(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】用量記録デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A61M5/31
(21)【出願番号】P 2021561658
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020060557
(87)【国際公開番号】W WO2020212402
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・リーデル
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/015118(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/013419(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスの用量記録デバイス(100)であって、
薬物送達デバイスは、ハウジングと、薬物の複数の用量を保持するためのカートリッジを受けるように構成されたカートリッジホルダと、ハウジングに連結され薬物の用量を設定するように構成された用量設定部材とを含み、
用量記録デバイス(100)は、
デバイスハウジング(102)と、
該デバイスハウジング(102)内に配置された電子制御装置(114)と、
デバイスハウジング(102)に取り付けられるように構成された
複数の識別体部材(120)と
を含み、ここで、電子制御装置(114)は、少なくとも1つのスイッチ(116)を含み、識別体部材(120)
のそれぞれは、デバイスハウジング(102)に取り付けられるときにスイッチ(116)のうちの少なくとも1つを作動させるように構成された
複数の作動部材(122)を含み、
それぞれの識別体部材(120)の作動部材(122)の位置は、互いに異なり、スイッチ(116)の作動は、用量記録デバイス(100)を識別する、および/または薬物についての追加情報を提供するように構成され
、そして、識別体部材(120)は、デバイスハウジング(102)に相互交換可能に取り付けられるように構成される、
前記用量記録デバイス。
【請求項2】
識別体部材(120)
のそれぞれは、作動部材(122)がデバイスハウジング(102)にある対応するインターフェースと嵌合する場合、用量記録
デバイス(100)を識別するように構成される、請求項1に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項3】
追加情報は、作動部材(122)によって作動されるスイッチ(116)によって決まる、請求項1または2に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項4】
追加情報は、少なくとも薬物の種類を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項5】
作動部材(122)は、コード化ピンである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項6】
デバイスハウジング(102)は、インターフェースとしての役割を果たしスイッチ(116)まで延びる孔(118)を含み、識別体部材(120)は、少なくとも1つのスイッチ(116)と係合しそれによって用量記録デバイスが識別されるように、少なくとも1つの孔(118)の中に延びるように構成されたコード化ピンを含む、請求項
5に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項7】
デバイスハウジング(102)は、用量設定部材に取り付けられるように構成された第1の部材(110)と、電子制御装置(114)を収容する第2の部材(112)とを含み、識別体部材(120)は、第1の部材(110)に取り付けられるように構成される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項8】
デバイスハウジング(102)は、用量設定部材に取り付けられるように構成された第1の部材(110)と、電子制御装置(114)を収容する第2の部材(112)とを含み、識別体部材(120)は、第2の部材(112)に取り付けられるように構成される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項9】
第1の部材(110)と第2の部材(112)との間に配置された接触スリップリングをさらに含む、請求項
7または
8に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項10】
デバイスハウジング(102)は、長手方向軸(108)を含み、識別体部材(120)は、前面
(124
)を含み、該前面
(124
)には作動部材(122)が、デバイスハウジング(102)に取り付けられるとき長手方向軸(108)に対して平行な方向に突出するように配置される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項11】
識別体部材(120)は、長手方向軸(108)に対して同軸にデバイスハウジング(102)に取り付けられるように構成される、請求項
10に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項12】
識別体部材(120)は、実質的にリング形である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項13】
作動部材(122)は、矩形、多角形、または丸い縁を有する多角形の断面を含む、請求項1~
12のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項14】
識別体部材(120)は、デバイスハウジング(102)に着脱可能に取り付けられるように構成される、請求項1~
13のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項15】
