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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】拡散壁体
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/82 20060101AFI20240606BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E04B1/82 M
E04B1/82 W
G10K11/16 120
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020077616
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021173054
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】520147153
【氏名又は名称】日の出工芸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】土屋 裕造
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】北村 恵介
(72)【発明者】
【氏名】板垣 学
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-177117(JP,A)
【文献】特開2003-145487(JP,A)
【文献】特開平03-125740(JP,A)
【文献】特開平07-279273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/82
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の外縁を有する1以上の単位壁面を備える拡散壁体であって、
前記単位壁面は、所定の凹凸形状で構成される第1領域と、前記第1領域と前記外縁との間にある所定の凹凸形状で構成される第2領域と、からなり、
前記第1領域の凹凸形状は、複数の第1菱形面で構成され、
前記第2領域の凹凸形状は、複数の三角面で構成され、
前記三角面は、隣接する他の前記単位壁面の前記三角面と接合することで第2菱形面を形成し、
前記第1領域の中央に複数の前記第1菱形面により外形が正十角形の模様が形成されることを特徴とする、拡散壁体。
【請求項2】
矩形の外縁を有する1以上の単位壁面を備える拡散壁体であって、
前記単位壁面は、所定の凹凸形状で構成される第1領域と、前記第1領域と前記外縁との間にある所定の凹凸形状で構成される第2領域と、からなり、
前記第1領域の凹凸形状は、複数の第1菱形面で構成され、
前記第2領域の凹凸形状は、複数の三角面で構成され、
前記三角面は、隣接する他の前記単位壁面の前記三角面と接合することで第2菱形面を形成し、
前記単位壁面は、異なる3つの壁面高さの第1面、第2面及び第3面を含み、
前記第1面、前記第2面及び前記第3面の外形は、いずれも三角形であり、
前記第1菱形面及び前記第2菱形面は、前記第1面、前記第2面及び前記第3面の中から選択される2つ以上の面を組み合わせて構成されることを特徴とする、拡散壁体。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記単位壁面の凹凸形状の最大高低差が10mm以上50mm以下であることを特徴とする、拡散壁体。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1菱形面及び前記第2菱形面は、外形が菱形の平面または底辺が菱形の四角錐であり、
前記四角錐は、前記平面の高さから突出することを特徴とする、拡散壁体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響を考慮した室の壁として施工する拡散壁体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁によって区切られた閉空間において、対向する平行な壁面間で発生するフラッターエコー等の音響障害を抑制することができる内装用の吸音構造が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この吸音構造は、前側に多孔質材料からなる吸音層と、奥側に凹凸形状の拡散層とを備える二層構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-291804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フラッターエコーを減少させるための拡散層に比較的大きな凹凸形状を設けた上でその前面にさらに吸音層を設けるため、吸音構造全体が厚くなり、室の有効面積を確保しにくいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、厚みを抑制して室の有効面積を確保するとともに、フラッターエコーを抑制することができる拡散壁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[1]本発明に係る拡散壁体の一態様は、
