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特許7500065鉱石分析のための情報処理方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】鉱石分析のための情報処理方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/24 20060101AFI20240610BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20240610BHJP
【FI】
G01N33/24 A
G01N27/62 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020139452
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035257
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】綱澤 有輝
(72)【発明者】
【氏名】昆 慶明
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-519901(JP,A)
【文献】特開2016-017194(JP,A)
【文献】特開2016-017816(JP,A)
【文献】特開2015-114241(JP,A)
【文献】特開2005-283535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/24
G01N 1/00-1/44
G01N 27/60-27/70
27/92
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計による、鉱石試料の分析領域内の各分析点における複数の元素の濃度の測定結果に基づき、前記分析領域内における複数の粒子を抽出するステップと、
抽出された前記複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々について、前記測定結果に基づき、前記複数の元素のうち着目する元素についての平均組成を算出する算出ステップと、
前記複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々を、前記平均組成に基づき分類する分類ステップと、
分類結果に基づき表示データを生成するステップと、
を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
抽出された前記複数の粒子の各々について、前記測定結果に基づき、特定の種類の構成相を抽出するステップ
をさらに前記コンピュータに実行させ、
前記算出ステップにおいて、
前記特定の種類の構成相の各々について、前記測定結果に基づき、前記着目する元素についての平均組成を算出し、
前記分類ステップにおいて、
前記特定の種類の構成相の各々を、前記平均組成に基づき分類する
請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
抽出された前記複数の粒子の各々について、前記測定結果に基づき、特定の種類の構成相を抽出するステップ
をさらに前記コンピュータに実行させ、
前記算出ステップにおいて、
前記特定の種類の構成相を有する各粒子について、前記測定結果に基づき、前記着目する元素についての平均組成を算出し、
前記分類ステップにおいて、
前記特定の種類の構成相を有する各粒子を、前記平均組成に基づき分類する
請求項1記載のプログラム。
【請求項4】
前記分類ステップが、
前記平均組成に基づく分類の各々について、当該分類に属する粒子を、構成相の組み合わせの種類でさらに分類するステップ
を含む請求項3記載のプログラム。
【請求項5】
前記分類ステップが、
前記平均組成に基づく分類の各々について、当該分類に属する粒子を、粒子のサイズでさらに分類するステップ
を含む請求項3記載のプログラム。
【請求項6】
抽出された前記複数の粒子の各々について、前記測定結果に基づき、特定の種類の構成相を抽出するステップ
をさらに前記コンピュータに実行させ、
前記算出ステップにおいて、
抽出された前記複数の粒子において前記特定の種類の構成相の各々について、前記測定結果に基づき、前記着目する元素についての平均組成を算出し、
前記分類ステップにおいて、
前記特定の種類の構成相を有する各粒子を、前記平均組成に基づき分類する
請求項1記載のプログラム。
【請求項7】
前記分類ステップが、
前記平均組成に基づく分類の各々について、当該分類に属する粒子を、構成相の組み合わせの種類でさらに分類するステップ
を含む請求項6記載のプログラム。
【請求項8】
前記分類ステップが、
前記平均組成に基づく分類の各々について、当該分類に属する粒子を、粒子のサイズ又は前記特定の種類の構成相のサイズでさらに分類するステップ
を含む請求項6記載のプログラム。
【請求項9】
前記分類ステップが、
前記平均組成に基づく分類の各々について、当該分類の属する粒子を、前記特定の種類の構成相の面積割合でさらに分類するステップ
を含む請求項6記載のプログラム。
【請求項10】
前記特定の種類の構成相が、特定の1種類または複数種類の構成相、もしくは表面露出している特定の1種類または複数種類の構成相である
請求項2乃至9のいずれか1つ記載のプログラム。
【請求項11】
レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計による、鉱石試料の分析領域内の各分析点における複数の元素の濃度の測定結果に基づき、前記分析領域内における複数の粒子を抽出するステップと、
抽出された前記複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々について、前記測定結果に基づき、前記複数の元素のうち着目する元素についての平均組成を算出する算出ステップと、
前記複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々を、前記平均組成に基づき分類する分類ステップと、
分類結果に基づき表示データを生成するステップと、
を含み、コンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項12】
レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計による、鉱石試料の分析領域内の各分析点における複数の元素の濃度の測定結果に基づき、前記分析領域内における複数の粒子を抽出する手段と、
