(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】エキスパンド装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240607BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240607BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20240607BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20240607BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20240607BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
H01L21/78 X
H01L21/68 N
B28D5/04 Z
B28D7/02
B28D7/04
B26F3/00 A
(21)【出願番号】P 2020081419
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 晋一
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-063813(JP,A)
【文献】特開2018-019007(JP,A)
【文献】特開2006-294731(JP,A)
【文献】特開2016-082139(JP,A)
【文献】特開2016-081976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
B28D 5/04
B28D 7/02
B28D 7/04
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが貼着されたシートをエキスパンドするエキスパンド装置であって、
第1方向でワークを挟んで互いに対向して配設され、それぞれ該シートを挟持する第1挟持ユニットと第2挟持ユニットと、
該第1方向に直交する第2方向でワークを挟んで互いに対向して配設され、該シートを挟持する第3挟持ユニットと、第4挟持ユニットと、を有した挟持機構と、
該第1挟持ユニットと該第2挟持ユニットを該第1方向で互いに離反する方向に移動させる第1方向移動手段と、
該第3挟持ユニットと該第4挟持ユニットを該第2方向で互いに離反する方向に移動させる第2方向移動手段と、を有する移動機構と、
少なくとも該第1挟持ユニットと該第2挟持ユニットとでそれぞれ挟持される該シートの被挟持部に向かって冷却エアーをそれぞれ噴射する噴射手段と、を備え
、
該第1挟持ユニットと該第2挟持ユニットとは、鉛直方向に移動自在に設けられかつ互いに近づ付けられて互いの間に該シートを保持するとともに該第1方向移動手段により該第1方向に移動される一対の挟持部材を備え、
該第3挟持ユニットと該第4挟持ユニットとは、鉛直方向に移動自在に設けられかつ互いに近づ付けられて互いの間に該シートを保持するとともに該第2方向移動手段により該第2方向に移動される一対の挟持部材を備え、
該噴射手段が、該冷却エアーを噴射する冷却エアー噴射口を備え、該冷却エアー噴射口が、各挟持ユニットの一対の挟持部材のうち上側の挟持部材の下側の挟持部材に対向する対向面に複数開口している、エキスパンド装置。
【請求項2】
該第1挟持ユニットと該第2挟持ユニットとは、一対の挟持部材の該鉛直方向に対向する対向面に該第1方向と平行な回転軸を中心に回転自在に設けられた複数のコロを備え、
該第3挟持ユニットと該第4挟持ユニットとは、一対の挟持部材の該鉛直方向に対向する対向面に該第2方向と平行な回転軸を中心に回転自在に設けられた複数のコロを備え、
該第1挟持ユニットの該挟持部材の該対向面に開口した該冷却エアー噴射口は、該第1挟持ユニットの該コロよりも該第2挟持ユニット寄りの位置に開口し、該第2方向に等間隔に配置され、
該第2挟持ユニットの該挟持部材の該対向面に開口した該冷却エアー噴射口は、該第2挟持ユニットの該コロよりも該第1挟持ユニット寄りの位置に開口し、該第2方向に等間隔に配置され、
該第3挟持ユニットの該挟持部材の該対向面に開口した該冷却エアー噴射口は、該第3挟持ユニットの該コロよりも該第4挟持ユニット寄りの位置に開口し、該第1方向に等間隔に配置され、
該第4挟持ユニットの該挟持部材の該対向面に開口した該冷却エアー噴射口は、該第4挟持ユニットの該コロよりも該第3挟持ユニット寄りの位置に開口し、該第1方向に等間隔に配置されている、請求項1に記載のエキスパンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが貼着されたシートをエキスパンドするエキスパンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークへのレーザービーム照射により改質層を形成した後、シートをエキスパンドすることでワークを分割する方法が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。例えばチップの縦横のサイズが異なるウェーハでは、チップ間に同程度の間隔を形成しようとすると、方向によってシートのエキスパンド量を変える必要があるため、ワークが貼着されたシートの外周4辺を挟持してエキスパンドするエキスパンド装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-251986号公報
【文献】特開2014-67749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に示されたエキスパンド装置は、上下に複数のコロを備えた挟持部材でシートを挟持する。コロでシートを挟持することで、直交方向へのシートのエキスパンドを妨げることなくエキスパンドが可能となる。
【0005】