スイッチ(116)の数は、各識別体部材(120)の作動部材(122)の数を上回る、請求項
1~14のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項16】
識別体部材(120)は、互いに異なる色を含む、請求項
1~15のいずれか1項に記載の用量記録デバイス(100)。
【請求項17】
各色は、異なる種類の薬物を示す、請求項
16に記載の用量記録デバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、用量記録デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤など多くの液体を体内に注射しなければならない。注射は特に、経口投与では不活性化される、またはその効果が著しく低下する薬剤、たとえばタンパク質(インスリン、成長ホルモン、インターフェロンなど)、炭水化物(たとえば、ヘパリン)、抗体、および大部分のワクチンに適用される。このような薬剤は大部分が、シリンジ、薬剤ペンまたは薬剤ポンプなどの送達デバイスによって注射される。
【0003】
このようなシリンジ、薬剤ペンまたは薬剤ポンプの使用者は、医療専門家から薬剤受給者自身にまで及び、後者では子供から高齢者にまで及び得る。医薬注射には、特定の用量の繰り返し注射または複数注射(たとえば複数投与量投薬計画のワクチン)から、単一用量の単一注射(たとえばワクチン、または緊急ヒドロコルチゾン)までが含まれる。
【0004】
この目的のために、ペン型送達デバイスなどの、知られているいくつかのタイプの医薬品送達デバイスがある。これらの送達デバイスを用いると、送達デバイスに入れられた単一のカートリッジから液体のいくつかの用量を注射することが可能である。
【0005】
ペン型の薬物送達デバイスは、たとえば特許文献1に記載されている。
【0006】
これらの薬物送達デバイスによってもたらされる利点にもかかわらず、いくつかの欠点が依然としてある。用量記録デバイスは、様々な種類のインスリンが充填されたペン型の様々な薬物送達デバイスとともに使用することができる。たとえば、出願人からは、商標名Apidra(登録商標)、Lantus(登録商標)およびToujeo(登録商標)として出願人から市販されている異なる種類のインスリンが充填された商標名SoloSTAR(登録商標)の3つの薬物送達デバイスが市販されている。従来の用量記録デバイスは、インスリンの種類を検出することができない。しかし、ペンの取り扱いが同様ではないので、ペン同士を区別することが重要である。たとえば、Toujeo(登録商標)ペンは、3単位のプライミングを行わなければならない一方、Apidra(登録商標)やLantus(登録商標)が充填されたSoloSTAR(登録商標)は2単位のプライミングを行わなければならず、注射と安全ショットを区別することが重要である。さらに、注射後の保持時間は、Toujeo(登録商標)ペンでは、10秒ではなく5秒である。この情報は、滞留時間ライトの点滅する継続時間にとって重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、具体的には使用者が1つよりも多いデバイスを使用する場合、他の用量記録デバイスとの区別を可能にし、デバイスと注射の記憶データとの間の混乱を阻止することを可能にする、用量記録デバイスが開示される。
【0009】
開示の用量記録デバイスの実施形態は、独立請求項の構成を有する。分離された方法で、または任意の組合せで実現される特定の実施形態は、従属請求項に列挙されている。
【0010】
以下で使用されるように、用語「有する」、「含む(comprise)」、「含む(include)」、またはこれらの任意の文法的変形は、非排他的に使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される構成以外に別の構成が本明細書に記載の実体に存在しない状況と、1つまたはそれ以上の別の構成が存在する状況との両方を指し得る。一例として、「AがBを有する」、「AがBを含む(comprise)」、および「AがBを含む(include)」という表現は、B以外には他の要素がAに存在しない状況(すなわち、AがBから単独で排他的に構成されている状況)と、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらには別の要素などの、1つまたはそれ以上の別の要素が実体Aに存在する状況との両方を指し得る。
【0011】
さらに、構成または要素が1つまたは1つよりも多く存在し得ることを示す用語「少なくとも1つ」、「1つまたはそれ以上」、または類似の表現は通常、それぞれの構成または要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの構成または要素に言及するとき、それぞれの構成または要素が一度または一度よりも多く存在し得ることにもかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つまたはそれ以上」という表現は繰り返されない。
【0012】
さらに、以下で使用されるように、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「具体的には」、「より具体的には」、「詳細には」、「より詳細には」、または類似の用語は、代替の実現可能なものを制限することなく、任意選択の構成と併せて使用される。したがって、これらの用語によって導入される構成は任意選択の構成であり、特許請求の範囲を何ら制限するものではない。本開示に記載の技法は、当業者には理解されるように、代替の構成を使用することによって実行することもできる。同様に、「一実施形態では」、または類似の表現によって導入される構成は、本開示の代替実施形態に関して何も制限がなく、本開示の範囲に関して何も制限がなく、かつ、そのようにして本開示の他の任意選択または非任意選択の構成とともに導入された構成を組み合わせる可能性に関して何も制限がない、任意選択の構成であることが意図されている。
【0013】
