(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】めっき装置の気泡除去方法及びめっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 21/04 20060101AFI20240607BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20240607BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20240607BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
C25D21/04
C25D17/00 H
C25D17/06 C
C25D17/00 C
C25D7/12
(21)【出願番号】P 2020166868
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】辻 一仁
(72)【発明者】
【氏名】張 紹華
(72)【発明者】
【氏名】下山 正
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-534835(JP,A)
【文献】特開2000-087290(JP,A)
【文献】特開平11-248923(JP,A)
【文献】特開2010-168643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/00
C25D 7/12
C25D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔膜が配置されるとともに、前記隔膜よりも下方側に区画されたアノード室にアノードが配置されためっき槽と、前記アノード室よりも上方に配置されて、カソードとしての基板を、前記基板の被めっき面が前記アノードに対向するように保持する基板ホルダと、を備えるめっき装置における前記アノード室の気泡を除去する気泡除去方法であって、
前記アノード室の外周部に設けられた少なくとも一つの供給口から前記アノード室にめっき液を供給し、この供給されためっき液を、前記供給口に対向するように前記アノード室の前記外周部に設けられた少なくとも一つの排出口に吸い込ませることで、前記アノード室における前記隔膜の下面に、前記下面に沿っためっき液の剪断流を形成させることを含
み、
前記めっき装置は、前記隔膜の前記下面に配置されて、前記隔膜の前記下面に沿って流動するめっき液の剪断流の流れをガイドするガイド部材をさらに備える、めっき装置の気泡除去方法。
【請求項2】
前記アノード室から排出されためっき液に含まれる気泡を除去した後に、当該めっき液を前記アノード室に戻すことをさらに含む、請求項1に記載のめっき装置の気泡除去方法。
【請求項3】
めっき装置であって、前記めっき装置は、
隔膜が配置されるとともに、前記隔膜よりも下方側に区画されたアノード室にアノードが配置されためっき槽と、
前記アノード室よりも上方に配置されて、カソードとしての基板を、前記基板の被めっき面が前記アノードに対向するように保持する基板ホルダと、
前記アノード室の外周部に設けられて、めっき液を前記アノード室に供給する少なくとも一つの供給口と、
前記供給口に対向するように前記アノード室の前記外周部に設けられて、前記アノード室のめっき液を吸い込んで前記アノード室から排出させる少なくとも一つの排出口と、を備え、
前記供給口及び前記排出口は、前記供給口から供給されためっき液を前記排出口が吸い込むことで、前記アノード室における前記隔膜の下面に、前記下面に沿っためっき液の剪断流を形成させるように構成
され、
前記めっき装置は、前記隔膜の前記下面に配置されて、前記隔膜の前記下面に沿って流動するめっき液の剪断流の流れをガイドするガイド部材をさらに備える、めっき装置。
【請求項4】
前記供給口は、前記アノード室を下方側から視認した下面視で、前記アノード室の前記外周部における前記アノード室の中心線よりも一方の側に配置され、
前記排出口は、前記下面視で、前記アノード室の前記外周部における前記中心線よりも他方の側に配置され、
前記隔膜の前記下面から前記排出口までの距離は、前記下面から前記供給口までの距離と等しい、請求項3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記供給口は、前記アノード室の前記外周部における前記中心線よりも前記一方の側の全周に亘って配置されており、
前記排出口は、前記アノード室の前記外周部における前記中心線よりも前記他方の側の全周に亘って配置されている、請求項4に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記排出口から排出されためっき液を前記供給口に戻すように構成されためっき液循環装置をさらに備え、
前記めっき液循環装置は、前記排出口から排出されためっき液を一時的に貯留するリザーバータンクを備え、
前記リザーバータンクは、前記リザーバータンクに供給されためっき液に含まれる気泡を除去する気泡除去機構を有する、請求項3~5のいずれか1項に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記リザーバータンクには、前記排出口に連通するとともに、前記排出口から排出されためっき液を前記リザーバータンクに供給する第2供給口と、前記供給口に連通するとともに、前記リザーバータンクのめっき液を前記リザーバータンクから排出する第2排出口と、が設けられ、
前記第2供給口は前記第2排出口よりも上方に位置し、
前記気泡除去機構は前記第2供給口及び前記第2排出口を有する、請求項6に記載のめっき装置。
【請求項8】
前記リザーバータンクには、前記排出口に連通するとともに、前記排出口から排出されためっき液を前記リザーバータンクに供給する第2供給口と、前記供給口に連通するとともに、前記リザーバータンクのめっき液を前記リザーバータンクから排出する第2排出口と、前記リザーバータンクのめっき液の液面よりも上方側に突出するとともに、前記リザーバータンクの底部に接触しない範囲で前記リザーバータンクのめっき液の液面よりも下方側に向かって延在する仕切り部材と、が設けられ、
前記リザーバータンクの断面視で、前記第2供給口は、前記仕切り部材よりも一方の側に設けられ、前記第2排出口は、前記仕切り部材よりも他方の側に設けられ、
