(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】基板を製造する方法、及び基板の製造用システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094669
(22)【出願日】2022-06-10
(62)【分割の表示】P 2020017355の分割
【原出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】10 2019 201 438.0
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】カール、ハインツ、プリーワッサー
(72)【発明者】
【氏名】星野 仁志
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-041482(JP,A)
【文献】特開2017-195245(JP,A)
【文献】特開2016-111143(JP,A)
【文献】特開2016-062949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/02
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能層(12)を有する基板(16)を製造する方法であって、
前記方法は、
第1表面(4)と前記第1表面(4)の反対側の第2表面(6)とを有するワーク(2)を準備する工程と、
複数の改質領域を備える改質層(8)を前記ワーク(2)の内部に形成する工程と、
前記改質層(8)を前記ワーク(2)の内部に形成する工程の後に、機能層(12)を前記ワーク(2)の前記第1表面(4)に形成する工程と、
前記機能層(12)を前記ワーク(2)の前記第1表面(4)に形成する工程の後に、前記ワーク(2)を前記改質層(8)に沿って分割することにより、前記機能層(12)を有する基板(16)を得る工程と、
を備え、
前記ワーク(2)を前記改質層(8)に沿って分割する工程は、外的刺激を前記ワーク(2)に印加する工程を備
え、
前記改質層(8)は、周縁ワーク部(10)により取り囲まれるように形成され、
前記方法は、更に、前記機能層(12)を前記ワーク(2)の前記第1表面(4)に形成する工程の後に、前記周縁ワーク部(10)内に改質領域を形成する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記改質層(8)を前記ワーク(2)の内部に形成する工程は、レーザービーム(LB)を前記ワーク(2)に印加する工程を備え、
前記ワーク(2)は、前記レーザービーム(LB)を透過する材料から構成され、
前記レーザービーム(LB)の焦点(P)が前記第1表面(4)から前記第2表面(6)に向かう方向において前記第1表面(4)から距離(d)を置いた状態で、前記第1表面(4)に沿った少なくとも複数の位置において前記レーザービーム(LB)を前記ワーク(2)に印加する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザービーム(LB)を、前記ワーク(2)の前記第1表面(4)側から前記ワーク(2)に印加する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記改質層(8)は、前記第1表面(4)に対して実質的に平行であるように形成される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ワーク(2)を前記改質層(8)に沿って分割する工程は、前記ワーク(2)を前記周縁ワーク部(10)において分離する工程を更に備える、
請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ワーク(2)を前記改質層(8)に沿って分割する工程の後に、前記機能層(12)が形成された前記第1表面(4)の反対側の前記基板(16)の表面(32)を研削及び/又は研磨する工程を更に備える、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ワーク(2)を前記改質層(8)に沿って分割する工程の後に、前記ワーク(2)の残部(30)の表面(34)であって、前記ワーク(2)の前記第2表面(6)の反対側の表面(34)を研削及び/又は研磨する工程を更に備える、
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ワーク(2)を前記改質層(8)に沿って分割する工程の後に、改質層(8)を形成する前記
工程、機能層(12)を形成する前記
工程、及び前記ワーク(2)を分割する
工程を、前記ワーク(2)の残部(30)に対して1回又は複数回繰り返して、機能層(12)を有する複数の基板(16)を得る、
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記改質領域は、アモルファス領域又は亀裂が形成された領域を備える、又は、
前記改質領域は、アモルファス領域又は亀裂が形成された領域である、
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記外的刺激を前記ワーク(2)に印加する工程は、超音波を前記ワーク(2)に印加する工程、及び/又は圧力を前記ワーク(2)に印加する工程、及び/又は機械的力を前記ワーク(2)に印加する工程、及び/又は前記ワーク(2)を加熱する工程、及び/又は前記ワーク(2)を冷却する工程、及び/又は真空を前記ワーク(2)に印加する工程を備える、又はこれらからなる、
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
機能層(12)を有する基板(16)を製造するためのシステムであって、
前記システムは、
第1表面(4)と前記第1表面(4)の反対側の第2表面(6)とを有するワーク(2)を支持するための支持部材と、
複数の改質領域を備える改質層(8)を前記ワーク(2)の内部に形成するように構成された改質層形成手段と、
前記改質層(8)を前記ワーク(2)の内部に形成する工程の後に、機能層(12)を前記ワーク(2)の前記第1表面(4)に形成するように構成された機能層形成手段と、
前記機能層(12)を前記ワーク(2)の前記第1表面(4)に形成する工程の後に、前記ワーク(2)を前記改質層(8)に沿って分割することにより前記機能層(12)を有する基板(16)を得るように構成された分割手段と、
を備え、
前記分割手段は、外的刺激を前記ワーク(2)に印加するように構成された外的刺激印加手段を備
え、
前記改質層形成手段は、周縁ワーク部(10)に取り囲まれるように前記改質層(8)を形成するよう構成され、
前記システムは、前記機能層(12)を前記ワーク(2)の前記第1表面(4)に形成する工程の後に、前記周縁ワーク部(10)内に改質領域を形成するよう構成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス層等の機能層を有するウエハ等の基板を製造する方法に関する。更に、本発明は、本方法を実施するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等のウエハなどの基板に、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)、発光ダイオード(LED)等のデバイスが、基板の前面に機能層を設けることにより形成される。基板は、例えば炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、珪素(Si)等から構成されるウエハであり得る。デバイスは、例えば、省電力製品用に設計された電力半導体用の半導体デバイスであり得る。
【0003】
例えば、光学デバイス作製プロセスにおいて、例えば、n型窒化物半導体層及びp型窒化物半導体層から構成される機能層としての光学デバイス層が、単結晶基板、例えば炭化珪素基板、窒化ガリウム基板、サファイア基板等の前面に形成される。光学デバイス層は、発光ダイオードやレーザーダイオード等の光学デバイスがそれぞれ形成される別個の領域を画成するように、交差する分割線(「ストリート」とも称される)によって仕切られる。単結晶基板の前面に光学デバイス層を設けることにより、光学デバイスウエハが形成される。光学デバイスウエハは、分割線に沿って分離され、例えば切断され、光学デバイスが形成される別個の領域に分割される。こうして、チップやダイとしての個々の光学デバイスが得られる。
【0004】
機能層が設けられるウエハ等の基板は、機能層を形成する前に、インゴット等のワークを切断することにより得られる。従来的に、ワークは、例えばワイヤソーを使用して切断される。
【0005】
しかしながら、既知の方法においては、基板を製造するプロセスで大量のワーク材料のロスが生じる。例えば、SiCインゴットを例えばワイヤソーでスライスすることによりSiCウエハを得る場合、ウエハの厚さは典型的には約400μmである。インゴットからウエハを切断した後、ウエハを研削及び/又は研磨しておよそ350μmの厚さにする。続いて、デバイス層等の機能層を、ウエハの前面に形成する。機能層を有するウエハの最終的な所望の厚さは、約200μm以下である。基板製造プロセスにおけるワーク材料のロスに関する問題は、SiC等の高価なワーク材料で特に顕著である。
【0006】
したがって、ワークから得られる基板の個数を増加させ得る基板の効率的な製造方法及び効率的な基板製造システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ワークから得られる基板の個数を増加させ得る基板の効率的な製造方法を提供することである。更に、本発明は、本方法を実施するための基板製造システムを提供することを目的とする。これらの目標は、請求項1の技術的特徴を有する基板製造方法、及び請求項12の技術的特徴を有する基板製造システムにより達成される。好適な実施形態は、従属請求項から生じる。
【0008】
本発明は、機能層を有する基板を製造する方法を提供する。本方法は、第1表面と前記第1表面の反対側の第2表面とを有するワークを準備する工程と、改質層を前記ワークの内部に形成する工程と、を備える。改質層は、複数の改質領域を備える。本方法は、前記改質層を前記ワークの内部に形成する工程の後に、機能層を前記ワークの前記第1表面に形成する工程と、前記機能層を前記ワークの前記第1表面に形成する工程の後に、前記ワークを前記改質層に沿って分割することにより、前記機能層を有する基板を得る工程と、を更に備える。前記ワークを前記改質層に沿って分割する工程は、外的刺激を前記ワークに印加する工程を備える。
