IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業管理システム 図1
  • 特許-作業管理システム 図2
  • 特許-作業管理システム 図3
  • 特許-作業管理システム 図4
  • 特許-作業管理システム 図5
  • 特許-作業管理システム 図6
  • 特許-作業管理システム 図7
  • 特許-作業管理システム 図8
  • 特許-作業管理システム 図9
  • 特許-作業管理システム 図10
  • 特許-作業管理システム 図11
  • 特許-作業管理システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】作業管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240611BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240611BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/04
G05B19/418 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020090365
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021185460
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 輝紀
【審査官】前田 侑香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-150510(JP,A)
【文献】特開2010-42491(JP,A)
【文献】特開2008-213086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を調整し、かつ一方向に並ぶ複数の調整治具と、
各前記調整治具に、色を付与する識別子と、
複数の前記調整治具のうち、一部の数の前記調整治具が撮像される撮像データを生成する撮像装置と、
前記撮像データを取得する情報処理装置と、を備え、
前記識別子は、
複数の前記調整治具のうち、予め定められた数が連続して並ぶ各調整治具に、同一の基準色を付与する基準識別子と、
前記調整治具に、前記基準色と異なる第1識別色を付与する第1特別識別子と、
前記調整治具に、前記基準色と異なる第2識別色を付与する第2特別識別子と、
前記調整治具に、前記基準色と異なる第3識別色を付与する第3特別識別子と、を含み、
前記一方向に、前記第1特別識別子、連続して並ぶ複数の前記基準識別子、前記第2特別識別子、連続して並ぶ複数の前記基準識別子、前記第3特別識別子の順に並び、
前記第1識別色、前記第2識別色、前記第3識別色における前記一方向からの組み合わせは、全部の前記識別子のうち、1組のみであり、
前記情報処理装置は、前記第1特別識別子、前記第2特別識別子、前記第3特別識別子及び前記基準識別子のいずれかが、前記撮像データから識別されない調整治具を、作業者が作業した作業調整治具として特定する作業管理システム。
【請求項2】
前記撮像装置の撮像範囲に入る調整治具の数をNY、前記第1特別識別子と前記第3特別識別子とに挟まれる前記基準識別子の数をNXとすると、下記式(1)を満たす
請求項1に記載の作業管理システム。
(数1)
NY≧NX+3 ・・・式(1)
【請求項3】
前記情報処理装置は、演算部と、記憶部とを備え、
前記記憶部には、前記第1識別色、前記第2識別色、前記第3識別色、前記基準色とする色の配列パターンが記憶され、
前記演算部は、
前記撮像データから特定された作業用工具を挟む、前記第1識別色、前記第2識別色、前記第3識別色のうちのいずれか2つの色の一方向からの色の組み合わせと、前記作業用工具から前記2つの色までの前記基準色の個数と、前記色の配列パターンと、から全部の前記調整治具の中から前記作業調整治具を特定する
請求項1又は請求項2に記載の作業管理システム。
【請求項4】
作業量データを送出する作業用工具をさらに備え、
前記記憶部には、前記作業調整治具と、作業時刻と、前記作業量データとが関連付けられて保存される
請求項3に記載の作業管理システム。
【請求項5】
前記設備が生産する製品の評価データを測定する測定器をさらに備え、
