(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ポリシロキサン、これを含んでなる組成物、およびこれを用いた硬化膜
(51)【国際特許分類】
C08G 77/52 20060101AFI20240610BHJP
C08L 83/14 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C08G77/52
C08L83/14
(21)【出願番号】P 2020527941
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2018082943
(87)【国際公開番号】W WO2019106064
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2017231770
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恵
(72)【発明者】
【氏名】芝山 聖史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 克人
(72)【発明者】
【氏名】林 昌伸
(72)【発明者】
【氏名】野中 敏章
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-108116(JP,A)
【文献】国際公開第2016/146896(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/119627(WO,A1)
【文献】特開平03-047842(JP,A)
【文献】特表2014-521809(JP,A)
【文献】特表昭55-500909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(式中、
R
1は、水素、1~3価の、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、C
6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)、および
以下の式(Ib)で示される繰り返し単位:
【化2】
(式中、
R
2は、それぞれ独立に、水素、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
1~10アルキル、C
6~20アリールもしくはC
2~10アルケニルであるか、式(Ib’):
【化3】
で表される連結基であり、
Lは、それぞれ独立に、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
6~20アリーレンであり、
mは2であり、
nは1であり、
qは1であり、
ただし、ひとつのSiに結合するO
0.5の数nとR
2の数mとの合計数は3であり、
かつ
前記式(Ib)で示される繰り返し単位に含まれるqの総和が1以上である)
を含むポリシロキサン(Pa)
であって、
式(Ib)で示される繰り返し単位が、ポリシロキサン(Pa)の繰り返し単位の総数に対して、0.5~50モル%である、ポリシロキサン(Pa)。
【請求項2】
以下の式(Ic)で示される繰り返し単位:
【化4】
をさらに含むものである、請求項1に記載のポリシロキサン(Pa)。
【請求項3】
前記式(Ib)のLが、非置換の、C
6~20アリーレンである、請求項
1または2に記載のポリシロキサン(Pa)。
【請求項4】
質量平均分子量が500~25,000である、請求項
1~3のいずれか1項に記載のポリシロキサン(Pa)。
【請求項5】
プリベーク後の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が50~20,000Å/秒である、請求項
1~4のいずれか1項に記載のポリシロキサン(Pa)。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれか1項に記載のポリシロキサン(Pa)と溶媒とを含んでなる組成物。
【請求項7】
以下の式(Ia)で示される繰り返し単位を含んでなり、以下の式(Ib)で示される繰り返し単位を含まない、ポリシロキサン(Pb)をさらに含んでなる、請求項
6に記載の組成物。
【化5】
(式中、
R
1は、水素、1~3価の、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、C
6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
【化6】
(式中、
R
2は、それぞれ独立に、水素、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
1~10アルキル、C
6~20アリールもしくはC
2~10アルケニルであるか、式(Ib’):
【化7】
で表される連結基であり、
Lは、それぞれ独立に、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
6~20アリーレンであり、
mはそれぞれ独立に0~2の整数であり、
nはそれぞれ独立に1~3の整数であり、
qはそれぞれ独立に0または1であり、
ただし、ひとつのSiに結合するO
0.5の数nとR
2の数mとの合計数は3であり、
かつ
前記式(Ib)で示される繰り返し単位に含まれるqの総和が1以上である)
【請求項8】
前記ポリシロキサン(Pb)がさらに以下の式(Ic)で示される繰り返し単位を含む、請求項
7に記載の組成物。
【化8】
【請求項9】
さらに、シラノール縮合触媒を含んでなる、請求項
6~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
さらに、ジアゾナフトキノン誘導体を含んでなる、請求項
6~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項
6~10のいずれか1項に記載の組成物を、基板に塗布し、加熱することを含んでなる、硬化膜の製造方法。
【請求項12】
前記加熱が450℃以上の温度条件で行われる、請求項
11に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項13】
前記硬化膜の波長400nmの光に対する透過率が90%以上である、請求項
11または12に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項14】
請求項
11~13のいずれか一項に記載の方法を含んでなる電子素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサンおよびポリシロキサンを含んでなる組成物に関するものである。また、本発明はポリシロキサンを含んでなる組成物を用いて製造された硬化膜およびそれを用いた素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ・発光ダイオード・太陽電池などの光学素子において、さらなる光利用効率の向上や省エネルギーのためのさまざまな提案がなされている。例えば、液晶ディスプレイにおいて、透明な平坦化膜をTFT素子上に被覆形成し、この平坦化膜上に画素電極を形成させることにより、表示装置の開口率を上げる方法が知られている。
【0003】
このようなTFT基板用平坦化膜の材料としては、アクリル系樹脂とキノンジアジド化合物を組み合わせた材料が知られている。これらの材料は平坦化特性と感光性を備えている為、コンタクトホールやその他のパターンをつくることができる。しかしながら、解像度やframe frequencyが向上するにつれて配線がより複雑になる為、平坦化が厳しくなりこれらの材料では対応が困難になっている。
【0004】
高耐熱性、高透明性、高解像度の硬化膜を形成させるための材料としてポリシロキサンが知られている。特にシルセスキオキサン誘導体は、低誘電率、高透過率、高耐熱性、UV耐性、および塗布均一性に優れている為、広く用いられてきた。シルセスキオキサンは、3官能性のシロキサン構造単位RSi(O1.5)からなるポリマーで、化学構造的には無機シリカ(SiO2)と有機シリコーン(R2SiO)の中間的存在であるが、有機溶媒に可溶性でありながら、それから得られた硬化物は無機シリカに近い、特徴的な高い耐熱性を示す特異的な化合物である。また、凹凸の大きい基板に、塗布し、硬化した場合に、平坦性を上げるために、厚膜を形成できるポリシロキサンについての開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、厚膜化した際にクラックが生じない等の、優れた特性を有する硬化膜の製造に適したポリシロキサンを提供しようとするものである。本発明は、さらに優れた特性を有するパターンを形成できるポリシロキサン組成物およびそれを用いた硬化膜の製造方法をも提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるポリシロキサン(Pa)は、
以下の式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(式中、
R
