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特許7501160情報処理装置、制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20240611BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240611BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20240611BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20240611BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G03G15/01 S
G03G15/00 303
B41J2/525
H04N1/60
G06T1/00 510
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020114399
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012524
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋二
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-010182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
B41J 29/00-29/70
B41J 2/52- 2/525
H04N 1/40- 1/409
H04N 1/46- 1/62
G06T 1/00- 1/40
G06T 3/00- 5/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて複数の色を混色して記録媒体上に形成されたカラー画像の少なくとも一部の画像領域の色を測色して測色値を取得する測色部と、
複数の階調範囲それぞれの前記測色値に基づいて、前記画像領域を区分けした分割領域毎かつ前記階調範囲別に、画像形成装置の階調特性変動を補正する第1パラメータを算出し、前記第1パラメータのうち、前記測色値の前記階調範囲の傾向が同じ前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記画像形成装置の階調特性変動の補正に用いる階調補正値の生成に用いる係数である第2パラメータを算出し、前記第2パラメータに基づいて、前記階調補正値を生成する生成部と、
前記階調補正値に基づいて、前記階調特性変動を補正する補正部と、を備え、
前記生成部は、前記第1パラメータのうち、前記複数の階調範囲の全ての前記測色値が揃う前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記第2パラメータを算出する、情報処理装置。
【請求項2】
前記分割領域は、前記画像領域の副走査方向を複数に区分けした領域である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記第1パラメータのうち、前記測色値の前記階調範囲の傾向が同じ前記分割領域の前記第1パラメータを平均化して前記第2パラメータを算出する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記第1パラメータのうち、最も多い前記階調範囲の組合せの前記測色値が揃う前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記第2パラメータを算出する、請求項1からのいずれか一に記載の情報処理装置。
【請求項5】
情報処理装置で実行される制御方法であって、
測色部が、画像データに基づいて複数の色を混色して記録媒体上に形成されたカラー画像の少なくとも一部の画像領域の色を測色して測色値を取得する工程と、
生成部が、複数の階調範囲それぞれの前記測色値に基づいて、前記画像領域を区分けした分割領域毎かつ前記階調範囲別に、画像形成装置の階調特性変動を補正する第1パラメータを算出し、前記第1パラメータのうち、前記測色値の前記階調範囲の傾向が同じ前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記画像形成装置の階調特性変動の補正に用いる階調補正値の生成に用いる係数である第2パラメータを算出し、前記第2パラメータに基づいて、前記階調補正値を生成する工程と、
補正部が、前記階調補正値に基づいて、前記階調特性変動を補正する工程と、を含み、
前記生成部は、前記第1パラメータのうち、前記複数の階調範囲の全ての前記測色値が揃う前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記第2パラメータを算出する、制御方法。
【請求項6】
コンピュータを、
画像データに基づいて複数の色を混色して記録媒体上に形成されたカラー画像の少なくとも一部の画像領域の色を測色して測色値を取得する測色部と、
複数の階調範囲それぞれの前記測色値に基づいて、前記画像領域を区分けした分割領域毎かつ前記階調範囲別に、画像形成装置の階調特性変動を補正する第1パラメータを算出し、前記第1パラメータのうち、前記測色値の前記階調範囲の傾向が同じ前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記画像形成装置の階調特性変動の補正に用いる階調補正値の生成に用いる係数である第2パラメータを算出し、前記第2パラメータに基づいて、前記階調補正値を生成する生成部と、
前記階調補正値に基づいて、前記階調特性変動を補正する補正部と、
して機能させ
前記生成部は、前記第1パラメータのうち、前記複数の階調範囲の全ての前記測色値が揃う前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記第2パラメータを算出する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量印刷を前提とした電子写真方式やインクジェット方式等のデジタル印刷装置では、数百枚、数千枚といった連続出力における出力色の安定性が求められる。特に、チラシやカタログ類等、数ページ毎に、若干、コンテンツが差し換えられた程度の同種の原稿が反復して出力されるようなユースケースや、複数拠点で分散印刷されるようなユースケースでは、再現色の安定性が重要となる。
【0003】
しかしながら、本格的な商用印刷と異なり、これらのデジタル印刷装置が利用される動作環境は、必ずしも厳密には管理されていない場合が多く、多様な原稿種の混合印刷によってトナーやインクの供給量やマシンコンディションも刻々と変化するといった回避不能な不安定要因も多く存在する。このため、出力色をある程度厳密に安定管理することが求められる場合には、度々、機械を停止して、キャリブレーションを行うことが必要となる。しかし、このようなキャリブレーションが度々行われると、損紙の発生や、ジョブの停止、作業工数の増大といった負担の問題が生じる。
【0004】
このような問題に対して、印刷領域内の色を測色する際、測色に適した領域が、副走査方向に偏るような場合であっても、周期変動によるノイズの影響を抑制して、階調特性変動の推定精度の低下を抑制し、再現色を安定させる技術が開発されている。具体的には、入力画像に基づいて複数の色を混色して記録媒体上に形成されるカラー画像の少なくとも一部の画像領域の色を測色して測色値を取得し、画像領域内で区分けされた分割領域毎かつ階調範囲別の測色値に基づいて、分割領域毎かつ階調範囲別の第1パラメータを算出し、第1パラメータのうち、画像領域の濃度変動の周期成分を相殺する分割領域の第1パラメータ同士を階調範囲毎に平均化して、階調範囲毎の第2パラメータを算出し、第2パラメータに基づいて、各色の階調特性変動を補正する。
【0005】
