(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】二軸延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240611BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20240611BHJP
C08G 63/189 20060101ALI20240611BHJP
C08G 63/199 20060101ALI20240611BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240611BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C55/12
C08G63/189
C08G63/199
G09F9/00 313
B29K67:00
(21)【出願番号】P 2020061105
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】小井土 俊介
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-155420(JP,A)
【文献】特開2010-082908(JP,A)
【文献】特開平11-170720(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059813(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
C08G 63/00-64/42
B29C 55/00-55/30、61/00-61/10
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)を50質量%以上含む二軸延伸フィルムであって、前記ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)がジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を90モル%以上含
み、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を前記ジオール成分(a-2)中に10モル%以上90モル%以下含有する、二軸延伸フィルム。
【請求項2】
ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)を50質量%以上含む二軸延伸フィルムであって、
前記ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)が、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を前記ジオール成分(a-2)中に10モル%以上90モル%以下含有し、MD及びTDそれぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際のヒステリシスロス率の平均値が50.0%以下である二軸延伸フィルム。
【請求項3】
前記ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)が、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を含み、ジオール成分(a-2)とし
て1,4-ブタンジオール単
位を含む、請求項1又は2に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項4】
前記ジオール成分(a-2)中に
、1,4-ブタンジオール単位を10モル%以上90モル%以下含有する請求項3に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項5】
MD及びTDそれぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際の残留ひずみの平均値が1.00%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項6】
ガラス転移温度が75℃以上150℃以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項7】
結晶融解温度が220℃以上300℃以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項8】
厚みが1μm以上250μm以下である請求項1~7のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項9】
ディスプレイ用である請求項1~8のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルムを備えたフォルダブルディスプレイ。
【請求項11】
ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)を50質量%以上含む二軸延伸フィルムであって、前記ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)が、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を含み、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位と1,4-ブタンジオール単位とを含
み、前記1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を前記ジオール成分(a-2)中に10モル%以上90モル%以下含む、フレキシブルディスプレイ用二軸延伸フィルム。
【請求項12】
MD及びTDそれぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際のヒステリシスロス率の平均値が50.0%以下である請求項11に記載のフレキシブルディスプレイ用二軸延伸フィルム。
