(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】生化学分析装置、反応ユニット及びカセットガイド
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20240606BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240606BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALN20240606BHJP
【FI】
G01N35/04 H
C12M1/00 A
C12Q1/6844 Z
(21)【出願番号】P 2022545248
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2020032850
(87)【国際公開番号】W WO2022044316
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】程 博豪
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇人
(72)【発明者】
【氏名】山形 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】柴原 匡
(72)【発明者】
【氏名】牧野 瑶子
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134042(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013607(WO,A1)
【文献】特開2011-234693(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109107636(CN,A)
【文献】特開2014-112040(JP,A)
【文献】国際公開第2018/087372(WO,A1)
【文献】特表2010-536332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02-35/04,
G01N 1/28,
B01L 9/06,
C12Q 1/6806
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ユニットを装置本体に設置する構成を有し、
前記反応ユニットは、
複数の試験管を有する試験管ユニット又は複数の試験管を設置可能な試験管ユニットと、
カセットガイドと、
前記カセットガイドの着脱が可能なカセットボックスと、を含み、
前記カセットガイドは、フランジ部と、前記フランジ部に設けた通気開口部と、前記フランジ部に設けた試験管挿入部と、を有し、
前記試験管挿入部は、
下部が閉じた構造であり、
前記フランジ部は、前記カセットボックスの上面部に設置する部分であり、
前記通気開口部は、前記カセットボックスの内部空間に生ずる負圧により前記フランジ部の上方の空気を吸引する、生化学分析装置。
【請求項2】
前記カセットボックスは、前記カセットガイドを支持する突起部を有する、請求項1記載の生化学分析装置。
【請求項3】
前記カセットボックスは、前記カセットガイドを支持する天板を有し、
前記天板には、連通開口部及び貫通孔が設けられ、
前記通気開口部と前記連通開口部とは、連通している、請求項1記載の生化学分析装置。
【請求項4】
前記通気開口部は、前記試験管ユニットのレーンに平行なスリット形状を有する、請求項1記載の生化学分析装置。
【請求項5】
前記試験管ユニットは、前記複数の試験管を連結する横フランジ部を有する、請求項1記載の生化学分析装置。
【請求項6】
前記横フランジ部は、
前記横フランジ部に直交する縦フランジ部を有する、請求項5記載の生化学分析装置。
【請求項7】
前記横フランジ部と前記縦フランジ部とは、断面L字形状を形成している、請求項6記載の生化学分析装置。
【請求項8】
前記試験管挿入部は、前記試験管の挿入により変形可能な材料、又は前記試験管の挿入により開状態となる材料で構成されている、請求項1記載の生化学分析装置。
【請求項9】
複数の試験管を有する試験管ユニット又は複数の試験管を設置可能な試験管ユニットと、
カセットガイドと、
前記カセットガイドの着脱が可能なカセットボックスと、を含み、
前記カセットガイドは、フランジ部と、前記フランジ部に設けた通気開口部と、前記フランジ部に設けた試験管挿入部と、を有し、
前記試験管挿入部は、
下部が閉じた構造であり、
前記フランジ部は、前記カセットボックスの上面部に設置する部分であり、
前記通気開口部は、前記カセットボックスの内部空間に生ずる負圧により前記フランジ部の上方の空気を吸引する、反応ユニット。
【請求項10】
カセットボックスに設置するものであって、複数の試験管を有する試験管ユニット又は複数の試験管を設置可能な試験管ユニットを設置可能な構成を有し、