例えば、分割領域毎に取得される測色値の階調範囲を、低濃度、中濃度、高濃度の3つの階調範囲に分け、画像領域の濃度変動の周期成分を相殺する分割領域の第1パラメータ同士を階調範囲毎に平均化した、各階調範囲の第2パラメータに基づいて、各階調範囲の階調補正値を補正する。これにより、測色に適した領域が副走査方向に偏る場合であっても、周期変動によるノイズの影響を抑制しつつ、階調特性変動の推定精度の低下を抑制して、再現色を安定させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の技術では、画像領域の濃度変動の周期成分を相殺する分割領域間で測色値の階調範囲が異なる場合、それぞれの分割領域について算出される第1パラメータに差異が生じる。そして、これらの第1パラメータを平均化した第2パラメータで、各色の階調特性変動を補正すると、当該階調特性変動に誤差が生じ、分割領域間において差異のある係数(第1パラメータ)が増えると、第2パラメータの誤差が拡大し、階調特性変動の推定精度が低下し、再現色が安定しない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、画像形成装置の階調特性変動を適正に補正し、再現色を安定させることが可能な情報処理装置、制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像データに基づいて複数の色を混色して記録媒体上に形成されたカラー画像の少なくとも一部の画像領域の色を測色して測色値を取得する測色部と、複数の階調範囲それぞれの前記測色値に基づいて、前記画像領域を区分けした分割領域毎かつ前記階調範囲別に、画像形成装置の階調特性変動を補正する第1パラメータを算出し、前記第1パラメータのうち、前記測色値の前記階調範囲の傾向が同じ前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記画像形成装置の階調特性変動の補正に用いる階調補正値の生成に用いる係数である第2パラメータを算出し、前記第2パラメータに基づいて、前記階調補正値を生成する生成部と、前記階調補正値に基づいて、前記階調特性変動を補正する補正部と、を備え、前記生成部は、前記第1パラメータのうち、前記複数の階調範囲の全ての前記測色値が揃う前記分割領域の前記第1パラメータに基づいて、前記第2パラメータを算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置の階調特性変動を適正に補正し、再現色を安定させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施の形態にかかる画像形成装置の概略構造の一例を示す図である。
図2図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、本実施の形態にかかる画像形成装置の機能ブロックの概略構成の一例を示す図である。
図4図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置の機能ブロックの詳細構成の一例を示す図である。
図5図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置の画像処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置による測色領域の階調範囲の区分処理の一例を説明するための図である。
図7図7は、本実施の形態にかかる画像形成装置による第1モードパラメータの算出処理の一例を説明するための図である。
図8図8は、本実施の形態にかかる画像形成装置による第2モードパラメータの算出処理の一例を説明するための図である。
図9図9は、本実施の形態にかかる画像形成装置による第2モードパラメータの算出処理の他の例を説明するための図である。
図10図10は、本実施の形態にかかる画像形成装置における第2モードパラメータの算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11図11は、本実施の形態にかかる画像形成装置における第2モードパラメータの算出処理の他の例を説明するための図である。
図12図12は、本実施の形態にかかる画像形成装置により印刷されるカラー画像の濃度の変動の一例を説明するための図である。
図13図13は、本実施の形態にかかる画像形成装置における第2モードパラメータの算出処理の流れの他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、情報処理装置、制御方法、およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態にかかる画像形成装置の概略構造の一例を示す図である。まず、図1を参照しながら、本実施の形態にかかる画像形成装置100の概略構造の一例について説明する。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置100(情報処理装置の一例)は、用紙P(記録媒体の一例)に対する画像形成を行う画像形成部4内に、用紙Pを搬送する給紙部2と、入力された原稿データを基に転写ベルト47に形成されたトナー像を用紙Pに転写する転写部5と、転写部5により転写された用紙Pのトナー像(カラー画像)を定着させる定着部6と、用紙Pに定着されたカラー画像の反射特性を測定する測定センサ45と、用紙Pを外部に排出する排紙部7と、を備えている。
【0014】
給紙部2は、給紙口20と、給紙ローラ21と、レジストローラ対22と、を有する。給紙口20は、画像形成部4内に用紙Pを給紙するための開口部である。給紙ローラ21は、給紙口20から給紙された用紙Pを転写部5まで搬送するローラである。レジストローラ対22は、給紙ローラ21から搬送されてくる用紙Pを所定のタイミングで転写部5に送り出すローラ対である。
【0015】
画像形成装置100は、転写ベルト47にトナー像を転写するための複数の基本色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応する4つのプロセスユニット4Y、4M、4C、4Kを有している。プロセスユニット4Y、4M、4C、4Kは、それぞれ像担持体であるドラム状の感光体40Y、40M、40C、40Kを有する。プロセスユニット4Y、4M、4C、4Kは、いずれも同様の構成を有し、説明が重複するため、ここでは、特にイエロー(Y)に対応するプロセスユニット4Yの構成についてのみ説明する。
【0016】
プロセスユニット4Yは、感光体40Yと、帯電装置42Yと、レーザユニット53Yと、現像装置43Yと、1次転写ローラ475Yと、クリーニング装置44Yと、を有する。
【0017】
感光体40Yは、図1に示す反時計方向である方向Aに回転する回転体としての像担持体であるドラム状の部材であり、レーザユニット53Yが射出する走査光の被走査面である感光層が形成されている。帯電装置42Yは、感光体40Yを帯電させる装置である。レーザユニット53Yは、走査光を走査することによって、感光体40Yに潜像を形成するユニットである。現像装置43Yは、レーザユニット53Yにより形成された感光体40Y上の潜像を、イエロー(Y)のトナーにより現像してトナー像を形成する装置である。1次転写ローラ475Yは、巻き掛けられた転写ベルト47に対して、感光体40Yに形成されたトナー像を転写するローラである。クリーニング装置44Yは、トナー像が転写ベルト47に転写された後に、感光体40Yに残っている余分なトナーを取り除く装置である。
【0018】
このようなプロセスユニット4Y、4M、4C、4Kによって、基本色の混色により転写ベルト47上に混色の画像であるトナー像を形成する。
【0019】
転写部5は、転写ベルト47と、図1の方向Bに回転するように駆動源によって駆動される駆動ローラ471と、駆動ローラ471と同様に方向Bに回転する従動ローラ472と、2次転写ローラ473と、を有している。
【0020】
転写ベルト47は、伸びの少ないポリイミド樹脂に、電気抵抗を調整するためのカーボン粉末を分散させたベルトである。転写ベルト47は、駆動ローラ471と、従動ローラ472と、2次転写ローラ473と、1次転写ローラ475Y、475M、475C、475Kと、に巻き掛けられている。
【0021】
2次転写ローラ473は、2次転写位置Nにおいて、対向するローラ474と共に転写ベルト47に当接してニップ部を形成しているローラである。2次転写ローラ473は、2次転写位置Nにおいて、対向するローラ474との間に転写ベルト47を用紙Pと共に挟み込み、2次転写バイアスをかけて転写ベルト47表面のトナー像を用紙Pに転写する。2次転写バイアスとしては、転写ベルト47の表面に帯電している静電荷とは逆の極性の電荷を付与する。2次転写位置Nでトナー像が転写された用紙Pは、定着部6へ搬送される。
【0022】
測定センサ45は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3つの測定対象色に対して感度を持つように前段に各測定対象色に対応するバンドパスフィルタを取り付けた、複数のモノクロラインセンサを組み合わせたインライン式の色度測定器である。測定センサ45は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に対応する3つの分光特性を備えた測定チャンネルを有している。測定センサ45が有する測定チャンネルの個数を測定チャンネル数という。測定センサ45は、定着位置N2よりも用紙Pの搬送方向の下流に設置され、用紙Pに形成されたカラー画像の全体または一部の反射特性を測定する。
【0023】
なお、測定センサ45は、少なくとも1つの分光特性を有する測定チャンネル、すなわち、1つ以上の基本色に対して感度を持った測定チャンネルを有するセンサであればよく、いわゆるカラースキャナであってもよい。また、測定センサ45は、単一の分光特性を有するモノクロラインセンサであってもよい。
【0024】