ところで、一般にシートは帯状に製造されるが、製造工程上シートの伸長方向にテンションがかかっていて収縮し易く、つまり、エキスパンドされにくい。対してシートの伸長方向に直交する方向ではシートが比較的エキスパンドし易い。シートの種類によっては、特許文献2に示されたエキスパンド装置がエキスパンドすると、エキスパンドされにくい方向では上下のコロと接触した領域が局所的に引き延ばされ、コロに接触していない領域が十分にエキスパンドされないという問題がある。また、特許文献2に示されたエキスパンド装置がエキスパンドすると、コロに接触していない領域もエキスパンドするべく更にエキスパンド量を増やすと、局所的に引き延ばされた領域のみが更に引き延ばされてテープが破断するおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、シートが裂けてしまうことを抑制することができるエキスパンド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のエキスパンド装置は、ワークが貼着されたシートをエキスパンドするエキスパンド装置であって、第1方向でワークを挟んで互いに対向して配設され、それぞれ該シートを挟持する第1挟持ユニットと第2挟持ユニットと、該第1方向に直交する第2方向でワークを挟んで互いに対向して配設され、該シートを挟持する第3挟持ユニットと、第4挟持ユニットと、を有した挟持機構と、該第1挟持ユニットと該第2挟持ユニットを該第1方向で互いに離反する方向に移動させる第1方向移動手段と、該第3挟持ユニットと該第4挟持ユニットを該第2方向で互いに離反する方向に移動させる第2方向移動手段と、を有する移動機構と、少なくとも該第1挟持ユニットと該第2挟持ユニットとでそれぞれ挟持される該シートの被挟持部に向かって冷却エアーをそれぞれ噴射する噴射手段と、を備え、該第1挟持ユニットと該第2挟持ユニットとは、鉛直方向に移動自在に設けられかつ互いに近づ付けられて互いの間に該シートを保持するとともに該第1方向移動手段により該第1方向に移動される一対の挟持部材を備え、該第3挟持ユニットと該第4挟持ユニットとは、鉛直方向に移動自在に設けられかつ互いに近づ付けられて互いの間に該シートを保持するとともに該第2方向移動手段により該第2方向に移動される一対の挟持部材を備え、該噴射手段が、該冷却エアーを噴射する冷却エアー噴射口を備え、該冷却エアー噴射口が、各挟持ユニットの一対の挟持部材のうち上側の挟持部材の下側の挟持部材に対向する対向面に複数開口していることを特徴とする。
【0008】
前記エキスパンド装置において、該第1挟持ユニットと該第2挟持ユニットとは、一対の挟持部材の該鉛直方向に対向する対向面に該第1方向と平行な回転軸を中心に回転自在に設けられた複数のコロを備え、該第3挟持ユニットと該第4挟持ユニットとは、一対の挟持部材の該鉛直方向に対向する対向面に該第2方向と平行な回転軸を中心に回転自在に設けられた複数のコロを備え、該第1挟持ユニットの該挟持部材の該対向面に開口した該冷却エアー噴射口は、該第1挟持ユニットの該コロよりも該第2挟持ユニット寄りの位置に開口し、該第2方向に等間隔に配置され、該第2挟持ユニットの該挟持部材の該対向面に開口した該冷却エアー噴射口は、該第2挟持ユニットの該コロよりも該第1挟持ユニット寄りの位置に開口し、該第2方向に等間隔に配置され、該第3挟持ユニットの該挟持部材の該対向面に開口した該冷却エアー噴射口は、該第3挟持ユニットの該コロよりも該第4挟持ユニット寄りの位置に開口し、該第1方向に等間隔に配置され、該第4挟持ユニットの該挟持部材の該対向面に開口した該冷却エアー噴射口は、該第4挟持ユニットの該コロよりも該第3挟持ユニット寄りの位置に開口し、該第1方向に等間隔に配置されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、シートが裂けてしまうことを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るエキスパンド装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたエキスパンド装置の加工対象のワークを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示されたワークとエキスパンドシート等を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示されたエキスパンド装置の噴射機構の構成を模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示されたエキスパンド装置の挟持ユニットの上側の挟持部材を下方からみた斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係るエキスパンド方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6に示されたエキスパンド方法の挟持ステップの第1方向と平行な方向のエキスパンド装置の要部を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図6に示されたエキスパンド方法の挟持ステップの第2方向と平行な方向のエキスパンド装置の要部を模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示されたエキスパンド方法のエキスパンドステップの第1方向と平行な方向のエキスパンド装置の要部を模式的に示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図7に示されたエキスパンド方法のエキスパンドステップの第2方向と平行な方向のエキスパンド装置の要部を模式的に示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図7に示されたエキスパンド方法のエキスパンドステップの第1挟持ユニットで挟持されたエキスパンドシートを模式的に示す平面図である。