【0009】
本発明の方法において、ワークの内部に形成された改質層は、複数の改質領域を備える。改質領域は、例えば、放射線等の外的刺激を印加することにより、例えばレーザービームを使用することにより改質されたワークの領域である。改質領域は、ワーク材料の構造が改質されたワークの領域であり得る。改質領域は、ワークが損傷したワークの領域であり得る。
【0010】
複数の改質領域を備える改質層をワークの内部に形成することにより、ワークの強度が、改質領域が形成されたエリアにおいて低下する。したがって、改質領域が形成されたエリアにおけるワークの強度は、改質領域が形成されていないエリアにおけるワークの強度より小さい。したがって、改質層は、ワークを分割するプロセスを促進する分離又は分割開始層として機能する。
【0011】
機能層をワークの第1表面に形成する工程の後に、ワークを改質層に沿って分割することにより、機能層を有する基板を得る。ワークを改質層に沿って分割する工程は、外的刺激をワークに印加する工程を備える、又はこれからなる。したがって、基板を得るためにワークを切断する工程は必要ない。
【0012】
特に、改質層をワークの内部に形成する工程の後に、機能層をワークの第1表面に形成する。したがって、改質層を形成するプロセスは、機能層の存在による影響を受けない。これにより、改質層を特に明確に定義された態様において高い精度で形成することができる。更に、改質層を形成する際に機能層が損傷するリスクが排除される。
【0013】
ワークの内部における改質層の配置が、ワークから得られる基板の厚さ及び厚さ均一性を決定する。したがって、ワークに改質層を形成する工程の後に機能層を形成することにより、基板はより薄い厚さを有するとともに高度な厚さ均一性を有することができる。したがって、ワークから得られる基板の個数が増加し、材料のロスが削減される。
【0014】
したがって、本発明は、ワークから得られる基板の個数を増加させ得る効率的な基板を製造する方法を提供する。
【0015】
ワークは、例えば、半導体インゴット等のインゴット、又は基板、すなわち半導体基板等のより薄い基板が得られるより厚い基板であってもよい。インゴット又はより厚い基板等のワークは、1mm以上の厚さ、又は2mm以上の厚さを有し得る。ワークの厚さは、ワークの第1表面から第2表面に向かう方向において測定される。
【0016】
ワークの第1表面と第2表面とは、実質的に互いに平行であり得る。
【0017】
ワークは、例えば、半導体、ガラス、サファイア(Al2O3)、アルミナセラミック等のセラミック、石英、ジルコニア、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、ポリカーボネート、光学結晶材料等から構成され得る。
【0018】
特に、ワークは、例えば、炭化珪素(SiC)、珪素(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化インジウム(InAs)、リン化インジウム(InP)、窒化珪素(SiN)、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化珪素(SiO2)等から構成され得る。特に好適には、ワークはSiCから構成される。
【0019】
ワークは、単結晶ワーク、ガラスワーク、化合物半導体ワーク等の化合物ワーク、例えばSiC又はGaNワーク、或いはセラミックワーク等の多結晶ワークであり得る。
【0020】
ワークから得られる基板は、上記の材料のうちのいずれかから構成され得る。例えば、基板は、半導体ウエハ等のウエハであり得る。半導体ウエハは、上記の半導体材料のうちのいずれか、特にSiCから構成され得る。
【0021】
機能層は、機能を提供する又は呈示する層である。この機能は、例えば、電気的絶縁性又は電導性等の電気的機能、機械的保護等の機械的機能、又は例えば機能層としてのデバイス層の場合には電子的機能であり得る。
【0022】
例えば、機能層は、デバイス層、エピタキシャル層、GaN層、再結合強化バッファ層等のバッファ層、金属層、low‐k層等であり得る。機能層は、バンプ、例えばはんだバンプ又は銅柱バンプ等の相互接続部を有し得る。
【0023】
特に、機能層はデバイス層であり得る。デバイス層は、例えば電力半導体用の電子デバイス、半導体デバイス等のデバイスを備え得る。デバイスは、例えばSiC MOSFETであるMOSFET等のトランジスタ、又は絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、又はショットキーバリアダイオード等のダイオードを備え得る、又はこれらであり得る。
【0024】
改質層は、ワークの内部に、ワークの第1表面側から形成され得る。改質層をワークの内部に形成する工程の後に機能層をワークの第1表面に形成するため、改質層を形成するこのようなプロセスは、機能層の存在による影響を受けない。更に、改質層を形成する際に機能層が損傷するリスクがない。
【0025】
改質層をワークの内部にワークの第1表面側から形成することにより、改質層を特に明確に定義された態様において特に高い精度で形成することができる。これは、特に、得られる基板の厚さが、例えば1mm以上であるワークの厚さより顕著に小さい場合、例えば50乃至200μmの場合でも同様である。例えば、得られる基板の厚さは、ワークの厚さより1/3以上、1/5以上、1/8以上、1/10以上、1/15以上、又は1/20以上小さくてもよい。この場合、改質層をワークの内部にワークの第1表面側から形成する工程は、改質層をワークの内部にワークの第2表面側から形成する工程より、著しく小さいワークの貫通深さしか必要としない。したがって、改質層を特に正確に形成することができるため、得られる基板の厚さを更に薄くすることができる。
【0026】
或いは、改質層をワークの内部にワークの第2表面側から形成してもよい。この手法は、特に、ワークが比較的薄い厚さを有する場合、例えば2mm未満の場合に採用され得る。
【0027】
ワークの内部に改質層を形成する工程は、ワークにレーザービームを印加する工程を備え得る、又はこれからなり得る。ワークは、レーザービームを透過する材料から構成され得る。したがって、レーザービームは、ワークを透過できる波長を有し得る。レーザービームを、第1表面に沿った少なくとも複数の位置においてワークに印加し得る。レーザービームの焦点が第1表面から第2表面に向かう方向において第1表面から距離を置いた状態で、レーザービームをワークに印加し得る。レーザービームの焦点は、ワークの内部に配置され得る。
【0028】
改質層の改質領域は、レーザービームの印加により改質されたワークの領域であり得る。例えば、改質領域は、レーザービームの印加によりワーク材料の構造が改質されたワークの領域であり得る。改質領域は、レーザービームの印加によりワークが損傷したワークの領域であり得る。
【0029】
レーザービームは、パルスレーザービームであり得る。パルスレーザービームは、例えば、1ns乃至300nsの範囲のパルス幅を有し得る。
【0030】
改質層をワークの内部に形成する工程の後に、機能層をワークの第1表面に形成するため、レーザービームの印加による機能層の損傷が確実に防止される。更に、レーザービームを印加するプロセスは、機能層の存在による影響を受けないため、改質層を特に明確に定義された態様において特に高い精度で形成することができる。
【0031】
レーザービームを、ワークの第1表面側からワークに印加し得る。改質層をワークの内部に形成する工程の後に、機能層をワークの第1表面に形成するため、レーザービームの印加は機能層の存在による影響を受けない。更に、機能層がレーザービームにより損傷するリスクがない。
【0032】
得られる基板の厚さがワークの厚さよりかなり小さい場合、例えば、1/3以上、1/5以上、1/8以上、1/10以上、1/15以上、又は1/20以上小さい場合、レーザービームをワークの第1表面側からワークに印加する工程は特に有利である。この場合、レーザービームを第1表面側から印加する工程は、レーザービームを第2表面側から印加する工程より、著しく小さくいワークの貫通深さしか必要としない。したがって、改質層を特に正確に形成することができるため、得られる基板の厚さを更に薄くすることができる。
【0033】
或いは、レーザービームをワークの第2表面側からワークに印加してもよい。この手法は、特に、ワークが比較的薄い厚さを有する場合、例えば2mm未満の場合に採用され得る。
【0034】
第1表面に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置が互いに重ならないようにして、レーザービームをワークに印加し得る。第1表面に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置の間の距離、すなわち、隣接する位置の中心同士の間の距離が、3μm乃至50μm、好適には5μm乃至40μm、より好適には8μm乃至30μmの範囲にあるようにして、レーザービームをワークに印加し得る。
【0035】
改質層内の複数の改質領域を、隣接する又は隣り合う改質領域が互いに重ならないようにして、ワークの内部に形成することができる。このようにして、ワークが高度な強度又は頑丈性を維持することにより、効率的なワークの更なる取り扱いや処理が可能となることが特に確実に保証され得る。特に、ワークの取り扱い中にワークを意図せず分割するリスクが顕著に削減され得る。
【0036】
隣接する又は隣り合う改質領域の外縁の間の距離は、少なくとも1μmであり得る。
【0037】
第1表面に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置が少なくとも部分的に互いに重なるようにして、レーザービームをワークに印加してもよい。
【0038】
複数の改質領域を、隣接する又は隣り合う改質領域が少なくとも部分的に互いに重なるようにしてワークに形成してもよい。このようにして、ワークを改質層に沿って分割するプロセスが更に容易とされ得る。
【0039】
改質層を、ワークの第1表面に対して実質的に平行になるように形成してもよい。このようにして、高度な厚さ均一性を有する基板を、特に効率的且つ簡単な態様で得ることができる。
【0040】
改質層を、ワークの厚さ方向においてワークの第2表面よりワークの第1表面に近くなるようにして形成してもよい。例えば、ワークの厚さ方向における改質層と第1表面との間の距離が、ワークの厚さ方向における改質層と第2表面との間の距離より1/3以上、1/5以上、1/8以上、1/10以上、1/15以上、又は1/20以上小さくなるようにして、改質層を形成してもよい。
