(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄用組成物及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
H01L21/304 642Z
H01L21/304 647B
(21)【出願番号】P 2020183858
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】平野 勲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康夫
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017732(JP,A)
【文献】特開2012-094702(JP,A)
【文献】特開2021-106278(JP,A)
【文献】特表2020-505765(JP,A)
【文献】特表2013-514173(JP,A)
【文献】特開平09-289187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0041873(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0089446(KR,A)
【文献】特表2013-503490(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0023363(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/31
C23C 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄用組成物であって、
酸化剤、発泡剤、及び酸性化合物を含有し、
(前記洗浄用組成物が含有する前記酸性化合物のモル数×前記酸性化合物の酸の価数)/(前記洗浄用組成物が含有する前記発泡剤のモル数×前記発泡剤の塩基の価数)の値が0.1超1.5未満である、
洗浄用組成物。
【請求項2】
前記洗浄用組成物が、
前記酸化剤及び前記酸性化合物を含有する第1液と、
前記発泡剤を含有する第2液と、
を混合して用いる2液混合型洗浄用組成物である、
請求項1に記載の洗浄用組成物。
【請求項3】
前記コンポーネントがガスホールを有し、
前記洗浄用組成物が、半導体製造プロセスにより前記ガスホール内に堆積した堆積物を除去するために用いられる、
請求項1又は2に記載の洗浄用組成物。
【請求項4】
界面活性剤をさらに含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の洗浄用組成物。
【請求項5】
防食剤をさらに含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の洗浄用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄用組成物を用いて、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントを洗浄する工程を含む、
半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄用組成物及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の処理においては、基板をプロセスチャンバ内に配置し、プラズマ又は活性化ガス等に曝して、基板上に物質を堆積させる、又は基板上の物質をエッチングする等の処理が行われる。このような処理中に、処理残渣が生成し、チャンバのコンポーネントの表面に堆積する。堆積したプロセス残渣が厚みを増すと、チャンバコンポーネントの表面から剥がれ落ち、処理対象の基板を汚染する。そのため、堆積したプロセス残渣は、定期的に洗浄される必要がある。
【0003】
プロセスチャンバ内で処理中に基板が載置される台座には、基板に熱伝達ガス等を供給するためのガスホールが多数形成されている。ガスホール内に堆積した残渣は、ガス供給の妨げとなり、プロセスガスの汚染の要因ともなる。そのため、ガスホール内のプロセス残渣も定期的に除去される必要がある。
【0004】
プロセス残渣の堆積物を除去する方法としては、洗浄液を用いる方法(特許文献1)、又は物理的な手段を用いる方法等がある。洗浄液を用いる方法では、洗浄のための特別な装置は必要ないが、ガスホール内に堆積したプロセス残渣を除去することは難しい。物理的な手段を用いる方法では、伸長ピンをガスホール内に機械的に押し込むことにより、ガスホール内のプロセス残渣を除去する方法が提案されている(特許文献2)。しかし、この方法では、ガスホール内に伸長ピンを押し込む機構が必要である。また、ガスホールの内壁が傷ついたり、プロセス残渣の除去が不十分となったりする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4952257号
【文献】特許第4668915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体製造に必要なプロセスを安定して行うためには、プロセスチャンバコンポーネントのプロセス残渣の堆積物を定期的に除去する必要がある。しかしながら、ガスホール内の堆積物まで除去することは困難であり、ガスホール内まで洗浄可能な洗浄方法の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ガスホール内の堆積物を除去可能な、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄用組成物、及び洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
