のいずれの方法を用いてもよい。このうち、一般式(1)のRが直鎖ヘキシル基又はシクロヘキシル基である化合物を製造する方法としては例えば、ヘキサノール又はシクロアルカノールとグリセリンを脱水縮合反応させる方法、ヘキシルクロライドやヘキシルブロマイド又はシクロヘキシルクロライドやシクロヘキシルブロマイドとグリセリンを脱塩酸反応させる方法、ヘキサノール又はシクロヘキサノールと1-クロロ-2,3-プロパンジオールを脱塩酸反応させる方法、ヘキサノール又はシクロヘキサノールとエピクロルヒドリンを反応させた後、得られたヘキシルグリシジルエーテル又はシクロヘキシルグリシジルエーテルを加水分解する方法、ヘキサノール又はシクロヘキサノールとグリシドールを反応させる方法、ヘキサノール又はシクロヘキサノールとアリルクロライドを脱塩酸反応させた後、過酸化水素等で酸化させ、得られたヘキシルグリシジルエーテル又はシクロヘキシルグリシジルエーテルを加水分解する方法等が挙げられる。また、グリセリンを使用する反応においては、グリセリンを低級脂肪酸で部分的にエステル化したものを使用して上記の反応を行い、反応終了後にケン化して脂肪酸を除去する方法や、グリセリンの部分ケタール化物を使用して上記の反応を行い、反応終了後にケタールをはずす方法を行えば、純度の高いものが得られる。これらの中でも、安価で、工業的に製造しやすいことから、ヘキサノール又はシクロヘキサノールとエピクロルヒドリンを反応させた後、得られたヘキシルグリシジルエーテル又はシクロヘキシルグリシジルエーテルを加水分解する方法で製造するのが好ましい。
【0014】
本発明の抗炎症剤は、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を有効成分として含んでいればよいが、取扱い性や安定性等の観点から、必要に応じて溶媒や保存安定剤等を含んでいてもよく、また、抗炎症効果等の観点から、一般式(1)で表される化合物以外の公知の抗炎症成分を含んでいてもよい。
【0015】
溶媒としては、例えば、精製水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。保存安定剤としては、例えば、トコフェロール、トコトリエノールおよびこれらの誘導体等が挙げられる。公知の抗炎症成分としては、例えば、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等が挙げられる。
【0016】
本発明の抗炎症剤が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、一般式(1)で表される化合物100質量部に対して10~1000質量部程度であってもよい。また、本発明の抗炎症剤が保存安定剤を含有する場合の保存安定剤の含有量は特に限定されないが、例えば、一般式(1)で表される化合物100質量部に対して0.1~20質量部程度であってもよい。また、本発明の抗炎症剤が公知の抗炎症成分を含有する場合の公知の抗炎症成分の含有量は特に限定されないが、例えば、一般式(1)で表される化合物と公知の抗炎症成分の含有質量比率が1:99~99:1となる量であることが好ましく、10:90~90:10となる量であることがより好ましい。
【0017】
本発明の抗炎症剤は、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、化粧品等に添加して使用することができ、このときの医薬品、医薬部外品、衛生用品、化粧品等の剤形もそれぞれ特に限定されず、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系等の剤形で用いることができる。これらの中でも、抗炎症効果の観点から、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、貼付剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤等の皮膚外用医薬品又は皮膚外用医薬部外品に添加して使用することが好ましい。本発明の抗炎症剤は、抗炎症効果等の観点から、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を、医薬品、医薬部外品、衛生用品又は化粧品の全量に対して、0.01~10質量%で含むことが好ましく、0.02~5.0質量%で含むことがより好ましく、0.03~3.0質量%で含むことがより好ましい。
【0018】
本発明の抗炎症剤を含む医薬品、医薬部外品、衛生用品、化粧品には、使用目的や用途に応じて保存時、使用時、使用後における各種特性(溶解性、分散性、安定性、使用感、塗布性、浸透性、保湿性、安全性、意匠性、光学特性、芳香性、美白性等)を向上改質させるために各用途に使用される成分を使用することができる。このような成分としては、例えば、血行促進剤、賦活剤、美白剤、溶剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、高級アルコール、多価アルコール、糖類及びその誘導体類、保湿剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、香料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。本発明の抗炎症剤を含む医薬品、医薬部外品、衛生用品、化粧品は、炎症作用に関する遺伝子発現の抑制作用及び抗炎症作用に関する遺伝子発現の促進作用を有する抗炎症剤を含有するため、例えば、経口剤や皮膚外用剤として、各種炎症に対する予防・症状改善を行うことができる。
【0019】
血行促進剤としては、例えば、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル等が挙げられる。血行促進剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0020】
賦活剤としては、例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等が挙げられる。賦活剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0021】
美白剤としては、例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等が挙げられる。美白剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0022】
溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、水等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。溶剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~95質量%であることがより好ましい。