【
図12】
図12は、比較例のエキスパンド装置がエキスパンドした第1挟持ユニットで保持されたエキスパンドシートを模式的に示す平面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係るエキスパンド装置の挟持ユニットの上側の挟持部材を下方からみた斜視図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係るエキスパンド装置のエキスパンドシートを挟持した挟持ユニット等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るエキスパンド装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るエキスパンド装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたエキスパンド装置の加工対象のワークを示す斜視図である。
図3は、
図2に示されたワークとエキスパンドシート等を示す斜視図である。
図4は、
図1に示されたエキスパンド装置の噴射機構の構成を模式的に示す側面図である。
図5は、
図1に示されたエキスパンド装置の挟持ユニットの上側の挟持部材を下方からみた斜視図である。
【0013】
実施形態1に係る
図1に示すエキスパンド装置1は、
図2に示すワーク200が貼着されたシートであるエキスパンドシート201(
図3に示す)をエキスパンド(拡張ともいう)して、ワーク200を個々のチップ220に分割する装置である。実施形態1に係るエキスパンド装置1の加工対象であるワーク200は、
図2に示すように、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素又はSiC(炭化ケイ素)などを基板203とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどのウェーハである。
【0014】
実施形態1では、ワーク200は、
図2に示すように、基板203の表面204の互いに交差する複数の分割予定ライン205で区画された各領域にそれぞれデバイス202が形成されている。ワーク200は、分割予定ライン205に沿って基板203の内部に分割起点である改質層206(
図2中に破線で示す)が形成されている。改質層206は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。実施形態1では、改質層206は、基板203の他の部分よりも機械的な強度が低い。
【0015】
また、実施形態1において、ワーク200は、
図3に示すように、基板203の裏面207側にエキスパンドシート201が貼着され、エキスパンド装置1により改質層206に沿って個々のチップ220に分割される。チップ220は、基板203の一部分と、基板203の表面204に形成されたデバイス202とを備える。
【0016】
エキスパンドシート201は、伸縮性を有し、例えば、加熱された合成樹脂が第1方向211に沿って伸長されながら、第1方向211に対して直交する第2方向212に延伸されて成形される。エキスパンドシート201は、伸縮性を有する合成樹脂により構成された基材層と、基材層に積層されかつ伸縮性と粘着性とを有する合成樹脂により構成された粘着層とを備える。実施形態1では、第1方向211は、所謂流れ方向(MD:Machine Direction方向)であり、第2方向212は、所謂垂直方向(TD:Transverse Direction方向)である。なお、粘着層の表面を、以下、粘着面201-1と記し、基材層の表面を、以下、基材面201-2と記す。なお、エキスパンドシート201は、粘着層即ち粘着面201-1が、基材層即ち基材面201-2よりも伸縮し易い。
【0017】
実施形態1に係るエキスパンド装置1は、ワーク200に貼着したエキスパンドシート201を第1方向211と、第2方向212とにエキスパンドして、ワーク200を個々のチップ220に分割するとともに、互いに隣接するチップ220間に間隔を形成する装置である。また、エキスパンド装置1は、エキスパンドシート201をエキスパンドして、互いに隣接するチップ220間に間隔を形成した後、エキスパンドシート201に内径がワーク200よりも大径な環状フレーム209を貼着して、環状フレーム209の開口210内にワーク200を支持する。
【0018】
また、実施形態1において、エキスパンドシート201は、第1方向211に伸長されながら整形されるため、第1方向211にテンションが付与されており、第1方向211の方が、第2方向212よりもエキスパンドされにくい。即ち、実施形態1では、エキスパンドシート201は、第2方向212の方が第1方向211よりもエキスパンドされ易い。なお、本発明では、エキスパンドシート201のエキスパンドされにくい方向及びエキスパンドされ易い方向は、実施形態1に記載された方向に限定されない。
【0019】
エキスパンド装置1は、
図1に示すように、平板状の固定基台2と、固定基台2の中央に設けられた保持テーブル10と、図示しないワーク搬送ユニットと、挟持機構30と、移動機構40と、図示しないフレーム搬送ユニットと、シート切断ユニット90と、制御ユニット100とを備える。
【0020】
保持テーブル10は、円板状に形成され、エキスパンドシート201が保持面11に載置される。保持テーブル10は、移動機構によって鉛直方向に移動自在に設けられている。保持面11は、水平方向に沿って平坦に形成され、エキスパンドシート201を介してワーク200が載置可能な直径を有している。保持面11は、エキスパンドシート201を介して、ワーク200が載置される。
【0021】