矩形の外縁を有する1以上の単位壁面を備える拡散壁体であって、
前記単位壁面は、所定の凹凸形状で構成される第1領域と、前記第1領域と前記外縁との間にある所定の凹凸形状で構成される第2領域と、からなり、
前記第1領域の凹凸形状は、複数の第1菱形面で構成され、
前記第2領域の凹凸形状は、複数の三角面で構成され、
前記三角面は、隣接する他の前記単位壁面の前記三角面と接合することで第2菱形面を形成し、
前記第1領域の中央に複数の前記第1菱形面により外形が正十角形の模様が形成されることを特徴とする。
[2]本発明に係る拡散壁体の別の一態様は、
矩形の外縁を有する1以上の単位壁面を備える拡散壁体であって、
前記単位壁面は、所定の凹凸形状で構成される第1領域と、前記第1領域と前記外縁との間にある所定の凹凸形状で構成される第2領域と、からなり、
前記第1領域の凹凸形状は、複数の第1菱形面で構成され、
前記第2領域の凹凸形状は、複数の三角面で構成され、
前記三角面は、隣接する他の前記単位壁面の前記三角面と接合することで第2菱形面を形成し、
前記単位壁面は、異なる3つの壁面高さの第1面、第2面及び第3面を含み、
前記第1面、前記第2面及び前記第3面の外形は、いずれも三角形であり、
前記第1菱形面及び前記第2菱形面は、前記第1面、前記第2面及び前記第3面の中から選択される2つ以上の面を組み合わせて構成されることを特徴とする。
【0009】
前記拡散壁体の一態様及び別の一態様によれば、従来のような吸音層を前面に設けないので、厚みを抑制することができ、室の有効面積を確保することができる。また、前記拡散壁体の一態様によれば、複数枚の拡散壁体を並べて施工することで、室内側の壁面を複数の第1菱形面と第2菱形面とで構成することができるので、凹凸形状を有しながらも意匠性に優れる。前記拡散壁体の一態様によれば、第1領域と第2領域における所定の凹凸形状によりフラッターエコーを抑制することができる。
前記拡散壁体の一態様によれば、複数枚の拡散壁体を並べて施工することにより、第1領域の中央にある正十角形の模様が並ぶため、壁全体が統一感のある優れた意匠でありな
がらもフラッターエコーを抑制できる。
前記拡散壁体の別の一態様によれば、第1菱形面及び第2菱形面を高さの異なる三角面を組み合わせて構成することにより、音の拡散を生じさせてフラッターエコーを抑制できる。また、前記拡散壁体の一態様によれば、高さの異なる三角面の組み合わせなので凹凸形状の高低差を低く抑えることができる。さらに、前記拡散壁体の一態様によれば、三角面の組み合わせにより第1菱形面及び第2菱形面を構成するため、凹凸形状の加工が容易である。
【0010】
]前記拡散壁体の一態様及び別の一態様において、
前記単位壁面の凹凸形状の最大高低差が10mm以上50mm以下であることができる。
【0011】
前記拡散壁体の一態様によれば、凹凸形状の最大高低差が10mm以上50mm以下であることにより、室の有効面積を確保することができる。
【0016】
]前記拡散壁体の一態様において、
前記第1菱形面及び前記第2菱形面は、外形が菱形の平面または底辺が菱形の四角錐であり、
前記四角錐は、前記平面の高さから突出することができる。
【0017】
前記拡散壁体の一態様によれば、四角錐の傾斜面により音の拡散を生じさせてフラッターエコーを抑制できる。また、前記拡散壁体の一態様によれば、平面と四角錐で凹凸形状を構成するため、設計が容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る拡散壁体によれば、厚みを抑制して室の有効面積を確保するとともに、フラッターエコーを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る拡散壁体の正面図である。
図2】拡散壁体の第1領域と第2領域を説明する模式図である。
図3】施工した拡散壁体における第2菱形面を説明する模式図である。
図4】第1実施形態に係る拡散壁体の正面図である。
図5図4におけるA-A断面図である。
図6】施工した拡散壁体の正面図である。
図7】第2実施形態に係る拡散壁体の正面図である。
図8図7におけるB-B断面図である。
図9】施工した拡散壁体の正面図である。
