(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】液晶組成物及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/42 20060101AFI20240611BHJP
C09K 19/02 20060101ALI20240611BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20240611BHJP
C09K 19/18 20060101ALI20240611BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20240611BHJP
C09K 19/14 20060101ALI20240611BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20240611BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20240611BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20240611BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C09K19/42
C09K19/02
C09K19/20
C09K19/18
C09K19/12
C09K19/14
C09K19/30
C09K19/34
C09K19/32
G02F1/13 500
(21)【出願番号】P 2020114755
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019128436
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和則
(72)【発明者】
【氏名】野中 祐貴
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-1704(JP,A)
【文献】特開2015-1705(JP,A)
【文献】特許第5822543(JP,B1)
【文献】特表2016-523816(JP,A)
【文献】特表2015-535873(JP,A)
【文献】特開2014-58671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00-19/60
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電的に正の第一成分、誘電的に中性の第二成分、キラルピッチ長の温度依存性が互いに異なる少なくとも二種の光学活性物質を含有する第三成分を含有し、第一成分として一般式(1-1)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第一成分として一般式(1-2)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第二成分として一般式(2-1)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、正の誘電率異方性を有するコレステリック液晶組成物。
【化1】
(R
1及びR
2は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、環Aは1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表し、Y
1~Y
5は相互に独立して水素原子又はフッ素原子を表す。
R
3、R
4は相互に独立して、炭素原子数2~7個のアルケニル基、またはアルケニルオキシ基をし、Y
6~Y
11は相互に独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表し、Z
1は、単結合、-COO-又は-CH
2CH
2-を表し、a、b及びcは相互に独立して0又は1を表す。)
【請求項2】
第二成分として、更に一般式(2-2)で表される化合物を1種又は2種以上含有する請求項1に記載のコレステリック液晶組成物。
【化2】
(R
5及びR
6は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、環B及びCは相互に独立して1,4-シクロへキシレン基又は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4-フェニレン基を表し、Z
2は、単結合、-COO-、-CH
2CH
2-、-CH=CH-、-FC=CF-又は-C=N-N=C-を表し、dは1、2又は3を表すが、複数存在する場合の環B及びZ
2は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
【請求項3】
第一成分として、更に一般式(1-3)で表される化合物を1種又は2種以上含有する請求項1又は2に記載のコレステリック液晶組成物。
【化3】
(R
