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特許7501225メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240611BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240611BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F290/06
C09K5/14 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020140190
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035695
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】中村 優希
(72)【発明者】
【氏名】古川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】横田 弘
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-204352(JP,A)
【文献】特開2015-221863(JP,A)
【文献】特開2004-339426(JP,A)
【文献】特開2005-272505(JP,A)
【文献】特開平11-323162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08F 290/00-290/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(B)で表される(メタ)アクリレートと、下記式(1)で表される化合物と、熱伝導性フィラーと、を含有する組成物。
【化1】

[式(B)中、R は水素原子又はメチル基を表し、R はオキシアルキレン基を表す。]
【化2】

[式(1)中、R 11 及びR 12 はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R 13 はポリオキシアルキレン鎖を有する2価の基を表す。前記ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシアルキレン基の数が100以上である。]
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレン鎖がオキシエチレン基を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン鎖がオキシプロピレン基を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレン鎖が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基を含む共重合鎖である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記共重合鎖がランダム共重合鎖である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(1)で表される化合物の重量平均分子量が5000以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(1)で表される化合物の25℃における粘度が200Pa・s以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
使用中に発熱を伴う電子部品等においては、効率良く放熱するために、サーマルインターフェースマテリアル(TIM)と呼ばれる熱伝導性材料(放熱材と呼ばれることもある)が用いられる。TIMは、例えば、ポリマー及び熱伝導性フィラーを含んでいる。例えば、特許文献1には、オルガノポリシロキサン成分、熱伝導性フィラー等を含有する熱伝導性シリコーン組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/039761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TIMにおいては、主に熱伝導性フィラーが熱伝導の役割を果たすが、TIM中に配合できる熱伝導性フィラーの量には限りがあるため、熱伝導性フィラー以外の構成要素による熱伝導性の向上が望まれる。つまり、熱伝導性フィラーの配合量が同じであっても、TIMの熱伝導性をできる限り高められるような設計が必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、熱伝導性フィラーの配合量が同じであっても、熱伝導性を高めることができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、熱伝導性フィラーに加えて、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートを用いることにより、熱伝導性フィラーの配合量が同じであっても、熱伝導性を高めることができることを見出した。本発明は、いくつかの側面において、下記の[1]~[10]を提供する。
【0007】
[1] メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートと、熱伝導性フィラーと、を含有する組成物。
[2] メソゲン骨格がビフェニル骨格である、[1]に記載の組成物。
[3] 下記式(1)で表される化合物を更に含有する、[1]に記載の組成物。
【化1】

[式(1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R13はポリオキシアルキレン鎖を有する2価の基を表す。]
[4] ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシアルキレン基の数が100以上である、[3]に記載の組成物。
[5] ポリオキシアルキレン鎖がオキシエチレン基を含む、[3]又は[4]に記載の組成物。
[6] ポリオキシアルキレン鎖がオキシプロピレン基を含む、[3]又は[4]に記載の組成物。
[7] ポリオキシアルキレン鎖が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基を含む共重合鎖である、[3]又は[4]に記載の組成物。
[8] 共重合鎖がランダム共重合鎖である、[7]に記載の組成物。
[9] 式(1)で表される化合物の重量平均分子量が5000以上である、[3]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10] 式(1)で表される化合物の25℃における粘度が200Pa・s以下である、[3]~[9]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱伝導性フィラーの配合量が同じであっても、熱伝導性を高めることができる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0010】
