(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】加熱装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240611BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G03G15/20 510
H05B3/00 335
(21)【出願番号】P 2020049174
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】関 貴之
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111292(JP,A)
【文献】特開2017-191149(JP,A)
【文献】特開2002-151232(JP,A)
【文献】特開2017-181531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、
前記回転部材に接触して外側ニップ部を形成する対向部材と、
前記回転部材の内側に設けられ、前記回転部材を加熱する加熱部材と、を備えた加熱装置であって、
前記加熱部材は、
基材と、
前記基材上に設けられた複数の抵抗発熱体と、
第1の電極部および第2の電極部と、
前記第1の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第1の導電体、および、前記第2の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第2の導電体と、を備え、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面に沿った方向を長手方向、前記長手方向と直交する方向を前記加熱部材の短手方向とし、
前記導電体のうち、前記長手方向に延在する部分を、前記導電体の長手方向延在部とすると、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面の垂直方向から見た時に、前記導電体の前記長手方向延在部全体を、前記外側ニップ部の範囲外に設け、前記抵抗発熱体全体を前記外側ニップ部の範囲内に設けることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
回転部材と、
前記回転部材に接触して外側ニップ部を形成する対向部材と、
前記回転部材の内側に設けられ、前記回転部材を加熱する加熱部材と、を備えた加熱装置であって、
前記加熱部材は、
基材と、
前記基材上に設けられた複数の抵抗発熱体と、
第1の電極部および第2の電極部と、
前記第1の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第1の導電体、および、前記第2の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第2の導電体と、を備え、
前記加熱部材は、前記回転部材の回転方向の前記外側ニップ部の位置において、前記回転部材を介して前記対向部材に当接し、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面に沿った方向を長手方向、前記長手方向と直交する方向を前記加熱部材の短手方向とし、
前記導電体のうち、前記長手方向に延在する部分を、前記導電体の長手方向延在部とすると、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面の垂直方向から見た時に、前記導電体の前記長手方向延在部全体を、前記外側ニップ部の範囲外に設け、前記抵抗発熱体を前記外側ニップ部の範囲内に設け
、
前記回転部材の内側で、前記加熱部材よりも前記回転部材の回転方向上流側あるいは下流側の少なくともいずれか一方に、前記加熱部材の前記回転部材側に対向する面よりも、前記回転部材の内面側に突出して設けられた凸部をさらに有し、
前記回転部材の回転方向において、前記凸部は、前記抵抗発熱体よりも前記長手方向延在部に近い位置に設けられることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
回転部材と、
前記回転部材に接触して外側ニップ部を形成する対向部材と、
前記回転部材の内側に設けられ、前記回転部材を加熱する加熱部材と、を備えた加熱装置であって、
前記加熱部材は、
基材と、
前記基材上に設けられた複数の抵抗発熱体と、
第1の電極部および第2の電極部と、
前記第1の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第1の導電体、および、前記第2の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第2の導電体と、を備え、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面に沿った方向を長手方向、前記長手方向と直交する方向を前記加熱部材の短手方向とし、
前記導電体のうち、前記長手方向に延在する部分を、前記導電体の長手方向延在部とすると、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面の垂直方向から見た時に、前記導電体の前記長手方向延在部を、前記外側ニップ部の範囲外に設け、
前記加熱部材と前記回転部材との間に挟み込まれ、前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面と平行な面上において、前記長手方向延在部に対向する位置に設けられる断熱部材を備えたことを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
前記加熱部材を保持する保持部材をさらに備えた請求項3記載の加熱装置であって、
前記断熱部材は前記保持部材の一部である加熱装置。
【請求項5】
前記回転部材の内側で、前記加熱部材よりも前記回転部材の回転方向上流側あるいは下流側の少なくともいずれか一方に、前記加熱部材の前記回転部材側に対向する面よりも、前記回転部材の内面側に突出して設けられた凸部をさらに有し、
前記回転部材の回転方向において、前記凸部は、前記抵抗発熱体よりも前記長手方向延在部に近い位置に設けられる請求項
3または4いずれか記載の加熱装置。
【請求項6】
回転部材と、
前記回転部材に接触して外側ニップ部を形成する対向部材と、
前記回転部材の内側に設けられ、前記回転部材を加熱する加熱部材と、を備えた加熱装置であって、
前記加熱部材は、
基材と、
前記基材上に設けられた複数の抵抗発熱体と、
第1の電極部および第2の電極部と、
前記第1の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第1の導電体、および、前記第2の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第2の導電体とを備え、
前記加熱部材と前記回転部材とが接触して内側ニップ部を形成し、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面に沿った方向を長手方向とし、前記長手方向と直交する方向を前記加熱部材の短手方向とし、
前記導電体のうち、前記長手方向に延在する部分を、前記導電体の長手方向延在部とすると、
前記回転部材の内側で、前記加熱部材よりも前記回転部材の回転方向上流側あるいは下流側の少なくともいずれか一方に、前記加熱部材の前記回転部材側に対向する面よりも、前記回転部材の内面側に突出して設けられた凸部をさらに有し、
前記回転部材の回転方向において、前記凸部は、前記抵抗発熱体よりも前記長手方向延在部に近い位置に設けられ、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面の垂直方向から見た時に、前記導電体の前記長手方向延在部全体を、前記外側ニップ部の範囲外に設け、前記抵抗発熱体全体を前記外側ニップ部の範囲内に設けることを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
前記長手方向延在部は前記抵抗発熱体同士をつなぐ部分である請求項1から6いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記加熱部材は、
前記電極部として、第3の電極部と、
前記導電体として、前記第3の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第3の導電体とをさらに備えた請求項1から7いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記加熱部材の短手方向寸法に対する前記抵抗発熱体の短手方向寸法の比が、25%以上である請求項1から8いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱部材の短手方向寸法に対する前記抵抗発熱体の短手方向寸法の比が、40%以上である請求項1から8いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項11】
請求項1から10いずれか1項に記載の加熱装置は記録媒体上のトナーを熱により定着させる定着装置。
【請求項12】
請求項1から11いずれか1項に記載の加熱装置もしくは定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置として、用紙上のトナーを熱により定着させる定着装置や用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置などが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、長手状の基板に、抵抗発熱体や電気接点、これらを電気的に接続する配線などが設けられた加熱部材(ヒータ)を備える定着装置が開示されている。
【0004】