1は、水素、1~3価の、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、C
6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)、および
以下の式(Ib)で示される繰り返し単位:
【化2】
(式中、
R
2は、それぞれ独立に、水素、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
1~10アルキル、C
6~20アリールもしくはC
2~10アルケニルであるか、式(Ib’):
【化3】
で表される連結基であり、
Lは、それぞれ独立に、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
6~20アリーレンであり、
mはそれぞれ独立に0~2の整数であり、
nはそれぞれ独立に1~3の整数であり、
qはそれぞれ独立に0または1であり、
ただし、ひとつのSiに結合するO
0.5の数nとR
2の数mとの合計数は3であり、かつ
前記式(Ib)で示される繰り返し単位に含まれるqの総和が1以上である)
を含んでなるものである。
【0008】
また、本発明による組成物は、上記のポリシロキサン(Pa)と溶媒とを含んでなるものである。
【0009】
また、本発明による硬化膜は、上記の組成物を、基板に塗布し、加熱することを含んでなるものである。
【0010】
また、本発明による電子素子は、上述の硬化膜を具備してなるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるポリシロキサン(Pa)によれば、高耐熱性であり、厚膜化した際にクラックが生じにくく、かつ硬化膜を形成させることができる。また、得られた硬化膜は、透過性に優れている。本発明によるポリシロキサン(Pa)を含んでなる組成物は、感光性を付与することにより、ポジ型またはネガ型のパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。以下、本明細書において、特に限定されない限り、記号、単位、略号、用語は以下の意味を有するものとする。
【0013】
本明細書において、~または-を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0014】
本明細書において、炭化水素は、炭素および水素を含み、必要に応じて、酸素または窒素を含むものを意味する。炭化水素基は、1価または2価以上の、炭化水素を意味する。
本明細書において、脂肪族炭化水素は、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族炭化水素を意味し、脂肪族炭化水素基は、1価または2価以上の、脂肪族炭化水素を意味する。芳香族炭化水素は、必要に応じて脂肪族炭化水素基を置換基として有することも、脂環と縮合していていることもできる、芳香環を含む炭化水素を意味する。芳香族炭化水素基は、1価または2価以上の、芳香族炭化水素を意味する。これらの脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基は必要に応じて、フッ素、オキシ、ヒドロキシ、アミノ、カルボニル、またはシリル等を含む。また、芳香環とは、共役不飽和環構造を有する炭化水素を意味し、脂環とは、環構造を有するが共役不飽和環構造を含まない炭化水素を意味する。
【0015】
本明細書において、アルキルとは直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味し、直鎖状アルキルおよび分岐鎖状アルキルを包含し、シクロアルキルとは環状構造を含む飽和炭化水素から水素をひとつ除外した基を意味し、必要に応じて環状構造に直鎖状または分岐鎖状アルキルを側鎖として含む。
【0016】
本明細書においてアリールとは、芳香族炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味する。アルキレンとは、直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素を二つ除去した基を意味する。アリーレンとは、芳香族炭化水素から任意の水素を二つ除去した炭化水素基を意味する。
【0017】
本明細書において、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。また、本明細書でいうフルオロアルキルとは、アルキル中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいい、フルオロアリールとは、アリール中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいう。
【0018】
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれかである。
本明細書において、%は質量%、比は質量比を表す。
【0019】
本明細書において、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0020】
<ポリシロキサン>
ポリシロキサンとは、Si-O-Si結合(シロキサン結合)を主鎖とするポリマーのことを言う。また本明細書において、一般的なポリシロキサンとしては、式(RSiO1.5)nで表わされるシルセスキオキサンポリマーも含まれるものとする。
【0021】
[ポリシロキサン(Pa)]
本発明によるポリシロキサン(Pa)は、
以下の式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化4】
(式中、
R
1は、水素、1~3価の、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、C
6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)、および
以下の式(Ib)で示される繰り返し単位:
【化5】
(式中、
R
2は、それぞれ独立に、水素、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
1~10アルキル、C
6~20アリールもしくはC
2~10アルケニルであるか、式(Ib’):
【化6】
で表される連結基であり、
Lは、それぞれ独立に、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
6~20アリーレンであり、
mはそれぞれ独立に0~2の整数であり、
nはそれぞれ独立に1~3の整数であり、
qはそれぞれ独立に0または1であり、
ただし、ひとつのSiに結合するO
0.5の数nとR
2の数mとの合計数は3であり、かつ
前記式(Ib)で示される繰り返し単位に含まれるqの総和が1以上である)
を含んでなる。
【0022】
式(Ia)において、R1が1価基である場合、R1としては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。R1がメチルの化合物は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、フェニルは、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。R1がヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0023】
また、R1が2価基または3価基である場合、R1は、例えば、(i)メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびデカンなどのアルカンから2つまたは3つの水素を除去した基、(ii)シクロヘプタン、シクロヘキサン、およびシクロオクタンなどのシクロアルカンから、2つまたは3つの水素を除去した基、(iii)ベンゼン、ナフタレン、およびベンゼンなどの炭化水素のみで構成された芳香族化合物から2つまたは3つの水素を除去した基、および(iv)ピペリジン、ピロリジン、およびイソシアヌレートなどのアミノ基、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から2つまたは3つの水素を除去した基、であることが好ましい。パターンだれを改善し、また基板との密着性が向上するため、(iv)であることがより好ましい。
【0024】
式(Ib)および(Ib’)において、R2は、非置換のC1~10アルキルであることが好ましく、非置換のC1~3アルキルであることがより好ましい。また、mが2であり、nが1であることが好ましい。より好ましくは、式(Ib)において、R2は、非置換のC1~10アルキルであり、更に好ましくは非置換のC1~3アルキルである。式(Ib)および(Ib’)において、Lは、非置換の、C6~20アリーレンであることが好ましく、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレンであることがより好ましい。また、全てのqが1であることが好ましい。
【0025】