本明細書における、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」等の類似表現においても同様である。
【0011】
本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定され、ポリスチレンを標準物質として決定される値を意味する。
・測定機器:HLC-8320GPC(製品名、東ソー(株)製)
・分析カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-H(3本連結)(製品名、東ソー(株)製)
・ガードカラム:TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H(製品名、東ソー(株)製)
・溶離液:THF
・測定温度:25℃
【0012】
本発明の一実施形態は、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートと、熱伝導性フィラーと、を含有する組成物である。
【0013】
メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートは、下記式(A)で表される化合物であってよい。
【化2】

式(A)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはメソゲン骨格を有する1価の基を表す。
【0014】
メソゲン骨格は、例えば、ビフェニル骨格、フェニルベンゾエート骨格、シクロヘキシルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格等であってよい。メソゲン骨格は、好ましくはビフェニル骨格である。メソゲン骨格がビフェニル骨格であると、他のメソゲン骨格に比べて、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートの結晶性が高くなりすぎることを抑制でき、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートに起因する組成物の粘度上昇を抑制できる。そのため、組成物中により多くの熱伝導性フィラーを含ませることができ、結果的に、組成物の熱伝導性を更に向上させることができる。
【0015】
ビフェニル骨格を有する(メタ)アクリレートは、例えば下記式(B)で表される化合物であってよい。
【化3】

式(B)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは2価の有機基を表す。
【0016】
で表される2価の有機基は、例えば、オキシアルキレン基であってよい。当該オキシアルキレン基における炭素数は、例えば1~4であってよい。
【0017】
メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートの含有量は、組成物の全質量を基準として、例えば、1質量%以上又は2質量%以上であってよく、熱伝導性を更に高める観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは6質量%以上であり、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0018】
熱伝導性フィラーは、熱伝導率が10W/m・K以上のフィラーをいう。熱伝導性フィラーは、絶縁性であってよく、導電性であってもよいが、好ましくは絶縁性のフィラーである。熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。熱伝導性フィラーの形状は、球状であってよく、多面体であってもよい。
【0019】
熱伝導性フィラーの平均粒径は、組成物の硬化物を薄くできる観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下であり、0.05μm以上、0.1μm以上、又は0.3μm以上であってよい。熱伝導性フィラーの平均粒径は、体積累積粒度分布が50%となる粒子径(D50)を意味し、レーザ回折式粒子径分布測定装置(例えばSALD-2300((株)島津製作所製)を用いて測定される。
【0020】
熱伝導性フィラーの含有量は、熱伝導性を更に高める観点から、組成物の全質量を基準として、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、97質量%以下、95質量%以下、又は93質量%以下であってよい。
【0021】
熱伝導性フィラーの含有量は、熱伝導性を更に高める観点から、組成物の全体積を基準として、好ましくは65体積%以上であり、より好ましくは70体積%以上であり、更に好ましくは75体積%以上であり、90体積%以下、88体積%以下、又は85体積%以下であってよい。
【0022】
組成物は、組成物の硬化物の破断伸び率を向上させ、引張弾性率を低減させる観点から、好ましくは、下記式(1)で表される化合物を更に含有する。
【化4】

式(1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R13はポリオキシアルキレン鎖を有する2価の基を表す。
【0023】
一実施形態において、R11及びR12の一方が水素原子であり、かつ他方がメチル基であってよく、他の一実施形態において、R11及びR12の両方が水素原子であってよく、他の一実施形態において、R11及びR12の両方がメチル基であってよい。
【0024】
上記ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシアルキレン基の数は、100以上であってよい。ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシアルキレン基の数は、組成物の硬化物の破断伸び率を更に向上させ、引張弾性率を更に低減させる観点から、好ましくは、130以上、180以上、200以上、220以上、250以上、270以上、300以上、又は320以上である。ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシアルキレン基の数は、600以下、570以下、又は530以下であってよい。
【0025】
一実施形態において、ポリオキシアルキレン鎖は、オキシエチレン基(言い換えれば、下記式(2)で表される構造単位)を含む。
【化5】
【0026】
この場合、R13はポリオキシエチレン鎖を有する2価の基であってよく、式(1)で表される化合物は、好ましくは下記式(1-2)で表される化合物(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート)である。
【化6】

式(1-2)中、R11及びR12は式(1)におけるR11及びR12とそれぞれ同義であり、mは、上述したオキシアルキレン基の数と同じ下限値及び上限値をとり得る。
