(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】複数の荷電粒子ビームレットで試料を検査するための荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20240606BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/28 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020055227
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ペトル フラヴェンカ
(72)【発明者】
【氏名】ボフスラフ セダ
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特許第4041742(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/160688(WO,A1)
【文献】特開2002-353279(JP,A)
【文献】特表2008-507690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の荷電粒子ビームレットで試料を検査するための荷電粒子ビーム装置であって、
-試料を保持するための試料ホルダと、
-荷電粒子のビームを生成するためのソースと、
-前記荷電粒子のビームを、複数の荷電粒子ビームレットに変換し、かつ前記複数の荷電粒子ビームレットを前記試料上に集束させるための照明器と、
-前記複数の荷電粒子ビームレットによる照射に応答して、前記試料から発する放射束を検出するための検出器アセンブリと、を含み、
-前記荷電粒子ビーム装置が、
1Dのパターンで、前記複数の荷電粒子ビームレットを前記試料上に向けるために配設され、前記
1Dのパターンが、
2Dの幾何学的形状のエッジの部分を形成し、
-前記検出器アセンブリが、対応する
1Dのパターンに配設された複数の検出器ユニットを含み、各検出器ユニットが、前記複数の荷電粒子ビームレットのうちの関連付けられた1つによる照射に応答して、前記試料から発する放射束を検出するように
、前記試料に直接対向して配設されて
おり、
前記検出器ユニットが、対応する荷電粒子ビームレットに直接対向する前部端表面、ならびに前記試料に直接対向する下部表面を有するハウジングを含み、前記下部表面および前記前部端表面のうちの少なくとも1つが、前記対応する荷電粒子ビームレットによる照射に応答して、前記試料から発する前記放射束を検出するための検出器要素を含む、ことを特徴とする、荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記
1Dのパターンが、直線および/または曲線を含み、
および/または、前記
1Dのパターンが、半円または円を含む、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記荷電粒子ビーム装置が、前記複数の荷電粒子ビームレットで、前記試料を走査するように配設されている、請求項1または2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記荷電粒子ビーム装置が、前記複数の荷電粒子ビームレットの第1の方向への往復運動と、前記第1の方向に
直交する第2の方向への前記試料ホルダの往復運動と、のために配設されている、請求項3に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記検出器アセンブリが、複数のBSE検出器ユニットを含む後方散乱電子(BSE)検出器アセンブリである、請求項1~4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
前記検出器要素が、シンチレーション層または単結晶シンチレータを含む、請求項
1~5のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記検出器ユニットが、フォトニックセンサまたは固体直接電子センサを含む、請求項
1~6のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記検出器ユニットが、前記検出器要素の直接光結合のための光ガイド要素を含む、請求項
1~7のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
前記光ガイド要素が、前記シンチレーション層の前記フォトニックセンサへの直接光結合のために配設されている、請求項
6および
7を引用する請求項
8に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
前記光ガイド要素が、少なくとも5mm、