前記気泡除去機構は前記仕切り部材を有する、請求項6に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記めっき液循環装置は、めっき液の流動方向で前記排出口から前記リザーバータンクに至るまでの間の箇所に、当該箇所を流動するめっき液に含まれるガスを大気中に放出するガス抜き配管をさらに備える、請求項6~8のいずれか1項に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置の気泡除去方法及びめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にめっき処理を施すめっき装置として、いわゆるカップ式のめっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなめっき装置は、アノードが配置されためっき槽と、アノードよりも上方に配置されて、カソードとしての基板を、基板のめっき面がアノードに対向するように保持する基板ホルダと、を備えている。
【0003】
このようなめっき装置において、アノード側での反応によってめっき液に含まれる添加剤の成分が分解又は反応することで、めっきに悪影響を及ぼすような成分が生成するおそれがある(これを、「添加剤成分に起因する悪影響」と称する)。そこで、金属イオンの通過を許容しつつ添加剤の通過を抑制する隔膜を、アノードと基板との間に配置し、この隔膜よりも下方側に区画された領域(アノード室と称する)に、アノードを配置することで、添加剤成分に起因する悪影響を抑制する技術が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-19496号公報
【文献】米国特許第6821407号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような、隔膜を有するカップ式のめっき装置において、何らかの原因により、アノード室に気泡が発生することがある。このようにアノード室に気泡が発生して、この気泡が隔膜の下面に滞留した場合、この気泡に起因して基板のめっき品質が悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、隔膜の下面に滞留した気泡に起因して基板のめっき品質が悪化することを抑制することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置の気泡除去方法は、隔膜が配置されるとともに、前記隔膜よりも下方側に区画されたアノード室にアノードが配置されためっき槽と、前記アノード室よりも上方に配置されて、カソードとしての基板を、前記基板の被めっき面が前記アノードに対向するように保持する基板ホルダと、を備えるめっき装置における前記アノード室の気泡を除去する気泡除去方法であって、前記アノード室の外周部に設けられた少なくとも一つの供給口から前記アノード室にめっき液を供給し、この供給されためっき液を、前記供給口に対向するように前記アノード室の前記外周部に設けられた少なくとも一つの排出口に吸い込ませることで、前記アノード室における前記隔膜の下面に、前記下面に沿っためっき液の剪断流を形成させることを含んでいる。
【0008】
この態様によれば、アノード室の気泡を剪断流に乗せて、排出口から効果的に排出することができる。これにより、隔膜の下面に気泡が滞留することを抑制することができるの
で、この気泡に起因して基板のめっき品質が悪化することを抑制することができる。
【0009】
(態様2)
上記態様1は、前記アノード室から排出されためっき液に含まれる気泡を除去した後に、当該めっき液を前記アノード室に戻すことをさらに含んでいてもよい。この態様によれば、アノード室に、気泡を含まないめっき液を供給することができる。
【0010】
(態様3)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置は、隔膜が配置されるとともに、前記隔膜よりも下方側に区画されたアノード室にアノードが配置されためっき槽と、前記アノード室よりも上方に配置されて、カソードとしての基板を、前記基板の被めっき面が前記アノードに対向するように保持する基板ホルダと、前記アノード室の外周部に設けられて、めっき液を前記アノード室に供給する少なくとも一つの供給口と、前記供給口に対向するように前記アノード室の前記外周部に設けられて、前記アノード室のめっき液を吸い込んで前記アノード室から排出させる少なくとも一つの排出口と、を備え、前記供給口及び前記排出口は、前記供給口から供給されためっき液を前記排出口が吸い込むことで、前記アノード室における前記隔膜の下面に、前記下面に沿っためっき液の剪断流を形成させるように構成されている。
【0011】
この態様によれば、アノード室の気泡を剪断流に乗せて、排出口から効果的に排出することができる。これにより、隔膜の下面に気泡が滞留することを抑制することができるので、この気泡に起因して基板のめっき品質が悪化することを抑制することができる。
【0012】
(態様4)
上記態様3において、前記供給口は、前記アノード室を下方側から視認した下面視で、前記アノード室の前記外周部における前記アノード室の中心線よりも一方の側に配置され、前記排出口は、前記下面視で、前記アノード室の前記外周部における前記中心線よりも他方の側に配置され、前記隔膜の前記下面から前記排出口までの距離は、前記下面から前記供給口までの距離と等しくてもよい。この態様によれば、隔膜の下面に沿うとともに、アノード室の中心線を挟んで一方の側から他方の側に向かう剪断流を容易に形成することができる。
【0013】
(態様5)
上記態様4において、前記供給口は、前記アノード室の前記外周部における前記中心線よりも前記一方の側の全周に亘って配置されており、前記排出口は、前記アノード室の前記外周部における前記中心線よりも前記他方の側の全周に亘って配置されていてもよい。この態様によれば、隔膜の下面に、全体的に、隔膜の下面に沿うとともにアノード室の中心線を挟んで一方の側から他方の側に向かう剪断流を容易に形成することができる。これにより、アノード室の気泡を排出口から効果的に排出することができる。
【0014】
(態様6)
上記態様5は、前記隔膜の前記下面に配置されて、前記隔膜の前記下面に沿って流動する剪断流の流れをガイドするガイド部材をさらに備えていてもよい。この態様によれば、隔膜61の下面に沿って流動する剪断流をガイド部材によってガイドして、各々の排出口に効果的に吸い込ませることができる。
【0015】
(態様7)
上記態様3~6のいずれか1態様は、前記排出口から排出されためっき液を前記供給口に戻すように構成されためっき液循環装置をさらに備え、前記めっき液循環装置は、前記排出口から排出されためっき液を一時的に貯留するリザーバータンクを備え、前記リザー