図10】実施例1の乱反射率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない
【0021】
1.拡散壁体の概要
図1図3を用いて一実施形態に係る拡散壁体1の概要について説明する。図1は一実施形態に係る拡散壁体1の正面図であり、図2は拡散壁体1の第1領域3と第2領域4を説明する模式図であり、図3は施工した拡散壁体1における第2菱形面50を説明する模式図である。図1では説明のため、第1領域3を太い実線で示す。図2では説明のため、第1領域3と第2領域4とを分離して示し、第1領域3には正十角形の模様22を網掛けで示す。図3では隣接する単位壁面2との間に形成される第2領域4を説明するため、中央の単位壁面2の周囲を8つの単位壁面2が囲むように配置された状態を示すと共に、第1領域3を省略して示す。
【0022】
図1に示すように、拡散壁体1は、矩形の外縁20を有する1以上の単位壁面2を備える。拡散壁体1は、板状体であり、図示しないが、単位壁面2の反対側に背面と、単位壁面2と背面とを接続する側面と、をさらに備える。単位壁面2が室内側の壁面となる面である。単位壁面2は正面視で矩形状であり、図1では1つの単位壁面2を示すが、この単位壁面2を複数組み合わせた一枚の拡散壁体1としてもよい。単位壁面2を複数組み合わせる場合には、外縁20の端を隣接する単位壁面2の外縁20の端と合わせて並べる。
【0023】
本明細書では、拡散壁体1を室の壁として施工する状態で説明するため、図1の正面図であれば拡散壁体1の長手方向を上下、短手方向を左右として説明し、図1の手前側が室内側になり、奥側が壁内側になる。
【0024】
拡散壁体1の材質は、例えば集成材、合板、パーティクルボード及び木質繊維板等の木質板や、火山性ガラス質繊維板、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)、石膏ボード等の無機質板、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、塩化ビニル、ポリアセタール等の樹脂を板状に成形した樹脂板等を用いることができる。拡散壁体1の材質としては、外観、強度及び加工性の観点から特にケイカル板が好ましい。グラスウールなどの繊維多孔質材を壁材とすると、残響時間が抑制されて室の使用者に響きが足りないという指摘を受けることがあるが、ケイカル板であれば残響時間を抑制しすぎないので好適である。また、グラスウールなどの繊維多孔質材を壁材とすると、高級感や強度の点で難があるが、ケイカル板であれば質感及び強度に優れる。
【0025】
拡散壁体1は、建物の室を構成する柱や胴縁等の躯体にビス止めしてもよいし、躯体に固定された合板に拡散壁体1の背面を両面テープや粘着剤で貼り付けて固定してもよい。拡散壁体1は、室の平行壁として施工されることが望ましい。拡散壁体1によって平行壁間におけるフラッターエコーを抑制することができるからである。
【0026】
図1及び図2に示すように、単位壁面2は、所定の凹凸形状で構成される第1領域3と、第1領域3と外縁20との間にある所定の凹凸形状で構成される第2領域4と、からなる。
【0027】
第1領域3の凹凸形状は、複数の第1菱形面30で構成される。凹凸形状は、第1菱形面30の内部に形成された凹凸を用いて形成してもよいし、隣接する第1菱形面30の高さの相違により形成してもよい。ここで「高さ」は、拡散壁体1の背面からの距離であり、拡散壁体1の厚さである。第1菱形面30は、拡散壁体1を正面視した状態でその外形が菱形に形成された面である。菱形の大きさや凹凸形状は、同一でも、第1菱形面30毎に異なっていてもよいし、複数種類例えば二種類の第1菱形面30を組み合わせてもよい。ここで「菱形」には長方形は含まれない。このような拡散壁体1によれば、従来のような吸音層を前面に設けないので、壁体の厚みを抑制することができ、室の有効面積を確保
することができる。
【0028】
第2領域4の凹凸形状は、複数の三角面40で構成される。凹凸形状は、三角面40の内部に形成された凹凸を用いて形成してもよいし、隣接する三角面40の高さの相違により形成してもよい。三角面40は、拡散壁体1を正面視した状態でその外形が三角形に形成された面である。
【0029】
図3に示すように、三角面40は、隣接する他の単位壁面2の三角面40と接合することで第2菱形面50を形成する。ここで「接合」は、隣接する三角面40同士が並んで配置されるという程度の意であり、隣接する三角面40同士を接着剤や固定手段で固定することまでを含まない。また、「他の単位壁面」は、同一の拡散壁体1における壁面であってもよいし、隣接して配置される他の拡散壁体1の単位壁面2であってもよい。拡散壁体1によれば、複数枚の拡散壁体1を並べて施工することで、室内側の壁面を複数の第1菱形面30と第2菱形面50とで構成することができるので、凹凸形状を有しながらも統一感があり意匠性に優れる。