前記記憶部には、前記評価データと、前記作業量データと、が関連付けられて、保存される
請求項4に記載の作業管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人が行う作業を管理するための作業管理システムが開発されている。例えば、特許文献1の作業管理システムは、撮像装置と、情報処理装置と、を備える。撮像装置は、締め付け作業が行われるワーク全体を撮像する。情報処理装置は、作業が行われるボルトなどの調整治具の位置データを予め記憶している。また、情報処理装置は、撮像装置から送信された撮像データから作業が行われたボルトの位置データを導出する。次に、情報処理装置は、導出した位置データと予め記憶した位置データとを比較し、全てのボルトが締め付けられたか否かを判定している。これにより、ボルトの締め付け忘れが回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-42491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大型化したワーク全体を撮像する場合、撮像装置をワークから離隔させる必要がある。しかし、撮像装置が離隔すると、撮像装置とワークとの間に作業者が介在してしまう。よって、ボルト自体を撮像できず、作業が行われたボルトの位置データを取得できない。
【0005】
代案として、作業者に撮像装置を装着させ、操作するボルトを撮像する案が考えられる。この案によれば、ワーク全体を撮像していないため、撮像範囲の相対的な位置を特定できない。よって、位置情報である識別子をボルトに付与する必要がある。しかし、作業用工具によって識別子が隠れてしまうことがある。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、調整治具の識別子が作業用工具に隠れた場合であっても操作している調整治具を特定できる作業管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る作業管理システムは、設備を調整し、かつ一方向に並ぶ複数の調整治具と、各前記調整治具に、色を付与する識別子と、複数の前記調整治具のうち、一部の数の前記調整治具が撮像される撮像データを生成する撮像装置と、前記撮像データを取得する情報処理装置と、を備える。前記識別子は、複数の前記調整治具のうち、予め定められた数が連続して並ぶ各調整治具に、同一の基準色を付与する基準識別子と、前記調整治具に、前記基準色と異なる第1識別色を付与する第1特別識別子と、前記調整治具に、前記基準色と異なる第2識別色を付与する第2特別識別子と、前記調整治具に、前記基準色と異なる第3識別色を付与する第3特別識別子と、を含む。前記一方向に、前記第1特別識別子、連続して並ぶ複数の前記基準識別子、前記第2特別識別子、連続して並ぶ複数の前記基準識別子、前記第3特別識別子の順に並ぶ。前記第1識別色、前記第2識別色、前記第3識別色における前記一方向からの組み合わせは、全部の前記識別子のうち、1組のみである。前記情報処理装置は、前記第1特別識別子、前記第2特別識別子、前記第3特別識別子及び基準識別子のいずれかが、前記撮像データから識別されない調整治具を、作業者が作業した作業調整治具として特定する。
【0008】
本開示の作業管理システムによれば、識別子が作業用工具に隠れた場合であっても操作している調整治具を特定することができる。
【0009】
上記の作業管理システムの一態様として、前記撮像装置の撮像範囲に入る調整治具の数をNY、前記第1特別識別子と前記第3特別識別子とに挟まれる前記基準識別子の数をNXとすると、下記式(1)を満たす。
【0010】
(数1)
NY≧NX+3 ・・・式(1)
【0011】
この態様によれば、第2識別子が作業用工具に隠れたとしても、これを挟む両側の第1識別子及び第2識別子が撮像装置に撮像される。よって、作業用工具に隠れた調整治具を特定することができる。
【0012】
上記の作業管理システムの一態様として、前記情報処理装置は、演算部と、記憶部とを備える。前記記憶部には、前記第1識別色、前記第2識別色、前記第3識別色、前記基準色とする色の配列パターンが記憶される。前記演算部は、前記撮像データから特定された作業用工具を挟む、前記第1識別色、前記第2識別色、前記第3識別色のうちのいずれか2つの色の一方向からの色の組み合わせと、前記作業用工具から前記2つの色までの前記基準色の個数と、前記色の配列パターンと、から全部の前記調整治具の中から前記作業調整治具を特定する。