バータンクは、前記リザーバータンクに供給されためっき液に含まれる気泡を除去する気泡除去機構を有していてもよい。この態様によれば、アノード室の排出口から排出されためっき液に含まれる気泡を気泡除去機構で除去してから、アノード室の供給口に戻すことができる。
【0016】
(態様8)
上記態様7において、前記リザーバータンクには、前記排出口に連通するとともに、前記排出口から排出されためっき液を前記リザーバータンクに供給する第2供給口と、前記供給口に連通するとともに、前記リザーバータンクのめっき液を前記リザーバータンクから排出する第2排出口と、が設けられ、前記第2供給口は前記第2排出口よりも上方に位置し、前記気泡除去機構は前記第2供給口及び前記第2排出口を有していてもよい。この態様によれば、第2供給口からリザーバータンクに供給されためっき液に含まれる気泡が第2排出口に流入することを抑制しつつ、この気泡を、浮力を利用して液面に浮き上がらせることができる。これにより、第2排出口に、気泡を含まないめっき液を流入させることができるので、気泡を含まないめっき液を第2排出口から排出させて、アノード室の供給口に戻すことができる。
【0017】
(態様9)
上記態様7において、前記リザーバータンクには、前記排出口に連通するとともに、前記排出口から排出されためっき液を前記リザーバータンクに供給する第2供給口と、前記供給口に連通するとともに、前記リザーバータンクのめっき液を前記リザーバータンクから排出する第2排出口と、前記リザーバータンクのめっき液の液面よりも上方側に突出するとともに、前記リザーバータンクの底部に接触しない範囲で前記リザーバータンクの液面よりも下方側に向かって延在する仕切り部材と、が設けられ、前記リザーバータンクの断面視で、前記第2供給口は、前記仕切り部材よりも一方の側に設けられ、前記第2排出口は、前記仕切り部材よりも他方の側に設けられ、前記気泡除去機構は前記仕切り部材を有していてもよい。この態様によれば、リザーバータンクの第2供給口からリザーバータンクに供給されためっき液に含まれる気泡が仕切り部材よりも他方の側(第2排出口の側)に流入することを抑制することができる。これにより、第2供給口からリザーバータンクに供給されためっき液に含まれる気泡を除去した上で、第2排出口から排出させて、アノード室の供給口に戻すことができる。
【0018】
(態様10)
上記態様7~9のいずれか1態様において、前記めっき液循環装置は、めっき液の流動方向で前記排出口から前記リザーバータンクに至るまでの間の箇所に、当該箇所を流動するめっき液に含まれるガスを大気中に放出するガス抜き配管をさらに備えていてもよい。この態様によれば、排出口から排出されてリザーバータンクに向けて流動するめっき液中の気泡に含まれるガスをガス抜き配管を介して大気中に放出することができる。これにより、この気泡を消滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係るめっきモジュールの構成を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態に係るめっき槽の近傍領域を拡大して示す模式的断面図である。
【
図5】実施形態に係るアノード室の内部を下方側から視認した様子を模式的に示す下面図である。
【
図6】実施形態に係るリザーバータンクの模式的断面図である。
【
図7】実施形態の変形例1に係るめっき装置の供給口の近傍箇所を拡大して示す模式的断面図である。
【
図8】実施形態の変形例2に係るめっき装置のリザーバータンクの模式的断面図である。
【
図9】実施形態の変形例3に係るめっき装置のアノード室の近傍領域を拡大して示す模式的断面図である。
【
図10】実施形態の変形例3に係るガイド部材を下方側から視認した様子を模式的に示す下面図である。
【
図11】実施形態の変形例4に係るめっき装置の排出口の近傍領域を拡大して示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態や実施形態の変形例では、同一又は対応する構成について、同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。また、図面は、実施形態の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0021】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す平面図(上面図)である。
図1及び
図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0022】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、及び搬送装置700の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0023】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0024】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配
置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0025】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0026】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板を搬送装置700へ受け渡す。
【0027】
搬送装置700は、搬送ロボット110から受け取った基板をプリウェットモジュール200へ搬送する。プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0028】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送装置700は、乾燥処理が施された基板を搬送ロボット110へ受け渡す。搬送ロボット110は、搬送装置700から受け取った基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0029】
なお、
図1や
図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、
図1や
図2の構成に限定されるものではない。
【0030】