本発明の第1の態様は、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄用組成物であって、酸化剤、発泡剤、及び酸性化合物を含有し、(前記洗浄用組成物が含有する前記酸性化合物のモル数×前記酸性化合物の酸の価数)/(前記洗浄用組成物が含有する前記発泡剤のモル数×前記発泡剤の塩基の価数)の値が0.1超1.5未満である、である。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記洗浄用組成物を用いて、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントを洗浄する工程を含む、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガスホール内の堆積物を除去可能な、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄用組成物、及び洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(洗浄用組成物)
本発明の一実施形態にかかる半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄用組成物は、発泡剤、酸化剤、及び酸性化合物を含有し、(前記洗浄用組成物が含有する前記酸性化合物のモル数×前記酸性化合物の酸の価数)/(前記洗浄用組成物が含有する前記発泡剤のモル数×前記発泡剤の塩基の価数)の値が0.1超1.5未満である、ことを特徴とする。
【0013】
<半導体製造用プロセスチャンバコンポーネント>
本実施形態の洗浄用組成物は、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントを洗浄するために用いられる。半導体製造用プロセスチャンバは、半導体製造プロセスにおいて、半導体基板を処理するために用いられるプロセスチャンバである。半導体基板の処理としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、乾式エッチング等が挙げられるが、これらに限定されない。プロセスチャンバは、半導体基板がプラズマ又は活性化ガス等によって処理されるプロセスゾーンを画成する。
【0014】
半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントとは、半導体製造用プロセスチャンバを構成する部材を意味する。プロセスチャンバのコンポーネントとしては、ガスホールを備えるコンポーネントが好ましい。ガスホールは、プロセスチャンバ内にプロセスガス又は熱伝達ガス等を供給するために用いられる。ガスホールを備えるコンポーネントとしては、例えば、半導体基板を保持する台座等が挙げられる。
【0015】
プロセスチャンバのコンポーネントに堆積するプロセス残渣の堆積物は、プロセスの種類により変動するが、通常、無機物及び有機物を含む。無機物としては、例えば、シリコン、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム等の金属含有物、金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。有機物としては、前記金属の有機金属化合物、有機フッ素化合物、有機窒素化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態の洗浄用組成物は、堆積物を構成する物質の種類によらず、ガスホール内の堆積物まで良好に除去することができる。そのため、本実施形態の洗浄用組成物は、ガスホールを備えるコンポーネントにおいて、半導体製造プロセスによりガスホール内に堆積した堆積物を除去するために用いることが好ましい。
【0016】
<酸化剤:(A)成分>
本実施形態の洗浄用組成物は、酸化剤(以下、「(A)成分」ともいう)酸化剤は、電子受容体となり得る化合物である。本実施形態の洗浄用組成物では、プロセス残渣が酸化剤により酸化されることで、後述の発泡剤による発泡による剥離及び除去を受けやすくなる。
【0017】
酸化剤は、特に限定されないが、例えば、過酸化物(例えば、過酸化水素、過ヨウ素酸等)、次亜塩素酸、亜塩素酸、次亜臭酸、遷移金属酸化物、過酸化物、セリウム硝酸アンモニウム、硝酸塩、亜硝酸塩、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸、過硫酸塩、過酢酸、過酢酸塩、過マンガン酸化合物、重クロム酸化合物等が挙げられる。
【0018】
中でも、取扱いが容易である点から、過酸化水素が好ましい。
酸化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本実施形態の洗浄用組成物における酸化剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、洗浄用組成物全体(100質量%)に対して、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましく、5~10質量%が特に好ましい。酸化剤の含有量が前記好ましい下限値以上であると、ガスホール内の堆積物の除去性能が向上する。酸化剤の含有量が前記好ましい上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