【0041】
ワークの厚さ方向における改質層と第1表面との間の距離が、得られる基板の厚さ、例えば最終厚さより、例えば30乃至100μm、好適には40乃至80μm、より好適には50乃至70μm、更に好適にはおよそ50μm大きくなるようにして、改質層を形成してもよい。ここで、「最終厚さ」という用語は、基板の処理が完了又は終了した後、例えば、基板の研削及び/又は研磨工程等の全ての処理ステップが実施された後の基板の厚さを定義する。このようにして、基板を得るプロセスにおけるワーク材料のロスが最小限とされ得る。
【0042】
改質層を、ワークの断面全体を実質的に覆うように形成してもよい。断面は、ワークの厚さ方向に対して実質的に垂直であり得る。
【0043】
改質層を、周縁ワーク部により取り囲まれるように形成してもよい。周縁ワーク部は、改質層を、改質層の延在面において、すなわち改質層が延在する面において取り囲み得る。改質層の延在面は、第1表面に対して実質的に平行であり得る。周縁ワーク部は、ワークの周縁又は円周に沿って延在する。改質層は、ワークの中央部に配置され得る。
【0044】
周縁ワーク部では、改質領域を形成しなくてもよい。
【0045】
或いは、改質領域を周縁ワーク部にも形成してよい。周縁ワーク部は、改質層より小さい程度で改質され得る。例えば、周縁ワーク部において、ワークの単位面積当たりの改質領域は、改質層より少なく形成され得る。周縁ワーク部において、隣接する又は隣り合う改質領域のうちの少なくともいくつかのものの間の距離は、改質層におけるより大きくてもよい。例えば、異なるレーザービーム、例えば改質層を形成するためのレーザービームより弱いレーザービームを印加することにより、周縁ワーク部に形成される改質領域は、改質層における改質領域よりも少ない程度で改質され得る。周縁ワーク部における改質領域は、改質層における改質領域より小さくてもよい。例えば、周縁ワーク部における改質領域の、例えばワークの厚さ方向における及び/又はこれに垂直な方向における広がり範囲は、改質層における改質領域のものより小さくてもよい。
【0046】
周縁ワーク部において、改質領域が形成されたエリアと改質領域が形成されないエリアとが配置され得る、例えば、例えばワークの円周に沿って交互に配置され得る。周縁ワーク部において、改質領域が形成されたエリアと改質領域が形成されないエリアとは、改質領域が形成されたエリアがワークの周方向において少なくとも実質的に等距離を置いて離間するようにして、ワークの円周に沿って交互に配置され得る。或いは、改質領域が形成された隣接する又は隣り合うエリア間のワークの周方向における距離は、ワークの円周に沿って変わり得る。改質領域が形成されないエリアは、ワークの周方向において、少なくとも実質的に等距離を置いて離間してもよい。或いは、改質領域が形成されない隣接する又は隣り合うエリア間のワークの周方向における距離は、ワークの円周に沿って変わり得る。改質領域が形成されたエリアのうちの少なくとも一部又は全部は、同一サイズ、例えば、ワークの厚さ方向において及び/又はこれに垂直な方向において、同一の広がり範囲を有し得る。改質領域が形成されたエリアのうちの少なくとも一部又は全部は、サイズに関して互いに異なり得る。改質領域が形成されないエリアのうちの一部又は全部は、同一サイズを有し得る。改質領域が形成されないエリアのうちの一部又は全部は、サイズに関して互いに異なり得る。改質領域が形成されたエリアのうちの少なくとも一部又は全部は、ワークの周縁又は円周縁部までいっぱいに延在し得る、例えば、ワークの径方向において改質層からワークの周縁又は円周縁部までいっぱいに延在し得る。改質領域が形成されないエリアのうちの少なくとも一部又は全部は、ワークの周縁又は円周縁部いっぱいに延在し得る、例えば、ワークの径方向において改質層からワークの周縁又は円周縁部までいっぱいに延在し得る。
【0047】
改質領域が形成されたエリアのサイズ、例えば、ワークの厚さ方向における及び/又はこれに垂直な方向における広がり範囲は、改質領域が形成されないエリアのサイズ、例えば、ワークの厚さ方向における及び/又はこれに垂直な方向における広がり範囲と同じであっても小さくてもよい。改質領域が形成されたエリアのサイズ、例えば、ワークの厚さ方向における及び/又はこれに垂直な方向における広がり範囲は、改質領域が形成されないエリアのサイズ、例えば、ワークの厚さ方向における及び/又はこれに垂直な方向における広がり範囲と同じであっても大きくてもよい。
【0048】
周縁ワーク部は、改質領域が形成されたエリアを、複数個、例えば、2個以上、3個以上、5個以上、8個以上、10個以上、12個以上、15個以上、又は20個以上備え得る。周縁ワーク部は、改質領域が形成されないエリアを、複数個、例えば、2個以上、3個以上、5個以上、8個以上、10個以上、12個以上、15個以上、又は20個以上備え得る。
【0049】
改質層における改質領域、及び存在する場合の周縁ワーク部における改質領域は、第1表面から第2表面に向かう方向において、第1表面から少なくとも実質的に同一距離を置いて形成され得る、例えば、ワークの内部において少なくとも実質的に同一深さに配置され得る。
【0050】
改質層における改質領域、及び周縁ワーク部における改質領域は、少なくとも実質的に同一の態様で形成され得る。改質層における改質領域は、周縁ワーク部において改質領域が形成された態様とは異なる態様で形成され得る。
【0051】
このような周縁ワーク部にワークの改質部を設けない又は改質部をより少なく設けることにより、例えば、改質層の形成中に、ワークの周縁におけるデブリ等の粒子の生成が顕著に削減され得る、又は完全に抑えられる。したがって、このような粒子による基板や処理装置の汚染を最小限にすることができる。更に、ワークが特に高度な強度又は頑丈性を維持することにより、効率的なワークの更なる取り扱いや処理が可能となることが確実に保証され得る。特に、ワークの取り扱い中にワークを意図せず分割するリスクが顕著に削減され得る。
【0052】
周縁ワーク部は、ワークの厚さ方向に垂直な方向において、特にワークの径方向において、0.1乃至2mmの幅を有し得る。
【0053】
周縁ワーク部は、実質的に環状の形状を有し得る。この場合、周縁ワーク部は、0.1乃至2mmのリング幅を有し得る。リング幅は、リングの外径とリングの内径との差の半分として定義される。
【0054】
周縁ワーク部は、ウエハ等の基板の周縁マージンエリアに対応し得る。周縁マージンエリアにおいて、機能層が設けられない、例えば、デバイス、特にアクティブデバイスが形成され得ない。
【0055】
ワークを改質層に沿って分割して機能層を有する基板を得る工程は、ワークを周縁ワーク部において分離又は分割する工程を更に備え得る。このようにして、基板を特に効率性及び信頼性の高い態様で得ることができる。
【0056】
ワークを周縁ワーク部において分離又は分割する工程は、ワークを周縁ワーク部において切断する工程を備え得る、又はこれからなり得る。例えば、ワークを周縁ワーク部において、例えば、垂直スピンドルダイサー等のダイサー、ブレード、ワイヤソー等のソー、又は劈開ツール等を使用する機械的切断工程により、又は例えばレーザーアブレーションによるレーザー切断工程により切断してもよい。ワークを周縁ワーク部において機械的に切断するために使用される切断ツールは、約30乃至80μmの切断幅、例えばブレード又はソー幅を有し得る。
【0057】
ワークは、ワークの周縁又は円周側から周縁ワーク部において切断され得る。切断方向は、ワークの厚さ方向に実質的に垂直であり得る。
【0058】
ワークを周縁ワーク部において分離する、例えば切断する工程の際、ワークから得られる基板は、ワークの残部によって確実に支持される。したがって、基板の変形、例えば反りが防止され得る。更に、基板の周縁部が損傷しないことが確実に保証され得る。また更に、ワークの改質部を有さない、又は改質部をより少なく有する周縁ワーク部が存在することにより、改質層を形成するプロセスにおいて粒子は発生しない。
【0059】
代替的に又は追加的に、改質領域を周縁ワーク部に形成してもよい。例えば、周縁ワーク部における改質領域を、レーザービームを上述の態様でワークに印加することにより形成してもよい。レーザービームを、ワークの第1表面側から、及び/又はワークの第2表面側から、及び/又はワークの周縁又は円周側から、ワークに印加し得る。
【0060】
改質層をワークの内部に形成する工程の後に、改質領域は周縁ワーク部に形成され得る。機能層をワークの第1表面に形成する工程の後に、改質領域は周縁ワーク部に形成され得る。外的刺激をワークに印加する工程の前に、改質領域は周縁ワーク部に形成され得る。外的刺激をワークに印加する工程は、ワークを改質層に沿って、及び周縁ワーク部に沿って分割させ得る、又はこの分割に寄与し得る。
【0061】
本発明の方法は、ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、機能層が形成された第1表面の反対側の基板の表面を研削及び/又は研磨する工程を更に備え得る。研削及び/又は研磨プロセスにおいて、基板は、所望の厚さに、例えば最終基板厚さに調整され得る。一部の実施形態において、第1表面の反対側の基板の表面に対して研削プロセスのみを実施し、研磨プロセスを実施しなくてもよい。
【0062】
本発明の方法により、改質層を特に明確に定義された態様において高い精度で形成することができるため、基板はより薄い厚さを有するとともに高度な厚さ均一性を有することができる。したがって、研削及び/又は研磨プロセスにおいて除去される基板材料の量が大幅に削減され、材料のロスが最小となる。
【0063】
例えば、基板の厚さは、研削及び/又は研磨プロセスにおいて30乃至100μm、好適には40乃至80μm、より好適には50乃至70μm、更に好適にはおよそ50μm削減され得る。
【0064】
第1表面の反対側の基板の表面を研磨するプロセスは、化学機械研磨(CMP)、乾式研磨(DP)及び/又は他のタイプの研磨プロセスを備え得る、又はこれからなり得る。
【0065】
第1表面の反対側の基板の表面を研削及び/又は研磨する工程の後、第1表面の反対側の基板の表面に金属化プロセスを施してもよい。
【0066】
本発明の方法は、ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、ワークの残部の表面であって、ワークの第2表面の反対側の表面を研削及び/又は研磨する工程を更に備え得る。このようにして、ワークの残りを効率的に整えて、それから更なる基板を得ることができる。特に、ワークの残部の表面を研磨する工程により、滑らかな表面が獲得される。ワークの残部から単数又は複数の更なる基板を得るプロセスについて以下に詳述する。