定着部6は、加熱ローラ61と定着ローラ62との間に形成された定着位置N2を用紙Pが通過する際に、熱および圧力の作用により、用紙Pに担持されたトナー像を定着させ、用紙P上に良好なカラー画像を形成する。定着部6を通過した定着済みの用紙Pは、排紙部7から画像形成部4の外へ排紙される。なお、排紙部7に切替爪と両面ユニットとを設け、切替爪の態様に応じて用紙Pを両面ユニットに進入させて両面画像形成に備えることとしてもよい。
【0025】
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。次に、図2を参照して、本実施の形態にかかる画像形成装置100のハードウェア構成の一例について説明する。
【0026】
図2に示すように、画像形成装置100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、補助記憶装置103と、ネットワークI/F104と、プリンタエンジンI/F106と、画像形成部4と、スキャナ27と、を備えている。このうち、CPU101、メモリ102、補助記憶装置103、ネットワークI/F104、プリンタエンジンI/F106およびスキャナI/F108は、互いにデータ通信可能にバス109によって接続されている。
【0027】
CPU101は、画像形成装置100の動作を総括的に制御する演算装置である。メモリ102は、ファームウェア等のプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPU101の演算処理時のワークエリア(作業領域)として使用されるRAM(Random Access Memory)とを有している。
【0028】
補助記憶装置103は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはフラッシュメモリ等の記憶装置であり、OS(Operating System)、各種プログラム、原稿データおよびカラープロファイル等を記憶する。
【0029】
ネットワークI/F104は、外部のネットワーク(LAN(Local Area Network)またはインターネット等)と接続するためのインターフェースである。ネットワークI/F104は、例えば、Ethernet(登録商標)に対応し、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)の通信規格に対応している。画像形成装置100は、ネットワークI/F104を介して、外部の装置(PC200およびサーバ201等)とデータ通信を行うことができる。
【0030】
プリンタエンジンI/F106は、電子写真方式により画像を形成して原稿データの印刷を実行する画像形成部4と通信可能に接続するためのインターフェースである。画像形成部4については、図1で上述した通りである。
【0031】
スキャナI/F108は、測定センサ45を備えるスキャナ27と通信可能に接続するためのインターフェースである。スキャナ27は、測定センサ45の機能により用紙Pの画像を読み取る装置である。測定センサ45については、図1で上述した通りである。
【0032】
図3は、本実施の形態にかかる画像形成装置の機能ブロックの概略構成の一例を示す図である。次に、図3を参照して、本実施の形態にかかる画像形成装置100の機能ブロックの概略構成の一例について説明する。
【0033】
図3に示すように、画像形成装置100は、ネットワーク500を介して、PC(Personal Computer)200およびサーバ201と通信可能となっている。図3に示すように、画像形成装置100は、画像処理部30と、画像形成ユニット35と、を備えている。
【0034】
画像処理部30は、PC200からネットワーク500を介して受信した原稿データを、画像形成部4で印刷可能な形式に画像処理を行う機能部である。そして、画像処理部30は、画像処理を行った原稿データを、画像形成部4の基本色で構成された画素配列(ビットマップデータ、または、それと等価な圧縮形式)に変換して、画像形成ユニット35の階調処理部31に送る。なお、原稿データは、RGBまたはCMYKでカラー指定されたビットマップデータ、テキストデータ、図形の描画命令等を含んだデータフォーマットで表現されている。
【0035】
画像処理部30は、画像形成ユニット35とは別体の、例えば、PC上のソフトウェアおよび拡張ボードで構成されており、画像形成ユニット35に対して交換可能な構成となっている。なお、画像処理部30は、画像形成ユニット35と通信可能であれば、画像形成装置100とは別体の端末上に設けられてもよく、ネットワーク500を介したPC200またはサーバ201上に設けられてもよく、画像形成ユニット35と一体型の構成であってもよい。
【0036】
画像形成ユニット35は、階調処理部31と、色調制御部32と、画像検査部33(測色部)と、エンジン制御部39と、画像形成部4と、を含む。なお、画像形成部4の機能については、上述した通りである。
【0037】
階調処理部31は、画像処理部30が画像処理を行った画像情報を、画像形成部4が受け取り可能な形式の画像データに変換する機能部である。階調処理部31の動作の詳細は後述する。
【0038】
色調制御部32は、画像検査部33により検出された画像情報からカラー画像の色調変動(濃度変動等)を検出して、階調処理部31に対して階調補正値を与える機能部である。色調制御部32の動作の詳細は後述する。
【0039】
画像検査部33は、画像形成部4により印刷出力された用紙Pから、スキャナ27によってインライン形式によりカラー画像を検出する(読み込む)機能部である。具体的には、画像検査部33が含むスキャナ27の測定センサ45は、画像形成部4が形成したカラー画像に対して光を照射して、その反射光を受光することによって、カラー画像の反射率を2次元的に面で測定してカラー画像として検出する。すなわち、カラー画像を検出するということは、カラー画像を構成する色を測色していることになる。そして、画像検査部33は、検出されたカラー画像の色調変動(濃度変動等)を検出する。画像検査部33の動作の詳細は後述する。
【0040】
エンジン制御部39は、画像形成部4の画像形成動作の制御を行う機能部である。
【0041】
画像処理部30、階調処理部31、色調制御部32、および画像検査部33(スキャナ27を除く)は、それぞれ、CPU101がメモリ102に展開したプログラムを実行することによって実現される。画像処理部30、階調処理部31、色調制御部32、および画像検査部33(スキャナ27を除く)の一部または全部は、ソフトウェアであるプログラムではなく、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0042】
図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置の機能ブロックの詳細構成の一例を示す図である。次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる画像形成装置100の機能ブロックの詳細構成の一例について説明する。
【0043】
画像処理部30は、原稿色-Lab変換部310と、Lab-CMYK変換部311と、ユーザ階調変換部312と、記憶部302と、を有する。
【0044】
原稿色-Lab変換部310は、PC200等から受信したCMYK形式等で記載された原稿データQを、デバイスに依存しないLab形式の表色値であるdоcLab値に変換する。Lab-CMYK変換部311は、dоcLab値を、画像形成部4の基本色のCMYKの階調値prnCMYKに変換する。ユーザ階調変換部312は、カラープロファイルDB202に記憶されるカラープロファイルに基づいて、階調値prnCMYKを補正する。記憶部302は、ハードディスクドライブ等であり、ユーザ階調変換部312により補正された階調値prnCMYK(画像データR)等を、一時的に、または画像形成を行う間、継続的に、記憶する。
【0045】
階調処理部31は、階調補正部316、および階調変換部317を有する。階調補正部316は、画像データRの階調特性を基本色毎に補正する階調補正値ΔCT=(ΔC(c),ΔM(m),ΔY(y),ΔK(k))を用いて、画像形成部4が出力するためのカラー画像を補正する。言い換えれば、階調補正部316は、画像形成装置100(画像形成部4)の階調特性変動を補正する階調補正値ΔCTに基づいて、当該階調特性変動を補正する補正部の一例である。ここで、ΔC(c)は、シアン(C)の階調値cに対する補正量を示す。
【0046】
階調変換部317は、階調補正部316により補正された階調値prnCMYKを、画像形成部4で表現可能な形式に変換する。画像形成部4は、階調変換部317により変換されたCMYKデータ(画像データR)に基づいて複数の基本色を混色して用紙P上にカラー画像を形成する。
【0047】
