(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】熱可塑性成形組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240610BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240610BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240610BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20240610BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/14
C08K3/04
B29C45/00
C08J5/18 CFG
(21)【出願番号】P 2021549767
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2020054295
(87)【国際公開番号】W WO2020173766
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー,ゼバスティアン
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03130633(EP,A1)
【文献】特開2015-196836(JP,A)
【文献】特開2004-315606(JP,A)
【文献】特開2001-121570(JP,A)
【文献】特開2001-181500(JP,A)
【文献】特表2012-531373(JP,A)
【文献】特表2018-516835(JP,A)
【文献】特開2008-274301(JP,A)
【文献】国際公開第2013/156477(WO,A1)
【文献】特表2021-516206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C03C 1/00-14/00
B29C 45/00
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DIN ISO527-5に準拠した引張弾性率が86.0~92.0GPa、DIN ISO527-5に準拠した引張強度が2600~3200MPa、及びDIN ISO7884-1に準拠した軟化点が900℃~950℃であるガラス繊維の、熱可塑性ポリアミドを含む成形材料で作られた、射出成形により得られた成形品の溶接シーム強度を向上させるための使用方法。
【請求項2】
前記ガラス繊維が、以下の組成
B1) 55.5質量%~62.0質量%のSiO
2、
B2) 14.0質量%~18.0質量%のAl
2O
3、
B3) 11.0質量%~16.0質量%のCaO、
B4) 6.0質量%~10.0質量%のMgO、
B5) 0質量%~4.0質量%のさらなる酸化物
を有し、
B3)CaO及びB4)MgOの割合の総計が17.0質量%~24.0質量%の間であり、そしてB1)~B5)の質量パーセンテージの総計が100質量%である、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド
610、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6、ポリアミド6T/66、及びそれら
の混合物から選択される、請求項1又は2に記載の使用方法。
【請求項4】
a) 30.0質量%~90.0質量%の、成分A)としての、少なくとも1種の熱可塑性ポリアミド、
b) 10.0質量%~70.0質量%の、成分B)としての、DIN ISO527-5に準拠した引張弾性率が86.0~92.0GPa、DIN ISO527-5に準拠した引張強度が2600~3200MPa、及びDIN ISO7884-1に準拠した軟化点が900℃~950℃である、ガラス繊維、
c) 0質量%~3.0質量%の、成分C)としての、少なくとも1種の熱安定剤、
d) 0
.05質量%~30.0質量%の、成分D)としての、さらなる添加剤及び加工助剤、
を含
む熱可塑性成形材料であって、
成分D)が
前記熱可塑性成形材料全体に対して0.05質量%~3質量%のカーボンブラックを含み、
成分A)からD)の質量パーセンテージの総計が100質量%であ
り、
成分B)において、MgO:CaOの質量比が、1:1.2~1:2.6であるか、または、MgO及びAl
3
O
3
の割合の総計が20.0質量%~26.0質量%の間である、
熱可塑性成形材料。
【請求項5】
前記
熱可塑性成形材料が、以下の組成
B1) 55.5質量%~62.0質量%のSiO
2、
B2) 14.0質量%~18.0質量%のAl
2O
3、
B3) 11.0質量%~16.0質量%のCaO、
B4) 6.0質量%~10.0質量%のMgO、
B5) 0質量%~4.0質量%のさらなる酸化物
であり、
B3)CaO及びB4)MgOの割合の総計が17.0質量%~24.0質量%の間であり、そしてB1)~B5)の質量パーセンテージの総計が100質量%である成分B)を用いる、請求項4に記載の
熱可塑性成形材料。
【請求項6】
成分D)がカーボンブラックだけでなく、潤滑剤も含む、請求項4又は5に記載の
熱可塑性成形材料。
【請求項7】
成分C)が、0.01質量%~3.0質量
%の量で用いられる、請求項4から6のいずれか1項に記載の
熱可塑性成形材料。
【請求項8】
成分
A)が、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド
610、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6、ポリアミド6T/66及びそれら
の混合物から選択される、請求項4から7のいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
成分
B)が、15.0質量%~55.0質量%
の量で用いられる、請求項4から8のいずれか1項に記載の
熱可塑性成形材料。
【請求項10】
成分A)、B)及び任意にC)及びD)を混合することによる、請求項4から9のいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料の製造方法。
【請求項11】
繊維、フィルム
又は成形品を製造するための請求項4から9のいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料の使用方法。
【請求項12】
請求項4から9のいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料で作られた繊維、フィルム又は成形品。
【請求項13】
請求項4から9のいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料
の射出成
形による、請求項11による繊維、フィルム又は成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリアミドを含む熱可塑性成形材料で作られた、射出成形による成形品の溶接シーム強度を向上させるための、特別なガラス繊維の使用方法に関するものである。そして本発明は対応する熱可塑性成形材料に関するものであり、その製造方法、その使用方法、及びこの熱可塑性成形材料で作られた繊維、フィルム、又は成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、世界的に大規模に製造されているポリマーの一つであり、フィルム、繊維及び成形品(材料)という主な使用分野に加えて、多数の他の最終用途にも役立つ。ポリアミドの中でも、ポリアミド-6(ポリカプロラクタムPA6)及びポリアミド-6,6(ナイロン、ポリヘキサメチレンアジパミド)は、製造量の最も多いポリマーである。工業的に重要なポリアミドのほとんどは、高い熱安定性を特徴とする半結晶性の熱可塑性ポリマーである。
【0003】
ポリアミドから構成される成形品は、例えば射出成形によって製造される。これは一般に(動的)溶接シームを形成する。一般に、静的溶接シームと動的溶接シームは区別される。静的溶接シームは、例えば溶接プロセス中、熱可塑性成形物を接合する際に形成される。動的溶接シームは、射出成形プロセスにおいてプラスチック構成要素に形成され、例えばキャビティの下流における少なくとも2つの質量流の合流、壁厚の差、又は型内の複数のゲート又は射出位置が原因である。2つの流頭が衝突すると、合流点に溶接シーム(weld seam)(溶接ライン又はフローラインとしても知られる)が形成される。これらのシームは目に見える線として明らかである。このため溶接シームは、射出成形された部分において目に見える表面影響であることが多い。
【0004】
