(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2018237462
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2018046610
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
【合議体】
【審判長】殿川 雅也
【審判官】藤本 義仁
【審判官】桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227866(JP,A)
【文献】特開2014-52662(JP,A)
【文献】特開平11-316507(JP,A)
【文献】特開2018-36549(JP,A)
【文献】特開2012-145708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転する無端状のベルトと、
前記ベルトの外周面に接触してニップ部を形成する対向部材と、
前記ベルトの内周面に接触すると共に、ベルト幅方向に複数に分割された発熱部を有する加熱部材と、
前記ベルトの内周面に接触して前記ベルトをガイドするガイド部とを備える定着装置において、
前記発熱部の非分割領域に対応する箇所よりも、前記発熱部の分割領域に対応する箇所で、前記ガイド部の熱容量を小さくしたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
周方向に回転する無端状のベルトと、
前記ベルトの外周面に接触してニップ部を形成する対向部材と、
前記ベルトの内周面に接触すると共に、ベルト幅方向に複数に分割された発熱部を有する加熱部材と、
前記ベルトの内周面に接触して前記ベルトをガイドするガイド部とを備える定着装置において、
前記発熱部の非分割領域に対応する箇所よりも、前記発熱部の分割領域に対応する箇所で、前記ベルトに対する前記ガイド部の接触面積を小さくしたことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記発熱部の非分割領域に対応する箇所よりも、前記発熱部の分割領域に対応する箇所で、ベルト幅方向の任意の一点における、前記ベルトに対する前記ガイド部のベルト周方向の総接触長を短くした請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記発熱部の非分割領域に対応する箇所よりも、前記発熱部の分割領域に対応する箇所で、前
記ベルトの内周面に対向する前記ガイド部のベルト対向面を小さくした請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記発熱部の非分割領域に対応する箇所よりも、前記発熱部の分割領域に対応する箇所で、前記ガイド部のベルト周方向の長さを短くした請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記発熱部の分割領域に対応する箇所に配置された第1ガイド部と、
前記第1ガイド
部とはベルト幅方向に間隔をあけて配置され、前記発熱部の非分割領域に対応する箇所に配置された第2ガイド部とを有し、
前記第1ガイド部を、前記第2ガイド部よりもベルト幅方向に小さく形成した請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
周方向に回転する無端状のベルトと、
前記ベルトの外周面に接触してニップ部を形成する対向部材と、
前記ベルトの内周面に接触すると共に、ベルト幅方向に複数に分割された発熱部を有する加熱部材と、
前記ベルトの内周面に接触して前記ベルトをガイドするガイド部とを備える定着装置において、
前記ガイド部は、前記加熱部材のベルト回転方向の上流側又は下流側に配置され、
上流側又は下流側の前記ガイド部の全てを、前記発熱部の分割領域のベルト幅方向中央位置に対応する箇所以外の箇所であって、前記ベルトの幅領域内に配置したことを特徴とする定着装置。
【請求項8】
上流側又は下流側の前記ガイド部の全てを、前記発熱部の分割領域に対応する箇所以外の箇所であって、前記ベルトの幅領域内に配置した請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
周方向に回転する無端状のベルトと、
前記ベルトの外周面に接触してニップ部を形成する対向部材と、
前記ベルトの内周面に接触すると共に、ベルト幅方向に複数に分割された発熱部を有する加熱部材と、
前記ベルトの内周面に接触して前記ベルトをガイドするガイド部とを備える定着装置において、
前記発熱部の分割領域に対応する箇所には前記ガイド部を配置しないことを特徴とする定着装置。
【請求項10】
前記ガイド部は、前記加熱部材のベルト回転方向の上流側と下流側とにそれぞれ配置され、
上流側の前記ガイド部と下流側の前記ガイド部との位置を、ベルト幅方向において異ならせた請求項1から9のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記加熱部材又は前記ベルトに接触し、前記加熱部材又は前記ベルトの温度を検知する温度検知手段を備え、
前記加熱部材又は前記ベルトに対する前記温度検知手段の接触位置を、前記ガイド部の位置及び前記発熱部の分割領域の少なくとも一方とは、ベルト幅方向において異ならせた請求項1から10のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項12】
前記加熱部材又は前記ベルトに対する前記温度検知手段の接触面に凹部を設けた請求項11に記載の定着装置。
【請求項13】
前記加熱部材又は前記ベルトに接触し、前記加熱部材又は前記ベルトの温度が所定温度以上となったときに前記加熱部材への電力供給を遮断する電力遮断手段を備え、
前記加熱部材又は前記ベルトに対する前記電力遮断手段の接触位置を、前記ガイド部の位置及び前記発熱部の分割領域の少なくとも一方とは、ベルト幅方向において異ならせた請求項1から12のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項14】
