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特許7499583動画配信装置、動画送出装置、動画配信システム、動画配信方法及び動画配信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】動画配信装置、動画送出装置、動画配信システム、動画配信方法及び動画配信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/2662 20110101AFI20240607BHJP
   H04N 21/2343 20110101ALI20240607BHJP
   H04N 21/24 20110101ALI20240607BHJP
【FI】
H04N21/2662
H04N21/2343
H04N21/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020040168
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141549
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】大西 正芳
(72)【発明者】
【氏名】西村 敏
【審査官】醍醐 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-335505(JP,A)
【文献】特開2003-198655(JP,A)
【文献】特開2009-284283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0081244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリーム、及びPフレームを含んで構成された第2映像ストリームの組をストリームグループとして、互いに映像品質の異なるストリームグループを複数受信するデータ受信部と、
動画受信端末からの再生要求に応じて、前記第1映像ストリームのIフレームに続いて、前記第2映像ストリームのフレームを用いて、配信ストリームを生成する配信ストリーム生成部と、
前記配信ストリームを前記動画受信端末へ送出するデータ送出部と、を備え
前記配信ストリーム生成部は、映像品質の切り替え要求に応じて、前記複数のストリームグループのいずれかを用いて前記配信ストリームを再構成する動画配信装置。
【請求項2】
前記第2映像ストリームには、所定の間隔でIフレームが挿入される請求項1に記載の動画配信装置。
【請求項3】
前記動画受信端末に対するスループットを計測するスループット計測部を備え、
前記配信ストリーム生成部は、計測された前記スループットに基づいて、前記複数のストリームグループのいずれかを選定する請求項1又は請求項2に記載の動画配信装置。
【請求項4】
前記配信ストリーム生成部は、前記複数のストリームグループのそれぞれを用いた場合のビットレートと、計測された前記スループットとを比較し、当該スループットを超えない範囲で最もビットレートが高いストリームグループを選定する請求項に記載の動画配信装置。
【請求項5】
映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリームを生成する第1映像ストリームエンコーダと、
前記映像データに基づいて、Pフレームを含んで構成された第2映像ストリームを前記第1映像ストリームと同期させて生成する第2映像ストリームエンコーダと、の組からなるエンコーダグループを複数備え、
前記複数のエンコーダグループは、一つのエンコーダグループが生成する前記第1映像ストリーム及び前記第2映像ストリームの組をストリームグループとして、互いに映像品質の異なるストリームグループを生成し、
前記複数のエンコーダグループにより生成されたストリームグループを、動画受信端末からの再生要求に応じて、前記第1映像ストリームのIフレームに続いて、前記第2映像ストリームのフレームを用いて配信ストリームを生成するための動画配信装置へ送信するデータ送出部をさらに備える動画送出装置。
【請求項6】
映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリームを生成する第1映像ストリームエンコーダ、及び前記映像データに基づいて、Pフレームを含んで構成された第2映像ストリームを前記第1映像ストリームと同期させて生成する第2映像ストリームエンコーダの組からなる複数のエンコーダグループと、
動画受信端末からの再生要求に応じて、前記第1映像ストリームのIフレームに続いて、前記第2映像ストリームのフレームを用いて、配信ストリームを生成する配信ストリーム生成部と、