画像検査部33は、スキャナ色-Lab変換部318を有する。スキャナ色-Lab変換部318は、スキャナ27により測定されるカラー画像の計測値mesColを、Lab形式の測色値mesLabに変換する。すなわち、画像検査部33は、用紙P上に形成されたカラー画像の少なくとも一部の画像領域の色を測色して測色値mesLabを取得する測色部の一例として機能する。
【0048】
色調制御部32は、測色予測部34と、色調補正量決定部319と、を有する。測色予測部34は、画像処理部30から入力された階調値prnCMYK(画像データR)に基づいて、画像形成部4で形成されるカラー画像の階調を予測して出力する。本実施の形態では、測色予測部34は、CMYK-Lab変換部313と、スキャナ補正部325と、スキャナ色-Lab変換部315と、を有する。
【0049】
CMYK-Lab変換部313は、画像処理部30から出力される階調値prnCMYKを、再び、CMYK形式から、Lab形式のLab値prnLabに変換する。
【0050】
スキャナ補正部325は、予め与えられた測定センサ45の読取誤差に基づいて、CMYK-Lab変換部313により変換されたLab値prnLabを補正して、スキャナ読取予測値scnColを求める。スキャナ色-Lab変換部315は、スキャナ補正部325により補正されたスキャナ読取予測値scnColを、再度、デバイスに依存しないLab値である目標値targetLabに変換する。
【0051】
色調補正量決定部319は、反射特性と、画像データ配列と、に基づいて補正配列を合成して、基本色毎の階調補正値ΔCTを生成する。
【0052】
このような構成の画像形成装置100を用いて画像の形成を行うときには、まず、図1に示すように、ネットワーク上のPC200やサーバ201から印刷要求と共に原稿データQが送付される。原稿データQは、RGBまたはCMYK等によってカラー指定されたビットマップ、テキスト、図形の描画命令を含んだ複雑なデータフォーマットである。
【0053】
画像処理部30は、受け取った原稿データQを展開し、画像形成部4が有するシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の基本色で構成される画素配列、例えば各画素の色情報を格子状に並べたビットマップデータとして階調処理部31に送信する。階調処理部31は、ビットマップデータが含む画素をさらに画像形成部4で表現可能な階調数に変換し、画像データ配列たる画像データRとして画像形成部4に送信する。
【0054】
画像形成部4は、階調処理部31から受け取った画像データRに基づいて、用紙P上にカラー画像を形成する。画像検査部33は、測定センサ45により検知したカラー画像の反射特性を用いて、後述するように用紙P上のカラー画像をスキャンする。色調制御部32は、後述する階調補正操作により、目標となる再現色と、出力された画像の発色とのずれが最小となるように、エンジン制御部39や階調処理部31に与える階調補正量ΔCTを補正することで、用紙Pに出力されるカラー画像の発色を安定させる。
【0055】
階調補正についてのより詳細な処理を説明する。以下の説明において、色調制御部32が扱う形式をLab(CIELab)形式とし、原稿データQのCMYK形式の色データをLab形式に変換しているが、Lab形式に限定されるものではなく、色変化量を明確にできればどのような色表現形式を用いても良い。
【0056】
また、原稿色-Lab変換部310、Lab-CMYK変換部311、CMYK-Lab変換部313、スキャナ色-Lab変換部315、318、Lab-スキャナ色変換部314は、それぞれの色空間変換のために、カラープロファイルと呼ばれる基礎データを必要とする。これらのカラープロファイルのうち、原稿色からLab値への変換に必要なカラープロファイルは、原稿データQに添付されているか予め用意されているものが使用される。また、スキャナ色-Lab変換部315、318とLab-スキャナ色変換部314とに必要なカラープロファイルは、色調制御部32と画像検査部33とにそれぞれ予め設定されている。
【0057】
Lab-CMYK変換部311、CMYK-Lab変換部313に必要なカラープロファイルは、用紙Pの種類によって色再現特性に影響が出るために、サーバ201に予め保存された複数のカラープロファイルから用紙Pの種類に合った適切なカラープロファイルを選択して設定することが望ましい。このような用紙Pの種類によるカラープロファイルの変更は、ユーザが任意で行っても良いし、画像処理部30が入力された原稿データQに合った用紙Pの選択に合わせ自動で行っても良い。このようなカラープロファイルとしては、例えばICC(International Color Consortium)の定めるICCプロファイルを用いても良い。
【0058】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置の画像処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、図5を参照して、本実施の形態にかかる画像形成装置100の画像処理の流れの一例について説明する。
【0059】
画像処理部30の原稿色-Lab変換部310は、画像処理部30に入力されるRGB形式やCMYK形式等で記述された原稿データQを、デバイスに依存しないLab形式の表色値であるdocLab値に変換する(ステップS100)。
【0060】
Lab-CMYK変換部311は、docLab値を画像形成部4の基本色CMYKの各色をそれぞれ8bitの整数の階調値prnCMYKに変換する(ステップS101)。
【0061】
ユーザ階調変換部312は、対応するカラープロファイルに基づいて、階調値prnCMYKを補正して、画像データRとして出力する(ステップS102)。ユーザ階調変換部312は、初期状態においては、階調値prnCMYKを変更せずにそのまま画像データRとして出力する。Lab-CMYK変換部311、ユーザ階調変換部312、およびCMYK-Lab変換部313による処理は、ベクトルデータおよびフォント展開と同時に行われ、結果として出力される階調値prnCMYKは、基本色であるCMYKのビットマップデータとして出力される。出力されたビットマップデータ(階調値prnCMYK)は、印刷原稿単位で、記憶部302に保存される。
【0062】
階調補正部316は、階調補正値ΔCTに基づいて、画像形成装置100の階調特性変動を補正する(ステップS103)。例えば、階調補正部316は、基本色CMYKそれぞれの階調補正曲線を備え、階調補正値ΔCTおよび階調補正曲線を用いて、記憶部302から読み込んだ階調値prnCMYKが示す各基本色の階調を補正する(ステップS103)。
【0063】
階調変換部317は、階調補正部316により補正される基本色毎の8ビットのカラー値(階調値prnCMYK)を、画像形成部4が表現可能な階調数に合うように、面積階調法や誤差拡散法を用いて変換する(ステップS104)。
【0064】
画像形成部4は、階調変換部317により変換された階調値prnCMYKに基づいて、用紙Pにトナー像(カラー画像)を形成する(ステップS105)。
【0065】
画像形成部4によって用紙Pに形成されたトナー像は、転写部5によって用紙P上に転写された後、スキャナ27によって、測定センサ45の測定したトナー像(カラー画像)の反射特性を用いてスキャンされる。
【0066】
画像検査部33は、スキャナ27によってスキャンされたカラー画像を計測値mesColとしてスキャナ色-Lab変換部318に入力する。スキャナ色-Lab変換部318は、入力された計測値mesColをLab形式の測色値mesLabに変換する(ステップS106)。
【0067】
色調補正量決定部319は、記憶部302に蓄積されたビットマップデータから、予め必要な部分の階調値prnCMYKをページバッファに読み込む(ステップS107)。
【0068】
一方、色調制御部32の測色予測部34のCMYK-Lab変換部313は、画像処理部30から出力される階調値prnCMYKを、再び、CMYK形式からLab形式のLab値prnLab(出力予測値)に変換する(ステップS108)。
【0069】
このときの、色調制御部32によって得られた出力予測値prnLabは、出力される画像データRの再現色をLab値としてシミュレートした値である。出力予測値prnLabは、測定センサ45に固有の読取誤差を含まないため、出力予測値prnLabをそのまま補正に用いると、測定センサ45の読取誤差を含んだ状態で補正される。例えば、測定センサ45が読み取り可能な色域が画像形成部4の出力可能な色域よりも範囲が小さいような場合には、測定センサ45による色域の圧縮が生じるため、出力予測値prnLabが測定センサ45のスキャンした計測値mesColと大きく異なるおそれがある。
【0070】
そのため、スキャナ補正部325は、出力予測値prnLabを、予め与えられた測定センサ45の読取誤差に基づいて補正することでスキャナ読取予測値scnColを算出する(ステップS109)。このようなスキャナ補正部325を有することで、測定センサ45が読み取り可能な色域が画像形成部4の出力可能な色域より範囲が小さい場合にも、精度良く色の読取値の予測が行われる。