【請求項13】
前記ジオール成分(a-2)中に、1,4-ブタンジオール単位を10モル%以上90モル%以下含有する請求項11又は12に記載のフレキシブルディスプレイ用二軸延伸フィルム。
【請求項14】
MD及びTDそれぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際の残留ひずみの平均値が1.00%以下である請求項11~13のいずれか1項に記載のフレキシブルディスプレイ用二軸延伸フィルム。
【請求項15】
ガラス転移温度が75℃以上150℃以下である請求項11~14のいずれか1項に記載のフレキシブルディスプレイ用二軸延伸フィルム。
【請求項16】
結晶融解温度が220℃以上300℃以下である請求項11~15のいずれか1項に記載のフレキシブルディスプレイ用二軸延伸フィルム。
【請求項17】
厚みが1μm以上250μm以下である請求項11~16のいずれか1項に記載のフレキシブルディスプレイ用二軸延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性、耐折性に優れた二軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、耐熱性、耐候性、機械的強度、透明性、耐薬品性、ガスバリア性などの性質に優れており、かつ価格的にも入手し易い事から、汎用性が高く、現在、飲料・食品用容器や包装材、成形品、フィルムなどに広く利用されている樹脂である。ポリエステル樹脂の主なものはポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と記載することがある)であり、機械特性、電気特性、耐薬品性などに優れていて幅広い用途があるが、耐熱性、耐折性などに難点がある。
【0003】
また、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を用いたものとして、ナフタレンジカルボン酸と1,4-ブタンジオールを重合させたポリブチレンナフタレート(以下「PBN」と記載することがある)が知られているが、ガラス転移温度が75℃程度、融点が240℃程度と低いため、耐熱性に問題がある。また、結晶化速度が速すぎるため押出成形によるフィルム製膜に不向きな点がある。
【0004】
一方、近年、フレキシブルなディスプレイに対するニーズが高まってきている中で、耐熱性が高く、復元性に優れ、繰り返しの折り曲げ耐性に優れるフィルムが強く求められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、環状オレフィン樹脂フィルムによる、繰り返しの折り曲げ耐性のフィルムが検討されている。
【0006】
また、特許文献2には、耐熱性や耐屈曲性の優れたフィルムとして、ポリイミドフィルムが提案されている。
【0007】
また、特許文献3には結晶化速度を向上させ、射出成型性に適したポリエステル共重合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-104687号公報
【文献】国際公開第2016/060213号
【文献】特開平5-209044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されているフィルムは、繰り返しの折り曲げ耐性のレベルとしては低く、市場の要求を満たすものではなかった。また、環状オレフィン系樹脂は塗工性、接着性に乏しいため、フレキシブルディスプレイ用部材として他部材との積層が困難であると考えられる。
【0010】
また、特許文献2に記載のポリイミドフィルムは耐屈曲性を有するものの、その製造プロセスにおいて、溶剤を使用した塗布による成形方法であるため、生産性が悪く、コストもかかる。
【0011】
特許文献3に記載のポリエステル共重合体(グリコール成分が1,4-ブタンジオールと1,4-シクロヘキサンジメタノールの2成分、酸成分が2,6-ナフタレンジカルボン酸)は結晶化速度を向上させ、射出成型性に適した内容が示されているが、結晶化速度が速すぎると押出成形によるフィルムの製膜性、延伸性が悪くなるため、延伸フィルムに適さない。
【0012】
本発明で解決しようとする課題は、上記の問題点を解決し、耐折性、耐熱性、加工性に優れた二軸延伸フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。本発明は、その一態様において以下の[1]~[10]を要旨とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)を主成分とする二軸延伸フィルム。
[2]MD及びTDそれぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際のヒステリシスロス率の平均値が50.0%以下である上記[1]に記載の二軸延伸フィルム。
[3]前記ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)が、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を含み、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位と1,4-ブタンジオール単位とを含む、上記[1]又は[2]に記載の二軸延伸フィルム。