溶接シームは、構成要素における潜在的な弱点である。体積膨張のために流頭が垂直に衝突し、共に溶接される。圧力及び温度が低いほど、溶接シームの強度は低くなる。射出成形プロセス時のせん断作用及び流動状態が原因で、強化繊維は溶接シームに対して平行に配向することが多い。衝突した溶融物前部の溶接がもはや完全に起こり得ない程度まで溶融物が既に冷えている場合、溶接シームはV字型のノッチとしてしばしば表面ではっきりと見える。もしこの領域で引張応力が生じた場合、ノッチの影響によって溶接シームに応力の過大な上昇が起こり、これが後に、予め弱められた破断点として作用する。
【0005】
ポリアミドに特別なガラス繊維を使用することは、高い剛性、引裂強度及び衝撃強度を、さらなる所望の特性に加えて達成するのに有利である。
【0006】
ポリアミド成形化合物をガラス繊維で強化する場合、丸い断面を有する、いわゆるEガラス繊維(E=Electric(電気))のみが実質的に使用される。ASTM D578-00によれば、Eガラス繊維は、二酸化ケイ素52%~62%、酸化アルミニウム12%~16%、酸化カルシウム16%~25%、ホウ砂0%~10%、酸化マグネシウム0%~5%、アルカリ金属酸化物0%~2%、二酸化チタン0%~1.5%、及び酸化鉄0%~0.3%からなる。Eガラス繊維は、密度が2.54~2.62g/cm3、引張弾性率が70~75GPa、引張強度が3000~3500MPa、及び破断伸びが4.5%~4.8%であり、これら機械的特性は直径10mm及び長さ12.7mmの個別の繊維を23℃及び相対湿度50%で決定したものである。
【0007】
Eガラスは、アルカリ金属酸化物の割合が低く(2質量%未満)、そして電気絶縁特性に優れたアルミニウムボロシリケートガラスである。Eガラス繊維は、プリント回路の製造及びプラスチックの強化に特によく適している。Eガラスの主要な欠点は、その耐酸性が低いことである。Eガラスは、とりわけ、特許明細書US3,876,481に記載されている。
【0008】
Rガラス(R=Resistance(抵抗))は、アルカリ土類金属-アルミニウムシリケートガラスである。Rガラス繊維は、機械的及び熱的要求の高い適用分野で使用され、そして高温においてもかなり高い引張強度を有する。
【0009】
ECRガラス(ECR=Eガラス腐食耐性(E glass Corrosion Resistance))は、例えばUS5,789,329に記載のように、ホウ素を含まないアルミニウム-ライム-シリケートガラスであり、アルカリ金属酸化物の割合が低い。ECRガラス繊維は、高い耐酸性、良好な機械的特性及び電気的特性を有する。
【0010】
Sガラス(S=Strength(強度))は、マグネシウム-アルミニウム-シリケートガラスである。とりわけ高温での高い機械的要求に対する特殊ガラスとして開発されたものであり、10モル%を超えるAl2O3を含む。
【0011】
EP2703436A1には、微粒子充填剤だけでなく、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムで実質的に構成された高強度のガラス繊維も含むポリアミド成形材料が記載されている。好ましいガラス繊維は、少なくとも5質量%の酸化マグネシウム及び10質量%以下の酸化カルシウムを含んでいる。
【0012】
EP3130663A1は、強化された、特に長ガラス繊維で強化されたポリアミドに関するものであり、このポリアミドは、加工中に良好な機械的特性及びより優れた収縮性を示す。このポリアミドは、57.5質量%~59.5質量%のSiO2、17質量%~20質量%のAl2O3、11質量%~13.5質量%のCaO及び8.5質量%~12.5質量%のMgOで構成される特殊なガラス繊維を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許明細書US3,876,481
【文献】US5,789,329
【文献】EP2703436A1
【文献】EP3130663A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、高い剛性及び強度と相まって向上した溶接シーム強度を示す、熱可塑性ポリアミドを含む熱可塑性成形材料を提供することである。さらに、熱可塑性成形材料は、低い密度を有するべきである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、熱可塑性ポリアミドを含む熱可塑性成形材料で作られた成形品の溶接シーム強度の向上、及び好ましくは同時に密度の低減を達成することを可能にする、添加剤を提供することであり、この成形材料は、少なくとも1種のエラストマーをさらに含む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、DIN ISO527-5に準拠した引張強度が86.0~92.0GPa、DIN ISO527-5に準拠した引張弾性率が2600~3200MPa、及びDIN ISO7884-1に準拠した軟化点が900℃~950℃であるガラス繊維の使用により、好ましくは、以下の組成:
B1) 55.5質量%~62.0質量%のSiO2、
B2) 14.0質量%~18.0質量%のAl2O3、
B3) 11.0質量%~16.0質量%のCaO、
B4) 6.0質量%~10.0質量%のMgO、
B5) 0質量%~4.0質量%のさらなる酸化物
のガラス繊維の使用により達成され、
(ここでB3)CaO及びB4)MgOの割合の総計が17.0質量%~24.0質量%の間であり、そしてB1)~B5)の質量パーセンテージの総計が100質量%である)
熱可塑性ポリアミドを含む成形材料で作られた成形品の溶接シーム強度を向上させることができる。
【0017】
ガラス繊維は、DIN ISO527-5に準拠した引張強度が86.0~92.0GPa、DIN ISO527-5に準拠した引張弾性率が2600~3200MPa、及びDIN ISO7884-1に準拠した軟化点が900℃~950℃である。
【0018】
これらの規格は、2019年に施行されている版を参照する。
【0019】
この目的は、
a) 30.0質量%~90.0質量%の、成分A)としての、少なくとも1種の熱可塑性ポリアミド、
b) 10.0質量%~70.0質量%の、成分B)としての、DIN ISO527-5に準拠した引張強度が86.0~92.0GPa、DIN ISO527-5に準拠した引張弾性率が2600~3200MPa、及びDIN ISO7884-1に準拠した軟化点が900℃~950℃であるガラス繊維であって、好ましくは、以下の組成
B1) 55.5質量%~62.0質量%のSiO2、
B2) 14.0質量%~18.0質量%のAl2O3、
B3) 11.0質量%~16.0質量%のCaO、
B4) 6.0質量%~10.0質量%のMgO、
B5) 0質量%~4.0質量%のさらなる酸化物
(ここでB3)CaO及びB4)MgOの割合の総計が17.0質量%~24.0質量%の間であり、そしてB1)~B5)の質量パーセンテージの総計が100質量%である)
のガラス繊維、
c) 0質量%~3.0質量%の、成分C)としての、少なくとも1種の熱安定剤、
d) 0質量%~30.0質量%の、成分D)としての、さらなる添加剤及び加工助剤、
を含む熱可塑性成形材料によっても達成され、
ここで、成分A)からD)の質量パーセンテージの総計は、100質量%である。
【0020】
この目的はさらに、成分A)、B)、そして任意にC)及びD)の混合によって、このような熱可塑性成形材料を製造する方法により、達成される。
【0021】
この目的はさらに、繊維、フィルム及び成形品の製造を介する熱可塑性成形材料の使用によって、対応する繊維、フィルム又は成形品によって、及びそれらの製造方法によって、達成される。成形品が好ましい。
【0022】
本発明によれば、上述の組成の特別なガラス繊維の使用により、特にECRガラス繊維などの他のガラス種のガラス繊維の使用と比較して、ポリアミド成形材料の溶接シーム強度が向上することが分かった。さらに、本発明によれば、溶接シーム強度はガラス繊維の使用量を低減しても向上するので、繊維含有量の低減によって成形材料の密度が大幅に低減されることが分かった。このように、特別なガラス繊維の使用によって、溶接シーム強度の向上、密度の低減及び使用量の低減を同時に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
溶接シーム強度は、射出成形によって製造される成形品に特有の基準であり、射出成形中に溶融ポリアミド組成物の少なくとも2つの流頭が衝突し、少なくとも1つの溶接シームが形成される。
【0024】
本発明によれば、「溶接シーム」という用語は、冒頭で説明したような動的な「溶接シーム」を意味するものと理解される。「溶接シーム」という用語は、「フローライン」又は「溶接ライン」という用語で置き換えてもよい。溶接シームは、ポリアミド組成物の射出成形によって得られることが必須である。溶接シームは、射出成形された成形品における弱点であることが多い。とりわけ、ポリアミド組成物が射出成形型の型壁上で過度に急冷される場合には、合流する質量流を最適に接合することはもはやできない。この結果、溶接シームか、或いは小さなノッチが形成され、そしてこれらが射出成形された部分の弱点となる。機械的応力はしばしば溶接シーム/フローラインに沿って破壊を起こし、又はこの領域で破壊が開始する。従って、溶接シームの強度は、射出成形された成形品全体の強度にとって重要である。