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0031】
図3は、本実施形態に係るめっき装置1000における一つのめっきモジュール400の構成を模式的に示す図である。
図4は、めっきモジュール400のめっき槽10の近傍領域を拡大して示す模式的断面図である。
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係るめっき装置1000は、カップ式のめっき装置である。本実施形態に係るめっき装置1000のめっきモジュール400は、めっき槽10と、オーバーフロー槽20と、基板ホルダ30と、回転機構40と、昇降機構45と、めっき液循環装置50とを備えている。
【0032】
図4に示すように、本実施形態に係るめっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。具体的には、めっき槽10は、底部11と、この底部11の外周縁から上方に延在する外周部12(換言すると、外周側壁部)とを有しており、この外周部12の上部が開口している。なお、めっき槽10の外周部12の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る外周部12は、一例として円筒形状を有している。めっき槽10の内部には、めっき液Psが貯留されている。
【0033】
めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、本実施形態において、めっき液Psには所定の添加剤が含まれている。但し、この構成に限定されるものではなく、めっき液Psは添加剤を含んでいない構成とすることもできる。
【0034】
めっき槽10の内部には、アノード60が配置されている。具体的には、本実施形態に係るアノード60は、めっき槽10の底部11に配置されている。また、本実施形態に係るアノード60は、水平方向に延在するように配置されている。
【0035】
アノード60の具体的な種類は特に限定されるものではなく、不溶解アノードであってもよく、溶解アノードであってもよい。本実施形態では、アノード60の一例として、不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0036】
めっき槽10の内部において、アノード60よりも上方には、隔膜61が配置されている。具体的には、隔膜61は、アノード60と基板Wf(カソード)との間の箇所に配置されている。隔膜61の外周部は、保持部材62(
図4のA1部分やA2部分の拡大図を参照)を介して、めっき槽10の外周部12に接続されている。また、本実施形態に係る隔膜61は、隔膜61の面方向が水平方向になるように配置されている。
【0037】
めっき槽10の内部は、隔膜61によって上下方向に2分割されている。隔膜61よりも下方側に区画された領域であって、アノード60が配置された領域をアノード室13と称する。隔膜61よりも上方側の領域を、カソード室14と称する。
【0038】
隔膜61は、金属イオンの通過を許容しつつ、めっき液Psに含まれる添加剤の通過を抑制する膜によって構成されている。すなわち、本実施形態において、カソード室14のめっき液は添加剤を含んでいるが、アノード室13のめっき液Psは添加剤を含んでいない。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば、アノード室13のめっき液Psも添加剤を含んでいてもよい。しかしながら、この場合においても、アノード室13の添加剤の濃度は、カソード室14の添加剤の濃度よりも低くなっている。隔膜61の具体的な種類は、特に限定されるものではなく、公知の隔膜を用いることができる。この隔膜61の具体例を挙げると、例えば、電解隔膜を用いることができ、この電解隔膜の具体例として、例えば、株式会社ユアサメンブレンシステム製のめっき用電解隔膜を用いたり、あるいは、イオン交換膜等を用いたりすることができる。
【0039】
本実施形態のように、めっき装置1000が隔膜61を備えることによって、アノード側での反応によってめっき液Psに含まれる添加剤の成分が分解又は反応することで、めっきに悪影響を及ぼすような成分が生成する現象(すなわち、「添加剤成分に起因する悪影響」)が生じることを抑制することができる。
【0040】
本実施形態において、めっき槽10の内部には、抵抗体63が配置されている。抵抗体
63は、カソード室14における隔膜61と基板Wfとの間の箇所に設けられている。抵抗体63は、複数の孔(細孔)を有する多孔性の板部材によって構成されている。抵抗体63は、アノード60と基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている部材である。このように、めっき装置1000が抵抗体63を有することで、基板Wfに形成されるめっき皮膜(めっき層)の膜厚の均一化を容易に図ることができる。なお、この抵抗体63は、本実施形態に必須の部材ではなく、めっき装置1000は、抵抗体63を備えていない構成とすることもできる。
【0041】
オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外側に配置された、有底の容器によって構成されている。オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外周部12の上端を超えためっき液Ps(すなわち、めっき槽10からオーバーフローしためっき液Ps)を一時的に貯留するために設けられた槽である。オーバーフロー槽20に一時的に貯留されためっき液Psは、オーバーフロー槽20用の排出口72から排出された後に、オーバーフロー槽20用のリザーバータンク(図示せず)に一時的に貯留される。このリザーバータンクに貯留されためっき液Psは、その後、オーバーフロー用のポンプ(図示せず)によって再びカソード室14に循環される。
【0042】
基板ホルダ30は、カソードとしての基板Wfを、基板Wfの被めっき面Wfaがアノード60に対向するように保持している。換言すると、基板ホルダ30は、基板Wfの被めっき面Wfaが下方を向くように、基板Wfを保持している。
図3に示すように、基板ホルダ30は、回転機構40に接続されている。回転機構40は、基板ホルダ30を回転させるための機構である。回転機構40は、昇降機構45に接続されている。昇降機構45は、上下方向に延在する支柱46によって支持されている。昇降機構45は、基板ホルダ30及び回転機構40を昇降させるための機構である。なお、基板Wf及びアノード60は、通電装置(図示せず)と電気的に接続されている。通電装置は、めっき処理の実行時に、基板Wfとアノード60との間に電流を流すための装置である。
