(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】硬化塗膜、及び、積層体
(51)【国際特許分類】
C08F 2/46 20060101AFI20240610BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20240610BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240610BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240610BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20240610BHJP
【FI】
C08F2/46
B32B27/16 101
B32B27/18 D
C08F2/44 A
C08J7/04 A
(21)【出願番号】P 2017067644
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2020-02-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】奥村 彰朗
(72)【発明者】
【氏名】麸山 解
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】松本 直子
【審判官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-291175(JP,A)
【文献】特許第4469244(JP,B2)
【文献】特許第5196432(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/208716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J7,B32B,C08F2,C08L,C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性化合物(A)、粒子表面に加水分解性有機ケイ素化合物での処理層を有し導電性を有する金属酸化物(B)、及び有機溶剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物において、
前記化合物(A)は、多官能(メタ)アクリレート(A1)とウレタン(メタ)アクリレート(A2)とを含み、
前記多官能(メタ)アクリレート(A1)はジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物であり、
質量割合[(A1)/(A2)]は、85/15~95/5であり、
前記金属酸化物(B)が、アンチモンドープ酸化錫であり、前記金属酸化物(B)の含有率が、有機溶剤(C)を除いた活性エネルギー線硬化性組成物中30~48質量%の範囲であり、かつ、
前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を赤外吸収スペクトル測定した際の、波長810cm-1における吸光度(P1)と波長1,730cm
-1における吸光度(P2)との比[(P1)/(P2)]が、0.25以下であることを特徴とする
硬化塗膜。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)の二重結合当量が、80~350g/molの範囲である請求項1記載の
硬化塗膜。
【請求項3】
厚さが0.3~2.5μmの範囲であ
る請求項1又は2記載の硬化塗膜。
【請求項4】
表面抵抗値が、1×10
8Ω/□以上2×10
9Ω/□以下である、請求項
1~3のいずれか1項記載の硬化塗膜。
【請求項5】
厚さが、0.5~1.5μmの範囲である請求項
1~4のいずれか1項記載の硬化塗膜。
【請求項6】
基材の少なくとも1面に、請求項
1~5のいずれか1項記載の硬化塗膜を有することを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物、硬化塗膜、及び、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスティックやフィルムのような高分子材料やガラスに対し帯電防止性を付与する手法としては、(メタ)アクリル系樹脂に帯電防止剤を混合したハードコート層を設けることが提案されている。金属酸化物を用いた帯電防止ハードコートは、導電性高分子などの有機物を用いたものに比べて耐光性に優れることが知られている。
【0003】
帯電防止ハードコートは、これまで反射防止フィルムなどの帯電防止性能(109~1012Ω/□)の付与に用いられていた。近年、表面抵抗値をさらに低減(108Ω/□以下)させることで、静電気除去を目的とする需要が高まっている。例えば、IPSモード液晶の静電気による駆動乱れ防止(例えば、特許文献1を参照。)等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、光学積層体内で静電気除去を目的とした導電層に帯電防止ハードコートフィルムを用いる場合、透明性と初期抵抗値の両立に加えて、耐光性試験前後の抵抗値変化を抑えることが求められる。しかし、紫外線硬化型樹脂を用いた帯電防止ハードコートでは、耐光性に優れる金属酸化物粒子を用いても、耐光性試験後に抵抗値が上昇する問題があった。
【0005】
これに対しては、例えば、熱可塑性樹脂の第一導電層と紫外線硬化型樹脂の第二導電層を用いる方法が提案されているが、二層塗工が必要となることから工程コストが掛かる課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-224971号公報
【文献】特開2014-089270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、優れた透明性、耐擦傷性、及び帯電防止性が得られ、かつ、耐光性試験前後において表面抵抗値の変化が少ない優れた耐光安定性を有する硬化塗膜が得られる活性エネルギー線硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)、粒子表面に加水分解性有機ケイ素化合物での処理層を有し導電性を有する金属酸化物(B)、及び有機溶剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物において、前記金属酸化物(B)の含有率が、有機溶剤(C)を除いた活性エネルギー線硬化性組成物中20~50質量%の範囲であり、かつ、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を赤外吸収スペクトル測定した際の、波長810cm-1における吸光度(P1)と波長1,730cm-1における吸光度(P2)との比[(P1)/(P2)]が、0.25以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物を提供するものである。また、本発明は、前記活性エネルギー線硬化性組成物により形成されたことを特徴とする硬化塗膜、及び、その硬化塗膜を有する積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、優れた透明性、耐擦傷性、及び帯電防止性が得られるものである。