[4]前記ジオール成分(a-2)中に、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を10モル%以上90モル%以下含有し、1,4-ブタンジオール単位を10モル%以上90モル%以下含有する上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[5]MD及びTDそれぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際の残留ひずみの平均値が1.00%以下である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[6]ガラス転移温度が75℃以上150℃以下である上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[7]結晶融解温度が220℃以上300℃以下である上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[8]厚みが1μm以上250μm以下である上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[9]ディスプレイ用である上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[10]上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルムを備えたフォルダブルディスプレイ。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案する二軸延伸フィルムは、耐折性、耐熱性、加工性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明の内容は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<二軸延伸フィルム>
本発明の実施形態の一例に係る二軸延伸フィルム(以下、「本フィルム」と称することがある)は、ポリブチレンナフタレート(以下「PBN」と記載することがある)系共重合体(A)を主成分とする。
本発明では、従来、結晶化速度が速すぎて二軸延伸フィルムに不適であったPBN系樹脂を用いて、二軸延伸フィルムを得たものである。本フィルムは、二軸延伸フィルムであるため、薄膜であり、かつ、耐折性に優れる。
【0018】
1.物性
まず、本フィルムの物性について説明する。
【0019】
(1)ヒステリシスロス率
本フィルムの23℃におけるMD及びTDそれぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際のヒステリシスロス率の平均値が50.0%以下であることが好ましく、より好ましくは47.0%以下、更に好ましくは45.0%以下、より更に好ましくは40.0%以下、特に好ましくは38.0%以下である。下限は特に限定されるものではないが、0.100%以上である。
ヒステリシスロス率が50.0%以下であることでフィルムの折り曲げ耐性が実用範囲内に保たれる。また、ヒステリシスロス率をMDとTDそれぞれの方向の平均値とすることで、フィルム全体としての特性指標とすることができる。ヒステリシスロス率は延伸条件などによって調整することが出来る。
本フィルムのヒステリシスロス率はJIS K 7312:1996に準じて、実施例に記載の方法により測定することができる。
より具体的には、引張サイクル試験によって、
図1に示すような応力-ひずみ曲線のグラフが得られた場合に、abcefで囲まれた面積の、全体(abcda)の面積に対する比率がヒステリシスロス率と定義される。
なお、MDはフィルムの流れ方向を意味し、TDはMDに対して垂直の方向を意味する。
【0020】
また、本フィルムの23℃におけるMD又はTD方向のヒステリシスロス率は、それぞれ50.0%以下であることが好ましく、より好ましくは47.0%以下、更に好ましくは45.0%以下、より更に好ましくは40.0%以下、特に好ましくは38.0%以下である。MD及びTDのうち一方のヒステリシスロス率が上記数値範囲内であることが好ましく、MD及びTDの両方のヒステリシスロス率が上記数値範囲内であることがより好ましい。
【0021】
さらに、本フィルムの23℃におけるMD及びTD方向のヒステリシスロス率の差は20.0%以下であることが好ましく、より好ましくは15.0%以下であり、更に好ましくは10.0%以下であり、より更に好ましくは5.0%以下である。
MD及びTD方向のヒステリシスロス率の差が上記数値範囲内であることにより、フィルムの折り曲げ耐性、ひいては各種フィルム特性の異方性が小さくなるため、フィルムを部材として使用する際や、二次加工時に特定の方向を選択する必要がなく、また異方性による特定方向のみの不具合が起こりにくいため、ハンドリング性にも優れるフィルムとなる。
【0022】
(2)残留ひずみ
フィルムの23℃におけるMD及びTDそれぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際の残留ひずみの平均値が1.00%以下であることが好ましく、より好ましくは0.900%以下、さらに好ましくは0.850%以下、より更に好ましくは0.800%以下、特に好ましくは0.750%以下である。下限は特に限定されるものではないが、0.1%以上である。
残留ひずみが1.00%以下であることでフィルムの折り曲げ耐性が実用範囲内に保たれる。また、残留ひずみをMDとTDそれぞれの方向の平均値とすることで、フィルム全体としての特性指標とすることができる。残留ひずみは延伸条件などによって調整することが出来る。
本フィルムの残留ひずみはJIS K 7312:1996に準じて、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
また、本フィルムの23℃におけるMD又はTD方向の残留ひずみは、それぞれ1.00%以下であることが好ましく、より好ましくは0.900%以下、更に好ましくは0.850%以下、より更に好ましくは0.800%以下、特に好ましくは0.750%以下、より特に好ましくは0.700%以下である。MD及びTDのうち一方の残留ひずみが上記数値範囲内であることが好ましく、MD及びTDの両方の残留ひずみが上記数値範囲内であることがより好ましい。
【0024】
さらに、本フィルムの23℃におけるMD及びTD方向の残留ひずみの差は0.900%以下であることが好ましく、より好ましくは0.500%以下であり、更に好ましくは0.200%以下であり、より更に好ましくは0.100%以下であり、特に好ましくは0.050%以下である。
