(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】半導体工程用組成物及びそれを用いた半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240607BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240607BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240607BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550C
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2023049101
(22)【出願日】2023-03-24
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0045761
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ホン、スンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ミョン、カンシク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハンテ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ドクス
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨンス
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0073131(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第3597711(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0069537(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0229461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09K 3/14
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨粒子及びディッシング制御添加剤を含み、
前記ディッシング制御添加剤は、第1ディッシング制御添加剤及び第2ディッシング制御添加剤を含み、
前記第1ディッシング制御添加剤は、ベタイン基とサリチル基を有する化合物またはその誘導体を含み、前記第2ディッシング制御添加剤はアゾール系化合物を含み、
前記第1ディッシング制御添加剤は、前記研磨粒子100重量部を基準として0.07重量部以上含まれ、
前記第2ディッシング制御添加剤は、前記研磨粒子100重量部を基準として0.13重量部以下含まれる、半導体工程用組成物。
【請求項2】
下記式1による値が0.4~0.7の範囲である、請求項1に記載の半導体工程用組成物。
[式1]
式1において、C
BSは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第1ディッシング制御添加剤の含量(重量部)であり、C
AZは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第2ディッシング制御添加剤の含量(重量部)である。
【請求項3】
前記第1ディッシング制御添加剤と前記第2ディッシング制御添加剤は1:0~0.95の重量比率で含まれる、請求項1に記載の半導体工程用組成物。
【請求項4】
前記半導体工程用組成物全体を基準として3重量%以上の前記研磨粒子を含む、請求項1に記載の半導体工程用組成物。
【請求項5】
前記半導体工程用組成物は有機酸をさらに含み、
前記有機酸はクエン酸を含む、請求項1に記載の半導体工程用組成物。
【請求項6】
研磨粒子、及びディッシング制御添加剤を含み、
前記ディッシング制御添加剤は、ベタイン基とサリチル基を有する化合物またはその誘導体である第1ディッシング制御添加剤と、アゾール系化合物である第2ディッシング制御添加剤とを含み、
下記式2による値が4~7である、半導体工程用組成物。
[式2]
前記式2において、C
Pは、前記半導体工程用組成物100重量部を基準とする前記研磨粒子の含量(重量部)であり、C
BSは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第1ディッシング制御添加剤の含量(重量部)であり、C
AZは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第2ディッシング制御添加剤の含量(重量部)である。
【請求項7】
前記半導体工程用組成物は、有機酸、及び分子内にハロゲン基を有する高分子化合物をさらに含み、
前記分子内にハロゲン基を有する高分子化合物は、前記有機酸1重量部を基準として0.5重量部以下含まれる、請求項6に記載の半導体工程用組成物。
【請求項8】
絶縁膜に対する研磨率とバリア膜に対する研磨率が1:0.45~0.7の比率である、請求項6に記載の半導体工程用組成物。
【請求項9】
絶縁膜に対する研磨率と伝導性膜に対する研磨率が1:0.85~1.2の比率である、請求項6に記載の半導体工程用組成物。
【請求項10】
前記半導体工程用組成物は、貫通電極を有する基板を研磨し、
前記基板は、表面に絶縁膜、伝導性膜及びバリア膜を含み、
前記伝導性膜に対する研磨率が3800Å/分以上である、請求項6に記載の半導体工程用組成物。
【請求項11】
研磨パッドが装着された定盤、及び研磨対象を収容するキャリアを準備する準備ステップと、
前記定盤及び前記キャリアのうちの少なくとも1つ以上を回転させて、前記研磨パッドの研磨面によって前記研磨対象の表面を研磨する研磨ステップとを含み、
前記研磨対象は、貫通電極を有する基板であり、
前記基板は、表面に絶縁膜、伝導性膜及びバリア膜を含み、
前記研磨は、半導体工程用組成物の存在下で行われ、
前記半導体工程用組成物は、請求項1又は6に記載のものである、半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、半導体の製造及び加工工程に適用可能な組成物に関し、半導体の製造及び加工中の研磨工程に適用できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CMP工程とは、半導体の製造時にウエハの表面を研磨パッド(pad)及びスラリー組成物を用いて平坦化させることである。CMP工程は、研磨パッドとウエハを接触させた後、研磨パッド及びウエハが回転と直線運動を混合したオービタル運動を行いながら、研磨剤が含まれたスラリー組成物を用いて研磨する工程である。
【0003】