前記加熱部材又は前記ベルトに対する前記電力遮断手段の接触面に凹部を設けた請求項13に記載の定着装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置において、用紙等の記録媒体に形成された画像を定着する定着装置として、無端状のベルトを用いたベルト方式の定着装置が知られている。
【0003】
この種の定着装置においては、ベルトを加熱する加熱部材として、ベルト幅方向に渡って複数に分割されたヒータを用いたもの(下記特許文献1)や、ベルトをガイドするガイド部として、複数のフィルムガイドが設けられたもの(下記特許文献2)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、良好な定着性が得られるようにするには、加熱部材によって加熱されるベルトの温度がその幅方向に渡って均一であることが望ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1には、分割されたヒータを用いた場合に、ヒータの分割部分の配熱量が他の部分に比べて小さくなるため、その部分に対応するベルトの温度が他の部分よりも低くなる課題が記載されている(特許文献1の段落[0082]参照)。
【0006】
また、引用文献2には、ベルトの熱がフィルムガイドによって部分的に奪われることで、熱を奪われた部分が温度低下する課題が記載されている(特許文献2の段落[0021]参照)。
【0007】
このように、分割されたヒータを備える定着装置や、フィルムガイドを備える定着装置においては、ベルトの温度が幅方向に渡って部分的に低下するといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、周方向に回転する無端状のベルトと、前記ベルトの外周面に接触してニップ部を形成する対向部材と、前記ベルトの内周面に接触すると共に、ベルト幅方向に複数に分割された発熱部を有する加熱部材と、前記ベルトの内周面に接触して前記ベルトをガイドするガイド部とを備える定着装置において、前記発熱部の非分割領域に対応する箇所よりも、前記発熱部の分割領域に対応する箇所で、前記ガイド部の熱容量を小さくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発熱部の非分割領域に対応する箇所よりも、発熱部の分割領域に対応する箇所で、ガイド部の熱容量を小さくすることで、分割領域に対応する箇所でのベルトからガイド部への伝熱量を低減することができる。これにより、分割領域に対応する箇所でのベルトの局部的な温度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図3】ヒータ、ヒータフォルダ及びガイド部の斜視図である。
【
図6】ヒータの制御動作を示すフローチャートである。
【
図7】発熱部の分割領域とガイド部の位置とをベルト幅方向にずらした実施形態を示す図である。
【
図9】分割領域が斜めに形成された例を示す図である。
【
図10】分割領域が屈曲して形成された例を示す図である。
【
図11】抵抗発熱体が複数の折り返し部を有する形状に形成された例を示す図である。
【
図12】ガイド部を分割領域に対応する箇所に配置した例を示す図である。
【
図13】上流側のガイド部と下流側のガイド部とをベルト幅方向において異なる位置に配置した例を示す図である。
【
図14】分割領域に対応する箇所のガイド部に凹部を設けた実施形態を示す図である。
【
図15】
図14に示す実施形態の側面図であって、(a)は、分割領域に対応する箇所のガイド部の側面図、(b)は、非分割領域に対応する箇所のガイド部の側面図である。
【
図16】
図14に示す実施形態の変形例であって、ガイド部がベルト幅方向に渡って連続して設けられた例を示す図である。
【
図17】分割領域に対応する箇所のガイド部の周長を短くした実施形態を示す図であって、(a)は、分割領域に対応する箇所のガイド部の側面図、(b)は、非分割領域に対応する箇所のガイド部の側面図である。
【
図18】分割領域に対応する箇所のガイド部の幅を小さくした実施形態を示す図である。
【
図19】サーミスタ及びサーモスタットの配置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0013】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。具体的には、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電する帯電装置3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング装置5とを備える。
【0014】
また、画像形成装置100は、各感光体2の表面を露光し静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体としての用紙Pを供給する給紙装置7と、各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置9と、用紙Pを装置外に排出する排紙装置10とを備える。
【0015】
転写装置8は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0016】
また、画像形成装置100内には、給紙装置7から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路14が形成されている。この用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0017】
次に、
図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が
図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0019】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、
図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0020】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
