(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】同軸導波管を用いたプラズマ装置、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240606BHJP
C23C 16/511 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H05H1/46 B
C23C16/511
(21)【出願番号】P 2020105204
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-06-05
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】吉川 潤
(72)【発明者】
【氏名】野沢 俊久
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-021220(JP,A)
【文献】特開2004-055600(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149739(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0078320(US,A1)
【文献】特開平11-243062(JP,A)
【文献】特開2015-18683(JP,A)
【文献】特開2004-55614(JP,A)
【文献】特開平11-162956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00 - 1/54
C23C 16/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内導体と、前記内導体との間に第1間隙を設けて前記内導体を囲む外導体と、を有し、複数の分岐部で分岐した形状となっている同軸導波管と、
導体と、前記導体との間に第2間隙を設けて前記導体を囲む誘電体と、を有し、前記分岐部で分岐した前記同軸導波管の2つの端部をつなげることで前記第1間隙と前記第2間隙がつながる複数のロッドと、
前記同軸導波管のうち前記分岐部によって分岐した部分に設けられ、前記第1間隙に出したり入れたりできる導体のスタブと、を備えたことを特徴とするプラズマ装置。
【請求項2】
前記同軸導波管は、マイクロ波投入部と、前記複数の分岐部で分岐された複数の端部と、を有し、
前記複数の分岐部のうち最も前記マイクロ波投入部に近い分岐部である第1分岐部に、前記スタブを設けたことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項3】
前記第1分岐部は、前記マイクロ波投入部から前記同軸導波管に投入されたマイクロ波を3方向に分岐させることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ装置。
【請求項4】
前記複数のロッドは、略平行に配置されることで、センターロッドと、前記センターロッドを挟む2本のエッジロッドに分類され、
前記第1分岐部は、前記マイクロ波投入部が前記センターロッドにつながるか、前記マイクロ波投入部が前記エッジロッドにつながるかを決める分岐部であることを特徴とする請求項2又は3に記載のプラズマ装置。
【請求項5】
前記複数のロッドの下方に設けられたサセプタを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプラズマ装置。
【請求項6】
前記スタブは、複数設けられたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプラズマ装置。
【請求項7】
複数の前記スタブは平面視で前記内導体を囲むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプラズマ装置。
【請求項8】
前記スタブは、円柱状又は角柱状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプラズマ装置。
【請求項9】
前記スタブのうち前記内導体に対向する面は、前記内導体の表面形状に一致したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプラズマ装置。
【請求項10】
チャンバの中にガスを提供することと、
マイクロ波投入部から投入されたマイクロ波を、同軸導波管の分岐部にスタブを挿入することでパワー分配してから、複数のロッドの誘電体で覆われた空間に提供し、前記誘電体の外の前記チャンバに覆われた空間にプラズマを生じさせることと、
前記プラズマで基板に処理を施すことと、を備えた基板処理方法。
【請求項11】
前記複数のロッドの電界強度は不均一であることを特徴とする請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記複数のロッドは略平行に配置されることで、センターロッドと、前記センターロッドを挟む2本のエッジロッドに分類されることを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は同軸導波管を用いたプラズマ装置と、それを用いた基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマ源としてマイクロ波を用いたプラズマ装置が開示されている。このプラズマ装置は、外導体側から内導体側に延出可能なスタブ部材を有する。内導体は外導体の中央に対して位置ずれするので、内導体と外導体の間の径方向の隙間の不均一に起因してマイクロ波強度が不均一になる。スタブ部材の提供によって、当該位置ずれによる弊害を緩和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1とは基本構造の異なるプラズマ装置がある。具体的には、分岐した形状を有する同軸導波管を、誘電体で覆われたロッドでつなぎ、同軸導波管から当該誘電体の中にマイクロ波を提供する。すなわち、同軸導波管のマイクロ波投入部から投入されたマイクロ波は、同軸導波管の分岐構造を伝搬し、最終的に複数本のロッドまで到達する。ロッドの誘電体を介して生成された電界によりプラズマを生成させる。このような複数のロッドでプラズマを生成するプラズマ装置では、複数のロッドに提供されるマイクロ波パワーの比率をコントロールすることができない。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、プラズマ分布を制御し得るプラズマ装置と基板処理方法提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明に係るプラズマ装置は、内導体と、該内導体との間に第1間隙を設けて該内導体を囲む外導体と、を有し、複数の分岐部で分岐した形状となっている同軸導波管と、導体と、該導体との間に第2間隙を設けて該導体を囲む誘電体と、を有し、該分岐部で分岐した該同軸導波管の2つの端部をつなげることで該第1間隙と該第2間隙がつながる複数のロッドと、該同軸導波管のうち該分岐部によって分岐した部分に設けられ、該第1間隙に出したり入れたりできる導体のスタブと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本願の発明に係る基板処理方法は、チャンバの中にガスを提供することと、マイクロ波投入部から投入されたマイクロ波を、同軸導波管の分岐部にスタブを挿入することでパワー分配してから、複数のロッドの誘電体で覆われた空間に提供し、該誘電体の外の該チャンバに覆われた空間にプラズマを生じさせることと、該プラズマで基板に処理を施すことと、を備える。
【0008】
本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スタブの出し入れによりプラズマ分布を制御し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2Aはプラズマ装置の一部断面図であり、
図2Bは同軸導波管の断面図であり、
図2Cはロッドの断面図である。
【
図5】同軸導波管のうちスタブが設けられた部分の断面図である。
【
図10】電磁界シミュレーションの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
プラズマ装置と基板処理方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態.
