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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】固体触媒およびブタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/50 20060101AFI20240610BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20240610BHJP
   C07C 1/20 20060101ALI20240610BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20240610BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
B01J23/50 Z
B01J23/66 Z
C07C1/20
C07C11/167
C07B61/00 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020100110
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021194553
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】新家 雄
(72)【発明者】
【氏名】日座 操
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 朋久
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 忠博
(72)【発明者】
【氏名】崔 隆基
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008248(JP,A)
【文献】特開2020-000998(JP,A)
【文献】特表2013-535465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0222813(US,A1)
【文献】DAGLE et al.,Effect of the SiO2 support on the catalytic performance of Ag/ZrO2/SiO2 catalysts for the single-bed production of butadiene from ethanol,Applied Catalysis B: Environmental,2018年,Vol.236,p.576-587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/50
B01J 23/66
C07C 1/20
C07C 11/167
C07B 61/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属(A)と金属酸化物(B)とを担体に担持してなり、ブタジエンの製造に用いる固体触媒であって、
前記金属(A)が、第11族および第13族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、
前記金属酸化物(B)が、スカンジウム、イットリウムおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物である、固体触媒。
【請求項2】
前記金属(A)が、第11族に属する金属であり、
前記金属酸化物(B)が、スカンジウム、イットリウムおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物である、請求項1に記載の固体触媒。
【請求項3】
前記金属(A)が、銀であり、
前記金属酸化物(B)が、酸化ハフニウムおよび酸化スカンジウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の固体触媒。
【請求項4】
前記担体が、シリカである、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体触媒。
【請求項5】
前記金属(A)の含有量が、前記担体の質量に対して0.1~50質量%であり、
前記金属酸化物(B)の含有量が、前記担体の質量に対して0.1~50質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体触媒。
【請求項6】
触媒の存在下で、エタノールまたはエタノールとアセトアルデヒドとの混合物からブタジエンを得るブタジエンの製造方法であって、
前記触媒が、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体触媒である、ブタジエンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体触媒およびそれを用いたブタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1,3-ブタジエン(以下、「ブタジエン」とも略す。)は、モノマーとしてブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴムの原料として使用されており、主として、ナフサをエチレンクラッカー(ナフサクラッカー)により熱分解してエチレンやプロピレンを生成させる際の副生成物として得られている。
しかしながら、近年の原料のライトフィード化により、ブタジエンの生成量が減少してきている。
そこで、石化代替原料として、バイオマス(トウモロコシやサトウキビ)を発酵させ、ブタンジオール、ブタノール、ブテンまたはエタノールを経由してブタジエンを製造するプロセスが研究されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「第12族から選択される金属(A)と、第4族から選択される金属(B)とを担体に担持してなる固体触媒であって、前記担体が、平均細孔径が3nm超10nm以下であり、かつ、細孔径分布における半値幅が6nm以下のシリカである、固体触媒。」が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-001001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された固体触媒について検討したところ、ブタジエンの収率向上に改善の余地があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、ブタジエンの収率を向上させることができる固体触媒およびそれを用いたブタジエンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、第11族および第13族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属と、第3族および第4族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物とを担持させた固体触媒を用いることにより、ブタジエンの収率が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