【0020】
<発泡剤:(B)成分>
本実施形態の洗浄用組成物は、発泡剤(以下、「(B)成分」ともいう)を含有する。発泡剤は、後述の酸性化合物と反応してガスを発生する化合物である。本実施形態の洗浄用組成物では、ガスホール内部で発泡が生じることにより、ガスホール内の堆積物が剥離及び除去される。
【0021】
発泡剤は、酸性化合物と反応してガスを発生する化合物であれば、特に限定されないが、炭酸塩が好ましい。炭酸塩は、酸性化合物と反応して、炭酸ガス(CO2)を発生する。
炭酸塩は、酸性化合物と反応して、炭酸ガスを発生する塩化合物であれば、特に限定されない。炭酸塩は、正塩、酸性塩(炭酸水素塩)、及び塩基性塩(炭酸水酸化物塩)のいずれであってもよい。炭酸塩としては、例えば、アルカリ金属との塩、アルカリ土類金属との塩、遷移金属との塩、アンモニウム塩、グアニジン若しくはグアニジン誘導体との塩等が挙げられる。
アルカリ金属との塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ランタン、炭酸リチウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属との塩としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等が挙げられる。
遷移金属との塩としては、例えば、炭酸マンガン、炭酸ニッケル等が挙げられる。
アンモニウム塩としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
グアニジン若しくはグアニジン誘導体との塩としては、例えば、アミノグアニジン炭酸塩、グアニジン炭酸塩等が挙げられる。
【0022】
中でも、発泡剤としては、アンモニウム塩が好ましく、炭酸水素アンモニウム又は炭酸アンモニウムがより好ましい。
発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本実施形態の洗浄用組成物における発泡剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、洗浄用組成物全体(100質量%)に対して、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましい。発泡剤の含有量が前記好ましい下限値以上であると、ガスホール内の堆積物の除去性能が向上する。発泡剤の含有量が前記好ましい上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
【0024】
<酸性化合物:(C)成分>
本実施形態の洗浄用組成物は、酸性化合物(以下、「(C)成分」ともいう)を含有する。酸性化合物は、プロトンを発生し得る化合物であり、前記発泡剤と反応して、発泡剤にガスを発生させ得る化合物である。
【0025】
酸性化合物は、発泡剤と反応して、発泡剤にガスを発生させ得る化合物であれば、特に限定されない。酸性化合物は、無機酸であってもよく、有機酸であってもよい。無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アミノメタンスルホン酸、タウリン、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルファミン酸等が挙げられる。
【0026】
酸性化合物は、プロセスチャンバのコンポーネントにダメージを与えないことが好ましい。プロセスチャンバのコンポーネントの材質としては、例えば、アルミニウム、陽極酸化されたアルミニウムのアルミニウム材料;アルミナセラミックス、イットリアセラミックス、ジルコニアセラミック等のセラミックス等が挙げられる。これらの材質で構成されるコンポーネントにダメージを与えない観点から、酸性化合物としては、弱酸が好ましい。弱酸は、例えば、25℃における酸解離定数(pKa)が1以上の酸である。弱酸としては、例えば、ホウ酸、シュウ酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、洗浄性に優れることから、クエン酸が好ましい。
【0027】
酸性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本実施形態の洗浄用組成物における酸性化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、洗浄用組成物全体(100質量%)に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.5~25質量%がより好ましく、1~20質量%がさらに好ましく、1~20質量%が特に好ましい。酸性化合物の含有量が前記好ましい下限値以上であると、ガスホール内の堆積物の除去性能が向上する。酸化剤の含有量が前記好ましい上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
【0029】
本実施形態の洗浄組成物が含有する発泡剤((B)成分)及び酸性化合物((C)成分の量は、下記式(1)で求められる[C/B]値が、0.1超1.5未満であることが好ましい。
[C/B]=(洗浄用組成物が含有する(C)成分のモル数×(C)成分の酸の価数)/(洗浄用組成物が含有する(B)成分のモル数×(B)成分の塩基の価数) (1)
【0030】
前記式(1)中、「(C)成分の酸の価数」は、1分子の(C)成分から生じ得るプロトン(H+)の数である。例えば、(C)成分がクエン酸である場合、酸の価数は3である。(C)成分が2種以上である場合、前記式(1)中の(洗浄用組成物が含有する(C)成分のモル数×(C)成分の酸の価数)は、まず、(C)成分の種類毎に算出された後、それらが合計された値となる。