【0013】
この態様によれば、撮像装置が撮像できる範囲が全部の調整治具の範囲よりも小さくても、演算部が作業調整治具を特定することができる。
【0014】
上記の作業管理システムの一態様として、作業量データを送出する作業用工具をさらに備える。前記記憶部には、前記作業調整治具と、作業時刻と、前記作業量データとが関連付けられて保存される。
【0015】
この態様によれば、特定された調整治具の作業量データを把握することができる。
【0016】
上記の作業管理システムの一態様として、前記設備が生産する製品の評価データを測定する測定器をさらに備える。前記記憶部には、前記評価データと、前記作業量データと、が関連付けられて、保存される。
【0017】
この態様によれば、特定された調整治具の作業量データと評価データとの関係を把握することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の作業管理システムは、調整治具の識別子が作業用工具に隠れても、操作している調整治具を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態の作業管理システムが適用された樹脂フィルム製造装置の全体構成を示す図である。
図2図2は、口金装置に設けられた複数の調整ボルトの一部を拡大した斜視図である。
図3図3は、情報処理装置の記憶部に記憶された識別子の色の配列パターンを示す図である。
図4図4は、特別識別子の識別色の配列パターンを図示したものである。
図5図5は、作業用工具を示す図である。
図6図6は、撮像装置を示す図である。
図7図7は、撮像装置により生成された撮像データを示す図である。
図8図8は、作業中を撮像した1つ目の撮像データを示す図である。
図9図9は、作業中を撮像した2つ目の撮像データを示す図である。
図10図10は、記憶部に記憶される作業量データ、評価データ、調整ボルトデータを示す図である。
図11図11は、調整前の樹脂フィルムの厚みデータをグラフ化した図である。
図12図12は、調整後の樹脂フィルムの厚みデータをグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
図1は、本実施形態の作業管理システムが適用された樹脂フィルム製造装置の全体構成を示す図である。作業管理システム100は、複数の調整ボルト1と、識別子10と、作業用工具20(図5参照)と、撮像装置30(図6参照)と、情報処理装置40と、厚み計97と、を備える。また、本実施形態の作業管理システム100は、樹脂フィルム91を製造する樹脂フィルム製造装置90に適用されている。樹脂フィルム製造装置90は、口金装置92と、キャストロール93と、タッチロール94と、搬送ロール95と、熱処理装置96と、原反巻取機98とを備える。
【0022】
口金装置92は、Tダイである。口金装置92には、図示しない押出機から溶融した熱可塑性樹脂が供給される。口金装置92は、熱可塑性樹脂をリップ部99のスリット(不図示)から押し出す。これにより、熱可塑性樹脂は、膜状に成形される。そして、膜状の熱可塑性樹脂は、冷却されて固化し、樹脂フィルム91となる。
【0023】
樹脂フィルム91は、タッチロール94によりキャストロール93に密着される。次に、樹脂フィルム91は、搬送ロール95及び熱処理装置96を通過し、延伸処理や熱固定処理が行われる。次に、樹脂フィルム91は、厚み計97により樹脂フィルム91の厚みが計測される。最後に、樹脂フィルム91は、原反巻取機98に巻き取られる。
【0024】
上記した厚み計97は、樹脂フィルム製造装置90で製造された製品(樹脂フィルム91)の評価データを取得する測定器である。厚み計97は、計測時刻と、樹脂フィルム91の厚みと、樹脂フィルム91の搬送速度(キャストロール93とタッチロール94と搬送ロール95による搬送速度)と、を関連付けて情報処理装置40に送信する。そして、情報処理装置40の記憶部41は、計測時刻と、樹脂フィルム91の厚みと、樹脂フィルム91の搬送速度と、を評価データD102として記憶する(図10を参照)。
【0025】
