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特許7499406ダイヤモンド状炭素及び堆積ケイ素系材料を含むエンボスを有する静電チャック、及び関連する方法
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  • 特許-ダイヤモンド状炭素及び堆積ケイ素系材料を含むエンボスを有する静電チャック、及び関連する方法 図1
  • 特許-ダイヤモンド状炭素及び堆積ケイ素系材料を含むエンボスを有する静電チャック、及び関連する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ダイヤモンド状炭素及び堆積ケイ素系材料を含むエンボスを有する静電チャック、及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240606BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023514720
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 US2021047973
(87)【国際公開番号】W WO2022051185
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】63/073,796
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リプチンスキー, ヤクブ
(72)【発明者】
【氏名】ドネル, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, チュン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ミンスキー, カレブ
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006573(JP,A)
【文献】特表2013-542590(JP,A)
【文献】国際公開第2019/120921(WO,A1)
【文献】特開2017-120891(JP,A)
【文献】特開2001-237303(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面に少なくとも1つのエンボスを有するセラミック層、を備えるウエハ支持面を備え、前記エンボスが、堆積ケイ素系材料の少なくとも2つの層と、少なくとも2つのダイヤモンド状炭素層とを含む複数の層を備える、静電チャックアセンブリ。
【請求項2】
前記エンボスが、堆積ケイ素系材料の少なくとも3つの層と、少なくとも3つのダイヤモンド状炭素層とを含む少なくとも6つの全層を備え、各炭化ケイ素層及び各ダイヤモンド状炭素層が、0.5~約3ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記エンボスの最上層がダイヤモンド状炭素層である、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記ダイヤモンド状炭素が、前記エンボスの導電性を高めるための原子ドーパントを含有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
面に少なくとも1つのエンボスを有するセラミック層、を備える静電チャックアセンブリを調製する方法であって、前記エンボスが、堆積ケイ素系材料の少なくとも2つの層と、少なくとも2つのダイヤモンド状炭素層とを含む複数の層を備え、前記方法が、堆積方法によって前記エンボスを前記上面に堆積させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月2日に出願された米国仮特許出願第63/073,796号の米国特許法第119条に基づく利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ワークピースを処理するステップ中にワークピースを支持するのに有用な静電チャックの分野にあり、静電チャックは、複数の堆積層で作製されるエンボスを含み、層はダイヤモンド状炭素層及び炭化ケイ素層などのケイ素系材料を含有する層を含む。
