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特許7500037血中尿酸値低下剤及び血中尿酸値低下用食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】血中尿酸値低下剤及び血中尿酸値低下用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/201 20060101AFI20240610BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALI20240610BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20240610BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240610BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20240610BHJP
【FI】
A61K31/201
A61K31/202
A61K31/5575
A61P19/06
A61P43/00 111
A23L33/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019136151
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021020855
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】豊田 優
(72)【発明者】
【氏名】高田 龍平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 愛美
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/086614(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/060718(WO,A1)
【文献】特開2011-116680(JP,A)
【文献】国際公開第2009/151094(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/022049(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/123550(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/117057(WO,A1)
【文献】特表2017-516823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0291053(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108743592(CN,A)
【文献】特開2001-278786(JP,A)
【文献】特開平08-026988(JP,A)
【文献】特開2006-151952(JP,A)
【文献】Polish Journal of Food and Nutrition Sciences,2008年,Vol.58, No.3,pp.389-395
【文献】Annals of Nutrition and Metabolism,2010年,Vol.56, No.3,pp.170-175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 19/00
A61P 43/00
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和脂肪酸、又はその塩若しくはエステル(但し、ジグリセリドを除く。)を有効成分として含有し、
前記不飽和脂肪酸が、α-エレオステアリン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、ω-3アラキドン酸、ω-6アラキドン酸、ヘニコサペンタエン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ω-3ドコサペンタエン酸、ω-6ドコサペンタエン酸、12-オキソ-フィトジエン酸、13-epi-12-オキソ-フィトジエン酸、dinor-12-オキソ-フィトジエン酸、プロスタグランジンA1、プロスタグランジンA2、プロスタグランジンA3、13-オキソ-9Z,11E-オクタデカジエン酸、9-オキソ-10E,12Z-オクタデカジエン酸、9-オキソ-10E,12Z,15Z-オクタデカジエン酸、9S-ヒドロキシ-10E,12Z,15Z-オクタデカトリエン酸、13S-ヒドロキシ-6Z,9Z,11E-オクタデカトリエン酸及び13S-ヒドロキシ-9Z,11E,15Z-オクタデカトリエン酸から選択されるものである、血中尿酸値低下剤(但し、ナットーキナーゼを含有するものを除く。)。
【請求項2】
尿酸排泄促進作用に基づくものである、請求項1に記載の血中尿酸値低下剤。
【請求項3】
URAT1阻害作用に基づくものである、請求項に記載の血中尿酸値低下剤。
【請求項4】
不飽和脂肪酸、又はその塩若しくはエステル(但し、ジグリセリドを除く。)を有効成分として含有し、