ワーク搬送ユニットは、挟持機構30の上方に配置され、かつ下面にワーク200を保持する。ワーク搬送ユニットは、昇降ユニットにより鉛直方向に移動自在に設けられているとともに、水平方向移動ユニットにより水平方向に移動自在に設けられる。ワーク搬送ユニットは、水平方向移動ユニットにより、下面に保持したワーク200が保持テーブル10と同軸となる位置に配置されて、保持テーブル10と鉛直方向に対面する位置にワーク200を位置付ける。また、ワーク搬送ユニットは、昇降ユニットにより下降されることで、エキスパンドシート201にワーク200を貼着する。
【0022】
挟持機構30は、エキスパンドシート201を保持するものである。挟持機構30は、第1挟持ユニット31-1と、第2挟持ユニット31-2と、第3挟持ユニット31-3と、第4挟持ユニット31-4とを備える。第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4は、ワーク200が貼着されたエキスパンドシート201をワーク200の外周で挟持する挟持ユニットである。
【0023】
第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4は、それぞれエキスパンドシート201のワーク200よりも外周側の位置を挟持する。第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4は、互いに構成が略等しいので、同一部分に同一符号を付して説明する。
【0024】
第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4は、固定基台2上に設けられた柱状の移動基台32と、移動基台32に鉛直方向に移動自在に設けられた一対の挟持部材33と、一対の挟持部材33を互いに近づく方向及び互いに離れる方向に移動する部材移動ユニット34とを備える。一対の挟持部材33は、互いに鉛直方向に間隔をあけて配置され、部材移動ユニット34により互いに近づけられて互いの間にエキスパンドシート201を挟んで保持する。
【0025】
第1挟持ユニット31-1の一対の挟持部材33と第2挟持ユニット31-2の一対の挟持部材33とは、第1方向211に沿って互いに対向し、互いの間に保持テーブル10を位置付けている。即ち、第1挟持ユニット31-1の一対の挟持部材33と第2挟持ユニット31-2の一対の挟持部材33とは、第1方向211で保持テーブル10に保持されるワーク200を挟んで対向して配設されている。
【0026】
第1挟持ユニット31-1及び第2挟持ユニット31-2のそれぞれの一対の挟持部材33は、第2方向212と平行な柱状(実施形態1では、四角柱状)に形成されている。第1挟持ユニット31-1及び第2挟持ユニット31-2のそれぞれの一対の挟持部材33は、互いに対向してエキスパンドシート201を挟持する対向面331に第1方向211と平行な回転軸を中心に回転自在にコロ332を複数設けている。第1挟持ユニット31-1及び第2挟持ユニット31-2のそれぞれの一対の挟持部材33は、コロ332を第2方向212に等間隔に配置している。
【0027】
第3挟持ユニット31-3の一対の挟持部材33と第4挟持ユニット31-4の一対の挟持部材33とは、第2方向212に沿って互いに対向し、互いの間に保持テーブル10を位置付けている。即ち、第3挟持ユニット31-3の一対の挟持部材33と第4挟持ユニット31-4の一対の挟持部材33とは、第2方向212で保持テーブル10に保持されるワーク200を挟んで対向して配設されている。
【0028】
第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4のそれぞれの一対の挟持部材33は、第1方向211と平行な柱状(実施形態1では、四角柱状)に形成されている。第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4のそれぞれの一対の挟持部材33は、互いに対向してエキスパンドシート201を挟持する対向面331に第2方向212と平行な回転軸を中心に回転自在にコロ332を複数設けている。第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4のそれぞれの一対の挟持部材33は、コロ332を第1方向211に等間隔に配置している。
【0029】
部材移動ユニット34は、移動基台32に設けられている。部材移動ユニット34は、一対の挟持部材33を鉛直方向に移動自在とするモータ35と、モータ35により軸心回りに回転されるボールねじ36と、ボールねじ36に螺合しかつ挟持部材33とアーム部材37を介して連結したナット38とを備える。部材移動ユニット34は、モータ35がボールねじ36を軸心回りに回転させることで、ナット38、アーム部材37及び挟持部材33を鉛直方向に移動させる。
【0030】
部材移動ユニット34は、モータ35によりボールねじ36を軸心回りに回転することで、一対の挟持部材33を互いに近づく方向に移動させて、一対の挟持部材33間にエキスパンドシート201を挟持する。部材移動ユニット34は、モータ35によりボールねじ36を軸心回りに回転することで、一対の挟持部材33を互いに離れる方向に移動させて、一対の挟持部材33間のエキスパンドシート201の挟持を解除する。なお、一対の挟持部材33は、互いの間にエキスパンドシート201を挟持すると、上側の挟持部材33の対向面331がエキスパンドシート201の粘着面201-1に対向し、下側の挟持部材33の対向面331がエキスパンドシート201の粘着面201-1に対向する。また、部材移動ユニット34は、モータ35によりボールねじ36を軸心回りに回転することで、一対の挟持部材33を鉛直方向に同方向に移動させることもできる。
【0031】
移動機構40は、第1方向移動手段である第1方向移動機構41と、第2方向移動手段である第2方向移動機構42とを備える。
【0032】
第1方向移動機構41は、第1挟持ユニット31-1の移動基台32と第2挟持ユニット31-2の移動基台32を第1方向211に沿って移動させることで、第1挟持ユニット31-1の移動基台32と第2挟持ユニット31-2の移動基台32を第1方向211で互いに離反する方向に移動させるものである。第1方向移動機構41は、第1挟持ユニット31-1の移動基台32を第1方向211に移動させる第1移動ユニット43-1と、第2挟持ユニット31-2の移動基台32を第1方向211に移動させる第2移動ユニット43-2とを備える。
