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特許7499571成膜装置、電子デバイスの製造装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】成膜装置、電子デバイスの製造装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240607BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20240607BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20240607BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20240607BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20240607BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240607BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240607BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240607BHJP
【FI】
C23C14/24 J
C23C14/04 A
C23C14/34 J
C23C14/50 K
C23C16/04
C23C16/44 G
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019189190
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2020111821
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0003967
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003151(JP,A)
【文献】特許第6401885(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/047486(WO,A1)
【文献】特開2005-240121(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108170(WO,A1)
【文献】特開2005-079368(JP,A)
【文献】特開2011-003782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/50
C23C 14/04
C23C 16/44
C23C 16/04
H10K 50/10
H05B 33/10
C23C 14/24
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜装置であって、
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を支持するための基板支持手段と、
前記真空容器内に設けられ、マスクを支持するためのマスク支持手段と、
前記真空容器内に設けられ、前記基板支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができる磁気浮上ステージ機構と、
前記真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、前記成膜材料を粒子化して放出するための成膜源と、
を含み、
前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部にかかる重力を補償するための自重補償手段であって、前記第1のプレート部に設置される第1の磁石部と、前記第2のプレート部に設置される第2の磁石部とを含む自重補償手段をさらに含む
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
基板にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜装置であって、
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を支持するための基板支持手段と、
前記真空容器内に設けられ、マスクを支持するためのマスク支持手段と、
前記真空容器内に設けられ、前記基板支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第
1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができる磁気浮上ステージ機構と、
前記真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、前記成膜材料を粒子化して放出するための成膜源と、
を含み、
前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、
前記原点位置決め手段は、少なくとも3つのキネマティックカップリングを含む
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
前記磁気浮上ステージ機構は、前記第3の方向、前記第1の方向を中心とした回転方向、及び前記第2の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記基板支持手段は、前記第2のプレート部に設置される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して駆動することができる磁気浮上リニアモータを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記磁気浮上リニアモータは、前記第2のプレート部を前記第1の方向に駆動することができる第1の磁気浮上リニアモータと、前記第2のプレート部を前記第2の方向に駆動することができる第2の磁気浮上リニアモータと、前記第2のプレート部を前記第3の方向に駆動することができる第3の磁気浮上リニアモータとを含む
ことを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記磁気浮上リニアモータは、前記第1のプレート部および前記第2のプレート部の一方に設置された固定子と、他方に設置された可動子とを含み、
前記固定子は、前記可動子を駆動するための磁界発生手段を含み、
前記可動子は、磁性体を含む
ことを特徴とする請求項またはに記載の成膜装置。
【請求項8】
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の位置を測定するための位置測定手段をさらに含む
ことを特徴とする請求項1、2および5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記位置測定手段は、前記第1のプレート部に対して固定されるレーザー干渉計と、前記レーザー干渉計と対向するように前記第2のプレート部に設けられる反射部とを含む
ことを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記位置測定手段は、前記第1の方向における前記第2のプレート部の位置を測定するための第1の位置測定部と、前記第2の方向における前記第2のプレート部の位置を測定するための第2の位置測定部と、前記第3の方向における前記第2のプレート部の位置を
測定するための第3の位置測定部とを含む
ことを特徴とする請求項またはに記載の成膜装置。
【請求項11】
前記第1の位置測定部は、前記第1の方向に測定ビームを照射するように設置される第1のレーザー干渉計と、前記第1のレーザー干渉計と対向するように前記第2のプレート部に設けられる第1の反射部とを含み、
前記第2の位置測定部は、前記第2の方向に測定ビームを照射するように設置される第2のレーザー干渉計と、前記第2のレーザー干渉計と対向するように前記第2のプレート部に設けられる第2の反射部とを含み、
前記第3の位置測定部は、前記第3の方向に測定ビームを照射するように設置される複数の第3のレーザー干渉計と、前記第3のレーザー干渉計と対向するように前記第2のプレート部に設けられる複数の第3の反射部とを含み、
前記第1のレーザー干渉計または前記第2のレーザー干渉計のうちの少なくとも一つは、複数である
ことを特徴とする請求項10に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記第1の磁石部と前記第2の磁石部は、前記第2のプレート部にかかる重力の方向と反対方向に浮上力を発生させるように配置される
ことを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記第2の磁石部は、前記第3の方向に延びるスペーサーを介して前記第2のプレート部に設置され、
前記スペーサーは、前記第3の方向において、前記第2の磁石部の前記第2のプレート部に近い端部が前記第1の磁石部の前記第2のプレート部に近い端部よりも前記第2のプレート部からより遠くなる長さを有する
ことを特徴とする請求項12記載の成膜装置。
【請求項14】
前記自重補償手段は、前記第1の方向と前記第2の方向を含む平面内で少なくとも3つの位置に設けられる
ことを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記原点位置決め手段は、つのキネマティックカップリングを含む
ことを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項16】
前記キネマティックカップリングは、前記第1の方向及び前記第2の方向を含む平面上での前記第2のプレート部の中心の周りに等間隔で配置される
ことを特徴とする請求項2または15に記載の成膜装置。
【請求項17】
前記基板は、シリコンウエハ、ガラス、樹脂、高分子材料のフィルム、もしくは、金属、または、これらの材料にフィルムが積層されたものである
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記基板支持手段は、前記基板を吸着して支持する
ことを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項19】