【背景技術】
【0003】
静電チャック(略して単に「チャック」とも呼ばれる)は、半導体及びマイクロ電子デバイスの処理に使用される。チャックは、半導体ウエハ又はマイクロ電子デバイス基板などのワークピースを定位置に保持して、ワークピースの表面にプロセスを実行する。特に、静電チャックは、ワークピースとチャックとの間に静電吸着力を生成することによって、ワークピースをチャックの上面に固定する。電圧がチャック内に含有される電極に印加されて、ワークピース及びチャックに反対の極性の電荷を誘起する。
【0004】
チャックは、チャックが働くことを可能にする、又は性能を改善する様々な構造、デバイス、及び設計を含む。多くの場合、静電チャックは多層構造であり得、多層構造は、ワークピースを支持する平坦な上面と、チャック及び支持されたワークピースの静電荷を制御するための電極、導電性コーティング、及び接地接続部などの電子部品と、チャックに対するワークピースの位置を支持又は変更するために使用される測定プローブ及び可動ピンを含み得る様々な他の機能部とを含む。
【0005】
静電チャックの典型的な特徴は、チャックの上面の上方に非常に小さな距離だけ延在して、主チャック表面の上方の小さな距離でワークピースを支持し、ワークピースの下面とチャックの上面との間に非常に小さな空間を作り出す小さなエンボス(「突起」と呼ばれることもある)のパターンである。エンボスがあると、チャックの上面の小さな部分のみがワークピースの下面に接触する。2つの表面間の接触面積の減少は、表面に接触することによって生成され得るデブリを減少させることができる。さらに、いくつかのチャック設計では、ワークピースとチャックとの間のエンボスによって作り出された空間は、冷却ガスを空間に流すことによってワークピースを冷却するために使用される。
【発明の概要】
【0006】
静電チャックアセンブリ上の現在のエンボス設計は、エンボス上にワークピースを配置すること、及びエンボスからワークピースを取り外すことを含む多数の使用サイクルで生じる摩耗及び劣化を受ける。エンボスは、長期間の使用にわたって、部分的又は完全に元のサイズ(元の高さを含む)から摩耗する。エンボスの過度の摩耗の後、表面上に配置されたウエハは静電チャックの上部誘電体表面に接触し、粒子デブリ、チャックと支持されたワークピースとの間の熱伝達、及び静電チャックの全体的な性能及び有効性を低下させる他の性能の複雑化を引き起こす可能性がある。より高性能で耐久性の高い新たなエンボスに対する継続的な必要性が存在する。
【0007】
炭化ケイ素及びダイヤモンド状炭素の複数の層を含む多層堆積コーティングは、工業用途のためのある特定の種類の表面をコーティングするために使用されている。例としては、生物医学用途(インプラント)、航空宇宙用途、石油探査分野の用途、及びプラスチック射出成形に関連する用途に使用される耐摩耗性表面が挙げられる。従来、炭化ケイ素及びダイヤモンド状炭素の複数の層を含む多層堆積コーティングは、フォトリソグラフィなどのパターンコーティング技術で堆積されておらず、ウエハに接触し、セラミック製で任意選択的に導電性の静電チャックの上面に対するエンボスのパターンとしては塗布されていなかった。従来のコーティングは、デバイスの動作(支持)面全体にわたって連続的なコーティングとして表面に塗布されているが、より大きな動作面の一部のみにわたるパターンでは塗布されていない。
【0008】
一態様では、本発明は、セラミック層を含み、セラミック層の上面に少なくとも1つのエンボスを有するウエハ支持面を含む静電チャックアセンブリに関する。エンボスは、堆積ケイ素系材料の少なくとも2つの層と、少なくとも2つのダイヤモンド状炭素層とを含む複数の層を含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、セラミック層を含み、セラミック層の上面に少なくとも1つのエンボスを有する静電チャックアセンブリを調製する方法に関する。エンボスは、堆積ケイ素系材料の少なくとも2つの層と、少なくとも2つのダイヤモンド状炭素層とを含む複数の層を含む。本方法は、堆積方法によって上面にエンボスを堆積させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】例示的な従来技術の静電チャックアセンブリの一部の側面断面概略図である。