[1] 金属(A)と金属酸化物(B)とを担体に担持してなる固体触媒であって、
上記金属(A)が、第11族および第13族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、
上記金属酸化物(B)が、第3族、第4族および第5族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物である、固体触媒。
[2] 上記金属(A)が、第11族に属する金属であり、
上記金属酸化物(B)が、第3族および第4族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物である、[1]に記載の固体触媒。
[3] 上記金属(A)が、銀であり、
上記金属酸化物(B)が、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウおよび酸化スカンジウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の固体触媒。
[4] 上記担体が、シリカである、[1]~[3]のいずれかに記載の体触媒。
[5] 上記金属(A)の含有量が、上記担体の質量に対して0.1~50質量%であり、
上記金属酸化物(B)の含有量が、上記担体の質量に対して0.1~50質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の固体触媒。
[6] 触媒の存在下で、エタノールまたはエタノールとアセトアルデヒドとの混合物からブタジエンを得るブタジエンの製造方法であって、
上記触媒が、[1]~[5]のいずれかに記載の固体触媒である、ブタジエンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブタジエンの収率を向上させることができる固体触媒およびそれを用いたブタジエンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本願明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「ブタジエン」とは、「1,3-ブタジエン」のことを示す。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
【0011】
[固体触媒]
本発明の固体触媒は、ブタジエンの製造に用いる固体触媒であって、金属(A)と金属酸化物(B)とを担体に担持してなる固体触媒である。
また、本発明の固体触媒は、上記金属(A)が、第11族および第13族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、上記金属酸化物(B)が、第3族、第4族および第5族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物である。
なお、本発明においては、金属(A)のうち、第11族に属する金属については、担体上に金属として存在するものであるが、第13族に属する金属については、担体上に、金属として存在していてもよいし、金属酸化物等の化合物として存在していてもよい。
【0012】
本発明においては、上述した通り、上記金属(A)と上記金属酸化物(B)とを担体に担持させた固体触媒を用いることにより、ブタジエンの収率が向上する。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、後述する比較例1および2について、それぞれの反応温度の条件が同じである実施例1および2との対比から分かるように、第12族に属する金属の酸化物と、第4族に属する金属の酸化物とを担体に担持させた場合には、原料の転化率が低いため、ブタジエンの収率が低くなると考えられる。
そのため、本発明においては、第11族および第13族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)が担体上に担持されていることにより、原料が効率よく変換され、ブタジエンの選択率が向上したため、ブタジエンの収率が向上したと考えられる。
【0013】
〔担体〕
本発明の固体触媒に用いる担体は、後述する金属(A)および金属酸化物(B)を担持できれば特に限定されず、その具体例としては、シリカ、アルミナ、マグネシアなどが挙げられる。
【0014】
本発明においては、エタノールの転化率およびブタジエンの選択率がより高くなり、ブタジエンの収率がより向上する理由から、担体が、シリカであることが好ましい。
【0015】
また、本発明においては、ブタジエンの選択率が更に高くなり、ブタジエンの収率が更に向上する理由から、担体として、平均細孔径が3~15nmの範囲にあるシリカを用いることが好ましく、平均細孔径が3nm超10nm以下の範囲にあるシリカを用いることがより好ましい。
ここで、「平均細孔径」とは、窒素の吸着等温線からBJH法あるいはDFT法で求めた細孔径分布曲線のピーク値を示す細孔径をいう。
【0016】
〔金属(A)〕
本発明の固体触媒が有する金属(A)は、第11族および第13族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属である。
第11族に属する金属としては、具体的には、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、Au(金)などが挙げられる。
また、第13族に属する金属としては、具体的には、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)が挙げられる。
【0017】
ここで、第11族に属する金属の原料は特に限定されないが、例えば、第11族から選択される金属の硝酸塩、および、酢酸塩などが挙げられる。具体的には、Ag(NO)、CHCOOAgなどが挙げられる。
また、第13族に属する金属の原料は特に限定されないが、例えば、第13族から選択される金属の硝酸塩、オキシ硝酸塩、酢酸塩、オキシ酢酸塩、および、これらの水和物などが挙げられる。具体的には、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸ガリウム水和物、硝酸インジウム三水和物などが挙げられる。
【0018】
本発明においては、エタノールの転化率およびブタジエンの選択率がより高くなり、ブタジエンの収率がより向上する理由から、上記金属(A)が、第11族に属する金属であることが好ましく、銀であることがより好ましい。
【0019】