式(Ib)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、形成される硬化膜の強度、耐熱性が低下するため、ポリシロキサン(Pa)の繰り返し単位の総数に対して0.5~50モル%であることが好ましい。
【0026】
また、本発明によるポリシロキサン(Pa)は、必要に応じて、以下の式(Ic)で示される繰り返し単位を有していてもよい。
【化7】
式(Ic)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、組成物の感度低下や、溶媒や添加剤との相溶性の低下、膜応力が上昇するためクラックが発生しやすくなることがあるため、ポリシロキサン(Pa)の繰り返し単位の総数に対して40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0027】
ポリシロキサン(Pa)は、上記したような繰り返し単位やブロックが結合した構造を有するが、末端にシラノールを有することが好ましい。このようなシラノール基は、前記した繰り返し単位またはブロックの結合手に、-O0.5Hが結合したものである。
【0028】
[ポリシロキサン(Pb)]
本発明による組成物は、ポリシロキサン(Pa)と溶媒とを含んでなるものである。本発明による組成物は、ポリシロキサン(Pa)とは異なるポリシロキサン(Pb)を含むことができる。このようなポリシロキサンとして、前記した式(Ia)で示される繰り返し単位を含み、前記した式(Ib)で示される構造を含まないポリシロキサン(Pb)が好ましい。すなわち、ポリシロキサン(Pa)は、式(Ib)で示される繰り返し単位を含む点で特徴づけられ、ポリシロキサン(Pb)は、式(Ib)で示される繰り返し単位を含まない点で特徴づけられる。なお、ポリシロキサン(Pa)における、式(Ib)で示される繰り返し構造以外の構造とポリシロキサン(Pb)の構造とは一致する必要はない。すなわち、例えば分子量や、繰り返し単位(Ia)の配合比、R1の種類など、それぞれポリシロキサン(Pa)とは独立に決定することができる。
【0029】
ポリシロキサン(Pb)は、繰り返し単位(Ia)のほかに例えば(Ic)で表される繰り返し単位を含むことができる。ここで、ポリシロキサン(Pb)は繰り返し単位(Ic)を含むことが好ましい。ポリシロキサン(Pb)を構成する繰り返し単位の総数に対して、繰り返し単位(Ia)の配合比は60~100モル%であることが好ましく、80~90モル%であることがより好ましく、繰り返し単位(Ic)の配合比は40モル%以下であることが好ましく、10~20モル%であることがより好ましい。
【0030】
ポリシロキサン(Pb)は、上記したような繰り返し単位やブロックが結合した構造を有するが、末端にシラノールを有することが好ましい。このようなシラノール基は、前記した繰り返し単位またはブロックの結合手に、-O0.5Hが結合したものである。
【0031】
本発明による組成物は、ポリシロキサン(Pa)、またはポリシロキサン混合物を含んでいる。本願発明の効果をより強く発現させるためには、このポリシロキサン全体に含まれる繰り返し単位の総数に対する、繰り返し単位(Ib)の割合が、0.5~50モル%であることが好ましく、3~30モル%であることがより好ましい。
また、ポリシロキサン(Pa)とポリシロキサン(Pb)の配合比は、質量を基準として5:95~100:0であることが好ましい。その配合比は、(Pa)を構成する繰り返し単位の(Ia)と(Ib)の配合比によって適宜調整される。
また、ポリシロキサンが混合物である場合、その混合物の質量平均分子量は、一般に500~25,000であり、有機溶媒への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から1,000~20,000であることが好ましい。
【0032】
[ポリシロキサン(Pa)および(Pb)の合成方法]
このようなポリシロキサン(Pa)は、下記式(ia):
R
1’[Si(OR
a)
3]
p (ia)
(式中、
pは1~3の整数であり、
R
1’は、水素、1~3価の、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、C
6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
R
aはC
1~10のアルキルを表す)
で表わされるケイ素化合物と、
下記式(ib):
【化8】
(式中、
R
2’は、それぞれ独立に、水素、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
1~10アルキル、C
6~20アリールまたはC
2~10アルケニルであるか、または式(ib’):
【化9】
で表される基であり、
R
bは、それぞれ独立に、C
1~10のアルキルであり、
L’は、それぞれ独立に、非置換、または酸素もしくは窒素で置換されている、C
6~20アリーレンであり、
m’はそれぞれ独立に0~2の整数であり、
n’はそれぞれ独立に1~3の整数であり、
q’はそれぞれ独立に0または1であり、
ただし、ひとつのSiに結合するOR
bの数n’とR
2’の数m’との合計数は3であり、かつ
前記式(ib)で示される繰り返し単位に含まれるqの総和が1以上である)
で表されるケイ素化合物と
を、必要に応じて酸性触媒または塩基性触媒の存在下で、加水分解及び縮合して得ることができる。
【0033】
式(ia)において、好ましいR1’は、上述で記載の好ましいR1と同様である。
式(ia)において、Raとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。式(ia)において、Raは複数含まれるが、それぞれのRaは、同じでも異なっていてもよい。
【0034】
式(ia)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、その中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
【0035】
式(ib)において、
R2’は、好ましくは、C1~10アルキル、C6~20アリール、またはC2~10アルケニルであり、より好ましくはC1~4アルキル、またはC6~11アリールであり、
Rbは、Raと同様であり、
L’は、好ましくは、非置換の、C6~20アリーレンであり、より好ましくはフェニレン、ナフチレン、またはビフェニレンであり、
m’は、好ましくは2であり、
q’は、好ましくは全てが1である。
【0036】
式(ib)で表されるケイ素化合物の好ましい具体例としては、例えば、1,4-ビス(ジメチルエトキシシリルオキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジエトキシシリルオキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0037】
ここで、シラン化合物(ia)および(ib)は、それぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0038】
上記式(ia)および(ib)で表されるシラン化合物に、下記式(ic)で表わされるシラン化合物を組み合わせてポリシロキサンを得ることもできる。このように式(ic)で表されるシラン化合物を用いると、繰り返し単位(Ia)(Ib)および(Ic)を含むポリシロキサンを得ることができる。
Si(ORc)4 (ic)
式中、Rcは、C1~10のアルキルを示す。好ましいRCは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどである。
ポリシロキサン(Pb)についても、同様に、適切なケイ素化合物を必要に応じて酸性触媒または塩基性触媒の存在下で、加水分解及び縮合して得ることができる。
【0039】
ポリシロキサン(Pa)および(Pb)の分子量は、一般的には特に限定されない。ただし、分子量が高い方が塗布性が改良される傾向がある。一方で、分子量が低い方が合成条件の限定が少なく、合成が容易であり、分子量が非常に高いポリシロキサンは合成が困難である。このような理由から、ポリシロキサンの質量平均分子量は、通常500以上25,000以下であり、有機溶媒への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から1,000以上20,000以下であることが好ましい。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0040】