【0067】
本発明の方法により、改質層を特に明確に定義された態様において高い精度で形成することができるため、ワークの残部を研削及び/又は研磨するプロセスにおいて除去されるワーク材料の量が大幅に削減される。したがって、この点でも、材料のロスが最小となる。
【0068】
例えば、ワークの残部の厚さは、研削及び/又は研磨プロセスにおいて、30乃至100μm、好適には40乃至80μm、より好適には50乃至70μm、更に好適にはおよそ50μm削減され得る。
【0069】
ワークの残部の表面を研磨するプロセスは、化学機械研磨(CMP)、乾式研磨(DP)及び/又は他のタイプの研磨プロセスを備え得る、又はこれからなり得る。
【0070】
ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、上述の改質層を形成するステップ、機能層を形成するステップ、及びワークを分割するステップを、ワークの残部に一回又は複数回繰り返して、機能層を有する複数個の基板、例えば2個以上、3個以上、5個以上、8個以上、10個以上、又は12個以上の基板を得るようにしてもよい。このようにして、複数の基板を、単一のワークから効率性及び信頼性の高い態様で得ることができる。特に、上述のように、本発明の方法により、ワークから得られる基板の個数を増加させることができる。
【0071】
好適には、ワークの残部の表面であってワークの第2表面の反対側の面を研削及び研磨する工程の後に、上述の改質層を形成するステップ、機能層を形成するステップ、及びワークを分割するステップを、ワークの残部に一回又は複数回繰り返して、機能層を有する複数個の基板を得る。
【0072】
上述の改質層を形成するステップ、機能層を形成するステップ、及びワークを分割するステップは、ワークの残部の厚さが最小限となるまで、例えば、ワークの残部の厚さがそこから更なる基板を得られないほど薄くなるまで、ワークの残部に繰り返され得る。
【0073】
改質領域は、アモルファス領域及び/又は亀裂が形成された領域を備え得る。改質領域は、アモルファス領域及び/又は亀裂が形成された領域であり得る。
【0074】
改質領域は、ワーク材料の内部のキャビティ等の空間をそれぞれ備え得る。この空間は、アモルファス領域又は亀裂が形成された領域により取り囲まれる。
【0075】
改質領域は、ワーク材料の内部のキャビティ等の空間からそれぞれ構成され得る。アモルファス領域又は亀裂が形成された領域が、この空間を取り囲むように形成される。
【0076】
改質領域が、亀裂が形成されている、すなわち亀裂が形成された領域を備える、又は当該領域である場合、亀裂は微小亀裂であり得る。亀裂は、μm範囲の長さ及び/又は幅等の寸法を有し得る。例えば、亀裂は、5μm乃至100μmの範囲の幅、及び/又は100μm乃至1000μmの範囲の長さを有し得る。
【0077】
改質領域は、1μm乃至30μm、好適には2μm乃至20μm、より好適には3μm乃至10μmの範囲の直径を有し得る。
【0078】
本発明の方法は、機能層をワークの第1表面に形成する工程の後に、保護及び/又は支持材を機能層が形成された第1表面に取り付ける工程を更に備え得る。保護及び/又は支持材は、ワークを改質層に沿って分割する工程の前に、第1表面に取り付けられ得る。
【0079】
特に、機能層を保護するように、保護フィルム又はシートが、ワークの第1表面に貼着され得る。
【0080】
保護フィルム又はシートは、保護フィルム又はシートの前面全体が第1表面と直接接触するように、第1表面に貼着され得る。この場合、保護フィルム又はシートの前面と第1表面との間には、材料、特に接着剤が存在しない。保護フィルム又はシートを第1表面に貼着する工程の間に又はその後に、外的刺激を保護フィルム又はシートに印加することにより、保護フィルム又はシートを第1表面に貼着してもよい。外的刺激を保護フィルム又はシートに印加する工程は、保護フィルム又はシートを加熱する工程、保護フィルム又はシートを冷却する工程、及び/又は保護フィルム又はシートに真空を印加する工程、及び/又は例えばレーザービームを使用して保護フィルム又はシートに光等の放射線を印加する工程を備え得る、又はこれらからなり得る。外的刺激は、化学化合物、及び/又は電子又はプラズマ照射、及び/又は圧力、摩擦又は超音波印加等の機械的処理、及び/又は静電気を含み得る、又はこれらであり得る。
【0081】
代替的に又は追加的に、保護フィルム又はシートに接着剤層を設けることができる。接着剤層は、保護フィルム又はシートの前面の周縁エリアのみに設けられる。周縁エリアは、保護フィルム又はシートの前面の中央エリアを取り囲む。この場合、保護フィルム又はシートの前面の中央エリアに接着剤は存在しない。保護フィルム又はシートの前面の中央エリアにおいて、保護フィルム又はシートの前面は、第1表面と直接接触し得る。保護フィルム又はシートは、接着剤層が第1表面の周縁部のみに接触するようにして第1表面に貼着され得る。接着剤層が接触する第1表面の周縁部は、例えば、第1表面の周縁マージンエリアであり得る。この周縁マージンエリアにおいては、機能層、特にデバイスは存在しなくてよい。
【0082】
保護フィルム又はシートは、ポリマー等のプラスチック材料から構成され得る。例えば、保護フィルム又はシートは、ポリオレフィンから構成され得る。特に、保護フィルム又はシートは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又はポリブチレン(PB)から構成され得る。
【0083】
保護フィルム又はシートは、最大で180℃以上の温度、好適には最大で220℃以上の温度、より好適には最大で250℃以上の温度、更に好適には最大で300℃以上の温度に対する耐熱性を有し得る。
【0084】
保護フィルム又はシートは、5乃至200μm、好適には8乃至100μm、より好適には10乃至80μm、更に好適には12乃至50μmの範囲の厚さを有し得る。
【0085】
クッション層が、保護フィルム又はシートの前面の反対側のその後面に取り付けられ得る。クッション層が保護フィルム又はシートの後面に取り付けられる場合、ワークの厚さ方向に沿って第1表面から突出する凸部が、クッション層に埋設され得る。
【0086】
クッション層の材料は特に限定されない。特にクッション層は、ワークの厚さ方向に沿って突出する凸部を埋設可能な任意のタイプの材料から形成され得る。例えば、クッション層は、樹脂、接着剤、ゲル等から形成され得る。
【0087】
クッション層は、紫外線、熱、電場、及び/又は化学剤等の外的刺激により硬化可能であり得る。この場合、クッション層は、外的刺激の印加により、少なくともある程度硬化する。例えば、クッション層は、硬化性樹脂、硬化性接着剤、硬化性ゲル等から形成され得る。
【0088】
クッション層は、最大で180℃以上の温度、好適には最大で220℃以上の温度、より好適には最大で250℃以上の温度、更に好適には最大で300℃以上の温度に対する耐熱性を有し得る。
【0089】
クッション層は、10乃至300μm、好適には20乃至250μm、より好適には50乃至200μmの範囲の厚さを有し得る。
【0090】
ベースシートが、クッション層の前面の反対側のその後面に取り付けられ得る。クッション層の前面は、保護フィルム又はシートに取り付けられている。
【0091】
ベースシートの材料は特に限定されない。ベースシートは、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)又はポリオレフィン等のポリマー材料等の軟質又は柔軟な材料から構成され得る。
【0092】
或いは、ベースシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び/又はシリコン、及び/又はガラス、及び/又はステンレス鋼(SUS)等の剛性又は硬質の材料から構成され得る。
【0093】
また、ベースシートを、上に列挙した材料を組み合わせて形成してもよい。
【0094】
ベースシートは、最大で180℃以上の温度、好適には最大で220℃以上の温度、より好適には最大で250℃以上の温度、更に好適には最大で300℃以上の温度に対する耐熱性を有し得る。
【0095】
ベースシートは、30乃至1500μm、好適には40乃至1200μm、より好適には50乃至1000μmの範囲の厚さを有し得る。
【0096】
ベースシートの前面は、クッション層の後面と接触し得る。ベースシートの前面の反対側のその後面は、ワークの第1表面、及び/又はワークの内部に形成された改質層に対して実質的に平行であり得る。したがって、基板の第1表面の反対側の表面を研削及び/又は研磨する工程等の処理に際して、例えばベースシートの後面をチャックテーブルに載置することにより、その後面に適切な逆圧を印加することができる。
【0097】
ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、選択的にクッション層又はクッション層及びバックシートを含む保護フィルム又はシートは、第1表面から除去され得る。基板の第1表面の反対側の表面を研削及び/又は研磨する工程の後に、選択的にクッション層又はクッション層及びバックシートを含む保護フィルム又はシートは、第1表面から除去され得る。基板の第1表面の反対側の表面に金属化処理を施す工程の後に、選択的にクッション層又はクッション層及びバックシートを含む保護フィルム又はシートは、第1表面から除去され得る。
【0098】
或いは、ワークの第1表面に取り付けられる保護及び/又は支持材は、例えばフィルム、シート、テープ、又はガラス板等の板であり得る。その全面に、第1表面と接触するようになる接着剤が塗布される。
【0099】
外的刺激をワークに印加する工程は、超音波をワークに印加する工程、及び/又は圧力をワークに印加する工程、及び/又は機械的力を印加する工程、及び/又はワークを加熱する工程、及び/又はワークを冷却する工程、及び/又は真空をワークに印加する工程を備え得る、又はこれらからなり得る。特に好適には、外的刺激をワークに印加する工程は、ワークに超音波を印加する工程を備える、又はこれからなる。
【0100】
外的刺激をワークに印加する工程により、ワークは改質層が形成されたエリアにおいて分離する。このエリアにおいて、ワークの強度は改質領域の存在を理由として低下しているため、外的刺激の印加によりワークの分離が促進される。
【0101】
改質層がワークの断面全体を実質的に覆うように形成されている場合、外的刺激の印加により、ワークは改質層に沿って完全に分割されるため、機能層を有する基板が得られる。
【0102】