フランジ部と、
前記フランジ部に設けた通気開口部と、
前記フランジ部に設けた試験管挿入部と、を有し、
前記試験管挿入部は、
下部が閉じた構造であり、
前記フランジ部は、前記カセットボックスの上面部に設置可能であり、
前記通気開口部は、前記カセットボックスの内部空間に生ずる負圧により前記フランジ部の上方の空気を吸引する、カセットガイド。
【請求項11】
前記試験管挿入部は、前記試験管の挿入により変形可能な構成を有する、請求項10記載のカセットガイド。
【請求項12】
前記試験管挿入部は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項10記載のカセットガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析装置、反応ユニット及びカセットガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床医療や診断の目的で生体由来の検体中に含まれる核酸から遺伝情報を得る際には、検体からの核酸分子の抽出技術と標的配列の増幅による定量化技術とが必要である。それらの一連の技術を自動化した全自動遺伝子検査装置が臨床現場で使用されている。
【0003】
核酸の検査を行う場合に用いられる核酸増幅技術としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)を用いた方法(以下「PCR法」と略称する。)がある。PCR法は、耐熱性ポリメラーゼとプライマーを利用し、温度の昇降によって標的核酸を増幅させる技術であり、遺伝子工学や生物学的試験法・検出法等の分野で広く利用されている。PCR法の原理は、標的DNA配列を含む2本鎖DNAが1本鎖に解離する温度に維持する第1段階と、解離した1本鎖DNAに正方向および逆方向のプライマーがアニーリングする温度に維持する第2段階と、DNAポリメラーゼによって1本鎖DNAに相補的なDNA鎖が合成される温度に維持する第3段階との3つの段階の温度制御を行うサーマルプロフィール(温度昇降)に従うサイクルを多数回繰り返すことにより、標的DNAを幾何級数的に増輻させるものである。
【0004】
このようなPCR法を応用した定量検査方法には、リアルタイムPCRあるいは定量的ポリメラーゼ連鎖反応(以下「qPCR」と略称する。)がある。qPCR法は、高感度の遺伝子解析方法で、定量的遺伝子発現解析、病原体検出、創薬ターゲット検証等の臨床検査での応用が進んでいる。qPCR法においては、増幅しているときの標的核酸の濃度を、間接的に蛍光反応光の強度で計測する。
【0005】
しかし、PCR増幅過程は敏感であり、検査すべき検体以外に由来する標的DNAが極微量混入しても、本来増幅しない検体に増幅が発生することになる(以下「偽陽性増幅」という。)。この偽陽性増幅は、全自動遺伝子検査装置の正確性に影響を与える。
【0006】
手動で核酸抽出とPCRサンプル作製を行う場合には、操作における不具合により分注ピペッターや分注チップの汚染が生じ、偽陽性増幅の原因になり得る。このため、室内全体に下降気流や上昇気流を発生させるクリーンベンチの中で試験を実施することが望ましい。これにより、操作中に発生する核酸分子を含有するエアロゾルを排出する。
【0007】
全自動遺伝子検査装置の場合は、複数の検体の検査試験を並行して実施するため、高速分注により発生するエアロゾルやミストが装置内に広がり、異なる検体間でクロスコンタミネーションが発生する原因になる。
【0008】
特許文献1には、複数の液体サンプルを処理する濾過装置であって、サンプルウェルに挿入された濾液誘導部には、濾液だけでなく、空気が流れ、流下した濾液から分離された空気が、エアロゾル排出口等を通過して外部に流出する構成を有するものが開示されている。
【0009】
特許文献2には、生物流体試料を処理するための自動分析システム内部の液体を処分する際にクロスコンタミネーションのリスクを低減する構成として、ピペットまたはピペットチップ用のチャンネルを備えるコンタミネーション防止シールドを、液体廃棄物用の容器に可逆的にドッキングされるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6419827号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0164853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
大量の検査を短時間で行うために、異なる複数の検体について、複数の反応レーンと複数の分注機構とを平行に配置して、核酸の抽出、抽出した核酸の精製、PCRによる増幅、蛍光検出などの一連の操作を行う多レーン型の遺伝子検査装置等の生化学分析装置において、クロスコンタミネーションを抑制するためには、一つの反応レーンの試験管に入っているサンプルから飛散した微小粒子等が、他のレーンの試験管に入っているサンプルに混入しないようにする必要がある。