【0027】
他の一実施形態において、ポリオキシアルキレン鎖は、オキシプロピレン基(言い換えれば、下記式(3)で表される構造単位)を含む。これにより、組成物の取扱いを更に容易にすることができる。
【化7】
【0028】
この場合、R13はポリオキシプロピレン鎖を有する2価の基であってよく、式(1)で表される化合物は、好ましくは下記式(1-3)で表される化合物(ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート)である。
【化8】

式(1-3)中、R11及びR12は式(1)におけるR11及びR12とそれぞれ同義であり、nは、上述したオキシアルキレン基の数と同じ下限値及び上限値をとり得る。
【0029】
他の一実施形態において、ポリオキシアルキレン鎖は、組成物の硬化物の破断伸び率を更に向上させ、引張弾性率を更に低減させる観点から、好ましくは、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基を含む共重合鎖である。共重合鎖は、交互共重合鎖、ブロック共重合鎖、又はランダム共重合鎖のいずれであってもよい。共重合鎖は、組成物の取扱いを更に容易にできる観点から、好ましくはランダム共重合鎖である。
【0030】
上述した各実施形態において、ポリオキシアルキレン鎖は、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基以外に、オキシテトラメチレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基等の、炭素数4~5のオキシアルキレン基を構造単位として有していてもよい。
【0031】
13は、上述したポリオキシアルキレン鎖に加えて、その他の有機基を更に有する2価の基であってもよい。その他の有機基は、ポリオキシアルキレン鎖以外の鎖状の基であってよく、例えば、メチレン鎖(-CH-を構造単位とする鎖)、ポリエステル鎖(-COO-を構造単位中に含む鎖)、ポリウレタン鎖(-OCON-を構造単位中に含む鎖)等であってよい。
【0032】
例えば、式(1)で表される化合物は、下記式(1-4)で表される化合物であってもよい。
【化9】

式(1-4)中、R11及びR12は式(1)におけるR11及びR12とそれぞれ同義であり、R14及びR15は、それぞれ独立に炭素数2~5のアルキレン基である。k1及びk3は、それぞれ独立に、上述したオキシアルキレン基の数と同じ下限値及び上限値をとり得る。k2は2以上の整数であり、例えば16以下の整数であってよい。
【0033】
複数存在するR14及びR15は、それぞれ、互いに同一であってよく、互いに異なっていてもよい。複数存在するR14及びR15は、それぞれ、好ましくは、エチレン基及びプロピレン基を含む。すなわち、(R14O)k1で表されるポリオキシアルキレン鎖、及び(R15O)k3で表されるポリオキシアルキレン鎖は、それぞれ、好ましくは、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基を含む共重合鎖である。
【0034】
式(1)で表される化合物の重量平均分子量は、組成物の硬化物の破断伸び率を更に向上させ、引張弾性率を更に低減させる観点から、好ましくは、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上、9000以上、10000以上、11000以上、12000以上、13000以上、14000以上、又は15000以上である。式(1)で表される化合物の重量平均分子量は、組成物の粘度を調整しやすくする観点から、好ましくは、100000以下、80000以下、60000以下、40000以下、又は30000以下である。
【0035】
式(1)で表される化合物は、25℃で液状であってよい。この場合、式(1)で表される化合物の25℃における粘度は、組成物の取扱い性を向上させる観点から、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは350Pa・s以下、更に好ましくは300Pa・s以下、特に好ましくは200Pa以下である。式(1)で表される化合物の25℃における粘度は、0.1Pa・s以上、0.2Pa・s以上、又は0.3Pa・s以上であってよい。
【0036】
式(1)で表される化合物は、25℃で固体状であってもよい。この場合、組成物の取扱い性を向上させる観点から、式(1)で表される化合物は、好ましくは、50℃で液状である。また、この場合、式(1)で表される化合物の50℃における粘度は、組成物の取扱い性を向上させる観点から、好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以下、更に好ましくは30Pa・s以下、特に好ましくは20Pa・s以下である。式(1)で表される化合物の50℃における粘度は、0.1Pa・s以上、0.2Pa・s以上、又は0.3Pa・s以上であってよい。
【0037】
粘度は、JIS Z 8803に基づいて測定された値を意味し、具体的には、E型粘度計(例えば、東機産業(株)製、PE-80L)により測定された値を意味する。なお、粘度計の校正は、JIS Z 8809-JS14000に基づいて行うことができる。式(1)で表される化合物の粘度は、当該化合物の重量平均分子量を調整することにより調整することができる。
【0038】
式(1)で表される化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、例えば0.5質量%以上であってよく、組成物の硬化物の破断伸び率を更に向上させ、引張弾性率を更に低減させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、特に好ましくは2.5質量%以上である。式(1)で表される化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、例えば、15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0039】
組成物は、重合性成分として、上述したメソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートのみを含有してよく、上述したメソゲン骨格を有する(メタ)アクリレート及び式(1)で表される化合物のみを含有してもよく、組成物の物性を調整すること等を目的として、上述したメソゲン骨格を有する(メタ)アクリレート及び式(1)で表される化合物と共重合可能な、その他の重合性化合物を更に含有してもよい。
【0040】