ワークの改質部を有さない、又は改質部をより少なく有する周縁ワーク部が設けられている場合、ワークを分割して機能層を有する基板を得る工程は、ワークを周縁ワーク部において分離又は分割する工程を更に備え得る。
【0103】
本発明は、機能層を有する基板を製造するためのシステムを更に提供する。システムは、第1表面と前記第1表面の反対側の第2表面とを有するワークを支持するための支持部材と、複数の改質領域を備える改質層をワークの内部に形成するように構成された改質層形成手段と、を備える。更に、システムは、改質層をワークの内部に形成する工程の後に、機能層をワークの第1表面に形成するように構成された機能層形成手段と、機能層をワークの第1表面に形成する工程の後に、ワークを改質層に沿って分割することにより機能層を有する基板を得るように構成された分割手段と、を備える。分割手段は、外的刺激をワークに印加するように構成された外的刺激印加手段を備える、又はこれからなる。
【0104】
本発明の基板製造システムは、本発明の基板製造方法を実施するように構成されたシステムである。したがって、基板製造システムは、基板製造方法について上述した技術的効果及び利点を提供する。
【0105】
本発明の基板製造方法について上述した特徴は、本発明の基板製造システムにも該当する。
【0106】
ワーク、基板、機能層、改質層、及び改質領域は、上述のものと同一であり得る。
【0107】
基板製造システムは、当該システムの部品を制御するための制御部を備え得る。制御部は、複数の制御ユニット、例えばシステムの種々の部品を制御するための制御ユニットを備え得る。
【0108】
制御部は、本発明の基板製造方法を実施すべく基板製造システムを制御するように構成され得る。
【0109】
制御部は、改質層をワークの内部に形成すべく改質層形成手段を制御するように構成され得る。制御部は、改質層をワークの内部に形成する工程の後に、機能層をワークの第1表面に形成すべく機能層形成手段を制御するように構成され得る。制御部は、機能層をワークの第1表面に形成する工程の後、ワークを改質層に沿って分割することにより機能層を有する基板を得るべく分割手段を制御するように構成され得る。制御部は、外的刺激をワークに印加すべく外的刺激印加手段を制御するように構成され得る。
【0110】
支持部材は、例えばチャックテーブル等を備え得る、またはこれであり得る。
【0111】
改質層形成手段は、ワークの第1表面側から改質層をワークの内部に形成するように構成され得る。改質層形成手段は、ワークの第2表面側から改質層をワークの内部に形成するように構成され得る。
【0112】
改質層形成手段は、レーザービームをワークに、特に支持部材により支持されたワークに印加するように構成されたレーザービーム印加手段を備え得る、又はこれからなり得る。改質層をワークの内部に形成する工程は、レーザービームをワークに印加する工程を備え得る、又はこれからなり得る。レーザービーム印加手段によりワークに印加されたレーザービームは、ワークを透過できる波長を有し得る。レーザービーム印加手段は、レーザービームを、第1表面に沿った少なくとも複数の位置においてワークに印加するように構成され得る。レーザービーム印加手段は、レーザービームの焦点が第1表面から第2表面に向かう方向において第1表面から距離を置いた状態で、レーザービームをワークに印加するように構成され得る。レーザービーム印加手段は、レーザービームの焦点がワークの内側に位置する状態で、レーザービームをワークに印加するように構成され得る。
【0113】
レーザービーム印加手段は、パルスレーザービームをワークに印加するように構成され得る。パルスレーザービームは、例えば、1ns乃至300nsの範囲のパルス幅を有し得る。
【0114】
レーザービーム印加手段は、ワークの第1表面側からレーザービームをワークに印加するように構成され得る。レーザービーム印加手段は、ワークの第2表面側からレーザービームをワークに印加するように構成され得る。
【0115】
レーザービーム印加手段は、第1表面に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置が互いに重ならないようにして、レーザービームをワークに印加するように構成され得る。レーザービーム印加手段は、第1表面に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置の間の距離、すなわち隣接する位置の中央同士の間の距離が、3μm乃至50μm、好適には5μm乃至40μm、より好適には8μm乃至30μmの範囲にあるようにして、レーザービームをワークに印加するように構成され得る。隣接する又は隣り合う改質された領域の外縁間の距離は、少なくとも1μmであり得る。
【0116】
レーザービーム印加手段は、第1表面に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置が少なくとも部分的に互いに重なるようにして、レーザービームをワークに印加するように構成され得る。
【0117】
改質層形成手段は、改質層がワークの第1表面に対して実質的に平行であるように、改質層を形成するように構成され得る。
【0118】
改質層形成手段は、改質層がワークの厚さ方向においてワークの第2表面よりワークの第1表面に近くなるように、改質層を形成するように構成され得る。例えば、改質層形成手段は、ワークの厚さ方向における改質層と第1表面との間の距離が、ワークの厚さ方向における改質層と第2表面との間の距離より1/3以上、1/5以上、1/8以上、1/10以上、1/15以上、又は1/20以上小さくなるように、改質層を形成するように構成され得る。
【0119】
改質層形成手段は、ワークの厚さ方向における改質層と第1表面との間の距離が、得られる基板の厚さ、例えば最終厚さより、例えば30乃至100μm、好適には40乃至80μm、より好適には50乃至70μm、更に好適にはおよそ50μm大きくなるように、改質層を形成するように構成され得る。
【0120】
改質層形成手段は、改質層がワークの断面全体を実質的に覆うように、改質層を形成するように構成され得る。断面は、ワークの厚さ方向に対して実質的に垂直であり得る。
【0121】
改質層形成手段は、改質層が周縁ワーク部により取り囲まれるように、改質層を形成するように構成され得る。周縁ワーク部は、上述の周縁ワーク部であり得る。特に、周縁ワーク部は、ワークの改質部を有さない、又は改質部をより少なく有するワークの一部分であり得る。
【0122】
分割手段は、ワークを周縁ワーク部において分離又は分割するように構成され得る。例えば、分割手段は、ワークを周縁ワーク部において分離又は分割するように構成された分離手段を更に備え得る。
【0123】
分離手段は、ワークを周縁ワーク部において切断するように構成され得る。例えば、分離手段は、垂直スピンドルダイサー等のダイサー、ブレード、ワイヤソー等のソー、又は劈開ツール等を使用する機械的切断手段により、又はレーザー切断手段、例えばレーザーアブレーションを実施するように構成されたレーザー切断手段を備え得る、又はこれであり得る。ワークを周縁ワーク部において機械的に切断するための切断ツール等の機械的切断手段は、約30乃至80μmの切断幅、例えばブレード又はソー幅を有し得る。
【0124】
分離手段は、ワークの周縁又は円周側からワークを周縁ワーク部において切断するように構成され得る。切断方向は、ワークの厚さ方向に実質的に垂直であり得る。
【0125】
基板製造システム、特に、改質層形成手段は、改質領域を周縁ワーク部に形成するように構成され得る。例えば、レーザービーム印加手段は、上述のようにレーザービームをワークに印加することにより、改質領域を周縁ワーク部に形成するように構成され得る。レーザービーム印加手段は、ワークの第1表面側から、及び/又はワークの第2表面側から、及び/又はワークの周縁又は円周側から、レーザービームをワークに印加するように構成され得る。
【0126】
基板製造システム、特に改質層形成手段は、改質層をワークの内部に形成する工程の後に、改質領域を周縁ワーク部に形成するように構成され得る。基板製造システム、特に改質層形成手段は、機能層をワークの第1表面に形成する工程の後に、改質領域を周縁ワーク部に形成するように構成され得る。基板製造システム、特に改質層形成手段は、外的刺激をワークに印加する前に、改質領域を周縁ワーク部に形成するように構成され得る。基板製造システムは、外的刺激をワークに印加する工程により、ワークを改質層に沿って及び周縁ワーク部に沿って分割させるように、又はこの分割に寄与するように構成され得る。
【0127】
基板製造システムは、研削手段、及び/又は研磨手段、又は複合研削研磨手段を更に備え得る。研削手段又は複合研削研磨手段は、ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、機能層が形成された基板の第1表面の反対側の表面を研削するように構成され得る。研磨手段又は複合研削研磨手段は、ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、特に基板の第1表面の反対側の面を研削する工程の後に、基板の第1表面の反対側の表面を研磨するように構成され得る。
【0128】
基板製造システムは、特に、基板の第1表面の反対側の面を研削及び/又は研磨する工程の後に、基板の第1表面の反対側の面に金属化処理を施すように構成された金属化手段を更に備え得る。
【0129】
研削手段又は複合研削研磨手段は、ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、ワークの残部の表面であって、ワークの第2表面の反対側の表面を研削するように更に構成され得る。或いは、基板製造システムは、この目的のために、更なる研削手段又は複合研削研磨手段を備え得る。
【0130】
研磨手段又は複合研削研磨手段は、ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、特にワークの残部の表面を研削する工程の後に、ワークの残部の表面を研磨するように更に構成され得る。或いは、基板製造システムは、この目的のために、更なる研磨手段又は複合研削研磨手段を備え得る。
【0131】
基板製造システムは、ワークを改質層に沿って分割する工程の後に、上述の改質層を形成するステップ、機能層を形成するステップ、及びワークを分割するステップを、ワークの残部に一回又は複数回繰り返して、機能層を有する複数個の基板、例えば2個以上、3個以上、5個以上、8個以上、10個以上、又は12個以上の基板を得るように構成され得る。
【0132】