このような加熱部材では、主な発熱部分である抵抗発熱体以外に、抵抗発熱体と電極部とを電気的につないで抵抗発熱体に電流を流すための導電体からも発熱が生じ、加熱部材の発熱量や被加熱部材である回転部材の温度分布に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転部材に長手方向の温度むらが生じるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、回転部材と、前記回転部材に接触して外側ニップ部を形成する対向部材と、前記回転部材の内側に設けられ、前記回転部材を加熱する加熱部材と、を備えた加熱装置であって、前記加熱部材は、基材と、前記基材上に設けられた複数の抵抗発熱体と、電極部として、第1の電極部および第2の電極部と、導電体として、前記第1の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第1の導電体、および、前記第2の電極部と前記抵抗発熱体とを電気的に接続する第2の導電体と、を備え、前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面に沿った方向を長手方向、前記長手方向と直交する方向を前記加熱部材の短手方向とし、前記導電体の前記加熱部材の長手方向に延在する部分のうち、前記短手方向の前記抵抗発熱体が配置された範囲の外側に配置された前記の長手方向に延在する部分を、前記導電体の長手方向延在部とすると、前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面の垂直方向から見た時に、前記導電体の前記長手方向延在部全体を、前記外側ニップ部の範囲外に設け、前記抵抗発熱体全体を前記外側ニップ部の範囲内に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転部材の長手方向の温度むらを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図9】ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
【
図10】抵抗発熱体に対する各給電線の接続位置が互いに反対側である場合の給電線の発熱量を示す図である。
【
図11】抵抗発熱体に対する各給電線の接続位置が同じ側である場合の給電線の発熱量を示す図である。
【
図12】ヒータと内側ニップ部の位置関係を示す平面図である。
【
図13】ヒータと内側ニップ部の位置関係を示す図で、内側ニップ部が鼓形状の場合の図である。
【
図14】給電線を内側ニップ部の外側に配置した場合の、定着装置の断面図である。
【
図15】ヒータと定着ニップの位置関係を示す平面図である。
【
図16】給電線を定着ニップの外側に配置した場合の、定着装置の断面図である。
【
図17】凸部を有する形態のヒータホルダおよびヒータの斜視図である。
【
図18】
図17の形態の定着装置において、給電線を内側ニップ部の外側に配置した場合の断面図である。
【
図19】
図17の形態の定着装置において、給電線を定着ニップの外側に配置した場合の断面図である。
【
図20】ヒータホルダに断熱部材が取り付けられる形態のヒータホルダおよびヒータの斜視図である。
【
図21】
図20の形態の定着装置において、給電線を内側ニップ部の外側に配置した場合の断面図である。
【
図24】
図20の形態の定着装置において、給電線を定着ニップの外側に配置した場合の断面図である。
【
図25】
図20と異なる形態の断熱部材が取り付けられたヒータホルダおよびヒータの斜視図である。
【
図26】断熱部材のさらに異なる形態を示す斜視図である。
【
図27】複数の抵抗発熱群を有するヒータの一例を示す平面図である。
【
図28】
図27のヒータに部分通電した場合において、通常の通電経路を示す図である。
【
図29】
図27のヒータに部分通電した場合において、意図しない分流が生じた場合の通電経路を示す図である。
【
図30】
図29の場合について、ブロックごとの給電線の合計発熱量を示す図である。
【
図31】
図27のヒータに全通電した場合について、ブロックごとの給電線の合計発熱量を示す図である。
【
図32】
図27と給電線の接続位置が異なるヒータについて、意図しない分流が生じた場合のブロックごとの給電線の合計発熱量を示す図である。
【
図33】
図32のヒータに全通電した場合について、ブロックごとの給電線の合計発熱量を示す図である。
【
図34】
図27のヒータとニップ部の範囲との関係を示す平面図である。
【
図35】給電線を構成する線部が矩形状をなす形態のヒータの平面図である。
【
図36】給電線の各抵抗発熱体に接続される部分が傾斜した形態のヒータの平面図である。
【
図37】
図36のヒータの抵抗発熱体を構成する線部が矩形状をなす形態のヒータの平面図である。
【
図38】給電線の各抵抗発熱体に接続される部分を抵抗発熱体に置き換えた形態のヒータの平面図である。
【
図39】全ての電極部が長手方向の一方側に配置された形態のヒータの平面図である。
【
図40】ヒータの短手方向寸法と抵抗発熱体の短手方向寸法を示す平面図である。
【
図41】ヒータの長手方向寸法、ヒータの短手方向寸法、および給電線の短手方向寸法を示す平面図である。
【
図43】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。以下、各実施形態の説明において、加熱装置の一例として、トナーを熱により定着させる定着装置を説明する。
【0010】
図1に示すモノクロの画像形成装置1には、感光体ドラム10が設けられている。感光体ドラム10は、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体であり、図の矢印方向に回転する。感光体ドラム10の周囲には、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラ7等を備えた現像装置12と、感光体ドラム10の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード13等で構成されている。
【0011】
感光体ドラム10の上方には、露光部が配置されている。露光部が画像データに基づいて発したレーザ光Lbが、ミラー14を介して感光体ドラム10の表面に照射される。
【0012】
また、感光体ドラム10に対向する位置に配置され、転写チャージャを備えた転写手段15が配置されている。転写手段15は、感光体ドラム10表面上の画像を用紙Pに転写する。
【0013】
画像形成装置1の下部には給紙部4が位置しており、記録媒体あるいは被加熱物としての用紙Pを収容した給紙カセット16や、給紙カセット16から用紙Pを搬送路5へ搬出する給紙ローラ17等からなっている。給紙ローラ17の搬送方向下流側にはレジストローラ18が配置されている。
【0014】
定着装置9は、後述する加熱部材によって加熱される定着ベルト20、その定着ベルト20を加圧可能な加圧ローラ21等を有している。
【0015】
以下、
図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
【0016】
印刷動作(画像形成動作)が開始されると、まず感光体ドラム10が帯電ローラ11によってその表面を帯電される。そして、画像データに基づいて露光部からレーザービームLbが照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体ドラム10には、現像装置12から表面部分にトナーが供給され、トナー画像(現像剤像)として可視像化される。そして、転写後の感光体ドラム10に残されたトナー等は、クリーニングブレード13によって取り除かれる。
【0017】
一方、印刷動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部4の給紙ローラ17が回転駆動することによって、給紙カセット16に収容された用紙Pが搬送路5に送り出される。
【0018】
搬送路5に送り出された用紙Pは、レジストローラ18によってタイミングを計られ、感光体ドラム10表面上のトナー画像と向かい合うタイミングで転写手段15と感光体ドラム10との対向部である転写部へ搬送され、転写手段15による転写バイアス印加によりトナー画像が転写される。
【0019】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、加熱されている定着ベルト20と加圧ローラ21とによって加熱および加圧されて、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト20から分離され、定着装置9の下流側に設けられた搬送ローラ対によって搬送され、装置外側に設けられた排紙トレイへと排出される。
【0020】
続いて、定着装置9のより詳細な構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、回転部材あるいは定着部材としての定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触してニップ部Nを形成する、対向部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱ユニット19と、を備えている。また、加熱ユニット19は、加熱部材としての面状のヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を支持する支持部材としてのステー24と、ヒータの温度を検知する、温度検知手段としてのサーミスタ34とを有する。定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、および、ステー24は、
図2の紙面に直交する方向(
図3の両矢印B方向参照)に延在しており、以下、この方向を各部材の長手方向、あるいは、加熱ユニット19や定着装置9の長手方向と呼ぶ。ヒータ22、ヒータホルダ23、および、ステー24は、定着ベルト20の内側に設けられる。
【0022】
定着ベルト20は、無端状のベルト部材で構成され、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0023】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0024】
定着ベルト20は、加圧機構によって加圧ローラ21の側へ加圧され、加圧ローラ21に圧接されている。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に、外側ニップ部としての定着ニップNが形成される。また、定着ベルト20とヒータ22との間に、内側ニップ部Mが形成される。図のWNは定着ニップNの範囲(図では用紙搬送方向の範囲)を、WMは内側ニップ部Mの範囲(図では用紙搬送方向の範囲)をそれぞれ示している。ここで、外側ニップ部とは、回転部材(定着ベルト20)と対向部材(加圧ローラ21)との接触領域のことであり、内側ニップ部とは、回転部材(定着ベルト20)と加熱部材(ヒータ22)との接触領域のことである。
【0025】