なお、樹脂フィルム91は、幅方向の各部位で厚みが異なる(図11図12を参照)。よって、厚み計97による計測は、樹脂フィルム91の幅方向の全ての部位を計測する。そして、厚み計97は、上記した計測時刻と、樹脂フィルム91の厚みと、樹脂フィルム91の搬送速度とに対し、樹脂フィルム91の幅方向のどこの部分であるかを示す位置データと関連付けて情報処理装置40に送信している。よって、記憶部41に記憶される評価データD102も、第1評価データD1021、第2評価データD1022、第3評価データD1023・・・と、樹脂フィルム91の幅方向の各部分ごとに分割されて記憶されている(図10参照)。
【0026】
調整ボルト1は、口金装置92と呼ばれる設備に設けられている。調整ボルト1は、口金装置92のリップ部99のスリット(不図示)の幅を調整するための調整部品である。なお、リップ部99のスリットの幅方向とは、樹脂フィルム91の厚み方向である。本実施形態において、調整ボルト1は、口金装置92に対し複数設けられている。複数の調整ボルト1は、口金装置92に対し一方向Xに配列している。複数の調整ボルト1が配列する一方向Xは、図1の矢印で示す方向であり、樹脂フィルム91の幅方向と平行である。また、本実施形態の調整ボルト1の本数は、49本である。
【0027】
図2は、口金装置に設けられた複数の調整ボルトの一部を拡大した斜視図である。図2に示すように、調整ボルト1は、外形が六角形を成す頭部2と、頭部2からリップ部99(図2において不図示)に向かって延びる円柱部3と、を有する。この調整ボルト1を一方の回転方向に回転させると、リップ部99のスリットの幅が小さくなり、樹脂フィルム91の厚みが薄くなる。一方で、調整ボルト1を他方の回転方向に回転させると、リップ部99のスリットの幅が大きくなり、樹脂フィルム91の厚みが厚くなる。
【0028】
識別子10は、調整ボルト1に塗られた有色の塗料である。図2のハッチングに示すように、本実施形態の識別子10は、頭部2の端面2aと、円柱部3の端面3aとに色を付与している。なお、端面2a及び端面3aは、調整作業中、作業用工具20と重なる部分である(図8図9参照)。識別子10は、塗料に限られず、シール、蓋、札などでもよい。
【0029】
識別子10は、基準色を付与する基準識別子11と、基準色とは異なる識別色を付与する特別識別子12と、を含む。本実施形態において、基準色は黄である。識別色は、赤12R、青12B、緑色(図2で不図示)、白色(図2で不図示)である。そして、特別識別子12が付与される調整ボルト1の配列する位置に基づいて、赤12R、青12B、緑(図2、及び図7から図9で不図示)、白(図2、及び図7から図9で不図示)のうちから1つが選択されている。基準色は、調整ボルト1の地の色でもよい。基準色は、黄色に限られず、透明ではない有色であることが望ましい。基準色が例えば、有色の塗料で塗られていると、背景と基準色との差が撮像装置30の撮像データで判別しやすくなる。
【0030】
全ての調整ボルト1に識別子10が付与されている。そのうち、38本の調整ボルト1に基準色が付与されている。11本の調整ボルト1に識別色が付与されている。よって、基準色とは異なる特別な色が付された識別子10を特別識別子12といい、特別識別子12は、11個となっている。以下、11個の特別識別子12において、一方向Xに向かって順に、第1番目の特別識別子、第2番目の特別識別子、第3番目の特別識別子、第4番目の特別識別子、第5番目の特別識別子、第6番目の特別識別子、第7番目の特別識別子、第8番目の特別識別子、第9番目の特別識別子、第10番目の特別識別子、第11番目の特別識別子と呼ぶ場合がある。
【0031】
図3は、情報処理装置の記憶部に記憶された識別子の色の配列パターンである。識別子10の配列パターンは、一方向Xから順に、第1番目の特別識別子12、3つの基準識別子11、第2番目の特別識別子12、4つの基準識別子11、第3番目の特別識別子12、4つの基準識別子11、第4番目の特別識別子12、4つの基準識別子11、第5番目の特別識別子12、4つの基準識別子11、第6番目の特別識別子12、4つの基準識別子11、第7番目の特別識別子12、4つの基準識別子11、第8番目の特別識別子12、4つの基準識別子11、第9番目の特別識別子12、4つの基準識別子11、第10番目の特別識別子12、3つの基準識別子11、第11番目の特別識別子12と並びとなっている。よって、識別子10において一方向Xの最初と最後が特別識別子12となっている。また、特別識別子12の間に配置される基準識別子11が付された調整ボルト1の個数は、3本又は4本となっている。
【0032】