また、本発明においては、上記金属(A)の含有量は、上述した担体の質量に対して、0.1~50質量%であることが好ましく、0.1~40質量%であることがより好ましく、0.2~30質量%であることが更に好ましい。
ここで、金属(A)、後述する金属酸化物(B)の「含有量」は、例えば、ICPまたは蛍光X線等により測定することができる。
【0020】
〔金属酸化物(B)〕
本発明の固体触媒が有する金属酸化物(B)は、第3族、第4族および第5族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物である。
第3族に属する金属としては、具体的には、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)などが挙げられる。
また、第4族に属する金属としては、具体的には、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられる。
また、第5族に属する金属としては、具体的には、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などが挙げられる。
【0021】
ここで、第3族に属する金属の原料は特に限定されないが、例えば、第3族から選択される金属の硝酸塩、オキシ硝酸塩、酢酸塩、オキシ酢酸塩、および、これらの水和物などが挙げられる。具体的には、Sc(NO、硝酸スカンジウム五水和物などが挙げられる。
また、第4族に属する金属の原料は特に限定されないが、例えば、第4族から選択される金属の硝酸塩、塩酸塩、オキシ硝酸塩、酢酸塩、オキシ酢酸塩、および、これらの水和物などが挙げられる。具体的には、ZrO(NO、ZrO(NO・2HO、ZrO(OCOCH、HfClなどが挙げられる。
また、第5族に属する金属の原料は特に限定されないが、例えば、第5族から選択される金属の硫酸塩、オキシ硫酸塩、酢酸塩、オキシ酢酸塩、塩酸塩、および、これらの水和物などが挙げられる。具体的には、VOSO、VOSO・nHO、(CHCOO)Ta、VCl、NbCl、TaClなどが挙げられる。
【0022】
本発明においては、エタノールの転化率およびブタジエンの選択率がより高くなり、ブタジエンの収率がより向上する理由から、上記金属酸化物(B)が、第3族および第4族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物であることが好ましく、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウおよび酸化スカンジウムからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0023】
また、本発明においては、上記金属酸化物(B)の含有量は、上述した担体の質量に対して、0.1~50質量%であることが好ましく、0.1~40質量%であることがより好ましく、0.2~30質量%であることが更に好ましい。
【0024】
〔固体触媒の調製方法〕
本発明の固体触媒の調製方法は特に限定されず、例えば、含浸法、ゾルゲル法等の公知の方法を採用することができる。これらの中でも、得られる固体触媒の活性および選択性が高く、また、簡便であることから、含浸法が好ましい。
含浸方法としては、例えば、噴霧法、コーティング法、ポアフィリング法、選択吸着法などの公知の手法を採用することができる。具体的には、上述した金属(A)および金属酸化物(B)の原料となる金属の硝酸塩、酢酸塩等を水に溶解させ、得られた水溶液を上述した担体に含浸させ、その後、担体を乾燥させる方法が挙げられる。なお、乾燥方法や乾燥時間は特に限定されないが、60~80℃で減圧乾燥することが好ましい。また、乾燥後に、200~600℃の温度で焼成することが好ましい。
また、上述した調製方法以外にも、例えば、上述した金属(A)および金属酸化物(B)の原料となる金属の硝酸塩、酢酸塩等を混合した後に、加熱、濃縮、水熱合成などの処理を施し、乾燥・焼成する方法も挙げられる。
また、調製した触媒は、使用前に、必要に応じて、成型、整粒などを施してもよい。
【0025】
[ブタジエンの製造方法]
本発明のブタジエンの製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも略す。)は、上述した本発明の固体触媒の存在下で、エタノールまたはエタノールとアセトアルデヒドとの混合物からブタジエンを得るブタジエンの製造方法である。
【0026】
〔原料〕
本発明の製造方法では、目的生成物であるブタジエンの原料として、エタノール、または、エタノールとアセトアルデヒドとの混合物を使用する。
また、原料は、適宜希釈して、固体触媒に接触させてもよい。
また、原料を希釈する媒体(以下、「希釈媒体」ともいう。)としては、具体的には、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。
また、原料は、エタノール、アセトアルデヒド、希釈媒体以外の不純物等を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の製造方法においては、原料として、エタノールとアセトアルデヒドとの混合物を使用する場合、エタノールとアセトアルデヒドの質量比(エタノール:アセトアルデヒド)は、特に限定されるものではないが、例えば、19:1~1:9の範囲が好ましく、16:4~2:8の範囲が更に好ましい。
【0028】
〔反応条件等〕
本発明の製造方法は、公知の反応形式で実施でき、流通式でも、バッチ式でも、その他でもよいが、生産性の観点から、流通式で実施することが好ましい。
また、本発明の製造方法は、気相で行っても、液相で行ってもよいが、高い反応温度を適用でき、原料の転化率が向上する観点から、気相条件下で行うことが好ましい。
また、所望により、反応開始前に、触媒を還元してもよく、例えば、水素気流中、200~500℃で、触媒を還元した後、原料と接触させて、ブタジエンの生成工程を実施してもよい。
【0029】
原料を固体触媒に接触させる方法としては、例えば、懸濁床方式、流動床方式、固定床方式等を挙げることができる。また、本発明は、気相法、液相法のいずれであってもよいが、気相法を用いることが好ましい。
【0030】
気相で反応を行う場合、原料ガス(例えば、エタノールガス、好ましくはエタノールガスとアセトアルデヒドガスの混合物)は、希釈することなく反応器に供給してもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、水蒸気、などの不活性ガスにより適宜希釈して反応器に供給してもよい。
【0031】
反応温度としては、260~500℃であることが好ましく、300~480℃であることがより好ましい。
反応圧力は、常圧から高圧までの広い範囲で適宜設定できるが、製造効率や装置構成などの観点から、1.0MPa以下に設定することが好ましい。
【0032】