内側ニップ部Mの幅WMの測定方法の一例としては、ヒータ22の表面に、塗布剤としての光明丹を塗布し、定着ベルト20と加圧ローラ21とを上記加圧状態にする。この状態のまま、定着装置9の各部材(加圧ローラ21等)を駆動せずに、定着装置9を分解し、ヒータ22(第2絶縁層53)の表面を見ると、光明丹が剥がれる部分を観察することができる。この幅を測定することで、内側ニップ部Mの幅WMを測定できる。
【0026】
また、定着ニップNの幅WNの測定方法の一例としては、定着装置9に、あらかじめ別の画像形成装置で作成した黒ベタ画像を通紙途中に、定着装置9を強制停止し、10秒間停止させた後に、黒ベタ画像を引き抜くと黒ベタ画像上に、定着ニップNの幅で光沢部分ができる。この光沢部分の幅を測定することにより、定着ニップNの幅WNを測定することができる。
【0027】
加圧ローラ21は、画像形成装置本体に設けられた駆動手段から駆動力が伝達されて回転駆動する駆動ローラとして機能する。一方、定着ベルト20は、加圧ローラ21の回転に伴って従動回転するように構成されている。定着ベルト20の回転方向は
図2の矢印K1方向であり、定着ベルト20外周面(あるいは内周面)に沿った方向である。また、加圧ローラ21の回転方向は
図2の矢印K2方向である。定着ベルト20が回転すると、定着ベルト20はヒータ22に対して摺動するため、定着ベルト20の摺動性を高めるために、ヒータ22と定着ベルト20との間にオイルやグリースなどの潤滑剤を介在させてもよい。
【0028】
ヒータ22は、定着ベルト20の回転軸方向あるいは長手方向に渡って設けられ、加圧ローラ21に位置で定着ベルト20の内周面に接触している。ヒータ22は、被加熱部材としての定着ベルト20を加熱し、定着ベルト20を所定の定着温度まで加熱するための部材である。ヒータ22は、略長方形の平板であり、長辺が上記長手方向に沿っている。サーミスタ34の検知した検知温度に応じて、加熱制御手段によってヒータ22に供給する電力を制御することで、定着ベルト20の温度を所望の温度に制御する。
【0029】
本実施形態とは異なり、発熱部60を基材50の定着ベルト20側とは反対側(ヒータホルダ23側)に設けてもよい。その場合、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、本実施形態に係るヒータ22の構成において、さらに基材50の定着ベルト20とは反対側(ヒータホルダ23側)の面に、絶縁層を設けてもよい。
【0030】
ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、定着ベルト20への熱伝達効率を高めるには、本実施形態のように、ヒータ22を定着ベルト20に対して直接接触させる方が好ましい。また、ヒータ22を定着ベルト20の外周面に接触させてもよい。なお、ヒータ22が接触する面を定着ベルト20の内周面とすると、ヒータ22との接触による定着ベルト20の外周面の傷付きを回避でき、定着品質の低下を抑制できる。
【0031】
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側壁部に支持されている。また、ステー24は、ヒータホルダ23のヒータ22側とは反対側の面に接触している。これにより、ヒータホルダ23はステー24によって支持され、ヒータ22およびヒータホルダ23は加圧ローラ21の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれることで、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。
【0032】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することができる。また、ヒータ22に対するヒータホルダ23の接触面積を少なくし、ヒータ22からヒータホルダ23へ伝わる熱量を低減するため、ヒータホルダ23はヒータ22の基材50に対して突起部23aを介して接触している。さらに、本実施形態のように、ヒータホルダ23の突起部23aを、基材50の抵抗発熱体59が配置されている箇所の裏側以外、すなわち基材50の温度が高くなりやすい箇所を避けて接触させることで、ヒータホルダ23へ伝わる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト20を加熱できる。
【0033】
印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることで、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることで(
図2の矢印A方向参照)、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。
【0034】
図3は、定着装置の斜視図、
図4は、その分解斜視図である。
【0035】
図3および
図4に示すように、定着装置9の装置フレーム40は、一対の側壁部28と前壁部27とから成る第1装置フレーム25と、後壁部29から成る第2装置フレーム26と、を備えている。一対の側壁部28は、ベルト長手方向の一端部側と他端部側とに配置されており、両側壁部28によって、定着ベルト20、加圧ローラ21および加熱ユニット19の両端部側が支持される。各側壁部28には、複数の係合突起28aが設けられ、各係合突起28aが後壁部29に設けられた係合孔29aに係合することで、第1装置フレーム25と第2装置フレーム26とが組み付けられる。
【0036】
また、各側壁部28は、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、後壁部29側で開口し、これとは反対側では開口しない突き当て部となっている。この突き当て部側の端部には、加圧ローラ21の回転軸を支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21は、その回転軸の両端部がそれぞれ軸受30に装着されることで、両側壁部28によって回転可能に支持される。
【0037】
また、加圧ローラ21の回転軸の一端部側には、駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が設けられている。駆動伝達ギヤ31は、加圧ローラ21が両側壁部28に支持された状態で、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載された際、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤと連結し、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。なお、加圧ローラ21に駆動力を伝達する駆動伝達部材としては、駆動伝達ギヤ31のほか、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などであってもよい。
【0038】
加熱ユニット19の長手方向の両端部には、定着ベルト20やヒータホルダ23、ステー24などを支持する一対のフランジ32が設けられている。各フランジ32には、ガイド溝32aが設けられている。このガイド溝32aを側壁部28の挿通溝28bの縁に沿って進入させることで、フランジ32が側壁部28に対して組み付けられる。
【0039】
また、各フランジ32には、付勢部材としての一対のバネ33が当接している。各バネ33によってステー24やフランジ32が加圧ローラ21側に付勢されることで、定着ベルト20が加圧ローラ21に押し当てられ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部が形成される。バネ33は、フランジ32に当接する側とは反対側の端部が、後述する加圧レバーによって加圧されている。
【0040】
また、
図4に示すように、第2装置フレーム26を構成する後壁部29の長手方向の一端部側には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体のベルト長手方向の位置決めがなされる。なお、後壁部29の孔部29bが設けられた端部側とは反対の端部側には、位置決め部は設けられていない。これにより、温度変化に伴う定着装置本体のベルト長手方向の伸縮が拘束されないようにしている。
【0041】
図5は、加熱ユニット19の斜視図、
図6は、その分解斜視図である。
【0042】
図5および
図6に示すように、ヒータホルダ23の定着ベルト側の面(
図5および
図6における手前側の面)には、ヒータ22を収容するための収容凹部23bが設けられている。収容凹部23bは、その長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このように、収容凹部23bがヒータ22よりも若干長く形成されていることで、熱膨張によりヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23bとが干渉しないように構成されている。また、ヒータ22は、この収容凹部23b内に収容された状態で、給電部材としての後述のコネクタによってヒータホルダ23と一緒に挟まれて保持される。
【0043】
一対のフランジ32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触してベルト長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23およびステー24の両端部側が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その両端部側にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時においては基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力は生じない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0044】
図5および
図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向一端部側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、
図5および
図6の左側に示されるフランジ32の嵌合部32eが嵌合することで、ヒータホルダ23とフランジ32とのベルト長手方向の位置決めがなされる。一方、
図5および
図6の右側に示されるフランジ32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23とのベルト長手方向の位置決めはされない。このように、フランジ32に対するヒータホルダ23の位置決めをベルト長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴ってヒータホルダ23がベルト長手方向へ伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