本開示の用量記録デバイスは、薬物送達デバイスとの関連において使用されるように構成され、この薬物送達デバイスは、ハウジングと、薬物の複数の用量を保持するためのカートリッジを受けるように構成されたカートリッジホルダと、ハウジングに連結され薬物の用量を設定するように構成された用量設定部材とを含む。用量記録デバイスは、デバイスハウジングと、デバイスハウジング内に配置された電子制御装置と、デバイスハウジングに取り付けられるように構成された少なくとも1つの識別体部材(identifier member)とを含む。電子制御装置は、スイッチを含む。識別体部材(120)は、デバイスハウジング(102)に取り付けられるときにスイッチ(116)のうちの少なくとも1つを作動させるように構成された少なくとも1つの作動部材(122)を含む。スイッチ(116)の作動は、用量記録デバイス(100)を識別する、および/または薬物についての追加情報を提供するように構成される。
【0014】
したがって、少なくとも2つの用量記録デバイスを区別し、識別体部材を用いてデバイスと注射の記憶データとの間の混乱を阻止するように構成された用量記録デバイスが開示される。これによって、識別体部材を用量記録デバイスに取り付けることによる用量記録デバイスの「カスタマイズ」が可能になる。換言すると、識別体部材は、作動部材が用量記録デバイスに嵌った場合、その用量記録デバイスを関連の用量記録デバイスとして識別する役割を果たす。この場合だけ、作動部材は、スイッチを作動させて追加情報の提供を始めさせる。
【0015】
本明細書で用いられる用語「薬物送達デバイス」は、それぞれのカートリッジから液体を送達または投与するように構成された任意のデバイスを指す。具体的には、薬物送達デバイスは、液体薬物の所定の用量を送達または投与するように構成される。用語「薬物送達デバイス」は、ある量の薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成された任意のタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。この量は通常、約0.5mLから約10mLの範囲になり得る。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、シリンジ、針安全システム、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス(LVD)、ポンプ、灌流システム、または薬物の皮下、筋肉内、もしくは血管内送達のために構成された他のデバイスを含むことができる。このようなデバイスは針を含むことが多く、この針は小ゲージ針を含み得る(たとえば、約24ゲージよりも大きく、27、29、または31ゲージを含む)。
【0016】
本明細書で用いられる用語「液体」は、単一用量薬物カートリッジで提供される任意の液体を指す。この液体は、医療用液体、またはビタミン溶液などの栄養補助食品でもよい。
【0017】
本明細書で用いられる用語「薬物」は、薬学的に活性な少なくとも1つの化合物を含む医薬製剤を指す。「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を記述するために使用される。以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つの低分子もしくは高分子またはそれらの組合せを含み得る。例示的な薬学的に活性な化合物としては、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、ならびにオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物も企図される。
【0018】
特定の薬物と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要とされるパラメータ内で、たとえば、特定の期間内で(たとえば、注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約5分~約60分)、低レベルもしくは最小レベルの不快感で、または人的要因、貯蔵寿命、有効期限、生体適合性、環境への配慮などに関する特定の条件内で動作するようにカスタマイズすることができる。そのような変動は、たとえば薬物の粘性が約3cP~約50cPの範囲であることなどの様々な要因から生じることがある。
【0019】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬学的に活性な化合物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他のベッセルであり得る。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、薬物製剤の2つ以上の成分(たとえば、薬物と希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジであり得るか、またはそれを含み得る。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に薬物もしくは薬剤の2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0020】
本発明に記載の薬物送達デバイスおよび薬物は、多くの異なるタイプの障害の治療および/または予防のために使用可能である。例示的な障害としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。
【0021】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のための例示的な薬物としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、もしくはそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「誘導体」という用語は、元の物質と実質的に同様の機能性または活性(たとえば、治療効果)を有するように、構造的に十分同様である任意の物質を指す。
【0022】