更に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、一層の硬化塗膜により、耐光性試験前後において表面抵抗値の変化が少ない優れた耐光安定性が得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)、粒子表面に加水分解性有機ケイ素化合物での処理層を有し導電性を有する金属酸化物(B)、及び有機溶剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であり、前記金属酸化物(B)の含有率が、有機溶剤(C)を除いた活性エネルギー線硬化性組成物中20~50質量%の範囲であり、かつ、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を赤外吸収スペクトル測定した際の、波長810cm-1における吸光度(P1)と波長1,730cm-1における吸光度(P2)との比[(P1)/(P2)]が、0.25以下であるものである。
【0011】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート(A1)、ウレタン(メタ)アクリレート(A2)等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルとメタクリロイルの一方又は両方をいう。
【0013】
前記多官能(メタ)アクリレート(A1)は、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。この多官能(メタ)アクリレート(a1)の具体例としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート(A1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの多官能(メタ)アクリレート(A1)の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が向上することから、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及び、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの混合物がより好ましい。
【0014】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)は、ポリイソシアネート(a2-1)と水酸基を有する(メタ)アクリレート(a2-2)との反応物等を用いることができる。
【0015】
前記ポリイソシアネート(a2-1)としては、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとが挙げられるが、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の着色を低減できることから、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0016】
前記脂肪族ポリイソシアネートは、イソシアネート基を除く部位が脂肪族炭化水素から構成される化合物である。この脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2-メチル-1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、2-メチル-1,5-ジイソシアナトシクロヘキサン等の脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、前記脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートを3量化した3量化物も前記脂肪族ポリイソシアネートとして用いることができる。また、これらの脂肪族ポリイソシアネートは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0017】
前記脂肪族ポリイソシアネートの中でも塗膜の耐擦傷性を向上させるには、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
【0018】
前記(メタ)アクリレート(a2-2)は、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。この(メタ)アクリレート(a2-2)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε-カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε-カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン-ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(a2-2)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0019】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の耐擦傷性を向上できるため、1分子中に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)を1分子中に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものとするため、前記(メタ)アクリレート(a2-2)としては、(メタ)アクリロイル基は2つ以上有するものが好ましい。このような(メタ)アクリレート(a2-2)としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(a2-2)は、前記脂肪族ポリイソシアネートの1種に対して、1種を用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの(メタ)アクリレート(a2-2)の中でも、耐擦傷性をより一層向上できるため、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0020】
前記ポリイソシアネート(a2-1)と前記(メタ)アクリレート(a2-2)との反応は、常法のウレタン化反応により行うことができる。また、ウレタン化反応の進行を促進するために、ウレタン化触媒の存在下でウレタン化反応を行うことが好ましい。前記ウレタン化触媒としては、例えば、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等のリン化合物;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛等の有機亜鉛化合物などが挙げられる。
【0021】
前記多官能(メタ)アクリレート(A1)とウレタン(メタ)アクリレート(A2)との質量割合[(A1)/(A2)]としては、より一層優れた耐擦傷性が得られる点から、50/50~99/1の範囲が好ましく、80/20~97/3の範囲がより好ましく、85/15~95/5の範囲が更に好ましい。
【0022】