図2】本明細書の静電チャックアセンブリの一部の側面断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
すべての図は概略図であり、必ずしも縮尺通りではない。
【0012】
記載の静電チャックは、静電チャックアセンブリ及び記載の前駆体又はその一部を形成するために互いに組み立てられた複数の異なる層を含む多層構造とすることができる。アセンブリは、静電チャックアセンブリに典型的で、処理中にチャックがワークピース(例えば、半導体基板、マイクロ電子デバイス、半導体ウエハ、それらの前駆体)を支持することを可能にする様々な特徴部を含み、静電吸着力が、チャックの上面(ワークピース接触面)でワークピースを定位置に保持する。静電チャックに用いられる例示的なワークピースには、半導体ウエハ、フラットスクリーンディスプレイ、太陽電池、レチクル、フォトマスクなどが含まれる。ワークピースは、直径100ミリメートルの円形ウエハ、直径200ミリメートルのウエハ、直径300ミリメートルのウエハ、又は直径450ミリメートルのウエハの面積以上の面積を有してもよい。
【0013】
チャックは、処理中にワークピースを支持するように適合された上面(「ワークピース接触面」)を含む。上面は、典型的には、円周部を画定し、ワークピース接触面及び多層チャックの両方の直径も画定する円形縁部を有する円形の表面領域を有する。本明細書で使用される場合、「ワークピース接触面」という用語は、使用中にワークピースに接触する静電チャックの上部露出面であって、上面を有するセラミック材料製の「メインフィールド」を含み、上面にエンボスがあり、上面の少なくとも一部を覆い得る任意選択の導電性コーティングがある、静電チャックの上部露出面を指す。ワークピースは、セラミック材料の上面より上方で、エンボスの上面と接触してワークピース接触面で保持され、そして、静電チャックの使用中に静電チャックに対して保持されるか、又は「クランプ」される。例示的な静電チャックアセンブリは、AC及びDCクーロンチャック及びジョンセン-ラーベック(Johnsen-Rahbek)チャックと共に使用することができる。
【0014】
チャックアセンブリ(又は略して「チャック」)はまた、チャックが機能するために必要又は任意選択であるいくつかの他の層、デバイス、構造、又は特徴部を含む。これらには、チャックとワークピースとの間に静電吸着を生成して、処理中にワークピースを定位置に保持する電極層、接地層及び関連する電気接続部などの接地デバイスと、処理ステップ中に圧力、温度、又は電気的特性を測定するための測定デバイス、温度制御機能の一部としてのガス流導管、導電性表面コーティングなどが含まれる。
【0015】
多層構造の1つの層は、アセンブリの上側部分にあるセラミック層(別名、誘電体層)である。セラミック層は、アセンブリの最上層であり得、セラミック層の上面に配置される導電性コーティングや突起など以外のチャックの上面を含むことができる。上面の導電性コーティングは、同様に多層アセンブリに含まれる接地層や接地ピンなどを介して電気接地に接続することができる。セラミック層は、とりわけ、アルミナ、窒化アルミニウム、石英、SiO(ガラス)などの有用なセラミック材料で作製することができる。セラミック層は、単一の(一体的な)材料層で作製されてもよく、又は代替的に、所望により、2種以上の異なる材料、例えば異なる材料の複数の層で作製されてもよい。セラミック層(セラミック材料の1つ又は複数の層を有する)の合計厚さは、任意の有効厚さ、例えば1~10ミリメートル、例えば1~5ミリメートルの範囲の厚さであり得る。
【0016】
セラミック層は、とりわけ、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ステンレス鋼、アルミナなどのセラミック、金属マトリックス複合材などの、典型的には金属で作製されたベース層(略して「ベース」)によって下方で支持される。
【0017】
典型的には、セラミック層とベースとの間には、接合層(例えば、ポリマー接着剤)、電極、接地層、電極及び他の層が電気的に機能することを可能にする絶縁層、又は追加の回路のうちの1つ又は複数がある。