【0025】
本発明による熱可塑性成形材料の成分を、以下でより詳細に説明する。
【0026】
成分A)
成分A)として、熱可塑性成形材料は、30.0質量%~90.0質量%、好ましくは40.0質量%~85.0質量%、好ましくは50.0質量%~80.0質量%、特に60.0質量%~74.9質量%の、少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドを含む。
【0027】
成分C)を併用することによって、すべての質量割合の総計が100質量%となるように、最大の可能量が成分C)の最小使用量により低減される。よって成分C)(熱安定剤)の使用は、30.0質量%~89.99質量%、好ましくは40.0質量%~84.98質量%、特に50.0質量%~79.95質量%、とりわけ60.0質量%~74.90質量%の範囲をもたらす。
【0028】
本発明による成形材料のポリアミドは、一般に、ISO307に準拠して96.0質量%硫酸中0.5質量%溶液で25℃で決定して、90~210ml/g、好ましくは110~160ml/gの粘度数を有する。
【0029】
少なくとも5000の分子量(質量平均)を有する半結晶性又はアモルファス樹脂、例えば米国特許明細書2,071,250、2,071,251、2,130,523、2,130,948、2,241,322、2,312,966、2,512,606及び3,393,210に記載されているものが好ましい。
【0030】
これらの例は、7~13環員を有するラクタムに由来するポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタム及びポリラウロラクタム、及びジカルボン酸のジアミンとの反応によって得られるポリアミドである。
【0031】
用いることができるジカルボン酸には、6~12個の炭素原子、特に6~10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸が含まれる。これらには、酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びテレフタル酸及び/又はイソフタル酸のみが含まれる。
【0032】
特に適したジアミンには、6~12個、特に6~9個の炭素原子を有するアルカンジアミン及びm-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン又は1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンが含まれる。
【0033】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリカプロラクタム及びコポリアミド6/66、特に5質量%~95.0質量%の割合のカプロラクタム単位を有するものである。
【0034】
適したポリアミドにはさらに、ω-アミノアルキルニトリル、例えばアミノカプロニトリル(PA6)及びアジポジニトリルとヘキサメチレンジアミン(PA66)から、水の存在下のいわゆる直接重合によって得ることができるものが含まれ、例えばDE-A-10313681、EP-A-1198491及びEP922065に記載されている。
【0035】
例えば、高温での1,4-ジアミノブタンのアジピン酸との縮合によって得ることができるポリアミド(ポリアミド4,6)も適している。この構造を有するポリアミドの製造方法は、例えば、EP-A-38094、EP-A-38582、及びEP-A-039524に記載されている。
【0036】
前述のモノマーの2種以上の共重合によって得ることができるポリアミド、又は複数のポリアミドの任意の所望の混合比の混合物も適している。
【0037】
適したポリアミドは、好ましくは265℃未満の融点を有する。
【0038】
以下の非網羅的なリストには、列挙したポリアミド、及び本発明の意味の範囲内のさらなるポリアミド、及び存在するモノマーが含まれる。
【0039】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エタノラクタム
PA8 カプリロラクタム
PA9 9-アミノペラルゴン酸
PA11 11-アミノウンデカン酸
PA12 ラウロラクタム
AA/BBポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 1,12-ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA9T ノナメチレンジアミン、テレフタル酸
AA/BBポリマー:
PA6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6-3-T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA6/6T (PA6及びPA6Tを参照)
PA6/66 (PA6及びPA66を参照)
PA6/12 (PA6及びPA12を参照)
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610を参照)
PA6I/6T (PA6I及びPA6Tを参照)
PAPACM12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウロラクタム
PA6I/6T/PACMT PA6I/6Tによるもの+ジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA6T/6I/MACMT PA6I/6Tによるもの+ジメチルジアミノシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA6T/6I/MXDT PA6I/6Tによるもの+m-キシリレンジアミン、テレフタル酸
PA12/MACMI ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA12/MACMT ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA-T フェニレンジアミン、テレフタル酸
PA6T/6I (PA6T及びPA6Iを参照)
PA6T/66 (PA6T及びPA66を参照)
【0040】
成分A)は、任意に、少なくとも1種の脂肪族ポリアミド及び少なくとも1種の半芳香族又は芳香族ポリアミドのブレンドである。
【0041】
本発明により成分A)として用いられるのは、例えばポリアミド6及びポリアミド6.6及び任意にポリアミド6I/6Tも含む混合物である。ポリアミド6.6の大部分を用いることが好ましい。ポリアミド6の量は、ポリアミド6.6の量に基づいて、好ましくは5.0質量%~50.0質量%、特に好ましくは10.0質量%~30.0質量%である。ポリアミド6I/6Tを併用する場合、その割合は、ポリアミド6.6の量に基づいて、好ましくは10.0質量%~25.0質量%である。
【0042】
ポリアミド6I/6Tの代わりに、又はそれに加えて、ポリアミド6I又はポリアミド6T又はこれらの混合物を用いることも可能である。
【0043】
本発明により用いられるのは特に、ポリアミド6、ポリアミド66、及びこれらのコポリマー又は混合物である。ポリアミド6又はポリアミド66は、ISO307に準拠して96.0質量%硫酸中0.5質量%溶液で25℃で決定して、好ましくは80~180ml/gの範囲、特に85~160ml/g、特に90~140ml/gの粘度数を有する。
【0044】
適したポリアミド66は、好ましくは、110~170ml/gの範囲、特に好ましくは130~160ml/gの粘度数を有する。
【0045】
適した半結晶性及びアモルファスポリアミドについて、DE102005049297をさらに参照されたい。これらはISO307に準拠して96.0質量%硫酸中0.5質量%溶液で25℃で決定して、90~210ml/g、好ましくは110~160ml/gの粘度数を有する。
【0046】
ポリアミド6又はポリアミド66において、0質量%~10質量%、好ましくは0質量%~5質量%を半芳香族ポリアミドで置き換えてよい。半芳香族ポリアミドを併用しない場合が特に好ましい。
【0047】
熱可塑性ポリアミドは、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6.10、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6、ポリアミド6T/66及びそれらのコポリマー又は混合物から選択される。
【0048】
成分B)