なお、図3に示すように、情報処理装置40の記憶部41は、識別子10の色の配列パターンデータD100を記憶している(図3参照)。識別子10の配列パターンデータD100は、一方向Xから数えた場合の順番を示すボルトナンバー(図3において「ボルトNo」と表記)と、各調整ボルト1に付された識別子の色と、が関連付けされている。
【0033】
図4は、特別識別子の識別色の配列パターンを図示したものである。図4は、特別識別子の識別色の配列パターンのうち、任意の一方向Xに連続して並ぶ3つの識別子は、第1特別識別子、第2特別識別子、第3特別識別子という。例えば、第5番目の特別識別子が第1特別識別子とすれば、第2特別識別子が第6番目の特別識別子であり、第3特別識別子が第7番目の特別識別子である。図4に示すように、第5番目の特別識別子、第6番目の特別識別子、第7番目の特別識別子に付された色は、一方向Xに順に緑、青、青である。一方向Xに順に緑、青、青である色の組み合わせは、図4に示す配列パターンの中で、1組のみである。配列パターンの任意の位置から、一方向Xに連続して並ぶ、1番目の識別色(第1識別色)、2番目の識別色(第2識別色)、3番目の識別色(第3識別色)の組み合わせが、全部の識別子のうち、1組のみとなるように、図4の配列パターンは、配色されている。
【0034】
詳細には、特別識別子12の識別色の配列パターンは、順番に並ぶ2つの特別識別子の一方向Xからの識別色の組み合わせは、全て異なっている。例えば、第1番目の特別識別子(ボルトNo.1)と第2番目の特別識別子(ボルトNo.5)の一方向Xからの識別色の組み合わせは、赤、青となっている。第2番目の特別識別子(ボルトNo.5)と第3番目の特別識別子(ボルトNo.10)の一方向Xからの識別色の組み合わせは、青、赤となっている。よって、第1番目の特別識別子と第2番目の特別識別子の一方向Xからの識別色の組み合わせは、第2番目の特別識別子と第3番目の特別識別子の一方向Xからの識別色の組み合わせと異なっている。
【0035】
また、1つの特別識別子12を挟む2つの特別識別子12の一方向Xから順に並ぶ識別色の組み合わせは、図4に示す配色パターンの他の位置と比べて、全て異なっている。例えば、第2番目の特別識別子12(ボルトNo.5)を挟む第1番目の特別識別子12(ボルトNo.1)と第3番目の特別識別子12(ボルトNo.10)における一方向Xからの識別色の組み合わせは、赤、赤となっている。第3番目の特別識別子12(ボルトNo.10)を挟む第2番目の特別識別子(ボルトNo.5)と第4番目の特別識別子12(ボルトNo.15)における一方向Xからの識別色の組み合わせは、青、赤となっている。よって、第1番目の特別識別子と第3番目の特別識別子の一方向Xからの識別色の組み合わせは、第2番目の特別識別子と第4番目の特別識別子の一方向Xからの識別色の組み合わせと異なっている。
【0036】
図5は、作業用工具を示す図である。図5に示すように、作業用工具20は、先端部21が調整ボルト1の頭部2と嵌合するトルクレンチである。作業用工具20が使用されると、作業用工具20は、作業量データと作業時刻とを関連付けて、無線により情報処理装置40に送信している。なお、作業用工具20の作業量データには、調整ボルト1の回転角度と、回転トルクと、が含まれている(図10参照)。
【0037】
図6は、撮像装置を示す図である。図6に示すように、撮像装置30は、作業者の作業内容を動画として撮像し、データを生成するカメラである。撮像装置30は、撮像データと、撮像した撮像時刻と、を関連付けて無線で情報処理装置40に送信している。撮像装置30は、バンド31によりヘルメット32に固定されて作業者に移動する。また、撮像装置30は、作業者の視線の先、つまり作業範囲を映像するように固定されている。
【0038】
図7は、撮像装置により生成された撮像データを示す図である。図7に示すように、撮像装置30の画像範囲は、11本の調整ボルト1を撮像できるようになっている。つまり、撮像装置30は、一方向Xに配列する49本の調整ボルト1の全部を撮像できない。撮像装置30は、広角レンズを使用する必要がないので安価なものを使用でき、歪みの少ない撮像データを得ることができる。
【0039】
