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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】水力機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/08 20060101AFI20240607BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
F04D13/08 T
F04D29/70 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020079153
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021173247
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】常田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-332579(JP,A)
【文献】実開昭57-081481(JP,U)
【文献】特開2015-010582(JP,A)
【文献】特開2007-32036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/08
F04D 29/70
F16L 55/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に固定され回転することで、流体を軸方向に吐出する羽根車と、
筒状に形成され、前記羽根車を収容するケーシングと、
前記ケーシングの内部の流体流路において、前記羽根車の上流側に配置され、前記流体流路を部分的に覆う異物捕捉スクリーンと、を備え、
前記異物捕捉スクリーンは、前記流体流路において、前記羽根車と前記ケーシングとのチップクリアランスの上流側に配置されると共に、流体の主流方向から見て、前記チップクリアランスを環状に覆っている第1環状部を備える、ことを特徴とする水力機械。
【請求項2】
主軸に固定され回転することで、流体を軸方向に吐出する羽根車と、
筒状に形成され、前記羽根車を収容するケーシングと、
前記ケーシングの内部の流体流路において、前記羽根車の上流側に配置され、前記流体流路を部分的に覆う異物捕捉スクリーンと、を備え、
前記羽根車は、ハブと、前記ハブの周面に回転軸を介して翼本体が接続された複数の可動翼と、を備え、
前記異物捕捉スクリーンは、前記流体流路において、前記ハブの周面と前記可動翼の翼本体との隙間の上流側に配置されると共に、流体の主流方向から見て、前記ハブの周面と前記可動翼の翼本体との隙間を環状に覆っている第2環状部を備える、ことを特徴とする水力機械。
【請求項3】
主軸に固定され回転することで、流体を軸方向に吐出する羽根車と、
筒状に形成され、前記羽根車を収容するケーシングと、
前記ケーシングの内部の流体流路において、前記羽根車の上流側に配置され、前記流体流路を部分的に覆う異物捕捉スクリーンと、を備え、
前記羽根車は、ハブと、前記ハブの周面に回転軸を介して翼本体が接続された複数の可動翼と、を備え、
前記異物捕捉スクリーンは、
前記流体流路において、前記羽根車と前記ケーシングとのチップクリアランスの上流側に配置されると共に、流体の主流方向から見て、前記チップクリアランスを環状に覆っている第1環状部と、
前記流体流路において、前記ハブの周面と前記可動翼の翼本体との隙間の上流側に配置されると共に、前記流体の主流方向から見て、前記ハブの周面と前記可動翼の翼本体との隙間を環状に覆っている第2環状部と、
前記第1環状部と前記第2環状部とを周方向において間隔をあけて接続する複数の接続部材と、を備える、ことを特徴とする水力機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、羽根車が回転軸に回転可能に取り付けられて、ポンプケーシングに回転自在に収容され、このポンプケーシングに導入されて羽根車を回転駆動する動力水の流れ方向における羽根車の上流位置で、ポンプケーシングの内部に、固形異物補足用のスクリーンが設けられているスクリーン内蔵型ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-332579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スクリーン内蔵型ポンプは、羽根車を水車ランナーとして機能させたときにスクリーンで固形異物を補足し、羽根車をポンプインペラとして機能させたときに補足されている固形異物を逆洗して排出する。しかしながら、流体に大量の固形異物が含まれている場合、スクリーン上に固形異物が堆積し、流体流路自体が閉塞してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、流体に大量の固形異物が含まれている場合であっても、固形異物の詰まりや挟まり、堆積を防止できる水力機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る水力機械は、主軸に固定され回転する羽根車と、前記羽根車を収容するケーシングと、前記ケーシングの内部の流体流路において、前記羽根車の上流側に配置され、前記流体流路を部分的に覆う異物補足スクリーンと、を備える。