【0043】
図3に示すように、めっき液循環装置50は、めっき槽10から排出されためっき液Psをめっき槽10に戻すための装置である。本実施形態に係るめっき液循環装置50は、リザーバータンク51と、ポンプ52と、フィルタ53と、複数の配管(配管54a、配管54b)とを備えている。
【0044】
配管54aは、アノード室13のめっき液Psをリザーバータンク51に供給するように構成された配管である。配管54bは、リザーバータンク51のめっき液Psをアノード室13に供給するように構成された配管である。
【0045】
ポンプ52及びフィルタ53は、配管54bに配置されている。ポンプ52は、リザーバータンク51のめっき液Psをめっき槽10に向けて圧送する流体圧送装置である。フィルタ53は、めっき液Psに含まれる異物を除去する装置である。なお、リザーバータンク51の詳細は後述する。
【0046】
めっき処理を実行する際には、まず、めっき液循環装置50によってめっき液Psが循環される。次いで、回転機構40が基板ホルダ30を回転させるとともに、昇降機構45が基板ホルダ30を下方に移動させて、基板Wfをめっき槽10のめっき液Psに浸漬させる。次いで、通電装置によって、アノード60と基板Wfとの間に電流が流れる。これにより、基板Wfの被めっき面Wfaに、めっき皮膜が形成される。
【0047】
ところで、
図4を参照して、本実施形態のようなカップ式のめっき装置1000において、何らかの原因により、アノード室13に気泡Buが発生することがある。具体的には、本実施形態のように、アノード60として不溶解アノードを用いる場合、めっき処理の
実行時(通電時)に、アノード室13には以下の反応式に基づいて酸素(O
2)が発生する。この場合、この発生した酸素が気泡Buとなる。
【0048】
2H2O→O2+4H++4e-
【0049】
また、仮に、アノード60として溶解アノードを用いる場合には、上記のような反応式は生じないが、例えば、めっき槽10にめっき液Psを最初に導入する際に、配管54bの内部に存在する空気がめっき液Psとともにアノード室13に流入するおそれがある。したがって、アノード60として溶解アノードを用いる場合においても、アノード室13に気泡Buが発生する可能性がある。
【0050】
上述したように、アノード室13に気泡Buが発生した場合において、仮に、この気泡Buが隔膜61の下面61aに滞留した場合、この気泡Buが電場を遮断するおそれがある。この場合、基板Wfのめっき品質が悪化するおそれがある。そこで、本実施形態では、隔膜61の下面に気泡Buが滞留することを抑制して、この気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを抑制するために、以下に説明する技術を用いている。
【0051】
図5は、アノード室13の内部を下方側から視認した様子を模式的に示す下面図(底面図)である。
図5において、後述する供給口70及び排出口71は、
図4のB1-B1線で切断した断面が模式的に図示されている。
図5に図示されている中心線13Xは、下面視でアノード室13の中心を示す線であるとともに、本実施形態では、隔膜61の中心を示す線でもある。
【0052】
図4及び
図5を参照して、めっき装置1000は、めっき液Psをアノード室13に供給する少なくとも一つの供給口70を、アノード室13の外周部12に備えている。具体的には、本実施形態に係るめっき装置1000は、複数の供給口70を備えている。また、めっき装置1000は、アノード室13のめっき液Psを吸い込んでアノード室13から排出させる少なくとも一つの排出口71を、アノード室13の外周部12に備えるとともに、供給口70に対向するように備えている。具体的には、本実施形態に係るめっき装置1000は、複数の排出口71を備えており、この複数の排出口71は、各々の排出口71が各々の供給口70に対向するように設けられている。
【0053】
供給口70及び排出口71は、供給口70から供給されためっき液Psを排出口71が吸い込むことで、アノード室13における隔膜61の下面61aに、この下面61aに沿っためっき液Psの剪断流Sfを形成させるように構成されている。すなわち、本実施形態に係る剪断流Sfは、隔膜61の下面61aに平行な方向の流れであり、これは、水平方向の流れでもある。
【0054】
この構成によれば、アノード室13の気泡Buを剪断流Sfに乗せて、排出口71から効果的に排出することができる。これにより、隔膜61の下面61aに気泡Buが滞留することを抑制することができるので、この気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを抑制することができる。
【0055】
具体的には、
図5に示すように、本実施形態に係る供給口70は、アノード室13を下方側から視認した下面視で、アノード室13の外周部12における中心線13Xよりも一方の側(X方向の側)に配置されている。また、排出口71は、下面視で、アノード室13の外周部12における中心線13Xよりも他方の側(-X方向の側)に配置されている。また、
図4に示すように、隔膜61の下面61aから排出口71までの距離は、隔膜61の下面61aから供給口70までの距離と等しくなるように設定されている。
【0056】
この構成によれば、隔膜61の下面61aに沿うとともに中心線13Xを挟んで一方の側から他方の側に向かう剪断流Sfを、容易に形成することができる。
【0057】
より具体的には、
図5に示すように、本実施形態に係る供給口70は、アノード室13の外周部12における中心線13Xよりも一方の側の全周に亘って配置されている。また、排出口71は、アノード室13の外周部12における中心線13Xよりも他方の側の全周に亘って配置されている。換言すると、供給口70は、アノード室13の外周部12における半周部分に亘って配置されており、排出口71は、アノード室13の外周部12における他の半周部分に亘って配置されている。
【0058】
この構成によれば、隔膜61の下面61aに、全体的に、隔膜61の下面61aに沿うとともに中心線13Xを挟んで一方の側から他方の側に向かう剪断流Sfを容易に形成することができる。これにより、アノード室13の気泡Buを排出口71から効果的に排出することができる。また、この構成によれば、剪断流Sfを、中心線13Xを挟んで一方の側から他方の側に向かう一様な流れにすることが容易にできるため、渦の発生を抑制することができる。この点においても、アノード室13の気泡Buを排出口71から効果的に排出することができる。