【0018】
本明細書のチャックアセンブリは、セラミック層の上面の領域にわたって分布した複数の三次元エンボスのパターンを含む。エンボスの1つ又は複数は、ダイヤモンド状炭素の複数(少なくとも2つ)の堆積層と、堆積ケイ素系材料の複数(少なくとも2つ)の堆積層とを含むように作製された多層構造であり、そのような堆積ケイ素系材料の一例は炭化ケイ素である。堆積ケイ素系材料又はダイヤモンド状炭素のいずれでもない他の層又は材料が、必要に応じて多層エンボスに含まれてもよいが、例示的なエンボスは、他の材料又は層を必要としない。また、堆積ケイ素系材料及びダイヤモンド状炭素の複数の層から作製された記載の1つ又は複数のエンボスを含むチャックアセンブリは、堆積ケイ素系材料及びダイヤモンド状炭素の複数の層から作製されていない1つ又は複数のエンボス、例えば、1種又は複数の他の種類のセラミック、誘電体、又は導電性材料から作製された1つ又は複数のエンボスを任意選択で含んでもよい。
【0019】
エンボスの層又は材料の総量は、堆積ケイ素系材料及びダイヤモンド状炭素を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらのみからなることができる。例えば、エンボスは、堆積ケイ素系材料とダイヤモンド状炭素との交互層からなってもよく、すなわち、これら2つの材料の層のみを含有してもよい。これらの2つの種類の層から本質的になる多層エンボスは、層の総数に基づいて、堆積ケイ素系材料炭化物層及びダイヤモンド状炭素層で作製される構造を、全層の少なくとも95、98、又は99パーセント含有する多層構造である。代替的に、堆積ケイ素系材料及びダイヤモンド状炭素から本質的になる多層エンボスは、エンボスのすべての材料の総重量に基づいて、少なくとも95、98又は99重量パーセントの堆積ケイ素系材料及びダイヤモンド状炭素を含有する多層エンボスを指す。
【0020】
ダイヤモンド状炭素(「DLC」とも呼ばれる)は公知の材料であり、「CVDダイヤモンド」(すなわち、化学蒸着によって堆積されたダイヤモンド)と呼ばれることもある。ダイヤモンド状炭素は、ダイヤモンドと同様の特性を有し、sp2及びsp3炭素-炭素原子間結合の両方の混合物を含有する非晶質炭素材料の種類プ又はクラスである。ダイヤモンド状炭素は、とりわけ、化学蒸着法(CVD)、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、及び物理蒸着法(PVD)を含む様々な堆積方法のいずれかを使用して基板上に堆積させることができる。
【0021】
記載のエンボスの層として有用なダイヤモンド状炭素は、少なくとも90、95、98、又は99パーセント(原子)の炭素原子で形成されることなどによって、比較的高純度であり得る。任意選択で、所望により、蒸着によって材料を調製する際にダイヤモンド状炭素構造内に原子ドーパント、不純物、又は他の添加剤を含めることによって、ダイヤモンド状炭素の物理的又は電気的特性を調整することができる。例えば、記載のチャックアセンブリの1つ又は複数のエンボスの1つ又は複数のダイヤモンド状炭素層は、ダイヤモンド状炭素層の導電率を増加させるドーパント材料を含むように堆積させることができ、ダイヤモンド状炭素層により、記載の静電チャックとエンボスによって支持されたウエハとの間で電荷を伝導及び通過させることができる。
【0022】
堆積ケイ素系材料は、炭素原子、酸素原子及び窒素原子の1つ又は組み合わせと組み合わされた、大量のケイ素原子を含有する周知の固体材料である。有用な又は好ましい堆積ケイ素系材料は、炭素、酸素、及び窒素原子の1つ又は組み合わせと組み合わせて、ケイ素原子から実質的に又は完全に作製することができ、例えば、少なくとも90、95、98、99、又は99.5パーセント(原子)のケイ素、炭素、酸素、及び窒素原子を含有する。
【0023】
公知の蒸着ケイ素系材料の例としては、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素、SiO)、酸窒化ケイ素(SiON)が挙げられる。これらの材料は、とりわけ、化学蒸着法(CVD)、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、物理蒸着法(PVD)を含む様々な堆積方法のいずれかを使用して、基板上に薄層(例えば、100ミクロン未満の厚さで)として堆積することができる。ケイ素系材料は、フォトリソグラフィなどの様々な公知のパターンコーティング技術のいずれかを使用してパターンコーティングすることができる。