図1は、プラズマ装置の構成例を示す斜視図である。このプラズマ装置はマイクロ波投入部10を備えている。マイクロ波投入部10には同軸導波管12が接続されている。プラズマ装置の外部にあるマイクロ波発生器から、マイクロ波投入部10を介して同軸導波管12にマイクロ波が提供される。マイクロ波投入部10の近傍にはチューナー11が設けられている。チューナー11は、マイクロ波投入部10の中の反射波を再び同軸導波管12に進行させる。
【0013】
同軸導波管12は、投入導波管12A、センター導波管12B及びエッジ導波管12Cを備えている。投入導波管12Aはz方向に伸びる導波管である。この投入導波管12Aには投入導波管12Aからx正負方向に分岐するエッジ導波管12Cがつながっている。エッジ導波管12Cは、分岐部12Dで投入導波管12Aから分岐し、その後もう一度分岐することで筐体14の側面につながっている。分岐部12Dは、マイクロ波投入部10から同軸導波管12に投入されたマイクロ波を3方向に分岐させる第1分岐部として機能する。
【0014】
投入導波管12Aの分岐部12Dより下方には別の分岐部があり、その別の分岐部にx正負方向に分岐するセンター導波管12Bがつながっている。センター導波管12Bは複数回分岐した後に筐体14の側面につながる。
【0015】
図1には筐体14の左側に同軸導波管12の端部12Eが6つつながることが図示されている。筐体14の右側にも同軸導波管12の端部12Eが6つつながる。このように、同軸導波管12は、マイクロ波投入部10と、複数の分岐部で分岐された複数の端部12Eとを有している。複数の分岐部のうち最もマイクロ波投入部10に近い分岐部が第1分岐部、すなわち分岐部12Dである。別の例によれば、同軸導波管12の分岐部の数を増減させて端部の数を増減させることができる。筐体14の下方にはチャンバ16が設けられている。
【0016】
図2Aは、プラズマ装置の一部断面図である。この図は、同軸導波管12とロッドの断面を説明するものであり、装置の一部を省略又は簡素化している。投入導波管12Aは、内導体12a´と、内導体12a´との間に第1間隙13を設けて内導体12a´を囲む外導体12a´´とを有している。センター導波管12Bは、内導体12b´と、内導体12b´との間に第1間隙13を設けて内導体12b´を囲む外導体12b´´とを有している。エッジ導波管12Cについても、内導体と、内導体との間に第1間隙を設けて内導体を囲む外導体とを有している。したがって、この例では、複数の分岐部で分岐した形状となっている同軸導波管12の全体が内導体と外導体を有する。内導体、外導体及び筐体14は金属である。
【0017】
図2Aには、チャンバ16の中に設けられたサセプタ26が図示されている。サセプタ26の上に被処理物である基板が乗せられる。一例によれば、複数のロッド24の下方にサセプタ26を設けることができる。処理内容に応じたガス源27からチャンバ16の中にガスが提供される。チャンバ16内のガスは、例えばサセプタ26の下方の排気口を通じて排気され得る。
【0018】
図2Bは、同軸導波管12の断面図である。同軸導波管12のどの部分についても、内導体と環状の外導体との間に第1間隙13がある。
【0019】
図2Aに示されるように、筐体14の内部にはロッド24が提供されている。ロッド24は、導体20と、導体20との間に第2間隙21を設けて導体20を囲む誘電体22と、を有している。ロッド24は、分岐部で分岐した同軸導波管の2つの端部をつなげることで、第1間隙13と第2間隙21がつながる。
【0020】
図2Cは、ロッド24の断面図である。誘電体22の材料は例えばアルミナ(Al
2O
3)又は窒化アルミニウム(AlN)などのセラミックとすることができる。
【0021】
図3は、プラズマ装置の平面図である。筐体14の中のロッド24は破線で示されている。複数のロッド24は、略平行に配置されることで、センターロッドと、センターロッドを挟む2本のエッジロッドに分類される。具体的には、6本のロッド24のうち中央の4本のロッド24は、センター導波管12B同士をつなぐセンターロッドである。6本のロッド24のうち両端の2本のロッド24は、エッジ導波管12C同士をつなぐエッジロッドである。この例では、すべてのロッド24は
図2Cで例示された断面と同じ構成を有する。
【0022】