7は炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、Y
12~Y
23は相互に独立して水素原子又はフッ素原子を表し、X
1はフッ素原子、塩素原子、-CN、-NCS、-CF
3又は-OCF
3を表し、Z
3及びZ
4は相互に独立して単結合、-CH
2CH
2-、-COO-、-OCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-又は-C≡C-を表す。)
【請求項4】
一般式(1-1)で表される化合物として、一般式(1-1-a)で表される化合物を1種又は2種以上含有する請求項1~3いずれか1項に記載のコレステリック液晶組成物。
【化4】
(R
1は請求項1に記載のR
1と同じ意味を表す。)
【請求項5】
一般式(1-2)で表される化合物として、一般式(1-2-a)及び一般式(1-2-b)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1~4いずれか1項に記載のコレステリック液晶組成物。
【化5】
(R
2は請求項1に記載のR
2と同じ意味を表す。)
【請求項6】
一般式(2-3)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1~5いずれか1項に記載のコレステリック液晶組成物。
【化6】
(R
7及びR
8は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基、アルケニルオキシ基を表し、環Aは1,4―シクロへキシレン基又は、水素原子がフッ素原子又はメチル基で置換されても良い1,4-フェニレン基を表し、Y
24~Y
29は相互に独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表し、Z
1は、単結合、-COO-又は-CH
2CH
2-を表し、cは0又は1を表すが、一般式(2-3)において一般式(2-1)で表される化合物を除く。)
【請求項7】
第一成分として、更に一般式(1-4)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1~6いずれか1項に記載のコレステリック液晶組成物。
【化7】
(R
9は炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、X
2はフッ素原子、塩素原子、-CN、-NCS、-CF
3又は-OCF
3を表し、環B及びCは相互に独立して1,4-シクロへキシレン基又は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4-フェニレン基を表し、Z
5単結合又は単結合、-COO-、-CH
2CH
2-、-CH=CH-、-FC=CF-又は-C=N-N=C-を表し、dは1、2又は3を表すが、複数存在する場合の環B及びZ
2は、それぞれ同一であっても異なっていても良いが、一般式(1-4)において一般式(1-1)及び(1-3)で表される化合物を除く。)
【請求項8】
第三成分として、キラルピッチ長の温度依存性が正であるキラル化合物を1種又は2種以上と、キラルピッチ長の温度依存性が負であるキラル化合物を1種又は2種以上含有する、請求項1~7いずれか1項に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項9】
第三成分として、一般式(3)で表される化合物を1種又は2種以上含有する請求項8に記載のコレステリック液晶組成物。
【化8】
(R
11及びR
12は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、環D、E、F、Gは相互に独立して1,4―シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表し、Z
6及びZ
7は相互に独立して単結合又は-COO-を表し、e及びfは相互に独立して0、1又は2を表す。)
【請求項10】
0~50℃の範囲におけるキラルピッチ長の温度変化が、-1nm/℃以上+1nm/℃以下である請求項1~9いずれか1項に記載のコレステリック液晶組成物。
【請求項11】
請求項1~10いずれか1項に記載のコレステリック液晶組成物を用いる液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は表示素子用材料として有用なコレステリック液晶組成物及びこれを用いた表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶組成物に光学活性化合物を添加することにより液晶相にねじれ配向を付与したコレステリック(カイラルネマチック)液晶組成物を用いた液晶表示素子は、双安定性を有することから特に低消費電力を要求される電子書籍、電子値札、プレゼンテーションパネル等に用いられる。コレステリック液晶における双安定性は、パルス電圧の印加によりプレーナ状態とフォーカルコニック状態に切り換えることによって達成され、プレーナ及びフォーカルコニックの各状態は電圧OFF状態でも維持されることから、当該双安定性についてメモリー性と呼ぶこともある。