CMP工程に用いられるスラリー組成物は、大別して、物理的作用をする研磨粒子と化学的作用をするエッチャント(etchant)などの化合物で構成されている。したがって、スラリー組成物は、物理的作用と化学的作用によって、ウエハ表面に露出された部分を選択的にエッチングして、より一層最適化し、広範囲な平坦化工程を行う。
【0004】
銅配線の研磨において、異なる種類の膜質に対する研磨速度の調節が非常に重要である。
【0005】
銅配線の研磨時の研磨対象は、直接的に銅配線だけでなく、バリア(barrier)膜と絶縁膜(passivation layer)を含む。このとき、銅配線に対する研磨速度と異なる2種類の膜質に対する研磨速度の差によっても研磨性能が変わる。
【0006】
関連する先行技術として、韓国公開特許第10-2006-0059216号、韓国登録特許第10-2261822号などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
具現例の目的は、研磨工程をさらに効率的に進行可能であり、互いに異なる複数の膜質が外部に露出された表面の研磨において、各膜質間の厚さの偏差なしに平坦に研磨された表面を実現できる半導体工程用組成物、半導体素子の製造方法などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、具現例に係る半導体工程用組成物は、研磨粒子及びディッシング制御添加剤を含み、前記ディッシング制御添加剤は、第1ディッシング制御添加剤及び第2ディッシング制御添加剤を含み、前記第1ディッシング制御添加剤は、ベタイン基とサリチル基を有する化合物またはその誘導体を含み、前記第2ディッシング制御添加剤はアゾール系化合物を含む。
【0009】
前記第1ディッシング制御添加剤は、前記研磨粒子100重量部を基準として0.07重量部以上含まれてもよい。
【0010】
前記第2ディッシング制御添加剤は、前記研磨粒子100重量部を基準として0.13重量部以下含まれてもよい。
【0011】
具現例の半導体工程用組成物は、下記式1による値が0.4~0.7の範囲であってもよい。
【0012】
【0013】
式1において、CBSは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第1ディッシング制御添加剤の含量(重量部)であり、CAZは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第2ディッシング制御添加剤の含量(重量部)である。
【0014】
前記第1ディッシング制御添加剤と前記第2ディッシング制御添加剤は1:0~0.95の重量比率で含まれてもよい。
【0015】
具現例の半導体工程用組成物は、前記半導体工程用組成物全体を基準として3重量%以上の前記研磨粒子を含むことができる。
【0016】
前記半導体工程用組成物は有機酸をさらに含むことができる。
【0017】
前記有機酸はクエン酸を含むことができる。
【0018】
具現例の半導体工程用組成物は、研磨粒子、及びディッシング制御添加剤を含み、前記ディッシング制御添加剤は、ベタイン基とサリチル基を有する化合物またはその誘導体である第1ディッシング制御添加剤と;アゾール系化合物である第2ディッシング制御添加剤と;を含み、下記式2による値が4~7であってもよい。
【0019】
【0020】
前記式2において、CPは、前記半導体工程用組成物100重量部を基準とする前記研磨粒子の含量(重量部)であり、CBSは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第1ディッシング制御添加剤の含量(重量部)であり、CAZは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第2ディッシング制御添加剤の含量(重量部)である。
【0021】
具現例の半導体工程用組成物は、有機酸、及び分子内にハロゲン基を有する高分子化合物をさらに含むことができる。前記分子内にハロゲン基を有する高分子化合物は、前記有機酸1重量部を基準として0.5重量部以下で前記半導体工程用組成物に含まれてもよい。
【0022】
具現例の半導体工程用組成物は、絶縁膜に対する研磨率とバリア膜に対する研磨率が1:0.45~0.7の比率であってもよい。
【0023】
具現例の半導体工程用組成物は、絶縁膜に対する研磨率と伝導性膜に対する研磨率が1:0.85~1.2の比率であってもよい。
【0024】
前記半導体工程用組成物は、貫通電極を有する基板を研磨し、前記基板は、表面に絶縁膜、伝導性膜及びバリア膜を含み、前記伝導性膜に対する研磨率が3800Å/分以上であってもよい。
【0025】
上記目的を達成するために、具現例に係る半導体素子の製造方法は、研磨パッドが装着された定盤、及び研磨対象を収容するキャリアを準備する準備ステップと;前記定盤及び前記キャリアのうちの少なくとも1つ以上を回転させて、前記研磨パッドの研磨面によって前記研磨対象の表面を研磨する研磨ステップと;を含む。
【0026】
前記研磨対象は、貫通電極を有する基板であり、前記基板は、表面に絶縁膜、伝導性膜及びバリア膜を含み、前記研磨は、半導体工程用組成物の存在下で行われる。
【0027】
前記半導体工程用組成物は、具現例によるものが適用される。
【発明の効果】
【0028】
具現例の半導体工程用組成物、半導体素子の製造方法などは、研磨工程をさらに効率的に進行可能である。特に貫通電極(Through Via、例示:TSV、Through silicon Via)を有する基板の研磨工程に適用する際に、ディッシング(Dishing)、腐食(Erosion)、突出(Protrusion)などの欠陥を最小化することができる。また、互いに異なる複数の膜質が外部に露出された表面の研磨において、各膜質間の厚さの偏差なしに平坦に研磨された表面を実現することができる。
【0029】
具現例の半導体工程用組成物、半導体素子の製造方法などは、銅、酸化シリコン、及び窒化シリコンのうちの2以上の材料が露出された表面を研磨する際に、研磨率が比較的高いながらも、各材料間の厚さの偏差なしに平坦に研磨された表面を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】半導体工程用組成物によって平坦化される貫通電極を含む基板を断面で説明する概念図である。
【
図2】基板の断面を活用してディッシングを説明する概念図である。
【
図3】基板の断面を活用して金属の腐食を説明する概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、具現例の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0032】
本明細書において、ある構成が他の構成を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、それ以外の他の構成を除くものではなく、他の構成をさらに含むこともできることを意味する。
【0033】
本明細書において、ある構成が他の構成と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「それらの間に他の構成を介在して連結」されている場合も含む。