続いて、定着装置の構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、無端状のベルトから成る定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触してニップ部Nを形成する対向部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱部材としてのヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータフォルダ23と、ヒータフォルダ23を支持する支持部材としてのステー24と、定着ベルト20の温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタ25等を備えている。
【0023】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0024】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0025】
加圧ローラ21が付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が
図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられた面状の加熱部材であり、板状の基材30と、基材30上に設けられた抵抗発熱体31と、抵抗発熱体31を被覆する絶縁層32等で構成されている。また、ヒータ22は、絶縁層32側で定着ベルト20の内周面に対して接触しており、抵抗発熱体31から発された熱は、絶縁層32を介して定着ベルト20へと伝達される。本実施形態では、抵抗発熱体31や絶縁層32が基材30の定着ベルト20側(ニップ部N側)に設けられているが、反対に、抵抗発熱体31や絶縁層32を基材30のヒータフォルダ23側に設けてもよい。その場合、抵抗発熱体31の熱が基材30を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、基材30を熱伝導率の良い材料で構成することで、抵抗発熱体31を基材30の定着ベルト20側とは反対側に配置しても、定着ベルト20を十分に加熱することが可能である。
【0027】
ヒータフォルダ23及びステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側板に支持されている。ステー24によってヒータフォルダ23及びこれに保持されるヒータ22が支持されていることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめてニップ部Nを安定的に形成する。
【0028】
ヒータフォルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータフォルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータフォルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することができる。また、ヒータ22に対するヒータフォルダ23の接触面積を少なくし、ヒータ22からヒータフォルダ23へ伝わる熱量を低減するため、ヒータフォルダ23はヒータ22の基材30に対して突起部23aを介して接触している。さらに、本実施形態のように、ヒータフォルダ23の突起部23aを、基材30の抵抗発熱体31が配置されている箇所の裏側以外、すなわち基材30の温度が高くなりやすい箇所を避けて接触させることで、ヒータフォルダ23へ伝わる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト20を加熱できる。
【0029】
また、ヒータフォルダ23には、定着ベルト20をガイドするガイド部26が設けられている。ガイド部26は、ヒータ22のベルト回転方向の上流側(
図2におけるヒータ22の下側)と下流側(
図2におけるヒータ22の上側)とにそれぞれ設けられている。また、
図3に示すように、上流側と下流側のガイド部26は、ヒータ22の長手方向(ベルト幅方向)に渡って間隔をあけて複数配置されている。各ガイド部26は、略扇型に形成されており、定着ベルト20の内周面に対向するようにベルト周方向に延在する円弧状又は凸曲面状のベルト対向面260を有する(
図2参照)。また、
図3に示すように、本実施形態においては、ヒータ22の長手方向両端部に配置されたガイド部26の幅Wが他のガイド部26よりも大きく形成されている以外、各ガイド部26の幅W、ベルト周方向の長さ(周長)L、高さEは同じに形成されている。
【0030】
本実施形態に係る定着装置9において、印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。このとき、定着ベルト20の内周面がガイド部26のベルト対向面260に接触してガイドされることで、定着ベルト20は安定かつ円滑に回転する。また、ヒータ22の抵抗発熱体31に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。
【0031】
【0032】
図4に示すように、本実施形態に係るヒータ22は、その長手方向(ベルト幅方向)に間隔をあけて配置された複数の抵抗発熱体31を有している。言い換えれば、複数の抵抗発熱体31によって、ベルト幅方向に複数に分割された発熱部35が構成されている。各抵抗発熱体31は、基材30の長手方向両端部に設けられた一対の電極34に対して給電線33を介して電気的に並列に接続されている。給電線33は、抵抗発熱体31よりも抵抗値の小さい導体で構成されている。互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、抵抗発熱体31間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。また、互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、大きすぎると、その隙間の部分で温度低下が生じやすくなるため、長手方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0033】