基板にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜装置であって、
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を支持するための基板支持手段と、
前記真空容器内に設けられ、マスクを支持するためのマスク支持手段と、
前記真空容器内に設けられ、前記マスク支持手段による支持面に平行な第1の方向と、
第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記マスク支持手段の位置を調整することができる磁気浮上ステージ機構と、
前記真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、前記成膜材料を粒子化して放出するための成膜源と、
を含み、
前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部にかかる重力を補償するための自重補償手段であって、前記第1のプレート部に設置される第1の磁石部と、前記第2のプレート部に設置される第2の磁石部とを含む自重補償手段をさらに含む
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項20】
基板にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜装置であって、
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を支持するための基板支持手段と、
前記真空容器内に設けられ、マスクを支持するためのマスク支持手段と、
前記真空容器内に設けられ、前記マスク支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記マスク支持手段の位置を調整することができる磁気浮上ステージ機構と、
前記真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、前記成膜材料を粒子化して放出するための成膜源と、
を含み、
前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、
前記原点位置決め手段は、少なくとも3つのキネマティックカップリングを含む
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項21】
前記原点位置決め手段は、3つのキネマティックカップリングを含む
ことを特徴とする請求項19に記載の成膜装置。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載の成膜装置と、
マスクを収納するためのマスクストック装置と、
基板またはマスクを搬送するための搬送装置と、を含むことを特徴とする電子デバイスの製造装置。
【請求項23】
基板上にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜方法であって、
マスクを成膜装置の真空容器内に搬入するステップと、
基板を前記真空容器内に搬入するステップと、
前記基板を、前記真空容器内の基板支持手段によって支持するステップと、
前記真空容器内に設けられた磁気浮上ステージ機構によって前記基板支持手段を移動さ
せることで、前記基板と前記マスクの相対的位置を調整するステップであって、前記磁気浮上ステージ機構は、前記基板支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができるものである、調整するステップと、
前記マスクを前記基板の被成膜面に密着させるステップと、
前記真空容器内の成膜源によって粒子化された成膜材料を前記マスクを介して前記基板に成膜するステップと、
を含み、
前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部にかかる重力を補償するための自重補償手段であって、前記第1のプレート部に設置される第1の磁石部と、前記第2のプレート部に設置される第2の磁石部とを含む自重補償手段をさらに含む
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項24】
基板上にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜方法であって、
マスクを成膜装置の真空容器内に搬入するステップと、
基板を前記真空容器内に搬入するステップと、
前記基板を、前記真空容器内の基板支持手段によって支持するステップと、
前記真空容器内に設けられた磁気浮上ステージ機構によって前記基板支持手段を移動させることで、前記基板と前記マスクの相対的位置を調整するステップであって、前記磁気浮上ステージ機構は、前記基板支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができるものである、調整するステップと、
前記マスクを前記基板の被成膜面に密着させるステップと、
前記真空容器内の成膜源によって粒子化された成膜材料を前記マスクを介して前記基板に成膜するステップと、
を含み、
前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、
前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、
前記原点位置決め手段は、少なくとも3つのキネマティックカップリングを含む
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項25】
前記原点位置決め手段は、3つのキネマティックカップリングを含む
ことを特徴とする請求項23に記載の成膜方法。
【請求項26】
請求項23から25のいずれか1項に記載の成膜方法を用いて電子デバイスを製造することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、電子デバイスの製造装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)は、スマートフォン、テレビ、自動車用ディスプレイだけでなく、VR-HMD(Virtual Reality Head Mount Display)などにその応用分野が広がっており、特に、VR-HMDに用いられるディスプレイは、ユーザーのめまいを低減するために画素パターンを高精度で形成することが求められる。
【0003】
有機EL表示装置の製造においては、有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子:OLED)を形成する際に、成膜装置の成膜源から放出された成膜材料を、画素パターンが形成されたマスクを介して、基板に成膜することで、有機物層や金属層を形成する。
【0004】
このような成膜装置においては、成膜精度を高めるために、成膜工程の前に、基板とマスクの相対位置を測定し、相対位置がずれている場合には、基板および/またはマスクを相対的に移動させて位置を調整(アライメント)する。
【0005】
このため、従来の成膜装置は、基板支持ユニットおよび/またはマスク支持ユニットに連結されたアライメントステージ機構を含む。アライメントステージ機構は、複数のモータ(例えば、2つのX方向のモータ及び1つのY方向のモータ)と、これらのモータからの回転駆動力を直線駆動力に変換してアライメントステージに伝達するボールねじ、リニアガイド等とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-72478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の成膜装置では、アライメントステージ機構として、機械的な動力源と動力変換手段が用いられており、アライメントステージの位置決めの精度をさらに高めることが容易ではなかった。
【0008】
また、従来のアライメントステージ機構は、機械的な動力源と動力変換手段からのパーティクルや潤滑剤による汚染を低減するために、成膜装置の真空容器の外側(大気側)に設置されるが、これによって、アライメントステージと基板支持ユニット/マスク支持ユニットとの間の距離が長くなり、アライメントステージの機械的駆動時の揺動が基板支持ユニット/マスク支持ユニットに増幅して伝わり、アライメント精度が低下していた。
【0009】
本発明は、パーティクルや潤滑剤による汚染を低減しつつ、基板とマスクとの間の位置調整の精度をさらに改善するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様による成膜装置は、基板にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜装置であって、真空容器と、前記真空容器内に設けられ、基板を支持するための基板支持手段と、前記真空容器内に設けられ、マスクを支持するためのマスク支持ユニットと、前記真空容器内に設けられ、前記基板支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができる磁気浮上ステージ機構と、前記真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、前記成膜材料を粒子化して放出するための成膜源と、を含み、前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部にかかる重力を補償するための自重補償手段であって、前記第1のプレート部に設置される第1の磁石部と、前記第2のプレート部に設置される第2の磁石部とを含む自重補償手段をさらに含むことを特徴とする。
さらに、成膜装置は、基板にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜装置であって、
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を支持するための基板支持手段と、前記真空容器内に設けられ、マスクを支持するためのマスク支持手段と、前記真空容器内に設けられ、前記基板支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができる磁気浮上ステージ機構と、前記真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、前記成膜材料を粒子化して放出するための成膜源と、を含み、前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、前記原点位置決め手段は、少なくとも3つのキネマティックカップリングを含むことを特徴とする。