【0045】
また、
図6に示すように、ステー24の長手方向の両端部側には、各フランジ32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aはフランジ32に突き当たることでフランジ32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、フランジ32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aがフランジ32に対して隙間を介して配置されることで、温度変化に伴ってステー24がベルト長手方向に伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
【0046】
図7は、ヒータ22の平面図、
図8は、その分解斜視図である。
【0047】
図8に示すように、ヒータ22は、基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた発熱部60などを有する導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、を有している。本実施形態では、定着ベルト20側(ニップ部N側)に向かって、基材50、第1絶縁層51、導体層52(発熱部60)、第2絶縁層53の順で積層されており、発熱部60から発された熱は、第2絶縁層53を介して定着ベルト20へと伝達される(
図2参照)。
【0048】
基材50は、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成された長手状の板材である。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度むらが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0049】
各絶縁層51,53は、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成されている。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミド(PI)等を用いてもよい。
【0050】
導体層52は、複数の抵抗発熱体59を有する発熱部60と、複数の電極部61と、これらを電気的に接続する複数の、導電体としての給電線62と、で構成されている。本実施形態では、複数の電極部61として、第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bが設けられ、これらの電極部61A,61Bは、基材50の長手方向の互いに反対の端部側に配置されている。また、第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとの間には、複数の抵抗発熱体59が基材50の長手方向に一列に並んで配置されている。各抵抗発熱体59は、その発熱量を均一化するために、各抵抗発熱体59を構成する線部の長さおよび面積が同じに設定されている。
【0051】
第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bは、前述したコネクタ70を介して電源64に接続され、電源64から電力を供給される。電極部61Aは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Aが設けられており、スイッチ65AのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。
【0052】
図7において、ヒータ22の抵抗発熱体59が設けられている面に沿ってヒータ22(基材50)の長手方向Uと交差する方向Yを「短手方向」と称すると、その短手方向Yで見た場合、各抵抗発熱体59は、ヒータ22の長手方向Uに伸びる第1の給電線(第1の導電部)62Aと第2の給電線(第2の導電部)62Bとの間に設けられている。本実施形態では、各抵抗発熱体59が、ヒータ22の長手方向Uに往復するように、短手方向の両側の曲げ部を介して複数回(本実施形態では4回)折り返した線部からなる。ヒータ22の短手方向Yにおける各抵抗発熱体59の一端部(接続位置G1の部分)は、第1の給電線62Aを介して第1の電極部61Aに接続されている。一方、ヒータ22の短手方向Yにおける各抵抗発熱体59の他端部(接続位置G2の部分)は、第2の給電線62Bを介して第2の電極部61Bに接続されている。このように、各抵抗発熱体59は、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bによって第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bに対して互いに並列に接続されている。
【0053】
抵抗発熱体59は、給電線62よりも抵抗値が高い導電部となっている。抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成される。抵抗発熱体59の材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。
【0054】
給電線62は、抵抗発熱体59よりも抵抗値の低い導体で構成されている。給電線62や電極部61の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができ、このような材料をスクリーン印刷するなどによって給電線62や電極部61が形成されている。
【0055】
図9は、ヒータ22にコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0056】
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成され、給電用のハーネス73が接続されている。
【0057】
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、コンタクト端子72の先端の接触部72aが、電極部61に弾性的に接触(圧接)し、コネクタ70を介して発熱部60と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続され、電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。また、
図9に示す電極部61とは反対側にある電極部61に対しても同様にコネクタ70が接続される。なお、各電極部61は、コネクタ70との接続を確保するため、少なくとも一部が第2絶縁層53に被覆されておらず露出した状態となっている(
図7参照)。
【0058】
ところで、画像形成装置や定着装置のさらなる小型化を図るにあたっては、定着ベルトの内側に配置される部材の一つであるヒータの小型化が重要である。すなわち、ヒータをその短手方向(
図7中の矢印Y方向:ヒータ22の発熱部60A,60Bが設けられている面に沿って長手方向と交差する方向)に小さくすることで、定着ベルトを小径化することができ、ひいては定着装置および画像形成装置の小型化を実現できるようになる。具体的に、ヒータを短手方向に小さくする方法として、例えば次の3つの方法が挙げられる。
【0059】
1つは、発熱部(抵抗発熱体)を短手方向に小さくする方法である。しかしながら、発熱部を短手方向に小さくすると、定着ベルトが加熱される加熱領域の幅が小さくなるため、定着ベルトに与える熱量を同様に確保しようとした場合に、昇温ピーク値が高くなるといった問題が生じる。昇温ピーク値が高くなると、ヒータの裏面に設けられているサーモスタットやヒューズなどの過昇温検知装置の温度が耐熱温度を超えたり、過昇温検知装置が誤作動したりする虞がある。また、昇温ピーク値が高くなると、ヒータから定着ベルトへの伝熱効率も低下するため、エネルギー効率の観点からも好ましくない。このように、発熱部を短手方向に小さくする方法は採用し難い事情がある。
【0060】
2つ目の方法として、発熱部や電極部、給電線が設けられていない部分を短手方向に小さくする方法がある。しかしながら、この方法では、発熱部と給電線との間や電極部と給電線との間の間隔が小さくなるため、絶縁性の確保ができなくなる虞がある。現状のヒータの構造から鑑みれば、発熱部と給電線との間や電極部と給電線との間の間隔をさらに小さくすることは厳しい状況にある。
【0061】
残る3つ目の方法としては、給電線の短手方向の寸法を小さくする方法である。この方法は、上記2つの方法に比べて実現の余地がある。ただし、給電線の短手方向の寸法を小さくすると、給電線の抵抗値が大きくなるため、給電線からの発熱量が相対的に大きくなり、その影響を無視できなくなってしまう。また、後述するヒータの導電経路上で意図しない分流が発生する原因となるおそれがある。特に、画像形成装置の高速化に対応すべく発熱部の発熱量を増大させるために、発熱部の抵抗値を小さくすると、給電線の抵抗値と発熱部の抵抗値が相対的に近づくため、上記の問題が顕著になる。また、給電線の抵抗値の増加を抑える方法として、給電線を短手方向に小さくした分、反対に厚さ方向(長手方向および短手方向に交差する方向)に大きくすることで、断面積を確保することも考えられる。しかしながら、その場合、給電線をスクリーン印刷することが困難になり、給電線の形成方法の変更を強いられることになる。このため、給電線を厚くする解決策は採用し難い。従って、ヒータの短手方向の小型化を実現するには、抵抗値が上昇するのを見越したうえで給電線の短手方向の寸法を小さくし、これに伴って発生する上記の問題に対しては別途対策を講じる必要がある。
【0062】
次に、
図10および
図11に基づき、給電線の接続位置が異なるそれぞれのヒータ22について、給電線による発熱の影響によって生じる長手方向の発熱量のむらについて説明する。具体的には、
図10のヒータ22は、接続位置G1が抵抗発熱体59の中央Cよりも長手方向他方側(図の右側)に配置され、接続位置G2が長手方向一方側(図の左側)に配置される。また、
図11のヒータ22は、接続位置G1,G2がともに中央Cよりも長手方向他方側に配置される。
【0063】
ここでは、各給電線のヒータ22の短手方向に伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることからその発熱量は無視し、各給電線の主要な発熱部分である、各給電線のヒータ22の長手方向Uに伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。具体的には、