【0034】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上に直接当接してBが位置するか、またはそれらの間に他の層が位置しながらA上にBが位置することを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0035】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0036】
本明細書において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味する。
【0037】
本明細書において、「第1」、「第2」又は「A」、「B」のような用語は、特に説明がない限り、同一の用語を互いに区別するために使用される。
【0038】
本明細書において、単数の表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数又は複数を含む意味で解釈される。
【0039】
以下、具現例をより詳細に説明する。
【0040】
具現例に係る半導体工程用組成物は、研磨粒子及びディッシング制御添加剤を含む。
【0041】
研磨粒子
研磨粒子は、主に物理的なエッチング作用をし、研磨対象の表面との機械的摩擦を通じて平坦化作用をすることができる。
【0042】
研磨粒子は、無機粒子、有機粒子、または有機無機複合粒子を含むことができる。
【0043】
前記無機粒子は、有機物で表面改質された無機粒子を含むことができる。すなわち、無機粒子は、微量の有機成分を含む場合も包括する概念として理解されなければならない。このとき、微量とは、全研磨粒子100重量部を基準として約0.03重量部以下の含量を意味する。前記有機無機複合粒子は、有機成分が前記無機成分100重量部を基準として50~200重量部含まれたものを含む。
【0044】
前記無機粒子は、例示的に、シリカ(Silica、SiO2)、セリア(Ceria、CeO2)、アルミナ(Alumina、Al2O3)、ジルコニア(Zirconia、ZrO2)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つの金属酸化物粒子を含むことができる。
【0045】
前記研磨粒子はコロイド状態であってもよい。例えば、前記研磨粒子はコロイダル無機粒子を含むことができる。
【0046】
前記研磨粒子は、官能基が露出された表面を有する金属酸化物粒子であってもよい。前記表面は、エポキシ基を末端に含む第1官能基、及び/又はアミン基を末端に含む第2官能基を含むことができる。前記第1官能基と前記第2官能基の比率は1:1~15のモル比であってもよい。前記第1官能基と前記第2官能基の比率は1:1~8のモル比であってもよい。このような比率で前記第1官能基と前記第2官能基を適用する場合、研磨時の欠陥発生の可能性を低減しながらも、同時に研磨組成物の保管安定性をさらに向上させることができる。
【0047】
第1官能基を有するシラン化合物は、例示的に、アミノシラン、ウレイドシランまたはこれらの組み合わせであってもよく、特にアミノシランであってもよい。前記アミノシランは、例示的に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]アミン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エチレンジアミン、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ブチルアミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つであってもよい。前記ウレイドシランは、3-ウレイドトリメトキシシラン、3-ウレイドトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つであってもよい。
【0048】
前記第2官能基を有するシラン化合物はエポキシシランであってもよい。
【0049】
前記エポキシシランは、例示的に、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシプロピル)メチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つである。
【0050】
シラン化合物は、前記金属酸化物粒子100重量部を基準として1~10重量部で適用されてもよい。シラン化合物は、前記金属酸化物粒子100重量部を基準として3~8重量部で適用されてもよい。このような場合、金属酸化物粒子の表面の改質が十分に行われ得、金属酸化物粒子にフィルム層が形成されないので、研磨粒子の研磨速度が目的とするレベルに維持され得る。
【0051】
前記シラン化合物の含量は、第1官能基を有するシラン化合物の含量と第2官能基を有するシラン化合物の含量を合わせた値である。
【0052】
前記研磨粒子の直径(D50)が10nm~120nmであってもよい。前記研磨粒子の直径(D50)が15nm~90nmであってもよい。前記研磨粒子の直径(D50)が20nm~60nmであってもよい。前記研磨粒子の直径が120nmを超える場合には、研磨対象の基板などにスクラッチなどの欠陥を発生させる可能性が大きくなることがある。前記直径が10nm未満である場合には、粒子の分散性が悪くなったり、欠陥の発生がむしろ大きくなったりすることがある。前記直径が20nm~60nmである場合、微細な配線幅を有する基板の半導体工程用組成物に適用する際に、優れた物性を得ることができる。
【0053】
上述した直径は、DLS(dynamic light scattering)方式で粒子の大きさを測定するMalvern社のNano-ZS装備を基準とする。
【0054】
前記研磨粒子は、ゼータ電位が+1mV~+80mVであるものが適用されてもよく、+15mV~+60mVであるものが適用されてもよく、または+20mV~+45mVであるものが適用されてもよい。無機粒子又は有機粒子自体が前記範囲のゼータ電位を有さない場合、表面改質を通じて前記のようなゼータ電位を有するように処理されたものが適用され得る。
【0055】
前記研磨粒子のゼータ電位は、その測定方法が特に制限されないが、例えば、ゼータ電位測定装備(Malvern社、Zeta-sizer Nano ZS)を用いて、測定用セル(cell)に前記研磨粒子を約1mL程度投入した後に測定することができる。前記ゼータ電位の測定値は、純水に研磨粒子が分散した状態で測定した値を基準とする。
【0056】
前記研磨粒子は、コロイダルシリカ粒子の表面をアミノシラン及び/又はエポキシシランで改質して前記範囲のゼータ電位を有するものであってもよい。
【0057】