または、少なくとも10mmの距離にわたって延在している、請求項
8または
9に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
前記複数の検出器
ユニットが、対応する1Dのパターンで配設されている、請求項1~
10いずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
請求項1~11いずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置を用いて複数の荷電粒子ビームレットで試料を検査する方法であって、前記方法が、
-試料を提供するステップと、
-複数の荷電粒子のビームを提供し、かつ前記複数の荷電粒子ビームレットを、前記試料上に集束させるステップと、
-前記複数の荷電粒子ビームレットによる照射に応答して、前記試料から発する放射束を検出するステップと、を含み、
前記方法が、
-
1Dのパターンで、前記複数の荷電粒子ビームレットを前記試料に向けるステップと、
-前記複数の荷電粒子ビームレットのうちの関連付けられた1つによる照射に応答して、前記試料から発する放射束を検出するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
第1の方向において、前記荷電粒子ビームレットを前記試料上に移動させ、かつ同時に、前記第1の方向に
直交する第2の方向において、前記試料を移動させることにより、前記荷電粒子ビームレットで前記試料を走査するステップを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
放射束を検出することが、後方散乱電子を検出するステップを含む、請求項
12または
13に記載の方法。
【請求項15】
検出器と前記試料との間の距離が、前記試料の検査中に一定に保たれている、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の荷電粒子ビームレットと対応する複数の検出器要素の相互位置が、整列している、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
詳細な説明
本発明は、複数の荷電粒子ビームレットで試料を検査するための荷電粒子ビーム装置であって、
-試料を保持するための試料ホルダと、
-荷電粒子のビームを生成するためのソースと、
-当該荷電粒子のビームを、複数の荷電粒子ビームレットに変換し、かつ当該複数の荷電粒子ビームレットを当該試料上に集束させるための照明器と、
-当該複数の荷電粒子ビームレットによる当該照射に応答して、試料から発する放射束を検出するための検出器アセンブリと、を含む、荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のシステムでは、照明器は、対応する複数の荷電粒子ビームレットを規定するための開口のグリッドを有する、多開口レンズプレートを含む。開口アレイは通常、二重の役割を果たす。第一に、開口は、個々のビームレットを、それらが(例えば)電界放出器ガンによって放出される単一の大きなビームから切り取られるときに規定する。したがって、それらは個々のビームレットのためのビーム制限開口として機能する。第二に、プレートのうちの少なくとも一方側に電場があり、他方側に異なる場がある場合、個々の開口は、ビームレットのための(マイクロ)レンズとして機能する。したがって、ビーム全体についての一般的な交差点とは異なる平面のビームレットに対して(仮想)交差点が生成される。これにより、(例えば)ビームレットをプローブとして規則的な二次元パターンで試料上に集束することができる。あるいは、レンズには、ビーム規定に使用されるものとは異なる開口アレイを使用することができる。
【0003】
マルチビームレット装置は、上述の一般的に満足な結果を提供する。しかしながら、後方散乱電子の検出の場合、現在の設計にはいくつかの課題がある。さまざまな理由から、このようなツールで、後方散乱電子(BSE)を正確に検出することができることが望ましいであろう。例えば、BSEは一般的に、二次電子よりも大きな表面下の深さから発生するため、より多くの深さ関連情報を提供する。BSE降伏値はまた、試料の原子番号構成に関する情報を提供する。また、BSEは、深さの関数として優先エネルギーおよび/または放射角を示す傾向があるため、トモグラフィーを実行するための有用な基準として機能することができる。しかしながら、マルチビームEMの場合、さまざまな入力ビームによって沈殿したBSEフラックス(関連付けられた情報を含む)は、例えば、典型的なビーム配列構成(例えば、約3μmの(試料レベル)直交分離での14x14ビームなど)の場合、わずか数ミクロン程度の、試料表面のほんの少しの距離で混合/乱雑になる傾向がある。結果として、従来のBSE検出アーキテクチャが使用される場合、基本的にBSEの複雑な混合が登録される。したがって、後方散乱電子の検出、特に、これらのマルチビームレット装置での課題のうちの1つは、検出された後方散乱電子を対応するビームレットに正しく割り当てることにある。