抵抗発熱体31は、PTC(正の温度抵抗係数)特性を有する材料で構成されており、温度が上昇すると抵抗値が上昇(ヒータ出力が低下)する特徴がある。
【0034】
この特徴により、例えば発熱部35の全体幅よりも幅の小さい用紙を通紙した場合、紙幅より外側の領域では用紙によって定着ベルト20の熱が奪われないため、その部分に相当する抵抗発熱体31の温度が上昇する。抵抗発熱体31にかかる電圧は一定なので、紙幅より外側の抵抗発熱体31の温度が上昇し、その抵抗値が上昇すると、反対に出力(発熱量)が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。また、複数の抵抗発熱体31が電気的に並列接続されていることで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。なお、発熱部35を構成する発熱体は、PTC特性を有する抵抗発熱体以外のものであってもよい。また、発熱体は、ヒータ22の短手方向に複数列に配置されていてもよい。
【0035】
抵抗発熱体31は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材30に塗工し、その後、当該基材30を焼成することによって形成することができる。本実施形態では、抵抗発熱体31の抵抗値を常温で80Ωとしている。抵抗発熱体31の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。給電線33や電極34の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。
【0036】
基材30の材料としては、耐熱性及び絶縁性に優れるアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの非金属材料が好ましい。本実施形態では、短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。他に、金属などの導電材料に絶縁性材料を積層したもので、基材30を構成してもよい。金属材料としては、アルミニウムやステンレスなどが低コストで好ましい。また、ヒータ22の均熱性を向上し画像品位を高めるために、基材30を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。
【0037】
絶縁層32は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成される。絶縁層32によって抵抗発熱体31と給電線33とを被覆し、これらを絶縁・保護すると共に、定着ベルト20との摺動性を維持する。
【0038】
図5は、本実施形態に係るヒータへの電力供給回路を示す図である。
【0039】
図5に示すように、本実施形態では、各抵抗発熱体31に電力を供給するため電力供給回路が、交流電源200とヒータ22の電極34とを電気的に接続することで構成されている。また、電力供給回路には、供給電力量を制御するトライアック210が設けられている。各抵抗発熱体31への供給電力量は、温度検知手段としてのサーミスタ25の検知温度に基づいて制御部220がトライアック210を介して制御する。制御部220は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成される。
【0040】
本実施形態では、温度検知手段としてのサーミスタ25が、最小通紙幅内であるヒータ22の長手方向中央領域と、ヒータ22の長手方向一端部側とに、それぞれ配置されている。さらに、ヒータ22の長手方向一端部側には、抵抗発熱体31の温度が所定温度以上となった場合に、抵抗発熱体31への電力供給を遮断する電力遮断手段としてのサーモスタット27が配置されている。サーミスタ25及びサーモスタット27は、基材30の裏面(抵抗発熱体31を配置した側とは反対側)に接触して抵抗発熱体31の温度を検知する。
【0041】
続いて、
図6のフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係るヒータの制御動作について説明する。
【0042】
まず、画像形成装置において印刷動作が開始されると(
図6のS1)、制御部220により交流電源200からヒータ22の各抵抗発熱体31への電力供給が開始される(
図6のS2)。これにより、各抵抗発熱体31が発熱を開始し、定着ベルト20が加熱される。このとき、ヒータ22の長手方向中央領域に配置されたサーミスタ(中央サーミスタ)25によって、ヒータ22の中央領域に位置する抵抗発熱体31の温度T
4が検知される(
図6のS3)。そして、制御部220が、中央サーミスタ25から得られた温度T
4に基づいて、各抵抗発熱体31が所定温度になるように、トライアック210により各抵抗発熱体31への供給電力量を制御する(
図6のS4)。
【0043】
また、同時にヒータ22の長手方向端部側に配置されたサーミスタ(端部サーミスタ)25によっても抵抗発熱体31の温度T
8が検知される(
図6のS5)。そして、端部サーミスタ25によって検知された温度T
8が所定温度T
N以上(T
8≧T
N)か否かが判定され(
図6のS6)、所定温度T
N未満であれば、異常低温発生(断線発生)としてヒータ22への電力供給が遮断され(
図6のS7)、画像形成装置の操作パネルにエラー表示が示される(
図6のS8)。一方、検知された温度T
8が所定温度T
N以上であれば、異常低温発生なしとして印刷動作が開始される(
図6のS9)。
【0044】
また、万が一、抵抗発熱体31が破損、断線するなどにより中央サーミスタ25の検知に基づく温度制御が不能になった場合は、長手方向端部の抵抗発熱体31を含む他の抵抗発熱体31が異常高温になる虞がある。その場合は、抵抗発熱体31が所定温度以上になったときにサーモスタット27が作動して抵抗発熱体31への電力供給を遮断することで、抵抗発熱体31が異常高温となるのを回避する。
【0045】