【0031】
前記式(1)中、「(B)成分の塩基の価数」は、1分子の(B)成分から生じ得る水酸化物イオン(OH-)の数である。例えば、(B)成分が炭酸アンモニウムである場合、塩基の価数は2である。(B)成分が炭酸水素アンモニウムである場合、塩基の価数は1である。(B)成分が2種以上である場合、前記式(1)中の(洗浄用組成物が含有する(B)成分のモル数×(B)成分の塩基の価数)は、まず、(B)成分の種類毎に算出された後、それらが合計された値となる。
【0032】
[C/B]の値を0.1超1.5未満とすることにより、ガスホール内の堆積物の除去性能が良好となる。[C/B]の値は、0.15以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。[C/B]の値は、1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましく、1.1以下がさらに好ましく、1.0以下が特に好ましい。[C/B]の値が0.1以下であると、(B)成分に対する(C)成分の量が少なく、ガスホール内の堆積物の除去するために十分な発泡量を得られない。[C/B]の値が1.5以上であると、pHが低くなりすぎて洗浄性が低下する。
【0033】
<任意成分>
本実施形態の洗浄用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分は、特に限定されないが、例えば、溶媒、界面活性剤、防食剤等が挙げられる。
【0034】
≪溶媒:(S)成分≫
本実施形態の洗浄用組成物は、上記(A)~(C)成分を溶解するための溶媒(以下、「(S)成分」ともいう)を含有する。(S)成分としては、通常、水が使用される。水としては、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などの浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水を用いることがより好ましい。
【0035】
(S)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)等の極性溶媒が挙げられる。有機溶媒の含有量としては、例えば、(S)成分全体(100質量%)に対して、10質量%以下が挙げられ、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
(S)成分は、有機溶媒を含まないことが好ましく、全て水であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態の洗浄用組成物は、(S)成分として、水を、洗浄用組成物全体(100質量%)に対して、65質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、75質量%以上含有することがさらに好ましい。水の含有量は、前記(A)~(C)成分の含有量により、適宜調整することができる。
【0037】
≪界面活性剤:(D)成分≫
本実施形態の洗浄用組成物は、界面活性剤(以下、「(D)成分」ともいう)を含有してもよい。界面活性剤を含有することにより、洗発泡剤により生じる気泡を緻密にし、洗浄性を向上させることができる。また、洗浄用組成物がガスホール内に入りやすくなる。
【0038】
界面活性剤は、特に限定されず、公知の界面活性剤を特に制限なく使用することができる。界面活性剤としては、例えば、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
カチオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、又はアルキルピリジウム系界面活性剤等が挙げられる。カチオン界面活性剤の具体例としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0040】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、脂肪酸アミドスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、アルキルホスホン酸、脂肪酸の塩等が挙げられる。「塩」としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0041】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。または、上記例示化合物中のオキシエチレン構造が、オキシプロピレン構造である、ポリオキシプロピレン系化合物も例示される。
【0042】
中でも、界面活性剤は、気泡を緻密にする効果が優れることから、アニオン系界面活性剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがさらに好ましい。
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本実施形態の洗浄用組成物における界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、洗浄用組成物全体(100質量%)に対して、0~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましく、0.05~1質量%がさらに好ましく、0.1~0.5質量%が特に好ましい。界面活性剤の含有量が前記好ましい範囲であると、発泡剤により発生する気泡が緻密になりやすくなる。