【0071】
測色予測部34のスキャナ色-Lab変換部315は、スキャナ補正部325により補正されたスキャナ読取予測値scnColが入力されると、デバイスに依存しないLab値である目標値targetLabに変換する(ステップS110)。測色予測部34は、このように予め印刷されるべき印刷領域全体について目標値targetLabを算出した結果を記憶部302に保存しておく。
【0072】
色調補正量決定部319は、これら印刷領域に対する目標値targetLabと、測色値mesLabと、階調値prnCMYKと、に基づいて、階調補正曲線(TRC:Tone Reproduction Curve)の補正を行うための基本色毎の階調補正値ΔCT=(Δc,Δm,Δy,Δk)を決定(生成)する。全ての測色領域において、測色値mesLabおよび目標値targetLabの抽出が終了していない場合(ステップS111:No)、ステップS107へ戻り、終了している場合(ステップS111:Yes)、画像処理を終了する。
【0073】
ここで、色調補正量決定部319による階調補正値ΔCTを決定(生成)方法について説明する。
【0074】
まず、階調補正値ΔCTの生成処理に先立って、色調補正量決定部319は、各ページの印刷領域から、色の測定(測色)に適した色の変化の少ない複数の数mm四方程度の測色領域(xi,yi)(i=1,・・・,N)を抽出して、当該測色領域(xi,yi)の測色値mesLabを得る。ここでは、測色領域を、その中心座標(xi,yi)で表すものとしている。なお、ここでの座標(x,y)について、画像形成装置100で用紙Pが搬送される紙送り方向を、所謂、副走査方向であるy方向とし、副走査方向と直行する方向(主走査方向)をx方向として説明している。測色領域(xi,yi)の抽出方法は、例えば、5mm角程度の任意の領域から、400dpiで41×41画素の領域を選択し、抽出する方法が利用できる。
【0075】
色調補正量決定部319は、測色領域(xi,yi)について、単ページもしくは連続する数ページからN個の測色領域(xi,yi)を抽出し、用紙Pに画像形成されたカラー画像(またはカラー画像の少なくとも一部の画像領域)の副走査方向を複数に区切った副走査画素領域(y)(分割領域の一例)毎かつ階調範囲別に、測色値mesLabの平均値である測色平均値を算出する。ここで、階調範囲とは、複数の変化モードの数に応じて区分された階調範囲である。例えば、変化モードの数をd=3とした場合、階調範囲は、ハイライト:H(低濃度)、ミドル:M(中濃度)、およびシャドウ:S(高濃度)の3つの階調範囲に区分される。
【0076】
そして、色調補正量決定部319は、測色値mesLab(例えば、測色平均値)に基づいて、副走査画素領域(y)毎かつ変化モード数d(=3)に応じた階調範囲別に、画像形成装置100(画像形成部4)の階調特性変動を補正する第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を算出する。ここで、色調補正量決定部319による第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の算出には、特開2017-204786号公報等に開示されている算出方法を適用できる。
【0077】
次いで、色調補正量決定部319は、副走査画素領域(y)毎かつ階調範囲別に算出される第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y)のうち、測色値mesLabの階調範囲の傾向(特徴)が同じ副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y)に基づいて、階調補正値ΔCTの算出(生成)に用いる係数である第2モードパラメータ(mp(H,M,S)を算出する。そして、色調補正量決定部319は、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))に基づいて、階調補正値ΔCTを生成(算出)する。
【0078】
図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置による測色領域の階調範囲の区分処理の一例を説明するための図である。次に、図6を参照して、本実施の形態にかかる画像形成装置100による測色領域(xi,yi)の階調範囲の区分処理の一例について説明する。
【0079】
ユーザからの命令に応じて用紙Pに印刷されたカラー画像600がスキャナ27によって読み取られると、色調補正量決定部319は、図6に示すように、カラー画像600の印刷領域から、色の測色に適した色の変化が少ない複数の測色領域(xi,yi)を抽出する。また、色調補正量決定部319は、図6に示すように、測色領域(xi,yi)の階調範囲を、3つの変化モードに応じて、ハイライト:H(低濃度)、ミドル:M(中濃度)、シャドウ:S(高濃度)に区分する。
【0080】
図6においては、1つの測色領域(xi,yi)の大きさを、大き目に表しているが、カラー画像600の解像度が400dpiである場合、測色領域(xi,yi)の大きさは、上述したように、41×41画素程度の大きさであることが好ましい。
【0081】
図7は、本実施の形態にかかる画像形成装置による第1モードパラメータの算出処理の一例を説明するための図である。次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる画像形成装置100による第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の算出処理の一例について説明する。
【0082】
色調補正量決定部319は、図7に示すように、カラー画像600(またはカラー画像600の少なくとも一部の画像領域)の副走査方向を、破線で示す複数の副走査画素領域(y)に区分けする。図7に示すカラー画像600の上部に描かれた数字は、副走査画素領域(y)を区別するための領域番号を表している。そして、各副走査画素領域(y)内に描かれたH,M,Sは、当該副走査画素領域(y)内の測色領域(xi,yi)の階調範囲を表している。
【0083】
色調補正量決定部319は、副走査画素領域(y)内の階調範囲別の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて、副走査画素領域(y)毎かつ階調範囲別に、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を算出する。図7に示すカラー画像600の下部に描かれた第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))において、mpθ(H,M,S)は副走査画素領域(y)内の測色領域(xi,yi)の階調範囲H,M,Sを表し、(y)は副走査画素領域(y)の領域番号を表す。
【0084】
図7においては、説明の便宜上、副走査画素領域(y)の副走査方向の幅を大き目に表しているが、例えば、用紙PがA4サイズでありかつ用紙Pの短手方向を副走査方向とした場合、副走査方向の用紙Pの長さが約210mmとなり、カラー画像600の解像度が400dpiである場合、画素数は、約3307画素となる。そして、カラー画像600の副走査方向を10分割した場合、1つの副走査画素領域(y)の幅は、約330画素となる。
【0085】
ところで、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))は、副走査画素領域(y)内の階調範囲別の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて算出される。そのため、副走査画素領域(y)内のH,M,Sの階調範囲の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて算出される第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))と、副走査画素領域(y)内のH,Mの階調範囲の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて算出される第1モードパラメータ(mpθ(H,M)_(y))とでは、Sの階調範囲の第1モードパラメータ(mpθ(S)_(y))に差異が発生する。
【0086】
すなわち、H,Mの階調範囲の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を算出する場合、Sの階調範囲の第1モードパラメータ(mpθ(S)_(y))は、H,Mの階調範囲の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて算出される。一方、Sの階調範囲の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を算出する場合、Sの階調範囲の第1モードパラメータ(mpθ(S)_(y))は、Sの階調範囲の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて算出される。