【発明の概要】
【0004】
この観点から、検出器の機能を改善した荷電粒子ビーム装置を提供することが目的である。特に、個々のビームレット後方散乱電子の検出が可能な荷電粒子ビーム装置を提供することが目的である。
【0005】
この目的を達成するために、複数の荷電粒子ビームレットで試料を検査するための荷電粒子ビーム装置が、請求項1に定義されているように提供される。本明細書で定義されるように、荷電粒子ビーム装置は、試料を保持するための試料ホルダと、荷電粒子のビームを生成するためのソースと、当該荷電粒子のビームを複数の荷電粒子ビームレットに変換し、ならびに当該複数の荷電粒子ビームレットを当該試料上に集束させるための照明器と、を含む。さらに、荷電粒子ビーム装置は、当該複数の荷電粒子ビームレットによる当該照射に応答して、試料から発する放射束を検出するための検出器アセンブリ、を含む。
【0006】
本発明によれば、荷電粒子ビーム装置は、本質的に1D(一次元)のパターンで、当該複数の荷電粒子ビームレットを当該試料上に向けるために配設されている。当該本質的に1Dのパターンは、本質的に2Dの幾何学的形状のエッジの部分を形成する。本質的に1Dのパターンは、線にすることができるが、スプライン、曲線、円、またはそれらの組み合わせにすることもできる。本開示によれば、複数の荷電粒子ビームレットスポットは、それらがすべて本質的に2D(二次元)の幾何学的形状の外側境界または円周上に位置付けられるように配設されている。幾何学的形状は、長方形、正方形、三角形、円などとすることができる。
【0007】
本発明によれば、検出器アセンブリは、対応する本質的に1Dのパターンに位置付けられた複数の検出器ユニットを含み、各検出器ユニットは、当該複数の荷電粒子ビームレットのうちの関連付けられた1つによる照射に応答して、試料から発する放射束を検出するように配設されている。
【0008】
本質的に1Dのパターンで、複数の荷電粒子ビームレットを当該試料に向けることにより、当該本質的に1Dのパターンは、本質的に2Dの幾何学的形状のエッジの部分を形成し、また複数の検出器ユニットに対応する本質的に1Dのパターンを使用することができる。本質的に1Dのパターンにより各ビームレットに隣接する小さなアクティブ表面に直接的にアクセスすることができるため、この構成は、特に検出器ユニットの設計オプションに多くの設計の自由度を提供する。まず第一に、この構成は、2Dの幾何学的形状の外縁の外側に位置付けられるため、検出器ユニットに多くのスペースを提供し、放射方向および垂直方向のすべてのスペースを、並列検出器の構築に利用することができる。第二に、設計上の制限が緩和され、これは、グリッド状のビームレットパターンを有する従来技術のマルチビームレット装置で必要とされていたように、検出器ユニットが、3つのより内部のビームレットに到達するために、隣接する2つの第1のビームレットと第2のビームレットとの間に到達する必要がないためである。本質的に1Dのパターンの場合、検出器ユニットを対応する荷電粒子ビームレットの近くに位置付けることができるようにするために、複雑な構築は必要でない。したがって、本明細書で定義されるような目的が達成される。
【0009】
さらなる有利な実施形態を以下に説明する。
【0010】
一実施形態では、当該本質的に1Dのパターンは、直線を含む。当該本質的に1Dのパターンは、追加的または代替的に曲線を含んでもよい。当該本質的に1Dのパターンは、半円または円(の部分)を含んでもよい。これらはすべてスペースの利点を提供するジオメトリであり、検出器ユニットに関してもコンパクトな設計を可能にする。半円または円(の部分)の場合、荷電粒子ビームレットを荷電粒子ビーム装置の光軸から実質的に等距離に配置すると有利である。このようにして、ビームレットはすべて、本質的に同じ光学収差を示し、必要に応じて均一な様式で相殺され得る。
【0011】
一実施形態では、荷電粒子ビーム装置は、当該サンプルを当該複数の荷電粒子ビームレットで走査するように配設されている。これにより、試料の大部分を効果的な様式で調査することが可能になる。
【0012】
当該荷電粒子ビーム装置が、複数の荷電粒子ビームレットの第1の方向への往復運動と、第1の方向に実質的に直交する第2の方向への試料ホルダの往復運動とのために配設されている場合、当該サンプルの効果的な走査が得られ得る。このように、試料は、例えば、左から右に第2の方向において移動し得、一方で同時に、ビームレットは、例えば、上下に第1の方向において、前後に、すなわち往復様式で移動することができる。これにより、サンプルの広い区域を迅速かつ効果的な様式で走査することができる。代替の移動スキームもまた考えられることは明らかである。例えば、ビームレットを上下に移動しながら、サンプルを往復様式で移動させることができる。荷電粒子ビームレットの第1の方向における移動中、および試料ホルダの第2の方向における移動中に、ドリフト補正、歪み補正などを可能にするために、荷電粒子ビームレットの第2の方向における追加の移動および/または第1の方向における試料ホルダの追加の移動が考えられることに留意されたい。