例示的なインスリンアナログは、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0023】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストは、たとえば、リキシセナチド/AVE0010/ZP10/リキスミア、エキセナチド/エキセンジン-4/バイエッタ/ビデュリオン/ITCA650/AC-2993(ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド/ビクトーザ、セマグルチド、タスポグルチド、シンクリア/アルビグルチド、デュラグルチド、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0024】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセン/キナムロである。
【0025】
例示的なDPP4阻害剤は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0026】
例示的なホルモンとしては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0027】
例示的な多糖としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20/シンビスク、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0028】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体であり得る。
【0029】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本開示に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0030】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与し得るか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼし得る。
【0031】
例示的な抗体は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0032】
本明細書に記載の化合物は、(a)化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)薬学的に許容可能な担体を含む医薬製剤に使用可能である。化合物は、1つもしくはそれ以上の他の活性医薬成分を含む医薬製剤、または本化合物もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩が唯一の活性成分である医薬製剤にも使用可能である。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書に記載の化合物と薬学的に許容可能な担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0033】
本明細書に記載のいずれの薬物の薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、もしくはK+、またはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリール基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容可能な塩のさらなる例は当業者には公知である。
【0034】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)もしくはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0035】
当業者には、本明細書に記載の物質、配合物、装置、方法、システム、デバイス、および実施形態の様々な構成要素の修正(たとえば、調整、追加、または除去など)が、このような修正およびその任意の等価物を包含する本発明の概念の全範囲および趣旨から逸脱することなく加えられることが理解されよう。
【0036】
本明細書で用いられる用語「カートリッジホルダ」は、カートリッジを受けるように構成された任意のデバイスを指す。カートリッジホルダは、ハウジングに連結可能、たとえばねじ留め可能とすることができる。カートリッジホルダは、カートリッジの交換を可能にするために、ハウジングから取り外し可能とすることができる。したがって、デバイスは再使用可能デバイスとすることができる。
【0037】
本明細書で用いられる用語「識別体部材」は、電子制御装置のスイッチを作動させ、薬物の識別を促進するように構成された任意の構造部材を指す。
【0038】
本明細書で用いられる用語「追加情報」は、薬物送達デバイスによって提供される情報に加えて提供される任意の情報を指す。たとえば、インスリンの種類に関する追加情報の提供が可能である。
【0039】
識別体部材は、作動部材がデバイスハウジングにある対応するインターフェースと嵌合する場合、用量記録デバイスを識別するように構成することができる。したがって、作動部材がインターフェースに嵌ったときだけ、少なくとも1つのスイッチが作動することができる。
【0040】
追加情報は、作動部材によって作動されるスイッチによって決まり得る。したがって、異なるスイッチを作動させることになる識別部材の種類に応じて、異なる追加情報の提供が可能である。
【0041】
追加情報は、少なくとも薬物の種類を含むことができる。したがって、薬物は明確に識別できる。追加情報は、薬物の用量の量および送達時間をさらに含むことができる。
【0042】
識別体部材は、複数の作動部材を含むことができる。複数の異なるスイッチは、識別体部材のタイプに応じて作動され、したがって、異なる識別体部材によって提供される追加情報の数を増加させる。
【0043】
少なくとも1つの作動部材は、コード化ピン(coding pin)とすることができる。本明細書で用いられる用語「コード化ピン」は、追加情報のコードを提供するように構成された、識別体部材に形成されたピン形の構造部材を指す。
【0044】