【0059】
なお、本実施形態に係る供給口70は、めっき液Psを隔膜61の下面61aに平行な方向(すなわち、水平方向)に向けて吐出している。換言すると、本実施形態に係る複数の供給口70の軸線は、隔膜61の下面61aに平行になっている。同様に、本実施形態に係る排出口71の軸線も隔膜61の下面61aに平行になっている。但し、供給口70の軸線は、隔膜61の下面61aに平行なものに限定されるものではない。なお、供給口70の他の一例は、後述する変形例1(
図7)で説明する。排出口71の軸線も、隔膜61の下面61aに平行なものに限定されるものではない。
【0060】
また、本実施形態において、隣接する供給口70の間には隔壁73aが設けられており、隣接する排出口71の間にも隔壁73bが設けられている。また、複数の供給口70の上流側の部分は合流しており、この合流した部分の上流側端部を合流口74aと称する。この合流口74aには、前述した配管54bの下流側端部が接続している。また、複数の排出口71の下流側の部分は合流しており、この合流した部分の下流側端部を合流口74bと称する。この合流口74bには、前述した配管54aの上流側端部が接続している。
【0061】
但し、供給口70及び排出口71の構成は、これに限定されるものではない。例えば、複数の供給口70の上流側が合流していない構成、すなわち、各々の供給口70の上流側が配管54bを介してリザーバータンク51に接続した構成とすることもできる。同様に、複数の排出口71の下流側が合流していない構成、すなわち、各々の排出口71の下流側が配管54aを介してリザーバータンク51に接続した構成とすることもできる。
【0062】
また、供給口70及び排出口71の個数も、剪断流Sfを形成できるものであれば、複数に限定されるものではない。例えば、めっき装置1000は、供給口70及び排出口71をそれぞれ1個のみ備える構成とすることもできる。
【0063】
また、めっき装置1000が供給口70及び排出口71をそれぞれ1個備える場合において、供給口70をアノード室13の外周部12における中心線13Xよりも一方の側の全周に亘って配置し、排出口71を中心線13Xよりも他方の側の全周に亘って配置する場合には、例えば、
図5に示す隔壁73a及び隔壁73bを備えないようにすればよい。すなわち、この場合、
図5において、隔壁73aが無くなることで、隣接する供給口70が接続されて一つの大きな供給口となる。同様に、隔壁73bが無くなることで、隣接する排出口71が接続されて一つの大きな排出口となる。この場合、中心線13Xよりも一
方の側に一つの供給口70が全周に亘って配置され、且つ、中心線13Xよりも他方の側に一つの排出口71が全周に亘って配置された構成を得ることができる。
【0064】
また、隔膜61の下面61aから供給口70及び排出口71までの距離の具体的な値は、特に限定されるものではないが、できるだけ小さい値である方が、隔膜61の下面61aに剪断流Sfを効果的に形成できる点で好ましい。好適な例を挙げると、隔膜61の下面61aから供給口70及び排出口71までの距離は、隔膜61の下面61aからアノード60の上面60aまでの距離(これを「隔膜・アノード間距離」と称する)の1/2以下であることが好ましく、この隔膜・アノード間距離の1/4以下であることがより好ましく、この隔膜・アノード間距離の1/8以下であることがさらに好ましい。
【0065】
なお、「供給口70までの距離」は、具体的には、「供給口70の下流側端面における任意の箇所までの距離」であればよく、例えば、供給口70の下流側端面の上端までの距離でもよく、供給口70の下流側端面の中心までの距離でもよく、供給口70の下流側端面の下端までの距離でもよい。同様に、「排出口71までの距離」は、具体的には、「排出口71の上流側端面における任意の箇所までの距離」であればよく、例えば、排出口71の上流側端面の上端までの距離でもよく、排出口71の上流側端面の中心までの距離でもよく、排出口71の上流側端面の下端までの距離でもよい。
【0066】
続いて、リザーバータンク51の詳細について説明する。
図6は、本実施形態に係るリザーバータンク51の模式的断面図である。
図3及び
図6を参照して、リザーバータンク51は、アノード室13の排出口71から排出されためっき液を一時的に貯留するためのタンクである。本実施形態に係るリザーバータンク51は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。すなわち、本実施形態に係るリザーバータンク51は、底部55と、この底部55の外周縁から上方に延在する外周部56とを有しており、この外周部56の上部が開口している。なお、リザーバータンク51の上部は、本実施形態のように開口している構成に限定されず、例えば、閉塞していてもよい。リザーバータンク51の外周部56の具体的な形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態に係る外周部56は、一例として円筒形状を有している。
【0067】
また、リザーバータンク51には、供給口57(すなわち、「第2供給口」)、及び、排出口58(すなわち、「第2排出口」)が設けられている。供給口57は、配管54aを介してアノード室13の排出口71に連通するとともに、この排出口71から排出されためっき液Psをリザーバータンク51に供給するように構成された供給口である。すなわち、アノード室13の排出口71から排出されためっき液Psは、配管54aを介してこの供給口57に流入して、この供給口57からリザーバータンク51に供給される。
【0068】
排出口58は、配管54bを介してアノード室13の供給口70に連通するとともに、リザーバータンク51のめっき液Psをリザーバータンク51から排出するように構成された排出口である。すなわち、リザーバータンク51のめっき液Psは、この排出口58から排出された後に、配管54bを介して、アノード室13の供給口70に流入する。
【0069】
本実施形態において、供給口57及び排出口58は、リザーバータンク51の外周部56に設けられている。また、供給口57は、排出口58よりも上方に位置している。すなわち、リザーバータンク51のめっき液Psの液面Psaから供給口57までの距離は、この液面Psaから排出口58までの距離よりも小さくなっている。
【0070】
本実施形態によれば、供給口57からリザーバータンク51に供給されためっき液Psに含まれる気泡Buが排出口58に流入することを抑制しつつ、この気泡Buを、浮力を利用して液面Psaに浮き上がらせることができる。これにより、排出口58に、気泡B