また、必要に応じて、上記の多官能(メタ)アクリレート(A1)、ウレタン(メタ)アクリレート(A2)以外の活性エネルギー線硬化性化合物(A)として、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等を用いることができる。前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリシジルメタクリレート等に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られるものが挙げられる。また、前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合して得られた両末端が水酸基であるポリエステルに、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたもの、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加したものに(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたものが挙げられる。さらに、前記ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエーテルポリオールに(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたものが挙げられる。
【0023】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)の二重結合当量としては、より一層優れた耐光安定性、及び、耐擦傷性が得られる点から、50~500g/molの範囲であることが好ましく、80~350g/molの範囲がより好ましい。なお、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)の二重結合当量は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)を構成する化合物の合計質量を、(メタ)アクリロイル基の当量で除した値を示す。
【0024】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)の含有率としては、優れた耐擦傷性が得られる点から、有機溶剤(C)を除いた活性エネルギー線硬化性組成物中45~67質量%の範囲であることが好ましく、50~60質量%の範囲がより好ましい。
【0025】
前記金属酸化物(B)は、導電性を有し帯電防止性を有するものである。具体的には、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、リンドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛、二酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ホウ素ドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム、酸化亜鉛ドープ酸化インジウム、錫およびガリウムドープ酸化インジウム等が挙げられる。これらの中でも、アンチモンドープ酸化錫は、帯電防止性をより高められることから好ましい。
【0026】
また、前記金属酸化物(B)は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の分散安定性をより高められることから、その粒子表面を加水分解性有機ケイ素化合物で処理したものを用いる。
【0027】
前記金属酸化物(B)は、通常、微粒子のものを用いる。その平均粒子径は、2~50nmの範囲が好ましく、5~40nmの範囲がより好ましく、4~10nmの範囲がさらに好ましい。また、前記金属酸化物(B)の微粒子は、塗材中で2~10個の鎖状で連結していることが好ましい。前記金属酸化物(B)の微粒子の平均粒子径が上記の範囲内であれば、微粒子がより凝集しにくいことから、得られる硬化塗膜の表面抵抗値をより低下させることができる。また、得られる硬化塗膜の透明性もより向上することができる。なお、本発明における平均粒子径は、動的光散乱法で測定した結果から求めたものである。
【0028】
前記金属酸化物(B)の製造に用いられる加水分解性有機ケイ素化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造の化合物が挙げられる。
【0029】
【化1】
(式中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、アリル基、アシル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、アリール基、グリシジル基、又はCH
2OC
nH
2n+1(n=1~4)を表し、R
1~R
4のうち、少なくとも1つはハロゲン原子又はアルコキシ基である。)
【0030】
上記一般式(1)において、R1~R4が、ハロゲン原子の場合、クロロ基が好ましく、アリール基の場合、フェニル基が好ましく、アルキル基又はアルコキシ基の場合、炭素原子数1~10のものが好ましい。
【0031】
次いで、金属酸化物の粒子表面を加水分解性有機ケイ素化合物で処理するために、まず、金属酸化物微粒子の水分散液を下記の方法により調製する。
【0032】
(i)金属酸化物微粒子の水分散液の調製
まず、前記金属酸化物微粒子の水分散液を調製する。このときの金属酸化物の微粒子水分散液の濃度は特に制限はないが、通常1~40質量%の範囲が好ましく、10~40質量%の範囲がより好ましい。
【0033】
次いで、金属酸化物微粒子の水分散液のpHを2~5、好ましくは2.5~4に調整する。pHを調整する方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換処理が好ましい。さらに必要に応じて酸の添加を行ってもよい。
【0034】
イオン交換樹脂としては、H型カチオン交換樹脂が好ましい。イオン交換処理によって、pHが酸性にシフトする。なお、イオン交換樹脂処理だけでは、pHが充分低くならないことがあるので、必要に応じて酸を添加することが好ましい。
【0035】
なお、イオン交換処理を行わずに、酸のみを添加してもpHは前記範囲に調整できる。イオン交換処理を行えば、脱イオンもされるので鎖状の金属酸化物微粒子が得られやすくなる。また、上記の範囲にpHを調整することにより、金属酸化物微粒子の凝集を抑制し、加水分解性有機ケイ素化合物を加えた際に球状凝集粒子となることを抑制でき、鎖状の金属酸化物微粒子を得やすくなり、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の塗膜外観、帯電防止性に優れたものとすることができる。
【0036】
上記のpH調整後に金属酸化物微粒子の水分散液中の含有比率を、濃縮又は希釈により10~40質量%、好ましくは15~35質量%に調整する。
【0037】
金属酸化物微粒子の水分散液中の含有比率を上記の範囲にすることで、金属酸化物微粒子の連結(鎖状化)が生じやすくなり、また、後述する加水解性有機ケイ素化合物を金属酸化物微粒子の表面に均一に吸着させることができる。
【0038】