【0007】
上記水力機械においては、前記異物補足スクリーンは、前記流体流路において、前記羽根車と前記ケーシングとのチップクリアランスの上流側に配置された第1環状部を備えてもよい。
上記水力機械においては、前記羽根車は、ハブと、前記ハブの周面に回転軸を介して翼本体が接続された複数の可動翼と、を備え、前記異物補足スクリーンは、前記流体流路において、前記ハブの周面と前記可動翼の翼本体との隙間の上流側に配置された第2環状部を備えてもよい。
上記水力機械においては、前記羽根車は、ハブと、前記ハブの周面に回転軸を介して翼本体が接続された複数の可動翼と、を備え、前記異物補足スクリーンは、前記流体流路において、前記羽根車と前記ケーシングとのチップクリアランスの上流側に配置された第1環状部と、前記流体流路において、前記ハブの周面と前記可動翼の翼本体との隙間の上流側に配置された第2環状部と、前記第1環状部と前記第2環状部とを周方向において間隔をあけて接続する複数の接続部材と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明の態様によれば、流体に大量の固形異物が含まれている場合であっても、固形異物の詰まりや挟まり、堆積を防止できる水力機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る水力機械断面構成図である。
図2図1に示す矢視A図である。
図3】第2実施形態に係る水力機械の要部の断面構成図である。
図4図3に示す矢視B図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、水力機械としてポンプを例示する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る水力機械100の断面構成図である。
図1に示す水力機械100は、非容積型ポンプの一つである横軸軸流ポンプであり、液体を軸方向に吐出する羽根車1を備えている。羽根車1は、複数の翼2と、複数の翼2が接続されたハブ3と、を備えている。なお、水力機械100は、立軸ポンプであっても、斜流ポンプであっても、遠心ポンプであっても構わない。
【0012】
水力機械100は、羽根車1が固定された主軸101と、主軸101と他の軸とを連結する軸継手102と、主軸101を支持する軸受103と、羽根車1及び主軸101の一部を収容するケーシング104と、を備えている。ケーシング104は、吐出し側ケーシング104aと、吐出し側ケーシング104aに接続された吸込み側ケーシング104bと、を備えている。
【0013】
吐出し側ケーシング104aは、水平方向に延びる筒状に形成され、羽根車1を取り囲んでいる。吸込み側ケーシング104bは、エルボ形状に形成され、吐出し側ケーシング104aの上流側に水平方向に接続されている。吸込み側ケーシング104bの吐出し側ケーシング104aと接続されていない側には、液体吸込み口105が形成されている。
【0014】
液体吸込み口105は、鉛直下方向を向いている。つまり、吸込み側ケーシング104bは、液体吸込み口105から上方に延びた後、水平方向に延び、吐出し側ケーシング104aと接続されている。吐出し側ケーシング104aは、吸込み側ケーシング104bと接続されていない側に、液体吐出し口106を備えている。このように、ケーシング104の内部には、屈曲した流体流路104Aが形成されている。
【0015】
主軸101は、吐出し側ケーシング104aに沿って水平方向に延び、吸込み側ケーシング104bを貫通している。軸継手102は、吸込み側ケーシング104bを貫通し、ケーシング104の外部に突出した主軸101を、図示しない駆動機と連結させさせている。吐出し側ケーシング104a内には、ガイドベーン107が設けられている。ガイドベーン107は、液体を効率的に加速するためにベーンの開放角度を変えることができる。
【0016】
主軸101は、上述した図示しない駆動機によって回転し、主軸101の回転によって羽根車1が回転する。羽根車1の回転により、取扱い液(液体、例えば水)は、液体吸込み口105から上方に流れ、エルボ状の吸込み側ケーシング104bにより水平方向に流れが曲げられて羽根車1へ至る。液体は、羽根車1の回転によりさらに水平方向に送られ、液体吐出し口106から吐出される。
【0017】
ケーシング104の内部の流体流路104Aにおいて、羽根車1の翼2の上流側には、異物補足スクリーン10が配置されている。図1に示す異物補足スクリーン10は、吐出し側ケーシング104aと吸込み側ケーシング104bとの間に挟持されている。なお、異物補足スクリーン10は、吐出し側ケーシング104aと吸込み側ケーシング104bのいずれかの内壁面に固定しても構わない。
【0018】
異物補足スクリーン10は、羽根車1の上流側において、流体流路104Aを部分的に覆っている。具体的に、異物補足スクリーン10は、流体流路104Aにおいて、羽根車1とケーシング104とのチップクリアランス110の上流側を部分的に覆う環状(リング状)に形成されている。この環状部分を、第1環状部10Aと称する。
【0019】
図2は、図1に示す矢視A図である。