図10および
図11の上側に配置された第1の給電線62Aと、
図10および
図11の下側に配置された第2の給電線62Bの、それぞれのヒータ22の長手方向Uに伸びる部分で発生する発熱量を算出している。また、発熱量(W)は下記式(1)で表されることから、
図10および
図11の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、各図の表に示す発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
【0064】
【0065】
発熱量の具体的な算出方法について、
図10における第1ブロックおよび第2ブロックを例に説明すると、
図10中の第1ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が100%、第2の給電線62Bに流れる電流が20%であるので、それぞれの二乗の合計値である10400(10000+400)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、
図10中の第2ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が80%、第2の給電線62Bに流れる電流が40%であるので、これらの二乗の合計値である8000(6400+1600)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
【0066】
そして、各ブロックの合計発熱量を縦軸に表したものが、
図10および
図11中のグラフである。これらのグラフを見てわかるように、各抵抗発熱体59に対する各給電線62A,62Bの接続位置G1,G2が互いに反対側に配置されている場合は(
図10のグラフでは)、各ブロックの合計発熱量が、発熱領域中央の第3ブロックを基準に左右対称となっている。ただし、長手方向の中央側と端部側とではその発熱量に違いがある。これに対して、各抵抗発熱体59に対する各給電線62A,62Bの接続位置G1,G2が互いに同じ側に配置されている場合は(
図11のグラフでは)、各ブロックの合計発熱量が、発熱領域中央の第3ブロックを基準に左右非対称となり、長手方向一方側の発熱量が大きくなっている。また、長手方向中央側と端部側とでもその発熱量に差がある。
【0067】
このように、接続位置が同じ側の場合と異なる側の場合のそれぞれについて、給電線の合計発熱量が、長手方向に不均一になる。従って、給電線の短手方向の寸法を上記のように短くしようとした場合、この給電線の長手方向の発熱量のむらによって、無視できないくらいのヒータ22の発熱量の長手方向のむらが生じてしまう。そして、このヒータ22の長手方向の発熱量のむらにより、定着ベルト20の温度が長手方向に不均一になり、それに起因した不具合、具体的には用紙の画像の光沢むらや定着むらを生じてしまうという課題があった。
【0068】
また本実施形態のように、各抵抗発熱体59を線部の折り返しによって形成する場合、その折り返し回数によって接続位置G1,G2が長手方向のどちら側に配置されるかは異なってくる。つまり、
図10のように偶数回(4回)折り返す場合には接続位置G1,G2は互いに反対側に配置され、
図11のように奇数回(3回)折り返す場合には接続位置G1,G2は同じ側に配置される。ヒータ22の短手方向の長さの設計の自由度を高めるためには、それぞれの折り返し回数を任意で選択できることが好ましく、折り返し回数がいずれの場合についても、定着ベルト20の長手方向の温度むらを解消することが課題になる。
【0069】
そこで、定着ベルト20の温度ばらつき、および、それに起因した不具合を抑制するための本実施形態の対策について、
図2および
図12を用いて説明する。なお、以下の説明では、一例として、
図10で示した給電線G1,G2が互いに反対側に配置されるヒータ22を例示する。しかし、
図11で示した構成のヒータ22にも本発明を適用できることはもちろんである。
【0070】
図12に示すように、本実施形態では、基材50の抵抗発熱体59等を配置した面(基材50の、
図12に表示される面で、
図2の右側の面)と水平な平面上において、各抵抗発熱体59が内側ニップ部Mの範囲WM内に配置されている(
図12の一点鎖線部参照)。また、各抵抗発熱体59に接続される給電線、つまり、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bのうち、長手方向(図の左右方向で、両矢印U参照)に延在する部分62a(以下、長手方向延在部62a)が、内側ニップ部Mの範囲WM外に配置されている。
【0071】
上記のように、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの長手方向延在部62aを範囲WM外に配置することで、言い換えると、定着ベルト20の従動回転時に、定着ベルト20とヒータ22とが摺動する範囲内に給電線62の長手方向延在部62aを配置しないことで、給電線62の長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱(より正確には、
図8の第2絶縁層53を介した伝熱)を防止することができる。従って、ヒータ22の長手方向の発熱量を不均一化する要因となっている、長手方向延在部62aからの直接的な伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度むらに起因する不具合、具体的には、画像の光沢むらや定着むら等の異常画像の形成を抑制することができる。
【0072】
特に本実施形態では、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bのうち、各抵抗発熱体59に接続される部分(抵抗発熱体59に隣接する部分)以外の全ての部分が範囲WM外に配置される。従って、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bからの定着ベルト20への直接的な伝熱を効果的に防止できる。
【0073】
なお
図12では、給電線62の全ての長手方向に延びる部分が範囲WM外に配置される場合を例示したが、給電線62の全ての長手方向に延びる部分のうち、少なくとも、ヒータ22の短手方向において、抵抗発熱体59が配置される範囲Vよりも外側に配置された長手方向に延びる部分を、範囲WM外に配置してもよい(後述の範囲WNについても同じである)。
【0074】
また、本実施形態の加圧ローラ21は、用紙Pが定着ニップNを通過する際のシワの発生を抑制するために、長手方向端部側の外径が中央側に比べて大きい、つづみ形状をなしている。従って、
図13に示すように、実際の内側ニップMの範囲WMおよび定着ニップNの範囲WNは、同様につづみ形状をなしている。しかし、便宜上、以降の図では
図12と同じ矩形状で表示している。ただし、本発明は矩形状の範囲WMや範囲WNであってもよいことはもちろんである。
【0075】
次に、上記と異なる実施形態について順に説明する。
【0076】
図14および
図15に示すように、本実施形態では、基材50の抵抗発熱体59等を配置した面と水平な平面上において、各抵抗発熱体59が定着ニップNの範囲WN内に配置されている。また、各抵抗発熱体59に接続される給電線、つまり、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの長手方向延在部62aが、定着ニップNの範囲WN外に配置されている。
【0077】
上記のように、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの長手方向延在部62aを範囲WN内に配置しないことで、言い換えると、定着ベルト20の従動回転時に、定着ベルト20と加圧ローラ21とが摺動する範囲内に給電線62の長手方向延在部62aを配置しないことで、給電線62の長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を防止することができる。従って、ヒータ22の長手方向の発熱量を不均一化する要因となっている、長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度むらに起因する不具合、具体的には、画像の光沢むらや定着むら等の異常画像の形成を抑制することができる。
【0078】
また、範囲WMや範囲WNの大きさは、定着ベルト20の剛性によっても変化する。例えば、
図14のように剛性の低い材料で形成された定着ベルト20の場合、加圧ローラ21による加圧力によって定着ベルト20は大きく変形する。一方、SUSやNiのような高い剛性の材料によって形成された定着ベルト20の場合、
図16に示すように、加圧ローラ21により加圧された部分は大きく変形するが、その他の部分の変形量が小さい。従って、内面ニップ部Mの範囲WMが定着ニップNの範囲WNと比較して小さくなりやすい。
図16の実施形態でも、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの長手方向延在部62aを範囲WN外に配置することで、上記の効果を得ることができる。このように、定着ベルト20の剛性、また加圧ローラ21による加圧力などに応じて範囲WMや範囲WNは変化するため、これらを考慮してヒータ22を上記配置にすることで、給電線62の長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を抑制でき、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。
【0079】
本実施形態では、
図17および
図18に示すように、ヒータホルダ23の短手方向両端部に、長手方向にわたって凸部23cが設けられる。言い換えると、ヒータ22よりも、定着ベルト20の回転方向上流側および下流側に凸部23cが設けられる。凸部23cは、ヒータ22の第2絶縁層53の定着ベルト20の内周面に対向する面や、ヒータホルダ23の長手方向端部側の部分よりも、定着ベルト20の内周面側へ突出して設けられた部分である。定着ベルト20の内周面側、とは、加圧ローラ21側で
図18の右側である。凸部23cは、長手方向において、ヒータ22の発熱部60に対応する位置に設けられる。特に本実施形態では、発熱部60の長手方向の全範囲にわたって凸部23cが設けられる。
【0080】