【0013】
一実施形態では、当該検出器アセンブリは、複数のBSE検出器ユニットを含む、BSE検出器アセンブリである。
【0014】
一実施形態では、複数の検出器ユニットのうちの少なくとも1つは、対応する荷電粒子ビームレットに向けられた前部端表面と、当該サンプルに向けられた下部表面と、を有するハウジングを含む。この設定により、検出器ユニットを対応する荷電粒子ビームレットの比較的近くに位置付けることができるため、検出された信号を正しい荷電粒子ビームレットに割り当てるのに役立つ。
【0015】
一実施形態では、当該下部表面は、当該対応する荷電粒子ビームレットによる照射に応答して、試料から発する当該放射束を検出するための検出器要素を含む。
【0016】
検出器要素は、代替的または追加的に、当該前部端表面が検出器要素を含んでいてもよい。
【0017】
当該検出器要素は、シンチレーション層および/または単結晶シンチレータを含んでいてもよい。
【0018】
一実施形態では、当該検出器要素は、フォトニックセンサまたは固体直接電子センサを含む。
【0019】
一実施形態では、当該検出器ユニットは、当該検出器要素の直接的な光結合のための光ガイド要素を含む。当該光ガイド要素は、当該シンチレーション層の当該フォトニックセンサへの直接的な光結合のために配設されてもよい。
【0020】
別の実施形態では、検出器要素および光ガイド要素として機能する、単結晶シンチレータが使用される。単結晶シンチレータは、フォトニックセンサまたは固体直接電子センサと接触され得る。
【0021】
光ガイド要素は、少なくとも5mm、特に少なくとも10mmの距離にわたって延在していることが考えられる。
【0022】
シンチレータ層が使用される場合、本質的に1Dのパターンを使用するアプローチは、光ガイド素子を介して、シンチレータからフォトニックセンサへの直接的な光結合を可能にする。円または半円の1Dのパターンが複数のビームレットに使用される場合、-したがって、検出器ユニットにも使用される場合、-これにより、光ガイドは円の一定のセクタ(一定の角度)を占めることができ、このことは、光ガイドが、光軸から約10mm離れた後に、ミクロンサイズの寸法からミリメートルに拡張することを可能にする。これにより、各ビームレットチャネルに個別のフォトダイオード/光電子増倍管を使用することができる。これにより、CMOSカメラ(kHzまで)と比較してより高い速度(>1MHz)を得ることができる。さらに、PMTまたはSiPMなどの個別のセンサは、好適なマクロ寸法を提供する。単結晶シンチレータが光ガイド素子として機能するため、単結晶シンチレータを使用する場合にも同様の利点がある。全体として、本明細書に示す設計は、複雑かつ困難な検出器アセンブリに頼ることなく、光ガイド要素を使用したよりよい光収集と、モノリシック検出要素を使用した大幅に簡単な整列ならびにロバスト性および複雑さの軽減と、を提供する。
【0023】
シリコンベースのセンサが使用される異なるアプローチの場合、1D-のパターン(線状または環状)は、各検出区域からの信号線の単純なルーティングに有利に使用され得、これは、従来技術で使用されるような密集した2Dグリッドでは不可能である。
【0024】
一態様によれば、複数の荷電粒子ビームレットで試料を検査する方法が提供され、この方法は、
-試料を提供するステップと、
-複数の荷電粒子のビームを提供し、かつ当該複数の荷電粒子ビームレットを、当該試料上に集束させるステップと、
-当該複数の荷電粒子ビームレットによる当該照射に応答して、試料から発する放射束を検出するステップと、を含む。
【0025】
本明細書で説明されるように、方法は、
-本質的に1Dのパターンで、当該複数の荷電粒子ビームレットを当該試料に向けるステップと、
-当該複数の荷電粒子ビームレットのうちの関連付けられた1つによる照射に応答して、試料から発する放射束を検出するステップと、を含む。
【0026】
一実施形態では、当該検出することは、特に、対応する本質的に1Dのパターンに配設された複数の検出器ユニットを使用して行われる。
【0027】
そのような方法の利点は、本明細書で開示される荷電粒子ビーム装置を参照することにより上記で説明された。方法は、本明細書で説明したような荷電粒子ビーム装置で実行されてもよい。
【0028】
有利な実施形態を以下に説明する。
【0029】