(ii)有機ケイ素化合物の添加
次いで、濃度調整した導電性を有する金属酸化物微粒子の水分散液に前記一般式(1)で表される加水分解性有機ケイ素化合物を加える。このような加水分解性有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(β-グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン又はトリアシルオキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン又はジアシルシラン;トリメチルクロロシランなどが挙げられる。これらの加水分解性有機ケイ素化合物は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0039】
前記加水分解性有機ケイ素化合物の使用量は、加水分解性有機ケイ素化合物の種類、金属酸化物微粒子の粒子径等によって異なるが、前記金属酸化物微粒子と加水分解性有機ケイ素化合物との質量比(加水分解性有機ケイ素化合物/金属酸化物微粒子)が、0.01~0.5の範囲であることが好ましく、0.02~0.3の範囲であることがより好ましい。
【0040】
前記導電性を有する金属酸化物の微粒子と加水分解性有機ケイ素化合物との質量比が、上記の範囲である場合は、鎖状に連結した粒子が、前記活性エネルギー線硬化性組成物中で鎖状に連結した状態を維持し、かつ良好な分散状態を維持することができる。このため、得られる硬化塗膜の透明性、帯電防止性をより向上することができる。
【0041】
前記加水分解性有機ケイ素化合物は、前記一般式(1)中のR1~R4のうち、3つ又は4つがアルコキシ基であるものを用いることが好ましい。前記一般式(1)中のR1~R4のうち、4つがアルコキシ基である加水分解性有機ケイ素化合物は金属酸化物微粒子の連結を維持することに有効であり、前記一般式(1)中のR1~R4のうち、3つがアルコキシ基である加水分解性有機ケイ素化合物は鎖状の金属酸化物微粒子の前記活性エネルギー線硬化性組成物中での分散性を向上することに有効である。
【0042】
また、前記加水分解性有機ケイ素化合物として、前記一般式(1)中のR1~R4のうち、4つがアルコキシ基であるものと3つがアルコキシ基であるものとを併用することが好ましい。この併用をする場合、4つがアルコキシ基であると、3つがアルコキシ基であるものとのモル比(アルコキシ基=4/アルコキシ基=3)は、80/20~20/80の範囲が好ましく、70/30~30/70の範囲がより好ましい。この範囲であれば、効率的に鎖状の金属酸化物微粒子を調製できる。
【0043】
上記のように加水分解性有機ケイ素化合物を金属酸化物微粒子の水分散液に添加し、加水分解すると、強固に接合した鎖状の金属酸化物微粒子を調製することができる。その理由は明確ではないものの、粒子の接合部分は活性が高いので、前記一般式(1)中のR1~R4のうち、4つがアルコキシ基であるものは吸着しやすく、また、加水分解しやすいので、アルコールの添加と同時に加水分解が進行すると考えられる。この場合、Si-OHが多く生成し、前記一般式(1)中のR1~R4のうち、3つがアルコキシ基であるものは、水への溶解度が低く、アルコールを加えることで、水に溶解して加水分解が進むため、先に粒子の接合部分に接着して加水分解した前記一般式(1)中のR1~R4のうち、4つがアルコキシ基であるもののSi-OHに、後から前記一般式(1)中のR1~R4のうち、3つがアルコキシ基であるものが反応すると考えられる。
【0044】
したがって、加水分解性有機ケイ素化合物として、前記一般式(1)中のR1~R4のうち、4つがアルコキシ基であるものと、前記一般式(1)中のR1~R4のうち、3つがアルコキシ基であるものとを併用する場合は、まず、前記一般式(1)中のR1~R4のうち、4つがアルコキシ基であるものを分散液に添加したのち、アルコールを添加するとともに前記一般式(1)中のR1~R4のうち、3つがアルコキシ基であるものを加えて加水分解することが好ましい。
【0045】
ついで、アルコールを加えて希釈し、不揮発分比率(加水分解性有機ケイ素化合物を含む全不揮発分、加水分解性有機ケイ素化合物はシリカ換算)が3~30質量%、さらには5~25質量%の範囲となるように調整して、加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解を行う。
【0046】
前記アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられる。また、これらのアルコールの他に、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0047】
加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解する際の温度は、加水分解を効率よく行え、粒子の凝集も抑制できることから、30℃~使用溶媒の沸点(概ね100℃)の範囲とすることが好ましく、40℃~使用溶媒の沸点の範囲とすることがより好ましい。
【0048】
また、加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解する際に、必要に応じて触媒として酸を加えてもよい。前記酸としては、例えば、塩酸、硝酸、酢酸、リン酸等が挙げられる。
【0049】
上記のようにして得られた加水分解性有機ケイ素化合物で処理した導電性を有する金属酸化物(B)の微粒子は、得られる硬化塗膜の帯電防止性をより向上できることから、硬化塗膜中の粒子の平均連結数が3~20の範囲になるものが好ましく、5~20の範囲になるものがより好ましい。
【0050】
また、得られた金属酸化物微粒子の水分散液は、そのまま前記活性エネルギー線硬化性組成物の調製に用いることもできるが、必要に応じて洗浄あるいは脱イオン処理することができる。脱イオン処理等してイオン濃度を低下させると、より安定性に優れた金属酸化物微粒子の水分散液を得ることができる。この脱イオン処理は、公知の陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、両イオン交換樹脂を用いて行うことができる。洗浄は、限外濾過膜法等を用いることができる。
【0051】
さらに、得られた金属酸化物微粒子の水分散液は、必要に応じて水を溶媒置換して用いることができる。溶媒置換を行うと、後述する活性エネルギー線硬化性組成物中での分散性がより向上し、塗工性に優れることから、平滑で、スジやムラがなく、透明性が高く、帯電防止性に優れた硬化塗膜が得られる。
【0052】
一方、得られた金属酸化物微粒子の水分散液に、必要に応じて水を添加して用いることもできる。水を添加すると、金属酸化物微粒子の連結数が増加し、得られる硬化塗膜の帯電防止性を著しく向上できる。
【0053】
上記のように、得られた金属酸化物微粒子の水分散液に、水を添加する場合、水の添加後、室温(約5~35℃)で、1~48時間程度保存してから、前記活性エネルギー線硬化性組成物に用いることで、より帯電防止性に優れた硬化塗膜を得ることができる。
【0054】