前記研磨粒子は、前記半導体工程用組成物全体を基準として3重量%超含まれてもよく、または5重量%以上含まれてもよい。前記研磨粒子は、前記半導体工程用組成物全体を基準として12重量%超含まれてもよい。前記研磨粒子は、前記半導体工程用組成物全体を基準として13重量%以上含まれてもよい。前記研磨粒子は、前記半導体工程用組成物全体を基準として14重量%以上含まれてもよい。前記研磨粒子は、前記半導体工程用組成物全体を基準として30重量%以下含まれてもよく、または22重量%以下含まれてもよい。
【0058】
半導体工程用組成物が上述した範囲で研磨粒子を含む場合、さらに効率的な研磨工程の運営が可能である。
【0059】
ディッシング制御添加剤
ディッシング制御添加剤は、ベタイン基とサリチル基を有する化合物またはその誘導体であってもよい。後述するアゾール系ディッシング制御添加剤と区別する目的で、前記ベタイン基とサリチル基を有する化合物またはその誘導体は第1ディッシング制御添加剤と称する。
【0060】
前記第1ディッシング制御添加剤はベタインサリチラート(Betaine Salicylate)を含むことができる。前記第1ディッシング制御添加剤は、ベタインハイドロクロライド(Betaine hydrochloride)、ベタイン過塩素酸(Betaine perchloric acid)、ベタインアルデヒドクロライド(Betaine aldehyde chloride)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つ;及び/又はサリチル酸;を含むことができる。
【0061】
前記第1ディッシング制御添加剤を前記半導体工程用組成物に適用する場合、相対的に速い研磨速度を適用してもディッシングの発生を実質的に抑制することができる。
【0062】
半導体工程用組成物は、前記第1ディッシング制御添加剤を、前記研磨粒子100重量部を基準として0.07重量部以上含むことができる。前記半導体工程用組成物は、前記第1ディッシング制御添加剤を、前記研磨粒子100重量部を基準として0.09重量部以上含んでもよく、0.11重量部以上含んでもよく、または0.133重量部以上含んでもよい。前記半導体工程用組成物は、前記第1ディッシング制御添加剤を、前記研磨粒子100重量部を基準として1.134重量部以下含んでもよく、または0.533重量部以下含んでもよい。このような範囲で第1ディッシング制御添加剤を含有する場合、研磨粒子と共に、銅のような金属材料のディッシングの発生を実質的に抑制することができる。
【0063】
前記第1ディッシング制御添加剤は、水溶液下でイオンに分離されていてもよい。前記第1ディッシング制御添加剤の含量及び/又は含量の比率は、溶媒である水(pure water)を除去する方法で確認することができる。
【0064】
前記ディッシング制御添加剤は、アゾール系化合物である第2ディッシング制御添加剤をさらに含むことができる。前記アゾール系化合物は、前記ベタイン基とサリチル基を有する化合物などと区別する目的で第2ディッシング制御添加剤と称する。
【0065】
前記第2ディッシング制御添加剤は、例示的に、ベンゾトリアゾール(Benzotriazole、BTA)、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(5-Methyl-1H-Benzotriazole、5-MBTA)、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール(3-Amino-1,2,4-Triazole)、5-フェニル-1H-テトラゾール(5-Phenyl-1H-Tetrazole)、3-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール(3-Amino-5-Methyl-4H-1,2,4-Triazole)、5-アミノテトラゾール(5-Aminotetrazole、ATZ)、1,2,4-トリアゾール(1,2,4-Triazole)、トリルトリアゾール(Tolyltriazole)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含むことができる。
【0066】
前記第2ディッシング制御添加剤は、5-アミノテトラゾール(5-Aminotetrazole、ATZ)、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(5-Methyl-1H-Benzotriazole、5-MBTA)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含むことができる。
【0067】
前記第2ディッシング制御添加剤を前記第1ディッシング制御添加剤と共に適用する際に、比較的高い研磨率を適用しても、銅などのディッシングの発生を抑制するのに役立ち得る。
【0068】
前記第2ディッシング制御添加剤は、前記研磨粒子100重量部を基準として0~0.13重量部含まれてもよく、0.03~0.13重量部含まれてもよく、または0.0667~0.1000重量部含まれてもよい。このような範囲で前記第2ディッシング制御添加剤を含む場合、半導体工程用組成物のディッシング発生抑制機能をさらに強化させることができる。
【0069】
具現例の半導体工程用組成物は、前記第1ディッシング制御添加剤と前記第2ディッシング制御添加剤を1:0~0.95の重量比率で含んでもよく、1:0.1~0.85の重量比率で含んでもよく、1:0.2~0.7の重量比率で含んでもよく、または1:0.5~0.75の重量比率で含んでもよい。
【0070】
前記ディッシング制御添加剤は、前記第1ディッシング制御添加剤のみを適用してもよく、または前記第1ディッシング制御添加剤と前記第2ディッシング制御添加剤を共に適用してもよい。前者の場合(1種の適用)は、研磨過程で第1ディッシング制御添加剤が金属表面に結合して相対的に強い腐食防止剤の役割を行うことができ、研磨率及びディッシング制御レベルを意図する適切な範囲内に維持するのに役立つ。後者の場合(2種の適用)は、強い腐食防止剤の役割を行う第1ディッシング制御添加剤と弱い腐食防止剤の役割を行う第2ディッシング制御添加剤を共に適用することで、さらに効率的なディッシング制御効果を得ることができ、より優れた工程効率性及び経済性も得ることができる。
【0071】
その他の添加剤など
具現例の半導体工程用組成物は、添加剤として有機酸を含むことができる。
【0072】
前記有機酸は、主に銅のような金属に対する研磨特性を調節したり、銅イオンなどの金属イオンをトラップ(trap)するキレーター(chelator)として機能したりすることができる。
【0073】
前記有機酸は、分子内にカルボキシル基またはアルコール基を含むものであってもよい。例示的に、有機酸は、カルボン酸類が適用されてもよい。
【0074】