ところで、本実施形態に係る定着装置9のように、薄肉の定着ベルト20を用いた構成においては、定着ベルト20の熱容量が小さいため、定着ベルト20の表面温度はヒータ22の発熱量分布の影響を受けやすい。従って、本実施形態に係る定着装置9のように、発熱部35がベルト幅方向に渡って分割された構成においては、発熱部35の分割領域に対応する箇所で定着ベルト20の温度が低くなる傾向にある。
【0046】
また、本実施形態に係る定着装置9のように、定着ベルト20をガイドするガイド部26が設けられた構成においては、定着ベルト20の熱がガイド部26によって奪われるため、ガイド部26が配置されている箇所では定着ベルト20の温度が低下する傾向にある。
【0047】
従って、
図23に示す例のように、発熱部35の分割領域Aとガイド部26の位置とがベルト幅方向において重なっている場合は、これらが重なる箇所において、発熱部35の分割領域Aに起因する温度低下に加えて、ガイド部26への伝熱による温度低下が生じるため、特に定着ベルト20の温度が顕著に低下する。
【0048】
図23において、ヒータ22の下方に示すのは、ヒータ22に500Wの電力を4秒間投入したときの定着ベルト20の表面温度をサーモビューワを用いて測定したグラフである。グラフの横軸はベルト幅方向の位置に対応している。この測定結果によれば、
図23に示す例では、発熱部35の分割領域Aとガイド部26の位置とが重なる箇所において特に定着ベルト20の温度が大きく低下し、所望の定着温度範囲Tfよりも下回っている。この状態で、A4サイズの用紙を縦方向に搬送して印刷を行ったところ、定着不良が発生した。
【0049】
上記のような定着不良を防止する対策として、例えば、通紙前の定着ベルト20の加熱時間を延ばし、定着ベルト20の温度を幅方向全体に渡って上昇させる方法が考えられる。しかしながら、この方法では、定着ベルト20を所定の目標温度に加熱するまでのウォーミングアップ時間が長くなったり、消費電力が増えたりするといったデメリットがある。また、定着ベルト20の温度を全体的に上げると、定着上限温度に対する余裕度が少なくなるため、用紙に付与される熱量が過多になるホットオフセット等の不良が発生する虞がある。
【0050】
そこで、本実施形態に係る定着装置9においては、
図7に示すように、発熱部35の分割領域Aとガイド部26の位置とをベルト幅方向においてずらすことで、定着ベルト20の部分的な温度の落ち込みを抑制するようにしている。
【0051】
図7に示す実施形態では、全てのガイド部26を発熱部35の分割領域Aに対応する箇所(分割領域Aを含むベルト周方向領域)には配置しないようにしている。なお、ガイド部26は、定着ベルト20をガイドする機能を発揮する必要があるので、少なくともベルト幅領域内には配置される必要がある。従って、ガイド部26は、ベルト幅領域内であって、発熱部35の分割領域Aに対応する箇所以外の箇所に配置されている。
【0052】
図7に示すグラフは、本実施形態に係るヒータ22を用いた場合の定着ベルト20の表面温度の測定結果である。測定条件は、
図23に示す例の場合と同様である。この測定結果によれば、ベルト幅方向におけるガイド部26の位置と発熱部35の分割領域Aとで、それぞれ定着ベルト20の温度が低下しているが、
図23に示す例のような大きな温度低下は生じなかった。その結果、定着ベルト20の温度は全体に渡って所望の定着温度範囲Tf内にあり、良好な定着性が得られた。このような結果となったのは、ベルト幅方向において発熱部の分割領域Aとガイド部26の位置とを異ならせることで、これらが重なった場合(
図23に示す例)のような定着ベルト20の局部的な温度低下が抑制され、ベルト温度の最大落ち込み量を低減できたからと考えられる。
【0053】
このように、本実施形態に係る構成によれば、加熱時間を延ばして定着ベルト20全体の温度を上昇させなくても、発熱部35の分割領域Aとガイド部26の位置とをベルト幅方向においてずらすだけで、定着ベルト20の局部的な温度低下を抑制できるようになる。これにより、定着ベルト20の加熱時間を延ばすことに伴うウォーミングアップ時間の延長や消費電力の増加、さらにはホットオフセット等の発生を回避しつつ、良好な定着性を得ることが可能となる。
【0054】
上記発熱部35における「分割領域」とは、
図8に示すように、発熱部35が分割された部分全体を含む幅方向領域Aを意味する。ここで、本実施形態では、分割領域Aがヒータ22の短手方向(
図8の上下方向)に対して平行に配置されているが、分割領域Aは、
図9に示すようなヒータ22の短手方向に対して傾斜している場合や、
図10に示すような途中でヒータ22の長手方向に屈曲している場合であってもよい。また、
図11に示す例のように、抵抗発熱体31は、複数の折り返し部分を有する形状に形成されていてもよい。これらの例においても、発熱部35の「分割領域」と言えば、上記と同様に発熱部35が分割された部分全体を含む幅方向領域Aを意味する。また、以下の説明において、分割領域Aを除く発熱部35の幅方向領域Bを「非分割領域」と称することにする。
【0055】
このような
図9や
図10及び
図11に示す例においても、
図8に示す構成と同様に、ガイド部26を分割領域Aに対応する箇所以外の箇所に配置することで、定着ベルト20の顕著な局部的温度低下を抑制することが可能である。
【0056】
上述のように、分割領域Aに対応する箇所では定着ベルト20の温度が低下する傾向にあるが、中でも分割領域Aにおけるベルト幅方向中央位置M(
図8~
図11参照)に対応する箇所では、定着ベルト20の温度低下が最も顕著となる傾向にある。従って、ベルト温度の最大落ち込み量を低減するには、少なくとも分割領域Aのベルト幅方向中央位置Mに対してガイド部26の配置を避ける必要がある。
【0057】
言い換えれば、分割領域Aのベルト幅方向中央位置Mに対するガイド部26の配置さえ回避すれば、ベルト温度の最大落ち込み量を低減する効果が多少なりとも期待できる。このことから、ガイド部26は、少なくとも分割領域Aのベルト幅方向中央位置Mに対応する箇所以外の箇所に配置されればよく、この条件が満たされていれば、
図12に示す例のように、分割領域A(の一部)に対応する箇所にガイド部26を配置してもよい。ただし、ベルト温度の最大落ち込み量を効果的に低減するには、上述の実施形態のように、分割領域A(の全体)に対応する箇所以外の箇所にガイド部26を配置することが好ましいのは言うまでもない。