【0003】
コレステリック液晶を用いた液晶表示素子は、コレステリックの螺旋軸が基板に対して垂直な状態(プレーナ状態)において、キラルピッチに依存した特異的な選択反射波長を示す。選択反射波長(λ)は、液晶組成物の平均屈折率(n)とキラルピッチ(P)の積により決まるため、液晶組成物の屈折率を固定した場合には、キラル化合物の濃度を調整してキラルピッチPを調整することにより所望の選択反射波長を得ることができる。この時の選択反射光の半値幅(Δλ)は、液晶の屈折率異方性(Δn=ne―no)とキラルピッチの積に比例するが、明るい表示のためにはある程度広い半値幅が必要となるため、Δnの大きい液晶組成物を用いなければならない。この場合、液晶組成物の平均屈折率も大きくなるため、所望のλに調整するためには更にキラルを添加してPを短くする必要があるが、キラル化合物の添加量が増えすぎると、ホスト液晶の液晶温度範囲の悪化、粘性の増大、といった問題が発生する。即ち、コレステリック液晶の設計には、キラルピッチを誘起する液晶ねじれ力が高く、かつホスト液晶への影響が少ないキラル化合物が必要であり、そういった化合物との相溶性に優れ且つΔnの高いホスト液晶組成物が求められる。さらには、液晶表示素子として低電圧駆動を可能とする十分大きな誘電率異方性(Δε)、低温環境下においても析出等が発生しない良好な保存性が求められる。例えば特許文献1にはこういった課題を解決するために幾つかのコレステリック液晶組成物が開示されている。
【0004】
コレステリック液晶のキラルピッチ長はキラル化合物の種類や添加濃度に依存し、P=1/(β・c)で表すことができる。ここで、cはコレステリック液晶組成物におけるキラル化合物の濃度、βはキラル化合物が液晶組成物をねじる力であり、Helical Twisting Power (HTP)と呼ばれ、式HTP=n/(λ×0.01×c)を用いて算出することができる。ここで、nは液晶組成物の平均屈折率である。このHTPをもちいて液晶組成物に所望のピッチを与えることができる。
【0005】
キラル化合物は一般的に液晶相の温度範囲を狭め、粘度を増大させる。さらに、キラル化合物を添加することにより発生したキラルピッチ長は温度依存性を有することが知られている。例えば、不斉炭素を有するキラル化合物である式(Chiral-1)で表される化合物は、一般的な液晶組成物に添加した際に、室温から高温へ変化するに従ってピッチ長が増大し、その変化はホストとなる液晶組成物によっても大きく異なるという特徴を示す。
【0006】
【0007】
コレステリック液晶が有するこのキラルピッチの温度依存性により、コレステリック液晶組成物は、素子として駆動する際の環境温度の変化により選択反射波長λがシフトして色味が変化してしまうという欠点を有している。即ち、キラル化合物とホスト液晶組成物は、ホスト液晶組成物の物性や安定性への影響、それを用いる環境温度を考慮して、かかる欠点がなるべく発生しないように選択しなければならない。しかしながら、コレステリック液晶組成物に求められる諸特性、即ち、大きい誘電率異方性、広い動作温度範囲、低温下における安定性、所望の選択反射波長、外光等に対する高い信頼性等の複数の要求を満たしながら、こういった欠点を解決できる具体的なホスト液晶組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、高い誘電率異方性(Δε)及び屈折率異方性(Δn)を有し、コレステリック液晶温度範囲が広く、低温下において安定であり、更に熱や光等の外部刺激に対して高い信頼性を有し、選択反射波長の温度変化が小さいコレステリック液晶組成物を提供することにある。また、更にこのようなコレステリック液晶を用いて、温度に対する色味変化が小さく、十分な明るさを有し、動作温度範囲が広く、低い駆動電圧及び高い信頼性を有する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、誘電的に正の第一成分、誘電的に中性の第二成分、キラルピッチ長の温度依存性が互いに異なる少なくとも二種の光学活性物質を含有する第三成分を含有し、
第一成分として一般式(1-1)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第一成分として一般式(1-2)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第二成分として一般式(2-1)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、正の誘電率異方性を有するコレステリック液晶組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0011】
【0012】
(R1及びR2は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、環Aは1,4―シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表し、Y1~Y5は相互に独立して水素原子又はフッ素原子を表す。