前記不飽和脂肪酸が、α-エレオステアリン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、ω-3アラキドン酸、ω-6アラキドン酸、ヘニコサペンタエン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ω-3ドコサペンタエン酸、ω-6ドコサペンタエン酸、12-オキソ-フィトジエン酸、13-epi-12-オキソ-フィトジエン酸、dinor-12-オキソ-フィトジエン酸、プロスタグランジンA1、プロスタグランジンA2、プロスタグランジンA3、13-オキソ-9Z,11E-オクタデカジエン酸、9-オキソ-10E,12Z-オクタデカジエン酸、9-オキソ-10E,12Z,15Z-オクタデカジエン酸、9S-ヒドロキシ-10E,12Z,15Z-オクタデカトリエン酸、13S-ヒドロキシ-6Z,9Z,11E-オクタデカトリエン酸及び13S-ヒドロキシ-9Z,11E,15Z-オクタデカトリエン酸から選択されるものである、血中尿酸値低下用食品組成物(但し、ナットーキナーゼを含有するものを除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中尿酸値低下剤及び血中尿酸値低下用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高尿酸血症は、血中尿酸濃度が高い状態を指し、痛風の原因となっている。高尿酸血症の治療・予防を目的として、血中尿酸濃度を低下させる組成物が検討されている。例えば、特許文献1には、グリシン及びトリプトファンを含む血清尿酸値低減用の組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6492236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、不飽和脂肪酸及び炭素数8以上の飽和脂肪酸が、血中尿酸値を低減させることを新たに見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものであり、新規な血中尿酸値低下剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の血中尿酸値低下剤は、不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する。本発明は、不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルを含むため、血中の尿酸値を低下させることができる。
【0006】
上記飽和脂肪酸の炭素数は、10以上であってよい。飽和脂肪酸の炭素数が10以上であると、血中の尿酸値をより低下させることができる。
【0007】
上記脂肪酸は、不飽和脂肪酸であってよい。
【0008】
上記血中尿酸値低下剤は、尿酸排泄促進作用に基づくものであってよく、URAT1阻害作用に基づくものであってもよい。
【0009】
本発明はまた、不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する、血中尿酸値低下用食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、新規な血中尿酸値低下剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、表1の飽和脂肪酸におけるURAT1特異的尿酸輸送活性率を示すグラフである。
図2図2は、表2の不飽和脂肪酸におけるURAT1特異的尿酸輸送活性率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する。飽和脂肪酸の炭素数は、好ましくは10以上である。
【0014】
脂肪酸は、脂肪酸の塩として血中尿酸値低下剤に含まれていてもよい。脂肪酸の塩は、脂肪酸と無毒な塩を形成する塩基とにより形成されるものであり、食品、医薬部外品又は医薬品として許容可能なものであれば特に制限されない。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0015】
脂肪酸は、脂肪酸のエステルとして血中尿酸値低下剤に含まれていてもよい。脂肪酸のエステルは、脂肪酸と無毒なエステルを形成するアルコールとにより形成されるものであり、食品、医薬部外品又は医薬品として許容可能なものであれば特に制限されない。脂肪酸のエステルとしては、例えば、脂肪酸のグリセリンエステル又はアルキルエステルであってよい。アルキルエステルとしては、例えば、炭素数1~3のアルキルエステルが挙げられる。炭素数1~3のアルキルエステルとしては、エチルエステル、メチルエステル及びプロピルエステルが挙げられる。
【0016】
脂肪酸は、直鎖状の脂肪酸であってよい。また、脂肪酸は、分岐鎖を含む脂肪酸(分岐脂肪酸)であってもよく、環状構造を含む脂肪酸(環状脂肪酸)であってもよい。
【0017】
本明細書において、飽和脂肪酸は、不飽和結合(二重結合)を有さない脂肪酸をいい、不飽和脂肪酸は、不飽和結合(二重結合)を1つ以上有する脂肪酸をいう。不飽和脂肪酸は、不飽和結合を1つ有する脂肪酸(単価不飽和脂肪酸)であってよく、好ましくは不飽和結合を2つ以上有する脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)である。不飽和脂肪酸中の不飽和結合(二重結合)の数は、例えば、1~10又は1~8であってよく、好ましくは2~6である。不飽和脂肪酸中の不飽和結合は、トランス型であってもシス型であってもよい。