【0012】
特許文献1に開示されている濾過装置は、フィルタの上流側におけるエアロゾルによるクロスコンタミネーションを防止することを意図したものではない。
【0013】
特許文献2に開示されている装置は、コンタミネーション防止シールドの上方に飛散するエアロゾル等について対策するものではなく、また、隣接するサンプル容器を対象とするものではない。
【0014】
本発明は、生化学分析装置において、カセットガイドの一部だけにカセットを設置した場合であっても下降気流を安定させること、及び、カセットガイドが汚染されてもカセットガイドを容易に交換できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の生化学分析装置は、反応ユニットを装置本体に設置する構成を有し、反応ユニットは、複数の試験管を有する試験管ユニット又は複数の試験管を設置可能な試験管ユニットと、カセットガイドと、カセットガイドの着脱が可能なカセットボックスと、を含み、カセットガイドは、フランジ部と、フランジ部に設けた通気開口部と、フランジ部に設けた試験管挿入部と、を有し、試験管挿入部は、下部が閉じた構造であり、フランジ部は、カセットボックスの上面部に設置する部分であり、通気開口部は、カセットボックスの内部空間に生ずる負圧によりフランジ部の上方の空気を吸引する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、生化学分析装置において、カセットガイドの一部だけにカセットを設置した場合であっても、下降気流を安定させることができる。
【0017】
また、本発明によれば、カセットガイドが汚染されても、カセットガイドを容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1の反応ユニットを示す分解斜視図である。
【
図2】実施例1の反応ユニットを組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図4】実施例1のカセットガイドを示す斜視図である。
【
図5】実施例1のカセットボックスを示す斜視図である。
【
図6】実施例1の反応ユニットを組み立てた状態を示す断面図である。
【
図7】実施例2の反応ユニットを示す分解斜視図である。
【
図8】実施例2の反応ユニットを組み立てた状態を示す断面図である。
【
図11】実施例5のカセットガイドを示す模式部分断面図である。
【
図12】実施例6のカセットガイドを示す模式部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、生化学分析装置に関する。生化学分析装置は、具体例として、遺伝子検査装置のほか、核酸抽出装置、核酸増幅装置、血液検査装置、尿、血しょう等を検査する生体分析装置等を含む。
【実施例1】
【0020】
図1は、本実施例の反応ユニットを示す分解斜視図である。
【0021】
本図に示す反応ユニットは、複数の反応レーンを有するもの、いわゆる多レーン型である。反応ユニットは、カセット1A、1B(試験管ユニット)と、カセットガイド2と、カセットボックス3と、を備えている。カセット1A、1Bは、カセットガイド2の凹部に挿入される構成を有する。カセットガイド2は、カセットボックス3の上部に設置されるものである。カセットガイド2及びカセットボックス3は、カセットスタンドを構成する。
【0022】
なお、本実施例においては、反応ユニットが三つの反応レーンを有する場合を示しているが、レーンの数は、これに限定されるものではなく、いくつであってもよい。また、カセットガイド2及びカセットボックス3の材質は限定されないが、カセット1A、1Bは、プラスチック製であることが望ましい。また、本実施例においては、カセットガイド2の凹部は、あらかじめ形成されているものであるが、弾性変形しやすい材料を用いてカセットガイド2を製作し、カセット1A、1Bを挿入する際に弾性変形又は塑性変形をして、凹部が形成されるようにしてもよい。
【0023】
図2は、本実施例の反応ユニットを組み立てた状態を示す斜視図である。
【0024】
本図においては、
図1に示すカセットガイド2をカセットボックス3に装着し、カセット1A、1Bをカセットガイド2に装着した状態を示している。
【0025】
まとめると、カセットボックス3には、カセットガイド2が設置可能である。また、カセットガイド2には、カセット1A、1Bが設置可能である。
図3は、
図1のカセット1A、1Bのうちの一つを示す斜視図である。
【0026】
図3に示すカセット1は、1つのレーンを構成する3個の試験管13と、試験管13を連結する横フランジ12(横フランジ部)と、を備えている。横フランジ12には、試験管13の開口部11が設けられている。3個の試験管13は、矢印101で示す方向に沿って配置されている。