R3、R4は相互に独立して、炭素原子数2~7個のアルケニル基、またはアルケニルオキシ基をし、Y6~Y11は相互に独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表し、Z1は、単結合、-COO-又は-CH2CH2-を表し、a、b及びcは相互に独立して0又は1を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明により、複数の物性値の両立という観点において、従来のコレステリック液晶よりも優れた特性を有するコレステリック液晶組成物が提供される。すなわち、選択反射波長の温度変化、誘電率異方性(Δε)及び屈折率異方性(Δn)、コレステリック液晶温度範囲、低温安定性、熱や光など外部刺激に対する安定性、等において、より優れた物性値を具備したコレステリック液晶組成物の提供が可能となる。また、本発明の液晶組成物は、特に0℃から50℃の実用温度領域においてキラルピッチが殆ど変化しないため、キラルピッチに依存する選択反射波長も同様に変化しない。これにより、従来要求されていたコレステリック液晶表示素子の諸特性を満足しつつ、更に反射状態の色味が実質的に変化しない高品位のコレステリック液晶表示素子が提供可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
液晶化合物が「誘電的に正」とは当該化合物のΔεが+3.0以上であることを意味し、「誘電的に中性」とは当該化合物のΔεが-1.5~+1.5であることを意味する。各化合物のΔεは、ある液晶組成物に各化合物を一定量添加した際に得られるΔεの値から外挿して求めることができる。なお、本発明における「%」は特に断りが無い限り質量%を意味する。
【0016】
本発明の液晶組成物は、第一成分として誘電的に正の化合物を含有する。
【0017】
一般式(1-1)中のY1及びY2は水素原子、又はフッ素原子を表し、共に水素原子が好ましい。Y3は水素原子又はフッ素原子を表し、水素原子が好ましい。aは0又は1を表し、aが0である2環化合物と、aが1である3環化合物とを併用することも好ましい。
【0018】
一般式(1-2)中のY4及びY5は水素原子又はフッ素原子を表し、bは0又は1を表す。bが0でY4及びY5が共にフッ素原子であるか、或いは、bが1でY4及びY5が共に水素原子であることが好ましい。また、bが0である2環化合物と、bが1である3環化合物とを併用することも好ましい。
【0019】
一般式(1-1)~(1-2)中のR1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子数1~7のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基がより好ましい。
【0020】
一般式(1-1)及び一般式(1-2)で表される化合物の好ましい含有量は40~75%であり、より好ましくは45~70%であり、特に好ましくは48~68%である。一般式(1-1)で表される化合物は大きいΔεと中程度のΔnを有し、一般式(1-2)で表される化合物は大きいΔεと高いΔnを有するが、これらを併用することで液晶温度範囲や低温安定性等を維持しながら、組成物に非常に大きいΔεとΔnを付与できる。
【0021】
また、更にΔε及びΔnを上昇せしめる目的で、一般式(1-3)で表される化合物を添加してもよい。
【0022】
【0023】
(R7は炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、Y12~Y23は相互に独立して水素原子又はフッ素原子を表し、X1はフッ素原子、塩素原子、-CN、-NCS、-CF3又は-OCF3を表し、Z3及びZ4は相互に独立して単結合、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-又は-C≡C-を表す。)
液晶組成物が一般式(1-3)で表される化合物を含有する場合、一般式(1-3)の化合物の好ましい含有量は1%以上であり、より好ましくは5%以上である。
【0024】
また、更に、一般式(1-4)で表される化合物を添加してもよい。一般式(1-4)で表される化合物は、中程度のΔεと中程度のΔnを有し、これらを併用することで液晶温度範囲や低温安定性等を向上する事ができる。
【0025】
【0026】
(R9は炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、X2はフッ素原子、塩素原子、-CN、-NCS、-CF3又は-OCF3を表し、環B及びCは相互に独立して1,4-シクロへキシレン基又は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4-フェニレン基を表し、Z5は単結合、-COO-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-FC=CF-又は-C=N-N=C-を表し、dは1、2又は3を表すが、複数存在する場合の環B及びZ5は、それぞれ同一であっても異なっていても良いが、一般式(1-4)において一般式(1-1)及び(1-3)で表される化合物を除く。)