前記配信ストリームを前記動画受信端末へ送出するデータ送出部と、を備え
前記複数のエンコーダグループは、一つのエンコーダグループが生成する前記第1映像ストリーム及び前記第2映像ストリームの組をストリームグループとして、互いに映像品質の異なるストリームグループを生成し、
前記配信ストリーム生成部は、映像品質の切り替え要求に応じて、前記複数のエンコーダグループにより生成されたストリームグループのいずれかを用いて前記配信ストリームを再構成する動画配信システム。
【請求項7】
同一の映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリーム、及びPフレームを含んで構成された第2映像ストリームの組をストリームグループとして、互いに映像品質の異なるストリームグループを複数受信するデータ受信ステップと、
動画受信端末からの再生要求に応じて、前記第1映像ストリームのIフレームに続いて、前記第2映像ストリームのフレームを用いて、配信ストリームを生成する配信ストリーム生成ステップと、
前記配信ストリームを前記動画受信端末へ送出するデータ送出ステップと、をコンピュータが実行する動画配信方法であって、
前記配信ストリーム生成ステップは、映像品質の切り替え要求に応じて、前記複数のストリームグループのいずれかを用いて前記配信ストリームを再構成する動画配信方法
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載の動画配信装置としてコンピュータを機能させるための動画配信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画配信を行うための装置、システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動画配信方式の一つとして、映像品質の異なる複数の動画ストリームを、スループットに合わせて適応的に切り替えて配信するアダプティブストリーミング技術が用いられている。例えば、MPEG-DASH(非特許文献1参照)等の規格では、CDN(Content Delivery Network)を構成することによる大規模配信が可能となっている。
【0003】
MPEG-DASHに採用されている動画フォーマットは、MPEG-2 TS、H.264、H.265等のいずれの仕様においても、GOP(Group of Picture)構造を有している。GOPとは、単体で復号可能なIフレームと、過去のフレームの情報を利用して符号化及び復号を行うPフレームとを含んで構成されるフレームのグループである。Pフレームが直前のIフレーム又はPフレームとの差分を表現しているためデータ量が少なく、動画ストリームの全てをIフレームで構成するよりも、Pフレームを含めることで符号化効率が良くなる。
【0004】
通常、図10に示すように、動画ストリームの中でGOP間隔(Iフレーム間の間隔)は固定であり、切り替え可能な動画ストリーム間で同期して符号化される。動画の再生は必ずIフレームから開始され、複数の動画ストリームの切り替えは、Iフレームでのみ可能である。なお、図11のように、切り替え先がIフレームであれば、切り替え元がPフレームであっても切り替え可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】MPEG-DASH,[online],[令和2年2月26日検索],インターネット<https://mpeg.chiariglione.org/standards/mpeg-dash/implementation-guidelines/text-isoiec-dtr-23009-3-2nd-edition-dash>
【文献】AVC-Intra,[online],[令和2年2月26日検索],インターネット<ftp://ftp.panasonic.com/pub/Panasonic/Drivers/PBTS/papers/WP_AVC-Intra.pdf>
【文献】ダイナミックGOP,[online],[令和2年2月26日検索],インターネット<https://www.axis.com/ja-jp/learning/web-articles/reducing-the-bit-rate-with-axis-zipstream/dynamic-gop>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の方式では、動画の再生開始点がIフレームに限定されGOP間隔(例えば、1~10秒程度)に依存するため、フレーム単位で即時に動画を受信端末に配信するリアルタイム配信を行いたい場合には再生開始要求に対する応答が遅れていた。また、動画の切り替え点もIフレームに限定されGOP間隔に依存するため、映像品質の選択から切り替えまでに時間を要していた。