なお、本発明においては、前記金属酸化物(B)の含有率が、有機溶剤(C)を除いた活性エネルギー線硬化性組成物中20~50質量%の範囲であることが必須である。前記金属酸化物(B)の含有率が、20質量%を下回る場合には、耐光安定性が不良となり、また、50質量%を超える場合には、活性エネルギー線硬化性化合物(A)が相対的に少なくなるため、耐擦傷性、及び透明性が不良となる。なお、前記金属酸化物(B)の含有率としては、より一層優れた耐光安定性が得られる添加から、30~48質量%の範囲が好ましく、35~46質量%の範囲がより好ましい。
【0055】
前記有機溶剤(C)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、ダイアセトンアルコール、ジメチルカルビトール、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセチルアセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記有機溶剤(C)の含有率としては、塗工性等の点から、活性エネルギー線硬化性組成物中60~85質量%の範囲が好ましい。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、基材に塗工後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜と形成することができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中に光重合開始剤(D)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤(E)を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤(D)や光増感剤(E)を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(D)や光増感剤(E)を添加する必要はない。
【0058】
前記光重合開始剤(D)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル(ジベンゾイル)、メチルフェニルグリオキシエステル、オキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、オキシフェニル酢酸2-(2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル等のベンジル系化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ-ケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルサルフォニル)プロパン-1-オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(D)は、1種で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0059】
また、前記光増感剤(E)としては、例えば、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の3級アミン化合物、o-トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0060】
上記の光重合開始剤(D)及び光増感剤(E)の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)及び前記化合物(B)の合計100質量部に対し、各々0.05~20質量部が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記の活性エネルギー線硬化性化合物(A)及び金属酸化物(B)以外に、用途、要求特性に応じて、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機充填剤などを配合することができる。これらその他の配合物は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0062】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物により硬化塗膜を形成させる方法としては、例えば、前記活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗工した後、有機溶剤(C)を乾燥させ、紫外線を照射する方法が挙げられる。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工する基材の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン-1等のポリオレフィン系樹脂;セルロースアセテート(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂;ノルボルネン系樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂(例えば、JSR株式会社製「アートン」)、環状オレフィン共重合体(例えば、三井化学株式会社製「アペル」)などが挙げられる。さらに、これらの樹脂からなる基材を2種以上貼り合わせたものを用いても構わない。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、上述したいずれの基材を使用した場合でも、優れた透明性、耐擦傷性、帯電防止性、及び耐光安定性が得られるが、近年需要が増加しているノルボルネン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に使用することができる。
【0064】
また、前記基材の厚さは、10~500μmの範囲が好ましい。また、フィルム状のを用いる場合には、その厚さは、15~200μmの範囲が好ましく、20~150μmの範囲がより好ましく、25~100μmの範囲がさらに好ましい。フィルム基材の厚さを当該範囲とすることで、フィルム基材の片面に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物により硬化塗膜を設けた場合にもカールを抑制しやすくなる。
【0065】
本発明の積層体は、前記基材の少なくとも1面に、前記活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、その後活性エネルギー線を照射して硬化塗膜とすることで得られたものである。フィルムに本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工する方法としては、例えば、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、ディップコート、スピンナーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。
【0066】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、基材へ塗工した後、活性エネルギー線を照射する前に、有機溶媒(C)を揮発させるために、加熱又は室温乾燥することが好ましい。加熱乾燥の条件としては、有機溶剤が揮発する条件であれば、特に限定しないが、通常は、温度50~100℃の範囲で、時間は0.5~10分の範囲で加熱乾燥することが好ましい。