有機酸は、酢酸(acetic acid)、ギ酸(formic acid)、安息香酸(benzoic acid)、ニコチン酸(nicotinic acid)、ピコリン酸(picolinic acid)、アラニン(alanine)、フェニルアラニン(phenylalanine)、バリン(valine)、ロイシン(leucine)、イソロイシン(isoleucine)、アルギニン(arginine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、クエン酸(citric acid)、アジピン酸(adipic acid)、コハク酸(succinic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、グリシン(glycine)、グルタミン酸(glutamic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、フタル酸(phthalic acid)、ヒスチジン(histidine)、トレオニン(threonine)、セリン(serine)、システイン(cysteine)、メチオニン(methionine)、アスパラギン(asparagine)、チロシン(tyrosine)、ジヨードチロシン(diiodotyrosine)、トリプトファン(tryptophan)、プロリン(proline)、オキシプロリン(oxyproline)、エチレンジアミンテトラ酢酸(ethylene-diamine-tetraacetic acid)、ニトリロトリ酢酸(Nitrilotriacetic acid)、イミノジ酢酸(Iminodiacetic acid)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含むことができる。
【0075】
具現例の半導体工程用組成物は、前記有機酸としてクエン酸を含むことができる。クエン酸の場合、銅などの金属を含有する伝導性膜の研磨率を調節する役割も行うことができる。
【0076】
具現例の半導体工程用組成物は、前記研磨粒子100重量部を基準として前記有機酸を0.01重量部~3重量部含むことができる。前記半導体工程用組成物は、前記研磨粒子100重量部を基準として前記有機酸を0.05~2重量部含んでもよく、0.1~1重量部含んでもよく、または0.12~0.8重量部含んでもよい。このような含量の範囲で前記有機酸を含む場合、銅などの金属を含有する伝導性膜、及び前記伝導性膜と並んで配置される異なる材料の膜質が同時に存在する表面で平坦化効果がさらに優れ得る。
【0077】
具現例の半導体工程用組成物は、添加剤として、ハロゲン基を有する高分子化合物をさらに含むことができる。前記ハロゲン基を有する高分子化合物は、前記半導体工程用組成物内で界面活性剤としての役割を果たすことができる。
【0078】
前記ハロゲン基を有する高分子化合物は、フッ素系官能基を有する界面活性剤を含むことができる。
【0079】
前記フッ素系官能基を有する界面活性剤は非イオン性高分子であってもよい。
【0080】
前記フッ素系官能基を有する界面活性剤は、エトキシ基を含む非イオン性高分子であってもよい。
【0081】
前記ハロゲン基を有する高分子化合物は、重量平均分子量が3,000g/mol未満であってもよい。前記ハロゲン基を有する高分子化合物の重量平均分子量が2,000g/mol未満であってもよい。前記ハロゲン基を有する高分子化合物の重量平均分子量が1,000g/mol未満であってもよい。
【0082】
ハロゲン基を有する高分子化合物は、例示的に、BNOCHEM社のBNO-BS-BOH、Chemours社のFS-30、FS-31、FS-34、ET-3015、ET-3150、ET-3050、Capstone FS-3100などが単独でまたは混用されて適用されてもよい。
【0083】
前記半導体工程用組成物が前記ハロゲン基を有する高分子化合物を含む場合、前記研磨粒子が研磨対象の表面に対して過度に吸着することを効果的に防止することができる。また、このような場合、シリコン酸化膜などの平坦化対象の表面を研磨に有利な状態に変化又は維持させることができる。これと共に、前記半導体工程用組成物中の細菌及びカビの繁殖などを防止することができ、長期保管安定性を向上させることができる。
【0084】
具現例の半導体工程用組成物は、前記ハロゲン基を有する高分子化合物が、前記研磨粒子100重量部を基準として0.0001~1重量部含まれてもよく、または0.0003~0.8重量部含まれてもよい。このような範囲で前記ハロゲン基を有する高分子化合物を含む場合、他の機能を適切なレベル以上に維持すると共に、研磨された表面のディフェクト減少効果を得ることができる。
【0085】
具現例の半導体工程用組成物はリン酸系化合物を含むことができる。前記リン酸系化合物は、シリコン窒化膜などのバリア膜質の研磨特性を調節することができる。
【0086】
リン酸系化合物は、例えば、リンモリブデン酸(phosphomolybdic acid)またはその塩、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(nitrilotris(methylenephosphonic acid))またはその塩、三塩化リン(phosphorus trichloride)またはその塩、ピロリン酸(pyrophosphate)またはその塩;及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つであってもよい。前記塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などが適用されてもよい。
【0087】
前記リン酸系化合物は、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(nitrilotris(methylenephosphonic acid))及び/又はピロリン酸カリウム(potassium pyrophosphate)を含むことができる。
【0088】
前記半導体工程用組成物は、前記研磨粒子100重量部を基準として、前記リン酸系化合物を0.01重量部~1.0重量部含んでもよく、0.02重量部~0.7重量部含んでもよく、0.05重量部~0.5重量部含んでもよく、0.07重量部~0.3重量部含んでもよく、または0.100~0.133重量部含んでもよい。このような含量で前記リン酸系化合物を前記半導体工程用組成物に適用する場合、バリア膜質に対する研磨特性を適切に確保することができる。また、バリア膜質と他の膜質との適切な研磨バランスを図ることで、平坦化工程をより一層良好に行うことができる。具体的に、シリコン窒化膜のようなバリア膜質に含まれたナイトライドとリン酸系化合物が結合してバリア膜質を弱化させることで、バリア膜質の研磨速度を向上させるのに寄与することができる。
【0089】
具現例の半導体工程用組成物は、溶液が適切なpH範囲に製造されて維持されるために、前記構成成分以外に、酸成分が追加され得る。前記酸成分は、pH調節剤と共に半導体工程用研磨組成物に適用され得る。
【0090】
前記酸成分は、塩酸(HCl)、リン酸(H3PO4)、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)などを1種または2種以上適用してもよい。前記pH調節剤は、水酸化アンモニウム(NH4OH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)などが1種または2種以上適用されてもよい。