抽出された前記複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々について、前記測定結果に基づき、前記複数の元素のうち着目する元素についての平均組成を算出する手段と、
前記複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々を、前記平均組成に基づき分類する分類手段と、
分類結果に基づき表示データを生成する手段と、
を有する情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石の分析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱石における鉱物の存在形態の評価指標には、単一成分からなる単体粒子の割合である単体分離度があるが、これだけでは鉱石の評価としては十分でない。一般に、鉱石には複数成分からなる片刃粒子も多数含まれており、これらを合わせた評価も求められている。すなわち、どの鉱物に副産物や不純物となり得る元素が含まれているかや、有用鉱物と副産物や不純物となる鉱物がどのような関係にあるのか、ということを定量的に示すことが、鉱床や鉱徴地の開発可能性の判断、選鉱及び分離プロセスの選定や評価において重要である。
【0003】
従来では、鉱物粒子解析装置(MLA:Mineral Liberation Analyzer)が用いられていたが、これはSEM(Scanning Electron Microscope)-EDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometer)をベースとした分析装置である。具体的には、BSE(Backscattered Electron)の輝度の差を利用して粒子判定を行い、EDSのスペクトルマッチングから鉱物同定を行うものである。MLAを用いれば、比較的短時間に大量の粒子に対して自動解析が可能であるが、個々の分析点や粒子中の微量元素を定量できるわけではない。
【0004】
これに対して、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS:Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)による微小域元素分析が注目されている。この装置を用いれば、ほぼ全元素につき、分析領域の各分析点において濃度の測定を行うことができる。
【0005】
例えば、下記の非特許文献1では、LA-ICP-MSによる測定結果に基づき、ある分析領域において、第1の元素と第2の元素とが測定された分析点を、例えば第1の元素の濃度によって塗り分けて表示する例が示されている。
【0006】
このような表示を行うことで、どの鉱物に副産物や不純物となり得る元素が含まれているかや、有用鉱物と副産物や不純物となる鉱物がどのような関係にあるのか、をおおよそ把握することができるが、非特許文献1では、粒子群や粒子内部の構成相群についての評価については触れられておらず、定量的な議論がしづらいままである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Tom Raimondo, et. al, "Trace element mapping by LA-IC-MS: assessing geochemical mobility in garnet", Contributions to Mineralogy and Petrology (2017), published on March 15, 2017, DOI: 10.1007/s00410-017-1339-z
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一側面としては、選鉱手法等を検討する上で有用な評価情報を提供するための新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る情報処理方法は、(A)鉱石試料の分析領域内の各分析点における複数の元素の濃度の測定結果に基づき、分析領域内における複数の粒子を抽出するステップと、(B)抽出された複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々について、測定結果に基づき、複数の元素のうち着目する元素についての濃度に関する指標値を算出する算出ステップと、(C)複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々を、濃度に関する指標値に基づき分類する分類ステップと、(D)分類結果に基づき表示データを生成するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
一側面によれば、選鉱手法等を検討する上で有用な評価情報を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係るメインの処理フローを示す図である。
図3図3は、第1データ格納部及び第2データ格納部に格納されるデータの一例を示す図である。
図4図4は、粒子抽出を説明するための図である。
図5図5は、第2データ格納部に格納されるデータの一例を示す図である。
図6図6は、粒子の境界に該当する分析点について説明するための図である。
図7図7は、粒子の構成相を説明するための図である。
図8図8は、粒子の構成の抽出を説明するための図である。
図9図9は、第3データ格納部に格納されるデータの一例を示す図である。
図10図10は、構成相の個数分布表示処理の処理フローを示す図である。
図11図11は、構成相の個数分布表示の一例を示す図である。
図12図12は、実施の形態に係るメインの処理フローを示す図である。
図13図13は、粒子の個数分布表示処理の処理フローを示す図である。
図14図14は、粒子の個数分布表示の一例を示す図である。
図15図15は、構成相組み合わせの状態表示処理の処理フローを示す図である。
図16図16は、構成相組み合わせの状態表示の一例を示す図である。
図17図17(a)乃至(c)は、表面露出している構成相について説明するための図である。
図18図18は、表面露出している構成相組み合わせの状態表示処理の処理フローを示す図である。
図19図19は、表面露出している構成相組み合わせの状態表示の一例を示す図である。
図20図20は、実施の形態に係るメインの処理フローを示す図である。