【0007】
そこで、例えば、非特許文献2では、動画ストリームを全てIフレームとする手法が提案されている。しかしながら、この手法では、映像品質を維持するために高い伝送レートが必要となっていた。
また、非特許文献3では、GOP間隔を動的に調整する手法が提案されている。しかしながら、この手法では、受信端末毎にエンコーダが必要となるためコストが高くなっていた。
【0008】
本発明は、複数の受信端末に対して、低遅延なリアルタイム配信が可能な動画配信装置、動画送出装置、動画配信システム、動画配信方法及び動画配信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る動画配信装置は、同一の映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリーム、及びPフレームを含んで構成された第2映像ストリームを受信するデータ受信部と、動画受信端末からの再生要求に応じて、前記第1映像ストリームのIフレームに続いて、前記第2映像ストリームのフレームを用いて、配信ストリームを生成する配信ストリーム生成部と、前記配信ストリームを前記動画受信端末へ送出するデータ送出部と、を備える。
【0010】
前記第2映像ストリームには、所定の間隔でIフレームが挿入されてもよい。
【0011】
前記データ受信部は、前記第1映像ストリーム及び前記第2映像ストリームの組をストリームグループとし、互いに映像品質の異なるストリームグループを複数受信し、前記配信ストリーム生成部は、映像品質の切り替え要求に応じて、前記複数のストリームグループのいずれかを用いて前記配信ストリームを再構成してもよい。
【0012】
前記動画配信装置は、前記動画受信端末に対するスループットを計測するスループット計測部を備え、前記配信ストリーム生成部は、計測された前記スループットに基づいて、前記複数のストリームグループのいずれかを選定してもよい。
【0013】
前記配信ストリーム生成部は、前記複数のストリームグループのそれぞれを用いた場合のビットレートと、計測された前記スループットとを比較し、当該スループットを超えない範囲で最もビットレートが高いストリームグループを選定してもよい。
【0014】
本発明に係る動画送出装置は、映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリームを生成する第1映像ストリームエンコーダと、前記映像データに基づいて、Pフレームを含んで構成された第2映像ストリームを前記第1映像ストリームと同期させて生成する第2映像ストリームエンコーダと、前記第1映像ストリーム及び前記第2映像ストリームを、動画受信端末からの再生要求に応じて、前記第1映像ストリームのIフレームに続いて、前記第2映像ストリームのフレームを用いて配信ストリームを生成するための動画配信装置へ送信するデータ送出部と、を備える。
【0015】
本発明に係る動画配信システムは、映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリームを生成する第1映像ストリームエンコーダと、前記映像データに基づいて、Pフレームを含んで構成された第2映像ストリームを前記第1映像ストリームと同期させて生成する第2映像ストリームエンコーダと、動画受信端末からの再生要求に応じて、前記第1映像ストリームのIフレームに続いて、前記第2映像ストリームのフレームを用いて、配信ストリームを生成する配信ストリーム生成部と、前記配信ストリームを前記動画受信端末へ送出するデータ送出部と、を備える。
【0016】
本発明に係る動画配信方法は、同一の映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリーム、及びPフレームを含んで構成された第2映像ストリームを受信するデータ受信ステップと、動画受信端末からの再生要求に応じて、前記第1映像ストリームのIフレームに続いて、前記第2映像ストリームのフレームを用いて、配信ストリームを生成する配信ストリーム生成ステップと、前記配信ストリームを前記動画受信端末へ送出するデータ送出ステップと、をコンピュータが実行する。
【0017】
本発明に係る動画配信プログラムは、前記動画配信装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の受信端末に対して、低遅延なリアルタイム配信が容易に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態における動画配信システムの構成を示す図である。