【0044】
≪防食剤≫
本実施形態の洗浄用組成物は、防食剤(以下、「(E)成分」ともいう)を含有してもよい。防食剤を含有することにより、プロセスチャンバのコンポーネントにたいするダメージを軽減することができる。
【0045】
防食剤は、特に限定されず、公知の防食剤を特に制限なく用いることができる。防食剤は、プロセスチャンバのコンポーネントに使用される金属に対する防食効果を有するものが好ましい。プロセスチャンバのコンポーネントに使用される金属としては、例えば、アルミニウム、陽極酸化されたアルミニウム、前記セラミックス等が挙げられる。
【0046】
防食剤としては、例えば、トリアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、フェナントロリン環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリミジン環等の含窒素複素環を含む化合物が挙げられる。
【0047】
トリアゾール環を含む化合物としては、例えば、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1H-1,2,4-トリアゾール、1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピリジン-3(2H)-オン、3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-オールなどのトリアゾール類;1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3-ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4-ヒドロキシベンゾトリアゾール、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールメチルエステル、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールブチルエステル、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールオクチルエステル、5-ヘキシルベンゾトリアゾール、[1,2,3-ベンゾトリアゾリル-1-メチル][1,2,4-トリアゾリル-1-メチル][2-エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1-ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸、3-アミノトリアゾールなどのベンゾトリアゾール類等が挙げられる。中でも、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、及び5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0048】
イミダゾール環を含む化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2、4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-アミノイミダゾールなどのイミダゾール類;2,2’-ビイミダゾールなどのビイミダゾール類等が挙げられる。中でも、ビイミダゾール類が好ましく、2,2’-ビイミダゾールがより好ましい。
【0049】
ピリジン環を含む化合物としては、例えば、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2-アセトアミドピリジン、4-ピロリジノピリジン、2-シアノピリジンなどのピリジン類;2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジル、4,4-ジノニル-2,2-ビピリジルなどのビピリジル類等が挙げられる。中でも、ビピリジル類が好ましく、2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジル、4,4-ジノニル-2,2-ビピリジルがより好ましい。
【0050】
フェナントロリン環を含む化合物としては、例えば、1,10-フェナントロリン等が挙げられる。
【0051】
テトラゾール環を含む化合物としては、例えば、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-(2-ジアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール等が挙げられる。
【0052】
ピラゾール環を含む化合物としては、例えば、3,5-ジメチルピラゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、4-メチルピラゾール、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール等が挙げられる。
【0053】