デバイスハウジングは、インターフェースとしての役割を果たしスイッチまで延びる孔を含むことができ、識別体部材は、少なくとも1つのスイッチと係合しそれによって用量記録デバイスを識別するように、少なくとも1つの孔の中に延びるように構成されたコード化ピンを含む。したがって、コード化ピンが孔に挿入されることによって、スイッチは確実かつ安全に作動される。スイッチは、コード化ピンが孔に嵌った場合だけ起動される。あるいは、コード化ピンは、確実かつ安全にスイッチと係合しそれを作動させる伝導面を含んでもよい。さらに、識別体部材は、デバイスハウジングに確実に取り付けることができる。
【0045】
デバイスハウジングは、用量設定部材に取り付けられるように構成された第1の部材と、電子制御装置を収容する第2の部材とを含むことができ、識別体部材は、第1の部材に取り付けられるように構成することができる。したがって、識別体部材は、デバイスハウジングのそれぞれの部材間に任意の追加の電子接続なしに、デバイスハウジングに取り付けることができる。
【0046】
あるいは、デバイスハウジングは、用量設定部材に取り付けられるように構成された第1の部材と、電子制御装置を収容する第2の部材とを含むことができ、識別体部材は、第2の部材に取り付けられるように構成することができる。したがって、識別体部材は、様々な方法でデバイスハウジングの異なる部材への取り付けを可能にするように設計することができる。
【0047】
後者の場合、用量記録デバイスは、第1の部材と第2の部材との間に配置された接触スリップリングをさらに含むことができる。こうして、用量記録デバイスのそれぞれの部材間には電子接続がもたらされる。
【0048】
デバイスハウジングは、長手方向軸を含むことができ、識別体部材は、前面を含むことができ、前面には作動部材が、デバイスハウジングに取り付けられるとき長手方向軸に対して平行な方向に突出するように配置される。したがって、識別体部材は、1つまたはそれ以上のスイッチも作動させるさらに簡単な軸方向運動の方法でデバイスハウジングに取り付けることができる。
【0049】
識別体部材は、長手方向軸に対して同軸方向にデバイスハウジングに取り付けられるように構成することができる。したがって、識別体部材は、デバイスハウジングを取り囲むので、非意図的な除去の危険が最低限に抑えられる。
【0050】
たとえば、識別体部材は、実質的にリング形とすることができる。したがって、識別体部材は、より単純な形状を含むことができ、費用効果の高い方法で製造することができる。
【0051】
作動部材は、矩形、多角形、または丸い縁を有する多角形の断面を含むことができる。したがって、作動部材は、様々に設計することができ、スイッチを作動させるために、デバイスハウジングによって画成される構造的な条件に適用させることができる。
【0052】
識別体部材は、デバイスハウジングに着脱可能に取り付けられるように構成することができる。したがって、識別体部材は、他のものと取り替えることができる。
【0053】
用量記録デバイスは、複数の識別体部材をさらに含むことができ、ここで、識別体部材のそれぞれは、複数の作動部材を含み、それぞれの識別体部材の作動部材の位置は、互いに異なり、識別体部材は、デバイスハウジングに相互交換可能に取り付けられるように構成される。したがって、識別体部材は、異なる追加情報を提供する他のものと取り替えることができる。
【0054】
スイッチの数は、各識別体部材の作動部材の数を上回ることができる。こうして、追加情報の一意的なコード化が提供される。
【0055】
識別体部材は、互いに異なる色を含むことができる。したがって、識別体部材は、視覚的に互いに区別することができ、したがってそれらの意図しない混乱の危険を低減させる。
【0056】
各色は、異なる種類の薬物を示すことができる。したがって、用量記録デバイスの使用者は、インスリンの種類を視覚的に見つけ出すことができる。
【0057】
本開示の発見を概括するには、以下の実施形態が好ましい:
【0058】
実施形態1:
薬物送達デバイスの用量記録デバイス(100)であって、薬物送達デバイスは、ハウジングと、薬物の複数の用量を保持するためのカートリッジを受けるように構成されたカートリッジホルダと、ハウジングに連結され薬物の用量を設定するように構成された用量設定部材とを含み、用量記録デバイス(100)は、デバイスハウジング(102)と、デバイスハウジング(102)内に配置された電子制御装置(114)と、デバイスハウジング(102)に取り付けられるように構成された少なくとも1つの識別体部材(120)とを含み、ここで、電子制御装置(114)は、少なくとも1つのスイッチ(116)を含み、識別体部材(120)は、デバイスハウジング(102)に取り付けられるときにスイッチ(116)のうちの少なくとも1つを作動させるように構成された少なくとも1つの作動部材(122)を含み、スイッチ(116)の作動は、用量記録デバイス(100)を識別する、および/または薬物についての追加情報を提供するように構成される、用量記録デバイス。
【0059】
実施形態2:識別体部材は、作動部材がデバイスハウジングにある対応するインターフェースと嵌合する場合、用量記録デイバスを識別するように構成される、実施形態1に記載の用量記録デバイス。
【0060】
実施形態3:追加情報は、作動部材によって作動されるスイッチによって決まる、実施形態1または2に記載の用量記録デバイス。
【0061】
実施形態4:追加情報は、少なくとも薬物の種類を含む、実施形態1~3のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0062】
実施形態5:識別体部材は、複数の作動部材を含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0063】
実施形態6:少なくとも1つの作動部材は、コード化ピンである、実施形態1~5のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0064】
実施形態7:
デバイスハウジング(102)は、インターフェースとしての役割を果たしスイッチ(116)まで延びる孔(118)を含み、識別体部材(120)は、少なくとも1つのスイッチ(116)と係合しそれによって用量記録デバイスが識別されるように、少なくとも1つの孔(118)の中に延びるように構成されたコード化ピンを含む、実施形態6に記載の用量記録デバイス(100)。
