(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】プラズモニック光電陰極放出器
(51)【国際特許分類】
H01J 1/34 20060101AFI20240605BHJP
H01J 9/12 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
H01J1/34
H01J9/12 B
(21)【出願番号】P 2022518945
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 US2020052598
(87)【国際公開番号】W WO2021062071
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-05
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベローソブ セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ナイズニク アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】イスカンダロバ インナ エム
(72)【発明者】
【氏名】ポタプキン ボリス
(72)【発明者】
【氏名】イオアケイミディ カテリナ
(72)【発明者】
【氏名】デルガド ジルダード
(72)【発明者】
【氏名】ヒル フランセス
(72)【発明者】
【氏名】ロペツ ガリイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレツ ペドラザ ミゲル エイ
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0108966(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0140432(US,A1)
【文献】特開2008-016293(JP,A)
【文献】特開2008-016294(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024615(WO,A1)
【文献】特開2009-032620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0133424(US,A1)
【文献】特開2009-277515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/34
H01J 9/12
H01J 40/06
H01J 37/00-37/36
G21K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス検査用の光電陰極放出器であって、
透明基板と、
光電陰極層と、
前記透明基板と前記光電陰極層との間に配設されたプラズモニック構造アレイであって、前記プラズモニック構造アレイが、193nmから430nmまでの波長において動作するように構成される、
電界スポットサイズを100nm以下とするプラズモニック開口を備え、100nm直径以下の電子ビームを作り出すプラズモニック構造アレイと
前記光電陰極層の、前記プラズモニック構造アレイの反対の側に配設されたキャップ層と、
を備えることを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項2】
請求項1に記載の光電陰極放出器であって、
前記光電陰極層が、Cs
2Te、CsKTe、GaAs、GaN、CsI、CsBr、またはAlGaN(P)合金のうちの1つ以上を含むことを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項3】
請求項1に記載の光電陰極放出器であって、
前記透明基板が、紫外線溶融シリカ、CaF
2、石英、サファイア、MgF
2、またはLiFのうちの1つ以上を含むことを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項4】
請求項1に記載の光電陰極放出器であって、
前記プラズモニック構造アレイが、アルミニウムから製作されることを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項5】
請求項1に記載の光電陰極放出器であって、
前記プラズモニック構造アレイが、ブルズアイパターンを規定することを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項6】
請求項5に記載の光電陰極放出器であって、