ヒータ22の定着ベルト20回転方向上流側および下流側で、凸部23cが定着ベルト20の内周面に当接することで、ヒータ22の短手方向両端側で、ヒータ22の表面と定着ベルト20との間に隙間Dを形成することができる。言い換えると、凸部23cを設けることにより、ヒータ22の短手方向両端側を定着ベルト20と非接触にすることができ、範囲WMをより狭くすることができる。従って、本実施形態のように、発熱部60よりもヒータ22の短手方向両端部側に第1の給電線62Aあるいは第2の給電線62Bを配置する構成の場合、第1の給電線62Aあるいは第2の給電線62Bの長手方向延在部62aを範囲WMの範囲外に配置することができる。従って、長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度むらに起因する不具合、具体的には、画像の光沢むらや定着むら等の異常画像の形成を抑制することができる。
【0081】
なお本実施形態では、一例として、内側ニップ部Mの範囲WM外であって、定着ニップNの範囲WN内に第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの長手方向延在部62aが配置される場合を示したが、
図19に示すように、凸部23cを設けたヒータホルダ23を適用し、範囲WN外に第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの長手方向延在部62aを配置することもできる。この場合でも、給電線62の長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。さらに、内側ニップ部Mおよび定着ニップNの範囲内に長手方向延在部62aを配置した構成において、上記の凸部23cを設けてもよい。これにより、ヒータ22の短手方向両端側を定着ベルト20と非接触にすることができ、長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を抑制できる。従って、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。
【0082】
次に、本実施形態では、
図20および
図21に示すように、ヒータホルダ23に断熱部材36が取り付けられる。断熱部材36の材料は、例えば、PPS、LCPやPEEKなどの耐熱樹脂であり、断熱性能を高めるために低熱容量の中空フィラー材としている。
【0083】
断熱部材36は、ヒータホルダ23の用紙搬送方向上流側および下流側にそれぞれ取り付けられる。断熱部材36は、ヒータホルダ23の長手方向に延在し、長手方向の発熱部60に対応する位置に設けられる。特に本実施形態では、発熱部60の長手方向の全範囲にわたって断熱部材36が設けられる。
【0084】
図21に示すように、断熱部材36は、ヒータ22と定着ベルト20の内周面との間に挟み込まれる。別の言い方をすると、加圧ローラ21と定着ベルト20との圧接状態で、ヒータ22の第1の給電線62Aあるいは第2の給電線62Bの長手方向延在部62aに対応する位置と定着ベルト20との間に断熱部材36が配置される。なお、ヒータ22の第1の給電線62Aあるいは第2の給電線62Bに対応する位置とは、基材50の抵抗発熱体59等が配置される平面上において、第1の給電線62Aあるいは第2の給電線62Bの長手方向延在部62aが設けられた位置のことである。
【0085】
本実施形態では、上記のように、断熱部材36を第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの長手方向延在部62aと定着ベルト20との間に配置することで、長手方向延在部62aから定着ベルト20への伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度むらに起因する不具合、具体的には、画像の光沢むらや定着むら等の異常画像の形成を抑制することができる。
【0086】
図22は、
図20のヒータホルダ23から断熱部材36を取り外した状態の斜視図である。
図22に示すように、ヒータホルダ23は、その長手方向の複数箇所に、断熱部材36を取り付けるための取付孔23dを有する。
【0087】
図23(a)および
図23(b)に示すように、断熱部材36の裏面には、複数の取付用のボス36aが設けられる。ボス36aは円筒状をなしている。
【0088】
ボス36aを取付孔23dに挿入して嵌合させることで、断熱部材36をヒータホルダ23に取り付けることができる。
【0089】
なお本実施形態では、一例として、内側ニップ部Mの範囲WM外であって、定着ニップNの範囲WN内に第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bが配置される場合を示したが、
図24に示すように、範囲WNの領域外に第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bが配置される場合に、本実施形態のヒータホルダ23および断熱部材36を適用することもできる。これにより、長手方向延在部62aから定着ベルト20への伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。
【0090】
また、断熱部材36をヒータホルダ23に一体の部材として設けることもできる。つまり、前述の実施形態のように、断熱部材36がヒータホルダ23に取付される構成ではなく、ヒータホルダ23の一部として断熱部材36が設けられてもよい。
【0091】
さらに、以上の実施形態では、断熱部材36を長手方向にわたって連続して設ける部材としたが、長手方向に断続的に設けてもよい。
例えば、
図25に示すように、ヒータ22を覆う部分が断続的に設けられた、いわゆる櫛歯状の断熱部材36とすることができる。これにより、断熱部材36の定着ベルト20に摺動する面積を減らし、定着ベルト20の摺動負荷を減らすことができる。本実施形態では、用紙搬送方向の上流側と下流側に設けられる断熱部材36の櫛歯部分が長手方向の同じ位置に設けられている。
【0092】
また、用紙搬送方向の上流側と下流側に設けられる断熱部材36の櫛歯部分をそれぞれ長手方向の異なる位置に配置してもよい。例えば
図26に示すように、上流側と下流側で櫛歯部分を互い違いに配置することができる。このように、用紙搬送方向の上流側と下流側に設けられる断熱部材36の櫛歯部分をそれぞれ長手方向の異なる位置に配置することで、長手方向で定着ベルト20と断熱部材36との間で摺動負荷が発生する位置を分散することができる。従って、定着ベルト20の摺動負荷を長手方向により均一化することができる。
【0093】
次に、本発明を適用可能な異なる実施形態のヒータ22、具体的には導体層52におけるレイアウトの異なるヒータ22について説明する。
【0094】
図27に示すように、本実施形態では、基材50の長手方向に並ぶ複数の抵抗発熱体59のうち、両端以外の各抵抗発熱体59で構成される第1の発熱部(第1の抵抗発熱体群)60Aと、両端の各抵抗発熱体59で構成される第2の発熱部(第2の抵抗発熱体群)60Bとは、それぞれ独立して発熱制御可能に構成されている。具体的に、第1の発熱部60Aを構成する両端以外の各抵抗発熱体59は、それぞれ基材50の長手方向の一端部側に設けられた第1の電極部61Aに対して第1の給電線62Aを介して接続されている。また、第1の発熱部60Aを構成する各抵抗発熱体59は、第1の電極部61A側とは反対の端部側に設けられた第2の電極部61Bに対して第2の給電線62Bを介して接続されている。一方、第2の発熱部60Bを構成する両端の各抵抗発熱体59は、基材50の長手方向の一端部側に設けられた(第1の電極部61Aとは別の)第3の電極部61Cに対して第3の給電線62C又は第4の給電線62Dを介して接続されている。また、これら両端の各抵抗発熱体59は、第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59と同様に第2の給電線62を介して第2の電極部61Bに接続されている。
【0095】
また、それぞれの電極部61A~61Cは、前述のコネクタ70を介して電源64に接続され、電源64から電力を供給される。電極部61Aは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Aが設けられており、スイッチ65AのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。同様に、電極部61Cは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Cが設けられており、スイッチ65CのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。
【0096】
第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bに電圧を印加した場合は、両端以外の各抵抗発熱体59が通電することで、第1の発熱部60Aのみが発熱する。一方、第2の電極部61Bおよび第3の電極部61Cに電圧を印加した場合は、両端の各抵抗発熱体59が通電することで、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加すれば、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bの両方の(全ての)抵抗発熱体59を発熱させることができる。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aのみを発熱させ、A4サイズ(通紙幅:210mm)を超える比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aに加え第2の発熱部60Bも発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることができる。
【0097】
図28に示すヒータ22において、第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59のみを発熱させるために第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとに電圧を印加すると、通常、電流は第1の給電線62Aに流れ、両端以外の各抵抗発熱体59を通過して、第2の給電線62Bに流れる。なお、
図28~
図33では、便宜上、各抵抗発熱体59をヒータ22に対して小さく表示している。
【0098】
しかしながら、上述の小型化に伴う給電線の抵抗値の増大や、発熱量向上に伴う発熱部の抵抗値の低下によって、給電線と発熱部のそれぞれの抵抗値の差が小さくなると、
図29に示すように、意図しない経路の分流が発生する。すなわち、