【0087】
そのため、副走査画素領域(y)がSの階調範囲の測色領域(xi,yi)を有するか否かによって、第1モードパラメータ(mpθ(S)_(y)の算出精度に差異が生じる。これにより、階調範囲毎の測色値mesLabが互いに異なる副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出すると、当該第2モードパラメータ(mp(H,M,S))に生じる誤差が大きくなる。
【0088】
そこで、本実施の形態では、色調補正量決定部319は、各副走査画素領域(y)について算出される第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))のうち、副走査画素領域(y)の測色領域(xi,yi)(言い換えると、測色値mesLab)の階調範囲の傾向(特徴)が同じ副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する。例えば、色調補正量決定部319は、測色値mesLabの階調範囲の傾向(特徴)が同じ副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y)を平均化して第2モードパラメータ(mp(H,M,S)を算出する。ここで、測色値mesLabの階調範囲の傾向(特徴)が同じとは、副走査画素領域(y)の測色領域(xi,yi)の値が同じである、又は、値の差が所定の範囲内であることを含む。これにより、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))に含まれる誤差を小さくして、画像形成装置100の階調特性変動の推定精度を低下させることなく、全範囲の階調特性変動を適正に補正し、再現色を安定させることができる。
【0089】
図8は、本実施の形態にかかる画像形成装置による第2モードパラメータの算出処理の一例を説明するための図である。次に、図8を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置100による第2モードパラメータ(mp(H,M,S))の算出処理の一例について説明する。
【0090】
図8では、2ページ分のカラー画像600の各副走査画素領域(y)内の測色領域(xi,yi)の階調範囲、および各副走査画素領域(y)内の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabに基づいて算出される第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を表している。
【0091】
色調補正量決定部319は、2ページ分のカラー画像600に含まれる各副走査画素領域(y)について算出される第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))のうち、複数の階調範囲の一例であるH,M,Sの測色領域(xi,yi)(言い換えると、測色値mesLab)が全て揃う副走査画素領域(1,2,7,13,17,18)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(1,2,7,13、17,18))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する。
【0092】
これにより、誤差が小さい第2モードパラメータ(mp(H,M,S))に基づいて、カラー画像600の階調特性変動を小さい誤差で推定できるので、カラー画像600の階調特性変動の推定精度を低下させることなく、カラー画像600の全範囲の階調特性変動を適正に補正することができ、再現色が安定した、階調特性変動の補正が可能となる。
【0093】
図8に示す例では、色調補正量決定部319は、第1モードパラメータ(第1パラメータの一例)(mpθ(H,M,S)_(y))のうち、複数の階調範囲の一例であるH,M,Sの測色領域(xi,yi)が全て揃う副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(第2パラメータの一例)(mp(H,M,S))を算出しているが、階調範囲の傾向が同じ測色領域(xi,yi)を含む副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出するものであれば、これに限定するものではない。
【0094】
図9は、本実施の形態にかかる画像形成装置による第2モードパラメータの算出処理の他の例を説明するための図である。次に、図9を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置100による第2モードパラメータ(mp(H,M,S))の算出処理の他の例について説明する。
【0095】
図9は、複数の階調範囲の一例であるH,M,Sの測色領域(xi,yi)が全て揃う副走査画素領域(y)が存在しない2ページ分のカラー画像600の副走査画素領域(y)内の測色領域(xi,yi)の階調範囲、および各副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を表している。
【0096】
色調補正量決定部319は、最も多い階調範囲の組合せの測色領域(xi,yi)(言い換えると、測色値mesLab)が揃う副走査画素領域(2,5,7,8,9,15,17,18)を特定する。そして、色調補正量決定部319は、特定した副走査画素領域(2,5,7,8,9,15,17,18)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(2,5,7,8,9,15,17,18))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する。
【0097】
複数の階調範囲の一例であるH,M,Sの測色領域(xi,yi)が全て揃う副走査画素領域(y)がカラー画像600内に存在しない場合でも、カラー画像600内において、最も多い階調範囲の組合せの測色領域(xi,yi)が揃う副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出することで、誤差のバラつきが最小限に抑えられた第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出することができる。その結果、カラー画像600の階調特性変動の推定精度を低下させることなく、カラー画像600の全範囲の階調特性変動を適正に補正することができ、再現色が安定した、階調特性変動の補正が可能となる。
【0098】
図10は、本実施の形態にかかる画像形成装置における第2モードパラメータの算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、図10を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置100における第2モードパラメータ(mp(H,M,S))の算出処理の流れの一例について説明する。
【0099】
色調補正量決定部319は、まず、用紙Pに印刷されたカラー画像(対象画像)の副走査方向を、任意の幅の副走査画素領域(y)(分割領域の一例)に区分け(分割)する(ステップS200)。次いで、色調補正量決定部319は、各副走査画素領域(y)内の測色領域(xi,yi)の測色値mesLabであるサンプル(測色値mesLab)を取得し、取得したサンプルの階調範囲の傾向を抽出する(ステップS201)。
【0100】
次に、色調補正量決定部319は、取得したサンプルに基づいて、副走査画素領域(y)毎かつ階調範囲別に、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を算出する(ステップS202)。そして、色調補正量決定部319は、全ての副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の算出が完了したか否かを判断する(ステップS203)。全ての副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の算出が完了していない場合(ステップS203:No)、ステップS201に戻る。
【0101】
一方、全ての副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の算出が完了した場合(ステップS203:Yes)、色調補正量決定部319は、副走査画素領域(y)毎かつ階調範囲別の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を算出したカラー画像が最初の制御セットであるか否かを判断する(ステップS204)。
【0102】