前記プラズモニック構造アレイが、50nmから100nmまでの中央開口直径を有することを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項7】
請求項1に記載の光電陰極放出器であって、
前記プラズモニック構造アレイが、C-開口を規定することを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項8】
請求項7に記載の光電陰極放出器であって、
前記C-開口が、39nmから200nmまでの開口幅を有することを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項9】
請求項1に記載の光電陰極放出器であって、
前記キャップ層が、ルテニウムを含むことを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項10】
請求項1に記載の光電陰極放出器であって、
前記波長は、400nmより大きく430nmまでであることを特徴とする光電陰極放出器。
【請求項11】
方法であって、
光ビームを、透明基板と、光電陰極層と、前記透明基板と前記光電陰極層との間に配設された
、電界スポットサイズを100nm以下とするプラズモニック開口を備え、100nm直径以下の電子ビームを生成するプラズモニック構造アレイと、前記光電陰極層の、前記プラズモニック構造アレイの反対の側に配設されたキャップ層を含む
半導体デバイス検査用の光電陰極放出器に向けるステップであって、前記光ビームが、193nmから430nmまでの波長を有する、向けるステップと、
前記光電陰極放出器の前記プラズモニック構造アレイを使用して、前記光ビームから電子ビームを生成するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記波長が、193nmから365nmまでであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記波長が、193nmから266nmまでであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、
前記光電陰極層が、Cs
2Te、CsKTe、GaAs、GaN、CsI、CsBr、またはAlGaN(P)合金のうちの1つ以上を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、
前記透明基板が、紫外線溶融シリカ、CaF
2、石英、サファイア、MgF
2、またはLiFのうちの1つ以上を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、
前記プラズモニック構造アレイが、アルミニウムから製作されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、
前記プラズモニック構造アレイが、ブルズアイパターンを規定することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、
前記プラズモニック構造アレイが、C-開口を規定することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、
前記波長は、400nmより大きく430nmまでであることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体検査に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、本願にその開示を引用して援用する、2019年9月27日に出願した仮特許出願および譲渡された米国特許出願第62/907,502号の優先権を主張する。
【0003】
半導体製造産業の発展は、歩留まり管理に、特に、計量および検査システムに対する要求をますます高めている。限界寸法は縮小し続け、しかも産業は高歩留まり、高価値生産を達成する時間を減少させることを必要としている。歩留まり問題を検出することからそれを解決することまでの全時間を最小限に抑えることにより、半導体製造業者の投資利益率が決まる。
【0004】
論理およびメモリデバイスなどの半導体デバイスを製作することは、典型的には、半導体デバイスの様々な特徴および複数のレベルを形成する多数の製作工程を使用して半導体ウェーハを処理することを含む。例えば、リソグラフィは、パターンをレチクルから半導体ウェーハ上に配置されたフォトレジストに転写することが関与する半導体製作工程である。半導体製作工程の追加の例には、化学機械研磨(CMP)、エッチング、堆積、およびイオン注入が含まれるが、それに限定されない。単一の半導体ウェーハ上に製作された複数の半導体デバイスの配置は、個別の半導体デバイスに分離することができる。
【0005】