その他の重合性化合物は、例えば、(メタ)アクリロイル基を一つ有する化合物であってよい。当該化合物は、例えば、アルキル(メタ)アクリレートであってよい。他の重合性化合物は、一つの(メタ)アクリロイル基に加えて、芳香族炭化水素基、ポリオキシアルキレン鎖を含む基、ヘテロ環を含む基、アルコキシ基、フェノキシ基、シラン基を含む基、シロキサン結合を含む基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、又はエポキシ基を有する化合物(ただし、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートを除く)であってもよい。特に、組成物がアルキル(メタ)アクリレートを含有することにより、組成物の粘度を調整することができる。また、組成物が、(メタ)アクリロイル基に加えて、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、又はエポキシ基を有する化合物を含有することにより、組成物及びその硬化物の部材に対する密着性を更に向上できる。
【0041】
アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基((メタ)アクリロイル基以外のアルキル基部分)は、直鎖状であっても分岐状であっても脂環式であってもよい。アルキル基の炭素数は、例えば、1~30であってよい。アルキル基の炭素数は、1~11、1~8、1~6、又は1~4であってよく、12~30、12~28、12~24、12~22、12~18、又は12~14であってもよい。
【0042】
直鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-へプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、又はウンデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1~11の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(セチル(メタ)アクリレート)、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ドコシル(メタ)アクリレート(ベヘニル(メタ)アクリレート)、テトラコシル(メタ)アクリレート、ヘキサコシル(メタ)アクリレート、オクタコシル(メタ)アクリレート等の炭素数12~30の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
分岐状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1~11の分岐状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、デシルテトラデカニル(メタ)アクリレート等の炭素数12~30の分岐状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
脂環式であるアルキル基(シクロアルキル基)を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テルペン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリロイル基及び芳香族炭化水素基を有する化合物としては、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリロイル基、及びポリオキシアルキレン鎖を含む基を有する化合物としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリロイル基、及びヘテロ環を含む基を有する化合物としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
(メタ)アクリロイル基及びアルコキシ基を有する化合物としては、2-メトキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリロイル基及びフェノキシ基を有する化合物としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリロイル基、及びシラン基を含む基を有する化合物としては、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリロイル基、及びシロキサン結合を含む基を有する化合物としては、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリロイル基及びハロゲン原子を有する化合物としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロデシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロウンデシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロドデシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロトリデシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロテトラデシルメチル(メタ)アクリレート、2-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロエチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロプロピル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘプチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロノニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロトリデシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロテトラデシル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリロイル基及びヒドロキシル基を有する化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(例えば、東亞合成(株)製「アロニックスM5400」)、及び2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(例えば、新中村化学株式会社製「NKエステル A-SA」)等が挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチル(メタ)アクリル酸グリシジル、α-n-プロピル(メタ)アクリル酸グリシジル、α-n-ブチル(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸-4,5-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、α-エチル(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-メチル-4,5-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-5-メチル-5,6-エポキシヘキシル、(メタ)アクリル酸-β-メチルグリシジル、α-エチル(メタ)アクリル酸-β-メチルグリシジル等が挙げられる。