図2】実施形態における動画送出装置の機能構成を示す図である。
図3】実施形態における動画配信装置の機能構成を示す図である。
図4】実施形態における動画受信端末の機能構成を示す図である。
図5】実施形態における動画配信の流れを例示する第1の図である。
図6】実施形態における動画配信の流れを例示する第2の図である。
図7】実施形態におけるGOP構成配信処理を示すフローチャートである。
図8】実施形態における配信ストリーム切り替え処理を示すフローチャートである。
図9】実施形態における配信ストリームの選定アルゴリズムを説明する図である。
図10】従来の動画ストリームの切り替え方法を例示する第1の図である。
図11】従来の動画ストリームの切り替え方法を例示する第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態における動画配信システム1の構成を示す図である。
動画配信システム1は、動画送出装置10と、動画配信装置20と、動画受信端末30とを備える。
【0021】
動画送出装置10は、動画データに基づいて、音声ストリームと共に、2種類の映像ストリームを同期して生成し、動画配信装置20に提供する。
動画配信装置20は、動画受信端末30毎に、要求に応じてGOPを再構成して配信ストリームを生成し、動画受信端末30へ配信する。
【0022】
図2は、本実施形態における動画送出装置10の機能構成を示す図である。
動画送出装置10は、制御部(例えばCPU)及び記憶部の他、各種の入出力インタフェースを備えた情報処理装置(コンピュータ)であり、記憶部に格納されたソフトウェアを制御部が実行することにより、次の各機能部が実現される。
【0023】
動画送出装置10は、映像/音声分離部11と、Iストリームエンコーダ121(第1映像ストリームエンコーダ)及びPストリームエンコーダ122(第2映像ストリームエンコーダ)からなるエンコーダグループ12と、音声エンコーダ13と、データ送出部14とを備える。
ここで、動画送出装置10は、アダプティブストリーミングにより映像品質を適応的に切り替えるために、エンコーダグループ12を複数設けてもよい。
【0024】
映像/音声分離部11は、入力された動画データを、映像データと音声データとに分離し、それぞれをエンコーダグループ12及び音声エンコーダ13に提供する。
【0025】
Iストリームエンコーダ121は、入力された映像データに基づいて、Iフレームのみで構成されたAll Iストリーム(第1映像ストリーム)を生成する。
【0026】
Pストリームエンコーダ122は、Iストリームエンコーダ121と同一の映像データに基づいて、Pフレームを含んで構成されたAll Pストリーム(第2映像ストリーム)を、第1映像ストリームと同期させて生成する。
ここで、第2映像ストリームには、ドリフト誤差の蓄積を抑制するために、所定の間隔でIフレームが挿入されてもよい。なお、本実施形態では、説明を簡略化するため、第2映像ストリームは、最初のフレームを除きPフレームのみで構成されたAll Pフレームであるものとして説明する。
【0027】
Iストリームエンコーダ121とPストリームエンコーダ122とは、エンコーダグループ12を構成する。エンコーダグループ12は、Iストリームエンコーダ121により生成されたAll Iストリーム、及びPストリームエンコーダにより生成されたAll Pストリームの組を、一つのストリームグループとしてデータ送出部14に提供する。
【0028】
音声エンコーダ13は、映像/音声分離部11から入力された音声データから音声ストリームを生成する。
ここで、全てのストリームグループと音声ストリームとは同期し、タイムスタンプが付与される。
なお、タイムスタンプ等のデータ構造を含むエンコードの仕様は、既存の規格(例えば、MPEG-2、H.264、H.265等)が適用されてよい。
【0029】
データ送出部14は、全てのエンコーダグループ12及び音声エンコーダ13から、ストリームグループ及び音声ストリームを受け取り、動画配信装置20へ送出する。
【0030】
図3は、本実施形態における動画配信装置20の機能構成を示す図である。
動画配信装置20は、制御部(例えばCPU)及び記憶部の他、各種の入出力インタフェースを備えた情報処理装置(コンピュータ)であり、記憶部に格納されたソフトウェアを制御部が実行することにより、次の各機能部が実現される。
【0031】
動画配信装置20は、データ受信部21と、配信ストリーム生成部22と、スループット計測部23と、データ送出部24とを備える。
ここで、動画配信装置20は、接続された動画受信端末30の数に応じて、配信ストリーム生成部22及びスループット計測部23の組を、動画受信端末30それぞれに対応して複数設ける。