【0065】
実施形態8:デバイスハウジングは、用量設定部材に取り付けられるように構成された第1の部材と、電子制御装置を収容する第2の部材とを含み、識別体部材は、第1の部材に取り付けられるように構成される、実施形態1~7のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0066】
実施形態9:デバイスハウジングは、用量設定部材に取り付けられるように構成された第1の部材と、電子制御装置を収容する第2の部材とを含み、識別体部材は、第2の部材に取り付けられるように構成される、実施形態1~7のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0067】
実施形態10:第1の部材と第2の部材との間に配置された接触スリップリングをさらに含む、実施形態8または9に記載の用量記録デバイス。
【0068】
実施形態11:デバイスハウジングは、長手方向軸を含み、識別体部材は、前面を含み、前面には作動部材が、デバイスハウジングに取り付けられるとき長手方向軸に対して平行な方向に突出するように配置される、実施形態1~10のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0069】
実施形態12:識別体部材は、長手方向軸に対して同軸にデバイスハウジングに取り付けられるように構成される、実施形態11に記載の用量記録デバイス。
【0070】
実施形態13:識別体部材は、実質的にリング形である、実施形態1~12のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0071】
実施形態14:作動部材は、矩形、多角形、または丸い縁を有する多角形の断面を含む、実施形態1~13のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0072】
実施形態15:識別体部材は、デバイスハウジングに着脱可能に取り付けられるように構成される、実施形態1~14のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0073】
実施形態16:用量記録デバイスは、複数の識別体部材をさらに含み、ここで、識別体部材のそれぞれは、複数の作動部材を含み、それぞれの識別体部材の作動部材の位置は、互いに異なり、識別体部材は、デバイスハウジングに相互交換可能に取り付けられるように構成される、実施形態1~15のいずれか1項に記載の用量記録デバイス。
【0074】
実施形態17:スイッチの数は、各識別体部材の作動部材の数を上回る、実施形態16に記載の用量記録デバイス。
【0075】
実施形態18:識別体部材は、互いに異なる色を含む、実施形態16または17に記載の用量記録デバイス。
【0076】
実施形態19:各色は、異なる種類の薬物を示す、実施形態18に記載の用量記録デバイス。
【0077】
実施形態20:薬物送達デバイスであって、ハウジングと、薬物の複数の用量を保持するためのカートリッジを受けるように構成されたカートリッジホルダと、ハウジングに連結され薬物の用量を設定するように構成された用量設定部材と、実施形態1~19のいずれか1項に記載の用量記録デバイスとを含み、ここで、デバイスハウジングは用量設定部材に取り付けられる、薬物送達デバイス。
【0078】
本開示のさらなる構成および実施形態は、後の実施形態の説明において、特に従属請求項に関連して、より詳細に開示される。実施形態では、当業者には理解されるように、それぞれの構成が別々に、ならびに任意の実施可能な組合せで実現される。本開示の範囲は、実施形態によって限定されない。実施形態は、図面に概略的に示されている。図面では、これらの図中の同一の参照番号が、同一または機能的に同等の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】第1の実施形態による用量記録デバイスの側面図である。
【
図3】識別体部材が取り付けられている、第1の実施形態による用量記録デバイスの側面図である。
【
図4】第2の実施形態による用量記録デバイスの側面図である。
【
図5】識別体部材が取り付けられている、第2の実施形態による用量記録デバイスの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1は、第1の実施形態による用量記録デバイス100の側面図である。用量記録デバイス100は、薬物送達デバイス(図示せず)とともに使用されるように構成される。薬物送達デバイスは、ペン型デバイス、具体的には、参照によってその構造的な詳細を本明細書に組み入れる、たとえば特許文献1から既知のペン型注射器とすることができる。基本的に、そのような薬物送達デバイスは、ハウジングを含む。ハウジングは、ハウジング内に配置された薬物送達デバイスの構成要素を環境の影響から保護するように適用され配置される。ハウジングは、遠位端および近位端を有する。用語「遠位端」は、薬物送達デバイスの投薬端に最も近い、または最も近くに配置されるハウジングの端部を示す。用語「近位端」は、薬物送達デバイスの投薬端から最も遠い、または最も遠くに配置されるハウジングの端部を示す。遠位端と近位端は、軸の方向に互いに間隔をあけて配置される。軸は、薬物送達デバイスの長手方向軸および/または回転可能軸とすることができる。ハウジングは、透明材料で作られた用量窓を含む。
【0081】
薬物送達デバイスは、カートリッジホルダをさらに含む。カートリッジホルダは、薬物の複数の用量を保持するためのカートリッジを受けるように構成される。カートリッジは、薬物、好ましくは薬物の複数の用量を含む。カートリッジは、カートリッジホルダ内に保持される。カートリッジホルダは、カートリッジの位置を機械的に安定させる。カートリッジホルダは、たとえばねじ係合またはバヨネット連結によってハウジングにその遠位端で連結可能である。カートリッジホルダとハウジングは、互いに解放可能に連結される。あるいは、カートリッジは、ハウジングに直接連結してもよい。後者の場合、カートリッジホルダは、不必要になり得る。薬物送達デバイスは、再使用可能デバイスとすることができ、これは、カートリッジが、特にリセット操作中に取り替えカートリッジに取り替えられて、取り替えカートリッジから複数の用量が投薬されることを意味する。