【0057】
その他の重合性化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、例えば、0.5質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってよく、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってよい。
【0058】
組成物は、上述した重合性成分の重合を開始させるための重合開始剤を更に含有してもよい。重合開始剤は、例えば、熱によりラジカルを発生させる熱重合開始剤、光によりラジカルを発生させる光重合開始剤等であってよい。重合開始剤は、好ましくは熱重合開始剤である。
【0059】
組成物が熱重合開始剤を含有する場合、組成物に熱を加えることにより、組成物の硬化物を得ることができる。この場合、組成物は、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上での加熱によって硬化させる組成物であってよく、例えば、200℃以下、190℃以下、又は180℃以下での加熱によって硬化させる組成物であってもよい。組成物を加熱する際の加熱時間は、組成物が好適に硬化するように、組成物の組成に応じて適宜選択されてよい。
【0060】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン-1-カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物などが挙げられる。熱重合開始剤は、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0061】
組成物が光重合開始剤を含有する場合、例えば、光(例えば200~400nmの少なくとも一部の波長を含む光(紫外光))を組成物に照射することにより、組成物の硬化物を得ることができる。光照射の条件は、光重合開始剤の種類により適宜設定されてよい。
【0062】
光重合開始剤は、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等であってよい。
【0063】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(例えば、BASF社製「イルガキュア651」)、アニソールメチルエーテル等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、BASF社製「イルガキュア184」)、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(例えば、BASF社製「イルガキュア2959」)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(例えば、BASF社製「イルガキュア1173」)、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。
【0064】
α-ケトール系光重合開始剤としては、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、2-ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシム等が挙げられる。
【0065】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、ベンゾイン等が挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、ベンジル等が挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
【0066】
アシルフォスフィン系光重合開始剤としては、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-n-ブチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-t-ブチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)オクチルホスフィンオキサイド、ビス(2-メトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(2-メトキシベンゾイル)(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジエトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジエトキシベンゾイル)(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジブトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,4-ジメトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(2,4-ジペントキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルプロピルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルエチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルプロピルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルエチルホスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルベンジルブチルホスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルベンジルオクチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジイソプロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2-メチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-4-メチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジエチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,3,5,6-テトラメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)イソブチルホスフィンオキサイド、2,6-ジメチトキシベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-n-ブチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジブトキシフェニルホスフィンオキサイド、1,10-ビス[ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド]デカン、トリ(2-メチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0067】