【0091】
前記酸成分及びpH調節剤は、意図するpHに合わせて適切な量で適用することができる。
【0092】
具現例の半導体工程用組成物は、非イオン性高分子をさらに含むことができる。
【0093】
前記非イオン性高分子は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアルキルオキシド、ポリオキシエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体、セルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルセルロース及びカルボキシメチルスルホエチルセルロースからなる群から選択される少なくともいずれか1つであってもよい。
【0094】
非イオン性高分子は、重量平均分子量が25,000g/mol未満であるものが適用されてもよい。前記非イオン性高分子の重量平均分子量が25,000g/mol未満である場合、非イオン性高分子は優れた溶解度及び分散性を有することができる。非イオン性高分子は、重量平均分子量が1,000g/mol以上25,000g/mol未満であるものが適用されてもよい。このような範囲の非イオン性高分子を適用する場合、半導体工程用組成物は、より優れた溶解性、分散安定性などを有することができ、研磨特性にも有利である。
【0095】
具現例の半導体工程用組成物は水分散液であり得る。水分散液とは、主な溶媒として純水(pure water)を適用したものを意味し、一部の液状有機物や一部に有機溶媒を含む場合を含む。
【0096】
半導体工程用組成物
具現例に係る半導体工程用研磨組成物は酸性溶液であってもよい。具体的には、前記半導体工程用研磨組成物のpHは2~5であってもよい。前記半導体工程用研磨組成物のpHは2~4.5であってもよい。このような範囲で酸性環境を維持する場合、金属成分や研磨装置の過度の腐食を防止しながら、研磨速度及び品質を一定レベル以上に維持することができる。
【0097】
具現例に係る半導体工程用組成物は、下記式1による値を有することができる。
【0098】
【0099】
式1において、CBSは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第1ディッシング制御添加剤の含量(重量部)であり、CAZは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第2ディッシング制御添加剤の含量(重量部)である。
【0100】
前記半導体工程用組成物の前記式1による値は0.4~0.7であり得る。前記半導体工程用組成物の前記式1による値は0.4~0.6であってもよく、または0.4167~0.5833であってもよい。このような範囲で前記式1による値を満たす場合、前記半導体工程用組成物の銅などの伝導性膜の研磨率などを適切なレベル以上に維持しながら、伝導性膜のディッシングの発生を実質的に抑制することができる。
【0101】
具現例に係る半導体工程用組成物は、研磨粒子及びディッシング制御添加剤を含み、前記ディッシング制御添加剤は、ベタイン基とサリチル基を有する化合物またはその誘導体である第1ディッシング制御添加剤;及びアゾール系化合物である第2ディッシング制御添加剤;を含み、前記半導体工程用組成物は、下記式2による値が4~7であってもよい。
【0102】
【0103】
前記式2において、CPは、前記半導体工程用組成物100重量部を基準とする前記研磨粒子の含量(重量部)であり、CBSは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第1ディッシング制御添加剤の含量(重量部)であり、CAZは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第2ディッシング制御添加剤の含量(重量部)である。
【0104】
前記半導体工程用組成物は、前記式2による値が4以上であってもよく、4.167以上であってもよく、または4.5以上であってもよい。前記式2による値は7以下であってもよく、6.5以下であってもよく、6以下であってもよく、または5.833以下であってもよい。
【0105】
式2の値が前記範囲を満たすとき、前記半導体工程用組成物のディッシング制御効果がさらに優れる。
【0106】
前記半導体工程用組成物は、有機酸1重量部を基準として、前記ハロゲン基を有する高分子化合物を0.5重量部以下で含んでもよく、0.3重量部以下で含んでもよく、または0.2重量部以下で含んでもよい。このような場合、有機物粒子性ディフェクトの発生を減少させることができる。前記半導体工程用組成物は、有機酸1重量部を基準として、前記ハロゲン基を有する高分子化合物を0重量部超含んでもよく、または0.01重量部以上含んでもよい。
【0107】
このような含量の比率で適用する場合、研磨過程で発生する粒子の表面への吸着によるディフェクトの発生を抑制しながら、高分子化合物が他の成分と相互作用して付着性異物を生成することを実質的に抑制することができる。
【0108】
具現例の半導体工程用組成物は、優れた保管安定性を有する。
【0109】
具現例の半導体工程用組成物は、前記研磨粒子のD50を基準として粒子の大きさが10%以上増加する時点が12ヶ月以上であり得る。このような効果は、前記半導体工程用組成物が実質的に長期間保管された後にも安定的に粒子が良好に分散していることができ、前記組成物がより長期間保管可能であるということを意味する。
【0110】
一部の半導体工程用研磨組成物は、粒子の分散安定性が不十分であるため、使用直前に前記酸成分を混合して適用することが必要な場合もある。具現例の半導体工程用組成物は、酸成分が全て含まれた状態での粒子の分散安定性も非常に優れ、これは、使用の利便性がより一層向上したことを示す。
【0111】
具現例の半導体工程用組成物は、貫通電極(Through Via)が含まれた半導体ウエハなどの基板の研磨工程に適用するのに有利である。前記貫通電極は、シリコン貫通電極(TSV、Through silicon Via)を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0112】
図1は、半導体工程用組成物によって平坦化される基板(貫通電極を含むもの)を断面で説明する概念図であり、
図2は、基板の断面を活用してディッシングを説明する概念図であり、
図3は、基板の断面を活用して金属の腐食を説明する概念図である。
図1乃至
図3を参考にして、より具体的に説明する。
【0113】
貫通電極が含まれる基板100は、絶縁膜11としての役割をするSiO2などの絶縁膜材料、金属イオンの移動を防ぐバリア膜13としての役割をするSiNなどのバリア膜材料、そして、電気伝導性を有して電気的信号を伝達する伝導性膜15として適用される銅などの伝導性膜材料を含む。
【0114】