【0011】
本発明の第2態様による成膜装置は、基板にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜装置であって、真空容器と、前記真空容器内に設けられ、基板を支持するための基板支持手段と、前記真空容器内に設けられ、マスクを支持するためのマスク支持手段と、前
記真空容器内に設けられ、前記マスク支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記マスク支持手段の位置を調整することができる磁気浮上ステージ機構と、前記真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、前記成膜材料を粒子化して放出するための成膜源と、を含み、前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部にかかる重力を補償するための自重補償手段であって、前記第1のプレート部に設置される第1の磁石部と、前記第2のプレート部に設置される第2の磁石部とを含む自重補償手段をさらに含むことを特徴とする。
さらに、成膜装置は、基板にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜装置であって、真空容器と、前記真空容器内に設けられ、基板を支持するための基板支持手段と、前記真空容器内に設けられ、マスクを支持するためのマスク支持手段と、前記真空容器内に設けられ、前記マスク支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記マスク支持手段の位置を調整することができる磁気浮上ステージ機構と、前記真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、前記成膜材料を粒子化して放出するための成膜源と、を含み、前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、前記原点位置決め手段は、少なくとも3つのキネマティックカップリングを含むことを特徴とする。

【0012】
本発明の第3態様による電子デバイスの製造装置は、本発明の第1態様による成膜装置と、マスクを収納するためのマスクストック装置と、基板又はマスクを搬送するための搬送装置とを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の第4態様による成膜方法は、基板上にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜方法であって、マスクを成膜装置の真空容器内に搬入するステップと、基板を前記真空容器内に搬入するステップと、前記基板を、前記真空容器内の基板支持手段によって支持するステップと、前記真空容器内に設けられた磁気浮上ステージ機構によって前記基板支持手段を移動させることで、前記基板と前記マスクの相対的位置を調整するステップであって、前記磁気浮上ステージ機構は、前記基板支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができるものである、調整するステップと、前記マスクを前記基板の被成膜面に密着させるステップと、前記真空容器内の成膜源によって粒子化された成膜材料を前記マスクを介して前記基板に成膜するステップと、を含み、前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に
対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部にかかる重力を補償するための自重補償手段であって、前記第1のプレート部に設置される第1の磁石部と、前記第2のプレート部に設置される第2の磁石部とを含む自重補償手段をさらに含むことを特徴とする。
さらに、成膜方法は、基板上にマスクを介して成膜材料を成膜するための成膜方法であって、マスクを成膜装置の真空容器内に搬入するステップと、基板を前記真空容器内に搬入するステップと、前記基板を、前記真空容器内の基板支持手段によって支持するステップと、前記真空容器内に設けられた磁気浮上ステージ機構によって前記基板支持手段を移動させることで、前記基板と前記マスクの相対的位置を調整するステップであって、前記磁気浮上ステージ機構は、前記基板支持手段による支持面に平行な第1の方向と、第1の方向と交差し、前記基板支持手段による支持面と平行な第2の方向と、前記第1の方向及び前記第2の方向の両方と交差する第3の方向を中心とした回転方向における、前記基板支持手段の位置を調整することができるものである、調整するステップと、前記マスクを前記基板の被成膜面に密着させるステップと、前記真空容器内の成膜源によって粒子化された成膜材料を前記マスクを介して前記基板に成膜するステップと、を含み、前記磁気浮上ステージ機構は、前記真空容器に対して位置が固定され、前記第1の方向及び前記第2の方向と平行に設置される第1のプレート部と、前記第1のプレート部に対して相対的に移動可能な第2のプレート部と、前記第2のプレート部を前記第1のプレート部に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニットとを含み、前記磁気浮上ユニットは、前記第2のプレート部の原点位置を決めるための原点位置決め手段をさらに含み、前記原点位置決め手段は、少なくとも3つのキネマティックカップリングを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の第5態様による電子デバイスの製造方法は、本発明の第3態様による成膜方法を使用して電子デバイスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パーティクルや潤滑剤による汚染を低減しつつ、基板とマスクとの間の位置調整の精度をさらに改善するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、電子デバイスの製造装置の一部の模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による成膜装置の模式図である。
図3A図3Aは、本発明の一実施形態による磁気浮上ステージ機構の模式平面図である。
図3B図3Bは、本発明の一実施形態による磁気浮上ステージ機構の模式断面図であり、位置測定手段を説明する。
図3C図3Cは、本発明の一実施形態による磁気浮上ステージ機構の模式断面図であり、原点位置決め手段を説明する。
図3D図3Dは、本発明の一実施形態による磁気浮上ステージ機構の模式断面図であり、自重補償手段を説明する。
図4A図4Aは、本発明の一実施形態による磁気浮上リニアモータの構造を示す模式図である。
図4B図4Bは、本発明の一実施形態による磁気浮上リニアモータの構造を示す模式図である。
図5図5は、本発明の一実施形態による自重補償手段の構造を示す模式図である。
図6図6は、本発明の一実施形態による成膜方法により製造される電子デバイスを示す模式図である。
図7図7は、本発明の一実施形態によるアライメント及び成膜工程を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は、本発明の好ましい構成を例示的に表すものであり、本発明の範囲は、これらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に限定的な記載がない限り、本発明の範囲をこれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
本発明は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好適に適用することができる。
基板の材料としては、半導体(例えば、シリコン)、ガラス、樹脂、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選ぶことができ、基板は、例えば、シリコンウエハ、又はガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板であってもよい。また、成膜材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選ぶことができる。
【0019】
なお、本発明は、加熱蒸発による真空蒸着装置の以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む成膜装置にも、適用することができる。本発明の技術は、具体的には、半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品などの各種電子デバイスや、光学部品などの製造装置に適用可能である。電子デバイスの具体例としては、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどが挙げられる。本発明は、中でも、OLEDなどの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造装置に好ましく適用可能である。なお、本発明における電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。
【0020】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
図1の製造装置は、例えば、VR-HMD用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。VR-HMD用の表示パネルの場合、例えば、所定のサイズのシリコンウエハに有機EL素子の形成のための成膜を行った後、素子形成領域の間の領域(スクライブ領域)に沿って該シリコンウエハを切り出して、複数の小さなサイズのパネルに製作する。
【0021】
本実施形態に係る電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置の間を繋ぐ中継装置とを含む。
