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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
F04D29/58 E
F04D29/58 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020091474
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021188527
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】村田 晶規
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 宏行
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217256(JP,A)
【文献】実開昭53-090201(JP,U)
【文献】特開昭59-119097(JP,A)
【文献】実開昭50-115601(JP,U)
【文献】実開昭51-152101(JP,U)
【文献】特開2002-098237(JP,A)
【文献】特開2019-039471(JP,A)
【文献】実開平03-080155(JP,U)
【文献】国際公開第2011/036917(WO,A1)
【文献】特開昭58-057096(JP,A)
【文献】実開昭63-061594(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 29/12
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送液を加圧する羽根車と、
前記羽根車が固定された回転軸と、
前記回転軸が貫通する開口から外部へ漏れる前記搬送液をシールする軸封装置と、を備えたポンプ装置において、
前記羽根車にて加圧された前記搬送液を前記軸封装置に流入する第1流路が前記開口にて形成されており、前記第1流路内の前記搬送液を所定の温度範囲内に保つ第2流路を備えており、
前記ポンプ装置は、前記第1流路を絞る絞り部として、第1絞り部と、前記第1絞り部よりも前記羽根車側に配置された第2絞り部と、を備えており、
前記第1絞り部は、前記第2絞り部よりも前記第1流路を小さくしており、
前記第1流路には、前記軸封装置に流れる前記搬送液が滞留する滞留室が形成されており、
前記第2絞り部は、前記滞留室の入口に形成されており、
前記第1絞り部は、前記滞留室の出口に形成されている、ポンプ装置。
【請求項2】
前記第2流路は、前記第1流路よりも軸径方向外側に形成されている、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記第2流路は、
外部から流体を流入する入口と、
前記入口から流入され、前記第2流路にて熱交換された流体が外部に排出される出口と、を有している、請求項1または請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記出口は、前記入口よりも前記第2流路の上部に配置されている、請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記絞り部は、着脱可能に構成されており、
前記ポンプ装置は、サイズの異なる、前記絞り部を含む複数の絞り部から選択して、前記絞り部の交換または着脱にて、前記第1流路の絞り幅を調整できる、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記滞留室は、前記回転軸の外周面と、前記羽根車を収容するポンプケーシングを覆う中間ブラケットのカバー部の内周面と、の間に形成されており、かつ前記回転軸の軸線方向において前記軸封装置に隣接している、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記第2流路は、前記滞留室を取り囲む環状の流路である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記羽根車を収容するポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングと前記回転軸を回転するモータとの間に配置された中間ブラケットと、を備え、
前記中間ブラケットは、
前記ポンプケーシングの開口端を覆うカバー部と、
前記カバー部に接続されたブラケット部と、を備えており、