図29における左から2番目の抵抗発熱体59を通過した電流の一部が、その先の第2の給電線62Aの分岐部Xにて第2の電極部61B側とは反対側に流れる。そして、分流した電流は、
図29における左端の抵抗発熱体59を通過し、さらに、第3の給電線62C、第3の電極部61C、第4の給電線62D、右端の抵抗発熱体59を順に通過した後、第2の給電線62Bに合流する。
【0099】
このように、
図29に示すヒータ22において、第2の給電線62Bのうち分岐部Xから図の左側に伸びる部分と、第2の発熱部60Bを構成する両端の各抵抗発熱体59と、第3の電極部61Cと、第3の給電線62Cおよび第4の給電線62Dを含む部分は、意図しない経路で電流を流す分岐導電経路E3を構成する。
【0100】
また、このような意図しない分流は、ヒータ22の導電経路が、第1の発熱部60Aと第1の電極部61Aとを接続する第1の導電部E1と、第1の発熱部60Aからヒータ22の長手方向のうち第1の方向S1(
図29の右側)に伸びて第2の電極部61Bに接続される第2の導電部E2と、第2の導電部E2から第1の方向S1とは反対の第2の方向S2(
図29の左側)に分岐して第1の導電部E1を介さずに第2の導電部E2又は第2の電極部61Bに接続される分岐導電経路E3と、を少なくとも有する構成であれば、第1の発熱部60Aに通電した際に生じ得る。本実施形態では、分岐導電経路E3上に、第2の発熱部60Bと第3の電極部61Cとが設けられているが、第2の発熱部60Bおよび第3の電極部61Cが設けられていない導電経路や、これら以外の導電部材が設けられた導電経路であっても、意図しない分流は生じる可能性がある。
【0101】
そして、意図しない分流が生じた場合、これまで想定されていなかった経路で電流が流れるため、給電線の発熱によりヒータ22の温度分布にばらつきが発生する。例えば、
図30に示すヒータ22において、第1の電極部61Aから第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59へ電流が20%ずつ均等に流れ、このうち図の左から2番目の抵抗発熱体59を通過する電流が、その先の分岐部Xにおいて5%分流した場合、抵抗発熱体59ごとに区画された各ブロック内で発生する給電線の発熱量は、同図中の表に示すようになる。
【0102】
前述した発熱量の計算方法により算出した各ブロックの合計発熱量が
図30の表およびグラフである。各ブロックの合計発熱量は、上記の意図しない分流の影響により、発熱領域中央の第4ブロックを基準に左右非対称となる。また、長手方向の端部側と中央側とで、その発熱量に差が生じている。ただし、
図30の場合、第1ブロックと第7ブロックは用紙が通過しない非通紙領域である。
【0103】
また本実施形態のヒータ22では、全ての発熱部に通電した場合、つまり、上記のような分流が生じない場合にも、導電部に流れる電流の大きさに長手方向の左右で差が生じ、ヒータ22の長手方向の発熱量が左右非対称になってしまう。具体的には、
図31に示すように、全ての発熱部に通電した場合、左右両端の抵抗発熱体59、および、これに接続された給電線62C,62Dにも20%の電流が流れる点が前述の場合と異なる。給電線62Aに流れる電流の値は先ほどと同様である。以上の場合、第1ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が100%、第2の給電線62Bに流れる電流が20%、第4の給電線62Dに流れる電流が20%である。
【0104】
各ブロックの発熱量の値が、
図31の下側の表およびグラフである。これらに示すように、各ブロックの合計発熱量は、発熱領域中央の第4ブロックを基準に左右非対称となる。特に、全ての抵抗発熱体59に接続された第2の給電線62Bが、その下流側、つまり第7ブロックで電流値が140%と大きくなり、左右の発熱量に差が生じている。また、長手方向の端部側と中央側とで、その発熱量に差が生じている。
【0105】
また上記のヒータ22では、接続位置G1,G2が互いに反対側にある場合を示したが、接続位置G1,G2が同じ側にある場合でもよい。例えば
図32に示すように、接続位置G1,G2が同じ側にある場合に、第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59のみを発熱させると意図しない分流が生じ、各ブロックにおける給電線の合計発熱量に差が生じる。また、
図33に示すように、全ての抵抗発熱体に通電した場合にも各ブロックにおける給電線の合計発熱量に差が生じる。
【0106】
これらのヒータ22においても、上記の各対策を実施することで定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。具体的には、
図34に示すように、内側ニップ部Mの範囲WMあるいは定着ニップNの範囲WNを、図の範囲Fのように設ける。つまり、第1の給電線62A、第2の給電線62Bおよび第3の給電線62Cの長手方向延在部62aを範囲F外に設ける。これにより、給電線62の長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を防止することができる。従って、長手方向延在部62aからの直接的な伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。つまり、
図31、
図33の分流が生じる場合、および、
図32、
図34の全ての発熱部に通電した場合について、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度むらに起因する不具合、具体的には、画像の光沢むらや定着むら等の異常画像の形成を抑制することができる。
【0107】
以上の実施形態では、各抵抗発熱体59を構成する線部が平行四辺形状をなす、つまり、短手方向に対して傾斜した方向へ延びる線部を有する抵抗発熱体59の場合を示した。しかし、本発明はこれに限らない。例えば
図35に示すように、各抵抗発熱体59が短手方向と平行な方向へ延在する線部を有し、矩形状をなす構成であってもよい。ただし、この場合、長手方向において抵抗発熱体59が配置されていない部分、具体的には抵抗発熱体59同士の間の範囲Lの部分が存在し、この部分でヒータ22の発熱量が小さくなったり、基材50上に無駄なスペースが生じたりしてしまう。従って、定着ベルト20の温度を長手方向に均一化するためやヒータ22の小型化のためには、
図34等で示した平行四辺形状の方がより好ましい。
【0108】
また、
図36に示すように、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bのうち、長手方向と交差する方向に延在する部分を斜め方向へ傾斜させたヒータ22であってもよい。さらに
図37に示すように、平行四辺形状の各抵抗発熱体59に対して、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bが傾斜した線部を接続させてもよい。また、
図38に示すように、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの長手方向と交差する方向に延在する部分を抵抗発熱体59の一部としてもよい。つまり、この部分を、その他の抵抗発熱体59と同じ材料で形成し、給電線62よりも抵抗値が高い部分としてもよい。
【0109】
また、
図39に示すヒータ22は、前述の実施形態と異なり、全ての電極部が長手方向の一方側に設けられる。つまり、
図34等のヒータ22と比較すると、第2の電極部61Bが長手方向一方側に設けられる点が異なる。また、
図39に示すように、第2の電極部61Bが長手方向一方側に設けられるため、第2の電極部61Bに直に接続される給電線が長手方向他方側まで延在して折り返し、各抵抗発熱体59に接続されている。本実施形態では、これらの第2の電極部61Bと各抵抗発熱体59を接続する給電線のうち、各抵抗発熱体59に接続される部分から長手方向他方側の折り返し部分までを第2の給電線62Bと称し、折り返し部分に連続した長手方向一方側へ延在する部分から第2の電極部61Bまでの部分を第5の給電線(導電体)62Eと称する。
【0110】
このようなヒータ22においても、第1の発熱部60Aのみに通電した場合、そして、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合のそれぞれについて、前述したような長手方向の温度偏差が生じる。
【0111】
さらに、以上で説明したヒータ22の構成を組み合わせてもよい。例えば、
図30や
図32に示すヒータ22の各抵抗発熱体59を構成する線部を、
図35のように長方形状としたり、
図36のように各給電線の長手方向と交差する方向に延在する部分をヒータ22の短手方向に対して傾斜させたり、
図38のように、この部分を抵抗発熱体59の一部とする等、適宜これらの構成を組み合わせることができる。
【0112】
以上の各ヒータ22において、内側ニップ部Mの範囲WMあるいは定着ニップNの範囲WNを、各図の範囲Fのように設ける。つまり、各給電線62の長手方向延在部62aを範囲F外に設ける。これにより、給電線62の長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を防止することができる。従って、長手方向延在部62aからの直接的な伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度むらに起因する不具合、具体的には、画像の光沢むらや定着むら等の異常画像の形成を抑制することができる。
【0113】
また本発明は、小型化のために特に短手方向寸法を小さくしたヒータに適用されることでより大きな効果を期待できる。つまり、前述のようにヒータ22の短手方向寸法を小さくしようとした場合、給電線の短手方向の寸法が小さくする必要があり、給電線からの発熱量が相対的に大きくなってその影響も大きくなるためである。具体的には、
図40において、ヒータ22(基材50)の短手方向寸法をH、抵抗発熱体59の短手方向寸法をJとすると、ヒータ22の短手方向寸法Hに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Jの比(J/H)が25%以上となるヒータ22に対して本発明を適用した場合、大きな効果を期待できる。なお、抵抗発熱体59の短手方向寸法Jは、折り返されるように形成された抵抗発熱体59の1つの線状の部分の太さではなく、抵抗発熱体59全体の短手方向寸法を意味する。さらに、前記短手方向の寸法比(J/H)が40%以上となるヒータ22であれば、本発明を適用することによる効果はより大きくなる。
【0114】