クラスタ装置1は、基板Wに対する処理(例えば、成膜)を行う成膜装置11と、使用前後のマスクを収納するマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13(搬送装置)と、を備える。搬送室13は、図1に示したように、成膜装置11およびマス
クストック装置12のそれぞれと接続される。
【0022】
搬送室13内には、基板Wおよびマスクを搬送する搬送ロボット14が配置される。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板W又はマスクを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0023】
成膜装置11では、成膜源から放出された成膜材料がマスクを介して基板W上に成膜される。搬送ロボット14との基板W/マスクの受け渡し、基板Wとマスクの相対的位置の調整(アライメント)、マスク上への基板Wの固定、成膜などの一連の成膜プロセスは、成膜装置11によって行われる。
有機EL表示装置を製造するための製造装置において、成膜装置11は、成膜される材料の種類によって、有機膜の成膜装置と金属性膜の成膜装置に分けることができ、有機膜の成膜装置は、有機物の成膜材料を蒸着又はスパッタリングによって基板Wに成膜し、金属性膜の成膜装置は、金属性の成膜材料を蒸着またはスパッタリングにより基板Wに成膜する。
【0024】
有機EL表示装置を製造するための製造装置において、どの成膜装置をどの位置に配置するかは、製造される有機EL素子の積層構造によって異なり、有機EL素子の積層構造に応じてこれを成膜するための複数の成膜装置が配置される。
【0025】
有機EL素子の場合、通常、アノードが形成されている基板W上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、カソードがこの順に積層される構造を有し、これらの層を順次成膜できるように基板の流れ方向に沿って適切な成膜装置が配置される。
例えば、図1において、成膜装置11aは、正孔注入層HILおよび/または正孔輸送層HTLを成膜し、成膜装置11b、11fは、青色の発光層を、成膜装置11cは、赤色の発光層を、成膜装置11d、11eは、緑色の発光層を、成膜装置11gは、電子輸送層ETLおよび/または電子注入層EILを、成膜装置11hは、カソード金属膜を成膜するように配置される。図1に示した実施例では、素材の特性上、青色の発光層と緑色の発光層の成膜速度が赤色の発光層の成膜速度より遅いので、処理速度のバランスを取るために青色の発光層と緑色の発光層とをそれぞれ2つの成膜装置で成膜するようにしているが、本発明はこれに限定されず、他の配置構造を有しても良い。
【0026】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、複数のカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納されている新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0027】
複数のクラスタ装置1の間を連結する中継装置は、クラスタ装置1の間で基板Wを搬送するパス室15を含む。
搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Wを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板Wを複数の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11e)から受け取って、下流側に連結されたパス室15に搬送する。
【0028】
中継装置は、パス室15の他に、上下流側のクラスタ装置1での基板Wの処理速度の差を吸収するためのバッファ室(不図示)、及び基板Wの方向を変えるための旋回室(不図示)をさらに含むことができる。例えば、バッファ室は、複数の基板Wを一時的に収納する基板積載部を含み、旋回室は、基板Wを180度回転させるための基板回転機構(例え
ば、回転ステージまたは搬送ロボット)を含む。これにより、上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置で基板Wの向きが同じくなり、基板処理が容易になる。
本発明の一実施形態によるパス室15は、複数の基板Wを一時的に収納するための基板積載部(不図示)や基板回転機構を含んでもよい。つまり、パス室15が、バッファ室や旋回室の機能を兼ねても良い。
【0029】
クラスタ装置1を構成する成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13などは、有機発光素子の製造過程で、高真空状態に維持される。中継装置のパス室15は、通常、低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されても良い。
【0030】
有機EL素子を構成する複数の層の成膜が完了した基板Wは、有機EL素子を封止するための封止装置(不図示)や基板を所定のパネルサイズに切断するための切断装置(不図示)などに搬送される。
【0031】
本実施例では、図1を参照し電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバを有してもよく、これらの装置やチャンバ間の配置が変わっても良い。
【0032】
例えば、本発明の一実施形態による電子デバイス製造装置は、図1に示したクラスタタイプではなく、インラインタイプであっても良い。つまり、基板WとマスクMをキャリアに搭載して、一列に並んだ複数の成膜装置内を搬送させながら成膜を行う構成を有してもよい。また、クラスタタイプとインラインタイプを組み合わせたタイプの構造を有しても良い。例えば、有機層の成膜まではクラスタタイプの製造装置で行い、電極層(カソード層)の成膜工程から封止工程及び切断工程などは、インラインタイプの製造装置で行ってよい。
【0033】
以下、成膜装置11の具体的な構成について説明する。
<成膜装置>
図2は、本発明の一実施形態による成膜装置11の構成を示す模式図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とし、水平面をXY平面とするXYZ直交座標系を用いる。また、X軸まわりの回転角をθ、Y軸まわりの回転角をθ、Z軸まわりの回転角をθで表す。
図2は、成膜材料を加熱することによって蒸発または昇華させ、マスクMを介して基板Wに成膜する成膜装置11の一例を示している。
【0034】
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空容器21と、真空容器21内に設けられ、基板Wの位置を少なくともX方向、Y方向、及びθ方向に調整するための磁気浮上ステージ機構22と、真空容器21内に設けられ、マスクMを支持するマスク支持ユニット23と、真空容器21内に設けられ、基板Wを吸着して保持する基板吸着手段24と、真空容器内に設けられ、成膜材料を収納し、成膜時にこれを粒子化して放出する成膜源25とを含む。
本発明の一実施形態による成膜装置11は、磁気力によってマスクMを基板W側に密着させるための磁力印加手段26をさらに含むことができる。
【0035】
本発明の一実施形態による成膜装置10の真空容器21は、磁気浮上ステージ機構22が配置される第1真空容器部211と、成膜源25が配置される第2真空容器部212とを含み、例えば、第2真空容器部212に接続された真空ポンプ(不図示)によって真空容器21全体の内部空間が高真空状態に維持される。
【0036】
また、少なくとも第1真空容器部211と第2真空容器部212との間には、伸縮可能
部材213が設置される。伸縮可能部材213は、第2真空容器部212に連結される真空ポンプからの振動や、成膜装置11が設けられた床又はフロアからの振動が、第2真空容器部212を通して第1真空容器部211に伝わることを低減する。伸縮可能部材213は、例えば、ベローズであり得るが、本発明はこれに限定されず、第1真空容器部211と第2真空容器部212との間で振動の伝達を低減することができる限り、他の部材を使用してもよい。
【0037】
このように、本発明の一実施形態による成膜装置11は、真空容器21を複数の容器部(例えば、第1真空容器部211と第2真空容器部212)に分け、その間に伸縮可能部材213を設けることによって、磁気浮上ステージ機構22が設置される第1真空容器部211に外部振動が伝わることを低減することができる。
【0038】
真空容器21は、磁気浮上ステージ機構22が固定連結される基準プレート214と、基準プレート214を所定の高さに支持するための基準プレート支持部215とをさらに含む。本発明の一実施例においては、図2に示したように、基準プレート214と第1真空容器部211との間にも伸縮可能部材213をさらに設置してもよい。これにより、基準プレート214を介して磁気浮上ステージ機構22に外部振動が伝わることをさらに低減することができる。
【0039】
基準プレート支持部215と成膜装置11の設置架台217との間には、床又はフロアから成膜装置11の設置架台217を通して基準プレート支持部215に振動が伝わることを低減するための除振ユニット216が設置される。
【0040】
磁気浮上ステージ機構22は、磁気浮上リニアモータによって基板Wまたは基板吸着手段24の位置を調整するためのステージ機構であって、少なくともX方向、Y方向、及びθ方向、好ましくは、X方向、Y方向、Z方向、θ方向、θ方向、θ方向の6つの方向における基板Wまたは基板吸着手段24の位置を調整する。
X方向およびY方向は、基板吸着手段24の吸着面に平行な方向であり、X方向およびY方向の一方が第1の方向に対応し、他方が第1の方向と交差する第2の方向に当たる。Z方向はX方向およびY方向の両方と交差する方向であり、第3の方向に当たる。θ方向は、Z方向を中心とした回転方向に当たる。例えばX方向が第1の方向のとき、θ方向は第1の方向を中心とした回転方向に当たり、θ方向は第2の方向を中心とした回転方向に当たる。
磁気浮上ステージ機構22は、固定台として機能するステージ基準プレート部221(第1のプレート部)と、可動台として機能する微動ステージプレート部222(第2のプレート部)と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対し磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニット223とを含む。磁気浮上ステージ機構22の具体的な構成については、図3A図3Dを参照して、後述する。