本発明による成形材料は成分B)として、10.0質量%~70.0質量%、好ましくは15.0質量%~55.0質量%、及び特に20.0質量%~40.0質量%、とりわけ25.0質量%~35.0質量%のガラス繊維を含み、このガラス繊維は、DIN ISO527-5に準拠した引張強度が86.0~92.0GPa、DIN ISO527-5に準拠した引張弾性率が2600~3200MPa、及びDIN ISO7884-1に準拠した軟化点が900℃~950℃であり、好ましくは以下の組成
B1) 55.5質量%~62.0質量%のSiO2、
B2) 14.0質量%~18.0質量%のAl2O3、
B3) 11.0質量%~16.0質量%のCaO、
B4) 6.0質量%~10.0質量%のMgO、
B5) 0質量%~4.0質量%のさらなる酸化物
を有し、
ここでB3)CaO及びB4)MgOの割合の総計が17.0質量%~24.0質量%の間であり、そしてB1)~B5)の質量パーセンテージの総計が100質量%である。
【0049】
さらなる酸化物B5)は、元素Li、Zn、Mn、Le、V、Ti、Be、Sn、Ba、Zr、Sr、Fe、B、Na、K、又はそれらの混合物の酸化物を意味すると理解される。
【0050】
例えば、ガラス繊維は、最大で1質量%までの、好ましくは最大0.5質量%までのLi2O及び/又はTiO2を含んでよい。
【0051】
Fe2O3及び/又はB2O3は、存在する場合、0.1質量%~3質量%、好ましくは0.2質量%~3質量%の量で含まれていてよい。
【0052】
本発明によれば、元素Zn、Mn、Le、V、Be、Sn、Ba、Zr、Snの酸化物は、存在する場合、それぞれ0.05質量%~3質量%、好ましくは0.2質量%~1.5質量%の量で含まれていてよい。
【0053】
Na2O及び/又はK2Oの適した量は、存在する場合、少なくとも0.2質量%、好ましくは0.3質量%~4質量%である。
【0054】
本発明によるガラス繊維組成物の本質的な好ましい態様は:
a)MgO(B4):Al2O3(B2)の比が、好ましくは少なくとも1.4~3.0以下、特に1.5~2.8である、
b)MgO(B4):CaO(B3)の比が、好ましくは1.4~2.7、特に1.2~2.6である。
【0055】
MgO+CaOとMgO+Al2O3との総計は、とりわけ、以下の範囲に制限される:
a)17.0質量%<MgO+CaO<24.0質量%、特に18.0質量%<MgO+CaO<23.0質量%、及び
b)20.0質量%<MgO+Al2O3<26.0質量%、特に21.0質量%<MgO+Al2O3<25.0質量%。
【0056】
ガラス繊維B)の製造は、WO2013/156477及びEP3130633A1に一般的な形で開示されている。さらなる詳細については、この文書で明示的に参照される。
【0057】
繊維長が2~20mm、特に3~10mm、及び/又はL/D比が200~2000、好ましくは200~800のガラス繊維B)を用いるのが好ましい。
【0058】
ガラス繊維B)は、熱可塑性プラスチックとの親和性をより良好にするために、シラン化合物で表面処理してよい。適したシラン化合物は、一般式
(X-(CH
2)
n)
k-Si-(O-C
mH
2m+1)
4-k、
のものであり、
式中、置換基は以下のように定義される:
X: NH
2-、HO-、
【化1】
n: 2~10の整数、好ましくは3~4、
m: 1~5の整数、好ましくは1~2、
k: 1~3の整数、好ましくは1。
【0059】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、及び置換基Xとしてグリシジル基を含む対応するシランである。
【0060】
シラン化合物は一般に、0.01質量%~2質量%、好ましくは0.025質量%~1.0質量%、及び特に0.05質量%~0.5質量%(Bに基づく)の量で表面コーティングに使用される。
【0061】
他の適したコーティング組成物(サイズ(sizes)としても知られる)は、イソシアネート、フェノール樹脂又はアクリル酸誘導体をベースにしている。
【0062】
本発明によるポリアミド成形材料は、長繊維強化ロッドペレットを製造するための既知の方法によって、とりわけ連続繊維ストランド(ロービング)をポリマー溶融物で完全に飽和させてから冷却して切断する引抜成形法によって製造することができる。このようにして得られた、好ましくは3~25mm、とりわけ4~12mmのペレット長さを有する長繊維強化ロッドペレットを、慣例の処理方法、例えば射出成形又はプレス成形によってさらに処理して、成形物を提供してよい。
【0063】
成分C)
本発明による組成物は成分C)として、0質量%~3.0質量%、好ましくは0質量%~2.0質量%、特に好ましくは0質量%~1.0質量%、特に0質量%~0.3質量%の、少なくとも1種の熱安定剤を含む。熱安定剤が存在する場合、その量は0.01質量%~3.0質量%、好ましくは0.02質量%~2.0質量%、とりわけ好ましくは0.05質量%~1.0質量%、特に0.1質量%~0.3質量%である。
【0064】
成分C)を併用する場合、成分A)の上限が対応して低減される。例えば、成分C)の最小量が0.01質量%である場合、成分A)の量の上限は89.99質量%である。
【0065】
本発明によれば、任意の所望の適した個々の熱安定剤又は2種以上の熱安定剤の混合物を用いてよい。
【0066】
熱安定剤は、好ましくは、銅化合物、第2級芳香族アミン、立体障害フェノール、ホスファイト、ホスホナイト及びこれらの混合物から選択される。
【0067】
銅化合物を使用する場合、銅の量は、組成物の合計質量に基づいて、好ましくは0.003質量%~0.5質量%、特に0.005質量%~0.3質量%、及び特に好ましくは0.01質量%~0.2質量%である。
【0068】
第2級芳香族アミンをベースとする安定剤を使用する場合、これら安定剤の量は、組成物の合計質量に基づいて、好ましくは0.2質量%~2質量%、特に好ましくは0.2質量%~1.5質量%である。
【0069】
立体障害フェノールをベースとする安定剤を使用する場合、これら安定剤の量は、組成物の合計質量に基づいて、好ましくは0.1質量%~1.5質量%、特に好ましくは0.2質量%~1質量%である。
【0070】
ホスファイト及び/又はホスホナイトをベースとする安定剤を使用する場合、これら安定剤の量は、組成物の合計質量に基づいて、好ましくは0.1質量%~1.5質量%、特に好ましくは0.2質量%~1質量%である。
【0071】
1価又は2価の銅の適した化合物C)は、例えば、無機酸又は有機酸又は1価又は2価のフェノールとの1価又は2価の銅の塩、1価又は2価の銅の酸化物、又は銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアニド又はホスフィンとの錯体、好ましくはハロゲン水素酸の又はシアン水素酸のCu(I)塩又はCu(II)塩又は脂肪族カルボン酸の銅塩である。1価の銅化合物CuCl、CuBr、CuI、CuCN及びCu2O、及び2価の銅化合物CuCl2、CuSO4、CuO、銅(II)アセテート又は銅(II)ステアラートが特に好ましい。
【0072】
銅化合物は、市販されている、及び/又はその製造は当業者に知られている。銅化合物は、それ自体で又は濃縮物の形態で使用してよい。濃縮物とは、銅塩を高濃度で含む、好ましくは成分A)と同じ化学的性質のポリマーを意味すると理解されるべきである。濃縮物の使用は慣例の方法であり、非常に少量の投入材料を加えるときに、特にしばしば用いられる。銅化合物を、さらなる金属ハロゲン化物、特にアルカリ金属ハロゲン化物、例えばNaI、KI、NaBr、KBrと組み合わせて用いることが有利であり、この場合、金属ハロゲン化物の銅ハロゲン化物に対するモル比は、0.5~20、好ましくは1~10、及び特に好ましくは3~7である。
【0073】
第2級芳香族アミンをベースとし、本発明により使用できる、安定剤の特に好ましい例には、フェニレンジアミンのアセトンとの付加物(Naugard(登録商標)A)、フェニレンジアミンのリノレン酸との付加物、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(Naugard(登録商標)445)、N,N’-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミン又はこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0074】
本発明により用いることができ、立体障害フェノールをベースとする安定剤の好ましい例には、N,N’-ヘキサメチレンビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、ビス(3,3-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル、2,1’-チオエチルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル))プロピオネート、4,4’ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、又はこれらの安定剤の2種以上の混合物が含まれる。