図21図21は、特定構成相の粒子径分布表示処理の処理フローを示す図である。
図22図22は、特定構成相の粒子径分布表示の一例を示す図である。
図23図23は、特定構成相の面積占有割合表示処理の処理フローを示す図である。
図24図24は、特定構成相の面積占有割合表示処理の処理フローを示す図である。
図25図25は、特定構成相の面積占有割合表示の一例を示す図である。
図26図26は、特定構成相の組み合わせ表示処理の処理フローを示す図である。
図27図27は、特定構成相の組み合わせ表示の一例を示す図である。
図28図28は、コンピュータ装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態に係るシステムの概要を図1を用いて説明する。
例えばLA-ICP-MSである測定装置200には、以下で説明する処理を実行する情報処理装置100が接続されている。この情報処理装置100は、第1データ格納部101と、定義データ格納部103と、粒子処理部105と、構成相処理部107と、第2データ格納部109と、第3データ格納部111と、表示データ生成部113と、第4データ格納部115と、出力部117とを有する。
【0013】
第1データ格納部101は、測定装置200の測定結果を格納する。樹脂で固めた鉱物試料の表面において例えば5μm四方の分析点毎に、ほぼ全ての元素の元素組成のデータが測定結果として得られる。定義データ格納部103は、予め定められた鉱物種の組成の定義に関するデータを格納する。なお、鉱物種の組成の定義については適宜追加又は修正でき、その後は追加又は修正後の定義に基づき鉱物種の同定などの処理がなされる。
【0014】
粒子処理部105は、第1データ格納部101に格納されている測定結果を用いて、樹脂に囲われた粒子を抽出し、各粒子についてのデータを第2データ格納部109及び第3データ格納部111に格納する。また、構成相処理部107は、第1データ格納部101に格納されている測定結果及び定義データ格納部103に格納されている鉱物種の組成の定義に関するデータから、粒子内部の構成相についてのデータを生成し、第2データ格納部109及び第3データ格納部111に格納する。
【0015】
表示データ生成部113は、第2データ格納部109及び第3データ格納部111などに格納されているデータを用いて、指定された表示態様に係る表示データを生成する。第4データ格納部115は、表示データ生成部113が生成したデータを格納する。出力部117は、表示データ生成部113が生成した表示データを、表示装置や印刷装置といった出力装置に出力する。出力先は、ネットワークに接続された他のコンピュータであっても良い。
【0016】
次に、図2乃至図27を用いて情報処理装置100が行う処理について説明する。
【0017】
まず、情報処理装置100は、測定装置200から測定結果のデータを取得し、第1データ格納部101に格納する(図2:ステップS1)。例えば、図3に示すようなデータの一部が第1データ格納部101に格納される。図3の例では、各分析点について、分析点ID(識別子)と、鉱物試料の分析範囲における座標と、各元素についての濃度とが計測結果として取得される。なお、以下の具体例では特に微量元素Agに着目する。
【0018】
次に、粒子処理部105は、鉱物試料の分析範囲における各粒子を抽出し、当該各粒子のデータを第2データ格納部109に格納する(ステップS3)。粒子は、1又は複数の鉱物種で構成される塊である。例えば、図4(a)に示すような分析領域の場合、樹脂(白)と樹脂以外の成分(灰色)とを例えば分析領域左上から順に区別して、図4(b)に示すように、樹脂又は分析領域の境界で囲われた分析点群を粒子として抽出する。図4(b)の例では3つの粒子が抽出されて、各粒子に識別子(粒子ID)を付与する。例えば、図3に示すように、粒子に属する各分析点に対して粒子IDを格納する。
【0019】
さらに、粒子処理部105は、各粒子について着目元素についての平均組成を算出するなど、粒子データを生成して、第2データ格納部109及び第3データ格納部111に格納する(ステップS5)。例えば、各粒子について、当該粒子に属する分析点におけるAg濃度を全て加算して、当該粒子に属する分析点の数で除することで平均Ag濃度を算出する。例えば、図5に示すように、各粒子について、平均Ag濃度のデータを格納する。また、図6に示すように、粒子の境界となる分析点を特定する。例えば、樹脂に隣接する粒子内のある分析点から、樹脂に隣接する他の分析点を時計回り又は反時計回りで順に、元の分析点に戻るまで探索する。このようにして探索された粒子の境界に該当する各分析点には、例えば図3に示すように、粒子の境界となる分析点か否かを表す境界フラグをYに設定する。なお、この例ではデフォルトで境界でないことを表すNを設定しておく。
【0020】
次に、構成相処理部107は、定義データ格納部103に格納されているデータを用いて、各粒子内の構成相の領域及び種別を特定し、第2データ格納部109に格納する(ステップS7)。図7に例示するように、構成相とは、1つの粒子を構成する鉱物種毎の塊であって、1つの構成相で1つの粒子が構成される場合もあれば、複数の構成相で1つの粒子が構成される場合もある。各粒子において各分析点が、図8に模式的に示すように、どの鉱物種に該当するのかを、定義データ格納部103に格納されているデータを用いて同定する。図8の例では、3つの構成相が粒子に含まれており、各構成相に構成相ID(1乃至3)を付与すると共に、その構成相の種別(鉱物種)も同定する。そして、例えば図3に示すように、粒子内の分析点の各々について、いずれの構成相に属するかを表す構成相IDと、その構成相の種別(鉱物種)とを登録する。
【0021】
また、構成相処理部107は、各構成相について、着目元素Agについての平均組成(平均Ag濃度)を算出し、第3データ格納部111に格納する(ステップS9)。各構成相に属する分析点のAg濃度を全て加算して、当該構成相に属する分析点の数で除することで平均Ag濃度を算出する。例えば図9に示すようなデータが、第3データ格納部111に格納される。
【0022】
そして、表示データ生成部113は、ユーザから7つの表示態様のうち構成相の個数分布表示が指示されたか否かを判断する(ステップS11)。構成相の個数分布表示が指示されていなければ、処理は端子Aを介して図12の処理に移行する。一方、構成相の個数分布表示が指示されれば、表示データ生成部113は、構成相の個数分布表示処理を実行する(ステップS13)。その後処理は端子Aを介して図12の処理に移行する。
