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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】野菜含有食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20240610BHJP
   A23L 5/40 20160101ALI20240610BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240610BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L5/40
A23L5/10 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021536984
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028353
(87)【国際公開番号】W WO2021020249
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019137691
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】仲西 由美子
(72)【発明者】
【氏名】石田 亘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知佳子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 永一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 知之
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-120470(JP,A)
【文献】特開平10-014529(JP,A)
【文献】特開平10-014530(JP,A)
【文献】特開2004-067546(JP,A)
【文献】特開2004-201553(JP,A)
【文献】特開2005-160471(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00-19/20
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH2~6の溶液で野菜を処理する脱色工程、
前記脱色工程で脱色した野菜を、亜鉛を含有する50~70℃の溶液で時間以上36時間以下処理する復色工程、及び
前記復色工程で復色した野菜を、110℃以上で処理する加熱工程を含むことを特徴とする野菜含有食品の製造方法。
【請求項2】
前記脱色工程の溶液が、有機酸を含む請求項1に記載の野菜含有食品の製造方法。
【請求項3】
前記復色工程の亜鉛が、亜鉛含有酵母抽出液由来の亜鉛を含む請求項1または2に記載の野菜含有食品の製造方法。
【請求項4】
前記野菜がズッキーニ、アスパラガス、及びブロッコリーのうちの少なくとも1つから選択される請求項1~3のいずれかに記載の野菜含有食品の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程において、前記復色工程で復色した野菜を、調味液とともに加熱する請求項1~4のいずれかに記載の野菜含有食品の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程において、前記110℃以上で処理する時間が、1分間以上60分間以下である請求項1~5のいずれかに記載の野菜含有食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜含有食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜含有食品を製造する技術において、特に、緑色野菜では加熱等による退色が大きな課題であり、これまでに、微量の有機酸を含む水溶液を銅製の容器に入れて、所定時間加熱し、その後、緑色植物と亜鉛イオンを当該銅製容器の水溶液に混合し、60℃以上で加熱処理する方法(例えば、特許文献1参照)、酸性水または食塩水または酸性の食塩水に浸漬することで処理野菜の葉緑素からマグネシウムを離脱させ、前記処理野菜を脱色する脱色ステップと、前記マグネシウムが離脱した前記葉緑素に、銅イオンなどの金属イオンを結合させることで、前記処理野菜の色を復元して固定する色固定ステップとを含む方法(例えば、特許文献2参照)、酸性溶液で退色処理したピーマンを、亜鉛高含有酵母抽出物を含む水溶液に16時間浸漬させ、その後15分ボイルする方法(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの提案の技術は、退色を防止する点で、十分なものではなく、かつ、処理後の野菜の食感が考慮された方法ではない。また、銅を使用する技術は、食品において銅の使用を好まない需要者に敬遠されるという問題がある。
【0004】
したがって、需要者に広く受け入れられる、緑色が落ちにくく、かつ食感に優れた野菜含有食品の製造方法は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-239761号公報
【文献】特開2012-120470号公報
【文献】国際公開第2013/051461号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、需要者に広く受け入れられる、緑色が落ちにくく、かつ食感に優れた野菜含有食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、pH2~6の溶液で野菜を処理する脱色工程、前記脱色工程で脱色した野菜を、亜鉛を含有する50~70℃の溶液で3時間以上処理する復色工程、及び前記復色工程で復色した野菜を、110℃以上で処理する加熱工程を含む野菜含有食品の製造方法を採用することにより、需要者に広く受け入れられる、緑色が落ちにくく、かつ食感に優れた野菜含有食品が製造できることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> pH2~6の溶液で野菜を処理する脱色工程、前記脱色工程で脱色した野菜を、亜鉛を含有する50~70℃の溶液で3時間以上処理する復色工程、及び前記復色工程で復色した野菜を、110℃以上で処理する加熱工程を含むことを特徴とする野菜含有食品の製造方法である。
<2> 前記脱色工程の溶液が、有機酸を含む前記<1>に記載の製造方法である。
<3> 前記復色工程の亜鉛が、亜鉛含有酵母抽出液由来の亜鉛を含む前記<1>又は<2>に記載の製造方法である。