同軸導波管12の内導体と、ロッド24の導体は、金属であれば特に限定されないが、例えば銀で表面コートされた銅である。同軸導波管12の外導体も金属であれば特に限定されないが、例えばアルミニウムである。
【0023】
図3には、一点鎖線でサセプタ26の外縁が描かれている。この例では、すべてのロッド24がサセプタ26の直上に位置している。
【0024】
図1に示される例では、センター導波管12Bがx正負方向の両方で2回づつ分岐することで、4本のセンターロッドの提供を可能としている。しかしながらセンター導波管12Bの分岐部の数を変更することで任意の数のセンターロッドを提供することもできる。
【0025】
図1に示される例では、エッジ導波管12Cがx正負方向の両方で1回づつ分岐することで、2本のエッジロッドの提供を可能としている。しかしながら、エッジ導波管12Cの分岐部の数を変更することで任意の数のエッジロッドを提供することもできる。
【0026】
図4は、分岐部12Dの斜視図である。エッジ導波管12Cは、内導体12c´と、外導体12c´´を備えている。
図4では、外導体12a´´、12c´´の内側が可視化されている。第1分岐部である分岐部12Dにスタブ30が設けられている。スタブ30は例えば金属などの導体で形成されている。
図4の例では、複数の円柱状のスタブ30が図示されている。スタブ30は、第1間隙13に入れたり、第1間隙13から出したりできるものである。スタブ30は、例えば外導体12a´´の穴に隙間無くはめ込むことができる。
【0027】
図5は、同軸導波管12のうちスタブ30が設けられた部分の断面図である。
図5の例では、スタブ30は環状に6個設けられている。スタブ30の数は1つでもよいが、複数設けることができる。複数のスタブ30は、平面視で内導体12a´を囲み得る。スタブ30の内導体12a´の方向への突出量dは、スタブ30のうち最も内導体12a´に近い位置と、外導体12a´´の内壁との距離によって定義される。
【0028】
図4のx正負方向の矢印はエッジ導波管12Cに供給されるマイクロ波を表す。
図4のz負方向の矢印は分岐部12Dで分岐されずセンター導波管12Bに供給されるマイクロ波を表す。したがって、分岐部12Dは、マイクロ波投入部10から提供されたマイクロ波パワーを3方向に分岐させる。そして、第1分岐部である分岐部12Dは、マイクロ波投入部10がセンターロッドにつながるか、マイクロ波投入部10がエッジロッドにつながるかを決める分岐部である。前述のスタブ30の突出量dに応じて、センターロッドへのマイクロ波パワーとエッジロッドへのマイクロ波パワーの比率を調整することができる。スタブ30の突出量dの連続的変化は、当該比率の連続的変化をもたらす。センターロッドへのマイクロ波パワーとエッジロッドへのマイクロ波パワーの比率を調整することは、ロッドの外側におけるプラズマ生成率をセンターとエッジで制御できるということである。したがってスタブの突出量dを変化させることは、プラズマの分布を変化させる。
【0029】
図6は、別の例に係るスタブを示す図である。この例では、スタブ32は角柱状となっている。
図7は、別の例に係るスタブを示す図である。この例では、2個のスタブ34が提供される。スタブ34のうち内導体12a´に対向する面は、内導体12a´の表面形状に一致している。
図8は、
図7のスタブ34の平面図である。スタブ34は矢印方向に移動することで、その突出量を変化させる。スタブ34のうち内導体12a´に対向する面34Aの形状を、内導体12a´の表面形状に一致又は類似させることは、スタブ34によって第1間隙13の大部分を塞ぐことを可能とする。
【0030】
このように、様々な形状のスタブを利用することができる。例えば、製造容易性、第1間隙13への出し入れの容易性、第1間隙13の遮蔽面積などを考慮して、スタブの形状を任意に設定することができる。
【0031】
図9は、スタブの配置例を示す図である。この例では、前述したスタブ30に加えて、エッジ導波管12Cにスタブ36、38が提供されている。スタブ36、38は、エッジ導波管12Cにおける第1間隙13に対して出し入れされる。この構成例では、スタブ30、36、38の第1間隙13への突出量を調整することで、プラズマの分布を変化させることができる。別の例によれば、スタブ36、38を提供し、スタブ30を省略することができる。
【0032】