【0023】
ここで図10及び図11を用いて構成相の個数分布表示処理を説明する。
まず、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を特定し、当該構成相の平均組成(平均Ag濃度)の範囲を、複数の分類区間(値域)に分割する(図10:ステップS101)。特定種類の構成相については、ユーザ等により指定された種類の構成相である。本ステップでは、例えば平均組成の範囲を所定の階級数で均等に分割することで分類区間を決定する。なお、予め分類区間が規定されている場合には、本ステップはスキップされる。
【0024】
次に、表示データ生成部113は、特定種類の構成相のうち未処理の種別を1つ特定する(ステップS103)。そして、表示データ生成部113は、特定された種別の構成相の個数を、分類区間毎に計数し、第4データ格納部115に格納する(ステップS105)。
【0025】
また、表示データ生成部113は、特定種類の構成相のうち未処理の種別が存在するか否かを判断する(ステップS107)。未処理の種別が存在する場合には、処理はステップS103に戻る。一方、表示データ生成部113は、計数結果から表示データを生成し、出力部117は、当該表示データを表示装置などに出力する(ステップS109)。
【0026】
例えば、図11に示すような表示データが生成される。本例では、輝銅鉱と斑銅鉱と黄鉄鉱と硫砒鉄鉱とが特定種類の構成相であり、構成相の平均Ag濃度の分類区間毎に、該当する構成相の種類毎の個数が棒状に示されている。このようなグラフからは、Ag濃度が高い鉱物種を特定することが出来る。図11の例では、輝銅鉱及び黄鉄鉱は比較的平均Ag濃度が高く、硫砒鉄鉱及び斑銅鉱は逆に比較的平均Ag濃度が低くなっている。また、輝銅鉱は、その平均Ag濃度が中程度から高いものまで存在しているが、高いものの頻度は比較的高い。このように同じ鉱物種でもAg濃度に偏りがある場合には、Ag濃度が高い構成相の分離及び回収に適した選鉱手法の検討に活用できる。
【0027】
図12に示す処理の説明に移行して、表示データ生成部113は、ユーザから7つの表示態様のうち粒子の個数分布表示が指示されたか否かを判断する(ステップS15)。粒子の個数分布表示が指示されていなければ、処理はステップS19に移行する。一方、粒子の個数分布表示が指示されれば、表示データ生成部113は、粒子の個数分布表示処理を実行する(ステップS17)。その後処理はステップS19に移行する。
【0028】
ここで図13及び図14を用いて粒子の個数分布表示処理を説明する。
まず、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子を特定し、当該粒子の平均組成(平均Ag濃度)の範囲を、複数の分類区間(値域)に分割する(図13:ステップS111)。特定種類の構成相については、ユーザ等により指定された種類の構成相である。本ステップでは、例えば平均組成の範囲を所定の階級数で均等に分割することで分類区間を決定する。なお、予め分類区間が規定されている場合には、本ステップはスキップされる。
【0029】
次に、表示データ生成部113は、未処理の分類区間を1つ特定する(ステップS113)。例えば、値の小さい分類区間から順に分類区間を選択する。そして、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子のうち、特定された分類区間に属する粒子を特定する(ステップS115)。さらに、表示データ生成部113は、特定された粒子を、構成相の組み合わせの種別毎に計数し、第4データ格納部115に格納する(ステップS117)。例えば、4種類の構成相を特定種類の構成相とするならば、各構成相のみで構成される粒子、2種類の構成相の組み合わせの粒子、3種類以上の構成相の組み合わせの粒子といった組み合わせの種別を規定しておき、それに基づき粒子を分類して、分類に属する粒子の数を計数する。構成相の組み合わせの種別については別の定義がなされる場合もある。より細かく、構成相の組み合わせについて分類するようにしても良い。
【0030】
そして、表示データ生成部113は、未処理の分類区間が存在するか否かを判断する(ステップS119)。未処理の分類区間が存在する場合には、処理はステップS113に戻る。一方、未処理の分類区間が存在しない場合には、表示データ生成部113は、計数結果から表示データを生成し、出力部117は、当該表示データを表示装置などに出力する(ステップS121)。
【0031】
例えば、図14に示すような表示データが生成される。本例では、輝銅鉱と斑銅鉱と黄鉄鉱と硫砒鉄鉱とが特定種類の構成相であり、粒子の平均Ag濃度の分類区間毎に、該当する粒子の個数が棒状に示されている。但し、構成相の組み合わせ種別毎の頻度も認識できるようになっている。このようなグラフから、平均Ag濃度が高い粒子が、どのような構成相又はその組み合わせであるのかを確認できる。図14の例では、輝銅鉱のみで構成される粒子の平均Ag濃度が高くなっている。単一の構成相で構成される粒子は、単体粒子と呼ばれ、選別しやすく、目的の有用鉱物を高効率に分離回収できる。図14の例では、輝銅鉱のみで構成される粒子を回収できれば良いことが分かる。このように、Ag濃度が高い粒子の分離及び回収に適した選鉱手法の検討に活用できる。
【0032】
図12の処理の説明に戻って、表示データ生成部113は、ユーザから7つの表示態様のうち構成相組み合わせの状態表示が指示されたか否かを判断する(ステップS19)。構成相組み合わせの状態表示が指示されていない場合には、処理はステップS23に移行する。一方、構成相組み合わせの状態表示が指示された場合には、表示データ生成部113は、構成相組み合わせの状態表示処理を実行する(ステップS21)。その後処理はステップS23に移行する。
【0033】
ここで図15及び図16を用いて構成相組み合わせの状態表示処理を説明する。
まず、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子を特定し、当該粒子の平均組成(平均Ag濃度)の範囲を、複数の分類区間(値域)に分割する(図15:ステップS131)。特定種類の構成相については、ユーザ等により指定された種類の構成相である。本ステップでは、例えば平均組成の範囲を所定の階級数で均等に分割することで分類区間を決定する。なお、予め分類区間が規定されている場合には、本ステップはスキップされる。
【0034】