【0027】
なお、本図においては、試験管13が3個の場合を示しているが、使用目的に応じて1個のカセット1に試験管13がいくつ設けられていてもよい。ただし、同一のカセット1に設けられた一連の試験管13は、1つの検体に対する1つの検査においてのみ使用され、使用後に廃棄され、新たな検査の際には新しいカセット1が使用されることが望ましい。
【0028】
また、本図に示すカセット1は、1つのレーンに対応するものであるが、これに限定されるものではなく、2つ以上のレーンに対応する2列以上の試験管13を合わせて1個のカセットとしたものであってもよい。
【0029】
また、
図1に示す2個のカセット1A、1Bは、同一のものであることが望ましい。
【0030】
上記の説明は、カセット1A、1Bと複数の試験管13とが一体化した構成を有する試験管ユニットである場合についてであるが、本開示は、これに限定されるものではなく、カセットが、別体としての複数の試験管を設置可能なものであってもよい。
【0031】
図4は、
図1のカセットガイド2を示す斜視図である。
【0032】
図4に示すカセットガイド2は、9つのシース部24(試験管挿入部)を有する。これらのシース部24は、フランジ23(フランジ部)で連結されている。フランジ23には、シース部24の開口部22と、吸込口21(通気開口部)と、が設けられている。シース部24は、開口部22以外に外部に連通する部分がない構造である。言い換えると、シース部24は、単一の開口部22のみを有し、カセットボックス3側に開口部を有しておらず、下部が閉じた構造である。このようなシース部24の構造は、単に「閉じた構造」ということができる。
【0033】
吸込口21は、フランジ23を貫通している。
【0034】
本図においては、吸込口21は、スリット状であり、矢印201で示す方向に沿って配置されている隣接するレーンの間に設けられている。
【0035】
シース部24は、カセット1の試験管13と同じ形状であり、試験管13を挿入できる形状である。なお、シース部24が試験管13と全く同じ形状である場合は、試験管13を挿入する際、シース部24の内部の空気が圧縮され、試験管13の挿入が困難になる場合や、一度挿入した試験管13がシース部24の内部で圧縮された空気の圧力により押し出される場合等があり得る。このため、シース部24と試験管13とが接触する部分に溝部や突起部等を設けることにより、空気の密閉を回避して、圧力が大気圧と等しくなるようにすることが望ましい。カセット1の横フランジ12及びカセットガイド2のフランジ23のいずれかに溝部や突起部等を設けることも望ましい構成である。また、本実施例においては、カセット1の試験管13とカセットガイド2のシース部24とを円筒状としているが、使用目的等に応じて、他の形状であってもよい。
【0036】
なお、本図においては、円筒形のシース部24が1つのレーンに3個の場合を示しているが、これに限定されるものではなく、カセット1の試験管13の個数に応じて1つのレーンにシース部24がいくつ設けられていてもよい。
【0037】
図5は、
図1のカセットボックス3を示す斜視図である。
【0038】
図5に示すように、カセットボックス3は、側面部及び底面部を構成する壁構造31と、カセットガイド2を支持する突起部32と、を備えている。
【0039】
カセットボックス3には、カセットボックス3とカセットガイド2で囲まれる内部空間を負圧にするための排気ファン、真空ポンプ等の負圧生成手段が設置されている。負圧生成手段は、カセットボックス3に固定されていてもよいが、それに限定されるものではなく、カセットボックス3の外部に設けられていてもよい。また、負圧生成手段は、カセットボックス3以外の生化学分析装置の内部又は外部に設置されていてもよい。また、負圧生成手段は、排気ファンや真空ポンプに限らない。
【0040】
なお、壁構造31は、負圧を維持するため、負圧生成手段に必要な構造以外には外部に連通する箇所のない構造である。
【0041】
カセットボックス3は、直方体などの形状であり、カセットガイド2を突起部32で支持する部品である。カセットガイド2が装着された時に、カセットボックス3の2つの対面する側面と垂直に内部へ突出する突起部32がカセットガイド2のフランジ23と接触し、カセットガイド2を支持する。カセットガイド2が装着されることにより、カセットボックス3の上面部が封止される。言い換えると、フランジ23は、カセットボックス3の上面部に設置可能である。更に言い換えると、フランジ23は、カセットボックス3の上面部に嵌め込まれるようになっている。このため、カセットガイド2とカセットボックス3とで囲まれた内部空間は、カセットガイド2のフランジ23を貫通する吸込口21によってのみ外部と連通している。
【0042】
図6は、本実施例の反応ユニットを組み立てた状態を示す断面図である。
【0043】