ピリミジン環を含む化合物としては、例えば、ピリミジン、1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサハイドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、1,3-ジフェニル-ピリミジン-2,4,6-トリオン、1,4,5,6-テトラハイドロピリミジン、2,4,5,6-テトラアミノピリミジンサルフェイト、2,4,5-トリハイドロキシピリミジン、2,4,6-トリアミノピリミジン、2,4,6-トリクロロピリミジン、2,4,6-トリメトキシピリミジン、2,4,6-トリフェニルピリミジン、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシルピリミジン、2,4-ジアミノピリミジン、2-アセトアミドピリミジン、2-アミノピリミジン、2-メチル-5,7-ジフェニル-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、2-メチルサルファニル-5,7-ジフェニル-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、2-メチルサルファニル-5,7-ジフェニル-4,7-ジヒドロ-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、4-アミノピラゾロ[3,4-d]ピリミジン等が挙げられる。
【0054】
中でも、防食剤としては、防食効果が高いことから、トリアゾール環を含む化合物が好ましく、ベンゾトリアゾールがより好ましい。
防食剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本実施形態の洗浄用組成物における防食剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、洗浄用組成物全体(100質量%)に対して、0~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましく、0.3~1質量%が特に好ましい。防食剤の含有量が前記好ましい下限値以上であると、プロセスチャンバのコンポーネントに含まれる金属部材に対する防食効果を得やすくなる。防食剤の含有量が前記好ましい上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
【0056】
<pH>
本実施形態の洗浄用組成物のpHは、特に限定されないが、pH7.6以上が好ましく、pH7.8以上がより好ましく、pH8以上がさらに好ましい。pHの上限値としては、pH9以下が好ましく、pH8.5以下がより好ましく、pH8.3以下がさらに好ましい。pHの範囲としては、例えば、pH7.6~9、pH7.6~8.5、pH7.6~8.3、pH7.8~9、pH7.8~8.5、又はpH7.8~8.3等が挙げられる。洗浄組成物のpHが前記好ましい範囲内であると、ガスホール内の堆積物の除去性能がより向上する。pHが前記好ましい範囲外であると、プロセスチャンバのコンポーネントに含まれる金属部材の金属種によっては、コンポーネントにダメージが発生する場合がある。
【0057】
<2液混合型洗浄用組成物>
本実施形態の洗浄用組成物は、2液混合型洗浄用組成物であることが好ましい。2液混合型洗浄用組成物とは、使用時に2液を混合して使用する洗浄用組成物である。本実施形態の洗浄用組成物は、(A)成分及び(C)成分を含有する第1液と、(B)成分を含有する第2液とを混合して用いる2液混合型洗浄用組成物であることが好ましい。2液混合型とすることにより、保管時における(B)成分と(C)成分との反応を回避し、使用時に良好な発泡性を得ることができる。
【0058】
≪第1液≫
第1液は、(A)成分及び(C)成分を含有する。第1液は、(A)成分及び(C)成分に加えて、上記のような任意成分を含んでいてもよい。第1液は、例えば、(A)成分及び(C)成分に加えて、(D)成分を含んでいてもよく、さらに(E)成分を含んでいてもよい。
【0059】
第1液は、上記の成分を溶解するための溶媒を含有する。第1液の溶媒としては、前記(S)成分と同様のものが挙げられ、通常、水が用いられる。
【0060】
第1液は、第2液と混合したときに、前記[C/B]の値が0.1超1.5未満となるように、(C)成分を含有する。また、第2液と混合したときに、各成分が上述の好ましい範囲となるように、各成分を含有することが好ましい。
【0061】
≪第2液≫
第2液は、(B)成分を含有する。第2液は、(B)成分に加えて、上記のような任意成分を含んでいてもよい。第2液は、例えば、(B)成分に加えて、(E)成分を含んでいてもよく、さらに(D)成分を含んでいてもよい。
【0062】
第2液は、上記の成分を溶解するための溶媒を含有する。第2液の溶媒としては、前記(S)成分と同様のものが挙げられ、通常、水が用いられる。
【0063】
第2液は、第1液と混合したときに、前記[C/B]の値が0.1超1.5未満となるように、(B)成分を含有する。また、第1液と混合したときに、各成分が上述の好ましい範囲となるように、各成分を含有することが好ましい。
【0064】
本実施形態の洗浄用組成物によれば、発泡剤及び酸性化合物を含有することで、発泡剤と酸性化合物との反応から生じる気泡がガスホール内の堆積物に作用して、ガスホールの内壁から堆積物を剥離するとともに、酸化剤を含有することで、堆積物がより剥離しやすくなる。そのため、ガスホール内の堆積物まで良好に除去することができる。
【0065】
(洗浄方法)
本発明の一実施形態にかかる半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントの洗浄方法は、前記実施形態にかかる洗浄用組成物を用いて、半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントを洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)を含む、ことを特徴とする。
【0066】