基板の平坦化過程は、互いに異なる特性を有する2種類、または3種類の膜質が同時に露出される表面を平坦化する。互いに異なる膜質は互いに異なる特性(強度、酸化の程度など)を有するため、これらを同時に速く平坦化することが容易ではない。
【0115】
半導体基板は、導線が細線(fine line)化され、貫通電極の活用が頻繁になるなど、細密化、複雑化されている。これは、工程の効率性と共に、さらに厳格な平坦化工程を要求する。貫通電極は、細線と比較してさらに広い露出面積を有し、金属酸化物や金属窒化物よりも脆い金属で構成される特性があるため、ディッシング(
図2参照)や金属の腐食(
図3参照)などの欠陥がさらに発生しやすい。
【0116】
貫通電極部分に過度のディッシングなどが発生すると、上下方向の不完全な電気的接続が発生し、これは、十分な電気信号の伝達が難しくなってしまい、半導体に致命的な欠陥をもたらし得る。
【0117】
具現例の半導体工程用組成物は、効率的な研磨工程を適用しながらも、銅などの伝導性膜にディッシングの発生を実質的に抑制する。
【0118】
前記半導体工程用組成物は、5μmの直径の円形の開口部を有する貫通電極(電気めっき銅で充填されたもの)を基準として、ディッシングを-12nm以上に制御することができ、-10nm以上に制御することができ、または-8nm以上に制御することができる。前記ディッシングは、+5nm以下に制御され得、または0nm以下に制御され得る。このとき、ディッシングの程度は、理想的な平坦化面を基準線(zero line)とし、これよりも下に伝導性膜の表面が存在する場合は-、基準線よりも高く伝導性膜の表面が存在する場合は+と評価され、ディッシングの程度が+と評価される場合は、実質的に突出した場合を意味する。
【0119】
ディッシングの評価は、基板(直径が5μmである円形の電気めっき銅が充填された貫通ビアを有するもの)を、後述する条件で60秒間研磨した後、基板の3箇所以上でサンプリングしたビア開口部の表面プロファイルをAFM(atomic force microscope;原子間力顕微鏡)装備で測定し、その測定値の平均値を基準とする。
【0120】
AFM装備による表面プロファイルの測定は、Park Systems社のXE-150装備を活用して、製造社のマニュアルに従って基準線からの平均高さを測定する。
【0121】
研磨条件)スラリーの流速:300ml/min、キャリア速度:120rpm、プラテン速度:117rpm、加圧:3.0psi down pressure、研磨装備:CTS社の300mm CMP装備、SKCソルミックス社のHD-500モデルの研磨パッド適用。
【0122】
具現例の半導体工程用組成物は、ディッシングの程度を適切なレベル以内に制御しながら、同時に効率的な研磨工程の進行が可能である。
【0123】
前記半導体工程用組成物は、互いに異なる膜質を有する基板表面を研磨する際に、各膜質の研磨速度の比率が下記の範囲を有するようにすることができる。
【0124】
前記半導体工程用組成物は、絶縁膜の研磨率と伝導性膜の研磨率の比率が1:0.9~1.5であってもよく、1:0.95~1.2であってもよく、または1:0.99~1.04であってもよい。このような比率を有する場合、効率的な基板の平坦化の進行に有利である。
【0125】
前記半導体工程用組成物は、バリア膜の研磨率と伝導性膜の研磨率の比率が1:1.5~3.0であってもよく、1:1.7~2.2であってもよく、または1:1.73~1.84であってもよい。このような比率を有する場合、効率的な基板の平坦化の進行に有利である。
【0126】
前記半導体工程用組成物の伝導性膜の研磨率は3800Å/min~4600Å/minであってもよく、4000Å/min~約4500Å/minであってもよく、または約4100Å/min~約4400Å/minであってもよい。
【0127】
前記半導体工程用組成物のバリア膜の研磨率は2000Å/min~2700Å/minであってもよく、2100Å/min~約2600Å/minであってもよく、または約2200Å/min~約2500Å/minであってもよい。
【0128】
前記半導体工程用組成物の絶縁膜の研磨率は3600Å/min~4400Å/minであってもよく、3700Å/min~約4300Å/minであってもよく、または約3800Å/min~約4200Å/minであってもよい。
【0129】
これは、非常に高いレベルの研磨率であって、具現例の半導体工程用組成物を適用すると、ディッシングの発生などを実質的に抑制しながら、互いに異なる3種類の膜質の基板表面を効率的にエッチングすることができる。
【0130】
前記研磨率または研磨率の比率は、上述した研磨条件で測定したものを基準とする。
【0131】
具現例の半導体工程用組成物は、絶縁膜の欠陥数を一定レベル以下に制御することができる。前記半導体工程用組成物は、直径300mmであるシリコン酸化膜ウエハの一面を基準として欠陥が400個以下であってもよく、300個以下であってもよく、100個以下であってもよく、または64個以下であってもよい。前記欠陥は30個以上であってもよく、または40個以上であってもよい。前記欠陥の個数は、上述した研磨条件を適用し、後述するクリーニング工程を経た後、AIT-XP+装備を通じて研磨されたウエハの表面で測定された総欠陥数をいう。
【0132】
上述した特徴を有する半導体工程用組成物は、効率的な研磨工程の進行が可能でありながらも、伝導性膜のディッシングの発生を抑制することで、貫通電極などが形成された基板の研磨などへの適用に有利である。
【0133】
具現例の半導体工程用組成物の製造は、研磨粒子と各構成成分を純水のような溶媒に混合する方式で適用され得、粒子の分散が良好に行われるように通常の方式で撹拌する過程を含むことができる。研磨粒子を表面改質されたものとして適用する場合、まず、研磨粒子の表面改質を行った後、その粒子を分散させる方法で適用可能である。
【0134】
具現例の半導体工程用組成物の適用は、基板研磨装置に被研磨物と研磨パッドを装着した後、前記半導体工程用組成物を注入しながら加圧及び回転して行われ得、前記で説明する特徴は、前記研磨条件で測定したものを基準として説明する。但し、前記半導体工程用組成物の活用が前記研磨条件に限定されるものではない。
【0135】
半導体素子の製造方法
具現例に係る半導体素子の製造方法は、研磨パッドが装着された定盤、及び研磨対象を収容するキャリアを準備する準備ステップと;前記定盤及び前記キャリアのうちの少なくとも1つ以上を回転させて、前記研磨パッドの研磨面によって前記研磨対象の表面を研磨する研磨ステップと;を含む。
【0136】
前記研磨対象は、貫通電極を有する基板であり得、前記基板は、表面に絶縁膜、伝導性膜及びバリア膜を含む。
【0137】
前記研磨は、半導体工程用組成物の存在下で行われ、前記半導体工程用組成物は、上述した具現例による半導体工程用組成物である。
【0138】
半導体工程用組成物、これを適用して得られる効果などの具体的な説明は、上記の説明と重複するので、その記載を省略する。
【0139】