【0067】
また、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化するために、紫外線を照射する装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀-キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。
【0068】
前記紫外線を照射する際の積算光量(紫外線波長:365nmでの積算光量)としては、後述する硬化塗膜の吸光度の比[(P1)/(P2)]を本発明で規定する範囲に調整しやすく、またより一層優れた耐光安定性が得られる点から、100mJ/cm2以上であることがこのましく、200~1,000mJ/cm2の範囲であることがより好ましく、250~600mJ/cm2の範囲が更に好ましい。
【0069】
本発明の硬化塗膜を赤外吸収スペクトル測定した際の、波長810cm-1における吸光度(P1)と波長1,730cm-1における吸光度(P2)との比[(P1)/(P2)]としては、優れた耐光安定性を得るうえで、0.25以下であることが必須である。なお、前記吸光度の比は、硬化塗膜中に残留する二重結合量を規定するものである。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化の進行具合は、エネルギー線硬化前後でその化学構造に変化のあるアクリロイル基の二重結合(CH2=CH-)の化学構造に由来する特性吸収波長の吸光度と、エネルギー線硬化前後でその化学構造に変化のないアクリロイル基のカルボニル結合(-CO-)の化学構造に由来する特性吸収波長の吸光度の比を用いて定量することができる。ここで、アクリロイル基中の二重結合(CH2=CH-)の化学構造に由来する特性吸収波長としては、例えば、波長810cm-1、990cm-1、1,640cm-1等が利用可能であるが、これらの中でも、その他の吸収による影響が少なく、かつ検出感度が最も良好な波長810cm-1の吸光度が利用される。また、アクリロイル基中のカルボニル結合(-CO-)の化学構造に由来する特性吸収波長としては、例えば波長1,240cm-1、1,720cm-1等が利用可能であるが、検出感度が最も良好な波長1,720cm-1の吸光度が利用される。
【0070】
なお、耐光性試験後に抵抗値が上昇する原因としては、光による活性エネルギー線硬化性組成物が硬化した後に残留する二重結合部の硬化収縮と、熱による樹脂の軟化により、導電経路が歪んだためであると考えられる。よって、本発明においては、前述したとおり、金属酸化物(B)の量を増加させ、導電経路を厚くすること、及び、硬化塗膜中で残留する二重結合量を低減することがさせ、前記吸光度の比の範囲とすることにより、優れた耐光安定性が得られたものと推測される。
【0071】
前記吸光度の比[(P1)/(P2)]としては、積層体とした場合にカールを抑制できる点から、0.05~0.2の範囲であることが好ましい。
【0072】
前記硬化塗膜の前記吸光度の比を前記範囲に調整する方法としては、例えば、活性エネルギー線硬化性組成物(A)の選定や、紫外線照射時の積算光量を調整する方法が挙げられる。
【0073】
また、本発明の硬化塗膜は優れた帯電防止性を有するものであり、その表面抵抗値としては、5.0×107Ω/□以上5.0×109Ω/□以下であることが好ましく、1.0×108Ω/□以上2.0×109Ω/□以下がより好ましく、1.0×108Ω/□以上8.0×108Ω/□以下が更に好ましい。なお、前記硬化塗膜の表面抵抗値の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0074】
前記硬化塗膜の厚さとしては、使用される用途に応じて適宜決定されるが、0.1~10μmの範囲であることが好ましく、0.3~2.5μmの範囲がより好ましく、0.5~1.5μmの範囲が更に好ましい。
【0075】
また、前記基材と前記硬化塗膜との積層体の全光線透過率としては、83%以上であることが好ましく、86%以上がより好ましい。なお、前記積層体の全光線透過率は、日本電色株式会社製「Haze Meter(型番NDH2000)」を使用し測定した値を示す。
【0076】
以上、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、優れた透明性、耐擦傷性、及び帯電防止性が得られるものである。更に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、一層の硬化塗膜により、耐光性試験前後において表面抵抗値の変化が少ない優れた耐光安定性が得られるものである。
【0077】
よって、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物により形成された硬化塗膜は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、自動車の内外装用加飾フィルム(シート)、窓向けの低反射フィルムや熱線カットフィルムなど各種用途に用いることができる。本発明の硬化塗膜は、優れた帯電防止性を有することから、埃等の付着を抑制できる。さらに、液晶ディスプレイ等に使用した場合には、発生した静電気によるディスプレイの誤動作も防止することができる。
【0078】
次に、本発明の硬化塗膜を用いた液晶表示装置の態様について説明する。
【0079】
前記液晶表示装置の構成としては、例えば、本発明の硬化塗膜と基材とを有する積層体/偏光膜/液晶表示素子/偏光膜が積層されたものが挙げられる。
【0080】
前記積層体の偏光膜と貼り合わせる面とは反対の面には、必要に応じて、反射防止層、防眩層、耐指紋層、防汚層、抗菌層等が設けられていてもよい。
【0081】
前記偏光膜としては、ポリビニルアルコール系の偏光膜を好適に使用することができる。また、前記偏光膜には位相差板を貼り合わせて一体化したものを用いることもできる。
【0082】
前記液晶表示素子としては、例えば、TN型、STN型、TSTN型、マルチメイン型、VA型、IPS型、OCB型等が挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0084】
(製造例1:金属酸化物微粒子(1)の製造)
錫酸カリウム130質量部及び酒石酸アンチモニルカリウム30質量部を純水400質量部に溶解した溶液を、硝酸アンモニウム1.0質量部及び15質量%アンモニア水12質量部を溶解した純水1,000質量部中に添加した後、60℃で12時間、攪拌しながら加水分解を行った。この加水分解の際に、10質量%硝酸溶液を添加してpH9.0に保った。加水分解によって生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて不揮発分20質量%のアンチモンドープ酸化錫前駆体の水酸化物分散液を調製した。この分散液を温度100℃で噴霧乾燥した。得られた粉体を空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することによりアンチモンドープ酸化錫粉末を得た。この粉末60質量部を4.3質量%水酸化カリウム水溶液140質量部に分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