当該カラー画像が最初の制御セットである場合(ステップS204:Yes)、色調補正量決定部319は、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))のうち、最も多い階調範囲の組合せの測色領域(xi,yi)が揃う副走査画像領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を抽出する(ステップS205)。一方、当該カラー画像が最初の制御セットではない場合(ステップS204:No)、色調補正量決定部319は、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))のうち、最初の制御セットにおいて第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を抽出した副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を抽出する(ステップS206)。すなわち、色調補正量決定部319は、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))のうち、最初の階調特性変動の補正の際と同じ階調範囲の傾向を有する副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を抽出する。
【0103】
次いで、色調補正量決定部319は、抽出した第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する(ステップS207)。その後、色調補正量決定部319は、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))に基づいて、階調補正値ΔCTを生成(算出)する。そして、階調補正部316は、階調補正値ΔCTに基づいて、画像形成装置100の階調特性変動を補正する。
【0104】
図11は、本実施の形態にかかる画像形成装置における第2モードパラメータの算出処理の他の例を説明するための図である。次に、本実施の形態にかかる画像形成装置100における第2モードパラメータ(mp(H,M,S))の算出処理の他の例について説明する。
【0105】
図11に示すように、カラー画像600の各副走査画素領域(y)の測色領域(xi,yi)の階調範囲の組合せの傾向が比較的同じであり、かつ、副走査方向で生じる副走査画素領域(y)の濃度が周期的に変動する場合、色調補正量決定部319は、カラー画像600の副走査方向で生じる濃度の変動のP周期(Pは、1以上の整数)+0.5周期の距離離れた副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出することも可能である。すなわち、色調補正量決定部319は、測色領域(xi,yi)の階調範囲の傾向が同じ副走査画素領域(y)が多い場合(例えば、測色領域(xi,yi)の階調範囲の傾向が同じ副走査画素領域(y)の数が予め設定される数以上である場合)、カラー画像600の濃度の変動の周期成分を相殺する副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する。
【0106】
図11は、ユーザの命令に基づいて連続して印刷された2ページ分のカラー画像600を表している。そして、図11において、カラー画像600内の破線は、隣接する副走査画素領域(y)の境界を表し、カラー画像600の上部に描かれた数字は、副走査画素領域(y)を区別するための領域番号を表している。また、図11において、各副走査画素領域(y)内に描かれたH,M,Sは、当該副走査画素領域(y)内の測色領域(xi,yi)の階調範囲を表している。また、図11に表していないが、色調補正量決定部319は、副走査画素領域(y)毎に、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を算出しているものとする。
【0107】
カラー画像600の副走査方向の濃度は、図11に示すように、複数(例えば、2つ)の周期成分に従って変動する。図11においては、便宜上、カラー画像600の副走査方向の濃度の変動を2つの周期成分を分けて表しているが、実際には、これらの2つの周期成分が合成された状態で、カラー画像600において濃度の変動が現れる。
【0108】
したがって、各副走査画素領域(y)内の測色領域(xi,yi)の階調範囲の組合せが同一となる副走査画素領域(y)は、2つの周期成分のP周期+0.5周期分の距離(すなわち、カラー画像600のページ間の距離と、カラー画像600の副走査方向の長さとを合わせた距離)離れた副走査画素領域(y)となる。したがって、色調補正量決定部319は、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))のうち、P周期+0.5周期分の距離離れた副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する。
【0109】
例えば、図11に示す例では、色調補正量決定部319は、P周期+0.5周期分の距離離れた△印および☆印で示す副走査画素領域(1,3,5,12,14,16)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(1,3,5,12,14,16))の組合せ、P周期+0.5周期分離れた黒の△印および★印で示す副走査画素領域(2,4,6,13,15,17)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(2,4,6,13,15,17))の組合せ、およびP周期+0.5周期分離れた〇印および◇印で示す副走査画素領域(8,9,19,20)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(8,9,19,20))の組合せを特定する。そして、色調補正量決定部319は、組合せ毎に、当該組合せに含まれる第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する。
【0110】
連続してカラー画像600が印刷される用紙P間の距離は、常に同じになるとは限らない。よって、色調補正量決定部319は、測色センサ45等によって各ページのカラー画像600を測色する際のタイミング信号等に基づいて、用紙P間の距離を推定しても良い。
【0111】
また、2ページ分のカラー画像600間において、階調範囲の組合せが同じ副走査画素領域(y)が存在しない場合、色調補正量決定部319は、3ページ以上のカラー画像600の副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))から、測色領域(xi,yi)の階調範囲の傾向が同じ副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出することも可能である。
【0112】
ただし、測色領域(xi,yi)の階調範囲の傾向が同じ副走査画素領域(y)を探すカラー画像600のページ数が増えると、測色値(xi,yi)に基づいて推定される、カラー画像600の副走査方向の濃度の変動量(ドリフト量)が、過剰に評価される場合がある。そのため、色調補正量決定部319は、連続する2ページ分のカラー画像600間において、階調範囲の組合せの傾向が同じ副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出することが好ましい。
【0113】
また、仮に、1ページ目のカラー画像600と、2ページ目のカラー画像600との間において、階調範囲の組合せの傾向が同じ副走査画素領域(y)が存在しない場合、色調補正量決定部319は、1ページ目のカラー画像600の副走査画素領域(r)について算出された第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を破棄し、2ページ目のカラー画像600と、3ページ目のカラー画像600との間において、階調範囲の傾向が同じ副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出しても良い。
【0114】
また、図11に示す例では、色調補正量決定部319は、カラー画像600の副走査方向における濃度の変動の2つの周期成分を合成したP周期+0.5周期分の距離離れた副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出しているが、カラー画像600の副走査方向における濃度の変動が3つ以上の周期成分を有する場合、3つ以上の周期成分を合成したP周期+0.5周期分の距離離れた副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出しても良い。
【0115】