MD及びTD方向の残留ひずみの差が上記数値範囲内であることにより、フィルムの折り曲げ耐性、ひいては各種フィルム特性の異方性が小さくなるため、フィルムを部材として使用する際や、二次加工時に特定の方向を選択する必要がなく、また異方性による特定方向のみの不具合が起こりにくいため、ハンドリング性にも優れるフィルムとなる。
【0025】
(3)ガラス転移温度
本フィルムのガラス転移温度(Tg)は、75℃以上150℃以下であることが好ましい。76℃以上140℃以下がより好ましく、77℃以上130℃以下が更に好ましい。Tgが75℃以上であれば、本フィルムをディスプレイ用途で用いた際に変形することがないため、耐熱性に優れたものといえる。一方、Tgが150℃以下であれば、加工性にも適したものとなる。
本フィルムのガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121(2012年)に準じて示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
(4)結晶融解温度
本フィルムの結晶融解温度(Tm)は220℃以上300℃以下であることが好ましい。
特に221℃以上295℃以下であることがより好ましく、222℃以上290℃以下であることがさらに好ましく、223℃以上285℃以下であることがとりわけ好ましい。本フィルムの結晶融解温度Tmがかかる範囲であれば、本フィルムは耐熱性と溶融押出成形性のバランスに優れる。ここで、結晶融解温度TmはJIS K7121(2012年)に準じて、本フィルムについて示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
【0026】
(5)厚み
本フィルムの厚みは、1~250μmであることが好ましく、5~200μmであるのがより好ましい。1μm以上とすることでフィルム強度が実用範囲内に保たれる。250μm以下であることで、耐折性が発現しやすくなる。厚みは製膜及び延伸条件によって調整することが出来る。
【0027】
2.成分
次に、本フィルムを構成する成分について説明する。
【0028】
<ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)>
本フィルムは、ポリブチレンナフタレート系共重合体(A)を主成分とする。
ここで、本発明において「主成分」とは、本フィルムにおけるPBN系共重合体(A)の含有量が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上(100質量%を含む)であることをいう。
【0029】
一般的にポリエチレンテレフタレートに共重合成分を導入することで得られるグリコール変性ポリエチレンテレフタレートは、通常のポリエチレンテレフタレートと比較して耐衝撃性が向上することが知られている。一方で、結晶性の低下による耐熱性の低下の懸念がある。また、ガラス転移温度や融点の向上によって成形温度を上昇させる必要があるため、樹脂の熱分解への懸念が生じる場合もある。
本発明は、ポリブチレンナフタレートに共重合成分を導入することで、二軸延伸フィルムの製造を可能にしたものであり、さらに耐衝撃性の向上、ひいては耐折り曲げ性に優れ、耐熱性、成形加工性にも優れたPBN系共重合体(A)を主成分としたフィルムを見出したものである。
【0030】
本発明におけるPBN系共重合体(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)とジオール成分(a-2)とを含有する。
当該ジカルボン酸成分(a-1)としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸が必須成分であり、これに必要に応じて、その他の共重合成分が加えられる。他の共重合成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;p-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等が挙げられるが、この中でも成形性の観点からイソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸が好ましい。
これらの共重合成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
一方、ジオール成分(a-2)としては、1,4-ブタンジオールが必須成分であり、これに必要に応じ、その他の共重合成分として、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールSなどのビスフェノール化合物若しくはその誘導体又はそれらのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。これらのうち、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類が好ましい。特にフィルム強度の保持の観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類を用いることが好ましい。とりわけ、1,4-シクロヘキサンジメタノールを用いることが好ましい。
【0032】
本発明のPBN系共重合体は、上述のように、2,6-ナフタレンジカルボン酸と1,4-ブタンジオールによって得られるPBNに対して、ジカルボン酸成分(a-1)及びジオール成分(a-2)の少なくともいずれかに共重合成分を含有するものである。このような共重合成分を含むことで、これまで困難とされていた二軸延伸を可能とし、かつ、PBNに対して、さらに耐折り曲げ性、耐熱性、成形加工性を向上させることができる。
【0033】
本発明で用いるPBN系共重合体(A)はジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を含み、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位と1,4-ブタンジオール単位とを含むポリブチレンナフタレート系共重合体であることが好ましい。