【0058】
また、上述の実施形態では、ヒータ22に対して上流側に配置されたガイド部26と下流側に配置されたガイド部26とが、ベルト幅方向において同じ位置に配置されているが、
図13に示す例のように、上流側(
図13の下側)のガイド部26と下流側(
図13の上側)のガイド部26とをベルト幅方向において異なる位置に配置してもよい。この場合は、上流側のガイド部26への伝熱と下流側のガイド部26への伝熱とがベルト幅方向において異なる位置で生じるため、これらが重なる場合に比べてベルト温度の最大落ち込み量を低減できる。
【0059】
また、
図13に示す例では、上流側のガイド部26が、発熱部35の分割領域Aに対してずれて配置され、下流側のガイド部26が、発熱部35の分割領域Aに重なるように配置されている。一般的に、定着ベルト20は、回転するとニップ部Nの上流側で引き込まれる力を受けることで、下流側のガイド部26よりも上流側のガイド部26に対して強く接触する、あるいは広い範囲に渡って接触する傾向にある。従って、ガイド部26によって定着ベルト20から奪われる熱は、下流側よりも上流側において大きくなる。斯かる事情を考慮し、
図13に示す例のように、上流側のガイド部26と下流側のガイド部26のうち、少なくとも熱を多く奪う上流側のガイド部26を発熱部35の分割領域Aに対してずらして配置することで、ベルト温度の最大落ち込み量を効果的に低減することが可能である。なお、反対に、下流側のガイド部26を発熱部35の分割領域Aに対してずらして配置することでも、ある程度の効果は期待できる。また、より効果的には、上流側と下流側の両方のガイド部26を、発熱部35の分割領域Aに対してずらして配置し、さらに、上流側と下流側とでガイド部26を互いにベルト幅方向にずらして配置することが好ましい。
【0060】
以下、上述の実施形態とは異なる実施形態について説明する。なお、以下の実施形態については、上述の実施形態とは異なる部分を中心に説明し、それ以外の部分は基本的に同様であるので説明を省略する。
【0061】
図14は、本発明の他の実施形態に係るガイド部の正面図、
図15はその側面図である。
【0062】
図14及び
図15に示す実施形態では、分割領域Aに対応する箇所(分割領域Aを含むベルト周方向領域)に配置されたガイド部26A(以下、「第1ガイド部」という。)と、非分割領域Bに対応する箇所(非分割領域Bを含むベルト周方向領域)に配置されたガイド部26B(以下、「第2ガイド部」という。)とで、形状を異ならせている。具体的には、第1ガイド部26Aのベルト対向面260には、複数の凹部261が形成されている。一方、第2ガイド部26Bのベルト対向面260には、凹部261は形成されておらず、滑らかな凸曲面に形成されている。本実施形態では、凹部261が、φ5、深さ0.5mmの球面状の孔で構成されているが、球面状の孔に限らず、ベルト周方向に延びる溝状の孔(スリット)であってもよいし、貫通孔であってもよい。
【0063】
このように、第1ガイド部26Aのベルト対向面260に凹部261を形成することで、凹部261の箇所では定着ベルト20が第1ガイド部26Aに対して接触しなくなる。すなわち、ベルト幅方向の任意の一点における、定着ベルト20に対するガイド部のベルト周方向の総接触長を、第2ガイド部26Bよりも第1ガイド部26Aにおいて減らすことができる。これにより、分割領域Aに対応する箇所での定着ベルト20からガイド部(第1ガイド部26A)への伝熱量を低減することができ、定着ベルト20の局部的な温度低下を抑制することができる。
【0064】
なお、上記「ベルト周方向の総接触長」とは、定着ベルトが回転した際に、定着ベルトがベルト幅方向の任意の一点におけるガイド部に対して接触する可能性のあるガイド部の部分の周方向の合計長さを意味する。通常、定着ベルトは回転すると、その回転に伴って挙動が発生するので、回転軌跡が変化する。従って、定着ベルトの回転軌跡が変化した場合は、その変化に伴って定着ベルトがガイド部に接触する可能性のある最大接触部分の周方向の合計長さを「ベルト周方向の総接触長」とする。以下、同様である。
【0065】
また、
図14及び
図15に示す実施形態では、定着ベルト20に対するベルト周方向の総接触長を異ならせることで、定着ベルト20に対するガイド部の接触面積を、非分割領域Bに対応する箇所よりも分割領域Aに対応する箇所で小さくしていると言える。ここで言う「接触面積」とは、上記「ベルト周方向の総接触長」の定義に準ずるものであり、具体的には、定着ベルトが回転した際に、1つのガイド部に対して定着ベルトが接触する可能性のあるガイド部の部分の合計面積を意味する。以下、同様である。このように、分割領域Aに対応する箇所で定着ベルト20に対するガイド部の接触面積を小さくすることで、分割領域Aに対応する箇所では、定着ベルト20からガイド部(第1ガイド部26A)への伝熱量を低減することができるため、定着ベルト20の局部的な温度低下を抑制することができる。
【0066】
【0067】
図16に示す例では、ガイド部26がベルト幅方向に渡って(分割領域Aに対応する箇所から非分割領域Bに対応する箇所に渡って)連続して設けられている。このような構成においても、分割領域Aに対応する箇所のガイド部26に凹部261を設けることで、同様に、分割領域Aに対応する箇所において定着ベルト20からガイド部26への伝熱量を低減することができ、定着ベルト20の局部的な温度低下を抑制することができる。
【0068】
図14~
図16では、下流側のガイド部のみ図示しているが、上流側のガイド部についても同様に分割領域Aに対応する箇所で凹部261を形成してもよい。また、上述のように、上流側のガイド部の方が定着ベルトから熱量を多く奪う傾向にあることからすれば、少なくとも上流側において、分割領域Aに対応する箇所のガイド部に凹部261を形成することで、定着ベルトの局部的な温度低下を効果的に抑制することが可能である。
【0069】
【0070】
