(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】カサレッチェ(乾燥マカロニ)を使用した焼きパスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240606BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20240606BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L35/00
(21)【出願番号】P 2021011578
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】菅野 究
(72)【発明者】
【氏名】志村 朋子
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 友彦
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-067163(JP,A)
【文献】特開平05-003760(JP,A)
【文献】原沢久夫ら,マカロニーの研究(I)各種マカロニーの分析,農産加工技術研究会誌,1956年,第3巻、第2号,p.47-52
【文献】パスタの種類は500種類以上!定番から珍しい種類まで、おいしい食べ方を紹介,ふるさと納税DISCOVERY[online],2022年08月31日,[2023年12月16日検索]、インターネット <URL: https://furunavi.jp/discovery/knowledge_food/202205-pasta-type/>
【文献】大量のお湯は不要!「蒸しパスタ」でプロのもっちり食感を楽しむ魔法のレシピ♪,macaroni[online],2017年12月05日,[2023年12月26日検索]、インターネット<URL:https://macaro-ni.jp/31563>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱できる容器に収容し可食状態まで茹でた時に水がなくなる量の水を加えて茹でた場合において、茹で比重が1.2以下1.0以上となるカサレッチェ(乾燥マカロニ
)を加熱できる容器に収容
し、前記カサレッチェ(乾燥マカロニ
)に可食状態まで茹でた時に水がなくなる量の水を加えて茹で、その後、ソースを添加して焼く、焼きパスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼きパスタ用乾燥マカロニ及びこれを使用した焼きパスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼きパスタは、可食状態まで茹で上げたパスタにソースを絡め、フライパンやオーブン等で焼き上げて調製するが、茹でた後ソースを絡めず焼き上げる焼きそば等とは焼き上げる工程でソースがパスタに絡んでいる点で異なっている。
焼きパスタに使用されるパスタとしては、ハーフサイズの乾燥スパゲティや、フジリやペンネをはじめとする種々の乾燥マカロニ類などが知られている。
茹で上げた麺類を焼き上げる方法として、α化した麺類を、高温の雰囲気温度で、好ましくは280℃~360℃の雰囲気温度で短時間加熱して、炒め調理と焼き色付けが施
された麺類に仕上げることを特徴とする麺類の加熱調理が知られているが焼き上げる工程ではソースを絡めていない(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
焼きパスタは、茹で上げたパスタをソースに絡めて焼き上げるが、ソースに含まれる水分をパスタが吸ってしまうため、パスタの食感を損ないやすいという問題があった。
通常は、固めに茹上げて食感を調整することが行われているが、調整方法は確立しておらず安定した品質の焼きパスタを得ることが困難であった。
本発明の目的は、食感に優れた焼きパスタを得ることができる焼きパスタの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の茹で比重となるパスタを使用することで、パスタの食感が良好な焼きパスタを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、加熱できる容器に収容し可食状態まで茹でた時に水がなくなる量の水を加えて茹でた場合において、茹で比重が1.2以下1.0以上となるカサレッチェ(乾燥マカロニ)を加熱できる容器に収容し、前記カサレッチェ(乾燥マカロニ)に可食状態まで茹でた時に水がなくなる量の水を加えて茹で、その後、ソースを添加して焼く、焼きパスタの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法により食感の良好な焼きパスタを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する乾燥マカロニとは日本農林規格で定めるところの「マカロニ類」であり、表示基準に拠るところの「マカロニ類」のうちの「マカロニ」に属するものをいう。