【0033】
第2方向移動機構42は、第3挟持ユニット31-3の移動基台32と第4挟持ユニット31-4の移動基台32を第2方向212に沿って移動させることで、第3挟持ユニット31-3の移動基台32と第4挟持ユニット31-4の移動基台32を第2方向212で互いに離反する方向に移動させるものである。第2方向移動機構42は、第3挟持ユニット31-3の移動基台32を第2方向212に移動させる第3移動ユニット43-3と、第4挟持ユニット31-4の移動基台32を第2方向212に移動させる第4移動ユニット43-4とを備える。
【0034】
第1移動ユニット43-1、第2移動ユニット43-2、第3移動ユニット43-3及び第4移動ユニット43-4は、互いに構成が略等しいので、同一部分に同一符号を付して説明する。
【0035】
第1移動ユニット43-1、第2移動ユニット43-2、第3移動ユニット43-3及び第4移動ユニット43-4は、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の移動基台32を第1方向211又は第2方向212に移動可能とするモータ44と、モータ44により軸心回りに回転されて移動基台32を第1方向211又は第2方向212に移動させるボールねじ45とを有する。
【0036】
第1移動ユニット43-1、第2移動ユニット43-2、第3移動ユニット43-3及び第4移動ユニット43-4は、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4を第1方向211又は第2方向212に互いに離反する方向に移動させることで、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4が挟持したエキスパンドシート201をエキスパンドする。
【0037】
また、エキスパンド装置1は、噴射手段である
図4に示す噴射機構50を備える。噴射機構50は、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4でそれぞれ挟持されるエキスパンドシート201の被挟持部201-3(
図7等に示す)に向かって冷却エアー51(
図9等に示す)をそれぞれ噴射するものである。なお、エキスパンドシート201の被挟持部201-3は、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4でそれぞれ挟持された際に、挟持部材33の対向面331と鉛直方向に沿って対向する部分である。
【0038】
噴射機構50は、
図4に示すように、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33のうち上側の挟持部材33に設けられた冷却エアー噴射口52と、冷却エアー噴射口52とエアー供給源53との双方に接続した冷却ユニット54とを備える。
【0039】
冷却エアー噴射口52は、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33のうち上側の挟持部材33内に複数設けられた通路であって、
図5に示すように、一端が各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33のうち上側の挟持部材33の対向面331に開口している。実施形態1では、冷却エアー噴射口52の対向面331に開口した一端は、コロ332よりも保持テーブル10寄りの対向面331の外縁部に複数設けられており、挟持部材33の長手方向に等間隔に配置されている。実施形態1では、冷却エアー噴射口52は、他端が挟持部材33内で一つに連結されて、冷却ユニット54に接続している。
【0040】
実施形態1では、冷却ユニット54は、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4と1対1で対応しており、対応する挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の上側の挟持部材33内に設けられた冷却エアー噴射口52の他端と接続している。冷却ユニット54は、開閉弁55を介してエアー供給源53に接続している。冷却ユニット54は、エアー供給源53から供給されたエアーを冷却して、冷却エアー噴射口52から冷却エアー51として噴射させる。実施形態1では、冷却ユニット54は、ボルテックスチューブであるが、本発明では、ボルテックスチューブに限定されない。
【0041】
実施形態1に係る噴射機構50は、冷却エアー噴射口52から冷却エアー51をエキスパンドシート201の被挟持部201-3の粘着面201-1に向かって噴射して、被挟持部201-3の粘着面201-1を冷却する。なお、実施形態1において、冷却エアー噴射口52は、挟持部材33の鉛直方向と平行な断面において、対向面331に近づくのにしたがって徐々にコロ332に近づく方向に鉛直方向に対して傾斜している。このために、噴射機構50は、冷却エアー噴射口52から冷却エアー51をエキスパンドシート201の被挟持部201-3の粘着面201-1に向かって噴射でき、エキスパンドシート201の被挟持部201-3を冷却することができる。挟持部材33の鉛直方向と平行な断面において、冷却エアー噴射口52の鉛直方向に対する傾斜角度は、エキスパンドシート201の被挟持部201-3に向かって冷却エアー51を噴射することができる適切な角度に設定されている。また、実施形態1では、噴射機構50がエキスパンドシート201の被挟持部201-3に向かって噴射する冷却エアー51の温度は、例えば、-20℃以上でかつ-数℃以下程度である。
【0042】