【0041】
マスク支持ユニット23は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14が搬送してくるマスクMを受け取って保持する手段であり、マスクホルダとも呼ばれる。
マスク支持ユニット23は、少なくとも鉛直方向に昇降可能に設置される。これにより、基板WとマスクMとの間の鉛直方向における間隔を容易に調節することができる。本発明の一実施例のように、基板Wの位置を磁気浮上ステージ機構22によって調整する場合は、マスクMを支持するマスク支持ユニット23は、モータ(不図示)及びボールねじ/ガイド(不図示)によって機械的に昇降駆動することが好ましい。
【0042】
また、本発明の一実施例によれば、マスク支持ユニット23は、水平方向(つまり、XYθ方向)に移動可能に設置してもよい。これにより、マスクMがアライメント用カメラの視野から外れた場合にも、迅速にこれを視野内に移動させることができる。
【0043】
また、本発明の一実施例によれば、アライメント工程でマスクMと基板Wを相対的に位置合わせする際に、マスクMをマスク支持ユニットごと、基板Mに対して移動可能としても良い。あるいは、マスクMを支持するマスク支持ユニットと、基板Wを支持する基板支持ユニットの両方を、互いに対して移動可能としても良い。このようにマスク支持ユニットを移動可能とする場合、その駆動源として、上述の磁気浮上ステージ機構22と同様の磁気浮上機構を採用しても良い。マスク用の磁気浮上機構は、例えば、マスク面に平行な面内における第1の方向(X方向)および第1の方向と交差する第2の方向(Y方向)と、マスク面に交差する方向(第1の方向および第2の方向の両方と交差する第3の方向)を中心とした回転方向(θ方向)にマスク支持ユニットを移動させるものである。マスク用の磁気浮上機構は、より好ましくは、Z方向、θ方向、およびθ方向に、マスク支持ユニットを駆動させる。
【0044】
マスク支持ユニット23は、搬送ロボット14によって真空容器21内に搬入されたマスクMを一時的に受け取るためのマスクピックアップ231をさらに含む。
マスクピックアップ231は、マスク支持ユニット23のマスク支持面に対して相対的に昇降できるように構成される。例えば、図2に示したように、マスクピックアップ昇降機構232によって、マスクピックアップ231がマスク支持ユニット23のマスク支持面に対して相対的に昇降可能に構成することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、マスクピックアップ231とマスク支持ユニット23のマスク支持面とが相対的に昇降可能な限り、他の構成を有しても良い。例えば、マスクピックアップ231が基準プレート214又は磁気浮上ステージ機構22のステージ基準プレート部221に固定され、マスク支持ユニット23が昇降可能に構成してもよい。あるいは、マスクピックアップ231及びマスク支持ユニット23の両方が昇降可能に構成してもよい。
【0045】
搬送ロボット14のハンドからマスクMを受け取ったマスクピックアップ231は、マスク支持ユニット23のマスク支持面に対し相対的に下降し、マスクMをマスク支持ユニット23に載置する。逆に、使用済みのマスクMを搬出する場合には、マスクMをマスク支持ユニット23のマスク支持面から持ち上げ、搬送ロボット14のハンドがマスクMを受け取ることができるようにする。
【0046】
マスクMは、基板W上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有し、マスク支持ユニット23によって支持される。例えば、VR-HMD用の有機EL表示パネルを製造するのに使われるマスクMは、有機EL素子の発光層のRGB画素パターンに対応する微細な開口パターンが形成された金属製マスクであるファインメタルマスク(Fine Metal Mask)と、有機EL素子の共通層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など)を形成するのに使われるオープンマスク(open mask)とを含む。
マスクMの開口パターンは、成膜材料の粒子を通過させない遮断パターンによって定義される。
【0047】
基板吸着手段24は、搬送室13に設置された搬送ロボット14が搬送してきた、被成膜体としての基板Wを吸着して保持する手段である。基板吸着手段24は、磁気浮上ステージ機構22の可動台である微動ステージプレート部222に設置される。
基板吸着手段24は、例えば、誘電体/絶縁体(例えば、セラミック材質)マトリックス内に金属電極などの電気回路が埋設された構造を有する静電チャックである。
【0048】
基板吸着手段24としての静電チャックは、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が高い誘電体が介在して、電極と被吸着体との間のクーロン力によって吸着が行われるクーロン力タイプの静電チャックであってもよいし、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が低い誘
電体が介在して、誘電体の吸着面と被吸着体との間に発生するジョンソン・ラーベック力によって吸着が行われるジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックであってもよいし、不均一電界によって被吸着体を吸着するグラジエント力タイプの静電チャックであってもよい。
【0049】
被吸着体が導体または半導体(シリコンウエハ)である場合には、クーロン力タイプの静電チャックまたはジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックを用いることが好ましく、被吸着体がガラスのような絶縁体である場合には、グラジエント力タイプの静電チャックを用いることが好ましい。
静電チャックは、一つのプレートで形成されてもよく、複数のサブプレートを有するように形成されても良い。また、一つのプレートで形成される場合にも、その内部に複数の電気回路を有し、一つのプレート内で位置によって静電引力が異なるように制御しても良い。
【0050】
また、本発明の一実施例によれば、基板を支持面において支持する基板支持手段として、基板吸着手段24に代えて、クランプ機構による挟持や受け爪への載置などの吸着以外の方法で基板を支持する基板支持手段を用いることもできる。
【0051】
図2には図示しなかったが、成膜装置11は、搬送ロボット14によって真空容器21内に搬入された基板Wを基板吸着手段24が吸着して保持する前に、一時的に基板Wを保持する基板支持ユニットをさらに含んでもよい。例えば、基板支持ユニットは、マスク支持ユニット23に別途の基板支持面を有するように設置され、マスク支持ユニット23の昇降によって昇降するように設置されても良い。
【0052】
また、図2には図示しなかったが、基板吸着手段24の吸着面とは反対側に基板Wの温度上昇を抑制するための冷却手段(例えば、冷却板)を設けて、基板W上に堆積された有機材料の変質や劣化を抑制する構成にしてもよい。
【0053】
成膜源25は、基板Wに成膜される成膜材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、成膜源25からの蒸発レートが一定になるまで成膜材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。成膜源25は、点(point)成膜源や線状(linear)成膜源など、用途に従って多様な構成を有することができる。
成膜源25は、互いに異なる成膜材料を収納する複数のるつぼを含んでもよい。このような構成においては、真空容器21を大気開放せずに成膜材料を変更できるように、異なる成膜材料を収納する複数のるつぼを成膜位置に移動可能に設置してもよい。
【0054】
磁力印加手段26は、成膜工程時に磁力によってマスクMを基板W側に引き寄せて密着させるための手段であって、鉛直方向に昇降可能に設置される。例えば、磁力印加手段26は、電磁石および/または永久磁石で構成される。なお、基板吸着手段24が、基板WだけでなくマスクMも吸着する構成としても良い。例えば、基板吸着手段24としてグラジエント力タイプの静電チャックを用いる場合、静電チャックに印加する電圧を制御することで、基板WとマスクMの吸着/非吸着を制御できる。
【0055】
成膜装置11は、基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含んでも良い。
【0056】
真空容器21の上部外側(大気側)、すなわち、基準プレート214上には、マスクピックアップ231を昇降させるためのマスクピックアップ昇降機構232、磁力印加手段26を昇降させるための磁力印加手段昇降機構261などが設置される。マスク支持ユニ
ット23を昇降させるためのマスク支持ユニット昇降機構(不図示)を基準プレート214上に設置してもよいが、本発明はこれに限定されず、例えば、マスク支持ユニット昇降機構(不図示)を、第1真空容器(211)の下部の大気側に設置してもよい。
【0057】
本発明の一実施形態による成膜装置11は、真空容器21の上部外側(大気側)に設置され、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラユニット27をさらに含む。
本実施例において、アライメント用カメラユニット27は、基板WとマスクMの相対的位置を大まかに調整するのに用いられるラフアライメント用カメラと、基板WとマスクMの相対的位置を高精度に調整するのに用いられるファインアライメント用カメラとを含むことができる。ラフアライメント用カメラは、相対的に視野角が広く、低解像度であり、ファインアライメント用カメラは、相対的に視野角は狭いが、高解像度を有するカメラである。
【0058】
ラフアライメント用カメラとファインアライメント用カメラは、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークに対応する位置に設置される。例えば、ファインアライメント用カメラは、4つのカメラが矩形の4つのコーナー部をなすように設置され、ラフアライメント用カメラは、該矩形の対向する二つの辺の中央に設置される。ただし、本発明はこれに限定されず、基板W及びマスクMのアライメントマークの位置に応じて他の配置を有しても良い。