<4> 前記野菜がズッキーニ、アスパラガス、及びブロッコリーのうちの少なくとも1つから選択される前記<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法である。
<5> 前記加熱工程において、前記復色工程で復色した野菜を、調味液とともに加熱する前記<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、需要者に広く受け入れられる、緑色が落ちにくく、かつ食感に優れた野菜含有食品の製造方法を提供することができる。また、前記加熱工程は、レトルト工程ともなり得るため、本発明の製造方法は、レトルト食品の製造方法としても使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(野菜含有食品の製造方法)
本発明の野菜含有食品の製造方法は、pH2~6の溶液で野菜を処理する脱色工程、前記脱色工程で脱色した野菜を、亜鉛を含有する50~70℃の溶液で3時間以上処理する復色工程、及び前記復色工程で復色した野菜を、110℃以上で処理する加熱工程を含み、さらにその他の工程を含むことができる。
また、需要者に広く受け入れられる点から、銅イオンを実質的に添加しない環境下で処理されることが好ましい。銅イオンを実質的に添加しない環境下とは、銅製の鍋の使用など、銅イオンを積極的に添加する態様は除くことを意味する。
【0011】
<(A)脱色工程>
前記脱色工程は、pH2~6の溶液で野菜を処理する工程であり、通常クロロフィルに配位しているマグネシウムイオンを離脱させる工程である。
【0012】
前記野菜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ズッキーニ、ナス、カボチャ、ピーマン、キュウリ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ササゲ、オクラ、インゲンマメ、グリーンピース、枝豆等の果菜類、アスパラガス、タマネギ、ウド等の茎菜類、ブロッコリー、ミョウガ、カリフラワー、食用菊等の花菜類、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ハクサイ、セロリ、ケール、ワラビ、野沢菜、小松菜、春菊、チンゲンサイ、水菜等の葉菜類、ダイコン、ニンジン、ゴボウ等の根菜類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明の効果が顕著に得られる点から、緑色野菜が好ましく、ズッキーニ、アスパラガス、アスパラガス、又はピーマンがより好ましい。
【0013】
前記野菜の下処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、調理された野菜、冷凍された野菜などを用いてもよいが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、生野菜、生鮮野菜、又は短時間の低温加熱(野菜内在のペクチンエステラーゼが失活しない程度、例えば80℃に達しない程度の加熱)を行った未凍結の野菜を用いることが好ましい。また、前記野菜は、カットされた野菜、皮むきされた野菜などを用いてもよい。
【0014】
前記野菜の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固形、ペースト状、液体、粉末などが挙げられるが、本発明の効果が顕著に得られる点から、固体であることが好ましく、処理後においても固形を維持するものがより好ましい。
【0015】
前記脱色工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、pH2~6の溶液に野菜を浸漬させる方法、pH2~6の溶液を野菜に噴霧させる方法、pH2~6の溶液を野菜に噴射させる方法などが挙げられる。
【0016】
前記脱色工程における、pH2~6の溶液の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、野菜100質量部に対して100質量部以上の処理液を用いることが好ましく、より好ましくは200質量部以上である。
【0017】
前記pH2~6の溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、有機酸を含む溶液が好ましく、脱色工程を妨げない範囲で、その他添加物等を含んでいてもよい。
【0018】
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、クエン酸、酢酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、柑橘類の果汁、フィチン酸などが挙げられるが、色調を維持する点からクエン酸が好ましい。
【0019】
前記pH2~6の溶液の溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水であることが好ましい。
【0020】
前記pH2~6の溶液のpHとしては、pH2~6である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、色調を維持する点からpH3~5が好ましい。
【0021】
前記pH2~6の溶液の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、好ましくは5℃以上70℃以下であるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、40℃以上70℃以下がより好ましく、50℃以上65℃以下がさらに好ましい。
【0022】
前記pH2~6の溶液で野菜を処理する時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、5分間以上180分間以下が好ましく、5分間以上60分間以下がより好ましく、10分間以上30分間以下がさらに好ましい。
【0023】
前記脱色工程において使用する調理器具としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、需要者に広く受け入れられる点から、銅製の調理器具を使用しないことが好ましい。
【0024】
<(B)復色工程>
前記復色工程は、前記脱色工程で脱色した野菜を、亜鉛を含有する50~70℃の溶液で3時間以上処理する工程であり、クロロフィルに主に亜鉛を配位させる工程である。
【0025】
前記復色工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、亜鉛を含有する50~70℃の溶液に野菜を浸漬させる方法、亜鉛を含有する50~70℃の溶液を野菜に噴霧させる方法、亜鉛を含有する50~70℃の溶液を野菜に噴射させる方法などが挙げられる。
【0026】