【0030】
第1菱形面30及び三角面40は、拡散壁体1を正面視した状態における隣接する第1菱形面30、三角面40または外縁20との境界を外形とする。これらの境界は、例えば段部や谷部として形成される。そのため、第1菱形面30と第2菱形面50の底辺の部分には高さの差が生じており、その高さの差によって拡散壁体1で反射する音の共振を抑制すると共に、菱形の外形によって音の反射方向が上下左右以外の複雑な方向へ音を反射させることで音の共振を抑制すると考えられる。そのため、拡散壁体1によれば、第1領域3と第2領域4における所定の凹凸形状によりフラッターエコーを抑制することができる。凹凸形状の具体例については、第1実施形態及び第2実施形態で詳細に説明する。
【0031】
単位壁面2の凹凸形状の最大高低差が10mm以上50mm以下であることが好ましい。凹凸形状の最大高低差が10mm以上であれば、フラッターエコーを抑制する効果があると考えられ、凹凸形状の最大高低差が20mm以上であればより好ましい同効果があると考えられる。また、凹凸形状の最大高低差が50mm以下であれば、室内側への凹凸形状の突出量が抑えられるので、室の有効面積を確保することができる。さらに、凹凸形状の最大高低差が40mm以下であることが好ましい。ケイカル板を採用した場合には、強度の関係から最小肉厚が10mm以上であることが好ましく、市販のケイカル板を加工することで40mm以下の最大高低差を得ることができる。
【0032】
図1に網掛け範囲で示すように、拡散壁体1は、第1領域3の中央に複数の第1菱形面30により外形が正十角形の模様22が形成されることが好ましい。複数枚の拡散壁体1を並べて施工することにより、第1領域3の中央にある正十角形の模様22が並ぶため、壁全体が統一感のある優れた意匠となる。また、模様22が第1菱形面30を組み合わせた正十角形であることにより、上下左右以外の方向への複雑な音の反射が可能となり、フラッターエコーを抑制できる。
【0033】
2.第1実施形態
図4図6を用いて、第1実施形態に係る拡散壁体100について説明する。図4は第1実施形態に係る拡散壁体100の正面図であり、図5図4におけるA-A断面図であり、図6は施工した拡散壁体100の正面図である。図4では壁面の高さを色の濃淡で表しており、濃い灰色が最も低く、白色が最も高く、薄い灰色が濃い灰色と白色の中間の高さである。また、図4では第1菱形面30を二つ、三角面40を二つ、及び第2菱形面50を1つ抜き出して示す。図6では模様22と第2菱形面50を網掛けで示し、三つの第2菱形面50を抜き出して示す。
【0034】
図4に示すように、拡散壁体100は、2つの単位壁面2aを上下に並べて構成される。拡散壁体100における第1菱形面30及び第2菱形面50の配置は、拡散壁体1と同じである。単位壁面2aは、異なる3つの壁面高さの第1面31,41、第2面32及び第3面33,43を含む。拡散壁体100の材質としては、上述したものを採用でき、特にケイカル板が好ましい。
【0035】
第1面31,41、第2面32及び第3面33,43は、いずれも背面5(図5)と平行な平坦な面である。最も高い第1面31,41は、例えば背面5から50mmの高さであり、最も低い第3面33,43とは40mmの高低差がある。第2面32は、例えば背面5から30mmの高さであり、第3面33,43とは20mmの高低差がある。第3面33,43は、例えば背面5から10mmの高さであり、拡散壁体100の板厚が最も薄い部分になる。隣接する壁面の高低差は10mm~40mmの間で適宜設定することができ、高さの異なる壁面は3種類に限らず、4種類以上であってもよい。
【0036】
第1面31,41、第2面32及び第3面33,43の外形は、いずれも三角形である。第1面31,41、第2面32及び第3面33,43の外形は、互いに隣接する他の面との高さの違いにより定まり、言い換えれば、各面の外形は全て段部として形成される。
【0037】
第1領域3に形成される第1菱形面30は、第1面31、第2面32及び第3面33の中から選択される2つ以上の面を組み合わせて構成される。本実施形態では図4で抜き出して示すように、第1菱形面30は、第1面31と第2面32との組み合わせによるものと、第1面31と第3面33との組み合わせによるものがある。第1菱形面30を構成する第1面31、第2面32及び第3面33は、2種類の二等辺三角形のいずれかの外形を有する。
【0038】
第2領域4に形成される三角面40は、第1面41及び第3面43の二つの高さの面である。図4及び図6に示すように、第2菱形面50は、第1面41及び第3面43を2つ以上組み合わせて構成される。上下に隣接する単位壁面2aの境界に形成される第2菱形面50は、4つの三角面40を組み合わせて構成される。