前記第2流路は、前記カバー部および前記ブラケット部の少なくとも1つに形成されている、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記カバー部および前記ブラケット部は、一体成形部材から構成されている、請求項8に記載のポンプ装置。
【請求項10】
前記カバー部および前記ブラケット部は、別部材から構成されている、請求項8に記載のポンプ装置。
【請求項11】
前記羽根車を収容するポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングと前記回転軸を回転するモータとの間に配置された中間ブラケットと、を備え、
前記中間ブラケットは、
前記ポンプケーシングの開口端を覆うカバー部と、
前記カバー部を取り囲む流路形成部材と、を備えており、
前記第2流路は、前記カバー部と前記流路形成部材との間に形成されている、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項12】
前記中間ブラケットは、
前記カバー部に形成された第1環状凹部と、
前記流路形成部材に形成され、かつ前記第1環状凹部に対向する第2環状凹部と、を備えており、
前記第2流路は、前記第1環状凹部と前記第2環状凹部との間に形成されている、請求項11に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を圧送するためのポンプ装置は、搬送液の漏洩を防止するための軸封装置を備える。パッキン、メカニカルシールは、そのような軸封装置の代表的な例である(特許文献1参照)。
【0003】
軸封装置は、回転軸に固定された回転側シール部材とケーシングに固定された静止側シール部材を備え、回転軸の回転に伴って回転側シール部材が静止側シール部材と摺動する。これら回転側シール部材および静止側シール部材の摺動に起因して、軸封装置は発熱する。例えば、特許文献3には、軸封部の外側に水冷室を設け、軸封部を冷却することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-96374号公報
【文献】特開2017-89839号公報
【文献】特開昭52-9103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなポンプ装置では、その取り扱い液(搬送液)の温度の範囲が低温(例えば、マイナス25度)から高温(例えば、140度)である場合がある。取り扱い液の温度が低温または高温である場合、軸封装置の温度が許容範囲外となるおそれがある。
【0006】
例えば、取り扱い液が軸封装置よりも高温の場合、軸封装置は、回転側シール部材および静止側シール部材の摺動に加えて、取扱液との接触によって、更に高温となり、最悪の場合、許容温度を超えて故障するおそれがある。結果として、軸封装置は、その機能を十分に発揮することができず、液体が漏洩するおそれがある。また、軸封装置が取扱液と接触するのを避けるため、外部から摺動面に冷却液を注水することが考えられる。その場合、冷却液には取り扱いが簡単な水道水(清水)を用いることが望まれる。しかしながら、取り扱い液が、清水とは異なる液質の特殊液等である場合、冷却液が搬送液に混入して、搬送液の温度や液質に影響を与えてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、取り扱い液の液温や液質にかかわらず、軸封装置を許容温度の範囲内に保つことができるポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、搬送液を加圧する羽根車と、前記羽根車が固定された回転軸と、前記回転軸が貫通する開口から外部へ漏れる前記搬送液をシールする軸封装置と、を備えたポンプ装置において、前記羽根車にて加圧された前記搬送液を前記軸封装置に流入する第1流路が前記開口にて形成されており、前記第1流路内の前記搬送液を所定の温度範囲内に保つ第2流路を備えている、ポンプ装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記第2流路は、前記第1流路よりも軸径方向外側に形成されている。
一態様では、前記第2流路は、外部から流体を流入する入口と、前記入口から流入され、前記第2流路にて熱交換された流体が外部に排出される出口と、を有している。
一態様では、前記出口は、前記入口よりも前記第2流路の上部に配置されている。
【0010】
一態様では、前記第1流路を絞る絞り部を備えている。
一態様では、前記絞り部は、着脱可能に構成されており、前記絞り部の交換または着脱にて、前記第1流路の絞り幅を調整できる。