一般式(1-4)中の環Cは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4-フェニレン基であることが好ましく、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基であることが好ましい。
【0027】
一般式(1-4)中の環Bの少なくとも一つは1,4-シクロへキシレン基であることが好ましく、R9に直接結合する基が1,4-シクロへキシレン基であることが好ましい。
【0028】
第一成分の好ましい含有量の合計は、40~80%であり、より好ましくは45~75%であり、最も好ましくは50~70%である。
【0029】
一般式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)及び式(1-4)で表される化合物として好ましい例は以下の一般式(1-1-a)~(1-1-d)、一般式(1-2-a)~(1-2-d)、一般式(1-3-a)~(1-3-f)、及び一般式(1-4-a)~(1-4-i)で表される化合物である。
【0030】
【0031】
【0032】
(式中、R1は式(1-1)におけるR1と同じ意味を表し、R2は式(1-2)におけるR2と同じ意味を表し、R7は式(1-3)におけるR7と同じ意味を表す。)
【0033】
【0034】
(式中R9は、炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表す。)
本発明の液晶組成物は、第二成分として誘電的に中性の化合物を含有する。
【0035】
一般式(2-1)において、cは0又は1であって、0が好ましい。Y6~Y11はいずれも水素原子であることが好ましい。R3及びR4は相互に独立して、炭素原子数2~7のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を示し、炭素原子数2~7のアルケニル基が好まししく、下記式(R1)~(R5)のいずれかで表される基がより好ましい。(各式中の黒点は結合点であって、存在する環A又は式中の置換されていても良い1,4-フェニレン基中の炭素原子を表す。)
【0036】
【0037】
一般式(2-1)で表される化合物の好ましい含有量は、1~35%であり、より好ましくは2~30%であり、特に好ましくは3~25%である。一般式(2-1)で表される化合物は、液晶組成物の粘性を低く抑える効果を有し、また液晶相上限温度を調節しつつ、高いΔnを組成物に付与できるだけでなく、上記第一成分とは極めて良好な溶解性を示す。
【0038】
一般式(2-1)におけるY6~Y11が水素原子の化合物を多く用いると組成物の粘性を低く抑えることができ、少なくとも一つがメチル基又はフッ素原子で置換された化合物を用いると、液晶相の安定性をより高めることができる。
【0039】
一般式(2-1)で表される化合物として好ましい例は以下の一般式(2-1-a)~(2-1-e)である。
【0040】
【0041】
(式中、R3は式(2-1)におけるR3と同じ意味を表し、R4は式(2-1)におけるR4と同じ意味を表す。)
また、第二成分として粘性の低減や液晶温度範囲の拡大させる目的で、一般式(2-2)で表される化合物を添加してもよい。
【0042】
【0043】
(R5及びR6は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、環B及びCは相互に独立して1,4-シクロへキシレン基又は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい1,4-フェニレン基を表し、Z2は、単結合、-COO-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-FC=CF-又は-C=N-N=C-を表し、dは1、2又は3を表すが、複数存在する場合の環B及びZ2は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
一般式(2-2)で表される化合物として好ましい例は以下の一般式(2-2-a)~(2-2-k)である。
【0044】
【0045】
(式中、R5は式(2-2)におけるR5と同じ意味を表し、R6は式(2-2)におけるR6と同じ意味を表す。)
一般式(2-2)で表される化合物のより好ましい例は、式(2-2-a)、式(2-2-b)、式(2-2-c)または式(2-2-d)で表される化合物であり、特に式(2-2-a)及び/又は(2-2-d)においてR5がアルケニル基である化合物群から選ばれる化合物を含有することが特に好ましい。
【0046】
一般式(2-2)で表される化合物の好ましい含有量は3%以上であり、より好ましくは5%以上であり、特に好ましくは7%以上である。
【0047】