本図に示すように、カセットボックス3は、突起部32A、32Bを有し、カセットガイド2のフランジ23は、突起部32A、32Bに支持されている。カセットガイド2のシース部24は、底部及び側面部が閉じた構成を有する。カセットガイド2のフランジ23には、吸込口21が設けられている。カセットガイド2には、吸込口21以外に開口部は設けられていない。これにより、カセットガイド2とカセットボックス3とで囲まれた内部空間が形成される。
【0044】
全体として、複数のカセット1が装着される場合に、カセット1がカセットガイド2のスリット状の吸込口21を覆わないように構成されている。
【0045】
この内部空間は、排気ファン、真空ポンプ等の負圧生成手段により負圧にされ、吸込口21から内部空間に空気が流れるようになっている。言い換えると、矢印601で示す方向の下降気流が発生する。
【0046】
このような下降気流により、隣接レーンの間にエアカーテン効果が得られ、試験管13から発生する飛沫が他のレーンに拡散することを抑制することができる。
【0047】
さらに、カセットボックス3の内部空間を負圧とすることにより、カセットガイド2をカセットボックス3に密着させる効果も得られる。
【0048】
下降気流は、矢印601に示すように、装置筐体の内部に設置されたカセット1の上方から、吸込口21を通って、カセットボックス3の内部空間に流れ込む。言い換えると、下降気流は、実質上、吸込口21だけを通って、カセットボックス3の内部空間に流れ込む。その際、試験管13から発生する飛沫等(エアロゾル及びミストを含む。)をカセットボックス3の内部空間に輸送し、さらに排気ファン、真空ポンプ等の負圧生成手段によって装置筐体の外部に排出する。この場合において、気流が装置筐体の外部に排出される前に通過するフィルタを配置することによりコンタミネーションに係る微粒子(飛沫等)を捕捉し、装置筐体の外部における二次的な汚染を防止することが望ましい。
【0049】
カセットガイド2のシース部24は、カセット1に対応し、最大レーン数に相当する数となる。実際の使用中においては、最大レーン数より少ないレーン数で測定を行う場合がある。
図1、
図2及び
図6に示すような3つのレーンを有するカセットガイド2に対して2つのカセットしか設置していない場合においても、シース部24が閉じた構造であるため、下降気流の流速が影響されない。このため、この場合においても、クロスコンタミネーションを防止する効果を維持することができる。
【0050】
また、本実施例によれば、カセットガイド2が交換可能であるため、カセットガイド2に試薬等が付着することがあっても、次の分析を清浄な状態で行うことができる。
【実施例2】
【0051】
本実施例において実施例1と異なる点は、カセットボックスが天板を有する点であり、他の構成は実施例1と同様である。よって、本実施例においては、その異なる点のみについて説明する。
【0052】
図7は、本実施例の反応ユニットを示す分解斜視図である。
【0053】
本図に示すように、カセットボックス3は、側面部及び底面部を構成する壁構造31と、カセットガイド2を支持する天板34と、を備えている。天板34には、吸込口33(連通開口部)及び貫通孔35が設けられている。
【0054】
図8は、本実施例の反応ユニットを組み立てた状態を示す断面図である。
【0055】
本図に示すように、吸込口33は、カセットガイド2の吸込口21に対応している。これにより、吸込口21と吸込口33とが連通し、カセットボックス3の内部空間に負圧を発生させた場合に、矢印801で示す方向の下降気流が発生する。
【0056】
また、貫通孔35(
図7)には、カセットガイド2のシース部24が挿入されている。
【0057】
本実施例においては、カセットボックス3の天板34がカセットガイド2を面で支持するため、実施例1に比べて、カセットガイド2及びカセット1を安定させることができる。
【0058】
また、カセットボックス3の内部空間の負圧により、カセットガイド2をカセットボックス3に密着させる効果もある。
【実施例3】
【0059】
【0060】
本図においては、カセット1の横フランジ12に縦フランジ92(縦フランジ部)が設置されている。横フランジ12と縦フランジ92とは、直交し、断面L字形状を形成している。これにより、隣接レーンの間におけるクロスコンタミネーションを更に確実に抑制することができる。
【実施例4】
【0061】
【0062】
本図においては、実施例3の構成に加え、カセット1の横フランジ12に吸込口94を設けている。吸込口94は、
図4のカセットガイド2の吸込口21に対応するものであり、吸込口94と吸込口21とが連通するように配置されている。
【実施例5】
【0063】
図11は、本実施例のカセットガイドを示す模式部分断面図である。
【0064】