また、本発明によるポリシロキサン(Pa)が感光性の組成物に含まれる場合は、基材上に塗布、像様露光、および現像を経て、硬化膜が形成される。このとき、露光された部分と未露光の部分とで溶解性に差異が発生することが必要であり、ポジ型組成物の場合には露光部における塗膜(ネガ型組成物の場合には未露光部における塗膜)は、現像液に対して一定以上の溶解性を有するべきである。例えば、プリベーク後の塗膜の2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHということがある)水溶液への溶解速度(以下、アルカリ溶解速度またはADRということがある。詳細後述)が50Å/秒以上であれば露光-現像によるパターンの形成が可能であると考えられる。しかし、形成される硬化膜の膜厚や現像条件によって要求される溶解性が異なるので、現像条件に応じたポリシロキサンを適切に選択すべきである。組成物に含まれる感光剤やシラノール縮合触媒の種類や添加量により異なるが、例えば、膜厚が0.1~100μm(1,000~1,000,000Å)であれば、ポジ型組成物の場合、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は50~5,000Å/秒が好ましく、さらに200~3,000Å/秒であることがより好ましい。ネガ型の場合、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は50~20,000Å/秒が好ましく、さらに1,000~10,000Å/秒であることがより好ましい。
【0041】
本発明によるポリシロキサン(Pa)は、用途や要求特性に応じ、上記範囲の何れかのADRを有するポリシロキサンを選択すればよい。また、ADRの異なるポリシロキサンを組合せて所望のADRを有する混合物にすることもできる。
【0042】
アルカリ溶解速度や質量平均分子量の異なるポリシロキサンとしては、触媒、反応温度、反応時間あるいは重合体を変更することで調製することができる。アルカリ溶解速度の異なるポリシロキサンを組合せて用いることで、現像後の残存不溶物の低減、パターンだれの低減、パターン安定性などを改良することができる。
【0043】
このようなポリシロキサンは、例えば
(M)プリベーク後の膜が、2.38質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が200~3,000Å/秒であるポリシロキサンが挙げられる。
【0044】
また、必要に応じ
(L)プリベーク後の膜が、5質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が1,000Å/秒以下であるポリシロキサン、または
(H)プリベーク後の膜の、2.38質量%TMAH水溶液に対する溶解速度が4,000Å/秒以上であるポリシロキサンと
混合し、所望の溶解速度を有する組成物を得ることができる。
【0045】
本発明に用いられるポリシロキサンは、原料として式(ia)を用いたことによって、分岐構造を有するものである。ここで、必要に応じて、ポリシロキサンの原料として2官能シラン化合物を組合せることによって、ポリシロキサンを部分的に直鎖構造とすることができる。ただし、耐熱性が下がるため、直鎖構造部分は少ないことが好ましい。具体的にはポリシロキサンの2官能性シランに由来する直鎖構造は、全ポリシロキサンの構造の30モル%以下であることが好ましい。
【0046】
[アルカリ溶解速度(ADR)の測定、算出法]
ポリシロキサンまたはその混合物のアルカリ溶解速度は、アルカリ溶液としてTMAH水溶液を用いて、次のようにして測定し、算出する。
【0047】
ポリシロキサンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)に35質量%になるように希釈し、室温でスターラーで1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したポリシロキサン溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウェハー上にピペットを用い1ccシリコンウェハーの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶媒を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製)で、塗膜の膜厚測定を行う。
【0048】
次に、この膜を有するシリコンウェハーを、23.0±0.1℃に調整された、所定濃度のTMAH水溶液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、塗膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウェハー端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウェハーをTMAH水溶液に一定時間浸漬した後、200℃のホットプレート上で5分間加熱することにより溶解速度測定中に膜中に取り込まれた水分を除去した後、膜厚測定を行い、初期の膜厚を浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をポリシロキサンの溶解速度とする。
【0049】
<組成物>
本発明による組成物は、上記のポリシロキサン(Pa)と溶媒とを含んでなる。
【0050】
[溶媒]
溶媒は、組成物に含まれる各成分を均一に溶解または分散させるものから選択される。
具体的には、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、イソプロパノール、プロパンジオールなどのアルコール類などが挙げられる。好ましくは、PGMEA、PGMEである。これらの溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
溶媒の配合比は、塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。例えば、スプレーコートの場合は、ポリシロキサンと任意の成分との総質量を基準として、90質量%以上になったりするが、ディスプレイの製造で使用される大型ガラス基板のスリット塗布では、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、通常90質量%以下、好ましくは85質量%以下とされる。
【0052】
本発明による組成物は、必要に応じて更なる添加剤を含むことができる。これらの添加剤について以下に説明する。
【0053】
なお、本発明による組成物は、非感光性組成物であるか、ポジ型感光性組成物またはネガ型感光性組成物である。本発明において、ポジ型感光性組成物とは、組成物を塗布して、塗膜を形成させ、露光したときに、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が増し、現像によって露光部が除去され、ポジ像を形成できる組成物をいう。ネガ型感光性組成物とは、組成物を塗布して、塗膜を形成させ、露光したときに、露光部がアルカリ現像液に対して不溶化し、現像によって、未露光部が除去され、ネガ像を形成できる組成物をいう。
【0054】
[ジアゾナフトキノン誘導体]
本発明によるポジ型感光性組成物は、感光剤としてジアゾナフトキノン誘導体を含んでなることが好ましい。ジアゾナフトキノン誘導体を含んでなる組成物は、露光部分が、アルカリ現像液に可溶になることにより現像によって除去されるポジ像を形成することができる。露光により、露光部は、発生したインデンカルボン酸により、アルカリ現像液に対する溶解性が上がるが、未露光部は、ポリシロキサン中に残存するシラノール基との相互作用により、溶解性が下がるからである。
【0055】
好ましいジアゾナフトキノン誘導体は、フェノール性ヒドロキシを有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物である。特にその構造について制限されないが、好ましくはフェノール性ヒドロキシを1つ以上有する化合物とのエステル化合物であることが好ましい。ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、4-ナフトキノンジアジドスルホン酸、あるいは5-ナフトキノンジアジドスルホン酸を用いることができる。4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長やシラノール縮合触媒の種類に応じて、適切な感光剤を選択することが好ましい。そしてシラノール縮合触媒として熱酸発生剤、熱塩基発生剤、または感光剤の前記波長領域に吸収が低い光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤または光熱塩基発生剤を選択した場合には、4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は優れた組成物を構成できるので好ましい。4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合して用いることもできる。
【0056】
フェノール性ヒドロキシを有する化合物としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、BisP-AF、BisOTBP-A、Bis26B-A、BisP-PR、BisP-LV、BisP-OP、BisP-NO、BisP-DE、BisP-AP、BisOTBP-AP、TrisP-HAP、BisP-DP、TrisP-PA、BisOTBP-Z、BisP-FL、TekP-4HBP、TekP-4HBPA、TrisP-TC(商品名、本州化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0057】