電子ビームは、半導体製造中のいくつかの異なる適用例に使用される。例えば、電子ビームは、電子パターンを加工物上に生成するために、半導体ウェーハ、マスク、または他の加工物上の電子感応レジスト上へと変調し、向けることができる。電子ビームは、例えば、ウェーハから現れる、または反射させられる電子を検出して、欠陥、異常物、または望ましくない物体を検出することによって、ウェーハを検査するのに使用することもできる。
【0006】
これらの検査工程は、製造工程におけるより高い歩留まり、したがって、より高い利益を促進するために半導体製造工程中に様々なステップにおいて使用される。検査は、常に、集積回路(IC)などの半導体デバイス製作の重要な部分であった。しかし、より小さな欠陥によりデバイスが故障することがあるので、半導体デバイスの寸法が縮小するにつれて、検査は、許容できる半導体デバイスを首尾よく製造するのにさらに一層重要となっている。例えば、半導体デバイスの寸法が縮小するにつれて、相対的に小さな欠陥であっても、半導体デバイスに望まれていない異常が生じる場合があるので、縮小するサイズの欠陥の検出は、必要となっている。
【0007】
光電陰極は、電子ビームを生成するのに使用されてきた。光電陰極システム上に入射する単一の光ビームは、高い電子流密度をかなえる能力がある、高輝度を有する単一の電子ビームを生成することができる。平面光電陰極構造が、加速器の照射、電子顕微鏡法、リソグラフィツール、または検査ツールなどの適用例に使用することができる。リソグラフィツールまたは検査ツールに対して、光生成電子ビームは、数ナノメートルサイズのスポットに集束されることを必要とすることがある。電子光学系の制限によって、小さなスポットの要件は、紫外線波長に対してであってもサブ波長値に限定されることがある、光電陰極平面上の初期スポットサイズへと移る。
【0008】
光電陰極を有するプラズモニック構造が、金および銀などのプラズモニクスに使用される最も一般的な貴金属が高い共鳴を有する赤外線波長において試みられた。これらの構造は、プラズモニック共鳴が、可視または紫外線(120~700nm)波長において光電陰極の量子効率(QE)を増加させることができることを示す。QEは増加したが、最終的なQEは、金属のQEとの比較であっても相対的に低い。
【0009】
光電陰極放出器の輝度は、光電陰極材料および励起波長に依存する。QEとエミッタンスとの間には、トレードオフの傾向がある。QEおよびエミッタンスは、低いエミッタンスまたは低い横エネルギー(例えば、0.3eV最大)、および、高いQE(例えば、>1uA/mW)または全電流をもたらすことによってなどで、高輝度を達成するように最適化される。ある光電陰極に対しては、横エネルギー拡散が固定され、そのため、低いエミッタンスの小さなスポットを達成することは、光電陰極表面において得られることを必要としている。ナノメートルサイズに電子ビームスポットを集束するために、近似的に100nmの初期スポットが、電子光学系の制限によって必要とされることがある。以前は、貴金属が高い共鳴を有する、赤外線波長におけるプラズモニック構造が、小さなスポットサイズを達成するために使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2005/0285128号
【文献】国際公開第2019/124114号
【文献】米国特許出願公開第2017/0133631号
【文献】米国特許出願公開第2005/0264148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この手法の不利な点は、その手法は、2~4の光子光電子放出プロセスが関与するので、検査システムに適切な大部分の光電陰極は、赤外線波長において非常に低いQEを有することである(例えば、<10^-5)。結果として、全電流のうちの数pAだけが、以前の努力において達成された。この電流は、高スループットの電子ビーム検査システムに適切ではない。
【0012】
光電陰極放出器の改善が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
光電陰極放出器が第1の実施形態において開示される。光電陰極放出器は、透明基板と、光電陰極層と、透明基板と光電陰極層との間に配設されたプラズモニック構造アレイとを備える。プラズモニック構造は、193nmから430nmまでの波長において動作するように構成される。
【0014】
光電陰極層は、Cs2Te、CsKTe、GaAs、GaN、CsI、CsBr、またはAlGaN(P)合金のうちの1つ以上を含むことができる。透明基板は、紫外線溶融シリカ、CaF2、石英、サファイア、MgF2、またはLiFのうちの1つ以上を含むことができる。プラズモニック構造アレイは、アルミニウムから製作することができる。
【0015】