本図においては、カセットガイド2のシース部24をわずかに下に凸となる形状としている。この場合、シース部24の深さは、カセット1の試験管13の長さよりも浅くなっている。試験管13をシース部24に挿入すると、シース部24が伸びて試験管13の形状に変形する。シース部24の材料としては、伸縮性のある材料が望ましい。また、シース部24の材料は、弾性係数が小さいものが望ましい。弾性係数が大きいと、試験管13に上向きの力が働き、操作中に試験管13の位置が変化してしまうおそれがあるからである。また、シース部24は、塑性変形してもよい。また、シース部24が破損したとしても、カセット1の横フランジ12がカセットガイド2のフランジ23に密着するように構成すれば、設計上の下降気流を維持することができる。シース部24の材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等が望ましい。
【0065】
なお、本実施例の変形例として、シース部24を下に凸でなく平面状に形成し、フランジ23と平行にしてもよい。
【0066】
シース部24が破損するように設計する場合は、試験管13の下端部に刃のような鋭利な部分を設け、その部分がシース部24に接触する際にシース部24が破損するようにしてもよい。シース部24は、フィルム状であってもよい。
【0067】
なお、この場合、カセット1の横フランジ12がカセットガイド2のフランジ23に密着していなければ、下降気流は、吸込口21(
図4)だけでなく、シース部24の破損した部分も通って、カセットボックス3の内部空間に流れ込むと考えられるが、その隙間は小さいものであり、また、試験管13の周縁部に位置することから、コンタミネーションを防止する有効な下降気流となるものと考えられる。
【実施例6】
【0068】
図12は、本実施例のカセットガイドを示す模式部分断面図である。
【0069】
本図に示すように、シース部24を底部が閉じた状態の蛇腹状にしてもよい。試験管13を挿入することにより、シース部24の蛇腹が伸びて変形する構成である。これは、塑性変形の一種と考えられる。
【0070】
実施例5及び6をまとめると、次のようになる。
【0071】
シース部24は、試験管13の挿入により変形可能な構成を有するものであってもよく、試験管13の挿入により開状態となる構成を有するものであってもよい。
【0072】
以下、生化学分析装置について図面を用いて説明する。
【0073】
図13は、生化学分析装置の一例を示す斜視図である。
【0074】
本図において、生化学分析装置は、装置本体151と、制御端末152と、を備えている。上記の反応ユニットは、装置本体151の内部に設置されるようになっている。装置本体151の窓からは、その反応ユニットの一部が見えるようになっている。制御端末152においては、ユーザが装置の操作条件等を適宜確認し入力することができ、検査結果等の表示を確認することができる。
【0075】
なお、制御端末152の機能を有する操作パネルを装置本体151に設置してもよい。
【0076】
以下、本発明による効果についてまとめて説明する。
【0077】
本発明によれば、カセットスタンドの内部を負圧として、カセットガイドに適切に設けた吸込口を介して、カセットガイドの上方から隣接レーンの間を流れる下降気流を発生させることにより、分析操作中においてカセットの試薬や試料がエアロゾルやミストとなり、周囲に飛散しても、カセットスタンドの内部に回収される。これにより、試薬や試料のクロスコンタミネーションを防止することができる。
【0078】
また、カセットボックスとは別個の部品であるカセットガイドを用いることにより、カセットが装着されていないときでも、カセットガイドに設けた吸込口に下降気流の流路を限定することができる。このため、カセットの試験管を挿入する穴も含めて、カセットスタンドの内部を装置筐体の内部空間から隔離できる。そして、一部のレーンのみが使用されている場合や個別レーンのカセットを交換する場合等にも、下降気流の流速を維持し、安定した下降気流を維持することができる。
【0079】
さらに、カセットガイドを交換可能とし、適宜廃棄更新することにより、エアロゾルやミストの付着による二次汚染も防止することができる。
【0080】
カセットの試験管の中からエアロゾルやミストが飛散して拡散する場合や、分注チップの先端部からミストが発生して飛散する場合にも、同一のレーン内でこれらのエアロゾルやミストを回収することができるため、クロスコンタミネーションを防止する効果が得られ、複数の反応レーンを有する生化学分析装置の分析精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0081】
1、1A、1B:カセット、2:カセットガイド、3:カセットボックス、11:開口部、12:横フランジ、13:試験管、21:吸込口、22:開口部、23:フランジ、24:シース部、31:壁構造、32、32A、32B:突起部、33:吸込口、34:天板、35:貫通孔、101、201、601、801:矢印。