一実施形態では、方法は、特に、第1の方向において、当該荷電粒子ビームレットを当該試料上に移動させ、かつ同時に、当該第1の方向に実質的に直交する第2の方向において、当該試料を移動させることにより、当該荷電粒子ビームレットで当該試料を走査するステップを含む。
【0030】
一実施形態では、放射束を検出することは、後方散乱電子を検出するステップを含む。
【0031】
一実施形態では、検出器と試料との間の距離は、当該試料の検査中に一定に保たれている。さらに、検査中に検出器とビームレットとの間の距離を一定に保つことができる。ステージを移動させることにより、距離を一定に保つことができる。この結果を達成する他の方法がまたも考えられる。
【0032】
一実施形態では、複数の荷電粒子ビームレットと対応する複数の検出器要素の相互位置は、整列している。このようにして、検出器要素の中心とビームレットの中心位置は、接線方向で一致し、検出器要素のエッジとビームレットの垂直距離は、システム動作中に小さく、かつ実質的に一定に保つことができる。
【0033】
本発明は、ここで、例示的な実施形態および添付の概略図面に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明が実装される電子顕微鏡の一実施形態の長手方向断面立面図を描写している。
【
図2】従来技術の配設によって、電子ビームアレイが単一の前駆ビームから生成され得る様式を示している。
【
図3】第1の実施形態によって、複数の荷電粒子ビームレットの1Dのパターンを生成することができる様式を示している。
【
図4】第2の実施形態によって、複数の荷電粒子ビームレットの1Dのパターンを生成することができる様式を示している。
【
図5】第3の実施形態によって、複数の荷電粒子ビームレットの1Dのパターンを生成することができる様式を示している。
【
図6】サンプルが複数の荷電粒子ビームレットの複数の1Dのパターンを使用して検査され得る様式を示している。
【
図7】検出器アセンブリおよびその検出器ユニットの上面図および側面(断面)図を示している。
【
図8】一実施形態による、検出器の斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、マルチビーム走査電子顕微鏡(MBSEM)の形態で、荷電粒子ビーム装置の例を示す。MBSEM1は、一次荷電粒子ビーム3のアレイ、この場合では、一次電子ビーム3のアレイを発生させるためのマルチビーム荷電粒子発生器2aを含む。マルチビーム電子発生器2aは、発散電子ビーム5を発生させるための少なくとも1つの電子ソース4を含む。発散電子ビーム5は、開口レンズアレイ6によって、集束された一次電子ビーム3のアレイに分割される。続いて、一次電子ビーム3は、矢印Pで概略的に示されるように、サンプル15の方に向けられる。サンプルは、荷電粒子ビームレット3に対して所望の様式で位置付けられ得るように、ステージ上に位置付けられ得る。
【0036】
ソース4の複数の像は、加速器レンズ7の物体主平面上に位置付けられる。加速器レンズ7は、一次電子ビーム3を光軸8の方に向け、すべての一次電子ビーム3の第1の共通交差点9を生成する。
【0037】
第1の共通交差点9は、磁気集束レンズ10によって、電流制限開口として機能する可変開口11の上に結像される。可変開口11では、すべての一次電子ビーム3の第2の共通交差点が生成される。
【0038】
MBSEMは、一次荷電粒子ビームを可変開口11における共通交差点からサンプル表面15の方に向けて、すべての一次荷電粒子ビーム3をサンプル表面15上の個々のスポットのアレイに集束させるためのレンズシステム13、14を備える。レンズシステムは、可変開口11を対物レンズ14のコマフリー平面上に結像するための中間磁気レンズ13を備え、その対物レンズ14は、サンプル表面15上に集束された一次電子ビームのアレイを生成する。
【0039】
さらに、MBSEMには、サンプル表面15上で集束された一次電子ビームのアレイを走査するための走査コイル16が設けられている。
【0040】
この実施形態に示されるMBSEMにはさらに、共通交差点を含む平面内に少なくとも実質的にまたはその近くに、この場合では可変開口11の真下に、位置付けられた位置感知二次電子検出器12が設けられている。この二次電子検出システム12は、サンプル表面15上の各単一の一次電子ビームスポットの個々の二次電子像を取得するように配設されている。これは、このMBSEM1でサンプル表面15が走査されるとき、複数の像を単一走査期間内に同時に取得できることを意味する。
【0041】
図1に示されるような荷電粒子ビーム装置1は、複数の荷電粒子ビームレット3で試料15を検査するために配置される。荷電粒子ビーム装置は、試料を保持するための試料ホルダ15と、荷電粒子のビーム5を生成するためのソース4と、当該荷電粒子のビーム5を複数の荷電粒子ビームレット3に変換し、当該複数の荷電粒子ビームレット3を当該試料15の上に向けるための照明器2bと、を備える。照明器2bは、対応する複数の荷電粒子ビームレットを規定するための複数の開口を有する多開口レンズプレート6と、加えて、多開口レンズプレート6の表面に電場を発生させるための少なくとも第1の電極61と、当該複数の荷電粒子ビームレットによる照射に応答して試料15から発せられる放射束を検出するための検出器12と、を備える。ここで