ジアゾナフトキノン誘導体の添加量は、ナフトキノンジアジドスルホン酸のエステル化率、あるいは使用されるポリシロキサンの物性、要求される感度、露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、好ましくはポリシロキサンの総質量100質量部に対して1~20質量部であり、さらに好ましくは3~15質量部である。ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が1質量部以上であると、露光部と未露光部との溶解コントラストが高くなり、良好な感光特性を有する。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには3質量部以上が好ましい。一方、ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が少ない程、硬化膜の無色透明性が向上し、透過率が高くなるため好ましい。
【0058】
[シラノール縮合触媒]
本発明によるネガ型感光性組成物は、光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤、および光熱塩基発生剤からなる群から選択されるシラノール縮合触媒をいずれか1つ以上を含んでなることが好ましい。ポジ型の感光性を付与する場合においても、同様に、いずれか1つ以上のシラノール縮合触媒を含んでなることが好ましく、より好ましくは光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤から選択されるシラノール縮合触媒である。これらは、硬化膜製造プロセスにおいて利用する重合反応や架橋反応に応じて、選択されることが好ましい。
【0059】
これらの含有量は、分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、ポリシロキサンの総質量100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.5~5質量部である。添加量が0.1質量部より少ないと、発生する酸または塩基の量が少なすぎて、ポストベークの際の重合が加速されず、パターンだれを起こしやすくなる。一方、添加量が10質量部より多い場合、形成される硬化膜にクラックが発生したり、これらの分解による着色が顕著になることがあるため、硬化膜の無色透明性が低下することがある。また、添加量が多くなると熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。さらに、硬化膜の、モノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0060】
本発明において、光酸発生剤または光塩基発生剤とは、露光によって結合開裂を起こして酸または塩基を発生する化合物のことをいう。発生した酸または塩基は、ポリシロキサンの重合化に寄与すると考えられる。ここで、光としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
ポジ型感光性組成物に用いられる光酸発生剤または光塩基発生剤は、パターンを投影するための像様露光(以下、最初の露光という)ではなく、その後に行う全面露光の際に、酸または塩基が発生することが好ましく、最初の露光時の波長には吸収が少ないことが好ましい。例えば、最初の露光をg線(ピーク波長436nm)および/またはh線(ピーク波長405nm)で行い、2回目の露光時の波長をg+h+i線(ピーク波長365nm)にするときは、光酸発生剤または光塩基発生剤は波長436nmおよび/または405nmにおける吸光度よりも、波長365nmにおける吸光度が大きくなる方が好ましい。
具体的には、波長365nmにおける吸光度/波長436nmにおける吸光度、または波長365nmにおける吸光度/波長405nmにおける吸光度が、2以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上、最も好ましくは100以上である。
ここで、紫外可視吸収スペクトルは、溶媒としてジクロロメタンを用いて測定される。測定装置は特に限定されないが、例えばCary 4000 UV-Vis 分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製)が挙げられる。
【0061】
光酸発生剤は、一般的に使用されているものから任意に選択できるが、例えば、ジアゾメタン化合物、トリアジン化合物、スルホン酸エステル、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホンイミド化合物等が挙げられる。
【0062】
上述のものを含めて、具体的に使用できる光酸発生剤としては、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルーp-トルエンスルホナート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジルトリフレート、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジル-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等を挙げることができる。
また、5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-オクチルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-カンファースルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル等は、h線の波長領域に吸収をもつため、h線に吸収を持たせたくない場合には使用を避けるべきである。
【0063】
光塩基発生剤の例としては、アミド基を有する多置換アミド化合物、ラクタム、イミド化合物もしくはその構造を含むものが挙げられる。
また、アニオンとしてアミドアニオン、メチドアニオン、ボレートアニオン、ホスフェートアニオン、スルホネートアニオン、またはカルボキシレートアニオン等を含むイオン型の光塩基発生剤も用いることができる。
【0064】
本発明において、光熱酸発生剤または光熱塩基発生剤とは、露光により化学構造が変化するが、酸または塩基を発生させず、その後、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらのうち、光熱塩基発生剤が好ましい。光熱塩基発生剤として、以下の式(II)で表されるものが挙げられ、より好ましくはその水和物または溶媒和物が挙げられる。式(II)で表される化合物は、露光によりシス型に反転し不安定になるために、分解温度が下がり、その後の工程でベーク温度が100℃程度であっても塩基を発生させる。
ポジ型の感光性を付与する場合、光熱塩基発生剤は、ジアゾナフトキノン誘導体の吸収波長と調整する必要はない。
【化10】
ここで、xは、1以上6以下の整数であり、
R
a’~R
f’は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、スルフィド、シリル、シラノール、ニトロ、ニトロソ、スルフィノ、スルホ、スルホナト、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホノ、ホスホナト、アミノ、アンモウム、置換基を含んでもよいC
1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を含んでもよいC
6~22の芳香族炭化水素基、置換基を含んでもよいC
1~20のアルコキシ、または置換基を含んでもよいC
6~20のアリールオキシである。
【0065】
これらのうち、Ra’~Rd’は、特に水素、ヒドロキシ、C1~6の脂肪族炭化水素基、またはC1~6のアルコキシが好ましく、Re’およびRf’は、特に水素が好ましい。R1’~R4 ’のうち2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。このとき、その環状構造はヘテロ原子を含んでいてもよい。
Nは含窒素複素環の構成原子であり、その含窒素複素環は3~10員環であり、その含窒素複素環は1つ以上の、式(II)中に示されたCxH2XOHと異なる置換基を含んでもよい、C1~20、特にC1~6の脂肪族炭化水素基をさらに有していてもよい。
【0066】
Ra’~Rd ’は、使用する露光波長により適宜選択することが好ましい。ディスプレイ向け用途においては、例えばg、h、i線に吸収波長をシフトさせるビニル、アルキニルなどの不飽和炭化水素結合官能基や、アルコキシ、ニトロなどが用いられ、特にメトキシ、エトキシが好ましい。
【0067】
【0068】
本発明による組成物が非感光性組成物である場合、熱酸発生剤または熱塩基発生剤を含有することが好ましい。本発明において、熱酸発生剤または熱塩基発生剤とは、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらは、組成物の塗布後、プリベーク時の熱では酸または塩基を発生しない、もしくは少量しか発生しないことが好ましい。