【0023】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。カチオン性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0024】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アルキロイルメチルタウリン塩、それらの誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。またアニオン基の対イオンの具体例としては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。アニオン性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0025】
両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタイン、ヒドロキシプロピルリン酸の金属塩等のベタイン型両性界面活性剤、β-ラウリルアミノプロピオン酸の金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、硫酸エステル型両性界面活性剤及びスルホン酸型両性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。両性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0026】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、POEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEポリオキシプロピレンセチルエーテル、POEポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、アルキルグルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。ノニオン性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0027】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、ポリイソブテン、ポリイソプレン、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ケロシン、デカリン、テトラリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。炭化水素油の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0028】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、オクタメチルトリシロキサン等の鎖状シリコーン油、デカメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油、アルキル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、高級アルコール変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性シリコーン油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。シリコーン油の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0029】
エステル油としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸へキシル、酢酸デシル、プロピオン酸ブチル、オクタン酸セチル、ジメチルオクタン酸へキシルデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ブチル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セチルエチルヘキサノエート、トリエチルヘキサノイン、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリチルテトライソステアレート等の合成エステル油;ラノリン、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の動植物エステル油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。エステル油の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0030】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。高級アルコールの含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.1質量%~30質量%であることが好ましく、0.5質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0031】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。多価アルコールの含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.1質量%~30質量%であることが好ましく、0.5質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0032】
糖類及びその誘導体類としては、例えば、キシロース、D-グルコース、スクロース、トレハロース、フルクトース、マルトース、マンノース、シクロデキストリン、β-グルカン、キチン、キトサン、ペクチン、アラビノガラクタン、デキストリン、デキストラン、メタクリル酸グルコシルエチル重合物若しくは共重合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。糖類及びその誘導体の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品全量に対して0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0033】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。保湿剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.01質量%~30質量%であることが好ましく、0.1質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0034】