一態様では、前記絞り部として、第1絞り部と、前記第1絞り部よりも前記羽根車側に配置された第2絞り部と、を備え、前記第1絞り部は、前記第2絞り部よりも前記第1流路を小さくする。
【0011】
一態様では、前記第1流路には、前記軸封装置に流れる前記搬送液が滞留する滞留室が形成されている。
一態様では、前記滞留室は、前記軸封装置に隣接している。
一態様では、前記第2流路は、前記滞留室を取り囲む環状の流路である。
【0012】
一態様では、前記羽根車を収容するポンプケーシングと、前記ポンプケーシングと前記回転軸を回転するモータとの間に配置された中間ブラケットと、を備え、前記中間ブラケットは、前記ポンプケーシングの開口端を覆うカバー部と、前記カバー部に接続されたブラケット部と、を備えており、前記第2流路は、前記カバー部および前記ブラケット部の少なくとも1つに形成されている。
一態様では、前記カバー部および前記ブラケット部は、一体成形部材から構成されている。
一態様では、前記カバー部および前記ブラケット部は、別部材から構成されている。
一態様では、前記羽根車を収容するポンプケーシングと、前記ポンプケーシングと前記回転軸を回転するモータとの間に配置された中間ブラケットと、を備え、前記中間ブラケットは、前記ポンプケーシングの開口端を覆うカバー部と、前記カバー部を取り囲む流路形成部材と、を備えており、前記第2流路は、前記カバー部と前記流路形成部材との間に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
ポンプ装置は、軸封装置に流れる液体を常温にする常温流路を備えている。したがって、軸封装置は、高温または低温の液体との接触に起因して、故障するおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ポンプ装置の一実施形態を示す図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】第1流路および第2流路の一実施形態を示す断面図である。
図4】第1流路および第2流路の一実施形態を示す断面図である。
図5図5(a)および図5(b)は、第1流路および第2流路の一実施形態を示す断面図である。
図6】第1流路および第2流路の一実施形態を示す断面図である。
図7】横型ポンプ装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ポンプ装置の一実施形態を示す図である。図1に示すように、ポンプ装置は、取り扱い液(搬送液)を加圧する回転軸1と、回転軸1に固定された羽根車3と、羽根車3を収容するポンプケーシング5と、回転軸1を回転させるモータ7と、ポンプケーシング5とモータ7との間に配置された中間ブラケット50と、高圧の液体の漏洩を防止するための軸封装置30と、を備えている。ポンプケーシング5は、吸込口12および吐出口13を備えており、耐腐食性を有する材質(例えば、ステンレス)から構成されている。図1に示す実施形態では、回転軸1は鉛直に配置されている(図1の軸線CL方向参照)。また、中間ブラケット50は、回転軸1が貫通する開口50aを有し、軸封装置30は回転軸1が貫通する開口50aから外部(ここで外部は、モータ7)へ漏れる搬送液をシールする。
【0016】
モータ7が駆動されると、モータ7の回転は、回転軸1に伝達され、回転軸1および羽根車3が回転する。羽根車3が回転すると、液体は吸込口12を通ってポンプケーシング5内に流入し、羽根車3の回転に伴って昇圧される。昇圧された液体は、吐出口13から吐き出される。図1に示す実施形態では、羽根車3は、セミオープン型羽根車である。一実施形態では、羽根車3は、ボルテックス型羽根車であってもよく、クローズド型羽根車であってもよい。
【0017】
軸封装置30は、回転軸1と中間ブラケット50との間の隙間を封止する装置である。軸封装置30の一例として、ダブルメカニカルシールが挙げられる。軸封装置30は、回転軸1に固定された回転側シール部材(図示しない)と、中間ブラケット50に固定された静止側シール部材(図示しない)と、を備えている。したがって、回転軸1が回転すると、回転側シール部材は、静止側シール部材に摺接し、軸封装置30が発熱する。
【0018】
さらに、上述したように、このようなポンプ装置では、その取り扱い液の温度の範囲が低温(例えば、マイナス25度)から高温(例えば、140度)である場合がある。例えば、取り扱い液の温度が軸封装置30の許容温度よりも高温である場合、高温の取り扱い液が直接、軸封装置30に接触すると、摺動によって発熱した軸封装置30の温度が更に上昇してしまう。なお、本実施形態では、取り扱い液として、0.05mm程度のスラリーを含むスラリー液を含む。一実施形態では、取り扱い液は清水や汚水等でもよい。