熱酸発生剤の例としては、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、芳香族スルホン酸とそのアンモニウム塩、各種アミン塩、芳香族ジアゾニウム塩及びホスホン酸とその塩など、有機酸を発生する塩やエステル等を挙げることができる。
熱酸発生剤の中でも特に、有機酸と有機塩基からなる塩であることが好ましく、スルホン酸と有機塩基からなる塩が更に好ましい。好ましいスルホン酸としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、1,4-ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、などが挙げられる。これら酸発生剤は、単独又は混合して使用することが可能である。
【0069】
熱塩基発生剤の例としては、イミダゾール、第三級アミン、第四級アンモニウム等の塩基を発生させる化合物、これらの混合物を挙げることができる。放出される塩基の例として、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(3-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(5-メチル-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-クロロ-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールなどのイミダゾール誘導体、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7が挙げられる。これら塩基発生剤は、酸発生剤と同様、単独又は混合して使用することが可能である。
【0070】
その他の添加剤としては、界面活性剤、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合阻害剤、消泡剤、または増感剤などが挙げられる。
【0071】
界面活性剤は塗布性を改善することができるため、用いることが好ましい。本発明におけるポリシロキサン組成物に使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0072】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレートなどのアセチレンアルコール誘導体、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、スリーエム株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)、又は有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0073】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩などが挙げられる。
【0074】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0075】
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して使用することができ、その配合比は、組成物の総質量に対し、通常50~10,000ppm、好ましくは100~5,000ppmである。
【0076】
現像液溶解促進剤、またはスカム除去剤は、本発明の組成物が感光性である場合、形成される塗布膜の現像液に対する溶解性を調整し、また現像後に基板上にスカムが残留するのを防止する作用を有するものである。このような添加剤として、クラウンエーテルを用いることができる。
その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.05~15質量部が好ましく、さらに0.1~10質量部が好ましい。
【0077】
また、本発明の組成物が感光性である場合に、必要に応じ増感剤を添加することができる。ポジ型で好ましく用いられる増感剤としては、クマリン、ケトクマリンおよびそれらの誘導体、アセトフェノン類、並びにピリリウム塩およびチオピリリウム塩などの増感色素が挙げられる。
【0078】
また、増感剤として、アントラセン骨格含有化合物を用いることもできる。増感剤を使用する場合、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましい。
【0079】
本発明の組成物が感光性である場合、重合阻害剤として、ニトロン、ニトロキシドラジカル、ヒドロキノン、カテコール、フェノチアジン、フェノキサジン、ヒンダードアミンおよびこれらの誘導体の他、紫外線吸収剤を添加することが出来る。その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.01~20質量部とすることが好ましい。
【0080】
消泡剤としては、アルコール(C1~18)、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、グリセリンモノラウリレート等の高級脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)(Mn200~10,000)、ポリプロピレングリコール(PPG)(Mn200~10,000)等のポリエーテル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン化合物、および有機シロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.1~3質量部とすることが好ましい。
【0081】
密着増強剤は、本発明による組成物を用いて硬化膜を形成させたときに、硬化後にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐ効果を有する。密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましい。
【0082】
これらのその他の添加剤は単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、20質量部以下、好ましくは0.05~15質量部である。
【0083】
<硬化膜およびそれを具備した電子素子>
本発明による硬化膜は、本発明による組成物を基板に塗布して、加熱することにより製造することができる。本発明による組成物が感光性組成物である場合は、パターン形成された硬化膜を形成することができる。
【0084】
まず、前記した組成物を基板に塗布する。本発明における組成物の塗膜の形成は、組成物の塗布方法として従来知られた任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。
また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0085】
本発明による組成物の塗膜を形成した後、その塗膜の乾燥、および溶媒残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に70~150℃、好ましくは90~120℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~180秒間、好ましくは30~90秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0086】
非感光性の組成物の場合は、その後、加熱し、塗膜を硬化させる。この加熱工程における加熱温度としては、塗膜の硬化が行える温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。ただし、シラノール基が残存すると、硬化膜の薬品耐性が不十分となったり、硬化膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。硬化反応を促進し、十分な硬化膜を得るために、硬化温度は200℃以上であることが好ましく、300℃以上がより好ましく、450℃以上が特に好ましい。一般的に、硬化温度が高くなる程、膜中にクラックが発生しやすいが、本発明による組成物を用いた場合に、クラックの発生が起こりにくい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分~24時間、好ましくは30分~3時間とされる。なお、この加熱時間は、パターン膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度からパターン膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。
【0087】