【0085】
次に、上記で得られたゾルをイオン交換樹脂でpHが3.0になるまで脱アルカリイオン処理を行った後、純水を加えて不揮発分20質量%のアンチモンドープ酸化錫微粒子からなる金属酸化物微粒子(1)の水分散液を調製した。この金属酸化物微粒子(1)の水分散液のpHは3.3であった。また、金属酸化物微粒子(1)の平均粒子径は9nmであった。次いで、得られた金属酸化物微粒子(1)の水分散液100質量部を25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学株式会社製;正ケイ酸エチル、SiO2濃度28.8質量%)4質量部を3分かけて添加した後、30分攪拌した。その後、エタノール86.8質量%、イソプロピルアルコール9.3質量%及びメタノール3.9質量%の混合溶剤(以下、「混合エタノール」と略記する。)100質量部を1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温した後、15時間加熱処理を行った。このときの不揮発分は10質量%であった。次いで、限外濾過膜にて分散媒の水等を濾別し、代えて混合エタノールに置換し、不揮発分19.4質量%のシリカで被覆した鎖状の金属酸化物微粒子(1)の分散液を調製した。なお、鎖状の金属酸化物微粒子(1)を構成する微粒子の平均連結数は5個であった。この平均連結数は、鎖状の金属酸化物微粒子の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、100個の鎖状の金属酸化物微粒子について、連結数を求め、この平均値を四捨五入して、平均連結数とした。
【0086】
[実施例1]
多官能アクリレート混合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート64質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート17質量%、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート19質量%の混合物)10.3質量部、ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトールテトラアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物、固形分100質量%)1.1質量部、メチルエチルケトン37.3質量部、ダイアセトンアルコール9.9質量部、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」とBASFジャパン株式会社製「イルガキュア127」との22.5/77.5(質量比)の混合物)0.2質量部を均一に混合した後、製造例1で得られた金属酸化物微粒子(1)の分散液41.1質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK-UV3576」)0.1質量部を混合して、不揮発分20%の活性エネルギー線硬化性組成物(1)を得た。
次いで、得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1)を、予めその表面を電気的処理(コロナ放電処理;出力100W、速度1.0m/分)した47μmのゼオノアフィルム「ZF16」(日本ゼオン株式会社製)上に、バーコーターを使用して、乾燥後の膜厚が1μmとなるように塗工し、60℃で90秒間乾燥したのち、高圧水銀ランプで300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。
【0087】
[実施例2]
乾燥後の膜厚を0.5μmとなるように変更した以外は、実施例1と同様にしてハードコート層を形成した。
【0088】
[実施例3]
乾燥後の膜厚を1.5μmとなるように変更した以外は、実施例1と同様にしてハードコート層を形成した。
【0089】
[実施例4]
多官能アクリレート混合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート64質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート17質量%、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート19質量%の混合物)13.7質量部、ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトールテトラアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物、固形分100質量%)1.5質量部、メチルエチルケトン53.3質量部、ダイアセトンアルコール9.4質量部、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」とBASFジャパン株式会社製「イルガキュア127」との22.5/77.5(質量比)の混合物)0.3質量部を均一に混合した後、製造例1で得られた金属酸化物微粒子(1)の分散液21.7質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK-UV3576」)0.1質量部を混合して、不揮発分20質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(2)を得た。
次いで、得られた活性エネルギー線硬化性組成物(2)を、予めその表面を電気的処理(コロナ放電処理;出力100W、速度1.0m/分)した47μmのゼオノアフィルム「ZF16」(日本ゼオン株式会社製)上に、バーコーターを使用して、乾燥後の膜厚が1μmとなるように塗工し、60℃で90秒間乾燥したのち、高圧水銀ランプで300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。
【0090】
[比較例1]
多官能アクリレート混合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート64質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート17質量%、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート19質量%の混合物)7.7質量部、ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトールテトラアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物、固形分100質量%)0.9質量部、メチルエチルケトン24.4質量部、ダイアセトンアルコール10.8質量部、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」とBASFジャパン株式会社製「イルガキュア127」との22.5/77.5(質量比)の混合物)0.2質量部を均一に混合した後、製造例1で得られた金属酸化物微粒子(1)の分散液55.7質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK-UV3576」)0.1質量部を混合して、不揮発分20質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(1’)を得た。