実施形態1では、噴射機構50は、冷却エアー噴射口52を各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の挟持部材33に設けたが、本発明では、少なくても第1挟持ユニット31-1と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33に冷却エアー噴射口52を設ければ良い。即ち、本発明では、噴射機構50は、少なくとも第1挟持ユニット31-1と第2挟持ユニット31-2とでそれぞれ挟持されるエキスパンドシート201の被挟持部201-3に向かって冷却エアー51をそれぞれ噴射すれば良い。また、実施形態1では、噴射機構50は、冷却エアー噴射口52を各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33のうち上側の挟持部材33に設けたが、本発明では、これに限定されることなく、一対の挟持部材33それぞれに設けても良い。
【0043】
フレーム搬送ユニットは、挟持機構30の上方に配置され、下面に環状フレーム209を保持する。フレーム搬送ユニットは、昇降ユニットにより鉛直方向に移動自在に設けられているとともに、図示しない水平方向移動ユニットにより水平方向に移動自在に設けられる。フレーム搬送ユニットは、水平方向移動ユニットにより、下面に保持した環状フレーム209の開口210が保持テーブル10と同軸となる位置に配置されて、環状フレーム209の開口210と保持テーブル10に載置されたエキスパンドシート201に貼着したワーク200とが鉛直方向に対面する位置に環状フレーム209を位置付ける。また、フレーム搬送ユニットは、昇降ユニットにより下降されることで、エキスパンドシート201に環状フレーム209を貼着する。
【0044】
シート切断ユニット90は、環状フレーム209に貼着されたエキスパンドシート201を環状フレーム209に沿って切断するものである。シート切断ユニット90は、
図1に示すように、エキスパンドシート201を切断するカッター91を備える。シート切断ユニット90は、エキスパンドシート201に環状フレーム209が貼着された後に、カッター91を裏面207側からエキスパンドシート201の環状フレーム209の内縁と外縁との間に切り込ませて、カッター91を環状フレーム209に沿って回転させて、エキスパンドシート201の環状フレーム209の内縁と外縁との間を切断する。
【0045】
制御ユニット100は、エキスパンド装置1の各構成要素を制御して、エキスパンド装置1にエキスパンドシート201に対するワーク200の貼着動作、エキスパンドシートのエキスパンド動作及びエキスパンドシート201に対する環状フレーム209の貼着動作等を実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、エキスパンド装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してエキスパンド装置1の各構成要素に出力する。
【0046】
また、制御ユニット100は、各種の情報や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとが接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0047】
なお、本発明では、エキスパンド装置1は、上述した構成に加え、ロールに巻かれたエキスパンドシート201を保持するシート挟持ユニットと、粘着面201-1を上向きにしてシート挟持ユニットからエキスパンドシート201を挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4に送り出す送り出しユニットと、送り出しユニットにより送り出されたエキスパンドシート201を切断する切断ユニットとを備えても良い。
【0048】
次に、本明細書は、実施形態1に係るエキスパンド方法を図面に基づいて説明する。
図6は、実施形態1に係るエキスパンド方法の流れを示すフローチャートである。
図7は、
図6に示されたエキスパンド方法の挟持ステップの第1方向と平行な方向のエキスパンド装置の要部を模式的に示す側面図である。
図8は、
図6に示されたエキスパンド方法の挟持ステップの第2方向と平行な方向のエキスパンド装置の要部を模式的に示す側面図である。
図9は、
図7に示されたエキスパンド方法のエキスパンドステップの第1方向と平行な方向のエキスパンド装置の要部を模式的に示す側面図である。
図10は、
図7に示されたエキスパンド方法のエキスパンドステップの第2方向と平行な方向のエキスパンド装置の要部を模式的に示す側面図である。
図11は、
図7に示されたエキスパンド方法のエキスパンドステップの第1挟持ユニットで挟持されたエキスパンドシートを模式的に示す平面図である。
図12は、比較例のエキスパンド装置がエキスパンドした第1挟持ユニットで保持されたエキスパンドシートを模式的に示す平面図である。
【0049】
実施形態1に係るエキスパンド方法は、前述したエキスパンド装置1のエキスパンドシート201のエキスパンド動作でもある。エキスパンド装置1は、オペレータが入力ユニットを操作するなどして入力した加工内容情報を受け付け、オペレータが入力ユニットを操作する等して入力した加工動作の開始指示を受け付けると、エキスパンド動作を開始する。エキスパンド方法は、
図6に示すように、挟持ステップ1001と、エキスパンドステップ1002と、フレーム貼着ステップ1003とを備える。
【0050】
(挟持ステップ)
挟持ステップ1001は、第1方向211でワーク200を挟んで互いに対向する第1挟持ユニット31-1と第2挟持ユニット31-2とでエキスパンドシート201を挟持し、且つ、第2方向212でワークを挟んで互いに対向する第3挟持ユニット31-3と第4挟持ユニット31-4とでエキスパンドシート201を挟持するステップである。
【0051】
挟持ステップ1001では、エキスパンド装置1は、
図7に示すように、エキスパンドシート201を第1挟持ユニット31-1の一対の挟持部材33間に挟持し、第2挟持ユニット31-2の一対の挟持部材33間に挟持し、