【0039】
拡散壁体100によれば、第1菱形面30及び第2菱形面50を高さの異なる三角面を組み合わせて構成することにより、音の拡散を生じさせてフラッターエコーを抑制できる。また、拡散壁体100によれば、高さの異なる三角面の組み合わせなので凹凸形状の高低差を低く抑えることができる。さらに、拡散壁体100によれば、三角面の組み合わせにより第1菱形面30及び第2菱形面50を構成するため、凹凸形状の加工が比較的容易である。
【0040】
3.第2実施形態
図7図9を用いて、第2実施形態に係る拡散壁体110について説明する。図7は第2実施形態に係る拡散壁体110の正面図であり、図8図7におけるB-B断面図であり、図9は施工した拡散壁体110の正面図である。図7では壁面の高さを色の濃淡で表しており、濃い灰色が最も低く、白色が最も高い。また、図7では第1菱形面30を二つ、三角面40を三つ、及び第2菱形面50を1つ抜き出して示す。図9では模様22と第2菱形面50を網掛けで示し、三つの第2菱形面50を抜き出して示す。
【0041】
図7に示すように、拡散壁体110は、2つの単位壁面2bを上下に並べて構成される。拡散壁体110における第1菱形面30及び第2菱形面50の配置は、拡散壁体1と同じである。拡散壁体110における第1菱形面30及び第2菱形面50は、外形が菱形の平面または底辺が菱形の四角錐である。当該平面には、第1平面300及び第2平面400がある。また当該四角錐には、第1四角錐301及び第2四角錐500がある。拡散壁
体110の材質としては、上述したものを採用でき、特にケイカル板が好ましい。
【0042】
第1平面300と第2平面400とは同じ高さに形成され、いずれも背面5(図8)と平行な平坦な面である。第1平面300及び第2平面400の高さは、例えば10mmである。
【0043】
第1四角錐301及び第2四角錐500は、第1平面300及び第2平面400の高さから突出する。第1四角錐301及び第2四角錐500は、いずれも同一形状である。第1四角錐301及び第2四角錐500の最大高さは、例えば50mmであり、第1平面300及び第2平面400に対する最大高低差が40mmである。したがって、図7では、第1四角錐301及び第2四角錐500の頂部が白色で、底辺に向かって徐々に灰色が濃くなるグラデーションで高低差を表す。
【0044】
第2領域4に形成される三角面40は、第2平面400の三角形と、第2突起401,402,403の3種類の突起の形態がある。図7及び図9に示すように、第2菱形面50は、第2平面400を4つ組み合わせて構成される面と、第2突起401,402,403を2つ以上組み合わせて構成される面とを含む。
【0045】
拡散壁体110によれば、第1菱形面30及び第2菱形面50を平面と四角錐を組み合わせて構成することにより、特に四角錐の傾斜面により上下左右以外の方向への音の拡散を生じさせてフラッターエコーを抑制できる。また、拡散壁体110によれば、平面と四角錐で凹凸形状を構成するため、設計が比較的容易である。
【実施例1】
【0046】
直径3000mm×最大厚さ50mmの円板状のケイカル板の表面中央に、上記実施形態1の単位壁面を切削加工により形成し、実施例1の拡散壁体の模型を得た。
【0047】
周囲を高度に吸音する壁体で囲まれた部屋の床に実施例1の拡散壁体を設置して、垂直入射乱反射率を測定した。ここで、実施例1の拡散壁体は天井と平行になるように平滑な面の床に設置した。測定方法は、土屋他、「縮尺模型を用いた音響乱反射率測定システムの開発」日本建築学会技術報告集 第25巻 第60号、2019.6に記載の方法で実施した。測定結果を図10に示す。図10において、横軸は周波数であり、縦軸は乱反射率である。
【0048】
図10によれば、実施例1の拡散壁体の模型における乱反射率が630Hz付近から上昇し、2~4kHz付近で大きな値を示した。乱反射率が高いほどフラッターエコーを低減することができることから、実施例1の拡散壁体の形状で1kHz以上のフラッターエコーを低減できることが確認された。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0050】
1…拡散壁体、2,2a,2b…単位壁面、3…第1領域、4…第2領域、5…背面、20…外縁、22…模様、30…第1菱形面、31…第1面、32…第2面、33…第3
面、40…三角面、41…第1面、43…第3面、50…第2菱形面、100…拡散壁体、110…拡散壁体、300…第1平面、301…第1四角錐、400…第2平面、401…第2突起、402…第2突起、403…第2突起、500…第2四角錐
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10