上述の例では、マイクロ波投入部10から見て最初の分岐部である分岐部12Dにスタブを提供することで、センターロッドとエッジロッドのマイクロ波パワーの比率を調整し得る構成とした。しかしながら、同軸導波管12のうち分岐部によって分岐した任意の部分にスタブを設けることができる。例えば、マイクロ波投入部10から見て2つ目又は3つ目の分岐部にスタブを設けることもできる。
【0033】
上述のプラズマ装置を用いた基板処理方法について説明する。例えば
図2Aに例示されるガス源27からチャンバ16の中にガスを提供する。チャンバ16にガスが提供された状態で、又はチャンバ16にガスを提供しながら、チャンバ16内にプラズマを生成する。具体的には、マイクロ波投入部10から投入されたマイクロ波を、同軸導波管12の分岐部にスタブを挿入することでパワー分配してから、複数のロッド24の誘電体22で覆われた空間に提供する。そうすると、誘電体22の外側に染み出たマイクロ波が誘電体22の外側にプラズマを生じさせる。このプラズマがチャンバ16の中に広がり、誘電体22の外のチャンバ16に覆われた空間にプラズマを生じさせる。そのプラズマでサセプタ26の上の基板に処理を施す。基板処理は例えば、成膜、エッチング又は膜の改質である。
【0034】
スタブの突出量dが0であれば、基本的にはプラズマが不均一になる。プラズマ不均一の度合いはプロセスによる。第1間隙13にスタブを挿入しないと、プラズマが不均一に分布し、
図10に示されるように電界強度が不均一になり得る。スタブはこのようなケースにおいてパワーの比率を制御し、プラズマ不均一性を調整するために用いることができる。スタブを外導体の内壁から内導体の方向へ突出させることで、複数のロッドへのパワーの分配比が変動し、複数のロッドの電界強度を不均一とすることができる。ロッドの電界強度を不均一とすることは、例えばプラズマ密度の不均一性などのプロセスの不均一性を補償し、プロセス均一性を向上させ得る。言いかえれば、不均一なプラズマ分布がプロセス均一性をもたらすことがある。このような目的を実現するために、センターロッドの電界強度をエッジロッドの電界強度より大きくしたり、センターロッドの電界強度をエッジロッドの電界強度より小さくしたりすることができる。
【0035】
図10は、電磁界シミュレーションの結果を示すグラフである。横軸はスタブの突出量dであり、縦軸はセンターロッドとエッジロッドのパワー吸収量の比である。シミュレーションのモデルは、上述のプラズマ装置を採用し、チャンバ16の内部のプラズマ密度は均一であることを仮定した、比較的簡易なものとした。スタブの構造として
図7のスタブ34を採用して計算した。このシミュレーションは、プラズマ密度、即ち電子密度が5.00E+17(1/m
3)のときと、プラズマ密度が7.00E+17(1/m
3)のときについて行った。
【0036】
このシミュレーションでは、どちらのプラズマ密度についても、スタブ突出量が大きくなるほどセンターロッドでのパワー吸収量が大きくなる傾向が見られた。より具体的には、スタブの突出量を増加させていくことで、センターロッドよりもエッジロッドのパワー吸収量が多い状態から、センターロッドよりもエッジロッドのパワー吸収量が少ない状態へシフトさせることができる。したがって、初期のプロセス結果が「エッジでプラズマ密度が高い」ことを示唆した場合、スタブの突出量を大きくすることでセンターロッドのパワー吸収量を増加させ、プラズマを均一に近付けることができる。発明者は、
図4、6のスタブ形状でも、これと同じ傾向が得られることを確認した。
図11-13は、スタブの突出量を変化させたときのロッドの電界強度を表す図である。ロッドにおいて濃い青色の部分が赤色の部分よりも電界強度が低い。赤色の部分は最も高い電界強度を有する。濃い青色の部分は最も低い電界強度を有する。
【0037】
上述のプラズマ装置と基板処理方法は様々な変形が可能である。例えば、同軸導波管内の分岐部にスタブを出し入れする手段は手動でもよいし、電気制御でもよいし、ねじ式でもよい。手動でスタブを出し入れする場合はスタブの側面に目盛りを設けておくことで、スタブの突出量を正確に把握できる。ねじ式のスタブの場合、ねじの回転量からスタブの突出量を正確に把握できる。
【符号の説明】
【0038】
10 マイクロ波投入部、 12 同軸導波管、 12A 投入導波管、 12B センター導波管、 12C エッジ導波管、 12E 端部、 13 第1間隙、 14 筐体、 21 第2間隙、 24 ロッド、 30 スタブ