また第二成分として一般式(2-3)で表される化合物は、液晶組成物の粘性や液晶相上限温度を調節しつつ、高いΔnを組成物に付与できるだけでなく、上記第一成分とは極めて良好な溶解性を示す。
【0048】
一般式(2-3)におけるY24~Y29が水素原子の化合物を多く用いると組成物の粘性を低く抑えることができ、少なくとも一つがメチル基又はフッ素原子で置換された化合物を用いると、液晶相の安定性をより高めることができる。
【0049】
【0050】
(cが0の場合、R7及びR8は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基を表し、cが1の場合、R7及びR8は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基、アルケニルオキシ基を表し、環Aは1,4―シクロへキシレン基又は、水素原子がフッ素原子又はメチル基で置換されても良い1,4-フェニレン基を表し、Y24~Y29は相互に独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表し、Z1は、単結合、-COO-又は-CH2CH2-を表し、cは0又は1を表す。)
一般式(2-3)で表される化合物として好ましい例は以下の一般式(2-3-a)~(2-3-e)である。
【0051】
【0052】
(式中、R7は式(2-3)におけるR7と同じ意味を表し、R8は式(2-3)におけるR8と同じ意味を表す。)
一般式(2-3)で表される化合物の好ましい含有量の合計は、10~50%であり、より好ましくは15~45%であり、特に好ましくは20~40%である。
【0053】
第二成分の好ましい含有量の合計は、20~55%であり、より好ましくは25~50%であり、特に好ましくは30~45%である。
【0054】
本発明の液晶組成物は、第三成分としてキラルピッチ長の温度依存性が互いに異なる少なくとも二種の光学活性物質(キラル化合物)を含有する。これら化合物は、液晶表示素子の常用温度、すなわち好ましくは0~50℃の範囲において、一方は正のキラルピッチ温度依存性を有し、他方は負のキラルピッチ温度依存性を有することが好ましい。第三成分の含有量の合計は、意図する選択反射波長によって異なるが、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、6%以下が特に好ましい。好ましい下限量は特に制限されないが、液晶ねじれ力が著しく大きい場合、組成物における第三成分の添加量が微量となってしまい、僅かな混合比のずれにより選択反射波長やその温度依存性がずれてしまう場合がある。製造設備の秤量精度などにも影響されるが、第三成分が概ね0.1%以上の濃度であれば製造スケールに関わらず高い精度で組成物を製造することができる。
【0055】
キラル化合物としては、一般式(3)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0056】
【0057】
(R8及びR9は相互に独立して炭素原子数1~7個のアルキル基、炭素原子数1~7個のアルコキシ基又は炭素原子数2~7個のアルケニル基を表し、環D、E、F、Gは相互に独立して1,4―シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表し、Z5及びZ6は相互に独立して単結合、-OCO-又は-COO-を表し、e及びfは相互に独立して0、1又は2を表す。複数存在する場合の環D、環G、Z5及びZ6は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
一般式(3)で表される化合物として好ましい例は以下の式(3-1)~(3-4)で表される化合物である。
【0058】
【0059】
式(3-1)及び式(3-2)で表される化合物は一般的にキラルピッチ長の温度依存性は正である。式(3-3)及び式(3-4)で表される化合物は一般的にキラルピッチ長の温度依存性は負である。また、式(3-1)及び式(3-3)で表される化合物は右旋性物質であり、式(3-2)及び式(3-4)で表される化合物は左旋性物質である。本発明における好適なキラル化合物の組み合わせは下表により与えられる。右旋性、左旋性は要求される表示素子の仕様にあわせて適宜選択することができるが、異なる選択反射波長に調整されたコレステリック液晶領域を隣接させる場合には、混色を避ける目的でそれぞれの旋光性を逆にしておくことが好ましい。
【0060】
【0061】
本発明のコレステリック液晶組成物における好ましい物性値について記載する。なお、Δn及びΔεについてはキラル化合物を添加する前のホスト液晶組成物の値である。
【0062】
好ましいΔnの範囲は0.10~0.40であり、より好ましくは0.15~0.35であり、特に好ましくは0.20~0.30である。好ましいΔεの範囲は10~50であり、より好ましくは15~45であり、特に好ましくは20~40である。好ましいTniの範囲は60~120℃であり、より好ましくは70~110℃であり、特に好ましくは80~110℃である。
【0063】