【0019】
このように、軸封装置30は、回転側シール部材および静止側シール部材の摺動に加えて高温の取り扱い液との接触によって、非常に高温になり、故障するおそれがある。結果として、軸封装置30は、その機能を十分に発揮することができず、液体がモータ7側へ漏洩し、モータ7が被水するおそれがある。そこで、ポンプ装置では、軸封装置30の故障を確実に防止することができる構造が望まれる。
【0020】
図2は、図1のA-A線断面図である。図1および図2に示すように、ポンプ装置は、軸封装置30に流れる液体を所定の温度範囲内に保つ常温流路60を備えている。つまり、ポンプ装置は、開口50aが搬送液を軸封装置30へ流入する流路90(第1流路)を形成し、流路90内の搬送液を所定の温度範囲内に保つ常温流路60(第2流路)を備えている。本実施形態では、常温流路60は、中間ブラケット50に形成されている。より具体的には、中間ブラケット50は、ポンプケーシング5の開口端5aを覆うカバー部51と、カバー部51に接続されたブラケット部52と、を備えている。そして、常温流路60は、カバー部51およびブラケット部52の少なくとも1つに形成されている。
【0021】
図1に示す実施形態では、常温流路60は、カバー部51およびブラケット部52の両方に形成されているが、一実施形態では、常温流路60は、カバー部51にのみ形成されてもよく、または、ブラケット部52にのみ形成されてもよい。つまり、カバー部51における回転軸1が貫通する開口51aおよび/またはブラケット部52における回転軸1が貫通する開口52aにて開口50aが形成される。そして、開口50aは流路90を形成し、当該流路90の搬送液を所定の温度範囲内に保つことができるよう、常温流路60が開口50aの少なくとも一部分に近接して形成される。ここで、軸封装置30は、その製品仕様によって許容される温度範囲が決められている。以下、「流路90の搬送液を所定の温度範囲内に保つ」所定の温度範囲内の任意の温度を第1温度と記し、当該第1温度とは、軸封装置30が摺動によって発熱しても許容範囲内の温度に収まる流路90内の搬送液の液温のことを意味する。
【0022】
図1に示すように、常温流路60は、回転軸1の外周面と中間ブラケット50の内周面(開口50a)が形成する流路90よりも軸径方向外側に配置されている。羽根車3の回転によって加圧された取り扱い液は、この流路90を流れるときに、側壁60aで隔てた常温流路60の流体にて熱交換されて第1温度となった後、軸封装置30に接触する。つまり、常温流路60の流体にて適温となった流路90の取り扱い液を軸封装置30の潤滑に用いることができる。よって、軸封装置30は、取り扱い液の温度が許容範囲外であっても、許容範囲内の温度にて使用することができる。
【0023】
常温流路60は、液体入口61および液体出口62に連通している。液体(例えば、水道水)は、図示しない液体供給源から液体入口61を通じて、常温流路60に流入する。常温流路60に流入した常温の液体(例えば、0℃~65℃の清水)は、常温流路60の半径方向内側に配置された流路90に存在する液体の温度を所定の範囲内の第1温度(例えば、0℃~65℃)にする。
【0024】
例えば、取り扱い液の温度が軸封装置30の許容範囲よりも高温(例えば、140℃)である場合、高温の取り扱い液は、常温流路60を流れる液体(例えば、常温0℃~35℃の水道水や工業用水)によって、第1温度に冷却される。逆に、取り扱い液の温度が軸封装置30の許容範囲よりも低温(例えば、マイナス25℃)である場合、低温の取り扱い液は、常温流路60を流れる液体(例えば、常温0℃~35℃の水道水や工業用水)によって、第1温度に加熱される。これにより、軸封装置30の温度を許容範囲内に保つことができる。その後、常温流路60に流入した液体は、液体出口62から排出される。なお、常温流路60を流れる液体は、流体の一例であって、この流体の一例として、水道水、工場用水、不凍液のような液体であってもよいし、気体であってもよい。
【0025】
このように、軸封装置30が許容範囲外の温度の取り扱い液と接触するのを避けつつ、軸封装置30の温度を許容範囲内に保つための流体には取り扱いが簡単な清水(水道水や工場揚水等)を用いることもできる。また、本実施形態では、軸封装置30の温度調整に用いる常温流路60内の流体と、羽根車3にて昇圧する取り扱い液が混入しない。そのため、当該取り扱いと異なる流体を用いて、軸封装置30の温度を許容範囲内に保つことができる。つまり、使用者は、常温流路60の流体を設備や環境によって選択することができる。そのため、本実施形態のポンプ装置は、搬送液がスラリー等を含む特殊液の場合に特に有効である。