以下、具体的な実施例を通じてより具体的に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0140】
1.半導体工程用組成物の製造
研磨粒子、ディッシング制御添加剤、有機酸などを含み、pHが2以上4.5未満である半導体工程用組成物を製造した。
【0141】
研磨粒子としてコロイダルシリカを適用し、平均粒度(D50)が約42nmであるものを適用して、アミン系シランである3-アミノプロピルトリエトキシシランで表面改質されたコロイダルシリカを研磨粒子として適用した。アミン系シランは、コロイダルシリカ100重量部を基準として約2~5重量部適用し、純水(pure water)で測定したゼータ電位が+19~+45mVの範囲に属した。表面改質された研磨粒子は、半導体工程用組成物100重量部を基準として約15重量部で適用した。
【0142】
ディッシング制御添加剤として、ベタインサリチラート(第1ディッシング制御添加剤)及び5-アミノテトラゾール(第2ディッシング制御添加剤)をそれぞれ下記表1に提示された含量で適用した。キレーターの役割をする有機酸として、クエン酸を下記表1に提示された含量で適用し、ハロゲン基を含む高分子としてcapstone FS-3100を、そして、リン酸系化合物としてニトリロトリス(メチレンホスホン酸)を適用した。pH調節剤として、酢酸(acetic acid)及びKOH溶液を使用した。溶媒としては超純水を適用した。超純水は、半導体工程用組成物全体が100重量部になるように残量の分だけ適用した。前記半導体工程用組成物を20℃~25℃の常温条件下で200rpmで撹拌しながら、水素イオン濃度(pH)測定装置(Horiba社、Laqua)を用いてpHを測定し、上述した範囲であることを確認した。
【0143】
【表1】
#括弧内の数字は、研磨粒子100重量部を基準とする各含量を示す。
*比率は、第1ディッシング制御添加剤の含量を基準とする第2ディッシング添加剤の含量の比率である。
**式1の値は、下記式1による。
【0144】
【0145】
式1において、CBSは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第1ディッシング制御添加剤の含量(重量部)であり、CAZは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第2ディッシング制御添加剤の含量(重量部)である。
【0146】
**式2の値は、下記式2による。
【0147】
【0148】
前記式2において、CPは、前記半導体工程用組成物100重量部を基準とする前記研磨粒子の含量(重量部)であり、CBSは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第1ディッシング制御添加剤の含量(重量部)であり、CAZは、前記研磨粒子100重量部を基準とする前記第2ディッシング制御添加剤の含量(重量部)である。
【0149】
2.半導体工程用組成物の物性評価
(1)研磨評価
厚さが約15,000Åである銅ウエハ、厚さが約20,000Åであるシリコン酸化膜ウエハ、そして、厚さが約15,000Åであるシリコン窒化膜ウエハを活用して、それぞれ伝導性膜の研磨率、絶縁膜の研磨率、そして、バリア膜の研磨率に対する研磨評価を行った。
【0150】
各ウエハは、3.0psi、キャリア速度120rpm、プラテン速度117rpm、スラリーの流速300ml/minの条件で、CMP装置(CTS社の300mm CMP装備)にSKCソルミックス社のHD-500モデルの研磨パッドを装着した後、通常の方式により研磨を行った。
【0151】
前記研磨工程が行われた後の各ウエハの厚さを測定し、これから当該スラリー組成物の銅膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜に対する研磨率(研磨速度;Å/min)をそれぞれ算出した。
【0152】
(2)絶縁膜質の欠陥(defect)評価
前記の研磨評価と同じ条件で研磨を行った後、シリコン酸化膜のクリーニング工程を行った。クリーニング工程は、モノエタノールアミン(monoethanol amine)及びTMAH(Tetramethylammonium hydroxide)を使用して、ブラシの回転速度を500rpmとして適用し、2000cc/minの流量で60秒間、クリーニング溶液噴射条件でクリーニング工程を行った。クリーニング工程が完了したシリコン酸化膜ウエハは、ウエハFOUPに密閉された状態で移動されて、AIT-XP+装備を通じて総欠陥数(total defect)を測定した。
【0153】
(3)伝導性膜のディッシングの測定
BMI TECHから提供された300mmの直径のウエハを用いてディッシングの評価を行った。前記ウエハは、絶縁膜としてシリコン酸化膜が、バリア膜としてシリコン窒化膜が、そして、伝導性膜として電気めっきされた銅が適用され、貫通電極の円形の開口部は直径が5μmであった。
【0154】
研磨条件は、前記の(1)と同一に適用するが、研磨時間(polishing time)は50秒に変更して適用された。
【0155】
研磨が完了した評価用ウエハは、ウエハの中央(center)/中間部分(middle)/ウエハの縁(edge)の各部分を4×4cmのサイズにサンプリングして、Park system社のAFM装備を用いてビア開口部部分の表面プロファイルを測定し、貫通電極部分の高さの平均値を計算して下記の表に示した。
【0156】
【表2】
*伝導性膜のディッシングは、開口部の直径が5μmである電気めっき銅ビアに対する結果を意味し、-の場合、基準線の下に伝導性膜の表面が位置してディッシングが発生したことを、+の場合、基準線の上に伝導性膜の表面が位置して実質的に突出が発生したことを意味する。
【0157】
前記表1及び表2を参照すると、実施例1~3の半導体工程用組成物を適用して、ディッシングの発生を約-10nm以内に制御しながら、伝導性膜の研磨率を約3900Å/min以上にして研磨工程を行うことができる。特に、伝導性膜とバリア膜、そして絶縁膜に対する研磨率が優れるので、効率的な表面研磨が可能であり、特に貫通電極を有する基板に適用するのに優れるものと評価される。
【0158】
3.半導体工程用組成物の物性評価
実施例1と同一に組成を構成するが、ハロゲン基を含む高分子の有無に応じて前記と同じ方法で物性を比較した。
【0159】
【0160】
前記表3を参照すると、ハロゲン基を含む高分子を含有するか否かによって研磨率などが大きな差を示さず、ディッシングの程度が相対的に多少上昇したが、適正レベル内でコントロール可能であった。但し、ハロゲン基を含む高分子の含有の有無が絶縁膜の欠陥評価の結果に大きな差をもたらし、ハロゲン基を含む高分子をさらに含有すると、絶縁膜の欠陥減少の効果が非常に優れるという点が確認できた。
【0161】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0162】
100 基板
11 絶縁膜
13 バリア膜
15 伝導性膜
20 ウエハ
D ディッシング
Zero line 基準線