【0059】
図2に示したように、本発明の一実施形態による成膜装置11のアライメント用カメラユニット27は、真空容器21の上部大気側から基準プレート214を通して真空容器21の内側に入り込むように設置される。このため、アライメント用カメラユニット27は、大気側に配置されるアライメント用カメラを囲んで密封する真空対応筒(不図示)を含む。
このように、アライメント用カメラが真空対応筒を介して真空容器21の内側に入り込むように設置することによって、磁気浮上ステージ機構22の動作によって基板WとマスクMが基準プレート214から比較的遠く離れて支持されても、基板WとマスクMに形成されたアライメントマークに焦点を合わせることができる。真空対応筒の下端の位置は、アライメント用カメラの焦点深度と、基板W/マスクMが基準プレート214から離れたときの距離に応じて、適切に決めることができる。
図2には図示しなかったが、成膜工程中に密閉される真空容器21の内部は暗いので、真空容器21の内側に入り込んでいるアライメント用カメラによりアライメントマークを撮影するために、アライメントマークを照らす照明光源を設置してもよい。
【0060】
成膜装置11は、制御部100を備える。制御部は、基板W/マスクMの搬送及びアライメントの制御、成膜の制御などの機能を有する。また、制御部は、静電チャックへの電圧印加を制御する機能を有しても良い。
制御部は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを持つコンピューターによって構成することができる。この場合、制御部の機能は、メモリーまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを使用してもよく、組込み型のコンピューターまたはPLC(programmable logic controller)を使用してもよい。または、制御部の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。
【0061】
<磁気浮上ステージ機構>
以下、図3A図3D図4A図4B図5を参照して、本発明の一実施形態による
磁気浮上ステージ機構22について説明する。
図3Aは、本発明の一実施形態による磁気浮上ステージ機構22の模式的平面図であり、図3B図3Dは模式的断面図である。
【0062】
磁気浮上ステージ機構22は、前述したように、固定台として機能するステージ基準プレート部221と、可動台として機能する微動ステージプレート部222と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対して磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニット223とを含む。
【0063】
ステージ基準プレート部221は、微動ステージプレート部222の移動の基準となる部材であって、その位置が固定されるように設置される。例えば、図2に示したように、ステージ基準プレート部221は、XY平面に平行に、真空容器21の基準プレート214に固定されるように設置される。ただし、本発明はこれに限定されず、ステージ基準プレート部221は、その位置が固定できる限り、基準プレート214に直接固定されず、他の部材(例えば、別の基準フレーム)に固定されてもよい。
ステージ基準プレート部221は、微動ステージプレート部222の移動の基準となる部材であるため、伸縮可能部材213及び除振ユニット216などにより、真空ポンプまたは床からの振動のような外乱から影響を受けないように設置されるのが好ましい。
【0064】
微動ステージプレート部222は、ステージ基準プレート部221に対して移動可能に設置され、微動ステージプレート部222の一主面(例えば、下面)には、静電チャックのような基板吸着手段24が設置される。したがって、微動ステージプレート部222の移動により、基板吸着手段24及びこれに吸着された基板Wの位置を調整することができる。
【0065】
本発明の一実施形態による磁気浮上ユニット223は、可動台である微動ステージプレート部222を固定台であるステージ基準プレート部221に対して移動させる駆動力を発生させるための磁気浮上リニアモータ31と、微動ステージプレート部222の位置を測定するための位置測定手段と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対して浮上させる浮上力を提供することで微動ステージプレート部222にかかる重力を補償する自重補償手段33と、微動ステージプレート部222の原点位置を決める原点位置決め手段34とを含む。
【0066】
磁気浮上リニアモータ31は、微動ステージプレート部222を移動させるための駆動力を発生させる駆動源であって、例えば、図3Aに示したように、微動ステージプレート部222をX方向に移動させるための駆動力を発生させる2つのX方向磁気浮上リニアモータ311と、微動ステージプレート部222をY方向に移動させるための駆動力を発生させる2つのY方向磁気浮上リニアモータ312と、微動ステージプレート部222をZ方向に移動させるための駆動力を発生させる3つのZ方向磁気浮上リニアモータ313とを含む。
【0067】
これらの複数の磁気浮上リニアモータ31を用いて、微動ステージプレート部222を6つの自由度に(X方向、Y方向、Z方向、θ方向、θ方向、θ方向に)移動させることができる。
例えば、X方向、Y方向、Z方向への並進移動は、X方向磁気浮上リニアモータ311、Y方向磁気浮上リニアモータ312、およびZ方向磁気浮上リニアモータ313のそれぞれを同じ方向に駆動することによって具現できる。
【0068】
θ方向への回転移動は、2つのX方向磁気浮上リニアモータ311と2つのY方向磁気浮上リニアモータ312の駆動方向を調整することによって具現できる。例えば、X方
向磁気浮上リニアモータ311aは+X方向に、X方向磁気浮上リニアモータ311bは-X方向に、Y方向磁気浮上リニアモータ312aは+Y方向に、Y方向磁気浮上リニアモータ312bは-Y方向に駆動することにより、微動ステージプレート部222をZ軸を中心に反時計まわりに回転移動させることができる。
同様に、θ方向、θ方向への移動は、3つのZ方向磁気浮上リニアモータ313のそれぞれの駆動方向を調整することによって具現できる。
図3Aに示した磁気浮上リニアモータ31の数や配置は、例示的なものであり、本発明はこれに限定されず、微動ステージプレート部222を所望の方向に移動させることができる限り、他の数や配置を有しても良い。
【0069】
本発明においては、機械的モータとボールねじ/リニアガイドを使うアライメントステージの代わりに、磁気浮上ステージ機構22を採用することによって、基板Wの位置調整の精度をさらに向上させることができる。
また、機械的ステージ機構とは違って、磁気浮上ステージ機構22は、パーティクルによる汚染や潤滑剤の蒸発による汚染の恐れが少なく、磁気浮上ステージ機構22を真空容器21内に設置することが可能となる。これにより、基板Wの保持手段(基板吸着手段24)とステージ機構との間の距離が小さくなるので、ステージ機構の駆動時の揺動や外乱が基板吸着手段24に及ぼす影響が増幅することを抑制することができる。
【0070】
図4Aは、Z方向磁気浮上リニアモータ313の構造を示す模式図であり、図4bは、X方向磁気浮上リニアモータ311またはY方向磁気浮上リニアモータ312の構造を示す模式図である。
【0071】
磁気浮上リニアモータ31は、ステージ基準プレート部221に設置される固定子314と、微動ステージプレート部222に設置される可動子315とを含む。なお、ステージ基準プレート部221および微動ステージプレート部222の一方に固定子314を設置し、他方に可動子315を設置すれば良い。
図4Aおよび図4Bに示すように、磁気浮上リニアモータ31の固定子314は、磁界発生手段、例えば、電流が流れるコイル3141を含み、可動子315は、磁性体、例えば、永久磁石3151を含む。
【0072】
磁気浮上リニアモータ31は、固定子314のコイル3141に電流を流すことで発生した磁界によって、可動子315の永久磁石3151に駆動力を加える。磁気浮上リニアモータ31は、固定子314に流れる電流の方向を調整することによって、可動子315である永久磁石3151に加えられる力の方向を調整することができる。
例えば、図4Aの(b)に示したように、固定子314のコイル3141に流れる電流の方向を、紙面上で反時計回りにすると、図4Aの(a)において、コイル3141の左側(-X側)にN極が誘導され、右側(+X側)にはS極が誘導されるので、可動子315は、下方(-Z)方向に力を受ける。逆に、コイル3141に流れる電流の方向を時計回りにすると、可動子315を上方(+Z)方向に移動させることができる。
【0073】
同様に、図4Bに示したX方向磁気浮上リニアモータ311、又はY方向磁気浮上リニアモータ312も、固定子314のコイル3141に流れる電流の方向を制御することによって、可動子315をそれぞれX方向、Y方向に移動させることができる。
【0074】
本発明の一実施形態による磁気浮上ユニット223の位置測定手段は、微動ステージプレート部222の位置を測定するための手段であって、レーザー干渉計32と、これと対向するように微動ステージプレート部222に設置された反射部324とを含む。反射部324は、例えば、平面鏡であり得る。
レーザー干渉計32は、測定ビームを微動ステージプレート部222に設置された反射
部324に照射し、その反射ビームを検出することで、反射部324の位置(微動ステージプレート部222の位置)を測定する。より具体的には、レーザー干渉計32は、測定ビームの反射光と参照ビームの反射光との干渉光に基づいて、微動ステージプレート部222の位置を測定することができる。
【0075】
本発明の一実施形態による磁気浮上ユニット223の位置測定手段は、微動ステージプレート部222のX方向における位置を測定するためのX方向位置測定部と、Y方向における位置を測定するためのY方向位置測定部と、Z方向における位置を測定するためのZ方向位置測定部とを含む。
【0076】
図3Aに示したように、本発明の一実施形態による位置測定手段のレーザー干渉計32は、微動ステージプレート部222のX軸方向の位置を検出するための二つのX方向レーザー干渉計321と、微動ステージプレート部222のY軸方向の位置を検出するための一つのY方向レーザー干渉計322と、微動ステージプレート部222のZ軸方向の位置を検出するための3つのZ方向レーザー干渉計323とを含む。