感光性の組成物の場合は、塗膜を形成させた後、その塗膜表面に光照射を行う。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360~430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。中でも、液晶表示装置の場合には430nmの光を使用することが多い。照射光のエネルギーは、光源や塗膜の膜厚にもよるが、一般に5~2,000mJ/cm2、好ましくは10~1,000mJ/cm2とする。照射光エネルギーが5mJ/cm2よりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2,000mJ/cm2よりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0088】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0089】
露光後、露光個所に発生した酸または塩基により膜内のポリマー間反応を促進させるため、特にネガ型の場合、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Baking)を行うことができる。この加熱処理は、後述する加熱工程とは異なり、塗膜を完全に硬化させるために行うものではなく、現像後に所望のパターンだけが基板上に残し、それ以外の部分が現像により除去することが可能となるように行うものである。露光後加熱を行う場合、ホットプレート、オーブン、またはファーネス等を使用することができる。加熱温度は光照射によって発生した露光領域の酸または塩基が未露光領域まで拡散することは好ましくないため、過度に高くするべきではない。このような観点から露光後の加熱温度の範囲としては、40℃~150℃が好ましく、60℃~120℃が更に好ましい。組成物の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的加熱を適用することもできる。また、加熱の際の雰囲気は特に限定されないが、組成物の硬化速度を制御することを目的として、窒素などの不活性ガス中、真空下、減圧下、酸素ガス中などから選択することができる。また、加熱時間は、ウェハー面内の温度履歴の均一性がより高く維持するために一定以上であることが好ましく、また発生した酸または塩基の拡散を抑制するためには過度に長くないことが好ましい。このような観点から、加熱時間は20秒~500秒が好ましく、40秒~300秒がさらに好ましい。露光後加熱は、ポジ型感光組成物を用いる場合は、光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤または熱塩基発生剤の酸または塩基が本段階で発生しないよう、またポリマー間の架橋を促進させないため、行わない方が好ましい。
【0090】
露光後、塗膜を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来、感光性組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、アンモニア水、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、TMAH水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。この現像によって、パターンを得ることができる、現像液により現像が行われた後には、水洗がなされることが好ましい。
【0091】
その後、通常全面露光(フラッド露光)の工程を行う。光酸発生剤または光塩基発生剤を使用する場合は、この全面露光工程において酸または塩基を発生させる。光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤を使用する場合は、この全面露光工程において光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤の化学構造が変化する。また、膜中に残存する未反応のジアゾナフトキノン誘導体が存在する場合は、光分解して、膜の光透明性がさらに向上するので、透明性を求める場合は、全面露光工程を行うことが好ましい。熱酸発生剤または熱塩基発生剤が選択される場合には、全面露光は必須ではないが、上記の目的で全面露光を行うことが好ましい。全面露光の方法としては、アライナー(例えば、キヤノン株式会社製PLA-501F)などの紫外可視露光機を用い、100~2,000mJ/cm2程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する方法がある。
【0092】
現像後に得られたパターン膜を加熱することにより塗膜の硬化が行われる。加熱条件は、上述の非感光性の組成物を用いた場合と同様である。
【0093】
本発明による硬化膜は厚膜化が可能である。パターンサイズによるが、クラックが生じない膜厚の範囲は300℃硬化後で0.1μm~500μm、450℃硬化後で0.1μm~10μmである。
【0094】
また、本発明による硬化膜は、高い透過率を有するものである。具体的には、波長400nmの光に対する透過率が、90%以上であることが好ましい。
【0095】
このようにして形成された硬化膜は、フラットパネルディスプレー(FPD)など、各種素子の平坦化膜や層間絶縁膜、透明保護膜などとして、さらには、低温ポリシリコン用層間絶縁膜あるいはICチップ用バッファーコート膜などとして、多方面で好適に利用することができる。また、硬化膜を光学デバイス材料などとして用いることもできる。
【0096】
形成された硬化膜は、その後、必要に応じて、基板にさらに加工や回路形成などの後処理がなされ、電子素子が形成される。これらの後処理は、従来知られている任意の方法を適用することができる。
【0097】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0098】
合成例1(ポリシロキサンAの合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25%TMAH水溶液171g、イソプロピルアルコール(IPA)600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン36.7g、フェニルトリメトキシシラン125g、1,4-ビス(ジメチルメトキシシリルオキシ)ベンゼン28.6gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35質量%なるようにPGMEAを添加調整した。
得られたポリシロキサンの分子量(ポリスチレン換算)をGPCにて測定したところ、質量平均分子量(以下「Mw」と略記することがある)=1,200であった。また、得られた樹脂溶液をシリコンウエハにプリベーク後の膜厚が2μmになるようにスピンコーター(MS-A100(ミカサ製))により塗布し、プリベーク後2.38%TMAH水溶液に対するADRを測定したところ、1,000Å/秒であった。
【0099】
合成例2(ポリシロキサンBの合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25%TMAH水溶液196g、IPA600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン28.6g、フェニルトリメトキシシラン97.2g、1,4-ビス(ジメチルメトキシシリルオキシ)ベンゼン85.8gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35%なるようにPGMEAを添加調整した。得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、PGMEA溶液に調整した。
得られたポリシロキサンのMw=1,800、ADR=1,200Å/秒であった。
【0100】
合成例3(ポリシロキサンCの合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25%TMAH水溶液216g、IPA600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン19.0g、フェニルトリメトキシシラン55.4g、テトラメトキシシラン10.6g、および、1,4-ビス(ジメチルメトキシシリルオキシ)ベンゼン85.8gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35%なるようにPGMEAを添加調整した。
得られたポリシロキサンのMw=2,200、ADR=900Å/秒であった。
【0101】
合成例4(ポリシロキサンDの合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25%TMAH水溶液256g、IPA600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン19.0g、フェニルトリメトキシシラン55.4g、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート43.1g、および、1,4-ビス(ジメチルメトキシシリルオキシ)ベンゼン85.8gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35%なるようにPGMEAを添加調整した。
得られたポリシロキサンのMw=4,200、ADR=900Å/秒であった。
【0102】