形状により、ペンネ、フジリ、チューブ等と呼ばれている。
本発明では、前記乾燥マカロニのうち茹で比重が1.2以下1.0以上の乾燥マカロニを使用する。
茹で比重は、マカロニの形状や肉厚によって異なるが、肉厚が薄い場合に茹で比重が大きくなり、肉厚が厚い場合に茹で比重は小さくなる傾向がある。
ただし、肉厚があまりに厚く、可食状態となるまでに長い茹で時間を要する場合は、茹で比重が小さくなることがある。
【0008】
本発明において茹で比重とは、膨化率を茹で歩留まりで除した値をいい、膨化率は茹でた後の体積を茹でる前の体積で除した値、茹で歩留まりは茹でた後の質量を茹でる前の質量で除した値である。
膨化率の測定方法としては、例えば、まずメスシリンダー等に水を入れておき、茹でる前と茹で後のパスタをそれぞれ同じ数、メスシリンダーに入れ、それぞれの体積を測定することで求めることができる。
【0009】
本発明では、特定の乾燥マカロニを使用することを特徴とするが、それ以外の材料は従来から焼きパスタに使用されている材料が使用できる。
例えば、使用できるソースとして、トマトソース、クリームソース、ホワイトソース、チーズソース、オイルソース、カレーソース、デミグラスソース等を挙げることができる。
喫食方法も従来の焼きパスタと同様でよい。
【0010】
本発明では、前記乾燥マカロニを使用することで、加熱できる容器に収容した乾燥マカロニに可食状態まで茹でた時に水がなくなる量の水を加えて茹で、その後、ソースを添加して焼く、焼きパスタの製造方法においても良好な食感を得ることが出来る。
一例として、深底フライパンに、乾燥パスタと可食状態になるまで茹でることができ茹で後に水がなくなる量の水を収容し水がなくなるまで加熱した後、パスタソースを加え、そのままフライパンで焼き上げる焼きパスタの製造方法を挙げることが出来る。
【0011】
前記加熱できる容器に収容した乾燥マカロニに可食状態まで茹でた時に水がなくなる量の水は、深底フライパンを使用する場合、「乾燥マカロニの質量×1.2+41×(茹で時間(分))」を目安として求めることが出来る。
前記茹で時間は、水が沸騰してからの茹で時間である。
【実施例】
【0012】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
・実施例1
直径26cm、深さ8cmの深底フライパンに、350mlの水と、カサレッチェ(乾燥マカロニ)120gを投入し、ガスコンロを使用して強火で加熱し3分後、湯が沸騰してから5分間茹でた。
このとき茹で水はなくなっていた。
なお、茹でる間、結着を防ぐため、30秒毎に1回撹拌した。
これにトマトソース140gを加え混和し、フライパンで3分間焼き上げ焼きマカロニを得た。
・実施例2
実施例1において、乾燥マカロニをペンネに、使用する水の量を510mlに、沸騰後の茹で時間を10分間に変更した以外は実施例1と同様にして焼きマカロニを得た。
・実施例3
実施例1において、乾燥マカロニをフジリに変更した以外は実施例1と同様にして焼きマカロニを得た。
・比較例1
実施例1において、乾燥マカロニをチューブに、使用する水の量を510mlに、沸騰後の茹で時間を9分間に変更した以外は実施例1と同様にして焼きマカロニを得た。
・比較例2
実施例1において、乾燥マカロニをリガトーニに、使用する水の量を510mlに、沸騰後の茹で時間を9分間に変更した以外は実施例1と同様にして焼きマカロニを得た。
【0013】
実施例1、参考例2~3、比較例1~2で得られた焼きマカロニを焼き上げ後、室温で10分間自然冷却し粗熱のとれた状態で以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
・食感
5点・・・硬さ、粘弾性のバランスが非常に良い
4点・・・硬さ、粘弾性のバランスが良い
3点・・・普通
2点・・・硬さ、粘弾性のバランスが悪い
1点・・・硬さ、粘弾性のバランスが非常に悪い
【0014】
得られた評価結果を表1に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
また、膨張率、茹で歩留まり、茹で比重も記載している。
【0015】
【0016】
・実施例4
実施例1において、乾燥マカロニをカサレッチェに、フライパンで3分間焼き上げる工程を、耐熱容器に移し250℃に予熱したオーブンに入れ250℃で7分間焼成する工程に変更した以外は実施例1と同様にして焼きマカロニを得た。
・比較例3
実施例4において、乾燥マカロニをチューブに、使用する水の量を510mlに、沸騰後の茹で時間を9分間に変更した以外は実施例4と同様にして焼きマカロニを得た。
【0017】
実施例4、比較例3で得られた焼きマカロニを実施例1と同様にして評価を行った。
評価結果を表2に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
また、表1と同様に膨張率、茹で歩留まり、茹で比重も記載している。
【0018】
【0019】
本発明の乾燥マカロニを使用して得られた焼きマカロニはいずれも優れた食感であった。