【0075】
好ましいホスファイト及びホスホナイトは、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリチルジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル))ペンタエリスリチルジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ-[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンゾ-[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト及びビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイトである。特に、トリス[2-tert-ブチル-4-チオ(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル)フェニル-5-メチル]フェニルホスファイト及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Hostanox(登録商標)PAR24:BASF SE社から市販されている)が好ましい。
【0076】
熱安定剤の好ましい実施態様は、有機熱安定剤(とりわけHostanox PAR24及びIrganox1010)、ビスフェノールAベースのエポキシド(とりわけEpikote1001)、及びCuI及びKIをベースとする銅安定剤の組み合わせからなる。有機安定剤及びエポキシドからなる市販の安定剤混合物の例は、BASF SE社のIrgatec(登録商標)NC66である。CuIとKIのみをベースとする熱安定剤がとりわけ好ましい。銅又は銅化合物を加える以外に、さらなる遷移金属化合物、とりわけ周期表のVB、VIB、VIIB、又はVIIIB族の金属塩又は金属酸化物の使用が可能であるか、又は除外される。さらに、周期表のVB、VIB、VIIB又はVIIIB族の遷移金属、例えば、鉄粉又は鋼粉を、本発明による成形材料に加えないことが好ましい。熱安定剤としてIrganox(登録商標)1098(N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド])も好ましく用いることができる。
【0077】
成分D)
成分D)として、本発明による組成物は、0質量%~30.0質量%、好ましくは0質量%~20.0質量%、特に0質量%~10.0質量%、とりわけ0質量%~5.0質量%のさらなる添加剤を含む。このような添加剤を併用する場合、最小量は0.1質量%、好ましくは0.5質量%、特に0.8質量%である。
【0078】
成分D)を併用する場合、成分A)の上限が対応して低減される。よって成分D)の最小量が0.1質量%である場合、成分A)の量の上限は、例えば88.9質量%である。
【0079】
考えられるさらなる添加剤には、成分B)とは異なるガラス繊維、ガラス繊維とは異なる充填剤及び強化剤、成分A)とは異なる熱可塑性ポリマー、又は他の添加剤が含まれる。
【0080】
熱可塑性成形材料は成分D)として、成分B)とは異なるガラス繊維を0質量%~20質量%、好ましくは0質量%~10質量%、特に好ましくは0質量%~5質量%含んでよい。
【0081】
とりわけ、チョップドガラス繊維を使用する。成分D)はとりわけガラス繊維を含み、短繊維を用いることが好ましい。これらは、好ましくは、2~50mmの範囲の長さ及び5~40μmの直径を有する。あるいは、連続繊維(ロービング)を使用することも可能である。適した繊維には、円形及び/又は非円形の断面積を有する繊維が含まれ、後者の場合、主断面軸の副断面軸に対する寸法比は、とりわけ>2であり、好ましくは2~8の範囲及び特に好ましくは3~5の範囲である。
【0082】
具体的な実施態様では、成分D)は、いわゆる「フラットガラス繊維」を含む。これらは具体的には、卵形又は楕円形の断面積、又は首のある楕円形(いわゆる「繭」繊維)、又は長方形又は実質的に長方形の断面積を有する。ここでは、非円形の断面積を有し、主断面軸の副断面軸に対する寸法比が2を超え、好ましくは2~8、特に3~5のガラス繊維を使用することが好ましい。
【0083】
本発明による成形材料の強化は、円形及び非円形の断面を有するガラス繊維の混合物を使用して実行してもよい。具体的な実施態様では、上で定義されたように、フラットガラス繊維の割合が優勢である、すなわち、それらは、繊維の総質量の50質量%以上を占める。
【0084】
ガラス繊維のロービングが成分D)として使用される場合、前記繊維は、好ましくは10~20μm、好ましくは12~18μmの直径を有する。これらのガラス繊維の断面は、円形、卵形、楕円形、実質的に長方形又は長方形であってよい。断面軸の比が2~5であるいわゆるフラットガラス繊維が特に好ましい。特にEガラス繊維が使用される。しかしながら、他の任意のガラス繊維種、例えば、A、C、D、M、S又はRガラス繊維、又はそれらの任意の所望の混合物又はEガラス繊維との混合物を使用することも可能である。
【0085】
本発明の文脈において、用語「充填剤及び強化剤」(=可能な成分D))は、広く解釈されるものとし、微粒子充填剤、ガラス繊維とは異なる繊維状物質及び任意の中間形態を含む。微粒子充填剤は、塵埃の形態の粒子から大きな粒までの範囲にわたる広範囲の粒径を有してよい。考えられる充填剤材料には、有機又は無機の充填剤及び強化剤が含まれる。ここで用いることができるのは、例えば無機充填剤、例えばカオリン、チョーク、ウォラストナイト、タルク、炭酸カルシウム、シリケート、二酸化チタン、酸化亜鉛、グラファイト、ガラス粒子、例えばガラス球、ナノスケールの充填剤、例えばカーボンナノチューブ、ナノスケールのシートシリケート、ナノスケールのアルミナ(Al2O3)、ナノスケールの二酸化チタン(TiO2)、グラフェン、永久磁性又は磁化可能な金属化合物及び/又は合金、フィロシリケート、及びナノスケールの二酸化ケイ素(SiO2)である。充填剤は表面処理されていてもよい。
【0086】
本発明による成形材料に使用できるフィロシリケートの例には、カオリン、セルペンチン、タルク、マイカ、バーミキュライト、イライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、複水酸化物又はこれらの混合物が含まれる。フィロシリケートは、表面処理されていてもよく、又は処理されていなくてもよい。
【0087】
1種以上の繊維状物質を用いてもよい。これらは、好ましくは既知の無機強化繊維、例えばホウ素繊維、炭素繊維、シリカ繊維、セラミック繊維及びバサルト繊維、有機強化繊維、例えばアラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維及び天然繊維、例えば木材繊維、亜麻繊維、麻繊維及びサイザル繊維から選択される。
【0088】
炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、金属繊維又はカリウムチタネート繊維を用いることがとりわけ好ましい。
【0089】
成分B)とは異なるガラス繊維、他の充填剤及び補強剤を用いない場合が好ましい。
【0090】
好ましくは、成分D)として、成分A)とは異なる熱可塑性ポリマーを用いてよい。
【0091】
成分A)とは異なる熱可塑性ポリマーは、好ましくは、
- C2~C10-モノオレフィン、例えばエチレン又はプロピレン、1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、ビニルアルコール及びそれらのC2~C10-アルキルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、分岐及び非分岐のC1~C10アルコールのアルコール成分を有するアクリレート及びメタクリレート、ビニル芳香族、例えばスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、及び無水マレイン酸から選択される少なくとも1種のモノマーから得られるホモポリマー、又はこれらのモノマーの少なくとも1種を共重合した形態で含むコポリマー、
- ビニルアセタールのホモポリマー及びコポリマー、
- ポリビニルエステル、
- ポリカーボネート(PC)、
- ポリエステル、例えばポリアルキレンテレフタレート、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、
- ポリエーテル、
- ポリエーテルケトン、
- 熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
- ポリスルフィド、
- ポリスルホン、
- ポリエーテルスルホン、
- セルロースのアルキルエステル、
及びそれらの混合物
から選択される。
【0092】