次に、表示データ生成部113は、未処理の分類区間を1つ特定する(ステップS133)。例えば、値の小さい分類区間から順に分類区間を選択する。そして、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子のうち、特定された分類区間に属する粒子を特定する(ステップS135)。さらに、表示データ生成部113は、特定された粒子を、構成相の組み合わせで分類する(ステップS137)。例えば、4種類の構成相を特定種類の構成相とするならば、各構成相のみで構成される粒子、2種類の構成相の組み合わせの粒子、3種類以上の構成相の組み合わせの粒子といった組み合わせの種別を規定しておき、それに基づき粒子を種別毎に分類する。構成相の組み合わせの種別については別の定義がなされる場合もある。より細かく、構成相の組み合わせについて分類するようにしても良い。
【0035】
そして、表示データ生成部113は、ステップS137の分類毎に粒子数の割合を算出し、第4データ格納部115に格納する(ステップS139)。ある分類区間に10個の粒子が属しており、ある分類に粒子が3個含まれれば、その分類の粒子数割合は0.3となる。また、表示データ生成部113は、未処理の分類区間が存在するか否かを判断する(ステップS141)。未処理の分類区間が存在する場合には、処理はステップS133に戻る。一方、未処理の分類区間が存在しない場合には、表示データ生成部113は、計算結果から表示データを生成し、出力部117は、当該表示データを表示装置などに出力する(ステップS143)。
【0036】
例えば、図16に示すような表示データが生成される。本例では、輝銅鉱と斑銅鉱と黄鉄鉱と硫砒鉄鉱とが特定種類の構成相であり、粒子の平均Ag濃度の分類区間毎に、構成相の組み合わせ種別毎の粒子個数の割合が示されている。図16の例では、平均Ag濃度が高い粒子については、複数の構成相から構成される粒子の割合が高く、輝銅鉱のみの粒子と黄鉄鉱のみの粒子もある程度の割合で存在していることが分かる。すなわち、粒子の平均Ag濃度の分類区間毎に、その分類区間に属する粒子がどのような構成相の組み合わせで存在しているかを評価することが出来、それに応じて適切な選鉱手法を選定できる。例えば、平均Ag濃度が高い粒子が単一の構成相からなるならば、その粒子の回収に適切な選鉱手法を選鉱すれば良い。一方、平均Ag濃度が高い粒子が複数の構成相からなるならば、その粒子の単体分離度を上げるために追加の粉砕を行うといった判断を行うことが出来る。
【0037】
図12の処理の説明に戻って、表示データ生成部113は、ユーザから7つの表示態様のうち表面露出している構成相組み合わせの状態表示が指示されたか否かを判断する(ステップS23)。表面露出している構成相組み合わせの状態表示が指示されていない場合には、処理は端子Bを介して図20の処理に移行する。一方、表面露出している構成相組み合わせの状態表示が指示された場合には、表示データ生成部113は、表面露出している構成相組み合わせの状態表示処理を実行する(ステップS25)。その後処理は端子Bを介して図20の処理に移行する。
【0038】
ここで図17乃至図19を用いて表面露出している構成相組み合わせの状態表示処理を説明する。そのために、まず、粒子のバルク特性の評価と粒子の表面特性の評価の違いについて図17を用いて説明しておく。図17(a)に示すような、ある構成相のみで構成される粒子であれば、粒子を面的に捉えても1つの構成相で構成され、粒子の表面(すなわち樹脂との境界)に着目しても表面露出している構成相は1つである。一方、図17(b)に示すような2種類の構成相で構成されている粒子の場合、粒子を面的に捉える場合と、粒子の表面(すなわち樹脂との境界)に着目する場合とでは、異なる評価になる。図17(b)の場合、ある構成相により他の構成相が包まれている状態であり、粒子を面的に捉える場合には、2つの構成相から構成される粒子と認識されるが、粒子の表面に着目する場合には、粒子の境界として特定される分析点はある1つの構成相のみからなるので、表面露出している構成相は1つのみの粒子となる。一方、図17(c)の場合、面的に捉える場合でも表面に着目して捉える場合でも、2つの構成相から構成される粒子となる。図17(b)のような粒子と図17(c)のような粒子とでは、その回収に適した選鉱方法は異なってくる。
【0039】
ここでは表面露出している構成相に着目するので、図15とは異なる処理を実行する。まず、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子を特定し、当該粒子の平均組成(平均Ag濃度)の範囲を、複数の分類区間(値域)に分割する(図18:ステップS151)。特定種類の構成相については、ユーザ等により指定された種類の構成相である。本ステップでは、例えば平均組成の範囲を所定の階級数で均等に分割することで分類区間を決定する。なお、予め分類区間が規定されている場合には、本ステップはスキップされる。
【0040】
次に、表示データ生成部113は、未処理の分類区間を1つ特定する(ステップS153)。例えば、値の小さい分類区間から順に分類区間を選択する。そして、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子のうち、特定された分類区間に属する粒子を特定する(ステップS155)。さらに、表示データ生成部113は、特定された粒子を、表面露出している構成相の組み合わせで分類する(ステップS157)。例えば、4種類の構成相を特定種類の構成相とするならば、表面露出している構成相が各構成相のみである粒子、表面露出している構成相が2種類の構成相の組み合わせの粒子、表面露出している構成相が3種類以上の構成相の組み合わせの粒子といった組み合わせの種別を規定しておき、それに基づき粒子を種別毎に分類する。構成相の組み合わせの種別については別の定義がなされる場合もある。より細かく、構成相の組み合わせについて分類するようにしても良い。
【0041】
そして、表示データ生成部113は、ステップS157の分類毎に粒子数の割合を算出し、第4データ格納部115に格納する(ステップS159)。ある分類区間に10個の粒子が属しており、ある分類に粒子が3個含まれれば、その分類の粒子数割合は0.3となる。また、表示データ生成部113は、未処理の分類区間が存在するか否かを判断する(ステップS161)。未処理の分類区間が存在する場合には、処理はステップS153に戻る。一方、未処理の分類区間が存在しない場合には、表示データ生成部113は、計算結果から表示データを生成し、出力部117は、当該表示データを表示装置などに出力する(ステップS163)。