【0034】
前記PBN系共重合体(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)中に2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を好ましくは90モル%以上、より好ましくは92モル%以上、更に好ましくは94モル%以上、より更に好ましくは96モル%以上、特に好ましくは98モル%以上含有し、ジカルボン酸成分(a-1)の全て(100モル%)が2,6-ナフタレンジカルボン酸であることがより特に好ましい。
ジカルボン酸成分(a-1)中の2,6-ナフタレンジカルボン酸単位の含有量を上記数値範囲内とすることにより、ポリブチレンナフタレート系重合体のガラス転移温度及び融点が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性が向上する。
【0035】
前記PBN系共重合体(A)は、ジオール成分(a-2)中に1,4-シクロヘキサンジメタノールを好ましくは10モル%以上90モル%以下、より好ましくは20モル%以上85モル%以下、更に好ましくは30モル%以上80モル%以下、より更に好ましくは40モル%以上75モル%以下、特に好ましくは50モル%以上70モル%以下含有する。
ジオール成分(a-2)中の1,4-シクロヘキサンジメタノールの含有量を上記数値範囲内とすることにより、PBN系共重合体(A)のガラス転移温度及び融点が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性が向上する。また、結晶性を制御することができるため、結晶化速度を遅くし、フィルムの押出成形性、延伸加工性の向上が可能となる。また、当該含有量が90モル%以下であると、融点が高くなりすぎることがない。したがって、成形温度を高く設定する必要がなく、熱分解する懸念がない。
【0036】
前記PBN系共重合体(A)は、ジオール成分(a-2)中に1,4-ブタンジオールを好ましくは10モル%以上90モル%以下、より好ましくは15モル%以上80モル%以下、更に好ましくは20モル%以上70モル%以下、より更に好ましくは25モル%以上60モル%以下、特に好ましくは30モル%以上50モル%以下含有する。
ジオール成分(a-2)中の1,4-ブタンジオールの含有量を上記数値範囲内とすることにより、ポリエステル系樹脂(A)の結晶性が保持され、ひいては本フィルムの耐熱性が向上する。また、当該含有量が90モル%を超えると、結晶化速度が速すぎて押出製膜性、フィルム延伸性が低下してしまう場合がある。
【0037】
前記ポリエステル系樹脂(A)は、成型性や耐熱性の向上を目的として、1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,4-ブタンジオール以外のジオール成分を10モル%未満共重合しても良い。
具体的には、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、ビスフェノール、スピログリコール、2,2,4,4,-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、イソソルバイド等が挙げられるが、この中でも成形性の観点からエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0038】
PBN系共重合体(A)の結晶融解熱量ΔHmは、15J/g以上60J/g以下であるのが好ましく、20J/g以上或いは50J/g以下である事がより好ましい。ΔHm(A)がかかる範囲であれば、PBN系共重合体(A)は耐熱性、耐湿熱性、溶融成形性、及び、延伸加工性にも優れる適度な結晶性を有する。
PBN系共重合体(A)の結晶融解熱量ΔHm(A)は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定する事ができる。
【0039】
PBN系共重合体(A)の結晶融解温度Tm(A)は220℃以上300℃以下であることが好ましく、225℃以上或いは290℃以下であることがより好ましく、230℃以上或いは280℃以下であることがさらに好ましく、235℃以上270℃以下であることが特に好ましい。PBN系共重合体(A)の結晶融解温度Tm(A)がかかる範囲であれば、PBN系共重合体(A)は耐熱性と溶融成形性のバランスに優れる。
PBN系共重合体(A)の結晶融解温度Tm(A)は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定する事ができる。
【0040】
PBN系共重合体(A)のガラス転移温度Tg(A)は、75℃以上150℃以下であることが好ましく、77℃以上145℃以下であることがより好ましく、80℃以上140℃以下である事が更に好ましい。前記PBN系共重合体(A)のガラス転移温度Tg(A)がかかる範囲にあれば、耐熱性と溶融成形性のバランスに優れる。
【0041】
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲において、本フィルムはPBN系共重合体(A)以外の他の樹脂を含むことを許容することができる。
他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、及び、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0042】
また、本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、本フィルムは一般的に配合される添加剤を適宜含むことができる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、及び、着色剤などの添加剤が挙げられる。
【0043】