【0026】
更に、中間ブラケット50は、軸封装置30に流れる液体(すなわち、取り扱い液)の流路を絞る絞り部65を備えていることが好ましい。図1に示す絞り部65は、環状形状を有する部材(例えば、ブッシュ)である。絞り部65は、流路90の入口であるカバー部51の内周面に固定されており、回転軸1と同心状に配置されている。絞り部65は、取り扱い液の、軸封装置30への流路90(すなわち、絞り部65と羽根車3との間の隙間)を小さくすることで、流路90における取り扱い液の流れを制限することができる。これにより、流路90内の液体は、常温流路60の流体と熱交換される時間が長くなり、冷却または加熱効果が期待できる。また、本実施形態では、中間ブラケット50と絞り部65が別部材であり、絞り部65が着脱可能である。このように、当該絞り部65の交換または着脱にて第1流路の絞り量を調整できることが好ましい。これにより、ポンプ装置は様々な温度範囲の軸封装置30や取扱液に容易に対応できる。
【0027】
更に、軸封装置30と絞り部65との間には、軸封装置30に流れる液体の滞留室66が形成されていることが好ましい。この滞留室66は、回転軸1の外周面とカバー部51の内周面との間に形成された環状の部屋であり、絞り部65と羽根車3との間の隙間を通過した液体は、この滞留室66に滞留する。
【0028】
ポンプ装置の初期運転時において、羽根車3の回転によって、ポンプケーシング5内に流入した取り扱い液は、羽根車3と絞り部65との間の僅かな隙間を通過して、滞留室66に流入する。そして、一旦、滞留室66に流入した液体は、ポンプケーシング5内の圧力が十分に低下するまで滞留室66に滞留し続ける。
【0029】
常温流路60は、滞留室66の外側に配置されており、滞留室66は、軸封装置30に連通している。より具体的には、常温流路60は、滞留室66を取り囲む環状の流路である。したがって、滞留室66に存在する液体は、常温流路60を流れる液体によって、より積極的に熱交換される。
【0030】
このように、軸封装置30に接する液体を滞留室66に長時間滞留させて常温流路60を流れる液体による熱交換によって第1温度とすることにより、軸封装置30の温度が許容範囲内となる。つまり、軸封装置30の温度が許容範囲内となる所定の温度範囲内の取り扱い液が滞留室66に留まり、当該滞留室66に留まった液体が軸封装置30の潤滑に用いられる。このような構成により、所定の温度範囲外の高温または低温の液体の、軸封装置30との接触は、滞留室66に存在する第1温度の液体によって阻害される。結果として、軸封装置30は、高温または低温の液体との接触に起因して、故障するのを防止できる。また、吐出口13から吐き出される搬送液の温度や液質を保つことができる。
【0031】
図3は、第1流路90および第2流路60の一実施形態を示す断面図である。図3に示す実施形態では、ポンプ装置は、別部材から構成されたカバー部51と、ブラケット部52と、を備え、常温流路60は、カバー部51およびブラケット部52の両方に形成されている。更に、ブラケット部52の、カバー部51との接触面には、複数のシール溝が形成されており、これら複数のシール溝のそれぞれには、シール部材(例えば、Oリング)55,56が配置されている。これらシール部材55,56は、常温流路60を流れる液体の外部への漏洩を防止する。
【0032】
このように、カバー部51およびブラケット部52を別部材から構成し、その合わせ面に常温流路60を形成することにより、例えば、ポンプ装置の出荷時に常温流路60が設けられていないポンプ装置であっても、必要に応じて、常温流路60を追加的に形成することができる。つまり、低温や高温の取り扱い液を使用するための特殊仕様として、常温流路60にて軸封装置30の温度を許容範囲内に保つ必要が生じた場合に、ポンプ装置はカバー部51およびブラケット部52の少なくとも1つに、機械加工にて溝を形成すれば常温流路60を形成することができる。これにより、常温流路60が形成された新たなポンプ装置を用意することなく、常温(0℃~65℃)の取り扱い液を搬送するポンプ装置と、高温(65℃以上)または低温(0℃以下)の取り扱い液を搬送するポンプ装置の共用化ができる。
【0033】