前記復色工程における、亜鉛を含有する50~70℃の溶液の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、野菜100質量部に対して100質量部以上の処理液を用いることが好ましく、より好ましくは200質量部以上である。
【0027】
前記亜鉛を含有する50~70℃の溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば亜鉛含有微生物抽出液を挙げることができ、亜鉛含有微生物としては酵母や乳酸菌などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。亜鉛含有酵母抽出液の製造方法としては、国際公開第2013/051461号に記載されている、亜鉛を含有する酵母をカルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させる工程を含む手法で得られた亜鉛酵母抽出物を水に溶解させる方法が挙げられる。また、復色工程を妨げない範囲で、その他添加物等を含んでいてもよい。
【0028】
前記亜鉛を含有する50~70℃の溶液の溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水であることが好ましい。
【0029】
前記亜鉛を含有する50~70℃の溶液の温度としては、50~70℃である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、50~65℃が好ましい。
【0030】
前記亜鉛を含有する50~70℃の溶液のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、pH5~7が好ましい。
【0031】
前記亜鉛を含有する50~70℃の溶液における亜鉛の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、0.001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上0.1重量%以下がより好ましく、0.0015重量%以上0.05重量%以下がさらに好ましく、0.002重量%以上0.04重量%以下が特に好ましい。亜鉛濃度が低すぎると、十分な復色効果が得られない恐れがあり、濃すぎると食味への影響が出る恐れがあり、なおかつコストの面でも不利である。
【0032】
前記亜鉛を含有する50~70℃の溶液で野菜を処理する時間としては、3時間以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、3時間以上36時間以下が好ましく、6時間以上36時間以下がより好ましく、16時間以上36時間以下がさらに好ましく、24時間以上36時間以下が特に好ましい。
【0033】
前記復色工程において使用する調理器具としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、需要者に広く受け入れられる点から、銅製の調理器具を使用しないことが好ましい。
【0034】
<(C)加熱工程>
前記加熱工程は、前記復色工程で復色した野菜を、110℃以上で処理する工程である。前記復色工程とは別にさらなる加熱を行うことで、緑色がさらに鮮やかとなる。
【0035】
前記加熱工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ヒーター加熱、マイクロ波加熱等で野菜を加熱する方法、110℃以上の溶液に野菜を浸漬させる方法などが挙げられる。前記野菜含有食品が、最終的にレトルト食品として流通する場合は、パウチ、缶、瓶等の容器に密封された野菜を、品温が110℃以上になるように加熱する方法、パウチ、缶、瓶等の容器に密封された食品を、高圧釜で加熱する方法などでもよい。また、加熱時間短縮による食味向上の点から、加圧化での加熱が好ましい。前記加圧化での加熱としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばレトルト設備での処理が挙げられる。
【0036】
前記加熱工程において、処理液を使用する場合は、食味の点から、前記復色工程における、亜鉛を含有する50~70℃の溶液とは異なるものが好ましく、亜鉛を外添しない処理がより好ましい。
前記加熱工程における亜鉛濃度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、復色工程における亜鉛濃度の1/10以下の亜鉛濃度であることが好ましい。
【0037】
前記温度としては、110℃以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、110℃以上が好ましく、115℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、120℃以上140℃以下が特に好ましい。
【0038】
前記加熱工程におけるレトルト食品の殺菌強度としては、緑色が鮮やかな、良好な外観の野菜含有食品を得る点から、F値が0.8以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。なお、良好な食感を有する野菜含有食品を得る点から、F値は50以下であることが好ましい。
【0039】
前記野菜含有食品が、最終的にレトルト食品として流通する場合は、食感の点から、前記加熱工程において、前記復色工程で復色した野菜をソース、スープ、カレー、シチュー等の調味液とともに加熱し、複数回のレトルト処理を行わないことが好ましい。
【0040】
前記110℃以上で処理する時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な外観、及び食感を有する野菜含有食品を得る点から、1分間以上60分間以下が好ましく、5分間以上60分間以下がより好ましく、10分間以上30分間以下がさらに好ましい。
【0041】
前記加熱工程において使用する調理器具としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、需要者に広く受け入れられる点から、銅製の調理器具を使用しないことが好ましい。
【0042】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脱色工程後の洗浄工程、復色工程後の洗浄工程、加熱工程後の冷却工程、添加物等の添加工程などが挙げられる。
【0043】
<<脱色工程後の洗浄工程>>
前記pH2~6の溶液で野菜を処理する脱色工程後の洗浄工程は、前記pH2~6の溶液で野菜を処理する脱色工程後に前記野菜を洗浄する工程である。
【0044】
前記洗浄の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、洗浄溶液に野菜を浸漬する方法、洗浄溶液を野菜に噴霧する方法、洗浄溶液を野菜に噴射する方法、洗浄溶液の流水で野菜を接触させる方法などが挙げられる。