図1に示されるような一般的なセットアップは、例えばEP2864997B1から当業者に知られており、このセットアップへの修正もまた当業者に知られていることに留意されたい。
【0042】
本明細書に開示されるような荷電粒子装置1は、多開口レンズプレート6を備え、当該多開口レンズプレート6の開口は、非円形断面形状を有する。これは、
図2から
図7に示されるようないくつかの実施形態に関してより詳細に議論される。多開口レンズプレートを使用すると、画像解像度が改善される。
【0043】
図2は、従来技術によって、多開口プレート6に形成された開口315の規則的なグリッド319を示している。各非外周開口、または中心開口「a」は、4つの直接隣接する開口「b」、「c」、「d」、および「e」を有し、2番目に最も近い4つの隣接する開口、または斜めに隣接する「f」、「g」、「h」、「i」を有する。
図2は、開口315が最も近い隣接ピッチで配列された基本アレイベクトル[10]を示し、
図2は、開口315が2番目に最も近い隣接ピッチで配列された基本アレイベクトル[11]を示す。各開口は、中心317を有する。ここに示す開口は、グリッドの輪郭またはエッジに位置付けられた外部開口i、b、f、c、g、およびグリッドの内部に位置付けられた内部開口e、a、h、dを有する、5x5のマトリクスに配設されている。そのような開口プレート6を使用して、従来のBSE検出アーキテクチャが使用される場合、BSEの複雑な混合が検出される。前述のように、後方散乱電子の検出、特に、これらのマルチビームレット装置での課題のうちの1つは、検出された後方散乱電子を対応するビームレットに正しく割り当てることにある。
【0044】
図3は、本開示の一実施形態によるセットアップを示している。ここで、多開口プレート6は、線を形成するように配設された複数の開口315を含む。多開口プレート6により、荷電粒子ビーム装置は、本質的に1Dのパターンで(この場合は直線の形で)、当該複数の荷電粒子ビームレットを当該試料上に向けることができる。この本質的に1Dのパターンにより、検出器アセンブリを、対応する本質的に1Dのパターンに配設された複数の検出器ユニットを含むように配設することができ、各検出器ユニットは、検出された信号を対応する荷電粒子ビームレットに正しく割り当てることができるように、対応するビームレットの比較的近くに位置付けられる。
【0045】
図3において、本質的に1Dのパターンは、直線を含む。あるいは、それは曲線であってもよい。本質的に1Dのパターンは、パターンに内部開口がないように配設されている。
図2に示すような内部開口e、a、h、dなどの内部開口を使用すると、第1の荷電粒子ビームレットによる照射に応答して試料から発する第1の放射束を、第2の隣接する荷電粒子ビームレットによる照射に応答して試料から発する第2の隣接する放射束から識別することが比較的難しくなる。これを行うためには、個々の検出器ユニットを試料の比較的近くに配設し、また荷電粒子ビームレットの比較的近くに配設する必要がある。特に内部開口の場合、これは、検出器ユニットを配置するための利用可能な空間が小さすぎるため困難である。しかしながら、本開示によれば、複数の荷電粒子ビームレットが本質的に1Dのパターンを形成する場合、特に、当該本質的に1Dのパターンが本質的に2Dの幾何学的形状のエッジの部分を形成する場合、上記の要件を満たすことができる。2Dの幾何学的形状は、正方形、長方形、三角形、円、またはそれらの部分にすることができる。これにより、すべての検出器ユニットが、側面から、つまり本質的に2Dの幾何学的形状の外側の輪郭から、サンプルおよび対応する荷電粒子ビームレットに近づくことができる。このようにして、検出器ユニットは、サンプルに十分近く、かつ対応するビームレットに十分近くに位置付けられて、検出された信号が対応する荷電粒子ビームレットから発せられることを確実にすることができる。当該検出器アセンブリが複数のBSE検出器ユニットを含む後方散乱電子(BSE)検出器アセンブリである場合、これは特に有利である。複数の検出器は、対応する1Dのパターンに配設されてもよく、または異なる1Dのパターンに配設されてもよい。例えば、
図3の実施形態では、検出器ユニットが交互に、例えば、荷電粒子ビームレットの両方(左および右)の側に交互に配設されることが考えられる。これにより、検出器ユニットのジグザグ1Dのパターンが得られる。また、それぞれ異なる側からの2つの専用検出器要素を使用して、まったく同じビームレットによって生成された信号を収集すること、したがって、信号収集効率を向上させ、かつ画像のSNRを改善することができる。