【0042】
例えば、図19に示すような表示データが生成される。本例では、輝銅鉱と斑銅鉱と黄鉄鉱と硫砒鉄鉱とが特定種類の構成相であり、粒子の平均Ag濃度の分類区間毎に、表面露出している構成相の組み合わせ種別毎の粒子個数の割合が示されている。図19の例では、平均Ag濃度が高い粒子については、表面露出している構成相が複数である粒子の割合が高く、表面露出している構成相が輝銅鉱のみの粒子と黄鉄鉱のみの粒子もある程度の割合で存在していることが分かる。すなわち、粒子の平均Ag濃度の分類区間毎に、その分類区間に属する粒子の表面がどのような構成相の組み合わせになっているかを評価することが出来、それに応じて適切な選鉱手法を選定できる。
【0043】
端子Bを介して図20の処理の説明に移行して、表示データ生成部113は、ユーザから7つの表示態様のうち特定構成相の粒径分布表示が指示されたか否かを判断する(ステップS27)。特定構成相の粒径分布表示が指示されていない場合には、処理はステップS31に移行する。一方、特定構成相の粒径分布表示が指示された場合には、表示データ生成部113は、特定構成相の粒径分布表示処理を実行する(ステップS29)。その後処理はステップS31に移行する。
【0044】
ここで図21及び図22を用いて特定構成相の粒径表示処理を説明する。
まず、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子を特定する(図21:ステップS171)。特定種類の構成相については、ユーザ等により指定された種類の構成相である。また、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子の各々の粒径を算出し、第4データ格納部115に格納する(ステップS173)。本実施の形態では、粒子の断面形状をその粒子と同じ面積に相当する円と仮定して、直径=2{粒子の面積/π}1/2で算出する。但し、粒径は粒子の大きさを規定する値の一例であって、後に述べるように、円を仮定しない場合もある。
【0045】
次に、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子の粒径の範囲及び特定種類の構成相の平均組成(平均Ag濃度)の範囲を、それぞれ複数の分類区間(値域)に分割する(ステップS175)。本ステップでは、例えば粒径の範囲及び平均組成の範囲を所定の階級数で均等に分割することで分類区間を決定する。なお、予め分類区間が規定されている場合には、本ステップはスキップされる。
【0046】
また、表示データ生成部113は、未処理の分類区間の組み合わせ、すなわち粒径についての未処理の分類区間と平均組成についての未処理の分類区間との組み合わせを1つ特定する(ステプS177)。本ステップは、実際には粒径についてのループと平均組成についてのループを表すものであるが、説明の都合で省略している。例えば、粒径の小さいもの順に、さらに平均組成の小さいもの順に選択する。そして、表示データ生成部113は、特定された分類区間の組み合わせに該当する粒子を特定種類の構成相を含む粒子から抽出し、その数を計数し、さらに特定種類の構成相を含む粒子の数で除することで割合を算出する(ステップS179)。この計算結果については第4データ格納部115に格納する。
【0047】
その後、表示データ生成部113は、未処理の分類区間の組み合わせが存在するか否かを判断する(ステップS181)。未処理の分類区間の組み合わせが存在している場合には、処理はステップS177に戻る。一方、未処理の分類区間の組み合わせが存在していない場合には、表示データ生成部113は、計算結果から表示データを生成し、出力部117は、当該表示データを表示装置などに出力する(ステップS163)。
【0048】
例えば、図22に示すような表示データが生成される。図22の例では、輝銅鉱のみに着目しており、輝銅鉱を構成相として含む粒子の粒径分布を、輝銅鉱の平均Ag濃度の分類区間毎に示している。これを見ると、輝銅鉱の平均Ag濃度が高い粒子の粒径は比較的小さいことが分かり、逆に輝銅鉱の平均Ag濃度が低い粒子の粒径は比較的大きいことが分かる。このように、平均Ag濃度が高い輝銅鉱を含む粒子の粒径に応じて、これらを回収できるような選鉱手法を選定することができるようになる。なお、構成相の平均組成ではなく、粒子の平均組成を使用しても良いし、粒径ではなく、構成相のサイズ(構成相を円とみなした場合の直径など)を使用するようにしても良い。
【0049】
図20の処理の説明に戻って、表示データ生成部113は、ユーザから7つの表示態様のうち特定構成相の面積占有割合表示が指示されたか否かを判断する(ステップS31)。特定構成相の面積占有割合表示が指示されていない場合には、処理はステップS35に移行する。一方、特定構成相の面積占有割合表示が指示された場合には、表示データ生成部113は、特定構成相の面積占有割合表示処理を実行する(ステップS33)。その後処理はステップS35に移行する。
【0050】
ここで図23乃至図25を用いて特定構成相の面積占有割合表示処理を説明する。
まず、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子を抽出する(図23:ステップS171)。特定種類の構成相については、ユーザ等により指定された種類の構成相である。また、表示データ生成部113は、抽出された粒子毎に、特定種類の構成相の面積割合を算出する(ステップS171)。特定種類の構成相に属する分析点の数/粒子に属する分析点の数で算出する。そして、表示データ生成部113は、特定種類の構成相の平均組成(平均Ag濃度)の範囲を、複数の分類区間(値域)に分割する(ステップS175)。本ステップでは、例えば平均組成の範囲を所定の階級数で均等に分割することで分類区間を決定する。なお、予め分類区間が規定されている場合には、本ステップはスキップされる。
【0051】
その後、表示データ生成部113は、未処理の分類区間を1つ特定する(ステップS177)。また、表示データ生成部113は、特定された分類区間に属する特定種類の構成相を含む粒子を特定する(ステップS179)。処理は、端子Dを介して図24の処理に移行する。
【0052】
そして、表示データ生成部113は、特定された粒子を、予め定められた面積割合区分で分類する(ステップS181)。例えば5つの区分を規定しておく。さらに、表示データ生成部113は、面積割合区分毎に、粒子数割合を算出し、第4データ格納部115に格納する(ステップS183)。面積割合区分に属する粒子の数を、分類区間に属する粒子の数で除することで粒子数割合を算出する。