【0045】
前記洗浄工程で使用する洗浄溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水、生理食塩水などが挙げられる。
【0046】
<<復色工程後の洗浄工程>>
前記復色工程後の洗浄工程は、前記脱色工程後の洗浄工程と同様にして行うことができる。
【0047】
<<加熱工程後の冷却工程>>
前記加熱工程後の冷却工程は、前記加熱工程後の野菜含有食品を冷却する工程である。
前記冷却としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、放冷、水冷、差圧冷却、真空冷却、又はこれらの組合せなどが挙げられる。
前記冷却後の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、衛生上の点で、30℃以下が好ましく、25℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。
<<添加物等の添加工程>>
前記添加物等の添加工程は、本発明の野菜含有食品の製造方法におけるいずれかの工程において、添加物等を添加する工程である。
【0048】
前記添加物等とは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、添加物、調味料、具材などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素(アミラーゼ、トランスグルタミナーゼ等)、油脂(サラダ油、大豆油、菜種油、コ-ン油、ごま油、バター等)、日持ち向上剤、品質改善剤(乳酸カルシウム等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記添加物の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
前記調味料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、砂糖、甘味料、塩、胡椒、酢、醤油、味噌、だし、コンソメ、グルタミン酸ナトリウム、ケチャップ、カレ-粉、サフランなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記調味料の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
前記具材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、きのこ、こんにゃく、油揚げ、肉、魚介、海藻類、豆などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記具材の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
(野菜含有食品)
以上の工程により本発明の野菜含有食品が製造される。
【実施例
【0053】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
<野菜含有食品の製造>
(対照例)
生鮮ズッキーニを厚さ2cmのいちょう切りでカットした。カットしたズッキーニを5分間沸騰水でボイルした。コンソメスープ170gに対し、ボイルしたズッキーニ70gを添加し、95℃で10分間加熱した。
【0055】
1.脱色工程の有無
【0056】
(実施例1)
-脱色工程-
生鮮ズッキーニを厚さ2cmのいちょう切りでカットした。脱色工程として、カットしたズッキーニを、ズッキーニの3倍量の質量のpH4のクエン酸水溶液に浸漬し、65℃で15分間静置した。脱色工程後の洗浄工程として、ズッキーニの10倍量の質量の65℃のお湯に浸漬し、2分間静置した。
【0057】
-復色工程-
復色工程として、ズッキーニの3倍量の質量の亜鉛を含有する水溶液(亜鉛濃度0.0125%:亜鉛含有酵母抽出液)に浸漬し、60℃で3時間静置した。復色工程後の洗浄工程として、ズッキーニの10倍量の質量の65℃のお湯に浸漬し、2分間静置した。
【0058】
--亜鉛含有酵母抽出液の製造方法--
市販の亜鉛含有酵母の粉末を37.7質量%のクリームになるように水で懸濁し、300mLの水に懸濁した。得られたクリームを沸騰水中で10分間加熱した後、洗浄し、沈殿を300mLにメスアップした。得られたクリーム10mLにクエン酸緩衝液(pH5.0;200ミリモル/L)を10mL添加して懸濁させた。懸濁させてから2時間後、遠心分離を行い、上清を得た。
この上清にデキストリンを添加し、固形物含量を12質量%に調製後、スプレードライヤーを用いて乾燥させて乾燥粉末を得た。これを適宜水で希釈し、所定の濃度の亜鉛含有酵母抽出液を得た。
【0059】
-加熱工程-
加熱工程として、コンソメスープ170gに対し、前記復色工程後のズッキーニ70gを添加し、120℃で20分間加熱した。
サンプルをn=3で用意し、それぞれ野菜の外観及び食感を10名のパネルにより下記評価基準にて評価し、平均点を求めた。結果を表1に示す。
【0060】
--外観及び食感評価--
対照例をコントロールとして、野菜の外観及び食感を10名のパネルにより下記評価基準にて評価し、平均点を求めた。
【0061】
(評価基準:外観)

5点:対照例と同等かそれ以上に緑色が鮮やかである
4点:対照例よりわずかに劣るが、緑色が鮮やかである
3点:対照例よりもやや劣るものの、緑色がやや鮮やかである
2点:対照例より明らかに劣り、緑色の退色が目立つ
1点:明らかに退色している
【0062】
(評価基準:食感)
硬さ
5点:対照例と同等かそれ以上の非常に良好な歯ごたえがある
4点:対照例にわずかに劣るが、良好な歯ごたえがある
3点:対照例にやや劣るものの、歯ごたえがある
2点:対照例よりも明らかに劣り、軟化が目立つ
1点:明らかに軟化している
【0063】
(実施例2)
復色工程の浸漬時間を3時間から24時間に変更した以外は実施例1と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
脱色工程、及び脱色工程後の洗浄工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
復色工程の浸漬時間を3時間から24時間に変更した以外は比較例1と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の結果より、復色工程を行うことで緑色が十分保持され、加熱工程での外観改善が顕著になることがわかった。
【0068】
2.加熱工程の条件検討
【0069】
(比較例3)
加熱工程の温度を120℃から95℃に変更し、加熱時間を20分間から10分間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0070】