合成例5(ポリシロキサンEの合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた1Lの三口フラスコに、35%HCl水溶液8g、PGMEA400g、水27gを仕込み、次いでフェニルトリメトキシシラン39.7g、メチルトリメトキシシラン34.1g、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート30.8g、トリメトキシシラン0.3gの混合溶液を調製した。その混合溶液を10℃にて前記フラスコ内に滴下し、同温で3時間撹拌した。次に酢酸プロピル300gを加え、分液ロートにて油相と水相に分離した。分離後の油相に残るナトリウムをさらに除去するために200gの水にて4回洗浄し、廃液の水槽のpHが4~5であることを確認した。得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35%なるようにPGMEA溶液に調整した。
得られたポリシロキサンのMw=18,000、ADR=900Å/秒であった。
【0103】
比較合成例1(ポリシロキサンFの合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた1L三口フラスコに、フェニルトリエトキシシラン168g、メチルトリエトキシシラン53.5gを投入した。その後PGMEAを300g投入し、所定の攪拌速度にて攪拌した。次に、苛性ソーダ30gを水18gに溶解させたものをフラスコに投入し、1時間反応させた。さらに、酢酸を18g、水を54g投入し、1時間反応させた後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35%なるようにPGMEAを添加調整した。
得られたポリシロキサンのMw=1,600であった。
【0104】
比較合成例2(ポリシロキサンGの合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた500mL三口フラスコに、1,4-ビス(ジメチルメトキシシリルオキシ)ベンゼン71.5gを投入した。その後PGMEを60g投入し、所定の攪拌速度にて攪拌した。次に、35%HCl1.52gと水7gをフラスコに投入し、2時間反応させた。次にトルエン100mlを加え、分液ロートにて油相と水相に分離し、水相を除去した。さらに100mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35%なるようにPGMEAを添加調整した。
得られたポリシロキサンの分子量Mw=300であった。なお、分子量が高いものは合成が困難であった。
【0105】
非感光性の組成物A~E、ならびに比較組成物PおよびQの調製
ポリシロキサンA100質量部に対して、界面活性剤としてKF-53(信越化学工業株式会社製)を0.1質量部を加えて、撹拌し、組成物Aを調製した。
また、ポリシロキサンA100質量部、ポリシロキサンB100質量部、ポリシロキサンC100質量部、ポリシロキサンD100質量部それぞれに対して、熱塩基発生剤として1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7-オルソフタル酸塩500ppm、界面活性剤としてKF-53を0.1質量部を加えて、撹拌し、組成物B、C、DおよびEを調製した。
また、ポリシロキサンF100質量部、ポリシロキサンG100質量部それぞれに対して、熱塩基発生剤として1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7-オルソフタル酸塩500ppm、界面活性剤としてKF-53を0.1質量部を加えて、撹拌し、比較組成物PおよびQを調製した。
【0106】
ポジ型感光性組成物Fの調製
ポリシロキサンA100質量部に対して、ジアゾナフトキノン誘導体として4,4’-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールのジアゾナフトキノン2.0モル変性体を4質量部、光酸発生剤として1,8-ナフタルイミジルトリフレート(商品名「NAI-105」、みどり化学株式会社製(これは、波長400~800nmに吸収ピークをもたない))を1質量部、界面活性剤としてKF-53を0.1質量部を加えて、撹拌し、組成物Fを調製した。
4インチのシリコンウェハーに組成物Fをスピンコーティングにより、最終膜厚が2μmとなるように塗布した。得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークして溶媒を蒸発させた。乾燥後の塗膜を、g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F型、製品名、キヤノン株式会社製)により100~200mJ/cm2でパターン露光した。その後2.38%TMAH水溶液を用いて90秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスした。5μm、1:1のコンタクトホールで露光部に残渣が無く、良好なパターンが得られていることが確認できた。
【0107】
ポジ型感光性組成物Gの調製
ポリシロキサンA100質量部に代えて、ポリシロキサンA80質量部およびポリシロキサンE20質量部にした以外は組成物Fと同様に、組成物Gを調製した。
4インチのシリコンウェハーに組成物Gをスピンコーティングにより、最終膜厚が2μmとなるように塗布した。得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークして溶媒を蒸発させた。乾燥後の塗膜を、g+h+i線マスクアライナーにより100~200mJ/cm2でパターン露光した。その後2.38%TMAH水溶液を用いて90秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスした。5μm、1:1のコンタクトホールで露光部に残渣が無く、良好なパターンが得られていることが確認できた。
【0108】
ネガ型感光性組成物Hの調製
ポリシロキサンA100質量部に対して、光酸発生剤として1,8-ナフタルイミジルトリフレートを2質量部、界面活性剤としてKF-53を0.1質量部を加えて、撹拌し、組成物Hを調製した。
4インチのシリコンウェハーに組成物Hをスピンコーティングにより、最終膜厚が2μmとなるように塗布した。得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークして溶媒を蒸発させた。乾燥後の塗膜を、g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F型、製品名、キヤノン株式会社製)により100~200mJ/cm2でパターン露光した。露光後100℃で60秒間加熱し、その後2.38%TMAH水溶液を用いて60秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスした。5μm、1:1のコンタクトホールで未露光部に残渣が無く、良好なパターンが得られていることが確認できた。
【0109】
[クラック限界膜厚]
4インチのガラス基板に各組成物をスピンコーティングにより塗布し、得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークした。
比較組成物Qはプリベーク後、白い結晶状の膜となり、透明均一な膜は得られなかった。これは用いたポリシロキサンの分子量が小さいために、結晶性が高いことに起因するものと推定された。
ポジ型感光性組成物F、Gについては、プリベーク後、2.38%TMAH水溶液を用いて90秒間静置し、さらに純水で60秒間リンスした。
ネガ型感光性組成物Hについては、プリベーク後、g+h+i線マスクアライナーにより100mJ/cm2で露光後、100℃で60秒間加熱し、その後2.38%TMAH水溶液を用いて60秒間静置し、さらに純水で60秒間リンスした。
その後組成物F、組成物G、組成物Hは、g+h+i線マスクアライナーにより1,000mJ/cm2でフラッド露光を行った。
そして、組成物A~Hおよび比較組成物Pから得られた塗膜を300℃で60分間加熱し硬化させた。表面を目視により観察し、クラックの有無を確認した。クラックが起きる限界膜厚を測定し、以下のように評価した。得られた結果は表1の通りであった。
A:膜厚100μmでクラックが確認されなかった(限界膜厚が、100μm超)
B:膜厚5μm以上100μm未満でクラックが確認された(限界膜厚が、5μm以上100μm未満)
C:膜厚5μm未満でクラックが確認された(限界膜厚が、5μm未満)
【0110】
上記硬化膜をさらに450℃で60分間加熱して、クラックが起きる限界膜厚を測定した。以下のように評価し、得られた結果は表1の通りであった。
A:膜厚2μmでクラックが確認されなかった(限界膜厚が、2μm超)
B:膜厚1μm以上2μm未満でクラックが確認された(限界膜厚が、1μm以上2μm未満)
C:膜厚1μm未満でクラックが確認された(限界膜厚が1μm未満)
【表1】
【0111】
[透過率]
得られた硬化膜について、株式会社島津製作所製MultiSpec-1500により400nmにおける透過率を測定したところ、何れも90%以上であった。