図8に示すように、エキスパンドシート201を第3挟持ユニット31-3の一対の挟持部材33間に挟持し、第4挟持ユニット31-4の一対の挟持部材33間に挟持する。なお、挟持ステップ1001では、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4が一対の挟持部材33間にエキスパンドシート201を挟持すると、コロ332の外周面のうち回転軸と鉛直方向に重なる部分が、エキスパンドシート201に接触する。また、挟持ステップ1001では、エキスパンド装置1は、全ての開閉弁55を閉じている。
【0052】
挟持ステップ1001では、エキスパンド装置1は、ワーク搬送ユニットに保持した改質層206が形成されたワーク200の裏面207をエキスパンドシート201の各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の挟持部材33で囲まれた領域に対向させた後、ワーク搬送ユニットを下降させて、
図7及び
図8に示すように、エキスパンドシート201にワーク200の裏面207を貼着する。
【0053】
(エキスパンドステップ)
挟持ステップ1001を実施した後、第1挟持ユニット31-1と第2挟持ユニット31-2とをそれぞれ離反する方向に移動させることでエキスパンドシート201を第1方向211にエキスパンドするとともに、第3挟持ユニット31-3と第4挟持ユニット31-4とをそれぞれ離反する方向に移動させることでエキスパンドシート201を第2方向212にエキスパンドするステップである。
【0054】
エキスパンドステップ1002では、
図9及び
図10に示すように、エキスパンド装置1は、全ての開閉弁55を開き、冷却エアー噴射口52から冷却エアー51を被挟持部201-3に向かって噴射し、エキスパンドシート201の被挟持部201-3を冷却する。エキスパンドステップ1002では、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33間にエキスパンドシート201を挟持した状態で、エキスパンド装置1は、
図9及び
図10中の矢印300で示すように、移動ユニット43-1,43-2,43-3,43-4に挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4を第1方向211又は第2方向212に離反する方向に同時に移動させる。
【0055】
すると、エキスパンド装置1は、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の移動基台32の移動とともに、第1挟持ユニット31-1の一対の挟持部材33と第2挟持ユニット31-2の一対の挟持部材33とを第1方向211に沿って互いに離反する方向に移動させるとともに、第3挟持ユニット31-3の一対の挟持部材33と第4挟持ユニット31-4の一対の挟持部材33とを第2方向212に沿って互いに離反する方向に移動させて、エキスパンドシート201を第1方向211と第2方向212との双方にエキスパンドする。このように、エキスパンドステップ1002では、エキスパンド装置1は、第1挟持ユニット31-1と第2挟持ユニット31-2と第3挟持ユニット31-3と第4挟持ユニット31-4とでそれぞれ挟持されるエキスパンドシート201の被挟持部201-3に向かって冷却エアー51を噴射しつつエキスパンドシート201をエキスパンドする。
【0056】
また、エキスパンドステップ1002では、エキスパンド装置1は、冷却エアー噴射口52から被挟持部201-3に向かって冷却エアー51を噴射するので、エキスパンドシート201のワーク200が貼着された領域を冷却することを抑制して極力常温に維持するとともに、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33で挟持した被挟持部201-3を冷却する。エキスパンドシート201の被挟持部201-3がワーク200が貼着された領域よりも硬化する。エキスパンドシート201のエキスパンドの結果、エキスパンドシート201に第1方向211と第2方向212との双方に沿った引張力が作用する。
【0057】
このようにワーク200が貼着されたエキスパンドシート201に第1方向211と第2方向212との双方に沿った引張力が作用すると、ワーク200は、分割予定ライン205に沿って改質層206が形成されているので、改質層206を基点として分割予定ライン205に沿って個々のチップ220に分割される。なお、実施形態1では、エキスパンドステップ1002において、第1方向211と第2方向212とに沿って同時にエキスパンドシート201をエキスパンドするが、本発明では、これに限定されることなく、例えば、第1方向211と第2方向212とのうちいずれか一方に沿ってエキスパンドシート201をエキスパンドし、その後、他方に沿ってエキスパンドシート201をエキスパンドしても良い。
【0058】
(フレーム貼着ステップ)
フレーム貼着ステップ1003は、エキスパンドされたエキスパンドシート201に環状フレーム209を貼着するステップである。フレーム貼着ステップ1003では、エキスパンド装置1は、開口210とエキスパンドシート201に貼着されたワーク200とが対面する位置にフレーム搬送ユニットに保持した環状フレーム209を位置付ける。エキスパンド装置1は、フレーム搬送ユニットを下降させて、フレーム搬送ユニットが保持した環状フレーム209をエキスパンドシート201に貼着する。フレーム貼着ステップ1003では、エキスパンド装置1は、シート切断ユニット90のカッター91にエキスパンドシート201の環状フレーム209の内縁と外縁との間を環状フレーム209に沿って切断させ、エキスパンド装置1のエキスパンド動作即ち実施形態1に係るエキスパンド方法を終了する。
【0059】