<洗浄工程>
洗浄工程は、洗浄対象のコンポーネントに、前記実施形態にかかる洗浄用組成物を接触させることにより行うことができる。前記コンポーネントと洗浄用組成物との接触方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。コンポーネントは、洗浄前に、プロセスチャンバから取り外してもよいし、取り外さなくてもよい。洗浄用組成物との接触が容易となることから、コンポーネントは、プロセスチャンバから取り外すことが好ましい。
【0067】
洗浄用組成物を接触させる方法としては、コンポーネントに洗浄用組成物をスプレーする方法、洗浄用組成物にコンポーネントを浸漬する方法等が挙げられる。洗浄性が良好となることから、洗浄用組成物に洗浄対象のコンポーネントを浸漬する方法が好ましい。
【0068】
洗浄用組成物が2液混合型である場合、使用直前に2液を混合することが好ましい。例えば、洗浄槽に前記第1液及び第2液を入れて混合して洗浄用組成物を調製した後、洗浄対象のコンポーネントを当該洗浄用組成物に浸漬することにより、洗浄工程を行うことができる。
【0069】
洗浄温度は、例えば、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、90℃以上が特に好ましい。洗浄温度の上限値は、洗浄用組成物の沸点であり、通常は100~110℃程度である。洗浄温度を前記下限値以上とすることにより、洗浄性が向上する。
【0070】
洗浄時間は、ガスホールの堆積物が剥離するのに十分な時間であれば、特に限定されない。洗浄時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、20分以上がさらに好ましく、25分以上が特に好ましい。洗浄時間の上限値は、特に限定されないが、例えば、120分以下、100分以下、60分以下、50分以下、40分以下、又は30分以下等が挙げられる。
【0071】
コンポーネントを洗浄用組成物で洗浄した後、リンス液でリンスして、コンポーネントから洗浄用組成物を除去してもよい。リンス液としては、例えば、水を用いることができる。リンス液によるリンスは、コンポーネントにリンス液を接触させることにより行うことができる。リンス液を接触させる方法としては、例えば、コンポーネントにリンス液をスプレーする方法、リンス液にコンポーネントを浸漬する方法等が挙げられる。洗浄液組成物を効率よく除去できることから、リンス液にコンポーネントを浸漬する方法が好ましい。
【0072】
リンスは、常温で行うことができ、例えば、20~30℃で行うことができる。リンス時間は、特に限定されないが、例えば、1~15分程度とすることができる。
【0073】
以上説明した本実施形態の洗浄方法によれば、前記実施形態の洗浄用組成物を用いて洗浄工程を行う。これにより、ガスホール内部の堆積物まで除去することができ、ガスホールを備えるコンポーネントであっても良好に洗浄することができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0075】
<洗浄用組成物の調製>
(実施例1~3、比較例1~5)
表1に示す各例の洗浄用組成物について、第1液及び第2液をそれぞれ調製した。第1液は、酸化剤((A)成分)、酸性化合物((C)成分)、及び界面活性剤((D)成分)を、表1に示す2倍の濃度となるように水に溶解して作製した。第2液は、発泡剤((B)成分)、及び防食剤((E)成分)を、表1に示す2倍の濃度となるように水に溶解して作製した。等量の第1液及び第2液を混合し、表1に示す各例の洗浄用組成物をそれぞれ調製した。また、洗浄用組成物のpHを測定し、表1に併せて示した。また、下記式により、[C/B]の値を算出し、表1に併せて示した。
[C/B]=((C)成分のモル数×(C)成分の酸の価数)/((B)成分のモル数×(B)成分の塩基の価数)
【0076】
【0077】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量%)である。NDは、測定していないことを意味する。
(A)-1:過酸化水素
(B)-1:炭酸水素アンモニウム
(B)-2:炭酸アンモニウム
(C)-1:クエン酸
(D)-1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
(E)-1:ベンゾトリアゾール
【0078】
[洗浄性の評価]
半導体製造用プロセスチャンバのコンポーネントとして、ガスホールを有するウェハ台座を用いて、各例の洗浄用組成物の洗浄性を評価した。ウェハ台座には、半導体製造プロセスに使用され、ガスホールにプロセス残渣が堆積したものを用いた。
10mLの洗浄用組成物に、ウェハ台座を浸漬し、100℃で、30分間静置した。次いで、洗浄用組成物からウェハ台座を取出し、水でリンスし、乾燥させた。
走査型電子顕微鏡(S4700、株式会社日立ハイテク製)により、ウェハ台座のガスホールを観察し、下記評価基準に基づいて、洗浄性を評価した。その結果を「洗浄性」として、表2に示した。
<評価基準>
〇:ガスホール内にプロセス残渣が確認されない。
△:ガスホール内の内壁にプロセス残渣が確認される。
×:ガスホールがプロセス残渣で詰まっている。
【0079】
【0080】
実施例1~3では、洗浄性が良好であり、洗浄後、ガスホール内にプロセス残渣は確認されなかった。
一方、比較例1、2では、ガスホールのプロセス残渣による詰まりは解消されたが、ガスホールの内壁にプロセス残渣が残存していた。比較例3、4、5、6では、ガスホールのプロセス残渣は除去されず、ガスホールはプロセス残渣で詰まったままであった。