【0077】
微動ステージプレート部222には、これらのレーザー干渉計32からの測定ビームを反射させる反射部324が、レーザー干渉計32に対向するように設置される。例えば、反射部324は、X方向レーザー干渉計321に対向するように設置されたX方向反射部3241と、Y方向レーザー干渉計322に対向するように設置されたY方向反射部3242と、Z方向レーザー干渉計323に対向するように設置されたZ方向反射部3243とを含む。
【0078】
X方向位置測定部は、X方向レーザー干渉計321とX方向反射部3241とを含み、Y方向位置測定部は、Y方向レーザー干渉計322とY方向反射部3242とを含み、Z方向位置測定部は、Z方向レーザー干渉計323とZ方向反射部3243とを含む。
図3Aに示した実施例では、X方向反射部3241とZ方向反射部3243は、一つの部材の側面と上面に設置された平面鏡であるが、本発明はこれに限定されず、それぞれの反射部324が、これに対向するレーザー干渉計32からの測定ビームを反射してレーザー干渉計32に戻すことができる限り、他の構造及び配置であっても良い。
【0079】
このような位置測定手段の構成により、6つの自由度(degree of freedom)で、微動ステージプレート部222の位置を精密に測定することができる。つまり、X方向レーザー干渉計321、Y方向レーザー干渉計322、及びZ方向レーザー干渉計323によって、微動ステージプレート部222のX方向位置、Y方向位置、及びZ方向位置を測定することができる。また、X方向レーザー干渉計321を複数設置することによって、Z軸を中心とした回転(θ)方向の位置も測定することができる。また、Z方向レーザー干渉計323を複数設置することによって、X軸および/またはY軸を中心とした回転方向(θまたはθ)の位置(つまり、微動ステージプレート部222の傾斜角度)も測定することができる。
【0080】
ただし、本発明は、図3A及び図3Bに示したレーザー干渉計32と反射部324の数や配置に限定されず、微動ステージプレート部222の6つの自由度(X、Y、Z、θ、θ、θ)における位置を測定することができる限り、他の数や配置を有しても良い。例えば、X方向レーザー干渉計の設置数を2つから1つだけにするとともに、Y方向レーザー干渉計の設置数を1つから2つにしてもよい。
【0081】
本発明の一実施形態による成膜装置11の制御部は、レーザー干渉計32によって測定された微動ステージプレート部222(またはこれに設置された基板吸着手段24)の位置情報に基づいて、磁気浮上リニアモータ31を制御する。例えば、成膜装置11の制御
部は、微動ステージプレート部222または基板吸着手段24を、レーザー干渉計32で測定された微動ステージプレート部222または基板吸着手段24の位置と、アライメント用カメラユニット27で測定された基板WとマスクM間の相対的位置ずれ量とによって決められる位置決め目標位置に移動させる。これにより、微動ステージプレート部222または基板吸着手段24の位置をナノメートル単位で高精度に制御することができる。
【0082】
本実施例では、微動ステージプレート部222の位置を測定するための手段であって、レーザー干渉計を用いる構成を説明したが、本発明はこれに限定されず、微動ステージプレート部222の位置が測定できる限り、他の位置測定手段を用いても良い。
【0083】
自重補償手段33は、微動ステージプレート部222の重量を補償するための手段である。例えば、本発明の一実施形態による自重補償手段33は、図3D及び図5に示したように、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331と、微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332との間の反発力または吸引力を利用して、微動ステージプレート部222にかかる重力に相応する大きさの浮上力を、重力と反対方向に、発生させる。
第1の磁石部331と第2の磁石部332は、電磁石または永久磁石で構成することができる。図3Dおよび図5に示された第1の磁石部331と第2の磁石部332において、右下がりの線でハッチングされた部分と、右上がり線でハッチングされた部分は、それぞれ別の磁極(S極またはN極)を示している。
【0084】
例えば、図3Dに示したように、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331と微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332を、逆極性の磁極が対向するように配置することによって、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331が微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332を上方に吸引し、微動ステージプレート部222にかかる重力を相殺することができる。
【0085】
または、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331と微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332との間の反発力によって、微動ステージプレート部222の重力を相殺することもできる。
例えば、図5に示したように、第1の磁石部331と第2の磁石部332を同じ極性の磁極が対向するように配置するとともに、微動ステージプレート部222と第2の磁石部332との間にZ方向に延びるスペーサー333を介在させ、第2の磁石部332の下端(端部)が第1の磁石部331の下端(端部)よりも高くなるように設置してもよい。つまり、スペーサー333のZ方向の長さを、微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332の下端がステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331の下端よりも高くなるように(つまり、微動ステージプレート部222から、より遠くなるように)する。
図5のような構成によって、微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332は、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331により上方に反発力を受け、微動ステージプレート部222にかかる重力を相殺することができる。
【0086】
微動ステージプレート部222をより安定的に支持することができるように、図3Aに示したように、自重補償手段33を、XY平面内で少なくとも3つの位置に設置することが好ましい。例えば、微動ステージプレート部222の重心の周りに対称になるように設置することが好ましい。
【0087】
このように、本発明の一実施形態による成膜装置11においては、自重補償手段33を
採用することによって、磁気浮上リニアモータ31の負荷を低減させ、磁気浮上リニアモータ31から発生する熱を低減することができる。これにより基板Wに成膜された有機材料が熱変性することを抑制することができる。
【0088】
つまり、自重補償手段33を使わず、Z方向磁気浮上リニアモータ313のみで微動ステージプレート部222の重量を支持しようとすると、Z方向磁気浮上リニアモータ313に過度な負荷がかかり、相当な熱が発生し、これが基板W上に成膜された有機材料の変性をもたらす恐れがある。本実施例では、微動ステージプレート部222にかかる重力は自重補償手段33によって相殺されるので、Z方向磁気浮上リニアモータ313は、自重補償手段33によって浮上された微動ステージプレート部222にZ方向の微動のための駆動力のみを提供すれば良く、よって、負荷が低減される。
【0089】
本発明の一実施例においては、自重補償手段33を磁石で具現したが、本発明はこれに限定されず、微動ステージプレート部222の重力を相殺して浮上させることができる限り、他の構成を有しても良い。
【0090】
本発明の一実施形態による磁気浮上ユニット223の原点位置決め手段34は、微動ステージプレート部222の原点位置を決める手段であって、三角錐状の凹部341と半球状の凸部342とを含むキネマティックカップリング(kinematic coupling)で構成することができる。
例えば、図3Cに示したように、ステージ基準プレート部221側に三角錐状の凹部341を設置し、微動ステージプレート部222側に半球状の凸部342を設置する。半球状の凸部342が三角錐状の凹部341に挿入されると、半球状の凸部342が3つの支点で三角錐状の凹部341の内面に接触し、微動ステージプレート部222の位置が決められる。
【0091】
このようなキネマティックカップリングタイプの原点位置決め手段34を、図3Aに示したように、微動ステージプレート部222の中心の周りに、X方向とY方向を含む平面上で、3つを等間隔(例えば、120°間隔)に設置することで、微動ステージプレート部222の中心の位置を一定に決めることができる。つまり、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に接近させて3つの原点位置決め手段の凸部342が凹部341内に着座したときの、微動ステージプレート部222の位置を、レーザー干渉計32により測定し、これを原点位置とする。
本発明の一実施形態による成膜装置11によると、3つのキネマティックカップリングを原点位置決め手段34として採用することで、微動ステージプレート部222の原点位置を一定に決めることができ、微動ステージプレート222の位置制御をより精密に行うことができる。
【0092】
このように、本発明の一実施形態による成膜装置11によれば、機械的な駆動機構を使わずに、磁気浮上駆動機構(磁気浮上リニアモータ)を使うことによって、ステージ及びその駆動機構を成膜装置11の真空容器21内に配置することができ、外乱による振動の影響を効果的に低減することができる。また、機械的駆動による揺動を低減することができ、その結果、基板の位置調整の精度を向上させることができる。さらに、レーザー干渉計32を含む位置測定手段、自重補償手段33、及びキネマティックカップリングからなる原点位置決め手段34を採用することによって、基板の位置調整の精度をさらに向上させることができる。