【0032】
データ受信部21は、動画送出装置10から、All Iストリーム及びAll Pストリームからなる互いに映像品質の異なる全てのストリームグループと、音声ストリームとを受信する。
【0033】
配信ストリーム生成部22は、動画受信端末30からの動画再生要求に応じて、後述のGOP構成配信処理により、All Iフレームから最新タイムスタンプのIフレームに続いて、All Pフレームの各フレームを用いて、配信ストリームを生成する。
また、配信ストリーム生成部22は、映像品質の切り替え要求に応じて、複数のストリームグループのいずれかを用いて配信ストリームを再構成する。
【0034】
スループット計測部23は、動画受信端末30と連携し、動画受信端末30それぞれに対するスループットを計測する。なお、スループットの計測手法は、例えばiperf等、既存のものが適用されてよい。
【0035】
そして、配信ストリーム生成部22は、後述の配信ストリーム切り替え処理により、計測されたスループットに基づいて、動画受信端末30毎に、いずれかの映像品質、すなわち複数のストリームグループのいずれかを選定し、配信ストリームを再構成する。
例えば、配信ストリーム生成部22は、複数のストリームグループのそれぞれを用いた場合に想定されるビットレートと、スループット計測部23により計測されたスループットとを比較し、計測されたスループットを超えない範囲で最もビットレートが高いストリームグループを選定する。
【0036】
データ送出部24は、配信ストリーム生成部22により生成された配信ストリームを動画受信端末30へ送出する。
【0037】
図4は、本実施形態における動画受信端末30の機能構成を示す図である。
動画受信端末30は、制御部(例えばCPU)及び記憶部の他、各種の入出力インタフェースを備えた情報処理装置(コンピュータ)であり、記憶部に格納されたソフトウェアを制御部が実行することにより、次の各機能部が実現される。
【0038】
動画受信端末30は、データ受信部31と、デコード部32と、動画提示部33とを備える。
【0039】
データ受信部31は、動画配信装置20から配信ストリーム及び音声ストリームを受信する。
デコード部32は、受信した配信ストリーム及び音声ストリームを、動画送出装置10で利用されたエンコードの仕様に合わせてデコードし、動画提示部33に提供する。
動画提示部33は、デコードされた配信ストリーム及び音声ストリームをディスプレイ及びスピーカ等に出力し、ユーザに提示する。
【0040】
図5は、本実施形態における動画配信の流れを例示する第1の図である。
この例では、動画配信装置20は、動画送出装置10から、All Iストリーム及びAll Pストリームからなるストリームグループを受信し、3台の動画受信端末30A~30Cに対して、それぞれ異なる時刻から動画配信を開始している。
なお、各映像ストリームの数字は、タイムスタンプに相当し、同一の数字が付されたフレームは、同期された同一時刻のフレームを表す。
【0041】
まず、動画配信装置20は、動画受信端末30Aからの再生開始要求に応じて、All Iストリームから最新タイムスタンプ「1」のIフレームを配信し、以降、All Pストリームから継続してPフレームを配信する(配信ストリームA)。
【0042】
次に、動画配信装置20は、動画受信端末30Bからの再生開始要求に応じて、最新タイムスタンプ「3」のIフレームを配信し、以降、継続してPフレームを配信する(配信ストリームB)。
同様に、動画配信装置20は、動画受信端末30Cからの再生開始要求に応じて、最新タイムスタンプ「6」のIフレームを配信し、以降、継続してPフレームを配信する(配信ストリームC)。
【0043】
このように、動画配信装置20は、動画受信端末30からの再生開始要求に対して、タイミングによらず即時にGOPを構成して配信ストリームを送出する。
【0044】
図6は、本実施形態における動画配信の流れを例示する第2の図である。
この例では、動画配信装置20は、動画送出装置10から、映像品質が相対的に高いストリームグループ(Hi)と、映像品質が相対的に低いストリームグループ(Low)とを受信し、3台の動画受信端末30A~30Cに対して、映像品質を適応的に切り替えつつ動画配信を行っている。
【0045】
まず、動画配信装置20は、動画受信端末30Aからの再生開始要求に応じて、要求時点での最新タイムスタンプ「1」の高品質なIフレームをAll IストリームHiから配信し、以降、All PストリームHiから継続して高品質なPフレームを配信する。