【0024】
記載のエンボスの特定の例によれば、堆積ケイ素系材料は、炭化ケイ素(SiC)であり得る。炭化ケイ素は、既知の方法によって、例えば、とりわけ、化学蒸着法(CVD)、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、物理蒸着法(PVD)などによって基板上に堆積させることができる。炭化ケイ素は、フォトリソグラフィなどの様々な公知のパターンコーティング技術のいずれかを使用してパターンコーティングすることができる。
【0025】
堆積ケイ素系材料は、記載の方法を使用して、例えば、少なくとも95、98、又は99パーセント(原子)のケイ素系材料、例えば、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素、SiO)、又は酸窒化ケイ素(SiON)から形成されることなどによって、高レベルの純度で基板上に堆積させることができる。有用な又は好ましいエンボスは、複数の炭化ケイ素層を含有することができ、各層は、少なくとも95、98、又は99パーセント(原子)のケイ素及び炭素原子で形成されることなどによって、比較的高純度を有する。
【0026】
記載のエンボスは、セラミック表面上にエンボスの所望のパターンを形成する任意の方法によって調製することができる。有用で好ましい方法は、フォトリソグラフィなどのパターンコーティング法によって、プラズマ強化化学蒸着法を使用して、多層静電チャックアセンブリのセラミック表面の領域又はその前駆体(セラミック層)上に互いに離間したエンボスのパターンを堆積させる方法を含む。これらの方法により、堆積ケイ素系材料(例えば、炭化ケイ素)とダイヤモンド状炭素との交互に堆積された層は、個々のエンボスを形成するための複数の開口部を含有するマスク、例えば、少なくとも1つのエンボス、好ましくはセラミック層の上面にわたって分布する複数のエンボスのパターンを形成するための開口部を有するフォトリソグラフィマスクを使用して堆積される。各堆積されたエンボスは、好ましくは多層構造の安定性をもたらす範囲内の厚さの、堆積ケイ素系材料(例えば、炭化ケイ素)及びダイヤモンド状炭素の層を含む。例示的なエンボスの個々の炭化ケイ素層及びダイヤモンド状炭素層の厚さの例は、1ミクロン未満~数ミクロン、例えば0.5~5ミクロン、例えばダイヤモンド状炭素層の場合は1又は2ミクロン、そして、堆積ケイ素系材料の層の場合は50ミクロン未満であり得る。
【0027】
エンボスのケイ素系材料層及びダイヤモンド状炭素層の厚さは、エンボスの物理的安定性に影響を及ぼす可能性がある。層が2つの異なる材料で作製され、各層が非常に小さい寸法(長さ、幅、高さ)を有するため、隣接する層の異なる材料の界面に熱力学的応力が存在する。応力は、多層エンボスの層の潜在的な層間剥離又は分離を引き起こし、エンボスの劣化又は不機能性をもたらす可能性がある。ダイヤモンド状炭素層の厚さが約5ミクロンを超えると、多層エンボスがより薄い厚さの層よりも比較的安定性が低くなり得る量の応力が生じる可能性がある。したがって、好ましいダイヤモンド状炭素層は、約5ミクロン未満又は約3ミクロン未満の厚さを含み得る、多層エンボスの所望の安定性をもたらす厚さを有することができる。
【0028】
従来の(従来技術の)種類の多層チャックアセンブリ設計の一例が、図1に概略的に側面断面図で示されている。アセンブリ100は、水平に延在するベース110と、メインフィールド122を画定する上部露出面を有する、水平に延在するセラミック層120とを含む。他の任意選択の層又は構造、例えば、とりわけ、接着剤(「接合」)層、電極層、接地層、上面の導電性コーティングも含まれ得るが、図示されていない。エンボス102は、最下部炭化ケイ素層104と、下部炭化ケイ素層よりも薄いダイヤモンド状炭素の上部層106とを含む。使用中、基板(図示せず)は、ダイヤモンド状炭素層106と接触してエンボス102の上面に載置される。上部ダイヤモンド状コーティング層は約1ミクロンの厚さであり、下部炭化ケイ素層は約6~約8ミクロンの厚さを有する。