(実施例3)
加熱工程の温度を120℃から110℃に変更し、加熱時間を20分間から10分間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0071】
(実施例4)
加熱工程の温度を120℃から110℃に変更し、加熱時間を20分間から30分間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0072】
(実施例5)
加熱工程の加熱時間を20分間から10分間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0073】
(実施例6)
加熱工程の加熱時間を20分間から30分間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2の結果より、復色工程で復色した野菜を、110℃以上で処理することが優れた外観及び食感を得るために必要であることがわかった。
【0076】
3.復色工程の条件検討
【0077】
(比較例4)
復食工程の温度を60℃から10℃に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0078】
(比較例5)
復食工程の温度を60℃から30℃に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0079】
(実施例7)
復食工程の温度を60℃から50℃に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0080】
(実施例8)
復食工程の温度を60℃から70℃に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0081】
(比較例6)
復食工程の温度を60℃から90℃に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
(比較例7)
復食工程の浸漬時間を24時間から0.5時間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0084】
(実施例9)
復食工程の浸漬時間を24時間から3時間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0085】
(実施例10)
復食工程の浸漬時間を24時間から6時間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0086】
(実施例11)
復食工程の浸漬時間を24時間から16時間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0087】
(実施例12)
復食工程の浸漬時間を24時間から36時間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
表3及び4の結果から、50℃~70℃かつ3時間以上の浸漬条件により、外観及び食感ともに、十分な品質(3点以上)の野菜含有食品が製造できることがわかった。
【0090】
(実施例13)
復食工程の亜鉛濃度を0.0125%から0.0025%に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0091】
(実施例14)
復食工程の亜鉛濃度を0.0125%から0.0050%に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0092】
(実施例15)
復食工程の亜鉛濃度を0.0125%から0.0075%に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0093】
(実施例16)
復食工程の亜鉛濃度を0.0125%から0.0100%に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
表5の結果から、復色工程の亜鉛濃度は0.0025%以上で外観及び食感ともに、優れた品質の野菜含有食品が製造できることがわかった。
(比較例8)
生鮮ズッキーニを生鮮ブロッコリーに変更した以外は比較例7と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表6に示す。
【0096】
(実施例17)
生鮮ズッキーニを生鮮ブロッコリーに変更した以外は実施例10と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表6に示す。
【0097】
(実施例18)
生鮮ズッキーニを生鮮ブロッコリーに変更し、復食工程の浸漬時間を24時間から12時間に変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表6に示す。
【0098】
(実施例19)
生鮮ズッキーニを生鮮ブロッコリーに変更した以外は実施例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表6に示す。
【0099】
(比較例9)
生鮮ズッキーニを生鮮ブロッコリーに変更した以外は比較例2と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表6に示す。
【0100】
【表6】
【0101】
(比較例10)
生鮮ブロッコリーを生鮮アスパラガスに変更した以外は比較例8と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0102】
(実施例20)
生鮮ブロッコリーを生鮮アスパラガスに変更した以外は実施例17と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0103】
(実施例21)
生鮮ブロッコリーを生鮮アスパラガスに変更した以外は実施例18と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0104】
(実施例22)
生鮮ブロッコリーを生鮮アスパラガスに変更した以外は実施例19と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0105】
(比較例11)
生鮮ブロッコリーを生鮮アスパラガスに変更した以外は比較例9と同様にして野菜含有食品を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0106】
【表7】
【0107】
表6及び7の結果から、脱色工程、復色工程、及び加熱工程を含む本願の製造方法によると、ブロッコリー又はアスパラガスを用いた場合においても、ズッキーニと同様に、外観及び食感ともに、優れた品質の野菜含有食品が製造できることがわかった。