次に、映像品質の切り替え要求に応じて、要求時点での最新タイムスタンプ「4」の低品質なIフレームをAll IストリームLowから配信し、以降、All PストリームLowから継続して低品質なPフレームを配信する。
さらに、映像品質の切り替え要求に応じて、要求時点での最新タイムスタンプ「7」の高品質なIフレームをAll IストリームHiから配信し、以降、All PストリームHiから継続して高品質なPフレームを配信する。
【0046】
同様に、動画配信装置20は、動画受信端末30Bからの再生開始要求に応じて、最新タイムスタンプ「3」の高品質なIフレームに続いて高品質なPフレームを、次に、映像品質の切り替え要求に応じて、最新タイムスタンプ「6」の低品質なIフレームに続いて低品質なPフレームを配信する。
【0047】
また、動画配信装置20は、動画受信端末30Cからの再生開始要求に応じて、最新タイムスタンプ「6」の高品質なIフレームに続いて高品質なPフレームを、次に、映像品質の切り替え要求に応じて、最新タイムスタンプ「9」の低品質なIフレームを配信する。
【0048】
このように、動画配信装置20は、映像品質の切り替え要求に対して、タイミングによらず即時にGOPを再構成して配信ストリームを送出する。
【0049】
図7は、本実施形態におけるGOP構成配信処理を示すフローチャートである。
この処理は、動画配信装置20において、配信開始要求又は映像品質の切り替え要求に応じて実行される。
【0050】
ステップS1において、配信ストリーム生成部22は、動画受信端末30から配信開始要求を、又は計測されたスループットに基づく映像品質の切り替え要求を受け付ける。
【0051】
ステップS2において、配信ストリーム生成部22は、All Iストリームから最新タイムスタンプのIフレームを抽出し、データ送出部24を介して動画受信端末30へ配信する。
【0052】
ステップS3において、配信ストリーム生成部22は、動画配信を終了するか否かを判定する。例えば、配信ストリームが終了した場合、又は配信終了要求を受け付けた場合に動画配信を終了すると判定される。この判定がYESの場合、処理は終了し、判定がNOの場合、処理はステップS4に移る。
【0053】
ステップS4において、配信ストリーム生成部22は、データ受信部21を介して、動画送出装置10から逐次、Iフレーム及びPフレームを受信する。
【0054】
ステップS5において、配信ストリーム生成部22は、受信した最新のPフレームを、データ送出部24を介して動画受信端末30へ配信する。
その後、処理はステップS3に戻る。
【0055】
図8は、本実施形態における配信ストリーム切り替え処理を示すフローチャートである。
この処理は、動画配信装置20において、映像品質の切り替え機能(アダプティブストリーミング)を用いる場合に実行される。
【0056】
ステップS11において、配信ストリーム生成部22は、配信ストリームの切り替え機能を有効にするか否かを判定する。例えば、有効/無効の設定指示が動画受信端末30から、又は直接に動画配信装置20へ入力されてもよい。この判定がYESの場合、処理はステップS12に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
【0057】
ステップS12において、スループット計測部23は、動画受信端末30毎にスループットを計測し、配信ストリーム生成部22に通知する。
【0058】
ステップS13において、配信ストリーム生成部22は、計測されたスループットに基づいて、いずれのストリームグループを用いた配信ストリームを配信するのかを選定する。
【0059】
ステップS14において、配信ストリーム生成部22は、ステップS13の選定結果が現在と同じか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS11に戻り、判定がNOの場合、処理はステップS15に移る。
【0060】
ステップS15において、配信ストリーム生成部22は、選定した配信ストリームへの切り替え要求により、GOP構成配信処理を実行する。その後、処理はステップS11に戻る。
【0061】
図9は、本実施形態における配信ストリームの選定アルゴリズムを説明する図である。
配信ストリーム生成部22は、選択肢である複数のストリームグループそれぞれによりGOPを再構成したと想定した場合に、この再構成の直後、すなわちIフレームを挿入してから一定期間における配信ストリームの想定ビットレートを算出する。
【0062】
例えば、想定ビットレートbは、次式で算出される。
=(b+b×(f-1))/f
ここで、bはAll Iストリームのターゲットビットレート[bps]、bはAll Pストリームのターゲットビットレート[bps]、fはフレームレート[fps]であり、bはIフレームを含む1秒間の平均ビットレートとなる。