【0046】
ここで
図4を参照すると、本明細書に開示されるような荷電粒子ビーム装置が本質的に1Dのパターンで当該複数の荷電粒子ビームレットを当該試料上に向けることができる、多開口プレートのさらなる実施形態が示されている。ここで、多開口プレートは、並んで位置付けられた開口315の2つの列319a、319bを含む。示される実施形態では、本質的に1Dのパターンは、正方形または長方形325(点線)のエッジの部分を形成する。ここに示すような本質的に1Dのパターンでは、再び検出器ユニットを対応する本質的に1Dのパターンに配設し、当該複数の荷電粒子ビームレットのうちの関連付けられた1つによる照射に応答して、試料から発する放射束を確実に検出できるようにすることが可能である。この場合、第1の列319aと関連付けられた検出器は、図面の左手側に位置付けられてもよく、かつ第2の列319bと関連付けられた検出器は、図面の右手側に位置付けられてもよい。
【0047】
図3および
図4の実施形態では、荷電粒子ビームレットの本質的に1Dのパターンを規定するための多開口プレート6が参照される。この本質的に1Dのパターンを達成する他の方法も同様に可能であることは、当業者によって理解されるであろう。さらに、
図3では、合計5つの開口が使用され、
図4では、合計10の開口が使用されている。しかしながら、本質的に1Dのパターンでは、任意の数の開口を使用することが考えられる。
【0048】
所望の1Dのパターンは、多開口プレート6の多数の開口をブロックすることにより得られることがさらに考えられる。例えば、
図2に示されるような従来技術の開口プレート6では、内部開口(例えば、e、a、h、d)から来るビームレットは、ブロックされ、かつ試料に到達することができないことが考えられる。その場合、サンプルに到達するビームレットは、本質的に2Dの幾何学的形状(この場合は正方形)の外側の輪郭によって規定される本質的に1Dのパターンを形成することができ、これにより、検出器ユニットもまた対応する1Dのパターンに位置付けることができる。
【0049】
ここで
図5を参照すると、本明細書に開示されるような粒子ビーム装置が本質的に1Dのパターンで当該複数の荷電粒子ビームレットを当該試料上に向けることができる、多開口プレートのさらなる実施形態が示されている。ここで、本質的に1Dのパターンは、円325の2つのサブ-部分を含む。その意味では、この配設は、
図4の2列線形配設に非常に似ているが、2つの主な違いがある。第一に、
図5で使用される2列319a、319bは、円325上に配設され、すなわち、2Dの幾何学的形状(この場合は円325である)の外側の輪郭または外形上に配設されている。第二に、第2の列319bは、第1の列319aに対してわずかなオフセットを有する。
図5は、これを説明するための座標軸x、yを示している。第2の列319bは、第1の列319aと比較して(マイナス)y方向にわずかにオフセットされている。特に、オフセットは、第1の列319aの所与の開口が第2の列319bの隣接する開口の間にあるようなものである。この戦略は、
図4の実施形態にもまた適用可能である。このオフセットまたはずらし配設は、
図6に関して次に説明するように、サンプルを効果的かつ効率的に走査する際にいくつかの利点を有する。単一の列では、隣接する開口は、y方向に同じ距離を有することが好ましいが、この場合、開口は本質的に円325の外側の輪郭に配置されるため、x方向の距離は異なり得ることに留意されたい。
【0050】
ここで
図6を参照すると、本明細書に記載される荷電粒子ビームレット配設の概略上面図が示されている。複数のサンプル領域S
a-S
kを含むサンプル15の概略上面図が示されている。ここでは、明確にするために、すべてのサンプル領域に参照番号が提供されているわけではないことに留意されたい。各サンプル領域S
a-S
kは、関連付けられた荷電粒子ビームレット3a-3kを有している。サンプル15は、正(および負)のx方向(矢印S
sによって示される)に移動することができる。荷電粒子ビームレットは、正および負のy方向に移動することができる。サンプルおよびビームレットの追加的な移動がまた考えられる。したがって、荷電粒子ビーム装置は、当該サンプルを当該複数の荷電粒子ビームレットで走査するように配設されている。単一のビームレットの走査経路S
a-S
kを
図6に示す。サンプルを単一の方向S
sに移動し、同時にビームレット3a~3kを移動することによって。往復様式で上および下(サンプルの移動方向に実質的に直交して)に、サンプル15の比較的大きな部分を迅速、効果的かつ信頼できる様式で走査することが可能である。円の輪郭の形態でビームを1Dのパターンで配置すると、検出器ユニットをそれぞれのビームレットの近くに配置できるようにし(
図7を参照)、また収差を最小限に抑えることが確実になる。
【0051】
ここで