基板製造システムは、機能層をワークの第1表面に形成する工程の後に、保護及び/又は支持材を機能層が形成された第1表面に取り付けるように構成された取付手段を更に備え得る。取付手段は、ワークを改質層に沿って分割する工程の前に、保護及び/又は支持材を第1表面に取り付けるように構成され得る。保護及び/又は支持材は、上述の保護及び/又は支持材であり得る。特に、保護及び/又は支持材は、上述の保護フィルム又はシートを備え得る、又はこれであり得る。保護及び/又は支持材は、上述のようなクッション層又はクッション層及びベースシートを更に備え得る。
【0133】
外的刺激印加手段は、超音波をワークに印加する、及び/又は圧力をワークに印加する、及び/又は機械的力を印加する、及び/又はワークを加熱する、及び/又はワークを冷却する、及び/又は真空をワークに印加するように構成され得る。特に好適には、外的刺激印加手段は、ワークに超音波を印加するように構成される。
【0134】
以下に、本発明の非限定的な例を図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【
図1】本発明の方法の第1実施形態による、レーザービームをワークに印加してワークの内部に改質層を形成するステップを示す断面図。
【
図2】改質層の形成後の
図1のワークを示す斜視部分図。
【
図3】改質層の形成後の
図1のワークを示す斜視透視図。
【
図4】本発明の方法の第2実施形態による、レーザービームをワークに印加してワークの内部に改質層を形成するステップを示す断面図。
【
図5】改質層の形成後の
図4のワークを示す斜視部分図。
【
図6】改質層の形成後の
図4のワークを示す斜視透視図。
【
図7】本発明の方法の第3実施形態による改質層の形成後のワークを示す斜視部分図。
【
図9】本発明の方法の第2実施形態によるワークの第1表面に機能層を形成するステップの結果を示す断面図。
【
図10】本発明の方法の第2実施形態によるワークの第1表面に保護支持材を取り付けるステップの結果を示す断面図。
【
図11】ワークピースに外的刺激を印加するステップの結果を示す断面図であって、本発明の方法の第2実施形態によるワークを周縁ワーク部において切断するための準備ステップを示す図。
【
図12】本発明の方法の第2実施形態によるワークをワーク周縁部において切断するステップを示す断面図。
【
図13】本発明の方法の第2実施形態による、周縁ワーク部にレーザービームを印加して周縁ワーク部に改質領域を形成するステップを示す断面図。
【
図14】本発明の方法の第2実施形態による、ワークを改質層に沿って分割することにより機能層を有する基板を得るステップの結果を示す断面図。
【
図15】本発明の方法の第1乃至第3実施形態によるワークの異なる部分の厚さの例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0136】
添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。好適な実施形態は、基板製造方法、及び当該方法を実施するための基板製造システムに関する。
【0137】
以下に、本発明の第1乃至第3実施形態を、
図1乃至15を参照しつつ説明する。
【0138】
第1乃至第3実施形態において、本発明の方法は、ワーク2(例えば、
図1乃至8参照)としてのSiCインゴットに対して実施される。特に、ワーク2は、単結晶SiCインゴットであり得る。しかしながら、上述のように、異なるタイプのワーク、特に異なるワーク材料をワーク2に対して使用することができる。
【0139】
図1に示すように、ワーク2は、第1表面と、第1表面4の反対側の第2表面6と、を有する。第1表面4と第2表面6とは、互いに実質的に平行である。例えば、ワーク2は、1乃至2mmの範囲の厚さ、特に1.5mm(
図15参照)の厚さを有し得る。
【0140】
パルスレーザービームLBを、ワーク2の第1表面4側からワーク2に印加する(
図1参照)。パルスレーザービームLBは、例えば、1ns乃至300nsの範囲のパルス幅を有し得る。パルスレーザービームLBは、ワーク2を透過できる波長を有する。パルスレーザービームLBの焦点Pが第1表面4から第2表面6に向かう方向において第1表面4から距離dを置いた状態で、すなわちワーク2の内部に位置する状態で(
図1参照)、第1表面4に沿った複数の位置において、パルスレーザービームLBをワーク2に印加する。
【0141】
パルスレーザービームLBを、本発明の実施形態による基板製造システム(図示せず)のレーザービーム印加手段(図示せず)によってワーク2に印加する。本実施形態において、レーザービーム印加手段は、システムの改質層形成手段を構成する。パルスレーザービームLBをワーク2に印加するプロセスにおいて、ワーク2は基板製造システムの支持部材(図示せず)により支持され得る。
【0142】
このようにパルスレーザービームLBをワーク2に印加する工程により、ワーク2の内部に改質層8が形成される(
図1乃至3を参照)。改質層8は、複数の改質領域(図示せず)を含む。改質層8は、ワーク2の第1表面4に対面している。すなわち、改質層8は、第1表面4から第2表面6に向かう方向において、第1表面4に対向している。改質層8は、第1表面4に対して実質的に平行であるように形成される。
【0143】
改質層8の改質領域は、パルスレーザービームLBの印加により改質されたワーク2の領域である。特に、改質領域は、パルスレーザービームLBの印加によりワーク材料の構造が改質された、及び/又はパルスレーザービームLBの印加によりワーク2が損傷した、ワーク2の領域であり得る。改質層8をワーク2の内部に形成する工程により、ワーク2の強度が改質層8に沿って低下する。
【0144】
第1乃至第3実施形態の方法において、改質層8をレーザービームLBをワーク2に印加することにより形成しているが、本発明はこれに限定されない。改質層8を、異なる態様で、例えば異なるタイプの放射線をワーク2に印加することによりワーク2に形成してもよい。
【0145】
改質領域は、アモルファス領域及び/又は亀裂が形成された領域を備え得る。改質領域は、アモルファス領域又は亀裂が形成された領域であり得る。改質領域は、1μm乃至30μm、好適には2μm乃至20μm、より好適には3μm乃至10μmの範囲の直径を有し得る。
【0146】
図1の断面図、
図2の斜視部分図、及び
図3の斜視透視図に示すように、改質層8は、ワーク2の断面全体を実質的に覆うように形成される。断面は、ワーク2の厚さ方向に実質的に垂直である。この点に関して、
図2の部分図は、ワーク2の一部のみ、すなわち、第2表面6から改質層8まで延在するワーク2の一部のみ示していることに留意されたい。したがって、
図2は、基板を形成することになるワーク2の上部を除いた状態で、ワーク2を実質的に示している(
図14の基板16も参照)。
【0147】
パルスレーザービームLBを、第1表面4に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置が互いに重ならないようにして、ワーク2に印加し得る。第1表面4に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置の間の距離、すなわち、隣接する位置の中心同士の間の距離が、3μm乃至50μm、好適には5μm乃至40μm、より好適には8μm乃至30μmの範囲にあるようにして、パルスレーザービームLBをワーク2に印加し得る。
【0148】
このようにパルスレーザービームLBを印加する工程により、改質層8内の複数の改質領域を、隣接する又は隣り合う改質領域が互いに重ならないようにして、ワーク2の内部に形成することができる。隣接する又は隣り合う改質領域の外縁の間の距離は、少なくとも1μmであり得る。
【0149】
或いは、第1表面4に沿った少なくとも複数の位置において、隣接する位置が少なくとも部分的に互いに重なるようにして、パルスレーザービームLBをワーク2に印加してもよい。このようにして、改質層8内の複数の改質領域を、隣接する又は隣り合う改質領域が少なくとも部分的に互いに重なるようにして、ワーク2の内部に形成することができる。
【0150】
図1及び3に更に示すように、改質層8は、ワーク2の厚さ方向において、ワーク2の第2表面よりワーク2の第1表面に近くなるように形成される。
【0151】
パルスレーザービームLBの焦点Pが第1表面4から第2表面6に向かう方向において第1表面4から距離dを置いた状態で、パルスレーザービームLBをワーク2に印加する。したがって、改質層8は、ワークの厚さ方向において第1表面から距離dを置いてワーク2の内部に形成される(
図1及び3参照)。本実施形態において、ワーク2の厚さ方向における改質層8と第1表面4との間の距離dは、得られる基板の最終厚さ(およそ70μm;
図15参照)より、およそ50μm大きい。
【0152】
図4乃至6は、本発明の方法の第2実施形態による、パルスレーザービームLBをワーク2に印加してワーク2の内部に改質層8を形成するステップを示す。第2実施形態のワーク2は、第1実施形態のワーク2と同じである。
図5の部分図は、ワーク2の一部のみ、すなわち、第2表面6から改質層8まで延在するワーク2の一部のみ示す。したがって、
図5は、基板を形成することになるワーク2の上部を除いた状態で、ワーク2を実質的に示している。
【0153】
第2実施形態の方法は、改質層8が周縁ワーク部10により囲まれるように形成される(
図4乃至6参照)という点で第1実施形態の方法と異なる。第2実施形態の周縁ワーク部10においては、改質領域は形成されない。或いは、周縁ワーク部10を、上述の改質層8より小さい程度で改質してもよい。このような周縁ワーク部10をより小さい程度で改質する一例を、本発明の第3実施形態について以下に説明する。
【0154】
周縁ワーク部10は、実質的に環形状を有し、改質層8の延在面、すなわち改質層8が延在する面において改質層8を取り囲む。改質層8の延在面は、第1表面4に対して実質的に平行である(
図4参照)。周縁ワーク部10は、ワーク2の周縁又は円周に沿って延在する。改質層8は、ワーク2の中央部分に配置される(特に
図5参照)。改質層8は、ワーク2の厚さ方向において第1表面4から距離dを置いてワーク2の内部に形成される(
図6参照)。本実施形態において、距離dは、得られる基板の最終厚さ(およそ70μm;
図15参照)より、およそ50μm大きい。
【0155】
環状の周縁ワーク部10は、0.1乃至2mmのリング幅w(
図4参照)を有する。周縁ワーク部10は、ワーク2から得られる基板の周縁マージンエリアに対応し得る。周縁マージンエリアでは、デバイス、特にアクティブデバイスが形成されない。
【0156】