プラズモニック構造アレイは、ブルズアイパターンを規定することができる。例において、プラズモニック構造アレイは、50nmから100nmまでの中央開口直径を有する。
【0016】
プラズモニック構造アレイは、C-開口を規定することができる。例において、C-開口は、39nmから200nmまでの開口幅を有する。
【0017】
光電陰極放出器は、光電陰極層の、プラズモニック構造アレイの反対の側に配設されたキャップ層を含むことができる。例において、キャップ層は、ルテニウムを含む。
【0018】
方法が第2の実施形態において提供される。方法において、光ビームが、透明基板と、光電陰極層と、透明基板と光電陰極層との間に配設されたプラズモニック構造アレイとを含む光電陰極放出器に向けられる。光ビームは、193nmから430nmまでの波長を有する。電子ビームが、光電陰極放出器のプラズモニック構造アレイを使用して光ビームから生成される。
【0019】
波長は、193nmから365nmまで、または、193nmから266nmまででもよい。
【0020】
光電陰極層は、Cs2Te、CsKTe、GaAs、GaN、CsI、CsBr、またはAlGaN(P)合金のうちの1つ以上を含むことができる。透明基板は、紫外線溶融シリカ、CaF2、石英、サファイア、MgF2、またはLiFのうちの1つ以上を含むことができる。プラズモニック構造は、アルミニウムから製作することができる。
【0021】
プラズモニック構造は、ブルズアイパターンまたはC-開口を規定することができる。
【0022】
本開示の種類および目的をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示による光電陰極の第1の実施形態の断面図である。
【
図2】ブルズアイプラズモニック光電陰極の例の図である。
【
図3】ブルズアイプラズモニック光電陰極における100nm開口に対する開口出口における電界強度のシミュレーションの図である。
【
図4】任意単位でのスループットに関する、ブルズアイプラズモニック光電陰極に対する溝ピッチへのスループット依存性を示す図である。
【
図5】入射光(E
inc)の偏光に関する、C-開口プラズモニック光電陰極の例示的な幾何学的形態の図である。
【
図6】Wb=17nmを有するC-開口プラズモニック光電陰極の共鳴挙動、および、それぞれの傾向線に関して位置決めされる値を示す図である。
【
図7】Wb=17nmを有するC-開口プラズモニック光電陰極の共鳴挙動を示す図である。
【
図9】本開示によるシステムの実施形態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特許請求される主題をある実施形態の観点から説明するが、本明細書に示す利点および特徴のすべては提供しない実施形態を含む、他の実施形態も、本開示の範囲内にある。様々な構造的、論理的、工程ステップの、および電子的変更は、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲への参照だけによって明らかとなる。
【0025】
本明細書に開示する実施形態は、紫外線および可視波長において動作する伝送モードにおいて光電陰極に取り付けられるプラズモニック構成をもたらす。本明細書に開示する実施形態において、構造は、サブ波長スポットへのプラズモニック開口を通る光伝送を高めながら、光電陰極QEが最大化される波長において動作する。スポットあたり数十nAが、このようにして作り出すことができ(例えば、1~100nA以上)、それは、以前は可能でなかった。ボウタイなどの、サブ波長寸法の光電陰極プラズモニック構造上の、小さなレーザスポットを達成するために、ブルズアイ、C-開口、または他の設計が、使用することができる。これらの金属構造は、スポット閉じ込め構造、および、光電陰極にバイアスをかけるための電気的下層の両方として働く。
【0026】
プラズモニック構造アレイは、サブ波長サイズにおいて入射光を閉じ込めることができる。例えば、プラズモニック構造アレイは、100nm直径以下の電子ビームを作り出すことができる。電子ビーム直径は、レーザ特質または構造幾何学的形態などの要因に依存することがある。プラズモニック開口は、可視および紫外線波長において強い共鳴を有することができる。共鳴は、Cs2Te、CsKTe、GaAs、GaN、CsI、CsBr、または他の材料などの、いくつかの良好に開発された光電陰極が、非常に高い輝度の源を開発するために、高いQEを有する場合のものであることがある。紫外線および可視波長において強いプラズモニック共鳴を有する、アルミニウム、他の金属、または他の材料を使用することができる。プラズモニック構造アレイは、193nm、213nm、266nm、257nm、365nm、305nm、または430nmなどの、商用波長が利用可能である、紫外線および可視波長において動作することができる。これらの波長において動作するために、プラズモニック構造アレイは、その製作限度に近い寸法を有することがある。