なお、図3に示すように、2つ特別識別子12の間に配置される基準識別子11の数は、3個又は4個となっている。これによれば、ある1つの特別識別子12を挟んだ2つの特別識別子12、12と、この2つの特別識別子12、12の間にある識別子10と、の数が10個又は11個となり、全て撮像装置30の画像範囲に含まれるようになる。つまり、ある1つの特別識別子12が作業用工具20に隠れたとしても、これを挟む両側の特別識別子12が撮像装置30に撮像されるように、基準識別子11の数が調整されている。
【0040】
情報処理装置40は、いわゆるコンピュータであり、入力インターフェースと、出力インターフェースと、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、記憶部41と、表示装置43を有している。有線又は無線あるいは、記録媒体を介して、入力インターフェースには、作業用工具20の作業量データD101(図10参照)と、撮像装置30の撮像データ30D(図7参照)と、厚み計97の厚みデータを含む評価データD102(図10参照)とが、入力されている。出力インターフェースには、表示装置43が接続されている。CPU、ROM、RAM及び記憶部41は、バスで接続されている。ROMには、BIOS(Basic Input Output System)等のプログラムが記憶されている。記憶部41は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等であり、オペレーティングシステムプログラムやアプリケーションプログラムを記憶している。CPUは、演算手段であり、RAMをワークエリアとして使用しながらROMや記憶部41に記憶されているプログラムを実行することにより、演算部42の機能を実現する。記憶部41は、内蔵であっても外付けであってもよく、RAMを一時記憶として使ってもよく、あるいは、ネットワーク上の記憶装置やサーバ等であってもよい。
【0041】
演算部42は、撮像データ30D(図7参照)を基に、作業者に操作された調整ボルト1を特定する。演算部42の処理工程は、第1ステップとして、撮像データ30Dから、作業用工具20を特定する。第2ステップとして、撮像データ30Dから、作業用工具20を挟む2つの特別識別子12が特定される。次に特定された2つの特別識別子12の一方向Xからの識別色の組み合わせを特定する。また、演算部42は、作業用工具20と2つの特別識別子12との間にある基準識別子11の個数を特定する。併せて、演算部42は、2つの特別識別子12の間に介在する調整ボルト1の本数を算出する。第3ステップとして、演算部42は、一方向Xからの識別色の組み合わせと、特定された2つの特別識別子12の間に介在する調整ボルト1の本数と、基準識別子11の個数と、記憶部41の色の配列パターンデータD100とを比較して、作業された調整ボルト1を特定する。
【0042】
図8は、作業中を撮像した1つ目の撮像データである。以下の説明では、2つの具体例を挙げて、演算部42の処理の詳細を説明する。図8では、調整ボルト1の1つが作業用工具20で隠されている。具体的には、上述した特別識別子12の1つが作業用工具20で隠されている。まず、演算部42は、第1ステップとして、撮像データ30D1の中央にある作業用工具20を特定する。第2ステップとして、演算部42は、作業用工具20を挟み、かつ2つの特別識別子12、12を特定する。次に、演算部42は、特別識別子12、12の一方向Xからの識別色の組み合わせ(青12B、赤12R)を特定する。次に、演算部42は、作業用工具20と赤12Rの特別識別子12との間に介在する調整ボルト1の本数(4本)と、作業用工具20と青12Bの特別識別子12との間に介在する調整ボルト1の本数(4本)と特定する。そして、演算部42は、青12Bの特別識別子12と赤12Rの特別識別子12との間に介在する調整ボルト1の総数を9本と判定する。
【0043】
第3ステップとして、演算部42は、記憶部41に記憶された色の配列パターンデータD100から、一方向Xから青12B、赤12Rという識別色の組み合わせであり、かつ青12Bと赤12Rとの間に識別子10が9個配置されている位置を検索する。この結果、演算部42は、青12Bの特別識別子12がボルトNo.5に付された識別子10と特定する。また、演算部42は、赤12Rの特別識別子12がボルトNo.15に付された識別子10と特定する。これにより、演算部42は、ボルトNo.5から一方向Xに5番目にあり、かつボルトNo.15から逆方向に5番目にあるボルトNo.10の調整ボルト1を作業調整された調整ボルト1と判定する。このようにして、作業用工具20に隠れているボルトNo.10は、撮像データ30Dから識別できないが、作業管理システム100は、ボルトNo.10を作業者が作業した調整ボルト1として特定する。