【0018】
飽和脂肪酸の炭素数は、8以上である。飽和脂肪酸の炭素数は、好ましくは10以上、12以上、14以上又は16以上である。飽和脂肪酸の炭素数は、例えば30以下であってよく、好ましくは24以下、22以下又は20以下である。飽和脂肪酸の炭素数が上記範囲にあると、血中尿酸値をより低下させることができる。
【0019】
飽和脂肪酸としては、例えば、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0020】
不飽和脂肪酸の炭素数は、特に限定されず、例えば4以上、8以上又は10以上、好ましくは14以上又は16以上である。不飽和脂肪酸の炭素数は、例えば30以下であってよく、好ましくは24以下又は22以下である。不飽和脂肪酸の炭素数が上記範囲にあると、血中尿酸値をより低下させることができる。
【0021】
不飽和脂肪酸は、カルボニル基及びヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を有する不飽和脂肪酸を含んでいてよい。すなわち、カルボニル基及びヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を有する不飽和脂肪酸は、カルボニル基のみを有する不飽和脂肪酸であってよく、ヒドロキシル基のみを有する不飽和脂肪酸であってよく、カルボニル基及びヒドロキシル基を有する不飽和脂肪酸であってもよい。カルボニル基を有する不飽和脂肪酸はオキソ脂肪酸ということができ、ヒドロキシル基を有する不飽和脂肪酸は水酸化脂肪酸ということができる。カルボニル基を有する不飽和脂肪酸としては、例えば、12-オキソ-フィトジエン酸及びその構造類縁体、オクタデカジエン酸のオキソ体等が挙げられる。12-オキソ-フィトジエン酸の構造類縁体としては、例えば、13-epi-12-オキソ-フィトジエン酸、dinor-12-オキソ-フィトジエン酸、プロスタグランジンA1、プロスタグランジンA2、プロスタグランジンA3等が挙げられる。オクタデカジエン酸のオキソ体としては、例えば、13-オキソ-9Z,11E-オクタデカジエン酸、9-オキソ-10E,12Z-オクタデカジエン酸、9-オキソ-10E,12Z,15Z-オクタデカジエン酸等が挙げられる。ヒドロキシル基を有する不飽和脂肪酸としては、例えば、オクタデカトリエン酸の水酸化体、ヒドロキシル基を有する12-オキソ-フィトジエン酸の構造類縁体等が挙げられる。オクタデカトリエン酸の水酸化体としては、例えば、9S-ヒドロキシ-10E,12Z,15Z-オクタデカトリエン酸、13S-ヒドロキシ-6Z,9Z,11E-オクタデカトリエン酸、13S-ヒドロキシ-9Z,11E,15Z-オクタデカトリエン酸等が挙げられる。ヒドロキシル基を有する12-オキソ-フィトジエン酸の構造類縁体としては、プロスタグランジンA1、プロスタグランジンA2、プロスタグランジンA3等が挙げられる。
【0022】
不飽和脂肪酸は、ω-3位に炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸(n-3系不飽和脂肪酸)、ω-5位に炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸(n-5系不飽和脂肪酸)、ω-6位に炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸(n-6系不飽和脂肪酸)、ω-7位に炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸(n-7系不飽和脂肪酸)、ω-9位に炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸(n-9系不飽和脂肪酸)又はこれらの組合せを含んでいてよい。n-3系多価不飽和脂肪酸としては、例えば、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ヘニコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸(ω-3アラキドン酸)、ω-3ドコサペンタエン酸等が挙げられる。n-5系多価不飽和脂肪酸としては、例えば、α-エレオステアリン酸等が挙げられる。n-6系多価不飽和脂肪酸としては、例えば、γ-リノレン酸、リノール酸、ω-6アラキドン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、All-cis-4,7,10,13,16-ドコサペンタエン酸(ω-6ドコサペンタエン酸)等が挙げられる。n-7系多価不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸等が挙げられる。n-9系多価不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、13(Z)-ドコセン酸、エイコサトリエン酸等が挙げられる。
【0023】
不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルは、天然物に由来するものであっても、人為的に合成したものであってもよい。また、市販のものがあれば、それを使用してもよい。不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルは、例えば、植物油、魚油等の油脂、海産動物、微生物、植物体等の天然原料に由来するものであってよい。天然原料由来の不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルは、天然原料から適宜公知の方法により分画、精製等の処理を行うことにより、得ることができる。