【0027】
本明細書に開示する実施形態は、光電陰極が高いQEをあらわにしてきた波長において動作することができる。小さなスポットが、多電子ビーム配置に対してスケーラブルな、高輝度放出器を実証するために生み出すことができる。
【0028】
図1は、光電陰極100の第1の実施形態の断面図である。光電陰極100は、透明基板101と、光電陰極層103と、透明基板101と光電陰極層103との間に配設されたプラズモニック構造アレイ102とを含む。光電陰極層103は、Cs
2Te、CsKTe、GaAs、GaN、CsI、CsBr、AlGaN(P)合金、もしくは他の材料のうちの1つ以上を含む、またはそうでない場合は、その1つ以上から製作することができる。光電陰極層103は、紫外線および可視波長において高いQEを有することができる。最大効率の波長における高QE光電陰極の使用は、高輝度放出器をもたらすことができる。最大効率の波長は、吸収および放出効率に基づく材料特質に関連していることがある。光源(図示せず)は、1つ以上の電子ビームを作り出すことになる光電陰極100に光を向けることができる。
【0029】
透明基板101は、紫外線溶融シリカ、CaF2、石英、サファイア、MgF2、LiF、もしくは他の材料のうちの1つ以上を含む、またはそうでない場合は、その1つ以上から製作することができる。透明基板101は、紫外線および可視波長に対して透明であることがある。
【0030】
プラズモニック構造アレイ102は、金属材料105(ハッチングによって
図1に示す)を含むことができる。金属材料105は、アルミニウム、メタマテリアル、または他の材料であることがある。アルミニウムは、それが、本明細書に使用する波長において、金または銀と比較してプラズモニック特質の改善を有するので、使用することができる。光が、金属材料105に衝突して、193nmから430nmまでにおいてなどで共鳴を生み出すことができる。これは、193nm、213nm、266nm、257nm、365nm、305nm、430nm、またはそれらの間の範囲における波長を含む。金属材料105は、紫外線および可視波長において強い共鳴を有することができる。例えば、強い共鳴は、共鳴ピークに対応することがある。金属材料105は、透明基板101上に堆積させることができる。プラズモニック構造アレイ102は、193nmから430nmまでの波長において動作するように構成される。
【0031】
このプラズモニック構造アレイ102は、高スループットの検査システムに適切なサブ波長スポットによって、多数のビームに対してスケーラブルであることがある。
【0032】
光電陰極100は、任意選択で、光電陰極層103の、プラズモニック構造アレイ102の反対の側に配設されたキャップ層104を含むことができる。キャップ層104は、ルテニウムもしくは他の低仕事関数金属を含む、またはそうでない場合は、それらから製作することができる。例えば、キャップ層104は、ルテニウム合金を含むことができる。キャップ層104は、高寿命動作のために低仕事関数金属を含むことができる。
【0033】
光電陰極100は、任意選択で、プラズモニック構造アレイ102と光電陰極層103との間の格子整合をもたらす、プラズモニック構造アレイ102と光電陰極層103との間の層(図示せず)を含むこともできる。これは、光電陰極100内の様々な層の成長を改善することができる。プラズモニック構造アレイ102と光電陰極層103との間の層は、プラズモニック場が光電陰極層103に入り込むことを可能にするのに十分に薄く、光電陰極層103の高品質の成長を招来するのに十分に厚いことがある。例えば、任意選択の層は、厚さにおいて数ナノメートルであることがある。例において、数ナノメートルのテーパード(tapered)AlGaNが、GaNを含む光電陰極層103と格子整合するのに使用することができる。
【0034】
光電陰極100内の層の厚さは、電子放出に対して最適化することができる。例えば、光電陰極100内の層の厚さは、成長中に要因を監視することによってなどで、入射光を吸収し、表面への輸送中の過剰な電子散乱を回避するように最適化することができる。正確な厚さおよびプラズモニック構造寸法は、光電陰極材料、および、光電子放出に使用される波長に依存することがある。例えば、寸法は、波長および構造に依存的であることがある共鳴を増やすように、シミュレーションによって最適化することができる。さらに、プラズモニック構造寸法は、光電陰極上の目標スポットサイズに対して最適化することができる。
【0035】
プラズモニック構造アレイ102におけるプラズモニック開口は、電界スポットサイズをサブ波長レベル(例えば、約100nm)に保ちながら、光電陰極層103に送り届けられる出力を最大化するのに役立つ。ブルズアイ開口プラズモニック光電陰極の概略を、上面図および対応する断面図を含む