以上説明した実施形態1に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、エキスパンドシート201をエキスパンドするエキスパンドステップ1002において、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33間に挟持するエキスパンドシート201の被挟持部201-3に向かって冷却エアー51を噴射する。このために、エキスパンドステップ1002においてエキスパンドされるエキスパンドシート201の被挟持部201-3が硬化してエキスパンドされにくくなる。
【0060】
このために、エキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、エキスパンドステップ1002において、エキスパンドシート201のワーク200が貼着された領域を被挟持部201-3よりもエキスパンドすることとなるため、
図11に示すように、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の挟持部材33の近傍ではエキスパンドシート201の全体をエキスパンドすることとなる。なお、冷却エアー51を被挟持部201-3に向かって噴射することなくエキスパンドシート201をエキスパンドする比較例では、
図12に示すように、エキスパンドシート201のコロ400の回転軸の近傍が延ばされて、エキスパンドシート201のコロ400の回転軸から離れた箇所が延ばされない。その結果、実施形態1に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、比較例では特に各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4で挟持されたエキスパンドシート201の被挟持部201-3が局所的に引き伸ばされてしまうのに対し、
図11に示すように、エキスパンドシート201の被挟持部201-3が局所的に引き伸ばされてしまう問題を改善でき、エキスパンドシート201が裂けてしまうことを抑制することができるという効果を奏する。
【0061】
また、実施形態1に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、冷却エアー噴射口52がエキスパンドシート201の被挟持部201-3の粘着面201-1に向かって冷却エアー51を噴射するので、被挟持部201-3では、基材層よりも伸縮し易い粘着層を特に硬化でき、エキスパンドシート201の被挟持部201-3が局所的に引き伸ばされてしまうことを抑制することができる。
【0062】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るエキスパンド装置を図面に基づいて説明する。
図13は、実施形態2に係るエキスパンド装置の挟持ユニットの上側の挟持部材を下方からみた斜視図である。
図14は、実施形態2に係るエキスパンド装置のエキスパンドシートを挟持した挟持ユニット等を示す断面図である。
図13及び
図14は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
実施形態2に係るエキスパンド装置1は、
図13及び
図14に示すように、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の挟持部材33が、対向面331にコロ332を複数設けることなく、対向面331に挟持部材33と平行な溝333を複数設けていること以外、実施形態1と同じである。また、実施形態2に係るエキスパンド装置1は、
図13及び
図14に示すように、噴射機構50の冷却エアー噴射口52が対向面331の複数の溝333よりワーク200寄りの外縁部に設けられている。
【0064】
なお、実施形態2では、上側の挟持部材33と下側の挟持部材33との双方の対向面331に溝333を複数設けたが、本発明では、下側の挟持部材33の対向面331に溝333を設けなくても良い。本発明では、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33のうち少なくとも上側の挟持部材33の対向面331に溝333を設けるので、上側の挟持部材33の粘着面201-1との接触面積を抑制して、上側の挟持部材33が粘着面201-1に貼り付いてしまうことを抑制することができる。
【0065】
実施形態1に係るエキスパンド装置1は、エキスパンドステップ1002において、各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の一対の挟持部材33間に挟持するエキスパンドシート201の被挟持部201-3に向かって冷却エアー51を噴射するために、エキスパンドシート201の被挟持部201-3が局所的に引き伸ばされてしまう問題を改善でき、実施形態1と同様に、エキスパンドシート201が裂けてしまうことを抑制することができるという効果を奏する。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば本発明では、第1挟持ユニット31-1及び第2挟持ユニット31-2それぞれの一対の挟持部材33が実施形態1と同様にコロ332を複数設け、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4それぞれの一対の挟持部材33が実施形態2と同様にコロ332を複数設けることなく対向面331に溝333を複数設けても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 エキスパンド装置
30 挟持機構
31-1 第1挟持ユニット
31-2 第2挟持ユニット
31-3 第3挟持ユニット
31-4 第4挟持ユニット
40 移動機構
41 第1方向移動機構(第1方向移動手段)
42 第2方向移動機構(第2方向移動手段)
50 噴射機構(噴射手段)
51 冷却エアー
200 ワーク
201 エキスパンドシート(シート)
201-3 被挟持部
211 第1方向
212 第2方向
1001 挟持ステップ
1002 エキスパンドステップ