フロー粘性は小さいほど好ましくその下限は特に制限されないが、100mPa・s以下であれば実用上十分な応答速度を達成できる。
【0064】
本発明のコレステリック液晶組成物には、必要に応じて更に添加剤を含むことができる。例えば、外部刺激に対する安定性を高める目的でUV吸収剤や酸化防止剤、HALS等を添加することができ、構造は特に制限されないが、一般的に液晶組成物への添加が公知である種々の化合物、例えばベンゾトリアゾール系UV吸収剤やヒンダードフェノール系参加防止剤を用いることができる。また、更には、コレステリック液晶相の固定化を目的とした種々の重合性化合物を含むこともできる。この場合、重合性化合物は、硬化前の段階では液晶性を示す物質であることが好ましい。これを紫外線照射、あるいは加熱等によって重合、硬化して、流動性が無く外力によって配向形態に変化を生じない状態に変化した層にすることもできる。
【実施例】
【0065】
実施例に記載のうち、第三成分である光学活性物質を除く化合物を調整し、ホスト液晶となるネマチック液晶組成物を製作し、各種物性値を測定した。
その後、第三成分を含めた化合物を調整し、コレステリック液晶を製作した。
選択反射波長の測定は、水平配向膜付基板を用いてGAP3μmのセルを製作し、液晶を注入した後、Tni以上に加熱し、室温まで徐冷した。その後セル表面を指で押すことにより、プレーナ配向へと変化させた。このセルを用いて、選択反射波長の温度依存性を測定した。
【0066】
測定には、LCD-5200(大塚電子製)を用いて、入射光がセルの法線より30°傾けた方向から入射させ、法線方向の選択反射光を受光した。
【0067】
以下の実施例及び比較例の組成物は各化合物を表中の割合で含有し、含有量は「質量%」で記載した。実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。
【0068】
【0069】
特に断りがない限り、トランス体を表す。
【0070】
【0071】
(物性値)
透明点(℃):組成物が等方相へ転移する温度(Tni)
融点(℃) :組成物が固相等からネマチック相へ復元する温度
Δn :ホスト液晶組成物の25℃、589nmにおける屈折率異方性
Δε :ホスト液晶組成物の25℃、1kHzにおける誘電率異方性
η(mPa・s):ホスト液晶組成物の20℃におけるフロー粘性
【0072】
(実施例1)
実施例1及び比較例1の組成物を表3に示す。
下表中の第三成分を除いた組成物を調整し、ネマチック液晶組成物(ホスト液晶組成物)を製作し、物性値を測定した。また、それらホスト液晶組成物に対し、キラル化合物として第三成分の化合物を添加して、25℃の選択反射波長が560nm程度になるようコレステリック液晶組成物を調製した。
【0073】
【0074】
各組成物の物性値、および選択反射波長の温度依存性を以下に示す。
【0075】
【0076】
実施例1の第三成分を除いたホスト液晶組成物は、比較例1と比較し、Tni点が同等で、融点が低く(=液晶温度範囲が広く)、粘性(η)が小さく、誘電率異方性(Δε)が大きく、より低電圧駆動が可能であった。
【0077】
また第三成分を含んだコレステリック液晶組成物のセルは、選択反射波長の温度依存性が小さく、表示素子用コレステリック材料としてより適していることがわかる。
【0078】
ここで、実施例1及び比較例1のコレステリック液晶組成物を用いたセルを0℃から50℃に温度を変化させてその色味変化を目視で観察したところ、実施例1の組成物を注入したセルは変化がなかったのに対し、比較例1の組成物を注入したセルは温度上昇に伴い色味が変化した。さらに、実施例1と比較例1の組成物で低温保存安定性を比較したところ、比較例1の組成物は-20℃で48時間後に析出が見られたのに対し、実施例1の組成物は240時間経過時点でも液晶相を維持しており、保存安定性にも優れることがわかった。
【0079】
(実施例2~5)
実施例2~実施例5の組成物を表5に示す。
【0080】
実施例1と同様に、下表中の第三成分を除いたホスト組成物を調整し、ネマチック液晶組成物(ホスト液晶組成物)を製作し、物性値を測定した。また、それらホスト液晶組成物に対し、キラル化合物として第三成分の化合物を添加して、25℃の選択反射波長が560nm程度になるようコレステリック液晶組成物を調製した。
【0081】
【0082】
【0083】
実施例2~5の第三成分を除いたホスト液晶組成物は、比較例1のホスト液晶組成物と比較して、融点が低く(=液晶温度範囲が広く)、粘性(η)が小さく、誘電率異方性(Δε)が若干大きく、低電圧駆動が可能であり、更に第三成分を含んだコレステリック液晶組成物のセルの選択反射波長の温度依存性が小さく、表示素子用コレステリック材料としてより適していることがわかる。
【0084】
実施例2~5のコレステリック液晶組成セルを0℃から50℃に温度を変化させてその色味変化を目視で観察したところ、実施例2~5の組成物を注入したセルは変化がなかった。
【0085】
さらに、実施例2~5の組成物は240時間経過時点でも液晶相を維持しており、保存安定性にも優れることがわかった。