次に、上記の短手方向寸法の比(J/H)を変化させた場合の、ヒータ22の長手方向中央側と端部側との間に生じる温度偏差の実験結果について説明する。実験では、前述した構成のヒータ22について、上記の短手方向寸法比(J/H)が、20%以上25%未満、25%以上40%未満、40%以上70%未満、70%以上80%未満のものをそれぞれ用意し、ヒータ単体の条件下でヒータの全ての抵抗発熱体に所定の電圧で通電し、ヒータの長手方向中央および端部のそれぞれの表面温度をフリアシステムズ社製の赤外線サーモグラフィ FLIR T620を用いて測定した。以上の実験結果を表1に示す。表1の結果は、中央側と端部側の温度差が2℃未満のものを○、2℃以上5℃未満のものを△、5℃以上のものを×とした。なお、短手方向寸法の比(J/H)を80%以上とすると、ヒータの短手方向寸法を極端に大きくする等しない限り、給電線を配置するスペースがなくなるため、実験の対象にはしていない。
【0115】
【0116】
表1に示すように、短手方向寸法の比(J/H)が大きくなるほど、ヒータの中央と端部の温度差も大きくなった。具体的には、20%以上25%未満では〇であるのに対して、25%以上40%未満では△に変化し、40%以上70%未満、および、70%以上80%未満では×に変化した。この結果からわかるように、ヒータの長手方向の温度むらは、短手方向寸法の比(J/H)が25%以上で顕著になり、40%以上で特に顕著になる。従って、このような寸法比のヒータに対して、本実施形態の上記構成を適用してその温度偏差を抑制することが好適である。
【0117】
図40に示す例では、ヒータ22の基材50が長方形であるため、ヒータ22の短手方向寸法Hはどの長手方向位置でも同じ寸法であるが、
図40に示す例のように、基材50の縁に凹凸がある場合は、長手方向位置によって短手方向寸法Qが変化する。このような場合は、全ての抵抗発熱体59が配置されている発熱領域内で、ヒータ22が短手方向Yに最小となる寸法を、上記ヒータ22の短手方向寸法Hとする。
【0118】
また、本発明は、ヒータ22の長手方向寸法Laに対するヒータ22の短手方向寸法Hの比(H/La)が、1.5%より大きく、6%未満となるヒータ22や、ヒータ22の短手方向寸法Hに対する給電線62A,62Bの短手方向寸法Wbの比(Wb/H)が、2%より大きく、20%未満となるヒータ22に対しても、適用可能である。なお、
図41に示す例のように、基材50の長手方向寸法がその部分によって異なる場合は、ヒータ22が長手方向Uに最大となる寸法を、上記ヒータ22の長手方向寸法Laとする。また、給電線62A,62Bの短手方向寸法Wbは、給電線62A,62Bがヒータ22の長手方向Uに伸びる線状部分の太さを意味し、抵抗発熱体59に接続するためにヒータ22の短手方向Yに折れ曲がった部分を含まない。また、
図41に示すように、給電線62A,62Bの太さがヒータ22の長手方向位置によって変化する場合は、発熱領域Q内での第1の給電線62Aまたは第2の給電線62Bの最小の短手方向寸法を、給電線62A,62Bの短手方向寸法Wbとする。
【0119】
また、本発明に係る実施形態において、ヒータの長手方向に渡る温度のばらつきをより一層抑制するために、PTC特性を有する抵抗発熱体を用いてもよい。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/度程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/度とするのがよい。
【0120】
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(2)を用いて算出することができる。式(2)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、
図7に示す上述のヒータ22において、第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であった場合は、式(2)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
【0121】
【0122】
また、ヒータ22の基材50上に配置される電極部等のレイアウトについても、上記の実施形態に限らず、給電線の発熱量が長手方向に不均一になるヒータに対して本発明を適用することができる。
【0123】
また、本発明は、前述の定着装置のほか、
図42、
図43に示すような定着装置にも適用可能である。以下、
図42、
図43に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0124】
まず、
図42に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、対向部材としての押圧ローラ90が配置されており、この押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。押圧ローラ90と定着ベルト20との間に外側ニップ部としての加熱ニップN1が形成されている。また、定着ベルト20とヒータ22との間に内側ニップ部Mが形成される。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んで定着ニップN2を形成される。本実施形態では、定着ベルト20の外周面が形成するニップ部のうち、定着ベルト20がヒータ22に対向する側で形成するニップ部は加熱ニップN1である。ここで、外側ニップ部とは、回転部材(押圧ローラ90)と対向部材(加圧ローラ21)との接触領域のことであり、内側ニップ部とは、回転部材(定着ベルト20)と加熱部材(ヒータ22)との接触領域のことである。
【0125】
図42に示す定着装置9においても、各給電線62の長手方向延在部62aを内側ニップ部Mの範囲WM外に設けることで(あるいは、加熱ニップN1の範囲WN1外に設けることで)、給電線62の長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を防止することができる。従って、長手方向延在部62aからの直接的な伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度むらに起因する不具合、具体的には、画像の光沢むらや定着むら等の異常画像の形成を抑制することができる。
【0126】
次に、
図43に示す定着装置9が、加熱アセンブリ92、対向部材あるいは定着部材としての定着ローラ93、加圧アセンブリ94からなる。加熱アセンブリ92は、先の実施形態で説明したヒータ22および加熱ユニット19、回転部材としての加熱ベルト120を有する。また、定着ローラ93は、中実の鉄製芯金93aと、この芯金93aの表面に形成された弾性層93bと、弾性層93bの外側に形成された離型層93cとで構成されている。また、定着ローラ93に対して加熱アセンブリ92側とは反対側に、加圧アセンブリ94が設けられている。加圧アセンブリ94は、ニップ形成部材95とステー96とを配置し、これらニップ形成部材95とステー96を内包するように加圧ベルト97を回転可能に配置している。
【0127】
定着装置9は、加熱ベルト120と定着ローラ93との間に外側ニップ部としての加熱ニップN1を範囲WN1で形成し、加熱ベルト120とヒータ22との間に内側にニップ部Mを範囲WMで形成する。また定着装置9は、加圧ベルト97と定着ローラ93との間に定着ニップN2を形成する。定着装置9は、定着ニップN2に用紙Pを通紙し、用紙Pを加熱および加圧して画像を定着する。本実施形態では、加熱ニップN1および定着ニップN2のうち、ヒータ22に対向する領域で形成されるニップ部は加熱ニップN1である。ここで、外側ニップ部とは、回転部材(加熱ベルト120)と対向部材(定着ローラ93)との接触領域のことであり、内側ニップ部とは、回転部材(加熱ベルト120)と加熱部材(ヒータ22)との接触領域のことである。
【0128】
図43の定着装置9においても、各給電線62の長手方向延在部62aを内側ニップ部Mの範囲WM外に設けることで(あるいは、加熱ニップN1の範囲WN1外に設けることで)、給電線62の長手方向延在部62aから定着ベルト20への直接的な伝熱を防止することができる。従って、長手方向延在部62aからの直接的な伝熱を抑制できるため、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度むらに起因する不具合、具体的には、画像の光沢むらや定着むら等の異常画像の形成を抑制することができる。
【0129】
また、本発明は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置のような加熱装置にも適用可能である。このような装置にも本発明を適用することで、回転部材の長手方向の温度むらを抑制し、これに起因する不具合を抑制することができる。
【0130】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0131】
なお、以上で説明した給電線の長手方向延在部は、厳密に長手方向に平行な方向に延在する場合に限らず、多少の傾斜があってもよいことはもちろんである。
【0132】
以上の実施形態では、導電体の長手方向延在部は電極部と抵抗発熱体とをつなぐ部分の一部であったが、抵抗発熱体同士をつなぐ部分を内側ニップあるいは外側ニップの範囲外に設けてもよい。つまり、例えば
図7等で、抵抗発熱体59の長手方向に延在する線部の一部が、抵抗発熱体59よりも抵抗値の低い材料で構成された導電部とした構成において、この線部を内側ニップや外側ニップの範囲外に配置してもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 画像形成装置
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ベルト(被加熱部材あるいは回転部材あるいは定着部材)
21 加圧ローラ(対向部材あるいは加圧部材)
22 ヒータ(加熱部材)
23 ヒータホルダ(保持部材)
23c 凸部
36 断熱部材
50 基材
59 抵抗発熱体
60 発熱部
61 電極部
62 給電線(導電体)
62a 長手方向延在部
A 通紙方向
B 長手方向
G1、G2 接続位置
H ヒータの短手方向寸法
J 抵抗発熱体の短手方向寸法
K1 定着ベルトの回転方向
N 定着ニップ(外側ニップ部)
M 内側ニップ部
P 用紙(記録媒体あるいは被加熱物)
U ヒータの長手方向
V ヒータの短手方向の抵抗発熱体が配置される範囲
WN 定着ニップの範囲
WM 内側ニップ部の範囲
Y ヒータの短手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】