【0053】
その後、表示データ生成部113は、未処理の分類区間が存在するか否かを判断する(ステップS185)。未処理の分類区間が存在する場合には、処理は端子Eを介して図23のステップS177に戻る。一方、未処理の分類区間が存在しない場合には、表示データ生成部113は、計算結果から表示データを生成し、出力部117は、当該表示データを表示装置などに出力する(ステップS187)。
【0054】
例えば、図25に示すような表示データが生成される。ここでは、輝銅鉱に着目しており、例えば、輝銅鉱の平均Ag濃度が高い粒子における輝銅鉱の面積割合がどうなっているのかを評価するものである。この例では、輝銅鉱の平均Ag濃度が低い方が、輝銅鉱の面積割合が高い粒子の割合が高いことが分かる。逆に、輝銅鉱の平均Ag濃度が高い方が、輝銅鉱の面積割合が低い粒子の割合が高いことも分かる。このような情報により、輝銅鉱の単体分離性の評価を行う。
【0055】
図20の処理の説明に戻って、表示データ生成部113は、ユーザから7つの表示態様のうち特定構成相の組み合わせ表示が指示されたか否かを判断する(ステップS35)。特定構成相の組み合わせ表示が指示されていない場合には、処理はステップS39に移行する。一方、特定構成相の組み合わせ表示が指示された場合には、表示データ生成部113は、特定構成相の組み合わせ表示処理を実行する(ステップS37)。その後処理はステップS39に移行する。
【0056】
ここで図26及び図27を用いて特定構成相の組み合わせ表示処理を説明する。
まず、表示データ生成部113は、特定種類の構成相を含む粒子を抽出する(図26:ステップS201)。特定種類の構成相については、ユーザ等により指定された種類の構成相である。また、表示データ生成部113は、特定種類の構成相の平均組成(平均Ag濃度)の範囲を、複数の分類区間(値域)に分割する(ステップS203)。本ステップでは、例えば平均組成の範囲を所定の階級数で均等に分割することで分類区間を決定する。なお、予め分類区間が規定されている場合には、本ステップはスキップされる。
【0057】
その後、表示データ生成部113は、未処理の分類区間を1つ特定する(ステップS205)。また、表示データ生成部113は、特定された分類区間に属する特定種類の構成相を含む粒子を特定する(ステップS207)。そして、表示データ生成部113は、特定された粒子を、予め定められた構成相の組み合わせで分類する(ステップS209)。例えば、特定の種類の構成相(例えば輝銅鉱)を軸に、特定の種類の構成相のみ(輝銅鉱単体)と、特定の種類の構成相と他の1の構成相(斑銅鉱、石英、硫砒銅鉱など)との組み合わせ、特定の種類の構成相と2種類以上の構成相の組み合わせといった予め定められたパターンで分類する。
【0058】
その後、表示データ生成部113は、分類毎に、粒子数割合を算出し、第4データ格納部115に格納する(ステップS209)。分類に属する粒子の数を、分類区間に属する粒子の数で除することで粒子数割合を算出する。
【0059】
そして、表示データ生成部113は、未処理の分類区間が存在するか否かを判断する(ステップS213)。未処理の分類区間が存在する場合には、処理はステップS205に戻る。一方、未処理の分類区間が存在しない場合には、表示データ生成部113は、計算結果から表示データを生成し、出力部117は、当該表示データを表示装置などに出力する(ステップS215)。
【0060】
例えば、図27に示すような表示データが生成される。ここでも、輝銅鉱に着目しており、例えば、輝銅鉱の平均Ag濃度が高い粒子における構成相の構成状態を評価するものである。この例では、輝銅鉱の平均Ag濃度が低い方が、輝銅鉱のみで構成される粒子の割合が高いことが分かる。逆に、輝銅鉱の平均Ag濃度が高い方が、輝銅鉱以外の構成相との組み合わせで構成されている粒子の割合が高いことも分かる。また、輝銅鉱の平均Ag濃度が低い方では、輝銅鉱と斑銅鉱との組み合わせからなる粒子が存在するが、輝銅鉱の平均Ag濃度が高い方では、そのような粒子が存在しないことも分かる。このような情報により、輝銅鉱の単体分離性の評価を行う。
【0061】
図20の処理の説明に戻って、表示データ生成部113は、例えばユーザから処理終了が指示されたか否かを判断する(ステップS39)。処理終了でなければ、処理は端子Cを介して図2のステップS11に戻る。一方、処理終了であれば、処理を終了する。
【0062】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、処理フローは一例であって、処理結果が変わらない限り、ステップの順番入れ替えや複数ステップの並列実行を行うようにしてもよい。また、図1の機能構成例も一例であって、プログラムモジュール構成とは一致しない場合もある。また、情報処理装置100は、1台のコンピュータで実装される場合もあれば、複数台のコンピュータで実装される場合もある。
【0063】
また、上で述べた実施の形態では、有用な元素Agに着目した例で説明したが、Ag以外の元素に着目しても良いし、忌避元素(例えばヒ素As)等に着目して、上記のような表示データを生成するようにしても良い。このような表示データに応じて選鉱方法を選択することで、忌避元素であるAsの分離及び除去を高効率に実施できるようにする。また、粒径については粒子の大きさを規定する値(すなわちサイズ)の一例であって、例えば粒子面積や粒子の表面(すなわち樹脂との境界)上の任意の2点間のうちの最大長さなどを、代わりに用いても良い。構成相サイズについても径ではなく構成相面積をサイズとして用いても良い。平均組成は、濃度に関する指標値の一例であって、他の濃度に関する値(例えば特定のいくつかの元素濃度の合算値)を用いても良い。
【0064】