【0029】
図1の多層チャックアセンブリ100の例示的なエンボスは、比較的厚い炭化ケイ素ベースの上にあるダイヤモンド状炭素の単一層で作製され、基板のクランプ及び取り外しの多くのサイクルにわたって使用するのに有効である。しかしながら、エンボス102は、非常に多数のそのようなサイクルにわたる使用中に摩耗及び劣化を受ける。本明細書の多層チャックアセンブリ設計の一例が、図2に概略的に側面断面図で示されている。アセンブリ200は、水平に延在するベース210と、メインフィールド222を画定する上部露出面を有する、水平に延在するセラミック層220とを含む。他の任意選択の層又は構造、例えば、とりわけ、接着剤(「接合」)層、電極層、接地層、上面の導電性コーティングも含まれ得るが、図示されていない。
【0030】
エンボス202は、複数(少なくとも2つ又は3つ)の炭化ケイ素層204と、ダイヤモンド状炭素の複数(少なくとも2つ又は3つ)の層206とを含む。図示されているように、これには、ダイヤモンド状炭素の上(最上)層が含まれる。使用中、基板(図示せず)は、ダイヤモンド状炭素層206の最上面と接触してエンボス202の上面に載置される。炭化ケイ素の複数の層及びダイヤモンド状炭素の複数の層を備える、図2に示すような記載のエンボスを有する多層チャックアセンブリは、炭化ケイ素のベースの上にダイヤモンド状炭素の単層があるように作製された図1のチャックアセンブリと比較して、改善された耐久性及び耐摩耗性を示す。
【0031】
例えば、エンボス202は、本発明ではない設計の同等のエンボスと比較した場合、「使用サイクル」と呼ばれる、基板をクランプして取り外すサイクルに実質的により多くの回数耐えることができ得る。使用サイクル単位で測定される、記載のチャックのエンボスの有効寿命の改善量は、様々な要因に依存する可能性があり、重要な要因は、チャックのエンボスのダイヤモンド状炭素の層の数、及びチャックのエンボスに存在するダイヤモンド状炭素の総量(総厚)である。本発明のチャック(例えば、本発明のエンボスを有する図2のチャック)の性能を図1のチャック(炭化ケイ素の1つの層及びダイヤモンド状炭素の1つの層を有する2つの層のエンボス)と比較すると、本発明のチャックは、実質的に増加した使用サイクル数、例えば少なくとも2倍又は3倍の使用サイクル数で有用である。炭化ケイ素の3つの層及びダイヤモンド状炭素の3つの層を含む合計6つの層を有するエンボスを含む本発明のチャックの場合、使用サイクル数の増加は、図1のチャックを使用して実行することができる使用サイクル数の少なくとも2倍又は3倍である。
【0032】
本発明のチャック(例えば、本発明のエンボスを有する図2のチャック)の性能を、同等のエンボス(チャックの表面上のエンボスのサイズ、形状、数及び配置に関して同等)を有するが完全に炭化ケイ素で作製された(ダイヤモンド状炭素なし)チャックと比較すると、本発明のチャックは、使用サイクル数のさらに大きな増加、例えば少なくとも5、10、又は100倍の使用サイクル数を示す。図2又は本明細書の他に記載されるエンボス202は、任意の有用な数の全層、堆積ケイ素系材料(例えば、炭化ケイ素層)で作製された任意の有用な数の層、及び任意の有用な数のダイヤモンド状炭素層を有することができる。
【0033】
任意選択で、図2には示されていないが、異なる材料の1つ又は複数の層がエンボスの層として存在してもよいが、他の層は必要ではない。例示的なエンボスは、4から最大20、25、50、又は100の層(合計)を含有することができ、層のうちの少なくとも2つは炭化ケイ素層(又は別の種類の堆積ケイ素系材料の層)であり、層の少なくとも2つはダイヤモンド状炭素層である。例示的なエンボスは、堆積ケイ素系材料(例えば、炭化ケイ素)とダイヤモンド状炭素との交互層の複数の対(例えば、2、3、5、10、25、又は50対)を含有し(例えば、これらからなる)、これらの交互層の間に他の層又は材料は存在しない。
【0034】
例示的なエンボスは、堆積ケイ素系材料(例えば、炭化ケイ素)とダイヤモンド状炭素との交互層からなってもよい。堆積ケイ素系材料の各層は、好ましくは、約1ミクロン厚~約50ミクロンの範囲の厚さ、例えば1~20、30、40、又は50ミクロンの範囲の厚さを有することができる。ダイヤモンド状炭素層は、1~5ミクロンの範囲、さもなければ層及び多層エンボスの有用な安定性を示す厚さを有することができる。