【0024】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、固体(例えば、粉末等)、液体(水溶性若しくは脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。また、不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルのみからなっていてもよい。
【0025】
上述の各種製剤は、不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルと、添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)と、を混和することによって調製することができる。
【0026】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、URAT1阻害作用に基づくものであってよい。この場合、本実施形態の血中尿酸値低下剤は、URAT1阻害剤ということもできる。「URAT1」は、腎臓に発現するトランスポーターであり、RST、OAT4L、SLC22A12等の別名がつけられているトランスポーターをも包含する。ヒト由来のURAT1の典型的な塩基配列及びアミノ酸配列は、GenBank(AB071863)に開示されている。
【0028】
また、「URAT1」は管腔側で尿酸再吸収を担っているため、URAT1を阻害することにより、尿酸排泄を促進することができる。本実施形態の血中尿酸値低下剤は、尿酸排泄促進作用に基づくものであってよく、この場合、尿酸排泄促進剤ということもできる。
【0029】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、医薬品、医薬部外品、食品組成物、飼料、飼料添加物等の製品の成分として使用することができる。食品組成物には、飲料、食品、食品添加物、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品等が含まれる。飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の血中尿酸値低下剤からなる、又は血中尿酸値低下剤を含む上記製品は、血中尿酸値低下用、尿酸排泄促進用、URAT1阻害用であってよい。上記製品には、「血中尿酸値を改善する」、「血中尿酸値を制御する」、「血中尿酸値の上昇を抑制する」、「血中尿酸値を低下させる」、「血中尿酸値を適正化する」、「食事のプリン体が気になる方へ」、「お酒やおいしいものが好きな方へ」等の表示が付されていてもよい。
【0031】
本実施形態の血中尿酸値低下剤を使用した上記製品(医薬品、医薬部外品、食品組成物、飼料、飼料添加物等)の製造方法は特に制限されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、上記製品の製造工程における中間製品又は最終製品に、本実施形態のURAT1阻害剤を混合等して、血中尿酸値低下用に用いられる上記製品を得ることができる。
【0032】
上述のとおり、不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する血中尿酸値低下剤は、食品、又は食品添加物の成分として使用することが可能である。よって、本発明の一実施形態として、不飽和脂肪酸、及び炭素数8以上の飽和脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸、又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する、血中尿酸値低下用食品組成物が提供される。
【0033】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、ヒトに摂取されても、非ヒト哺乳動物に摂取されてもよい。本実施形態の血中尿酸値低下剤の投与量(摂取量)は、有効成分として、成人1日あたり、体重1kgあたり例えば0.1mg~1gであってよく、好ましくは1~500mgであり、より好ましくは、5~200mgである。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0034】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。血中尿酸値低下剤は、1日あたりの有効成分量が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【実施例
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0036】
[試験例1:ヒトURAT1発現細胞を用いた尿酸輸送阻害試験]
(1)試験サンプル溶液の調製