次いで、得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1’)を、予めその表面を電気的処理(コロナ放電処理;出力100W、速度1.0m/分)した47μmのゼオノアフィルム「ZF16」(日本ゼオン株式会社製)上に、バーコーターを使用して、乾燥後の膜厚が1μmとなるように塗工し、60℃で90秒間乾燥したのち、高圧水銀ランプで300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。
【0091】
[比較例2]
多官能アクリレート混合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート64質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート17質量%、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート19質量%の混合物)27.4質量部、ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトールテトラアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物、固形分100質量%)3.0質量部、メチルエチルケトン24.4質量部、ダイアセトンアルコール10.8質量部、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」とBASFジャパン株式会社製「イルガキュア127」との22.5/77.5(質量比)の混合物)0.2質量部を均一に混合した後、製造例1で得られた金属酸化物微粒子(1)の分散液16.9質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK-UV3576」)0.1質量部を混合して、不揮発分20質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(2’)を得た。
次いで、得られた活性エネルギー線硬化性組成物(2’)を、予めその表面を電気的処理(コロナ放電処理;出力100W、速度1.0m/分)した47μmのゼオノアフィルム「ZF16」(日本ゼオン株式会社製)上に、バーコーターを使用して、乾燥後の膜厚が1μmとなるように塗工し、60℃で90秒間乾燥したのち、高圧水銀ランプで300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。
【0092】
[比較例3]
紫外線照射時の積算光量を100mJ/cm2に変更した以外は、実施例1と同様にしてハードコート層を形成した。
【0093】
[吸光度比[(P1)/(P2)]の算出]
実施例及び比較例にて得られたハードコート層を有するフィルムに対して、フーリエ変換赤外分光光度計(株式会社島津製作所製「FTIR-8400S」)を使用して、ATRアタッチメント(結晶:ZnSe)にて、波長810cm-1における吸光度(P1)と波長1,730cm-1における吸光度(P2)とを測定し、吸光度比[(P1)/(P2)]を算出した。
【0094】
[透明性の評価方法]
実施例及び比較例にて得られたハードコート層を有するフィルムに対して、日本電色株式会社製「Haze Meter(型番NDH2000)」を使用して全光線透過率を測定し、以下のように透明性を評価した。
「○」:全光線透過率が86%以上。
「×」:全光線透過率が86%未満。
【0095】
[耐擦傷性の評価方法]
実施例及び比較例にて得られたハードコート層を有するフィルムを30cm×2cmの長方形に裁断し、クロックメーター形摩擦試験機(直径1.0cm円形摩擦子、スチールウール#0000、荷重500g、10往復)を使用して試験を行い、試験後の硬化塗膜表面を目視で観察し、以下のように耐擦傷性を評価した。
「○」:傷がつかない。
「×」:試験片フィルム全体に傷がつく。
【0096】
[帯電防止性の評価方法]
実施例及び比較例にて得られたハードコート層を有するフィルムの表面について、2端子UAプローブのアタッチメントを取り付けたハイレスタ-UP(三菱化学アナリテック株式会社製)を使用して、印加電圧500Vで幅20mm間距離の表面抵抗値を測定した。
【0097】
[耐光安定性の評価方法]
実施例及び比較例にて得られたハードコート層を有するフィルムに、16mm幅のガラス板(厚さ:1.0mm)をDIC株式会社製粘着テープ「ZB7010W-15(厚さ:15μm)」を使用して貼り合わせた。表面抵抗値の測定で2端子UAプローブ(幅20mm)がふれる測定箇所を、黒い遮光紙で被った後、ガラス板越しにサンシャインウェザオメーターによる促進耐候性試験(JISL0891:2007に準拠し、以下の条件に行った。)を実施した。
光源:サンシャインカーボンアーク灯連続照射
温度:63℃
相対湿度:50%RH
照射時間:50時間
この試験後、黒い遮光紙を外し、[帯電防止性の評価方法]と同様に表面抵抗値を測定した。耐光安定性の評価は、耐光試験前後で測定した表面抵抗値の比[(耐光試験後の表面抵抗値)/(耐光試験前の表面抵抗値)]により行い、1.5以下である場合には耐光安定性が優れていると評価した。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
表1~4中の略語は、以下のものである。
「DPHA/DPPA/DPTA」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート64質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート17質量%、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート19質量%の混合物
「UA」:ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトールテトラアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物、固形分100質量%)
「MEK」:メチルエチルケトン
「DAA」:ダイアセトンアルコール
【0103】
実施例1~4より、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、優れた透明性、耐擦傷性、及び帯電防止性が得られ、かつ、耐光性試験前後において表面抵抗値の変化が少ない優れた耐光安定性を有する硬化塗膜が得られることが分かった。
【0104】
一方、比較例1は、金属酸化物(B)の含有率が、本発明で規定するより多い態様であるが、耐擦傷性が不良であった。
【0105】
比較例2は、金属酸化物(B)の含有率が、本発明で規定するより少ない態様であるが、初期の表面抵抗値が高く、また耐光性試験前後における表面抵抗値の変化も大きく、耐擦傷性が不良であった。
【0106】
比較例3は、硬化塗膜の吸光度比が、本発明で規定する範囲より高い態様であるが、耐光性試験前後において表面抵抗値の変化が大きく、耐光安定性が不良であった。