図7及び8は、本発明の第3実施形態によるワーク2の内部に改質層8を形成するステップの結果を示す。第3実施形態のワーク2は、第1及び第2実施形態のワーク2と同じである。
図7の部分図は、ワーク2の一部のみ、すなわち、第2表面6から改質層8まで延在するワーク2の一部のみ示す。したがって、
図7は、基板を形成することになるワーク2の上部を除いた状態で、ワーク2を実質的に示している。
【0157】
第3実施形態の方法は、改質層8が周縁ワーク部10により囲まれるように形成される(
図7及び8参照)という点で第1実施形態の方法と異なる。以下で詳述するように、周縁ワーク部10において、ワーク2は改質層8におけるより小さい程度で改質される。
【0158】
周縁ワーク部10は、実質的に環形状を有して、改質層8の延在面、すなわち改質層8が延在する面において改質層8を取り囲む。改質層8の延在面は、第1表面4に対して実質的に平行である。周縁ワーク部10は、ワーク2の周縁又は円周に沿って延在する。改質層8は、ワーク2の中央部分に配置される(
図7参照)。改質層8は、ワーク2の厚さ方向において第1表面4から距離dを置いてワーク2の内部に形成される(
図8参照)。
【0159】
環状の周縁ワーク部10は、0.1乃至2mmのリング幅w(
図7参照)を有する。周縁ワーク部10は、ワーク2から得られる基板の周縁マージンエリアに対応し得る。周縁マージンエリアでは、デバイス、特にアクティブデバイスが形成されない。
【0160】
第3実施形態の周縁ワーク部10において、改質領域(図示せず)が形成されたエリア9と、改質領域が形成されないエリア11とが、ワーク2の円周に沿って交互に配置される(
図7及び8参照)。改質領域が形成されたエリア9は、ワーク2の周方向において、少なくとも実質的に等距離を置いて離間している。改質領域が形成されないエリア11は、ワーク2の周方向において、少なくとも実質的に等距離を置いて離間している。改質領域が形成されたエリア9は、全て同一のサイズ、すなわちワークの厚さ方向及びこれに垂直な方向において同一の広がり範囲を有する。改質領域が形成されないエリア11は、全て同一のサイズを有する。改質領域が形成されたエリア9は、全てワーク2の周縁部までいっぱいに延在する(
図7参照)。改質領域が形成されないエリア11は、全てワーク2の周縁部までいっぱいに延在する(
図7参照)。
【0161】
第3実施形態の周縁ワーク部10において、改質領域が形成されたエリア9のワーク2の周方向における広がり範囲は、改質領域が形成されないエリア11のワーク2の周方向における広がり範囲より小さい(
図7参照)。或いは、改質領域が形成されたエリア9のワーク2の周方向における広がり範囲は、改質領域が形成されないエリア11のワーク2の周方向における広がり範囲と同等であってもそれより大きくてもよい。
【0162】
改質層8における改質領域、及び周縁ワーク部10のエリア9における改質領域は、第1表面4から第2表面6に向かう方向において第1表面4から同一の距離dを置いて形成される、すなわち、ワーク2の内部において同一深さに配置される(
図8参照)。本実施形態において、距離dは、得られる基板の最終厚さ(およそ70μm;
図15参照)より、およそ50μm大きい。
【0163】
改質層8における改質領域、及び周縁ワーク部10のエリア9における改質領域は、同一態様で(及び、第1及び第2実施形態による方法において改質層8の改質領域が形成されるのと同一態様で)形成される。すなわち、パルスレーザービームLBの焦点Pが第1表面4から第2表面6に向かう方向において第1表面4から距離dを置いた状態(
図1参照)で、パルスレーザービームLBをワーク2の第1表面4側からワーク2に印加することにより形成される。
【0164】
周縁ワーク部10のエリア9において、ワーク2の単位面積当たりの改質領域の個数は、改質層8における個数と少なくとも実質的に同一であり得る。或いは、周縁ワーク部10のエリア9において、改質層8におけるより、ワーク2の単位面積当たりの改質領域を少なく又は多く形成してもよい。
【0165】
周縁ワーク部10のエリア9において、隣接する又は隣り合う改質領域間の距離は、改質層8におけるものと少なくとも実質的に同一であり得る。或いは、周縁ワーク部10のエリア9において、隣接する又は隣り合う改質領域のうちの少なくともいくつかの間の距離は、改質層8における距離より大きくても小さくてもよい。
【0166】
第3実施形態による方法において、周縁ワーク部10のエリア9に形成される改質領域は、改質層8における改質領域と少なくとも実質的に同じ程度に改質される。これは、改質層8を形成するためのものと同一のパルスレーザービームLBを印加することにより達成される。或いは、周縁ワーク部10のエリア9に形成される改質領域を、改質層8を形成するためのものとは異なるレーザービーム、例えばより弱い又はより強いレーザービームを印加することにより、改質層8における改質領域より小さい又は大きい程度で改質してもよい。
【0167】
第3実施形態による方法において、周縁ワーク部10のエリア9に形成される改質領域は、改質層8における改質領域と少なくとも実質的に同一のサイズを有する。或いは、周縁ワーク部10のエリア9に形成される改質領域は、改質層8における改質領域より小さくても大きくてもよい。
【0168】
後続のプロセスステップに関する以下の説明は、本発明の第2実施形態に関する。しかしながら、これらのステップは、本発明の第1及び第3実施形態の方法において実質的に同一の態様で実施され得る。
【0169】
ワーク2の内部に改質層8を形成する工程の後、機能層12をワーク2の第1表面4に形成する。機能層12を形成するステップの結果を
図9に示す。機能層12は、本実施形態の基板製造システムの機能層形成手段(図示せず)により形成される。機能層12をワーク2の第1表面4に形成する工程は、高温プロセスを伴い得る。
【0170】
本実施形態において、機能層12は電子機能を提供する。特に、機能層12は、複数のデバイス14を含むデバイス層である。デバイス14は、例えば、SiC MOSFET又はIGBT等のトランジスタ、又はショットキーバリアダイオード等のダイオードを備え得る、又はこれらであり得る。しかしながら、上述のように、他のタイプの機能層を機能層12として使用してもよい。
【0171】
機能層12をワーク2の第1表面4に形成する工程の後、ワーク2を改質層8に沿って分割することにより、機能層12を有する基板16を得る(
図14参照)。ワーク2を分割するプロセスを、
図10乃至14を参照して以下に詳述する。
【0172】
具体的には、機能層12をワーク2の第1表面4に形成する工程の後、保護支持材を、機能層12が形成された第1表面4に取り付ける。保護支持材を第1表面4に設けるステップの結果を
図10に示す。保護支持材は、本実施形態の基板製造システムの取付手段(図示せず)により、第1表面4に取り付けられる。
【0173】
保護支持材は、保護フィルム18と、クッション層20と、ベースシート22と、を備える(例えば
図10参照)。
【0174】
保護フィルム18は、保護フィルム18の前面全体が第1表面4と直接接触するようにして第1表面4に貼着され得る。本例において、保護フィルム18を第1表面4に貼着する工程の間に、及び/又はその後に、外的刺激を保護フィルム18に印加することにより、保護フィルム18は第1表面4に取り付けられ得る。外的刺激を保護フィルム18に印加する工程は、保護フィルム18を加熱する工程、及び/又は保護フィルム18を冷却する工程、及び/又は保護フィルム18に真空を印加する工程、及び/又は例えばレーザービームを使用して保護フィルム18に光等の放射線を印加する工程を備え得る、又はこれらからなり得る。外的刺激は、化学化合物、及び/又は電子又はプラズマ印加、及び/又は圧力、摩擦又は超音波印加、及び/又は静電気を含み得る、又はこれらであり得る。
【0175】
代替的に又は追加的に、保護フィルム18に接着剤層(図示せず)を設けることができる。接着剤層は、保護フィルム18の前面の周縁エリアのみに設けられる。この場合、保護フィルム18の前面の中央エリアに接着剤は存在しない。保護フィルム18の前面の中央エリアにおいて、保護フィルム18の前面と第1表面4とは直接接触し得る。保護フィルム18は、接着剤層が第1表面4の周縁部のみに接触するようにして第1表面4に貼着され得る。接着剤層が接触する第1表面4の周縁部は、例えば、第1表面4の周縁マージンエリアであり得る。この周縁マージンエリアにおいては、機能層12、特にデバイス14は存在しなくてよい。
【0176】
保護フィルム18は、ポリマー等のプラスチック材料から構成され得る。例えば、保護フィルム18は、ポリオレフィンから構成され得る。特に、保護フィルム18は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又はポリブチレン(PB)から構成され得る。
【0177】
保護フィルム18は、最大で180℃以上の温度、好適には最大で220℃以上の温度、より好適には最大で250℃以上の温度、更に好適には最大で300℃以上の温度に対する耐熱性を有し得る。
【0178】
保護フィルム18は、5乃至200μm、好適には8乃至100μm、より好適には10乃至80μm、更に好適には12乃至50μmの範囲の厚さを有し得る。
【0179】
クッション層20は、保護フィルム18の前面の反対側のその後面に取り付けられる。ワーク2の厚さ方向に沿って第1表面4から突出する凸部が、クッション層20に埋設される。
【0180】
クッション層20は、ワーク2の厚さ方向に沿って突出する凸部を埋設可能な任意のタイプの材料から形成され得る。例えば、クッション層は、樹脂、接着剤、ゲル等から形成され得る。クッション層20は、上述のように外的刺激により硬化可能である。例えば、クッション層20は、硬化性樹脂、硬化性接着剤、硬化性ゲル等から形成され得る。
【0181】
クッション層20は、最大で180℃以上の温度、好適には最大で220℃以上の温度、より好適には最大で250℃以上の温度、更に好適には最大で300℃以上の温度に対する耐熱性を有し得る。
【0182】
クッション層20は、10乃至300μm、好適には20乃至250μm、より好適には50乃至200μmの範囲の厚さを有し得る。
【0183】
ベースシート22は、保護フィルム18に取り付けられたクッション層20の前面の反対側のその後面に取り付けられる。
【0184】
ベースシート22は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)又はポリオレフィン等のポリマー材料等の軟質又は柔軟な材料から構成され得る。或いは、ベースシート22は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び/又はシリコン、及び/又はガラス、及び/又はステンレス鋼(SUS)等の剛性又は硬質の材料から構成され得る。また、ベースシート22を、上に列挙した材料を組み合わせて形成してもよい。