【0044】
以上のように、情報処理装置40は、撮像データ30Dに含まれる第1番目の特別識別子12、第2番目の特別識別子12、第3番目の特別識別子12及び基準識別子11のいずれかが、撮像データ30Dから識別されない調整ボルト1を、作業者が作業した作業調整ボルトとして特定している。
【0045】
図9は、作業中を撮像した2つ目の撮像データである。図9に示す例でも、調整ボルト1の1つが作業用工具20で隠されている。具体的には、上述した基準識別子11の1つが作業用工具20で隠されている。まず、演算部42は、第1ステップとして、撮像データ30D1の中央にある作業用工具20と特定する。第2ステップとして、演算部42は、作業用工具20を挟み、かつ2つの識別色を付与する2つの特別識別子12、12を特定する。次に演算部42は、一方向Xからの識別色の組み合わせ(青12B、青12B)を特定する。次に演算部42は、作業用工具20と、一方向Xにみて、一方にある青12Bの特別識別子12と、の間に介在する調整ボルト1の本数(1本)と特定する。さらに、演算部42は、作業用工具20と、一方向Xにみて、他方にある青12Bの特別識別子12と、の間に介在する調整ボルト1の本数(2本)を特定する。これから、演算部42は、特別識別子12と特別識別子12との間に介在する調整ボルト1の総数を4本と判定する。
【0046】
第3ステップとして、演算部42は、配列パターンデータD100から、一方向Xから青12B、青12Bの識別色の組み合わせ順であって、青12Bと青12Bとの間に識別子10が4個配置されているものを検索する。この結果、演算部42は、青12Bの特別識別子12の一方がボルトNo.25に付された識別子10と特定する。また、演算部42は、青12Bの特別識別子12の他方がボルトNo.30に付された特別識別子12と特定する。これにより、演算部42は、ボルトNo.25から一方向Xに3番目にあり、かつボルトNo.30から逆方向に2番目にあるボルトNo.28の調整ボルト1を作業された調整ボルト1と判定する。
【0047】
図10は、記憶部に記憶される作業量データ、評価データ、調整ボルトデータを示す図である。演算部42は、作業された調整ボルト1を特定した後、撮像データ30Dに含まれる作業時刻を、記憶部41に記憶させる。これによれば、記憶部41の調整ボルトデータD103に作業時刻が記憶され、調整ボルト1の調整作業の有無を確認することができる。なお、図10に示すように、記憶部41は、ボルトNo.1のデータD1、ボルトNo.2のデータD2、ボルトNo.3のデータD3、ボルトNo.4のデータD4、・・・と、調整ボルト1毎にデータを分けて記憶している。
【0048】
また、演算部42は、作業された調整ボルト1を特定した後、作業内容である作業量データD101を、記憶部41に記憶させる。具体的には、作業用工具20から送付される回転角度データと、トルクデータが、作業時刻のデータとともに、記憶部41に記憶される。これにより、作業量データD101には、作業時刻と作業量とが関連付けられて記憶される。
【0049】
また、演算部42は、記憶部41の評価データD102の搬送速度から、樹脂フィルム91が口金装置92のリップ部99から押し出されて厚み計97に到達するまでの経過時間を算出する。そして、演算部42は、計測時刻から経過時間を引き、リップ部99から押し出されて成形した成形時刻を算出している。そして、演算部42は、厚みデータを含む評価データD102に成形時刻を記憶させている。
【0050】
また、演算部42は、作業された調整ボルト1を特定した後、この調整ボルト1に対応する樹脂フィルム91の厚みを、調整ボルトデータD103に関連付けて、記憶部41に記憶させている。具体的に、演算部42は、厚みデータを含む評価データD102のうち、調整作業された調整ボルト1と、この調整ボルト1と幅方向に対応する部分の厚みデータを含む評価データD102を選択する。次に演算部42は、厚みデータを含む評価データD102の中から、調整ボルトデータD103の作業時刻と評価データD102の成形時刻とが一致する厚みデータを調整ボルトデータD103に記憶させる。これによれば、調整ボルトデータD103には、作業量データD101の作業時刻及び作業量と、評価データD102の厚みデータとが関連付けられて記憶される。