図2に示す。
図2において、Dは開口直径であり、Aは開口までの溝の距離であり、Pは溝ピッチであり、Sは溝厚さであり、Tは金属厚さであり、Wは溝幅である。
【0036】
プラズモニック構造アレイ102は、ブルズアイパターンを規定することができる。ブルズアイ開口プラズモニック光電陰極の開口出口における電界強度の例シミュレーションを
図3に示す。
【0037】
ブルズアイパターンの場合には、溝は、表面プラズモンポラトリン(SPP)のための、それらを開口に戻るように反射させるキャビティの役割を果たす。開口における場増強が、溝どうしの間の距離P(すなわち、溝ピッチ)がSPP波長の倍数であるときに発生する。誘電体基板と金属との間の界面におけるSPP波長は次式である。
【数1】
【0038】
したがって、l次共鳴の波長は次式である。
【数2】
【0039】
上記の算式において、λRはl次共鳴における波長であり、λSPPは表面プラズモン波長であり、λはレーザ波長であり、εsubは基板誘電率であり、εmetは金属誘電率であり、Pは溝ピッチであり、lは波長の次数共鳴である。ε(λ)は波長の誘電率関数である。Reは式の実数部を表す。
【0040】
真空におけるブルズアイ開口に対するPへのスループット依存性を
図4に示す。
図4における結果は、130nm、160nm、および200nmピッチサイズに対するものである。
【0041】
一般的に、金属(例えば、Al)膜厚さTは、金属膜厚さは表皮深さより大きいということを100nmスポットサイズが必要とするので、表皮深さの2倍より大きくあるべきである。場を中央開口に集中するために、溝深さSは、表皮深さの程度で、表皮深さに近似的に等しく、または、表皮深さより大きくあるべきであり、一方で、溝は、全体を通して金属膜を穿孔すべきではない。例において、紫外線におけるAlに対する表皮深さは約15nmである。溝ピッチPは、構造が紫外線における関心の波長に対して動作するために、100nmから200nmまでの程度であることがある。中央円形開口直径Dは、電界スポットサイズがこの直径によって決定されるので、50nmから100nmまでであることがある。
【0042】
表1および2は、ブルズアイ開口に対するパラメータの範囲を示す。
【表1】
【表2】
【0043】
同様の仕様が、他のプラズモニック開口形状とともに使用することができる。例えば、プラズモニック構造アレイ102は、C-開口を規定することができる。C-開口の場合には、共鳴位置は、開口腰部(waist)および腕部(arm)対腰部比を調整することによって調節することができる(
図5)。
図5において、Waは開口腕部であり、Wbは開口腰部であり、Hbは開口歯部(tooth)であり、Htは開口幅である。
【0044】
特に、Wb=17nmおよび1<Wa/Wb<1.3に対して、共鳴位置は266nmの近傍にあり、一方で、開口腕部に沿って偏光される入射光に対して、出力スループットはおよそ3.5であり、スポットサイズはおよそ60nmである(
図6および7)。腕部と直交する偏光に対して、関心の波長範囲内に共鳴はない。
図6において、異なるWa/Wb比に対する出力スループットを、凡例において指示するように示す。
図7において、(伝送領域における)開口出口から30nmにおける正方形の電界分布を、Wa/Wb=1.3、スポットサイズFWHM
x=55nm、およびFWHM
y=65nmにおける第1の開口共鳴に対して示す。FWHMは半値全幅を表す。FWHM
xはx方向における半値全幅であり、FWHM
yはy方向における半値全幅である。
【0045】
表3および4は、C-開口に対するパラメータの範囲を示す。
【表3】
【表4】
【0046】
特定の例において、C-開口は、39nmから200nmまでの開口幅を有する。
【0047】
実施形態において、HesselinkのC-開口が、光学プラズモニック構造として使用することができ、光電陰極は、実際上はティップ(tip)である。
【0048】
本明細書に開示する実施形態は、高スループットの多ビーム検査ツールに使用することができる、ビームあたり数十nAのサブ波長スポットサイズ電子ビームのアレイ(例えば、100~300nA)を作り出すことができる。サブ波長スポットにおける光の最大伝送が、可能にすることができ、それは、高輝度電子放出器に使用することができる。光電陰極放出器は、いくつかの光電陰極が高いQEをあらわにしてきた波長において動作することができる。
【0049】
多ビームシステムへの効率的な配光のためのスケーラビリティを、ビームあたり数十nAの電子ビームによってもたらすことができる。これらの光電陰極は、商用で利用可能な照射源との適合性があることがある。高いQEは、本明細書に開示する波長の範囲においてもたらすことができる。