【0185】
ベースシート22は、最大で180℃以上の温度、好適には最大で220℃以上の温度、より好適には最大で250℃以上の温度、更に好適には最大で300℃以上の温度に対する耐熱性を有し得る。
【0186】
ベースシート22は、30乃至1500μm、好適には40乃至1200μm、より好適には50乃至1000μmの範囲の厚さを有し得る。
【0187】
ベースシート22の前面は、クッション層20の後面と接触している。ベースシート22の前面の反対側のその後面は、ワーク2の第1表面4、及びワーク2の内部に形成された改質層8に対して実質的に平行である(
図10参照)。したがって、研削及び/又は研磨工程等の更なる処理において、例えば、ベースシート22の後面を基板製造システムの支持部材、例えばチャックテーブルに載置することにより、その後面に適切な逆圧を印加することができる。
【0188】
保護支持材をワーク2の第1表面4に取り付ける工程の後、外的刺激をワーク2に印加する。基板製造システムは、外的刺激印加手段(図示せず)を備える分割手段(図示せず)を有する。外的刺激を、外的刺激付与手段によりワーク2に印加する。
【0189】
本実施形態において、外的刺激をワーク2に印加する工程は、超音波をワーク2に印加する工程からなる。しかしながら、上述のように、他のタイプの外的刺激をワーク2に印加してもよい。
【0190】
外的刺激をワーク2に印加する工程により、ワーク2は、改質層8が形成されたエリアにおいて分離する。このエリアにおいて、ワーク2の強度は改質領域の存在を理由として低下しているため、外的刺激の印加によるワーク2の分離が促進される。
【0191】
ワーク2に外的刺激を印加するステップの結果を
図11に示す。改質層8は、改質領域が形成されていない周縁ワーク部10によって取り囲まれるように形成されているため、外的刺激の印加により、ワーク2は改質層8が形成されたエリアにおいてのみ分離する。これを、ワーク2が改質層8に沿って分離した分離層24を示す実線によって
図11に示す。しかしながら、ワーク2の部分的に分離した部分は、周縁ワーク部10において依然として互いに接続している。したがって、ワーク2を分割して、すなわち完全に分割して機能層12を有する基板16を得る工程は、以下で詳述するように、ワーク2を周縁ワーク部10において分離する工程を更に備える。
【0192】
第1実施形態(
図1及び2参照)の場合のように、改質層8がワーク2の断面全体を実質的に覆うように形成されている場合、外的刺激を印加する工程により、ワーク2は改質層8に沿って完全に分割されるため、機能層12を有する基板16が得られる。
【0193】
第3実施形態による方法においては、改質領域が形成されたエリア9と改質領域が形成されないエリア11とが、周縁ワーク部10においてワーク2の円周に沿って交互に配置されている(
図7及び8参照)。改質層8における改質領域と周縁ワーク部10のエリア9における改質領域とは、同一態様で形成される。第3実施形態の方法において外的刺激をワーク2に印加する工程により、ワーク2は、改質層8が形成されたエリアにおいて、及び改質層が形成された周縁ワーク部10のエリア9において分離する。しかしながら、ワーク2の部分的に分離した部分は、改質領域が形成されていない周縁ワーク部10のエリア11において、依然として互いに接続している。したがって、ワーク2を分割して、すなわち完全に分割して機能層12を有する基板16を得る工程は、ワーク2を周縁ワーク部10において、すなわち改質領域が形成されていないエリア11において完全に分離する工程を更に備える。この分離プロセスは、第2実施形態の方法に関して以下に詳述する態様と実質的に同一態様において実施され得る。第3実施形態による方法において、ワーク2を周縁ワーク部10において完全に分離するプロセスは、エリア9の存在によって顕著に促進される。
外的刺激をワーク2に印加する工程の後、ワーク2を周縁ワーク部10において分離する。本実施形態において、ワーク2を、周縁ワーク部10において、機械的切断手段26(
図11及び12参照)、すなわち垂直スピンドルダイサーを使用して切断する。基板製造システムの分割手段は、機械的切断手段26を備える。機械的切断手段26は、本実施形態の分離手段を構成する。機械的切断手段26は、約30乃至80μmの切断幅、すなわちブレード幅を有する回転切断ブレード28を有する。
【0194】
ワーク2を周縁ワーク部10において切断するプロセスを
図12に示す。このプロセスでは、機械的切断手段26の切断ブレード28とワーク2とを、
図12の湾曲した矢印で示すように、同一回転方向において回転させる。或いは、機械的切断手段26の切断ブレード28とワーク2とを対向する回転方向において回転させてもよい。ワーク2は、基板製造システムの支持部材を回転させることで回転し得る。更に、
図12の水平方向の矢印で示すように、切断ブレード28をワーク2の厚さ方向に対して実質的に垂直な方向、すなわち切断方向において分離層24に向けて移動させることにより、切断ブレード28を周縁ワーク部10に接触させる。したがって、ワーク2の周縁又は円周側から、ワーク2は周縁ワーク部10において切断される。切断ブレード28が分離層24の存在するエリアに到達したら、ワーク2は完全に分割され、そして切断プロセスが停止される。ワーク2の完全に分割された状態において、以下で更に詳述するように、機能層12を有する基板16が得られる(
図14参照)。
【0195】
図13は、レーザービーム、特にパルスレーザービームLBを周縁ワーク部10に印加して周縁ワーク部10に改質領域を形成する選択的なステップを示す。パルスレーザービームLBを、上述の改質層8を形成するための態様と同一の態様において印加し得る。
図13に示すように、パルスレーザービームLBを、ワーク2の第1表面4側から、及び/又はワーク2の第2表面6の側から、及び/又はワーク2の周縁又は円周側から、ワーク2に印加することができる。
【0196】
保護支持材を第1表面4に取り付ける工程の前又は後に、改質領域を周縁ワーク部10に形成し得る。外的刺激をワーク2に印加する工程の前に、改質領域を周縁ワーク部10に形成する。したがって、外的刺激をワーク2に印加する工程により、ワーク2は改質層8に沿って、及び周縁ワーク部10に沿って分割されることで、ワーク2は完全に分割され得る。この場合、周縁ワーク部10を切断するステップ(
図11及び12参照)は省略される。
【0197】
図14は、ワーク2を改質層8及び周縁ワーク部10に沿って完全に分割するプロセスの結果を示す。ワーク2を分割する工程により、機能層12を有する基板16が得られる。具体的には、基板16を、ワーク2の残部30から分離する。第1及び第2実施形態において、基板16は、SiC基板である。
【0198】
ワーク2を分割する工程の後、第1表面4の反対側の基板16の表面32を研削し、任意で研磨する。研削ステップにおいて、及び場合により任意の研磨ステップにおいて、基板16を最終基板厚さに調整する。研削ステップは、基板製造システムの研削手段(図示せず)により実施される。任意の研磨ステップは、基板製造システムの研磨手段(図示せず)により実施される。或いは、基板製造システムは、複合研削研磨手段(図示せず)を備え得る。
【0199】
第1表面4の反対側の基板16の表面32を研削し任意で研磨する工程の後、表面32に金属化プロセスを施してもよい。この目的のために、基板製造システムは、金属化手段(図示せず)を備え得る。
【0200】
基板16の表面32を研削し任意で研磨する工程の後に、保護フィルム18、クッション層20、及びバックシート22を第1表面4から除去してもよい。或いは、基板16の表面32に金属化プロセスを施す工程の後に、保護フィルム18、クッション層20、及びバックシート22を第1表面4から除去してもよい。
【0201】
ワーク2を分割する工程の後、ワーク2の残部30の表面34であってワーク2の第2表面6の反対側の表面34を研削し研磨する。このようにして、ワーク2の残部30を効率的に整えて、そこから更なる基板を得ることができる。
【0202】
研削手段又は複合研削研磨手段は、ワーク2の残部30の表面34を研磨するように更に構成され得る。或いは、この目的のために、基板製造システムは、更なる研削手段(図示せず)又は更なる複合研削研磨手段を備え得る。
【0203】
研磨手段又は複合研削研磨手段は、ワーク2の残部30の表面34を研磨するように更に構成され得る。或いは、この目的のために、基板製造システムは、更なる研磨手段(図示せず)又は複合研削研磨手段を備え得る。
【0204】
ワーク2を分割する工程の後、上述の改質層8を形成するステップ、機能層12を形成するステップ、及びワーク2を分割するステップを、ワーク2の残部30に一回又は複数回繰り返して、機能層12を有する複数個の基板16、例えば2個以上、3個以上、5個以上、8個以上、10個以上、又は12個以上の基板16を得るようにしてもよい。このようにして、複数の基板16を、単一のワーク2から効率性及び信頼性の高い態様で得ることができる。特に、上述のように、本発明の方法により、ワーク2から得られる基板16の個数を増加させることができる。
【0205】
図15は、第1乃至第3実施形態によるワーク2の異なる部分の厚さの例を示す。図示のように、ワーク2は1.5mmの厚さを有し得る。ワーク2から得られる基板16の所望の最終厚さは、およそ70μm(
図15の部分1参照)であり得る。ワーク2の厚さ方向における改質層8と第1表面4との間の距離d(
図1、3、6及び8参照)が、基板16の当該最終厚さよりおよそ50μm(
図15の部分2参照)大きくなるように、改質層8は形成され得る。研削及び/又は研磨プロセスにおいて、基板16の厚さをおよそ50μm削減することで、所望の最終基板厚さに達し得る。ワーク2の残部30の厚さは、研削及び研磨プロセスにおいておよそ50μm削減され得る(
図15の部分3参照)。
【0206】
したがって、1個の基板16を製造するために、ワーク材料からなる170μm厚さの部分が必要となる。これにより、1.5mmの厚さを有するワーク2から、8個の基板16を得ることが可能となる。
【0207】
第2及び第3実施形態に関して上述したように、基板製造プロセスの大部分において、ワーク2を少なくとも部分的に周縁ワーク部10において接続したままとすることにより、70μmという薄厚の基板16を、特に効率性及び信頼性の高い態様で製造することができる。