原料と固体触媒との接触時間は、原料の供給速度を調整することによりコントロールすることができ、単位触媒あたりの重量空間速度(WHSV)は1.0~40g-原料/g-cat・hであることが好ましく、2.0~20g-原料/g-cat・hであることがより好ましい。
【0033】
反応終了後、反応生成物は、例えば、蒸留、抽出、膜分離等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、軽質ガス、C4留分、重質分、水、エタノール、アセトアルデヒド等に分離精製することができる。
【実施例
【0034】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0035】
〔実施例1〕
AgNO(Ag塩)0.211gを水5mlに溶解させて水溶液A1を調製した。
別途、HfCl(Hf塩)0.204gを水5mlに溶解させて水溶液B1を調製した。
調製した水溶液A1を、メソポーラスシリカ(富士シリシア株式会社製、商品名:CARiACT G-6、平均細孔径:6nm)に含浸させた後、110℃で4時間乾燥し、更に500℃で4時間焼成した。
焼成後サンプルに調製した水溶液B1を含浸させた後、110℃で4時間乾燥し、更に500℃で4時間焼成することにより、AgとHfOがシリカに担持されてなる固体触媒1を調製した。
下記表1に、担持させる金属の種類および担持量を示す。
【0036】
調製した固体触媒1の0.3gを固定床流通式反応器に充填し、Nガスを5~15ml/minで流し、更に、エタノール(EtOH)を0.03ml/minの割合で、Nガス流に添加し、反応温度425℃、大気圧下において、重量空間速度(WHSV)5.0g-原料/g-cat・hの条件で流通させた。下記表1に、原料、反応温度および重量空間速度(WHSV)を示す。
反応を2時間行い、得られた生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所社製)を用いて分析した。
また、以下の式に従って、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
原料の転化率=(原料投入量-未反応原料の留出量)/(原料投入量)×100(%)
BD選択率=(ブタジエンの生成量)/(原料投入量-未反応原料の留出量)×100(C-mol%)
BD収率=(原料の転化率)×(BD選択率)÷100(C-mol%)
BD生産性=(1時間あたりのブタジエンの生成質量)/(使用した触媒質量)(g-BD/g-cat・h)
【0037】
〔実施例2〕
反応温度を下記表1に示す温度(400℃)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0038】
〔実施例3〕
反応温度を下記表1に示す温度(375℃)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0039】
〔実施例4〕
水溶液B1に代えて、ZrO(NO・2HO(Zr塩)0.147gを水5mlに溶解させた水溶液B4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、AgとZrOがシリカに担持されてなる固体触媒4を調製した。
また、調製した固体触媒4について、実施例1と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0040】
〔実施例5〕
反応温度を下記表1に示す温度(400℃)に変更した以外は、実施例4と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0041】
〔実施例6〕
反応温度を下記表1に示す温度(375℃)に変更した以外は、実施例4と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0042】
〔実施例7〕
水溶液B1に代えて、Sc(NO(Sc原料)0.108gを水5mlに溶解させた水溶液B7を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、AgとScがシリカに担持されてなる固体触媒7を調製した。
また、調製した固体触媒7について、実施例2と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0043】
〔比較例1〕
Zn(NO・6HO(Zn塩)0.037g、および、ZrO(NO・2HO(Zr塩)0.022gを水1mlに溶解させて水溶液を調製した。
調製した水溶液を、シリカ(富士シリシア株式会社製、商品名:CARiACT G-6、平均細孔径:6nm、半値幅:1.6nm)に含浸させた後、110℃で4時間乾燥し、更に500℃で4時間焼成することにより、ZnとZrOがシリカに担持されてなる固体触媒C1を調製した。
また、調製した固体触媒C1について、実施例1と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0044】
〔比較例2〕
反応温度を下記表1に示す温度(400℃)に変更した以外は、比較例1と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0045】
〔比較例3〕
Zn(NO・6HO(Zn塩)0.183g、および、Mg(NO・6HO(Mg塩)0.125gを水5mlに溶解させて水溶液を調製した。
調製した水溶液を、メソポーラスシリカ(富士シリシア株式会社製、商品名:CARiACT G-6、平均細孔径:6nm、半値幅:1.6nm)に含浸させた後、110℃で4時間乾燥し、更に500℃で4時間焼成することにより、ZnOとMgOがシリカに担持されてなる固体触媒C3を調製した。
また、調製した固体触媒C3について、実施例1と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0046】
〔比較例4〕
反応温度を下記表1に示す温度(400℃)に変更した以外は、比較例3と同様の方法で、原料の転化率、ブタジエン(BD)選択率、BD収率、および、BD生産性を算出した。これらの結果を下記表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示す結果から、第12族の金属と、第4族の金属の酸化物とを担持させた固体触媒は、ブタジエンの収率が40%未満となることが分かった(比較例1および2)。
また、第12族の金属と、第2族の金属の酸化物とを担持させた固体触媒は、ブタジエンの収率が10%前後となることが分かった(比較例3および4)。
これに対し、第11族および第13族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属と、第3族および第4族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物とを担持させた固体触媒を用いると、ブタジエンの収率が向上することが分かった(実施例1~7)。