【0050】
図8は方法200の流れ図である。光ビームが、201において、光電陰極放出器に向けられる。光電陰極放出器は、本明細書に説明する実施形態においてなどで、透明基板と、光電陰極層と、透明基板と光電陰極層との間に配設されたプラズモニック構造アレイとを含む。光ビームは、193nmから430nmまでの波長を有する。例えば、波長は、193nmから365nmまで、または、193nmから266nmまででもよい。
【0051】
光電陰極層は、Cs2Te、CsKTe、GaAs、GaN、CsI、CsBr、またはAlGaN(P)合金のうちの1つ以上を含むことができる。透明基板は、紫外線溶融シリカ、CaF2、石英、サファイア、MgF2、またはLiFのうちの1つ以上を含むことができる。プラズモニック構造は、アルミニウムから製作することができる。
【0052】
プラズモニック構造は、ブルズアイパターンまたはC-開口を規定することができる。
【0053】
電子ビームが、202において、光電陰極放出器のプラズモニック構造アレイを使用して光ビームから生成される。
【0054】
図9はシステム300の実施形態の構成図である。システム300は、ウェーハ304の画像を生成するように構成されたウェーハ検査ツール(それは電子柱301を含む)を含む。
【0055】
ウェーハ検査ツールは、少なくともエネルギー源および検出器を含む出力取得サブシステムを含む。出力取得サブシステムは、電子ビームベースの出力取得サブシステムでもよい。例えば、一実施形態において、ウェーハ304に向けられたエネルギーは電子を含み、ウェーハ304から検出されたエネルギーは電子を含む。このようなやり方で、エネルギー源は電子ビーム源でもよい。
図9に示す、そのような一実施形態において、出力取得サブシステムは、電子柱301を含み、電子柱301は、コンピュータサブシステム302に結合される。チャック(図示せず)がウェーハ304を保持することができる。
【0056】
やはり
図9に示すように、電子柱301は、1つ以上の素子305によってウェーハ304に集束される電子を生成するように構成された電子ビーム源303を含む。電子ビーム源303は、例えば、
図1の光電陰極100の実施形態を含むことができる。1つ以上の素子305は、例えば、ガンレンズと、陽極と、ビーム限定開口と、仕切弁と、ビーム電流選択開口と、対物レンズと、走査サブシステムとを含むことができ、そのすべては、当技術分野で周知のそのような任意の適切な素子を含むことができる。
【0057】
ウェーハ304から返された電子(例えば、二次電子)は、1つ以上の素子306によって検出器307に集束させることができる。1つ以上の素子306は、例えば、走査サブシステムを含むことができ、走査サブシステムは、素子(複数可)305に含まれる同じ走査サブシステムでもよい。
【0058】
電子柱は、当技術分野で周知の任意の他の適切な素子を含むこともできる。
【0059】
電子が斜め入射角でウェーハ304に向けられ、別の斜角でウェーハ304から散乱されるように構成されるものとして電子柱301を
図9に示すが、電子ビームは、任意の適切な角度でウェーハ304に向け、それから散乱させることができる。さらに、電子ビームベースの出力取得サブシステムは、複数のモードを使用して、ウェーハ304の画像を生成するように構成することができる(例えば、異なる照射角、集光角などを用いて)。電子ビームベースの出力取得サブシステムの複数のモードは、出力取得サブシステムの任意の画像生成パラメータが異なっていてもよい。
【0060】
コンピュータサブシステム302は、コンピュータサブシステム302がウェーハ検査ツールの検出器307または他の構成部品と電子通信するように、検出器307に結合することができる。検出器307は、ウェーハ304の表面から返された電子を検出し、それによって、コンピュータサブシステム302を用いてウェーハ304の電子ビーム画像を形成することができる。電子ビーム画像は、任意の適切な電子ビーム画像を含むことができる。コンピュータサブシステム302は、プロセッサ308および電子データ記憶装置309を含む。プロセッサ308は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または他のデバイスを含むことができる。
【0061】
本明細書に説明する実施形態に使用することができる電子ビームベースの出力取得サブシステムの構成を全体的に示すために