図4は、第1流路90および第2流路60の一実施形態を示す断面図である。図4に示すように、ポンプ装置では、カバー部51およびブラケット部52が一体成形部材であってもよい。この場合、中間ブラケット50は、その内部に形成された環状の常温流路60を有している。このような常温流路60は、3Dプリンタなどの積層造形装置によって形成されてもよい。このように、カバー部51およびブラケット部52を一体成形部材から構成することにより、常温流路60を流れる液体の漏洩を防止するシール部材を配置する必要はない。なお、図3および図4に示すように、カバー部51は、その内周面に形成された環状凹部53を有してもよい。この場合は、回転軸1の外周面とカバー部51の環状凹部53との間に形成される。
【0034】
図5(a)および図5(b)は、第1流路90および第2流路60の一実施形態を示す断面図である。図5(a)に示すように、中間ブラケット50は、絞り部65として、絞り部65a(第1の絞り部)を備える。図5(a)の一点鎖線四角は、要部拡大図であり、具体的には、当該拡大図にて示すように、絞り部65aによって、流路90を形成する隙間の大きさがDn1からD1(Dn1>D1)となる。図5(b)に示すように、中間ブラケット50は、絞り部65として、絞り部65aに加えて、絞り部65aよりも流路90の入口側(つまり羽根車3側)に配置された絞り部65b(第2の絞り部)を備えている。図5(b)の一点鎖線四角は、要部拡大図であり、具体的には、当該拡大図にて示すように、絞り部65bによって、流路90を形成する隙間の大きさがDn2からD2(Dn2>D2)となる。ここで、図5(a)に示すように、中間ブラケット50は、流路90の入口側に配置された絞り部65bを備えておらず、軸封装置30に流れる取り扱い液の流路を絞る絞り部65aのみを備えてもよい。
【0035】
図5(a)および図5(b)に示す絞り部65は、環状形状を有する部材(例えば、ブッシュ)である。絞り部65は、カバー部51および/またはブラケット部52の内周面に固定されており、回転軸1と同心状に配置されている。図5(a)および図5(b)に示す実施形態では、カバー部51および絞り部65は、別部材から構成されているが、一体成形部材であってもよい。
【0036】
ブラケット部52に固定された絞り部65aは、その内周面と回転軸1との間の隙間の大きさD1、つまり第1流路の絞り幅を調整可能である。一例として、この隙間の大きさD1は、0.1mm程度まで調整可能である。カバー部51に固定された第2の絞り部65bは、その内周面と羽根車3のハブとの間の隙間の大きさD2、つまり、第1流路の絞り幅を調整可能である。一例として、この隙間の大きさは、0.3mm程度まで調整可能である。
【0037】
図5(b)に示す実施形態では、滞留室66の入口と出口に絞り部65が形成されている。つまり、取り扱い液は、滞留室66の出口の絞り部65を経て軸封装置30に供給される。ここで、絞り部65として絞り部65aと絞り部65bとを備えるポンプ装置は、軸封装置30側の隙間の大きさD1を、羽根車3側の隙間の大きさD2より小さくする(D1<D2)ことが好ましい。つまり、絞り部65aは絞り部65bよりも流路90を絞る。これにより、運転中のポンプ装置は、より効果的に滞留室66内に搬送液を留めることができる。
【0038】
また、常温流路60は、滞留室66を含む流路90全体を取り囲む。これにより、常温流路60内の流体による軸封装置30に供給される取り扱い液の熱交換が流路90全体で行われる。更に、常温流路60は、流路90に加えて軸封装置30を取り囲む環状流路であってもよい。これにより、軸封装置30の発熱も抑えることができる。なお、本実施形態の常温流路60は、図1から図4に示す形状に比して曲線的で且つ上に向かって徐々に変化している。このような形状は3Dプリンタなどの積層造形装置によって形成される場合に好適である。
【0039】
図5(a)に示す実施形態では、液体入口61および液体出口62のそれぞれは、カバー部51およびブラケット部52の両方に形成されているが、図5(b)に示すように、液体入口61は、カバー部51およびブラケット部52の両方に形成されており、液体出口62は、ブラケット部52にのみ形成されてもよい。この場合、液体入口61は、常温流路60の下部に接続されており、液体出口62は、常温流路60の上部に接続されている。つまり、液体入口61よりも液体出口62が、常温流路60の上部に配置されている。このような配置により、常温流路60の全体は、下部の液体入口61から導入された液体で満たされ、その後、液体は上部の液体出口62を通じて外部に排出されるため、常温流路60内の上下で液体の温度が偏るのを防止できる。
【0040】