上述した光重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0068】
重合開始剤の含有量は、重合を好適に進行させる観点から、重合性成分の含有量の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上である。重合開始剤の含有量は、組成物の硬化物における重合体の分子量が好適な範囲になると共に、分解生成物を抑制する観点から、重合性成分の含有量の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは1質量部以下である。
【0069】
組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、可塑剤(例えばタッキファイアー)、充填剤(例えば熱伝導性フィラー)、酸化防止剤、表面処理剤(例えばシランカップリング剤)、分散剤、硬化促進剤、着色剤、結晶核剤、熱安定剤、発泡剤、難燃剤、制振剤、脱水剤、難燃助剤(例えば金属酸化物)等が挙げられる。その他の添加剤の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、30質量%以下であってよい。
【0070】
組成物は、取扱い性を向上させる観点から、好ましくは、25℃で液状である。組成物は25℃で固形状であってもよく、その場合、取扱い性を向上させる観点から、加熱によって(例えば50℃以上で)液状になることが好ましい。
【0071】
[組成物セット]
本発明の一実施形態によれば、複数液型の組成物セットを提供することができる。一実施形態に係る組成物セットは、酸化剤を含有する第一液と、還元剤を含有する第二液とを備える組成物セットである。第一液及び第二液の少なくとも一方は、上述したメソゲン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する。また、第一液及び第二液の少なくとも一方は、上述した熱伝導性フィラーを含有する。第一液と第二液を混合することにより、酸化剤及び還元剤が反応して遊離ラジカルが発生し、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレート等の重合性成分の重合が進行する。本実施形態に係る樹脂組成物セットによれば、第一液と第二液を混合することにより、直ちに第一液と第二液との混合物の硬化物が得られる。すなわち、組成物セットによれば、速い速度で組成物の硬化物が得られる。
【0072】
組成物セットにおいては、好ましくは、第一液が酸化剤、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレート、及び熱伝導性フィラーを含有し、第二液が還元剤、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレート、及び熱伝導性フィラーを含有する。
【0073】
組成物セットを構成する液全量(例えば、二液型の組成物セットであれば、第一液及び第二液の合計量)を基準とした、メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレート及び熱伝導性フィラーの含有量は、それぞれ上述した組成物の全量を基準としたメソゲン骨格を有する(メタ)アクリレート及び熱伝導性フィラー化合物の含有量の範囲と同様であってよい。
【0074】
第一液に含まれる酸化剤は、重合開始剤(ラジカル重合開始剤)としての役割を有する。酸化剤は、例えば、有機過酸化物又はアゾ化合物であってよい。有機過酸化物は、例えば、ハイドロパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド等であってよい。アゾ化合物は、AIBN(2、2’-アゾビスイソブチロニトリル)、V-65(アゾビスジメチルバレロニトリル)等であってよい。酸化剤は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0076】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルへキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0077】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロへキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-へキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルへキサノネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロへキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-へキシルパーオキシ-2-エチルへキサノネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルへキサノネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロへキサン、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルへキサノネート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)へキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0078】
パーオキシケタールとしては、1,1-ビス(t-へキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロへキサン、1,1-ビス(t-へキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロへキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0079】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)へキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0080】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルへキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニツクパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0081】