表1~3に示す飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸、並びに陽性対照としてURAT1阻害薬として既知であるベンズブロマロン(benzbromarone)(Wako社製)をDMSOに溶解し、目的濃度の100-1000倍となるようにDMSOを用いて希釈した。14Cで標識された尿酸([8-14C]-Uric Acid:ARC0513、American Radiolabeled Chemicals,Inc製)は、125mMグルコン酸ナトリウム、4.8mMグルコン酸カリウム、1.2mM硫酸マグネシウム、1.3mMグルコン酸カルシウム、1.2mMリン酸2水素カリウム、25mMヘペス及び5mMグルコース(pH7.4)をそれぞれ最終濃度として含有し、Clを含まないHanks平衡塩溶液(以下、HBSS Cl(-)とする)を用いて希釈し、最終濃度5μMとなるように調製した。この14C標識尿酸溶液を用いて試験サンプルを100~1000倍希釈し、目的濃度となるように調製したものをサンプル溶液(飽和脂肪酸:100μM、不飽和脂肪酸:20μM)とした。なお、試験サンプルを含まない0.1~1%DMSO溶液をコントロールとした。
【0037】
(2)ヒトURAT1一過性発現細胞の調製
ヒト胎児腎細胞由来293A細胞(Invitrogen社製)3.5×10cells/mLを10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(ナカライテスク社製)に懸濁し、12ウェルプレートに1mL/well播種したのち、37℃の5%COインキュベータ内で1日間培養した。滅菌MilliQにより1mg/mLに調製したポリエチレンイミン“MAX”(Polysciences社製)を1ウェルあたり3.75μLとり、50μLのOptiMEM(Invitrogen社製)で希釈したのち室温で5分間静置した(以下、「PEI-OptiMEM」とする。)。1ウェルあたり0.75μg(例えば0.2μg/μLに調製したプラスミド溶液を3.75μL)のヒトURAT1発現ベクター及びヒトURAT1の導入されていないコントロールベクターを50μLのOptiMEMで希釈し、室温で5分間静置した(以下、「Plasmid-OptiMEM」とする。)。Plasmid-OptiMEM及びPEI-OptiMEMを混合し、室温にて20分以上放置したのち、1ウェルあたり107.5μLずつ293A細胞に添加した。293A細胞は37℃の5%COインキュベータ内で2日間培養し、尿酸取り込み阻害活性試験に供した。
【0038】
(3)尿酸取り込み阻害活性試験
以下の試験は37℃に加温したホットプレート上にて行った。(2)で用意した細胞を含む各ウェルから培地を吸引除去した後、HBSS Cl(-)を用いて各ウェルを洗ったのち、500μLのHBSS Cl(-)で置換し、37℃の5%CO2インキュベータ内で約10分間プレインキュベーションした。HBSS Cl(-)を吸引除去した後、予め37℃に加温した(1)のサンプル溶液を500μL添加し、20秒間取り込み反応を行った。反応終了後、サンプル溶液を直ちに吸引除去し、氷冷したHBSS Cl(-)で洗浄した。細胞を1ウェルあたり500μLの0.2N水酸化ナトリウム水溶液を用いて氷上にて溶解し、100μLの1N塩酸で中和した後、液体シンチレーション計測用バイアル(東京硝子社製)に400μL移した。5mLのクリアゾルII(nacalai社製)と混合したのち、液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer社製)にて放射活性(壊変数)を測定した。また、細胞溶解液20μLを用いて、PIERCE BCA Protein assay kit(サーモフィッシャー社製)によりタンパク質濃度を定量した。試験化合物存在下におけるURAT1特異的尿酸輸送活性率は、測定された放射活性(壊変数)の値を用いて、下記のように算出した。
URAT1特異的尿酸輸送活性率(%)=[(A-C)/(B-C)]×100
A:ヒトURAT1一過性発現細胞にサンプル溶液を添加した場合の輸送活性
B:ヒトURAT1一過性発現細胞に0.1~1%DMSO溶液を添加した場合の輸送活性
C:コントロールベクターを導入した細胞に0.1~1%DMSO溶液を添加した場合の輸送活性
ここで、A、B及びCの各輸送活性は、下記のように算出した。
A、B及びCの各輸送活性[μL/mg/min]=X/(Y×Z)
X:600μL細胞溶解中和液における細胞に取り込まれた14Cで標識された尿酸の壊変数[DPM/600μL/min]
Y:細胞中のタンパク量[mg/600μL]
Z:取り込み実験に使用した反応混液の単位量当たりにおける、14Cで標識された尿酸の壊変数[DPM/1μL]
【0039】
表1~3に、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のURAT1特異的尿酸輸送活性率及びIC50の測定結果を示す。なお、IC50値は、URAT1活性を50%阻害するときの各試験化合物の反応混液中濃度を示す。IC50値は各試験化合物を各濃度で添加した際のURAT1特異的尿酸輸送活性率をプロットし、最小二乗法により阻害曲線を描くことによって算出した。
【0040】
図1に、表1の飽和脂肪酸における、URAT1特異的尿酸輸送活性率を示した。図2に、表2の不飽和脂肪酸における、URAT1特異的尿酸輸送活性率を示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
表1~3に示すとおり、不飽和脂肪酸及び炭素数8以上の飽和脂肪酸はURAT1阻害作用を有していた。
図1
図2