【0063】
全てのストリームグループについてbを算出すると、配信ストリーム生成部22は、各bと計測されたスループットとを比較し、計測スループットを超えない範囲で、bが最も大きいストリームグループを選定する。
例えば、想定ビットレートがA>B>Cと算出され、A>計測スループット>Bの場合、想定ビットレートBに対応する配信ストリームが選定される。
【0064】
本実施形態によれば、動画配信システム1は、同一の映像データに基づいて、Iフレームのみで構成された第1映像ストリーム、及びPフレームを含んで構成された第2映像ストリームを生成し、動画受信端末30からの再生要求に応じて、第1映像ストリームのIフレームに続いて、第2映像ストリームのフレームを配信する。
これにより、動画配信システム1は、要求があった時点で即時にIフレームから始まるGOPを再構成できる。したがって、動画配信システム1は、伝送レートを高めることなく、また、動画受信端末30毎にエンコーダを設けることなく、複数の受信端末からの再生開始要求に対して即時に再生可能な動画配信を行えるので、低遅延なリアルタイム配信が容易に実現される。
【0065】
また、第2映像ストリームには、所定の間隔でIフレームが挿入されてもよく、これにより、動画配信システム1は、ドリフト誤差の蓄積による画質の劣化を抑制できる。このとき、通常のGOP間隔(例えば、1秒)に比べて長い間隔(例えば、10秒)に設定でき、伝送レートを抑えられる。
【0066】
動画配信システム1は、第1映像ストリーム及び第2映像ストリームの組を複数、互いに映像品質の異なる複数のストリームグループとして生成し、映像品質の切り替え要求に応じて、複数のストリームグループのいずれかを用いて配信ストリームを再構成する。
これにより、動画配信システム1は、映像品質の切り替え要求があった時点で即時に、該当のストリームグループを用いてIフレームから始まるGOPを再構成できる。したがって、動画配信システム1は、要求に応じて映像品質の切り替えを即時に行える。
【0067】
また、動画配信システム1は、動画受信端末30に対するスループットを計測することで、計測されたスループットに基づいて、複数のストリームグループのいずれかを適切に選定できる。
これにより、スループットに基づく応答性の向上したアダプティブストリーミングを実現できる。
【0068】
このとき、動画配信システム1は、例えば、複数のストリームグループのそれぞれを用いた場合の想定ビットレートと、計測されたスループットとを比較し、計測されたスループットを超えない範囲で最も想定ビットレートが高いストリームグループを選定する。
これにより、動画配信システム1は、明確な選定基準に基づいて、適切な配信ストリームを容易に選定してリアルタイムに配信できる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0070】
前述の実施形態では、動画配信装置20が単独のサーバ等の装置であるものとして説明したが、これには限られず、例えば、CDNが構成されることにより、複数の動画配信装置20が配置されてもよい。また、動画配信装置20の各機能部が複数の装置に分散配置されてもよいし、動画配信装置20が動画送出装置10の機能を併せ持っていてもよい。
【0071】
本実施形態では、主に動画配信システム1の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、動画を配信するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0072】
さらに、動画配信システム1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0073】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0074】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 動画配信システム
10 動画送出装置
11 映像/音声分離部
12 エンコーダグループ
13 音声エンコーダ
14 データ送出部
20 動画配信装置
21 データ受信部
22 配信ストリーム生成部
23 スループット計測部
24 データ送出部
30 動画受信端末
31 データ受信部
32 デコード部
33 動画提示部
121 Iストリームエンコーダ(第1映像ストリームエンコーダ)
122 Pストリームエンコーダ(第2映像ストリームエンコーダ)
図1
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