防腐剤としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、クロルフェネシン、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、カプリリルグリコール、レゾルシン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ピロクトンオラミン、ヒノキチオール、ビタミンB6塩酸塩(塩酸ピリドキシン)、フェノール、塩化リゾチーム、塩化セチルピリジニウム(CPC)等が挙げられる。防腐剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0035】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。金属イオン封鎖剤の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0036】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、レブリン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、リン酸、ピロリン酸、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。pH調整剤は、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品のpHが3.0~13.0となるように添加することが好ましい。
【0037】
香料としては、例えば、アセチルセドレン、アリルアミルグリコレート、β-イオノン、イソブチルキノリン、イリス油、イロン、インドール、ウンデカナール、ウンデセナール、γ-ウンデカラクトン、エストラゴール、オイゲノール、オークモス、オポポナックスレジノイド、オレンジ油、オイゲノール、オーランチオール、ガラクソリッド、カルバクロール、カンファー、キャロットシード油、クローブ油、ケイヒ酸メチル、ゲラニオール、ゲラニルニトリル、酢酸イソボルニル、酢酸ゲラニル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸スチラリル、酢酸セドリル、酢酸テレピネル、酢酸ベチベリル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、サリチル酸イソペンチル、サリチル酸ベンジル、サンダルウッド油、サンタロール、シクラメンアルデヒド、シクロペンタデカノリド、ジヒドロジャスモン酸メチル、ジヒドロミルセノール、ジャスミンアブソリュート、ジャスミンラクトン、シトラール、シトロネノール、シトロネラール、シナモンバーク油、スチラックスレジノイド、セダーウッド油、セドレン、セドロール、セロリシード油、タイム油、ダマスコン、ダマセノン、チモール、チュベローズアブソリュート、テルピネオール、γ-テルピネン、トリプラール、バニラアブソリュート、バニリン、バジル油、パチョリ油、ヒドロキシシトロネラール、α-ピネン、ピペリトン、ペルーバルサム、ベチバー油、ベチベロール、ペパーミント油、ペパー油、ヘリオトロピン、ベルガモット油、ベンジルベンゾエート、ボルネオール、ミルレジノイド、ムスクケトン、メチルノニルアセトアルデヒド、γ-メチルヨノン、メントール、L-メントール、L-メントン、ユーカリ油、β-ヨノン、ライム油、ラベンダー油、D-リモネン、リナロール、リラール、リリアール、レモン油、ローズアブソリュート、ローズオキシド、ローズ油、ローズマリー油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。香料の含有量は特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、衛生用品、又は化粧品の全量に対して0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
【実施例
【0038】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%は特に記載が無い限り質量基準である。
【0039】
<使用した化合物>
化合物1:一般式(1)において、Rが直鎖ヘキシル基である化合物
化合物2:一般式(1)において、Rがシクロヘキシル基である化合物
【0040】
<遺伝子発現促進作用の評価>
化合物1及び化合物2について、DNAマイクロアレイ解析により、生体中の抗炎症に関する遺伝子発現の抑制・促進作用の有無を評価した。具体的には、正常ヒト細胞を培地(HuMedia-KG2、倉敷紡績株式会社製)で24時間培養後、培地に化合物1を0.05質量%となる量で添加(試験例1)、又は化合物2を0.20質量%となる量で添加(試験例2)し、それぞれさらに24時間培養した。培養後の試験液をQIAzol Lysis Reagent(QIAGEN社製)に溶解させた後、精製RNAを回収し、RNA解析チップ(ジェノパール(登録商標)、三菱ケミカル株式会社製)を用いてDNAマイクロアレイを実施した。
【0041】
得られた結果に基づき、遺伝子発現率として、下記の抗炎症に関する遺伝子ごとに、化合物1及び化合物2を添加しなかった以外は同様の操作を行った比較試験例のシグナル濃度に対する、試験例1及び試験例2におけるシグナル濃度の比率を算出した。遺伝子発現率が1より大きいと、化合物1又は2を添加した試験液のシグナル濃度の方が、化合物1及び化合物2を添加しなかった比較試験例のシグナル濃度よりも高いことを表しており、化合物1又は化合物2により対象遺伝子の発現が促進されたことを示す。なお、対象遺伝子のうち、炎症性サイトカインであるIL1α及びIL1βについては、その発現を抑制することが抗炎症機能として扱われ、他の遺伝子については、その発現を促進することが抗炎症機能として扱われる。各試験例における各遺伝子の遺伝子発現率を表1に示す。
【0042】
<試験対象の遺伝子>
IL1α:Homo sapiens interleukin 1, alpha
IL1β:Homo sapiens interleukin 1, beta
SERPIN1:Homo sapiens serpin family E member 1
IFNγ:Homo sapiens interferon gamma
NGF:Homo sapiens nerve growth factor
NGFR:Homo sapiens nerve growth factor receptor
【0043】
【表1】
【0044】
以上の結果から、一般式(1)で表される化合物は、生体中の炎症作用に関する遺伝子であるIL1α、IL1βそれぞれの発現抑制作用及び、抗炎症作用に関する遺伝子であるSERPIN1、IFNγ、NGF、NGFRそれぞれの発現促進作用を有するため、抗炎症剤として使用できることがわかる。