【0093】
<アライメント方法>
以下、図7のフローチャートを参照しつつ、本発明の磁気浮上ステージ機構22を用いて、基板WとマスクMの相対的位置の調整を行うアライメント方法を説明する。
【0094】
まず、マスクMと基板Wが真空容器21内に搬入され、各々マスク支持ユニット23と基板支持ユニットによって支持される(ステップS101)。
【0095】
基板支持ユニットによって支持された基板Wを磁気浮上ステージ機構22の微動ステージプレート部222に設置された基板吸着手段24に向かって移動させる。
基板Wが基板吸着手段24に十分に近づくと、基板吸着手段24に基板吸着電圧を印加し、静電引力により基板Wを基板吸着手段24に吸着させる。基板Wを基板吸着手段24に吸着させる際に、基板吸着手段24の吸着面全体に基板Wの全面を同時に吸着させてもよく、基板吸着手段24の複数の領域のうち一領域から他の領域に向かって順次に基板Wを吸着させてもよい(ステップS102)。
【0096】
次いで、成膜装置11の制御部は、マスク支持ユニット昇降機構を駆動して、基板吸着手段24とマスク支持ユニット23を相対的に接近させる。この際、制御部は、基板吸着手段24に吸着された基板Wとマスク支持ユニット23によって支持されたマスクMとの間の距離が、予め設定されたラフアライメント計測距離になるまで、基板吸着手段24とマスク支持ユニット23を相対的に接近(例えば、マスク支持ユニット23を上昇)させる。
基板WとマスクMとの間の距離がラフアライメント計測距離になると、ラフアライメント用カメラにより、基板W及びマスクMのアライメントマークを撮像して、XYθ方向における基板WとマスクMの相対位置を測定し、これに基づき、これらの相対的位置ずれ量を算出する(ステップS103)。
【0097】
制御部は、レーザー干渉計32によって測定された微動ステージプレート部222(または基板吸着手段24)の位置と、ラフアライメント用カメラによって算出された位置ずれ量とに基づいて、微動ステージプレート部222(または基板吸着手段24)の移動目標位置の座標を算出する。
移動目標位置の座標に基づいて、微動ステージプレート部222の位置をレーザー干渉計32で測定しながら、磁気浮上リニアモータ31によってXYθ方向に微動ステージプレート部222(または基板吸着手段24)を移動目標位置まで駆動することによって、基板WとマスクMの相対位置を調整する。ラフアライメントでは、微動ステージプレート部222を磁気浮上リニアモータ31によって移動させると説明したが、基板WとマスクMの位置ずれ量の大きさに応じてマスク支持ユニット23をXYθ方向に移動させ、ラフアライメントを行ってもよい(ステップS104)。
【0098】
ラフアライメントが完了すると、マスク支持ユニット昇降機構によってマスク支持ユニット23をさらに上昇させ、マスクMが基板Wに対してファインアライメント計測位置まで来るようにする。
マスクMが基板Wに対してファインアライメント計測位置に来ると、ファインアライメント用カメラで基板W及びマスクMのアライメントマークを撮像し、XYθ方向における基板WとマスクMの相対的位置ずれ量を測定する(ステップS105)。
【0099】
ファインアライメント計測位置における基板WとマスクMとの間の相対的位置ずれ量が所定の閾値より大きければ、マスクMを再度下降させ、基板WとマスクMを離間させた後、レーザー干渉計32によって測定された微動ステージプレート部222の位置と、基板WとマスクMの相対的位置ずれ量に基づいて、微動ステージプレート部222の移動目標位置を算出する。
算出された移動目標位置に基づいて、微動ステージプレート部222の位置をレーザー干渉計32で測定しながら、磁気浮上リニアモータ31によってXYθ方向に微動ステージプレート部222を移動目標位置まで駆動することによって、基板WとマスクMの相
対位置を調整する(ステップS106)。
【0100】
このような過程を、基板WとマスクMの相対的位置ずれ量が所定の閾値より小さくなるまで繰り返す。
基板WとマスクMの相対的位置ずれ量が所定の閾値より小さくなると、基板吸着手段24に吸着された基板Wの被成膜面がマスクMの上面と接触する蒸着位置になるように、マスク支持ユニット23を上昇させる。
基板WとマスクMが接触した蒸着位置に達すると、磁力印加手段261を下降させ、基板W越しにマスクMを引き寄せることで、基板WとマスクMを密着させる(ステップS107)。
【0101】
この過程で、基板WとマスクMのXYθ方向における位置ずれが生じたかを確認するために、ファインアライメント用カメラを用いて、基板WとマスクMの相対的位置の計測を行い、計測された相対的位置のずれ量が所定の閾値の以上である場合、基板WとマスクMを所定の距離まで再び離間(例えば、マスク支持ユニット23を下降)させた後、基板WとマスクMとの間の相対位置を調整し、同じ過程を繰り返す(ステップS108)。
【0102】
基板WとマスクMが蒸着位置に位置する状態で、基板WマスクMとの間の相対的位置ずれ量が所定の閾値より小さくなると、アライメント工程を完了し、成膜工程を開始する(ステップS109)。
【0103】
<成膜プロセス>
以下、本実施形態によるアライメント方法を採用した成膜方法について説明する。
前述の本実施形態によるアライメント方法に従ってアライメントを行い、基板WとマスクMとの間の相対位置のずれ量が所定の閾値より小さくなると、制御部は、成膜源25のシャッタを開け、成膜材料をマスクを介して基板Sに成膜する。
【0104】
膜が所望の厚さになるよう蒸着した後、磁力印加手段26を上昇させてマスクMを分離してマスク支持ユニット23に支持させたのち、マスク支持ユニット23を下降させる。
次いで、搬送ロボット14のハンドが成膜装置11の真空容器21内に進入し、基板吸着手段24の電極部にゼロ(0)または逆極性の基板分離電圧が印加し、基板Wを基板吸着手段24から分離する。分離された基板を搬送ロボット14によって真空容器21から搬出する。
【0105】
なお、上述の説明では、成膜装置11は、基板Wの被成膜面が鉛直方向下方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆる上向蒸着方式(デポアップ)の構成としたが、本発明はこれに限定はされず、基板Wが真空容器21の側面側に垂直に立てられた状態で配置され、基板Wの被成膜面が重力方向と平行な状態で成膜が行われる構成であってもよい。
【0106】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0107】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図6(a)は有機EL表示装置60の全体図、図6(b)は1画素の断面構造を表している。
【0108】
図6(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。
本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0109】
図6(b)は、図6(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、陽極64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、陰極68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、陽極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と陰極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、陽極64と陰極68とが異物によってショートするのを防ぐために、陽極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0110】
図6(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、陽極64と正孔輸送層65との間には陽極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、陰極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0111】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および陽極64が形成された基板63を準備する。
【0112】
陽極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、陽極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0113】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の陽極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0114】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0115】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて陰極68を成膜する。金属性蒸着材料成膜装置は、蒸発加熱方式の成膜装置であってもよく、スパッタリング方式の成膜装置であっても良い。
【0116】
本発明によると、機械的なステージ機構の代わりに磁気浮上ステージ機構を用いることで、基板とマスクとの間のアライメントの精度をさらに向上させることができる。
その後、プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0117】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0118】
前記実施例は本発明の一例を現わしたものであり、本発明は前記実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形しても良い。
【符号の説明】
【0119】
11:成膜装置
21:真空容器
22:磁気浮上ステージ機構
23:マスク支持ユニット
24:基板吸着手段
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7