図6は、第1流路および第2流路の一実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成や作用効果は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図6に示す実施形態では、中間ブラケット50は、軸封装置30を取り囲むカバー部70と、カバー部70を取り囲む流路形成部材71と、を備えている。常温流路60は、カバー部70と流路形成部材71との間に形成されている。
【0041】
カバー部70は、ポンプケーシング5の開口端5aを閉じるフランジ部70aと、フランジ部70aから突出した突出部70bと、を有している。突出部70bの外周面には、常温流路60の一部を構成する環状凹部72が形成されている。
【0042】
流路形成部材71は、常温流路60の他の部分を構成する環状凹部73が形成された円筒部75と、円筒部75の半径方向外側に延びる固定部76と、を備えている。常温流路60は、突出部70bの環状凹部72と円筒部75の環状凹部73とによって構成されている。円筒部75は、常温流路60に連通する液体入口61および液体出口62を有している。液体入口61および液体出口62のそれぞれには、液体(流体の一例)を導入するための配管63,64が接続されていてもよい。この場合、液体入口61および液体出口62のそれぞれは、ねじ構造を有していてもよい。
【0043】
図6に示す実施形態では、液体入口61は、円筒部75の下部に配置されており、液体出口62は、円筒部75の上部に配置されている。このような配置により、常温流路60の全体は、液体入口61から導入された液体で満たされ、その後、液体は液体出口62を通じて外部に排出される。
【0044】
流路形成部71は、締結具(例えば、ボルト)80を固定部76およびカバー部70のフランジ部70aに挿入して、締め付けることにより、カバー部70に固定される。流路形成部71とカバー部70との間には、シール部材(例えば、Oリング)81,82が配置されている。これらシール部材81,82は、常温流路60に導入された液体の漏洩を防止することができる。
【0045】
上述した実施形態では、回転軸1が鉛直方向に延びる縦型ポンプ装置について、説明したが、軸封装置30に流れる液体を常温にする常温流路60は、回転軸1が水平方向に延びる横型ポンプ装置に適用されてもよい。
【0046】
図7は、横型ポンプ装置の一実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成や作用効果は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0047】
図7に示すポンプ装置は、回転軸1が水平方向に延びる横型ポンプ装置である(図7の軸線CL方向参照)。図7においても、ポンプ装置は、搬送液を加圧する羽根車3と、羽根車3が固定された回転軸1と、回転軸1を回転させるモータ7と、羽根車3を収容するポンプケーシング5と、ポンプケーシング5とモータ7との間に配置された中間ブラケット50と、回転軸1と中間ブラケット50との間の隙間を封止する軸封装置30と、を備えている。つまり、軸封装置30は、回転軸1が貫通する開口50aから外部へ漏れる搬送液をシールする。そして、羽根車3にて加圧された搬送液を軸封装置30へ流入する流路90(第1流路)が開口50aにて形成されており、当該流路90内の搬送液を所定の温度範囲内に保つ常温流路60(第2流路)を備えている。なお、本実施形態の常温流路60は、液体入口61、液体出口62、配管63,64を備えていない。これに限らず、一実施形態の常温流路60は、液体入口61、液体出口62、配管63,64を備える。この場合も、常温流路60の、液体入口61よりも上部に、液体出口62が設けられることが好ましい。
【0048】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 回転軸
3 羽根車
5 ポンプケーシング
5a 開口端
7 モータ
12 吸込口
13 吐出口
30 軸封装置
50 中間ブラケット
50a 開口
51 カバー部
51a 開口
52 ブラケット部
52a 開口
53 環状凹部
55,56 シール部材
60 常温流路(第2流路)
60a 側壁
61 液体入口
62 液体出口
63,64 配管
65 絞り部
66 滞留部
70 カバー部
70a フランジ部
70b 突出部
71 流路形成部材
72,73 環状凹部
76 固定部
80 締結具
81,82 シール部材
90 流路(第1流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7