図17に示す実施形態では、定着ベルト20に対するガイド部のベルト周方向の総接触長を、非分割領域Bに対応する箇所よりも分割領域Aに対応する箇所で短くするために、第1ガイド部26Aのベルト周方向の長さL1を、第2ガイド部26Bのベルト周方向の長さL2よりも短くしている。また、本実施形態では、第1ガイド部26Aと第2ガイド部26Bとの幅は同じであるので、第2ガイド部26Bよりも第1ガイド部26Aにおいてベルト対向面260が小さくなっている。
【0071】
このように、第2ガイド部26Bよりも第1ガイド部26Aにおいてベルト対向面260が小さくなっていることで、結果的に、定着ベルト20に対するガイド部の接触面積が、非分割領域Bに対応する箇所よりも分割領域Aに対応する箇所で小さくなる。これにより、分割領域Aに対応する箇所では、非分割領域Bに対応する箇所に比べて定着ベルト20からガイド部(第1ガイド部26A)への伝熱量を低減することができ、定着ベルト20の局部的な温度低下を抑制することができる。
【0072】
また、
図17では、下流側のガイド部のみ図示しているが、上流側のガイド部についても同様に分割領域Aに対応する箇所でガイド部のベルト周方向の長さを短くしてもよい。また、上述のように、上流側のガイド部の方が定着ベルトから熱量を多く奪う傾向にあることからすれば、少なくとも上流側において、分割領域Aに対応する箇所のガイド部のベルト周方向長さを短くすることで、定着ベルトの局部的な温度低下を効果的に抑制することが可能である。また、本実施形態に係る構成は、ガイド部がベルト幅方向に渡って連続して設けられた構成に対しても適用可能である。
【0073】
上述の
図14~
図17に示す各実施形態では、ガイド部に凹部261を設ける、又はガイド部のベルト周方向長さを短くすることで、分割領域Aに対応する箇所での定着ベルト20に対するベルト周方向の総接触長を短くしたり、あるいは接触面積を小さくしたりすることで、定着ベルト20の局部的な温度低下を抑制するようにしている。これに対して、
図7等に示す実施形態では、分割領域Aに対応する箇所にガイド部26は配置されていないので、当該箇所での定着ベルト20に対するベルト周方向の総接触長や接触面積は存在しない。しかしながら、この実施形態においても、ガイド部26が配置された非分割領域Bに対応する箇所とガイド部26が設けられていない分割領域Aとを相対的に比較すると、非分割領域Bに対応する箇所よりも分割領域Aに対応する箇所で定着ベルト20に対するベルト周方向の総接触長が短くなっている(総接触長が「0」である。)、あるいは定着ベルト20に対するガイド部26の接触面積が小さい(接触面積が「0」である。)と言える。よって、本発明で言う「ベルト周方向の総接触長が短い」とは、総接触長が無い場合も意味し、本発明で言う「定着ベルトに対するガイド部の接触面積が小さい」とは、接触面積が無い場合も意味する。
【0074】
また、
図17に示す実施形態においては、第1ガイド部26Aのベルト周方向長さL1を短くすることで、定着ベルト20に対する接触面積を小さくしているが、別の観点から見れば、第2ガイド部26Bに比べて第1ガイド部26Aのサイズ(体積)が小さくなることで、第1ガイド部26Aの熱容量が小さくなり、その結果、定着ベルト20からガイド部(第1ガイド部26A)への伝熱量が低減されているとも言える。このように、定着ベルト20に対するガイド部の接触面積、あるいはガイド部の熱容量を、非分割領域Bに対応する箇所よりも分割領域Aに対応する箇所で小さくする対応としては、
図17に示す実施形態のほか、下記の
図18に示す実施形態が挙げられる。
【0075】
図18に示す実施形態では、第1ガイド部26Aと第2ガイド部26Bとで幅を異ならせて対応している。すなわち、
図18に示すように、第1ガイド部26Aの幅W1を、第2ガイド部26Bの幅W2よりも小さくしている。これにより、分割領域Aに対応する箇所でのベルト対向面260が小さくなり、結果的に分割領域Aに対応する箇所での定着ベルト20に対するガイド部の接触面積が小さくなる。また、第1ガイド部26Aの幅W1を小さくすることで、第2ガイド部26Bよりもサイズ(体積)が小さくなるため、分割領域Aに対応する箇所でのガイド部の熱容量が小さくなる。これにより、分割領域Aに対応する箇所での定着ベルト20からガイド部への伝熱量を、非分割位置Bに対応する箇所よりも低減することができ、分割領域Aに対応する箇所での定着ベルト20の温度低下を抑制できるようになる。
【0076】
図18においても、下流側のガイド部のみ図示しているが、上流側のガイド部についても同様に分割領域Aに対応する箇所でガイド部の幅を小さくするようにしてもよい。また、上述のように、上流側のガイド部の方が定着ベルトから熱量を多く奪う傾向にあることからすれば、少なくとも上流側において、分割領域Aに対応する箇所でガイド部の幅を小さくすることで、定着ベルトの局部的な温度低下を効果的に抑制することが可能である。
【0077】
上述のように、
図17に示す実施形態及び
図18に示す実施形態においては、分割領域Aに対応する箇所でガイド部の周長又は幅を小さくすることで、ガイド部の熱容量を小さくし、定着ベルト20からガイド部(第1ガイド部26A)への伝熱量の低減を図っている。一方、上述の
図7等に示す実施形態では、分割領域Aに対応する箇所にガイド部26は配置されていないので、当該箇所でのガイド部26の熱容量は無い。しかしながら、この実施形態においても、非分割領域Bに対応する箇所と分割領域Aとを相対的に比較すると、非分割領域Bに対応する箇所よりも分割領域Aに対応する箇所で、ガイド部26の熱容量が小さい(熱容量が「0」である。)と言える。よって、本発明で言う「ガイド部の熱容量が小さい」とは、熱容量が無い場合も意味する。
【0078】
以上説明した各実施形態においては、発熱部35の分割領域Aとガイド部26の配置とに起因する定着ベルト20の局部的な温度低下に対する解決策について説明したが、定着ベルト20の局部的な温度低下は、これらの要因以外に、ヒータ22に接触するサーミスタ25やサーモスタット27(
図5参照)への伝熱もある。
【0079】
そこで、サーミスタ25やサーモスタット27への伝熱による定着ベルト20の局部的な温度低下を抑制するため、