なお、上で述べた情報処理装置100は、コンピュータ装置であって、図28に示すように、メモリ2501とCPU(Central Processing Unit)2503とハードディスク・ドライブ(HDD:Hard Disk Drive)2505と表示装置2509に接続される表示制御部2507とリムーバブル・ディスク2511用のドライブ装置2513と入力装置2515とネットワークに接続するための通信制御部2517とがバス2519で接続されている。なお、HDDはソリッドステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)などの記憶装置でもよい。オペレーティング・システム(OS:Operating System)及び本発明の実施の形態における処理を実施するためのアプリケーション・プログラムは、HDD2505に格納されており、CPU2503により実行される際にはHDD2505からメモリ2501に読み出される。CPU2503は、アプリケーション・プログラムの処理内容に応じて表示制御部2507、通信制御部2517、ドライブ装置2513を制御して、所定の動作を行わせる。また、処理途中のデータについては、主としてメモリ2501に格納されるが、HDD2505に格納されるようにしてもよい。本技術の実施例では、上で述べた処理を実施するためのアプリケーション・プログラムはコンピュータ読み取り可能なリムーバブル・ディスク2511に格納されて頒布され、ドライブ装置2513からHDD2505にインストールされる。インターネットなどのネットワーク及び通信制御部2517を経由して、HDD2505にインストールされる場合もある。このようなコンピュータ装置は、上で述べたCPU2503、メモリ2501などのハードウエアとOS及びアプリケーション・プログラムなどのプログラムとが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
【0065】
なお、上で述べたような処理を実行することで用いられるデータは、処理途中のものであるか、処理結果であるかを問わず、メモリ2501又はHDD2505等の記憶装置に格納される。
【0066】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0067】
本実施の形態に係る情報処理方法は、(A)鉱石試料の分析領域内の各分析点における複数の元素の濃度の測定結果に基づき、分析領域内における複数の粒子を抽出するステップと、(B)抽出された複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々について、測定結果に基づき、複数の元素のうち着目する元素についての濃度に関する指標値を算出する算出ステップと、(C)複数の粒子の少なくとも一部の各粒子又は粒子内部の少なくとも一部の構成相の各々を、濃度に関する指標値に基づき分類する分類ステップと、(D)分類結果に基づき表示データを生成するステップとを含む。
【0068】
このように上記測定結果を効果的に可視化することで、選鉱手法を検討する上で有用な評価情報が提示されるようになる。
【0069】
上記情報処理方法は、(D)抽出された複数の粒子の各々について、測定結果に基づき、特定の種類の構成相を抽出するステップをさらに含むようにしても良い。この場合、上で述べた算出ステップにおいて、特定の種類の構成相の各々について、測定結果に基づき、着目する元素についての平均組成を算出し、上で述べた分類ステップにおいて、特定の種類の構成相の各々を、平均組成に基づき分類するようにしても良い。例えば、図11に示すような表示データが生成される。なお、この分類ステップにおいて、平均組成に基づく分類の各々について、構成相の種類毎の構成相数を計数するようにしても良い。
【0070】
また、上記情報処理方法は、(D)抽出された複数の粒子の各々について、測定結果に基づき、特定の種類の構成相を抽出するステップをさらに含むようにしても良い。この場合、上で述べた算出ステップにおいて、特定の種類の構成相を有する各粒子について、測定結果に基づき、着目する元素についての平均組成を算出し、上で述べた分類ステップにおいて、特定の種類の構成相を有する各粒子を、平均組成に基づき分類するようにしても良い。例えば、図14図16図19に示すような表示データが生成される。
【0071】
より具体的には、上で述べた分類ステップが、平均組成に基づく分類の各々について、当該分類に属する粒子を、構成相の組み合わせの種類でさらに分類するステップを含むようにしても良い。
【0072】
また、より具体的には、上で述べた分類ステップが、平均組成に基づく分類の各々について、当該分類に属する粒子を、粒子のサイズでさらに分類するステップを含むようにしても良い。
【0073】
さらに、上記情報処理方法は、(D)抽出された複数の粒子の各々について、測定結果に基づき、特定の種類の構成相を抽出するステップをさらに含むようにしても良い。この場合、上で述べた算出ステップにおいて、抽出された複数の粒子において特定の種類の構成相の各々について、測定結果に基づき、着目する元素についての平均組成を算出し、上で述べた分類ステップにおいて、特定の種類の構成相を有する各粒子を、平均組成に基づき分類するようにしても良い。例えば、図22図25図28に示すようなデータが生成される。
【0074】
より具体的には、上で述べた分類ステップが、平均組成に基づく分類の各々について、当該分類に属する粒子を、構成相の組み合わせの種類でさらに分類するステップを含むようにしても良い。
【0075】
また、具体的には、上で述べた分類ステップが、平均組成に基づく分類の各々について、当該分類に属する粒子を、粒子のサイズ又は特定の種類の構成相のサイズでさらに分類するステップを含むようにしても良い。
【0076】
さらに、具体的には、上で述べた前記分類ステップが、平均組成に基づく分類の各々について、当該分類の属する粒子を、特定の種類の構成相の面積割合でさらに分類するステップを含むようにしても良い。
【0077】
なお、上で述べた特定の種類の構成相が、特定の1種類または複数種類の構成相、もしくは表面露出している特定の1種類または複数種類の構成相である場合もある。粒子や構成相のバルクとしての特性に着目するのか、表面特性に着目するのかで、異なった評価情報が得られるようになる。
【0078】
以上述べた情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを作成することができて、そのプログラムは、様々な記憶媒体に記憶される。
【0079】
また、上で述べたような情報処理方法を実行する情報処理装置は、1台のコンピュータで実現される場合もあれば、複数台のコンピュータで実現される場合もあり、それらを合わせて情報処理システム又は単にシステムと呼ぶものとする。
【符号の説明】
【0080】
101 第1データ格納部 103 定義データ格納部
105 粒子処理部 107 構成相処理部
109 第2データ格納部 111 第3データ格納部
113 表示データ生成部 115 第4データ格納部
117 出力部
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
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