uを含まないめっき液Psを流入させることができるので、気泡Buを含まないめっき液Psを排出口58から排出させて、アノード室13の供給口70に戻すことができる。
【0071】
すなわち、本実施形態に係る供給口57及び排出口58は、リザーバータンク51に供給されためっき液Psに含まれる気泡Buを除去する「気泡除去機構80」としての機能を有している。
【0072】
本実施形態によれば、上記の気泡除去機構80を備えているので、アノード室13の排出口71から排出されためっき液Psに含まれる気泡Buを気泡除去機構80で除去してから、アノード室13の供給口70に戻すことができる。これにより、隔膜61の下面61aに気泡Buが滞留することを効果的に抑制することができるので、この気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを効果的に抑制することができる。
【0073】
なお、本実施形態に係るめっき装置1000の気泡除去方法は、上述しためっき装置1000によって実現されている。すなわち、本実施形態に係るめっき装置1000の気泡除去方法は、供給口70からアノード室13にめっき液Psを供給し、この供給されためっき液Psを排出口71に吸い込ませることで、アノード室13における隔膜61の下面61aに、この下面61aに沿っためっき液Psの剪断流Sfを形成させることを含んでいる。さらに、本実施形態に係るめっき装置1000の気泡除去方法は、アノード室13から排出されためっき液Psに含まれる気泡Buを除去した後に、このめっき液Psをアノード室13に戻すことを含んでいる。この気泡除去方法の具体的な内容は、上述しためっき装置1000の説明において実質的に説明されているので、気泡除去方法のこれ以上詳細な説明は省略する。
【0074】
(変形例1)
続いて、実施形態の変形例1について説明する。
図7は、本変形例に係るめっき装置1000Aについて、後述する供給口70Aの近傍箇所(A1部分)を拡大して示す模式的断面図である。本変形例に係るめっき装置1000Aは、供給口70に代えて、供給口70Aを備えている点において、前述しためっき装置1000と異なっている。供給口70Aは、めっき液Psを斜め上方に向けて吐出している点において、
図4に示す供給口70と異なっている。具体的には、本変形例に係る供給口70Aは、排出口71に対向しつつ、供給口70Aの軸線70Xが隔膜61の下面61aに交差するように、配置されている。
【0075】
本変形例においても、供給口70Aから供給されためっき液Psを排出口71が吸い込むことで、アノード室13における隔膜61の下面61aに、この下面61aに沿っためっき液Psの剪断流Sfを形成させることができる。これにより、隔膜61の下面61aに気泡Buが滞留することを抑制することができるので、この気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを抑制することができる。
【0076】
(変形例2)
続いて、実施形態の変形例2について説明する。
図8は、本変形例に係るめっき装置1000Bのリザーバータンク51Bの模式的断面図である。本変形例に係るリザーバータンク51Bは、供給口57が排出口58と同じ高さに配置されている点と、気泡除去機構80に代えて気泡除去機構80Bを備えている点とにおいて、
図6に示すリザーバータンク51と異なっている。本変形例に係る気泡除去機構80Bは、供給口57及び排出口58を有するのではなく、後述する仕切り部材59を有している点において、
図6に示す気泡除去機構80と異なっている。
【0077】
仕切り部材59は、リザーバータンク51Bのめっき液Psの液面Psaよりも上方側
に突出するとともに、リザーバータンク51Bの底部55に接触しない範囲でリザーバータンク51Bの液面Psaよりも下方に向かって延在している。すなわち、仕切り部材59の上端59aは、液面Psaよりも上方側に突出しており、仕切り部材59の下端59bは、液面Psaよりも下方に位置しており、且つ、底部55との間に隙間を有している。なお、本変形例に係る仕切り部材59は、
図8のY方向及び-Y方向に延在しており、このY方向側の端部及び-Y方向側の端部がリザーバータンク51Bの外周部56に接続されることで、その位置が固定されている。但し、仕切り部材59のリザーバータンク51Bへの固定手法は、これに限定されるものではない。
【0078】
リザーバータンク51Bの断面視で、供給口57(「第2供給口」)は、仕切り部材59よりも一方の側(X方向の側)に設けられている。排出口58(「第2排出口」)は、仕切り部材59よりも他方の側(-X方向の側)に設けられている。また、仕切り部材59の下端59bは、供給口57よりも下方に位置している。
【0079】
本変形例によれば、供給口57からリザーバータンク51Bに供給されためっき液Psに含まれる気泡Buが仕切り部材59よりも他方の側(排出口58の側)に流入することを抑制することができる。具体的には、供給口57から供給されためっき液Psに含まれる気泡Buは、浮力を利用して液面Psaに浮き上がる。そして、この液面Psaに浮き上がる途中の気泡Buや液面Psaに浮き上がった気泡Buが、仕切り部材59よりも排出口58の側に流入することを抑制することができる。なお、仕切り部材59の下端59bがリザーバータンク51Bの底部55に接触していないので、リザーバータンク51Bの仕切り部材59よりも供給口57の側に貯留されためっき液Psは、この下端59bと底部55との間の隙間を通過して、仕切り部材59よりも排出口58の側に流入することができる。これにより、仕切り部材59よりも供給口57の側のめっき液Psが仕切り部材59の上端59aを超えて排出口58の側に流入することが抑制されている。
【0080】
以上のように、本変形例によれば、供給口57からリザーバータンク51Bに供給されためっき液Psに含まれる気泡Buを除去した上で、排出口58から排出させて、アノード室13の供給口70に戻すことができる。これにより、隔膜61の下面61aに気泡Buが滞留することを効果的に抑制することができるので、この気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを効果的に抑制することができる。
【0081】
なお、
図8において、供給口57は排出口58と同じ高さに配置されているが、この構成に限定されるものではない。供給口57は排出口58とは異なる高さに配置されていてもよい。
【0082】