【0035】
特定の一例として、エンボス(すなわち、チャックの複数のエンボス)は、約2ミクロンの厚さを有する炭化ケイ素である最下層と、約2ミクロンの厚さを有するダイヤモンド状炭素である最上層とを含むことができる。最下部炭化ケイ素層と最上部ダイヤモンド状炭素層との間には、炭化ケイ素の複数の層が存在してもよく、その各々は、最大約50ミクロン、例えば、約1又は2から、最大約20、30、40、又は50ミクロンの厚さであり得る。また、最上層と最下層との間には、ダイヤモンド状炭素の複数の層が存在してもよく、その各々は、1~5ミクロンの範囲の厚さ、例えば、1~2ミクロン厚の範囲の厚さであり得る。多層エンボスは、炭化ケイ素の層とダイヤモンド状炭素の層との2、3、5、6、10、25、又は50の交互対からなってもよい。
【0036】
エンボスの個々の炭化ケイ素層の厚さと、エンボスのダイヤモンド状炭素層の厚さとの比は、1:1から10:1の範囲内であり得る。エンボス内の炭化ケイ素材料対ダイヤモンド状炭素材料の総量(重量基準)の比は、同じ範囲内、すなわち1:1から10:1まであり得る。有用な多層エンボスの異なる例では、すべての炭化ケイ素層が同じ厚さを有してもよく、又は異なる炭化ケイ素層が異なる厚さを有してもよい。同様に、エンボスのすべてのダイヤモンド状炭素層が同じ厚さを有してもよく、又はダイヤモンド状炭素の異なる層が異なる厚さを有してもよい。
【0037】
静電チャックのエンボスは、使用中にウエハを支持するのに有効な任意の方法で、静電チャックの全表面積に対してサイズ決めされ、上部セラミック層の上面にわたって分布することができる。静電チャックの全表面積に対するエンボスの面積(チャックのエンボスの総面積)の有用な量の例は、静電チャックの上面の全表面積の約1パーセント~約10パーセントに等しいエンボスの面積(エンボスの最上面における)であり得る。各突起は、有用な直径を有することができ、例示的な直径は、約0.5ミリメートル~約1.5ミリメートル、例えば、約0.75ミリメートル~約1ミリメートルの範囲である。各エンボスの形状は3次元であり、円形の上面を有する円筒形状などの任意の有用な形状であり得る。
【0038】
突起の高さは、5又は10ミクロンから20、30、50、又は100ミクロンまでの範囲の高さなど、任意の有用な高さであり得る。一般に、特定の静電チャックの表面の多くの、ほとんどの、又はすべての突起は、同じ高さを有し、堆積ケイ素系材料(例えば、炭化ケイ素層)及びダイヤモンド状炭素層の層の数及び厚さは同じである。
【0039】
記載のチャックアセンブリは、静電チャックの使用を伴う様々な公知の処理ステップのいずれかを使用してワークピースを処理するのに有用な機器及びプロセスで使用することができる。記載されるチャック及び関連する方法は、半導体ウエハ処理に特に有用であり得るが、他のプロセスにも使用することができる。静電チャックを使用することができる機器及びシステムの例としては、ビームラインイオン注入器、プラズマドーピングイオン注入器、プラズマ浸漬イオン注入システム、フラッドイオン注入器、集束プラズマシステム、プラズマシースを変調するシステム、エッチングシステム、光学ベースの処理システム、化学蒸着システム、コーティングシステム、エッチングシステム、リソグラフィシステム、ならびに半導体及びマイクロ電子デバイスを処理するのに有用な他のデバイス及びツールが挙げられる。
【0040】
記載の静電チャックのプロセス又は使用は、基板又はワークピースのチャック(吸着)及びチャック解除(解放)のためにチャックを使用することを伴うことができる。プロセス又は使用は、ワークピースへの熱の追加又は生成をもたらすものを含むことができる。いくつかのプロセスでは、ワークピースは、例えば反応性イオンエッチング(RIE)、プラズマエッチング、イオンビームエッチング、エッチング、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、又は他のプロセス中に、チャックによって係合されながら真空チャンバ内の減圧環境に保持される。使用中又はプロセス中に、静電チャックは、例えば、チャックステップにおいて基板を保持し、コーティング、インプラント又は他の処置を受け、その後チャック解除ステップにおいて基材を解放することができる。これらのステップ又は動作は、繰り返すことができる。