例には、C4~C8アルコール、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノール及び2-エチルヘキサノールの群からの同一の又は異なるアルコールラジカルを有するポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(EPDM)、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレートコポリマー(SBMMA)、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-メタクリル酸コポリマー(SMA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリ乳酸(PLA)、エチルセルロース(EC)、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)又はセルロースアセテート/ブチラート(CAB)が含まれる。
【0093】
本発明による成形材料中にも任意に存在する少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ビニルアセテートのホモポリマー及びコポリマー、スチレンのホモポリマー及びコポリマー、ポリアクリレート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はポリスルフィドである。
【0094】
熱可塑性成形材料は成分D)として、1.0質量%~30.0質量%、好ましくは2.0質量%~20.0質量%、特に好ましくは3.0質量%~10.0質量%、特に3.5質量%~7.0質量%の少なくとも1種のエラストマーを含んでよい。
【0095】
エラストマーは、好ましくは、
d1) 成分D1)として、エチレンと、C3~12-オレフィン、C1~C12-アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー、
d2) 成分D2)として、ポリエチレン又はポリプロピレン
から選択され、
成分D1)及びD2)は、無水マレイン酸でさらにグラフト化されてもよい。
【0096】
成分D1)は、1種以上の異なるコモノマー、好ましくは1~3種の異なるコポリマー、特に好ましくは1~2種の異なるコモノマーを含んでよい。C3~12-オレフィンは、好ましくは末端の直鎖状のC3~12-オレフィンであり、特に好ましくはC3~8-オレフィンである。適したオレフィンの例は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン及び1-オクテンである。
【0097】
C1~12-アルキル(メタ)アクリレートは、C1~12-アルキルラジカル、好ましくはC2~6-アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、エチルヘキシルラジカルを含む。アルキルアクリレートが好ましくは関連する。
【0098】
成分D1)のコポリマーにおいて、エチレンベース単位の割合は、好ましくは1質量%~99質量%、特に好ましくは60質量%~98質量%、とりわけ好ましくは84質量%~96質量%である。
【0099】
以下の好ましい量がコモノマーに適用される:
C3~12-オレフィン: 好ましくは99質量%~1質量%、特に好ましくは40質量%~10質量%、
C1~12-アルキル(メタ)アクリレート: 好ましくは40質量%~2質量%、特に好ましくは30質量%~5質量%、
(メタ)アクリル酸: 好ましくは40質量%~2質量%、特に好ましくは30質量%~5質量%、
無水マレイン酸: 好ましくは3質量%~0.01質量%、特に好ましくは2質量%~0.1質量%。
【0100】
コモノマーの合計量は、好ましくは1質量%~99質量%の範囲、特に好ましくは2質量%~40質量%である。
【0101】
成分D1)のコポリマーは、ランダム又はブロックコポリマーであってよい。前者は、結晶化し、それ故物理的に架橋する主ポリマー(ポリエチレン)からなり、その結晶化の程度は鎖に沿ってランダムに組み込まれたコモノマーによって低下し、完成した成形材料の結晶子がもはや直接接触しないようになる。そしてそれらは従来のエラストマーのように絶縁された架橋点として機能する。
【0102】
ブロックコポリマーにおいて、分子内の硬質セグメント及び軟質セグメントは、はっきりと区別される。熱可塑性エラストマーでは、材料は或る温度未満で連続相と非連続相に分離する。後者がそのガラス温度を下回るとすぐに、それは今度は架橋点として機能する。
【0103】
また、成分D1)のコポリマーは、無水マレイン酸でさらにグラフト化されてもよい。グラフト化に使用される無水マレイン酸は、好ましくは、成分D1)のコポリマーに基づいて、5質量%~0.005質量%、特に好ましくは3質量%~0.01質量%の量で用いられる。成分D1)のグラフト化されたコポリマーにおいて、無水マレイン酸の割合は、好ましくは、成分D1)のグラフト化されていないコポリマーに基づいて、2質量%~0.1質量%の範囲である。
【0104】
成分D1)は、好ましくは、0.1~20cm3/10分の、特に好ましくは0.1~15cm3/10分のメルトフローインデックス値(MVR)(190℃/2.16kg、ISO1133に準拠)を有する。
【0105】
あるいは、又は成分D1)に加えて、成分D2)として用いることができるのは、ポリエチレン又はポリプロピレン、又は両方の混合物である。成分D2)も無水マレイン酸でグラフト化されてよく、ここでポリオレフィンに基づく無水マレイン酸の割合は、5質量%~0.005質量%、特に好ましくは2質量%~0.1質量%である。
【0106】
成分D2)は、好ましくは、0.1~20cm3/10分の、特に好ましくは0.1~15cm3/10分のMVR値(190℃/2.16kg、ISO1133に準拠)を有する。
【0107】
用語「エラストマー」とは、無水マレイン酸で任意にグラフト化されてよい成分D1)及びD2)をいう。熱可塑性エラストマー(TPE)が好ましくは関連する。室温で、TPEは古典的なエラストマーに匹敵する挙動を示すが、加熱すると塑性変形性となり、それ故熱可塑性の挙動を示す。
【0108】
本発明により、成分D1)及びD2)の混合物も用いることができる。これらは特にエラストマー合金(ポリブレンド)である。
【0109】
熱可塑性エラストマーは、通常、「軟質」エラストマー成分及び「硬質」熱可塑性成分を含むコポリマーである。よってそれらの特性は、エラストマーの特性と熱可塑性プラスチックの特性の間にある。
【0110】
ポリオレフィンエラストマー(POE)は、例えばメタロセン触媒(可能な例には、エチレン-プロピレンエラストマー(EPR又はEPDM)が含まれる)の使用によって重合される。
【0111】
最も一般的なポリオレフィンエラストマーは、エチレンとブテンとの、又はエチレンとオクテンとのコポリマーである。
【0112】
成分D)として適したエラストマーのさらなる説明については、US5,482,997、US5,602,200、US4,174,358及びWO2005/014278A1も参照されたい。
【0113】
適したエラストマーの例は、例えばlyondellbasell社から、Lucalen(登録商標)A2540D及びLucalen(登録商標)A2700Mの名称で得ることができる。Lucalen(登録商標)A2540Dは、n-ブチルアクリレートをコモノマーとして含む低密度ポリエチレンである。それは、密度が0.923g/cm3及び6.5質量%のブチルアクリレートの割合でビカット軟化温度が85℃である。
【0114】
Lucalen(登録商標)A2700Mは、同様にブチルアクリレートコモノマーを含む低密度ポリエチレンである。その密度は0.924g/cm3、ビカット軟化温度は60℃、及び融解温度は95℃である。
【0115】
ExxonMobil社のポリマー樹脂Exxelor(商標)VA1801は、反応性押出によって無水マレイン酸で官能化された、中粘度を有する半結晶性エチレンコポリマーである。第一のポリマー骨格は完全に飽和している。密度は0.880g/cm3であり、無水マレイン酸の割合は、通常は0.5質量%~1.0質量%の範囲である。
【0116】
さらに適した成分D)は、当業者に知られている。
【0117】
適したエラストマーの例は、例えば、Lyondellbasell社からLucalen(登録商標)A2540D及びLucalen(登録商標)A2700Mの名称で入手可能である。Lucalen(登録商標)A2540Dは、コモノマーとしてn-ブチルアクリレートを含む低密度のポリエチレンである。この密度は0.923g/cm3、ビカット軟化温度は85℃であり、ブチルアクリレートの割合は6.5質量%である。
【0118】
Lucalen(登録商標)A2700Mは、同様にブチルアクリレートをコモノマーとして含む低密度のポリエチレンである。その密度は0.924g/cm3、ビカット軟化温度は60℃、溶融温度は95℃である。
【0119】