また、本変形例において、仕切り部材59の下端59bは、供給口57よりも下方に位置しているが、この構成に限定されるものではない。仕切り部材59の下端59bは、供給口57よりも上方に位置していてもよい。しかしながら、仕切り部材59の下端59bが供給口57よりも下方に位置する場合の方が、この下端59bが供給口57よりも上方に位置する場合に比較して、供給口57から供給されためっき液Psに含まれる気泡Buが仕切り部材59の下端59bとリザーバータンク51Bの底部55との間の隙間を通過して、仕切り部材59よりも排出口58の側に流入することを効果的に抑制することができる点で、好ましい。
【0083】
なお、本変形例に係るめっき装置1000Bは、前述した変形例1に係るめっき装置1000Aの特徴をさらに備えていてもよい。
【0084】
(変形例3)
続いて、実施形態の変形例3について説明する。
図9は、本変形例に係るめっき装置1
000Cのアノード室13の近傍領域を拡大して示す模式的断面図である。本変形例に係るめっき装置1000Cは、ガイド部材90をさらに備えている点において、
図4に示すめっき装置1000と異なっている。
図10は、ガイド部材90を下方側(
図9のC1方向)から視認した様子を模式的に示す下面図である。なお、
図10では、参考用として、供給口70や排出口71も想像線(二点鎖線)で図示されている。また、
図10には、ガイド部材90の一部(A3部分)の模式的斜視図も図示されている。
【0085】
図9及び
図10に示すように、ガイド部材90は、隔膜61の下面61aに配置されている。ガイド部材90は、隔膜61の下面61aに沿って流動する剪断流Sfの流れをガイドする部材である。
【0086】
具体的には、
図10に示すように、本変形例に係るガイド部材90は、複数のガイド板91を備えている。複数のガイド板91のX方向及び-X方向側の端部は、前述した保持部材62によって保持されている。複数のガイド板91は、互いに隣接するガイド板91との間に隙間が形成されるように、アノード室13の中心線13Xに沿った方向(Y軸の方向)に配列している。
【0087】
複数のガイド板91のうち、中心線13Xに沿った方向で端部に配置されたガイド板91とアノード室13の外周部12との間に設けられた隙間、及び、互いに対向するガイド板91の間に設けられた隙間は、隔膜61の下面61aに沿って流動する剪断流Sfを、供給口70から排出口71に向かう方向に導くためのガイド流路92として機能する。このガイド流路92は、下面視で、各々の供給口70と各々の排出口71とを連通するように配置されている。
【0088】
本変形例によれば、供給口70から供給されて隔膜61の下面61aに沿って流動する剪断流Sfを、ガイド部材90によってガイドして、排出口71に効果的に吸い込ませることができる。これにより、強い剪断流Sfを容易に形成することができる。この結果、隔膜61の下面61aに気泡Buが滞留することを効果的に抑制することができるので、この気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを効果的に抑制することができる。
【0089】
なお、本変形例に係るめっき装置1000Cは、前述した変形例1に係るめっき装置1000Aの特徴、及び/又は、変形例2に係るめっき装置1000Bの特徴をさらに備えていてもよい。
【0090】
(変形例4)
続いて、実施形態の変形例4について説明する。
図11は、本変形例に係るめっき装置1000Dの排出口71の近傍領域を拡大して示す模式的断面図である。本変形例に係るめっき装置1000Dは、ガス抜き配管95をさらに備えている点において、
図4に示すめっき装置1000と異なっている。なお、
図11には、参考用として、ガス抜き配管95の近傍領域(A4部分)の模式的断面図も図示されている。
【0091】
ガス抜き配管95は、めっき液Psの流動方向で排出口71からリザーバータンク51に至るまでの間の箇所に配置されており、当該箇所を流動するめっき液Psに含まれるガスを大気中に放出するための配管部材である。具体的には、本変形例に係るガス抜き配管95は、配管54aの途中箇所と大気とを連通するように、配管54aの途中箇所に接続されている。
【0092】
より具体的には、本変形例に係るガス抜き配管95は、その一端95aが配管54aの途中箇所に連通している。また、ガス抜き配管95は、ガス抜き配管95を通過したガス
を大気に開放するための大気開放孔95cを有している。本変形例に係る大気開放孔95cは、一例として、ガス抜き配管95の他端95bに設けられている。また、ガス抜き配管95の他端95bは、一端95aよりも上方に位置している。配管54aを流動するめっき液Ps中の気泡Buに含まれるガスは、ガス抜き配管95を通過して、大気開放孔95cから大気中に放出される。これにより、この気泡Buは消滅する。
【0093】
本変形例によれば、上述したように、アノード室13からリザーバータンク51に向けて流動するめっき液Psの気泡Buを消滅させることができるので、リザーバータンク51に供給されるめっき液Psに気泡Buが含まれることを抑制することができる。これにより、リザーバータンク51からアノード室13に戻されるめっき液Psに気泡Buが含まれることを抑制することができるので、隔膜61の下面61aに気泡Buが滞留することを効果的に抑制することができる。この結果、この気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを効果的に抑制することができる。
【0094】
なお、本変形例に係るめっき装置1000Dは、前述した変形例1に係るめっき装置1000Aの特徴、及び/又は、変形例2に係るめっき装置1000Bの特徴、及び/又は、変形例3に係るめっき装置1000Cの特徴をさらに備えていてもよい。
【0095】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、さらなる種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 めっき槽
12 外周部
13 アノード室
13X 中心線
30 基板ホルダ
50 めっき液循環装置
51 リザーバータンク
55 底部
57 供給口(第2供給口)
58 排出口(第2排出口)
59 仕切り部材
60 アノード
61 隔膜
61a 下面
70 供給口
71 排出口
80 気泡除去機構
90 ガイド部材
95 ガス抜き配管
1000 めっき装置
Wf 基板
Wfa 被めっき面
Ps めっき液
Psa 液面
Sf 剪断流
Bu 気泡