図2に示すように、第1環状部10Aは、異物補足部11と、異物補足部11を保持する枠部12と、を有している。異物補足部11は、格子または網状の構造体であることが好ましい。枠部12は、異物補足部11の形状を環状に保持する強度部材である。なお、異物補足部11自体が強度部材(例えばパンチメタルなど)である場合には、枠部12は無くても構わない。
【0020】
第1環状部10Aは、図2に示すように、液体の主流方向から見て、羽根車1とケーシング104とのチップクリアランス110を環状に覆っている。具体的に、第1環状部10Aは、液体の主流方向から見て、羽根車1の翼2の先端部(翼2の全高の1/3程度)を覆っている。つまり、羽根車1の翼2の中腹部から根本まで(翼2の全高の2/3程度)は、第1環状部10Aに覆われておらず、液体に含まれる固形異物が通過可能な構成となっている。
【0021】
上記構成の水力機械100によれば、図1に示すように、羽根車1の上流側に、流体流路104Aを部分的に覆う異物補足スクリーン10が配置されているため、固形異物が挟まりやすい箇所を部分的に保護しつつ、それ以外の部分(固形異物が挟まり難い箇所)からは、積極的に固形異物を下流側に排出することができる。これにより、液体に大量の固形異物が含まれている場合であっても、固形異物が異物補足スクリーン10上に堆積し、流体流路104Aが閉塞されてしまうことを防止できる。
【0022】
このように、上述の本実施形態によれば、主軸101に固定され回転する羽根車1と、羽根車1を収容するケーシング104と、ケーシング104の内部の流体流路104Aにおいて、羽根車1の上流側に配置され、流体流路104Aを部分的に覆う異物補足スクリーン10と、を備える、という構成を採用することによって、液体に大量の固形異物が含まれている場合であっても、固形異物の詰まりや挟まり、堆積を防止できる水力機械100が得られる。
【0023】
また、本実施形態においては、異物補足スクリーン10は、流体流路104Aにおいて、羽根車1とケーシング104とのチップクリアランス110の上流側に配置された第1環状部10Aを備えている。この構成によれば、特に固形異物が挟まり易いチップクリアランス110における固形異物の挟まりを防止できる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0025】
図3は、第2実施形態に係る水力機械100の要部の断面構成図である。図4は、図3に示す矢視B図である。
図3に示すように、第2実施形態の羽根車1は、ハブ3の周面に可動翼2Aを備えている。可動翼2Aの翼本体2A1は、回転軸2A2を介してハブ3の周面に回転可能に接続されている。
【0026】
第2実施形態の異物補足スクリーン10は、上述した第1環状部10Aと、さらに、第2環状部10Bと、を備えている。第2環状部10Bは、流体流路104Aにおいて、ハブ3の周面と可動翼2Aの翼本体2A1との隙間111の上流側に配置されている。第2環状部10Bは、第1環状部10Aと同様の構成となっており、異物補足部11と、枠部12と、を有している。
【0027】
第2環状部10Bは、第1環状部10Aよりも小径の環状に形成されている。第2環状部10Bの外周縁と、第1環状部10Aの内周縁との間には、隙間が形成されている。なお、第2環状部10Bの外周縁と、第1環状部10Aの内周縁との間は、接続部材13によって接続されている。
【0028】
図4に示すように、接続部材13は、径方向に延びる強度部材(スポーク部材)であり、第2環状部10Bの外周縁と第1環状部10Aの内周縁とを、周方向において間隔をあけて複数個所で接続している。つまり、接続部材13は、第1環状部10Aと第2環状部10Bとの隙間から、固形異物を下流側に排出できるように、両者を接続している。
【0029】
上記構成の第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の作用効果に加え、流体流路104Aにおいて、ハブ3の周面と可動翼2Aの翼本体2A1との隙間111の上流側に配置された第2環状部10Bを備えているので、この隙間111への固形異物の挟み込みを防止することができる。また、第2実施形態によれば、第1環状部10Aと第2環状部10Bとを周方向において間隔をあけて接続する複数の接続部材13を備えているので、第1環状部10Aと第2環状部10Bとの隙間から、固形異物を下流側に排出する機能を維持しつつ、両者を接続することができる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0031】
変形例として、例えば、図1に示すガイドベーン107(可動翼)の上流側に、上述した異物補足スクリーン10を取り付けても構わない。
また、異物補足スクリーン10は、第1環状部10A若しくは第1環状部10Aと第2環状部10Bの組み合わせだけでなく、第2環状部10Bのみであっても構わない。
また、水力機械100としては、ポンプに限らず、水車であっても構わない。
【符号の説明】
【0032】
1 羽根車
2A 可動翼
2A1 翼本体
2A2 回転軸
3 ハブ
10 異物補足スクリーン
10A 第1環状部
10B 第2環状部
13 接続部材
100 水力機械
101 主軸
104 ケーシング
104A 流体流路
110 チップクリアランス
111 隙間
図1
図2
図3
図4