ただし、カラー画像600の副走査方向における濃度の変動の多数(3つ以上)の周期成分を合成した場合、多数の周期成分のうち、いずれかの周期成分を相殺する副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))が存在しない等、全ての周期成分について、濃度変動の周期成分を相殺する副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を抽出することができなくなる場合がある。この場合、色調補正量決定部319は、複数のページにカラー画像600を印刷する間に、階調補正値ΔCTを算出することができず、カラー画像600の階調特性変動の推定精度が低下する。
【0116】
よって、色調補正量決定部319は、カラー画像600の副走査方向における濃度の変動の2~3つの周期成分を予め抽出しておき、当該2~3つの周期成分を合成したP周期+0.5周期分の距離離れた副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出することが好ましい。
【0117】
図12は、本実施の形態にかかる画像形成装置により印刷されるカラー画像の濃度の変動の一例を説明するための図である。図12において、縦軸は、用紙Pに印刷されるカラー画像の濃度を表し、横軸は、連続して印刷される5ページ分のカラー画像の副走査方向の位置を表す。
【0118】
図12に示すように、用紙Pに印刷されるカラー画像の副走査方向の濃度の変動は、数ページにまたがる緩やかな濃度のドリフト(破線で示す)上に、カラー画像の周期的な濃度の変動(実線で示す)が重畳されたランダムな変動となる。このような数cm~数十cmの周期的な濃度の変動は、しばしば、画像形成部4における感光体40や現像ローラの回転に同期して発生する。
【0119】
すなわち、カラー画像の濃度の変動の周期(▽印で示す)と、カラー画像を測色するサンプリング周期(●印で示す)とは、微妙にずれる。●印で示すサンプリング周期での測色値mesLabに基づいて推定される濃度のドリフトが、カラー画像の濃度の実際のドリフトよりも過剰に評価され、カラー画像の階調特性変動の推定精度が低下する可能性がある。そのため、色調補正量決定部319は、カラー画像の濃度変動の周期成分を相殺する副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する。
【0120】
図13は、本実施の形態にかかる画像形成装置における第2モードパラメータの算出処理の流れの他の例を示すフローチャートである。次に、図13を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置100における第2モードパラメータ(mp(H,M,S))の算出処理の流れの他の例について説明する。
【0121】
まず、色調補正量決定部319は、用紙Pに印刷されたカラー画像の副走査方向を区分けした各副走査画素領域(y)の測色領域(xi,yi)のサンプル(測色値mesLab)を取得する(ステップS300)。次いで、色調補正量決定部319は、取得したサンプルに基づいて、各副走査画素領域(y)の階調範囲別の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を算出する(ステップS301)。
【0122】
副走査画素領域(y)の階調範囲別の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))が算出する度に、色調補正量決定部319は、全ての副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の算出が完了したか否かを判断する(ステップS302)。全ての副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の算出が完了していない場合(ステップS302:No)、ステップS300に戻る。
【0123】
一方、全ての副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の算出が完了した場合(ステップS302:Yes)、色調補正量決定部319は、副走査画素領域(0)を基準としてP周期+0.5周期分の距離(指定周期距離)と一致する距離離れ、かつ測色値mesLabの階調範囲の傾向が同じ副走査画素領域(y)の第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))を抽出する(ステップS303)。副走査画素領域(0)を基準とした第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の抽出後、色調補正量決定部319は、2番目以降の副走査画素領域(y)についても同様にして、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の抽出を行う。
【0124】
ただし、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))の算出に用いるカラー画像が1ページのみである場合、色調補正量決定部319は、カラー画像の濃度の変動の周期成分のうち最も大きい周期成分に対して、残り0.5周期の副走査画素領域(y)まで第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の抽出を行う。また、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))の算出に用いるカラー画像が2ページである場合、色調補正量決定部319は、最初のページの最後の副走査画素領域(y)まで、第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の抽出を行う。
【0125】
第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))の抽出が完了すると(ステップS304:Yes)、色調補正量決定部319は、抽出した全ての第1モードパラメータ(mpθ(H,M,S)_(y))に基づいて、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))を算出する(ステップS305)。その後、色調補正量決定部319は、算出した第2モードパラメータ(mp(H,M,S))に基づいて、階調補正値ΔCTを算出する。次いで、色調補正量決定部319は、算出した階調補正量ΔCTを、エンジン制御部39や階調処理部31に与えることにより、カラー画像の階調特性変動が補正され、用紙Pに形成されるカラー画像の発色を安定させる。
【0126】
このように、本実施の形態にかかる画像形成装置100によれば、第2モードパラメータ(mp(H,M,S))に含まれる誤差を小さくして、画像形成装置100の階調特性変動の推定精度を低下させることなく、全範囲の階調特性変動を適正に補正し、再現色を安定させることができる。
【0127】
なお、本実施の形態の画像形成装置1000で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0128】
さらに、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0129】
本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムは、上述した各部(画像処理部30、階調処理部31、色調制御部32、および画像検査部33(スキャナ27を除く))を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU101(プロセッサの一例)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、画像処理部30、階調処理部31、色調制御部32、および画像検査部33(スキャナ27を除く)が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0130】
4 画像形成部
27 スキャナ
30 画像処理部
31 階調処理部
32 色調制御部
33 画像検査部
34 測色予測部
35 画像形成ユニット
39 エンジン制御部
45 測定センサ
100 画像形成装置
101 CPU
102 メモリ
103 補助記憶装置
104 ネットワークI/F
106 プリンタエンジンI/F
108 スキャナI/F
202 カラープロファイルDB
302 記憶部
310 原稿色-Lab変換部
311 Lab-CMYK変換部
312 ユーザ階調変換部
313 CMYK-Lab変換部
315,318 スキャナ色-Lab変換部
316 階調補正部
317 階調変換部
319 色調補正量決定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0131】
【文献】特開2020-010182号公報
図1
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