【0051】
図11は、調整前の樹脂フィルムの厚みデータをグラフ化した図である。図12は、調整後の樹脂フィルムの厚みデータをグラフ化した図である。表示装置43は、記憶部41に記憶されるデータを表示する表示装置である。表示装置43は、記憶部41に記憶される作業量データD101、厚みデータを含む評価データD102、及び調整ボルトデータD103に記憶される数値を表示する。また、図11図12に示すように、表示装置43は、厚みデータを含む評価データD102から、ある時刻における樹脂フィルム91の幅方向の厚みのグラフ化して表示することができる。よって、調整作業された前と後で、樹脂フィルム91の幅方向のどこの部位がどのように変化したかを把握することができる。
【0052】
以上から、実施形態の作業管理システム100によれば、撮像データ30Dから特定された作業用工具20を挟む、第1の識別色、第2の識別色、第3の識別色のうちのいずれか2つの色の一方向Xからの識別色の組み合わせと、作業用工具20から2つの色までの基準色の個数と、色の配列パターンデータD100と、から全部の調整ボルト1の中から作業調整ボルトを特定することができる。よって、樹脂フィルム製造装置90の管理者は、記憶部41に記憶される調整ボルトデータD103に基づいて、どの調整ボルト1に対し、どのようなトルクを加えて調整作業が行われたかを把握することができる。
【0053】
また、記憶部41には、作業された調整ボルト1と、作業時刻と、作業量データD101とが関連付けられて保存される。よって、管理者は、調整ボルト1に対する作業量(調整ボルトの回転角度、トルク)を把握することができる。
【0054】
また、記憶部41には、評価データD102と、作業量データD101と、が関連付けられて保存される。よって、管理者は、調整された調整ボルト1の作業量と、その部分の樹脂フィルム91の厚みと、の関係を把握することができる。
【0055】
以上、好適な実施形態を説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した発明を基にして当業者が適宜設計変更して実施しうる全ての発明も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の技術的範囲に属する。
【0056】
例えば、本開示の作業管理システムにおいて、特別識別子の間に配置される基準識別子の個数は、3本又は4本に限定されず、下記の式(2)を満たせばよい。なお、式(2)中の「NY」は、撮像装置の撮像範囲に入る調整ボルトの数である。式(2)中の「NX」は、ある特別識別子(第2番目の特別識別子)を挟む第1番目の特別識別子と第3番目の特別識別子とに挟まれる基準識別子の数である。
【0057】
(数2)
NY≧NX+3 ・・・式(2)
【0058】
また、実施形態の識別色は4種類であるが、本開示の作業管理システムにおいて、調整ボルトの総数に併せて適宜増減させてもよい。また、本実施形態の調整ボルト1の本数は、49本であったが、本開示の作業管理システムにおいて、調整ボルト1の本数はこれに限定されない。
【0059】
例えば、本開示の作業管理システム100において、調整ボルト1は、設備の調整治具の1つである。調整ボルト1の代わりに、調整ナットであってもよい。本開示の作業管理システム100は、設備を調整し、かつ一方向に並ぶ複数の調整治具を備え、撮像データから識別されない調整治具を、作業者が作業した作業調整治具として特定してもよい。
【0060】
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本実施形態においては両者を同義として用い、統一して「フィルム」と記す。
【符号の説明】
【0061】
100 作業管理システム
1 調整ボルト(調整治具)
10 識別子
11 基準識別子
12 特別識別子
20 作業用工具
30 撮像装置
40 情報処理装置
90 樹脂フィルム製造装置
91 樹脂フィルム
92 口金装置
97 厚み計(測定器)
99 リップ部
41 記憶部
42 演算部
43 表示装置
D100 色の配列パターンデータ
D102 評価データ
D103 調整ボルトデータ
D101 作業量データ
30D 撮像データ
X 一方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12