図7を参照すると、荷電粒子ビームレット3a~3eに対する検出器ユニット41a~41eの位置決めが、図の左手側部分に示されており、かつ単一の検出器ユニット41の断面図が、図の右手側部分に示されている。荷電粒子ビームレット3a~3eは、円の部分の形態で位置付けられていることが分かる。
図7の左の部分はセットアップの一部のみを示しており、完全なセットアップは
図6に示すセットアップと同様であることに留意されたい。しかしながら、
図3~
図5のうちの1つ以上に示すようなセットアップを使用することがまた考えられる。しかしながら、すべての場合において、個々の検出器ユニット41は、サンプル15に比較的近く、ならびに対応する荷電粒子ビームレット3a~3eの近くに位置付けられ得る。本明細書に開示されるようなセットアップにより、検出器ユニット41a~41eは、本質的に2Dの幾何学的形状(図示の実施形態では円である)の外側輪郭の外側部分から対応する荷電粒子ビームレットに近づくことができる。前述のように、本質的に2Dの幾何学的形状は、正方形、長方形、三角形、半円形、円、もしくは任意のその他の形状、またはそれらの部分もしくは組み合わせであってもよい。粒子ビームレット3a~3eによって規定される2Dの幾何学的形状の外側の輪郭に検出器を近づけることができるため、検出器ユニットを具現化するための利用可能な十分なスペースがある。言い換えれば、荷電粒子ビームレットによって規定された1Dのパターンは、対応する検出器ユニットのスペースの制約を緩和する。
【0052】
図7の断面は、サンプル15の表面に衝突する単一の荷電粒子ビームレット3を示し、それにより放射束Rを生成する。検出器ユニット41は、サンプルの表面の近くに、かつ荷電粒子ビームレット3の近くに位置付けられる。検出器ユニット41は、対応する荷電粒子ビームレット3に向けられた前部端表面52と、当該サンプルに向けられた下部表面51と、を有するハウジング50を含む。ハウジングは、上部表面53も含んでいる。前部端表面52は、下部表面51を上部表面53に接続する。さらなる周壁(図示せず)も同様に提供され得る。図示の実施形態では、下部表面51は、当該対応する荷電粒子ビームレット3による照射に応答して、試料15から発する当該放射束を検出するための検出器要素42を含む。代替的または追加的に、前部端表面52に、そのような検出器要素42を設けることができる。検出器要素は、シンチレーション材料の比較的薄い層にすることができる。
【0053】
図示の実施形態では、検出器41は、ハウジング50の内部に形成され、かつ当該検出器要素の直接光結合のために配設された、光ガイドLを含む。光ガイドは、研磨された反射「ハウジング」の内側の空のスペース、または光がガラスを通って伝播し、かつ全反射によって光真空境界から反射されるガラス部分のいずれかであり得る。図示の実施形態では、光は、センサ表面42からフォトニックセンサ43に結合される。センサ表面42は、薄いシンチレータ層であり得る。一実施形態では、センサ42は、固体直接電子センサとすることができる。
【0054】
代替の実施形態では、ハウジング50は、ガラスなどの透明材料から作製され、かつ光ガイドLとして機能し、検出器要素42は、光ガイド表面上に配置されたシンチレーション材料の薄層、およびそれに結合されたフォトニックセンサ43であることができる。
【0055】
代替の実施形態では、検出器要素42を備えたハウジング50は、センサ表面42の機能を備えた単結晶シンチレータであることができ、それはまた、フォトニックセンサ43に結合するための光ガイドLとして機能する。
【0056】
代替の実施形態では、ハウジング50は、固体直接電子センサ42を担持する。その場合、センサ要素43は存在しなくてもよい。
【0057】
ここで
図8を参照すると、合計5つの個々の検出器ユニット41を有する検出器アセンブリのセットアップが示されている。ここで、検出器ユニット41の1D配列を荷電粒子ビームレットの1Dのパターンに一致させることにより可能になったミクロからマクロスケールのスパンが、視覚化されている。ビームレットは、約100μmの直径を有する、2Dの幾何学的形状として円形の外側輪郭上に配設されている。光ガイドLは、検出器ユニットの前端部を個々のセンサ43(ここでは破線で概略的に示されている)のアレイに接続する。ここに示す光ガイドLの長さは約10mmであり、センサ43に近い端部面の幅は約2mmであり、それにより、検出器とセンサの良好な結合を可能にする。シリコンベースのセンサが使用される他の実施形態では、各検出区域からの信号線の単純なルーティングのために、1Dのパターン(線形、正方形、または円形)を活用することができる。これは、従来技術で使用される荷電粒子ビームレットの密集した2Dアレイでは不可能である。
【0058】
上記で、添付の図に関していくつかの実施形態が議論された。望ましい保護は、添付の特許請求の範囲によって決定される。