【0082】
栓(詳細には図示せず)は、カートリッジ内に摺動可能に保持される。栓は、カートリッジを近位で封止する。栓がカートリッジに対して遠位方向に動かされると、薬物はカートリッジから投薬される。ニードルアセンブリ(詳細には図示せず)は、カートリッジホルダの遠位端部に、たとえば係合部材、たとえばねじ山によって配置することができる。キャップは、たとえば薬物送達デバイスが使用されていないとき、薬物送達デバイス、具体的にはカートリッジホルダを環境の影響から保護するためにカートリッジホルダに固定することができる。
【0083】
薬物送達デバイスは、薬物の用量を設定し投薬するために操作される、用量設定部材および用量ボタンをさらに含む。用量ボタンは、用量設定部材の近位端部に位置する。薬物送達デバイスは、ピストンロッド(詳細には図示せず)を含む。ピストンロッドは、薬物の用量をカートリッジから排出するために、ハウジングを通って動きを伝達するように構成される。ピストンロッドは、ハウジングに対する初期位置と、ハウジングに対する終端位置との間で可動である。初期位置は、薬物送達デバイスが製造者から供給されるときのピストンロッドの位置とすることができる。さらに、初期位置は、リセット操作が行われた後のピストンロッドの位置とすることもできる。初期位置は、ピストンロッドの最も近位の位置とすることができる。終端位置は、薬物の全量がカートリッジから投薬された後のピストンロッドの位置とすることができる。終端位置は、ピストンロッドの最も遠位の位置とすることができる。薬物送達デバイスの動作中、具体的には薬物の用量の投薬の間、ピストンロッドは終端位置に向かって動かされる。
【0084】
ピストンロッドは、薬物送達デバイスの投薬端に最も近く配置される遠位端を有する。ピストンロッドの遠位端部は、支承部材を含む。支承部材は、栓とピストンロッドとの間に配置される。支承部材は、摩擦によって生じ得る損傷を低減するように構成される。支承部材は、ピストンロッドの一部とすることができる。支承部材は、ピストンロッドに連結してもよい。あるいは、支承部材とピストンロッドを一体形成してもよい。支承部材と栓は、デバイスの動作全体を通して機械的に接触、具体的には当接している。支承部材と栓は、カートリッジまたは取り替えカートリッジがデバイスに装填されている限り、機械的な接触にある。換言すると、支承部材と栓は、カートリッジホルダがハウジングに少なくとも部分的に連結されている限り、機械的な接触にある。
【0085】
ピストンロッドは、親ねじとして構成される。ピストンロッドは、2つのねじ付セクションを含む。これらのねじ付セクションは、回転方向が反対である。第1のねじ付セクションは、ピストンロッドの遠位部分に位置し、ねじ付セクションは、ピストンロッドの近位部分に位置する。ピストンロッド、具体的には第1のねじ付セクションは、案内部材(詳細には図示せず)、たとえば案内ナットとねじ係合している。案内部材は中心孔を含む。中心孔内には、ねじ山が設計される。ねじ山は、ピストンロッドをハウジングを通って終端位置に向かう所定の螺旋運動で付勢するために、ピストンロッドに連結されるために使用される。ピストンロッドは、案内部材との機械的協働により、終端位置に向かって軸方向に、回転可能に動くことができる。さらに、ピストンロッド、具体的には第2のねじ付セクションは、駆動部材(詳細には図示せず)とねじ係合している。駆動部材は、使用者が用量ボタンを押したときに力をピストンロッドにかけて、薬物の用量を送達するためのピストンロッドの動きを生じさせる。用量設定部材によって設定された用量は、用量窓から見える。たとえば、使用者によって設定された薬物の数字単位が用量窓から見える。
【0086】
本明細書において以降、用量記録デバイス100を詳細に述べる。用量記録デバイス100は、デバイスハウジング102を含む。デバイスハウジング102は、用量設定部材に取り付けられるように構成される。デバイスハウジング102は、用量設定部材に取り付けられるように構成される前端104と、前端104の反対にある後端106とを含む。デバイスハウジング102は、用量設定部材に着脱可能に取り付けられるように構成される。デバイスハウジング102は、スリーブのように設計される。デバイスハウジング102は、長手方向軸108を画成、または含む。デバイスハウジング102は、用量設定部材に取り付けられるように構成される第1の部材110と、第1の部材110に連結される第2の部材112とを含む。本明細書に記載の本開示の詳細は、一体部品として作られたデバイスハウジングにも同様に適用されることが明示的に述べられる。
【0087】
用量記録デバイス100は、電子制御装置114をさらに含む。電子制御装置114は、デバイスハウジング102内に配置される。より具体的には、第2の部材112が電子制御装置114を収容する。電子制御装置114は、スイッチ116を含む。スイッチ116は、電子制御装置114において実行されるソフトウェアのソフトウェア命令を調節または変更するように構成される。デバイスハウジング102は、スイッチ116まで延びる孔118を含む。具体的には、孔118は、デバイスハウジング102の外面から、スイッチ116が配置されている内部へと延びる。孔118は、第1の部材110に位置する。孔118は、第2の部材112へと長手方向軸108に対して平行な方向に延びる。したがって、孔118の開口部は、前端104に向く。
【0088】
用量記録デバイス100は、少なくとも1つの識別体部材120をさらに含む。識別体部材120は、デバイスハウジング102に取り付けられるように構成される。より具体的には、識別体部材120は、デバイスハウジング102に着脱可能に取り付けられるように構成される。識別体部材120は、第1の部材110に取り付けられるように構成される。識別体部材120は、少なくとも1つの作動部材122を含む。識別体部材120は、作動部材122の支援により、用量記録デバイス100を識別するように構成される。換言すると、以下により詳細に説明されるように、識別体部材120によって、作動部材122がデバイスハウジング102にあるインターフェースと嵌合した場合、その用量記録デバイス100が関連の用量記録デバイス100であることの識別ができる。さらに、識別体部材120は、デバイスハウジング102に取り付けられると、スイッチ116のうちの少なくとも1つを作動させるように構成される少なくとも1つの作動部材122を含む。スイッチ116の作動は、場合により薬物についての追加情報を提供するように構成される。追加情報は、作動部材122によって作動されるスイッチ116に応じて決まる。追加情報は、少なくとも、薬物の種類を含む。