酸化剤は、貯蔵安定性の観点から、好ましくは過酸化物であり、より好ましくはハイドロパーオキサイドであり、更に好ましくはクメンハイドロパーオキサイドである。
【0082】
酸化剤の含有量は、組成物セットを構成する液全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってよく、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってよい。
【0083】
第二液に含まれる還元剤は、例えば、第3級アミン、チオ尿素誘導体、遷移金属塩等であってよい。第3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。チオ尿素誘導体としては、2-メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素等が挙げられる。遷移金属塩としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、バナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。還元剤は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
還元剤は、硬化速度に優れる観点から、好ましくは、チオ尿素誘導体又は遷移金属塩である。チオ尿素誘導体は、例えば、エチレンチオ尿素であってよい。同様の観点から、遷移金属塩は、好ましくはバナジルアセチルアセトネートである。
【0085】
還元剤の含有量は、組成物セットを構成する液全量を基準として、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上であってよく、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0086】
組成物セットは、上述した組成物に用いられ得る式(1)で表される化合物、その他の重合性化合物、及び添加剤を更に含有してもよい。これらの成分は、第一液及び第二液の一方又は両方に含まれていてもよく、第一液及び第二液とは異なる第三液に含まれていてもよい。組成物セットを構成する液全量を基準としたこれらの成分の含有量は、上述した組成物の全量を基準としたこれらの成分の含有量の範囲と同様であってよい。
【0087】
上述した組成物又は組成物セットは、熱伝導性材料(放熱材とも呼ばれる)、粘着剤、構造用接着剤、バッテリー用バインダ、応力緩和剤、シーリング剤、コーティング剤、塗料等の用途に好適である。同様に、上述した組成物の硬化物、又は、組成物セットの混合物の硬化物は、上記の各用途に好適である。
【実施例
【0088】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
<重合性成分>
(A-1)下記式(A-1)で表される化合物(メソゲン骨格を有する(メタ)アクリレート)
【化10】

(A-2)下記に示す手順で合成された式(1-5)で表される化合物(重量平均分子量:15000、式(1-5)中のm1+m2が概ね252±5、n1+n2が概ね63±5の整数(ただし、m1+n1≧100、m2+n2≧100)である混合物、25℃における粘度:50Pa・s)
【化11】

式(1-5)中、-r-はランダム共重合を表す符号である。
(A-3)4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
(A-4)2-エチルヘキシルアクリレート((株)日本触媒製)
<熱伝導性フィラー>
(B-1)アルミナ製フィラー(住友化学(株)製「アドバンストアルミナ AA-18」)
(B-2)アルミナ製フィラー(住友化学(株)製「アドバンストアルミナ AA-3」)
(B-3)アルミナ製フィラー(住友化学(株)製「アドバンストアルミナ AA-04」)
<その他の成分>
(C-1)重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド)
(C-2)シランカップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM-5803」)
(C-3)フェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製、アデカスタブAO-80)
【0090】
[式(1-5)で表される化合物の合成]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、排出管及び加熱ジャケットから構成された500mLフラスコを反応器とし、ポリオキシアルキレン鎖を有するグリコール(三洋化成(株)製「ニューポール75H-90000」)225g、トルエン300gを反応器に加え、45℃、撹拌回転数250回/分で撹拌し、窒素を100mL/分で流し、30分撹拌した。その後、25℃に降温し、降温完了後、塩化アクリロイル2.9gを反応器に滴下し、30分撹拌した。その後、トリエチルアミン3.8gを滴下し、2時間撹拌した。その後、45℃に昇温し、2時間反応させた。反応液を濾過し、濾液を脱溶し、式(1-5)で表される化合物を得た。
【0091】
[組成物及び硬化物の作製]
表1に示す配合比で各成分を混合し、実施例及び比較例の各組成物を得た。次に、組成物をそれぞれ10cm×10cm×0.2mmの型枠(SUS板製)に充填し、SUS板で上蓋をした後に135℃の条件で15分間加熱して硬化させることにより、厚さ0.2mmの組成物の硬化物を得た。
【0092】
[熱伝導率の測定]
作製した硬化物を10mm×10mm×0.2mmの正方形に切断し、グラファイトスプレーにて黒化処理した後、キセノンフラッシュ法(NETZSCH-Geratebau GmbH, Selb/Bayern製「LFA447 nanoflash」)にて25℃の条件での熱拡散率を測定した。この値と、アルキメデス法で測定した密度と、示差走査熱量計(TAインストルメント社製「DSC250」)にて測定した25℃の比熱との積から、下記式に基づいて、硬化物の厚さ方向の熱伝導率を求めた。結果を表1に示す。
熱伝導率λ(W/(m・K))=α×ρ×Cp
α:熱拡散率(m/s)
ρ:密度(kg/cm
Cp:比熱(容量)(kJ/(kg・K))
【0093】
[破断伸び率及び引張弾性率の測定]
実施例における組成物の硬化物については、引っ張り試験機((株)島津製作所製「Autograph EZ-TEST EZ-S」)を用いて、各硬化物の25℃における破断伸び率及び引張弾性率も測定した。この測定においては、0.2mm(膜厚)×5mm(幅)×30mm(長さ)の形状の硬化物について、チャック間距離20mm、引張速度5mm/分の条件で、JIS K7161に基づき測定した。結果を表1に示す。破断伸び率は高いほど好ましく、引張弾性率は低いほど好ましい。
【0094】
【表1】