また、本発明においては、前述した添加剤のほかに、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、本フィルムに塗布層を設けることができる。前記塗布層の機能としては、ハードコート性、帯電防止性、剥離性、易接着性、印字適性、UVカット性、赤外線遮断性、ガスバリア性などが挙げられる。塗布層の形成については延伸行程中にフィルム表面を処理するインラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。
【0044】
<本フィルムの製造方法>
本発明の二軸延伸フィルムの製造方法について説明するが、以下の説明は本フィルムを製造する方法の一例であり、本フィルムはかかる製造方法により製造されるフィルムに限定されるものではない。
【0045】
本発明の実施形態の一例に係る本フィルムの製造方法は、前記PBN系共重合体(A)を主成分とする樹脂組成物をフィルム状に成形し、二軸延伸する製造方法である。
【0046】
PBN系共重合体(A)及び、その他の樹脂、及び、添加剤を混練し、樹脂組成物を得る方法は特に限定されないが、なるべく簡便に樹脂組成物を得るために、押出機を用いて溶融混練する事によって製造するのが好ましい。樹脂組成物を構成する原料を均一に混合するために、同方向二軸押出機を用いて溶融混練するのが好ましい。
混練温度は、用いる全ての重合体のガラス転移温度以上であり、かつ結晶性樹脂に対しては、その重合体の結晶融解温度以上である事が必要である。使用する重合体のガラス転移温度や結晶融解温度に対して、なるべく混練温度が高い方が、重合体の一部のエステル交換反応が生じやすく、相溶性が向上しやすいものの、必要以上に混練温度が高くなると樹脂の分解が起こるため好ましくない。この事から、混練温度は255℃以上340℃以下が好ましく、260℃以上330℃以下がより好ましく、270℃以上320℃以下がさらに好ましく、280℃以上310℃以下が特に好ましい。混練温度がかかる範囲であれば、重合体の分解を生じる事なく、相溶性や溶融成形性を向上させる事ができる。
【0047】
得られた樹脂組成物を、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって成形して二軸延伸フィルムを作製する事ができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されない。
本フィルムは例えば、以下の方法により製造する事が好ましい。
【0048】
混合して得られた樹脂組成物より、実質的に無定形で配向していないフィルム(以下「未延伸フィルム」と称することがある)を押出法で製造する。この未延伸フィルムの製造は、例えば、上記原料を押出機により溶融し、フラットダイ、または環状ダイから押出した後、急冷する事によりフラット状、または環状の未延伸フィルムとする押出法を採用する事ができる。この際、場合によって、複数の押出機を使用した積層構成としてもよい。
【0049】
次に、上記の未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向、MD)、及びこれと直角な方向(横方向、TD)で、延伸効果、フィルム強度等の点から、少なくとも一方向に通常1.1~5.0倍、好ましくは縦横二軸方向に各々1.1~5.0倍の範囲で延伸する。
【0050】
二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを、前記樹脂組成物のガラス転移温度をTgとして、Tg~Tg+50℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に1.1~5.0倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によってTg~Tg+50℃の温度範囲内で横方向に1.1~5.0倍に延伸する事により製造する事ができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、Tg~Tg+50℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に1.1~5.0倍に延伸する事により製造する事ができる。
【0051】
上記方法により延伸された二軸延伸フィルムは、引き続き熱固定される。熱固定をする事により常温における寸法安定性を付与する事ができる。この場合の処理温度は、好ましくは前記樹脂組成物の結晶融解温度Tm-1~50℃の範囲を選択する。熱固定温度が上記範囲内にあれば、熱固定が十分に行われ、延伸時の応力が緩和され、十分な耐熱性や機械特性が得られ、破断やフィルム表面の白化などのトラブルがない優れたフィルムが得られる。
【0052】
本発明においては、熱固定による結晶化収縮の応力を緩和させる為に、熱固定中に幅方向に0~15%、好ましくは3~10%の範囲で弛緩を行う事が好ましい。弛緩が十分に行われ、フィルムの幅方向に均一に弛緩する為、幅方向の収縮率が均一になり、常温寸法安定性に優れたフィルムが得られる。また、フィルムの収縮に追従した弛緩が行われる為、フィルムのタルミ、テンター内でのバタツキがなく、フィルムの破断もない。
【0053】
<本フィルムの用途>
本発明の二軸延伸フィルムは、耐折性、耐熱性に優れており、かつ、透明性にも優れるため、ディスプレイ用フィルム、包装用フィルムや各種保護フィルムとして用いることができる。なかでも、耐折性の観点から、フォルダブルディスプレイ用に好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0055】
(1)ヒステリシスロス率
JIS K 7312:1996に準じて、以下の方法により23℃におけるヒステリシスロス率の平均値を求めた。
測定装置は、引張試験機(株式会社島津製作所製 引張試験機AG‐1kNXplus)を用いた。試験片は、本フィルムから測定方向の長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離50mmでチャックし、クロスヘッドスピード0.5mm/分にてひずみ5%まで上昇させた後、同様の速度で初期位置まで下降させる1サイクルの引張サイクル試験から得られた応力-ひずみ曲線を得た。応力-ひずみ曲線は、