【0089】
図2は、識別体部材120の正面図である。識別体部材120は、実質的にリング形である。識別体部材120は、前面124を含み、そこには作動部材122が、デバイスハウジング102に取り付けられるとき長手方向軸108に対して平行な方向に突出するように配置されている。作動部材122は、矩形、多角形、または丸い縁を有する多角形の断面を含む。本実施形態では、作動部材122は、矩形断面を含む。少なくとも1つの作動部材122は、コード化ピンである。用量記録デバイス100は、コード化ピンによって識別することができる。具体的には、コード化ピンが孔118に嵌った場合のみ、コード化ピンは孔118内に延びスイッチ116と係合することができる。したがって、識別体部材は関連しない用量記録デバイスのデバイスハウジングとは嵌合しないので、用量記録デバイス100を特定の用量送達デバイスだけに使用することができることが確実になる。第1の部材110と第2の部材112との間に電気接続をもたらすように、接触スリップリング(詳細には図示されない)が第1の部材110と第2の部材112との間に配置される。この実施形態の識別体部材120は、複数の作動部材122を含む。たとえば、識別体部材120は、4つの作動部材122を含む。勿論、識別体部材120は、4つよりも多いまたは少ない、たとえば2つ、3つ、5つ、6つなどの作動部材122を含んでもよい。
図2に示されるように、作動部材122のサイズは同一でなくてもよく、作動部材122毎に異なってもよい。
【0090】
図1に示されるように、用量記録デバイス100は、複数の識別体部材120を含むことができる。図面には、そのうちの2つが例示的に示されている。各識別体部材120は、複数の作動部材122を含む。それぞれの識別体部材120の作動部材122の位置は互いに異なる。識別体部材120は、デバイスハウジング102に相互交換可能に取り付けられるように構成される。孔118およびスイッチ116の数はそれぞれ、各識別体部材120の作動部材122の数を上回る。したがって、各識別体部材120は、異なる識別体部材120によって作動可能なスイッチ116とは異なるスイッチ116を作動させるように構成される。それによって、異なる識別体部材120によって異なる追加情報が提供される。識別体部材120は、互いに異なる色を含む。各色は、異なる種類の薬物を示している。
【0091】
図3は、識別体部材120がデバイスハウジング102に取り付けられている、第1の実施形態による用量記録デバイス100の側面図である。具体的には、識別体部材120は、長手方向軸108に対して同軸に、デバイスハウジング102に取り付けられるように構成される。識別体部材120をデバイスハウジング102に取り付けるためには、それを前端104から長手方向軸108に対して軸方向に単に動かす、または押す。それによって、作動部材122が孔118のうちのいくつかに挿入され、孔118の端部に配置されたスイッチ116のうちのいくつかを作動させ、その間、他のスイッチ116は、対応する作動部材122が関連の孔118に挿入されないので作動しない。所定のスイッチ116の作動は、調節のために電子制御装置114のソフトウェア命令を生じさせ、それによってソフトウェアが所定のとおり実行される。それによって、電子制御装置114は、インスリンの種類など、薬物についての追加情報を提供する。異なる識別体部材120がデバイスハウジング102に取り付けられると、その作動部材122は位置が異なるので異なる孔118に挿入され、それによって異なるスイッチ116が作動する。それによって、異なる追加情報が提供される。
【0092】
図4は、第2の実施形態による用量記録デバイス100の側面図である。本明細書では以降、第1の実施形態による用量記録デバイスとの違いだけを述べる。同様のまたは比較可能な構造部材または構成は、同じ参照番号で示されている。孔118は、後端106に近接する第2の部材112に位置する。孔118は、第2の部材112内へと、長手方向軸108に対して平行な方向に延びる。したがって、孔118の開口部は、後端106に向く。識別体部材120は、第2の部材112に取り付けられるように構成される。この実施形態によって、第1の部材110と第2の部材112との間の接触スリップリングを省くことができる。
【0093】
図5は、識別体部材120がデバイスハウジング102に取り付けられている、第2の実施形態による用量記録デバイス100の側面図である。識別体部材120をデバイスハウジング102に取り付けるためには、それを後端106から長手方向軸108に対して軸方向に単に動かす、または押す。それによって、作動部材122が孔118のうちのいくつかに挿入され、孔118の端部に配置されたスイッチ116のうちのいくつかを作動させ、その間、他のスイッチ116は、対応する作動部材122が関連の孔118に挿入されないので作動しない。所定のスイッチ116の作動は、調節のために電子制御装置114のソフトウェア命令を生じさせ、それによってソフトウェアが所定のとおり実行される。それによって、電子制御装置114は、インスリンの種類など、薬物についての追加情報を提供する。異なる識別体部材120がデバイスハウジング102に取り付けられると、その作動部材122は位置が異なるので異なる孔118に挿入され、それによって異なるスイッチ116が作動する。それによって、異なる追加情報が提供される。
【符号の説明】
【0094】
100 用量記録デバイス
102 デバイスハウジング
104 前端
106 後端
108 長手方向軸
110 第1の部材
112 第2の部材
114 電子制御装置
116 スイッチ
118 孔
120 識別体部材
122 作動部材
124 前面