ExxonMobil社製のポリマー樹脂Exxelor(商標)VA1801は、反応性押出成形により無水マレイン酸で官能化された半結晶性のエチレンコポリマーであり、中程度の粘度を有する。ポリマー骨格は完全に飽和している。密度は0.880g/cm3であり、無水マレイン酸の割合は、典型的には0.5質量%~1.0質量%の範囲である。
【0120】
さらなる適した成分D)は、当業者に知られている。
【0121】
適した好ましい添加剤D)は、潤滑剤だけでなく、難燃剤、光安定剤(UV安定剤、UV吸収剤又はUV遮断剤)、染料及び核剤、任意にメタリック顔料、並びに金属フレーク、金属被覆粒子、帯電防止剤、導電性添加剤、離型剤、蛍光増白剤、消泡剤などでもある。
【0122】
本発明による成形材料は、添加剤E)として、組成物の合計質量に基づいて、0質量%~20質量%、特に好ましくは0質量%~10質量%の少なくとも1種の難燃剤を含んでよい。本発明による成形材料が少なくとも1種の難燃剤を含む場合、組成物の合計質量に基づいて、好ましくは0.01~20質量%、特に好ましくは0.1~10質量%の量である。適した難燃剤には、ハロゲン含有の及びハロゲン不含の難燃剤及びそれらの相乗剤が含まれる(Gaechter/Mueller、第3版、1989年、Hanser Verlag、第11章も参照されたい)。好ましいハロゲン不含の難燃剤は、赤リン、ホスフィン酸塩又はジホスフィン酸塩、及び/又は窒素含有難燃剤、例えばメラミン、メラミンシアヌラート、メラミンスルファート、メラミンボラート、メラミンオキサレート、メラミンホスファート(第1級、第2級)又は第2級メラミンピロホスファート、ネオペンチルグリコールホウ酸メラミン、グアニジン及び当業者に既知のそれらの誘導体、及びポリマーのメラミンホスファート(CAS番号:56386-64-2及び218768-84-4、及びEP-A-1095030)、アンモニウムポリホスファート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌラート(任意にトリスヒドロキシエチルイソシアヌラートとの混合物中のアンモニウムポリホスファート)(EP-A-0584567)である。さらなるN含有の又はP含有の難燃剤、又は難燃剤として適したPN縮合物は、この目的用の慣例の相乗剤、例えば酸化物又はボラートと同様に、DE-A-102004049342に見出される。適したハロゲン化された難燃剤は、例えばオリゴマーの臭素化されたポリカルボナート(BC52 Great Lakes)及び4個より多いNを有するポリペンタブロモベンジルアクリラート(FR1025 Dead sea bromine)、テトラブロモビスフェノールAとエポキシドとの反応生成物、臭素化されたオリゴマー又はポリマーのスチレン、及びデクロラン(Dechloran)であり、これらは通常、酸化アンチモンと共に相乗剤として使用される(詳細及びさらなる難燃剤について:DE-A-102004050025を参照されたい)。
【0123】
本発明による熱可塑性成形材料は、0質量%~1.5質量%、好ましくは0.05質量%~1.5質量%、及び特に好ましくは0.1質量%~1質量%の潤滑剤を含んでよい。
【0124】
Al塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又は10~44個の炭素原子、好ましくは14~44個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル又はアミドが好ましい。金属イオンは、好ましくはアルカリ土類金属及びAlであり、Ca又はMgが特に好ましい。好ましい金属塩は、Caステアラート及びCaモンタネート、及びAlステアラートである。異なる塩の混合物を任意の所望の混合比で使用することも可能である。
【0125】
カルボン酸は一塩基性でも二塩基性でもよい。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、及び特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸及びモンタン酸(30~40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0126】
脂肪族アルコールは、一水和物から四水和物であってよい。アルコールの例として、n-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びペンタエリスリトールが挙げられ、ここでグリセロール及びペンタエリスリトールが好ましい。
【0127】
脂肪族アミンは、一官能から三官能であってよい。その例として、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、及びジ(6-アミノヘキシル)アミンが挙げられ、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステル又はアミドは、対応するグリセリルジステアラート、グリセリルトリステアラート、エチレンジアミンジステアラート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルトリラウラート、グリセリルモノベヘナート及びペンタエリスリチルテトラステアラートである。エチレンビスステアラミド(EBS)がとりわけ好ましい。
【0128】
異なるエステル又はアミドの混合物、又はアミドと組み合わせたエステルを任意の所望の混合比で使用することも可能である。
【0129】
本発明によるポリアミド組成物は成分D)として、成形材料に基づいて、好ましくは0.05質量%~1質量%、特に好ましくは0.1質量%~0.5質量%、特に0.2質量%~0.4質量%の量のニグロシンを含んでよい。
【0130】
ニグロシン(Solvent Black7-CAS:8005-02-5)は、深黒色の有機染料である。
【0131】
ニグロシンは合成黒色着色剤の混合物であり、鉄又は銅の触媒の存在下でニトロベンゼン、アニリン及び塩酸アニリンを加熱することにより得られる。ニグロシンは様々な形態(水溶性、アルコール可溶性及び油溶性)で入手可能である。典型的な水溶性ニグロシンはAcid Black2(C.I.50420)であり、典型的なアルコール可溶性ニグロシンはSolvent Black5(C.I.50415)であり、そして典型的な油溶性ニグロシンはSolvent Black7(C.I.50415:1)である。
【0132】
しかし、ニグロシンは健康への悪影響の可能性が懸念される。例えば、製造の結果として、アニリン及びニトロベンゼンの残留物が生成物中に残る場合があり、押出法、射出成形法、又は紡績法による後続の処理の過程で不要な分解生成物が形成される危険性がある。
【0133】
本発明によるポリアミド組成物にニグロシンを添加すると、ニグロシンが結晶化を阻害するので、ポリアミド組成物の結晶化傾向をさらに低減させることができる。よってこの添加により、結晶化が遅くなる/結晶化温度が低下する。
【0134】
Solvent Black28(CAS No.12237-23-91)を使用し、これを少なくとも1種のさらなる着色剤と任意に組み合わせることが、さらに有利な場合がある。このとき成分D)は、ニグロシンとは異なる非核化着色剤から選択されることが好ましい。これらには、非核化染料、非核化顔料及びそれらの混合物が含まれる。非核化染料の例は、Solvent Yellow21(BASF SE社からOracet(登録商標)Yellow160FAとして市販されている)又はSolvent Blue104(Clariant社からSolvaperm(登録商標)Blue2Bとして市販されている)である。非核化顔料の例として、Pigment Brown24(BASF SE社からSicotan(登録商標)Yellow K2011FGとして市販されている)が挙げられる。成分D)として、少量の少なくとも1種の白色顔料も有用である。適した白色顔料は、二酸化チタン(Pigment White6)、硫酸バリウム(Pigment White22)、硫化亜鉛(Pigment White7)などである。具体的な実施態様では、本発明による成形材料は、成分E)として、少なくとも1種の白色顔料を0.001質量%~0.5質量%含む。例えば、成形材料は、Kronos社のKronos2220二酸化チタンを0.05質量%含んでもよい。
【0135】
添加態様及び添加量は、色相、すなわち所望の黒色の色調によって導かれる。例えば、Solvent Yellow21を使用すると、CIELAB色空間における黒色の色相を、例えばb*=-1.0から+b*の方向に、すなわち黄色の方向に動かすことが可能である。この方法は、色シェーディング(color shading)として当業者に知られている。測定は、DIN6174「Colorimetric evaluation of color coordinates and color differences according to the approximately uniform CIELAB color space」、又はその後継規格に準拠して行う。