図1に示すようなプロファイルをとり、ヒステリシスロス率は得られた応力-ひずみ曲線から、上昇動作で得られた曲線の面積A1(abcda)と、面積A1と下降動作で得られた曲線の面積の差となる面積A2(abcef)を用いて、以下の式1にて算出した。試験は3回測定し、その平均値を求めた。上記引張サイクル試験はフィルムのMD及び、TDにてそれぞれ実施し、その平均値を求めた。
ヒステリシスロス率=A2/A1×100 (式1)
【0056】
(2)残留ひずみ
JIS K 7312:1996に準じて、以下の方法により23℃における残留ひずみの平均値を求めた。
測定装置は、引張試験機(株式会社島津製作所製 引張試験機AG‐1kNXplus)を用いた。試験片は、本フィルムから測定方向の長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離50mmでチャックし、クロスヘッドスピード0.5mm/分にてひずみ5%まで上昇させた後、同様の速度で初期位置まで下降させる1サイクルの引張サイクル試験から得られた応力-ひずみ曲線から、応力が無くなった点のひずみを残留歪とした。試験は3回測定し、その平均値を求めた。上記引張サイクル試験はフィルムのMD及び、TDにてそれぞれ実施し、その平均値を求めた。
【0057】
(3)ガラス転移温度
得られたフィルムについて、Diamond DSC(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分にて一度融解温度まで昇温させたのちに加熱速度10℃/分にて降温させ、加熱速度10℃/分の昇温過程におけるガラス転移温度を測定した。
【0058】
(4)結晶融解温度
得られたフィルムについて、Diamond DSC(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分の昇温過程における結晶融解温度を測定した。
【0059】
(5)成形性
押出成形においてキャストロールで冷却固化し、延伸前シートを得る際に、結晶化して白化せずに透明なフィルムが得られた場合に○、結晶化して白化したフィルムが得られた場合に×として評価した。
【0060】
[PBN系共重合体(A)]
PBN系共重合体(A)-1として、ジカルボン酸成分(a-1):2,6-ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分(a-2):1,4-シクロヘキサンジメタノール=60モル%、1,4-ブタンジオール=40モル%を用いた。当該PBN系共重合体(A)-1のTmは251℃であり、Tgは101℃であった。
PBN系共重合体(A)-2として、ジカルボン酸成分(a-1):2,6-ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分(a-2):1,4-シクロヘキサンジメタノール=60モル%、1,4-ブタンジオール=40モル%を用いた。当該PBN系共重合体(A)-2のTmは254℃であり、Tgは96℃であった。
PBN系共重合体(A)-3として、ジカルボン酸成分(a-1):2,6-ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分(a-2):1,4-ブタンジオール=100モル%を用いた。当該PBN系共重合体(A)-3のTmは243℃であり、Tgは78℃であった。
【0061】
(実施例1)
ペレット状の(A)-1単体を285℃に設定したΦ25mm二軸押出機にて溶融混練し、ギャップ1.0mmのTダイ内からフィルムとして押出し、100℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約450μmの膜状物を得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、120℃で縦方向(MD)に3.3倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度110℃、延伸温度115℃、熱固定温度165℃で横方向(TD)に3.0倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を5%行った。得られたフィルムについて測定を行った結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
PBN系共重合体(A)-1の代わりに(A)-2を使用し、実施例1と同様の方法でキャストフィルムを得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、110℃で縦方向(MD)に2.9倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度107℃、延伸温度110℃、熱固定温度150℃で横方向(TD)に3.1倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を5%行った。得られたフィルムについて測定を行った結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
PBN系共重合体(A)-1の代わりに(A)-3を使用し、キャストロールの温度を75℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でキャストフィルムを製膜しようとしたところ、結晶化による白化が起き、非晶質のフィルムが採取できなかった。
【0064】
【0065】
実施例1、2のフィルムは結晶融解温度、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れている。
一方、比較例1については結晶化速度が速すぎることから、非晶質の延伸前シートを採取することができず、成形性に難点があった。