図9を本明細書に提供することに留意されたい。本明細書に説明する電子ビームベースの出力取得サブシステム構成は、商用出力取得システムを設計するときに通常実施されるように、出力取得サブシステムの性能を最適化するように改変することができる。さらに、本明細書に説明するシステムは、既存のシステムを使用して実装することができる(例えば、本明細書に説明する機能を既存のシステムに追加することによって)。いくつかのそのようなシステムでは、本明細書に説明する方法は、システムの任意選択機能として提供することができる(例えば、システムの他の機能に加えて)。代替案として、本明細書に説明するシステムは、まったく新たなシステムとして設計することができる。
【0062】
コンピュータサブシステム302は、プロセッサ308が出力を受け取ることができるように、任意の適切なやり方でシステム300の構成部品に結合することができる(例えば、有線および/または無線伝送媒体を含むことができる1つ以上の伝送媒体を介して)。プロセッサ308は、出力を使用していくつかの機能を実施するように構成することができる。ウェーハ検査ツールは、プロセッサ308から命令または他の情報を受け取ることができる。プロセッサ308および/または電子データ記憶装置309は、任意選択で、追加の情報を受け取り、または命令を送るために別のウェーハ検査ツール、ウェーハ計量ツール、またはウェーハ再検討ツール(図示せず)と電子通信してもよい。
【0063】
本明細書に説明するコンピュータサブシステム302、他のシステム(複数可)、または他のサブシステム(複数可)は、個人用コンピュータシステム、画像コンピュータ、大型汎用コンピュータシステム、ワークステーション、ネットワークアプライアンス、インターネット家電、または他のデバイスを含む、様々なシステムの一部でもよい。サブシステム(複数可)またはシステム(複数可)は、並列プロセッサなどの、当技術分野で周知の任意の適切なプロセッサを含むこともできる。さらに、サブシステム(複数可)またはシステム(複数可)は、独立型またはネットワーク型ツールのいずれかとして高速処理およびソフトウェアを有するプラットフォームを含むことができる。
【0064】
プロセッサ308および電子データ記憶装置309は、システム300または別のデバイスに配設することができ、またはそうでない場合はその一部であることができる。例において、プロセッサ308および電子データ記憶装置309は、独立型制御装置の一部でもよく、または集中型品質管理装置内にあってもよい。複数のプロセッサ308または電子データ記憶装置309を使用することができる。
【0065】
プロセッサ308は、実際にはハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアの任意の組合せによって実装することができる。また、本明細書に説明するその機能は、1つの装置によって実施し、または異なる構成部品の間で分配することができ、そのそれぞれは、ハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアの任意の組合せによって順番に実装することができる。様々な方法および機能を実装する、プロセッサ308のプログラムコードまたは命令は、電子データ記憶装置309または他のメモリにおけるメモリなどの可読記憶媒体に記憶することができる。
【0066】
図9のシステム300は、単に、電子源100の実施形態、または、方法200の実施形態を使用することができるシステムの一例にすぎない。システム300は、超高真空(UHV)環境または他の環境において動作することができる。電子源100の実施形態は、欠陥再検討システム、検査システム、計量システム、またはシステムのいくつかの他の種類の一部であってもよい。したがって、本明細書に開示する実施形態では、多かれ少なかれ異なる適用例に適切である異なる機能を有するシステムに対していくつかのやり方で合わせることができるいくつかの構成を説明する。
【0067】
本明細書に開示する光電陰極実施形態は、レチクルおよびウェーハ検査システム;単一もしくは複数の電子源を使用するウェーハもしくはレチクルに対する電子ビーム検査システム;単一もしくは複数の電子源を使用するウェーハもしくはレチクルに対する電子ビーム再検討システム;または単一もしくは複数の電子源を使用するウェーハもしくはレチクルに対する電子ビーム計量システムに使用することができる。本明細書に開示する光電陰極実施形態は、ウェーハまたはレチクルの計量、再検討、または検査のためのものなどの、単一または複数の電子源を使用してX線を生成するための電子源を使用するシステムに使用することもできる。例えば、本明細書に開示する実施形態は、多電子源検査システムまたはリソグラフィシステムに使用することができる。
【0068】
本開示を1つ以上の特定の実施形態に関して説明してきたが、本開示の他の実施形態を本開示の範囲から逸脱することなく製作できることが理解されよう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその合理的な解釈だけによって限定されるとみなされる。