【0136】
成分D)としてのカーボンブラックの併用も可能である。本発明による組成物は、例えば0.05質量%~3質量%、好ましくは0.07質量%~1質量%、好ましくは0.1質量%~0.2質量%のカーボンブラックを含む。カーボンブラックは、工業用カーボンブラックとしても知られており、高い表面積対体積比を持ち、そして80質量%~99.5質量%の炭素からなる炭素の修飾物である。工業用カーボンブラックの比表面積は、約10~1500m2/g(BET)である。カーボンブラックは、チャネルブラック、ファーネスブラック、フレームブラック、クラッキングブラック又はアセチレンブラックの形態で製造されたものでよい。粒子径は、8~500nmの範囲、典型的には8~110nmである。カーボンブラックは、Pigment Black7又はLamp Black6とも呼ばれる。カラーブラックは、ナノ微粒子のカーボンブラックであり、その微細さゆえに、従来のカーボンブラックの茶色ベースの色相を次第に失う。
【0137】
成分D)として、カーボンブラック及びニグロシンに加えて、アントラキノン着色剤、ベンズイミダゾロン着色剤及びペリノン着色剤から選択される少なくとも1種のさらなる着色剤も使用できる。着色剤は、好ましくは、染料、顔料又はそれらの混合物である。
【0138】
本発明によれば、着色剤は、成形材料全体に基づいて、10~1000ppm、好ましくは20~500ppm、特に50~200ppmの量で用いられる。
【0139】
ポリアミド成形組成物は、それ自体既知の方法により製造される。これには、適切な質量割合での成分の混合が含まれる。
【0140】
個別の成分か又は混合物の、特に成分A)及びB)のリサイクレート(recyclate)を用いることも可能である。
【0141】
成分の混合は、高温での混合、配合、混練、押出又は圧延によって達成されることが好ましい。混合中の温度は、好ましくは220℃~340℃の範囲、特に好ましくは240℃~320℃、及びとりわけ250℃~300℃である。適した方法は当業者に知られている。
【0142】
成形品
本発明はさらに、本発明によるポリアミド成形材料を使用して製造される成形品に関する。
【0143】
ポリアミド成形材料は、任意の所望の適した処理技術によって成形物を製造するために使用してよい。適した処理技術は、とりわけ射出成形、押出、共押出、熱成形及び任意の他の既知のポリマー成形法である。これらの例及びさらなる例は、例えば「Einfaerben von Kunststoffen」[Coloring of plastics],VDI-Verlag,ISBN3-18-404014-3に見出される。成形品は、好ましくは二軸押出機を用いて製造される。
【0144】
本発明はまた、成分A)、B)、及び任意にC)及びD)を適切な量で、好ましくは押出しによって混合することを含む、本発明による成形材料を製造するための方法にも関するものである。この方法は、異なるサイズ(スクリュー直径)の市販の二軸押出機を使用してよい。押出し中の温度は、200℃~400℃、好ましくは250℃~350℃、特に好ましくは250℃~320℃である。
【0145】
本発明による成形材料から製造された成形品は、好ましくは耐荷重又は機械的機能を有する内部及び外部部分を製造するために、電気、家具、スポーツ、機械工学、衛生、医療、エネルギー技術及び動力伝達(drive-train)技術、自動車及び他の運搬、通信機器及び装置用のケーシング材、家電製品、家庭用電化製品、機械工学、暖房、設置物用又は容器用の留め具、及びあらゆる種類の換気構成要素の分野において、使用される。
【0146】
本発明による成形品の機械的特性、特に耐衝撃性は著しく高く、これは改善された収縮性を伴う。
【0147】
加工方法
有用な加工方法には、押出又は射出成形などの慣用的な加工方法だけでなく、以下のようなものもある:
― 本発明によるポリエステル成形材料を、他の互換性のある又は互換性のない材料、例えば熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂又はエラストマーと組み合わせる、ハイブリッド構成要素のためのCoBi射出又は組立射出成形、
― インサート構成要素、例えば本発明によるポリエステル成形材料で作られ、他の互換性のある又は互換性のない材料、例えば熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂又はエラストマーでオーバーモールドされたベアリングシート又はねじ山インサート、
― アウトサート構成要素、例えば本発明によるポリアミド成形材料で作られ、他の互換性のある又は互換性のない材料、例えば熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂又はエラストマーで作られた機能要素が注入されたフレーム、ケーシング、又は支持体、
― 複合射出成形、射出溶接、組立射出成形、超音波溶接、摩擦溶接又はレーザー溶接、接着、ビーズ又はリベットで製造されたハイブリッド構成要素(本発明によるポリアミド成形材料と、他の互換性のある又は互換性のない材料、例えば熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂又はエラストマーを組み合わせた要素)、
― 半製品及びプロファイル(例えば、押出成形、引抜成形、積層成形又はラミネートで製造されたもの)、
― 本発明のポリアミド成形材料が、基材自体又は基材支持体であってよいか、又はハイブリッド/バイインジェクション構成要素の場合には、所定の基材領域であってよく、後続の化学的処理(例えばエッチング)又は物理的処理(例えば機械処理又はレーザーアブレーション)によって表面にもたらされてもよい、表面コーティング、積層、化学的又は物理的メタライゼーション、フロック加工、
― 印刷、転写印刷、3D印刷、レーザーマーキング。
【0148】
本発明により用いられるポリアミド組成物は、好ましくは、射出成形による成形品の製造に使用され、射出成形中に、溶融ポリアミド組成物の少なくとも2つの流頭が衝突し、少なくとも1つの溶接シームが形成される。
【0149】
よって成形品は、射出成形プロセスから生じる少なくとも1つの溶接シームを有する。射出成形は、既知の方法に従って行ってよく、例えば、「Einfaerben von Kunststoffen」,VDI-Verlag,ISBN3-18-404014-3に記載されている。
【0150】
射出成形では、典型的に、型に少なくとも2つの射出点が提供され、その結果、溶融ポリアミド組成物の少なくとも2つの流頭が生じる。成形品の大きさ及び形状によっては、さらに多くの射出点が提供されることもある。少なくとも2つの流頭は、型内のキャビティ又はコアの周りの流れを介して形成されてもよい。
【0151】
本発明により製造される成形品は、一部品の物品であっても、複数部分の物品であってもよい。複数部分構造の場合、個々の成形品は後続して、例えば、摩擦溶接、ホットガス溶接、レーザー透過溶接などの溶接によって、互いに接合されなければならない。
【0152】
以下の実施例は、本発明を何ら制限することなく、本発明を解明するのに役立つ。
【実施例】
【0153】
以下の投入材料を使用した。
ポリアミド6:BASF SE社製Ultramid(登録商標)B27、融点:220℃、粘度数(96%のH2SO4中0.5%):150ml/g、アミノ末端基:37mmol/kg
ECRガラス繊維:標準的なE-ガラスNEG ChopVantage3610HP(直径:10μm)
高強度ガラス繊維:組成は以下の通り:SiO2:60.8質量%、Al2O3:15.2質量%、MgO:6.8質量%、CaO:15.5質量%、Na2O:0.8質量%;PAへの接着に適した大きさのシランで処理した;直径:10μm
安定剤:BASF SE社製Irganox(登録商標)1098(熱安定剤)
カーボンブラック:Orion Engineered Carbons GmbH社製Printex60
潤滑剤:Lonza Cologne GmbH社製エチレンビスステアラミド(EBS)
成形材料は、下記に列挙する成分を、二軸押出機ZE25A UTXiで260℃の温度で混合することによって製造した。下記の表1に特定する特性は、2019年に有効な特定の規格によって決定した。成分の割合は質量%で報告する。
【0154】
得られたペレット材料を、射出成形機で溶融温度290℃で射出成形し、標準的なISOダンベル(dumbells)を得て、目視及び分析により評価した。厚さ4mm及び長さ150mmの標準的なISOダンベルの製造は、ダンベルの両端に対向して配置された射出点を介して行われ、流入したポリアミドが外部からダンベルの中央に流れ込み、成形品の中央に溶接シームが形成されるようにした。
【0155】
溶接シームの強度は、正規化された破壊応力試験によって決定した。機械的特性は、DIN ISO527、又は179-2/1eU又は179-2/1eAf(2019年版)に従って決定した。表に報告する量は、質量%単位である。
【0156】