図19に示す実施形態のように、サーミスタ25やサーモスタット27をヒータフォルダ23に取り付けるための孔部41,42を、ガイド部26が設けられた位置に対してベルト幅方向にずらしてもよい。すなわち、ヒータ22に対するサーミスタ25やサーモスタット27の接触位置と、ガイド部26の位置とが、ベルト幅方向に異なるようにする。これにより、サーミスタ25やサーモスタット27への伝熱とガイド部26への伝熱とがベルト幅方向において異なる位置で生じるようになるので、これらが重なる場合に比べてベルト温度の最大落ち込み量を低減できる。
【0080】
また、ヒータ22に対するサーミスタ25やサーモスタット27の接触位置は、発熱部35の分割領域Aともベルト幅方向にずらされていることが好ましい。これにより、サーミスタ25やサーモスタット27と発熱部35の分割領域Aとが重なることによる定着ベルト20の局部的な温度低下も抑制できる。
【0081】
さらに、ヒータ22に対するサーミスタ25やサーモスタット27の接触面に凹部251,271を設けてもよい。これにより、ヒータ22に対するサーミスタ25やサーモスタット27の接触面積が小さくなり、ヒータ22からサーミスタ25やサーモスタット27への伝熱量を低減できるので、定着ベルト20の局部的な温度低下を抑制できる。また、このような凹部251,271を設けた構成は、特に、ヒータ22に対するサーミスタ25やサーモスタット27の接触位置が、ガイド部26の位置及び発熱部35の分割領域Aの少なくとも一方と、ベルト幅方向において重なる場合に好適である。
【0082】
また、サーミスタ25やサーモスタット27は、ヒータ22に直接接触する場合以外に、定着ベルト20に接触して配置されていてもよい。この場合も、定着ベルト20に対するサーミスタ25やサーモスタット27の接触位置を、ガイド部26の位置や発熱部35の分割領域Aとずらしたり、定着ベルト20に対するサーミスタ25やサーモスタット27の接触面に凹部を設けたりすることで、上記のような効果を得ることが可能である。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。従って、上述の各実施形態やその変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0084】
上述の実施形態では、カラー画像形成装置を例に挙げて説明したが、本発明に係る画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。また、本発明に係る画像形成装置には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等が含まれる。
【0085】
また、本発明は、
図2に示す定着装置のほか、例えば、
図20~
図22に示すような定着装置にも適用可能である。以下、
図20~
図22に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0086】
まず、
図20に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ44が配置されており、この押圧ローラ44とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材45が配置されている。ニップ形成部材45は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材45と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。また、ニップ形成部材45には、定着ベルト20をガイドするガイド部26が設けられている。
【0087】
次に、
図21に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ44が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図20に示す定着装置9と同じ構成である。
【0088】
最後に、
図22に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト46が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とを分けて構成している。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側に、ニップ形成部材45とステー47とを配置し、これらニップ形成部材45とステー47を内包するように加圧ベルト46を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト46と加圧ローラ21との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱及び加圧して画像を定着する。その他は、
図2に示す定着装置9と同じ構成である。
【0089】
以上のように、本発明によれば、発熱部の分割領域に対応する箇所における、定着ベルトからガイド部への伝熱量を低減する、あるいはガイド部への伝熱を無くすことで、分割領域に対応する箇所での定着ベルトの局部的な温度低下を抑制することができる。また、本発明によれば、簡単な設計変更を行うだけで定着ベルトの局部的な温度低下を抑制することができるので、加熱時間を延ばして定着ベルト全体の温度を上昇させなくてもよい。このため、定着ベルトの加熱時間を延ばすことに伴うウォーミングアップ時間の延長や消費電力の増加、さらにはホットオフセット等の発生を回避しつつ、良好な定着性を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0090】
9 定着装置
20 定着ベルト
21 加圧ローラ(対向部材)
22 ヒータ(加熱部材)
25 サーミスタ(温度検知手段)
26 ガイド部
26A 第1ガイド部
26B 第2ガイド部
27 サーモスタット(電力遮断手段)
31 抵抗発熱体
35 発熱部
100 画像形成装置
261 ベルト対向面
262 凹部
A 分割領域
B 非分割領域
N ニップ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【文献】特開2016-90606号公報
【文献】特開2008-140701号公報