【0041】
第1の態様では、静電チャックアセンブリは、セラミック層を備え、セラミック層の上面に少なくとも1つのエンボスを有するウエハ支持面を備え、エンボスは、堆積ケイ素系材料の少なくとも2つの層と、少なくとも2つのダイヤモンド状炭素層とを含む複数の層を備える。
【0042】
エンボスが、堆積ケイ素系材料の少なくとも3つの層と、少なくとも3つのダイヤモンド状炭素層とを含む少なくとも6つの全層を備え、各炭化ケイ素層及び各ダイヤモンド状炭素層が、0.5~約3ミクロンの範囲の厚さを有する、第1の態様に記載の第2の態様。
【0043】
エンボスの最上層がダイヤモンド状炭素層である、上述の態様のいずれかに記載の第3の態様。
【0044】
堆積ケイ素系材料が、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素、SiO)、及び酸窒化ケイ素(SiON)から選択される、上述の態様のいずれかに記載の第4の態様。
【0045】
エンボスが、堆積ケイ素系材料とダイヤモンド状炭素との交互層からなる、上述の態様のいずれかに記載の第5の態様。
【0046】
堆積ケイ素系材料が炭化ケイ素である、上述の態様のいずれかに記載の第6の態様。
【0047】
エンボスが、炭化ケイ素及びダイヤモンド状炭素の複数の層を備え、各炭化ケイ素層及び各ダイヤモンド状炭素層が、1~5ミクロンの範囲の厚さを有する、上述の態様のいずれかに記載の第7の態様。
【0048】
少なくとも2つの炭化ケイ素層と少なくとも2つのダイヤモンド状炭素層とを含む複数の層を各々が備える複数のエンボスをさらに備える、第1から第5の態様のいずれかに記載の第8の態様。
【0049】
エンボスが、合計で4から100の炭化ケイ素層及びダイヤモンド状炭素層を含む、上述の態様のいずれかに記載の第9の態様。
【0050】
エンボスが0.75~1.5ミリメートルの範囲の直径を有する、上述の態様のいずれかに記載の第10の態様。
【0051】
エンボスが5~100ミクロンの範囲の高さを有する、上述の態様のいずれかに記載の第11の態様。
【0052】
ダイヤモンド状炭素が、エンボスの導電性を高めるための原子ドーパントを含有する、上述の態様のいずれかに記載の第12の態様。
【0053】
エンボスが、上面の総面積の1~10パーセントに等しい面積を覆う、上述の態様のいずれかに記載の第13の態様。
【0054】
複数のエンボスをさらに備え、各エンボスが、合計で4から100の総炭化ケイ素層及びダイヤモンド状炭素層からなり、エンボスが、上面の総面積の1~10パーセントに等しい面積を覆う、第1の態様に記載の第14の態様。
【0055】
第15の態様において、セラミック層を備え、セラミック層の上面に少なくとも1つのエンボスを有する静電チャックアセンブリを調製する方法であって、エンボスが堆積ケイ素系材料の少なくとも2つの層と、少なくとも2つのダイヤモンド状炭素層とを含む複数の層を備える、方法は、堆積方法によってエンボスを上面に堆積させることを含む。
【0056】
堆積方法がプラズマ強化化学蒸着法である、第15の態様に記載の第16の態様。
【0057】
堆積方法が、マスクの開口部を介して、堆積ケイ素系材料の層及びダイヤモンド状炭素の層を堆積させる、第15又は第16の態様に記載の第17の態様。
【0058】
エンボスをパターンコーティングして、上面の総面積の1~10パーセントに等しい面積を覆う方法によってエンボスを堆積させることをさらに含む、第15から第17の態様のいずれかに記載の第18の態様。
【0059】
エンボスをフォトリソグラフィ法によって堆積させることをさらに含む、第15から第18の態様のいずれかに記載の第19の態様。
【0060】
複数のエンボスを表面に堆積させることをさらに含み、各エンボスが、合計で4から100の総炭化ケイ素層及びダイヤモンド状炭素層からなり、エンボスが、上面の総面積の1~10パーセントに等しい面積を覆う、第15から第19の態様のいずれかに記載の第20の態様。
図1
図2