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  • 特許-焼結磁石の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】焼結磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20240611BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20240611BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20240611BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20240611BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01F41/02 G
B22F3/10 K
B22F3/10 E
F27D5/00
F27D3/12 Z
H01F7/02 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020160343
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053618
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】岩田 槙吾
(72)【発明者】
【氏名】泉 貴教
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-174223(JP,A)
【文献】特開2006-173443(JP,A)
【文献】特開2002-374089(JP,A)
【文献】特開平06-232579(JP,A)
【文献】中国実用新案第201801061(CN,U)
【文献】特開2017-228716(JP,A)
【文献】特公昭36-016955(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
B22F 3/10
F27D 5/00
F27D 3/12
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面とその反対側に位置する第2主面とを有し、面方向に沿って凹部が形成されている非磁性材料からなる板状の第1部材と、前記第1部材の前記凹部に設けられている軟磁性材料からなる板状の第2部材と、を有する台板を用いた焼結磁石の製造方法であって、
磁石用粉末を準備する粉末準備工程と、
前記磁石用粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を前記第2部材の前記第1主面側上に段積みする段積み工程と、
前記成形体を加熱して焼結する焼結工程と、
を含む焼結磁石の製造方法。
【請求項2】
前記台板の前記凹部は、前記第1部材の前記第1主面に形成されている、請求項1に記載の焼結磁石の製造方法
【請求項3】
前記台板の少なくとも前記第2部材の前記第1主面側の面上に保護層を有する、請求項2に記載の焼結磁石の製造方法
【請求項4】
前記台板の前記凹部は複数形成され、前記第2部材は複数の前記凹部のそれぞれに設けられている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の焼結磁石の製造方法
【請求項5】
前記成形体はアーチ状、ブロック状、リング状から選ばれる形状である、請求項に記載の焼結磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼結磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に焼結磁石は、磁石用粉末を準備し、磁石合金に磁場をかけて成形体を作製し、成形体を加熱して焼結(焼成)することによって製造される。そして、弓形形状の焼結磁石を製造する場合、成形体を加熱して焼結する際、焼結用台板と成形体の収縮率が異なる事から、割れや欠けが発生しやすいことが良く知られている。
【0003】
例えば特許文献1では、希土類磁石用合金から形成された弓形形状の成形体を平均表面粗度Raが0.7~45μmの焼結用台板を用いて焼結することで、成形体の割れや欠けの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-305122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形体の欠けは焼結する時だけでなく、成形体を運搬する際にも発生しやすい。特に運搬効率を向上させるために台板上に成形体を段積みする際、段積みされた成形体が倒れたり、成形体が位置ずれしたりすることで欠けが発生しやすい。欠けの発生を抑制するためには、段積み数を減らせばよいが、生産性が低下してしまう。特許文献1には倒れや位置ずれによる欠けの発生を抑制し、生産性を向上させる台板については開示されていない。
【0006】
そこで本開示は、生産性を向上させることが可能な台板および焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の点に鑑みてなされた本開示の台板は、例示的な態様1において、第1主面とその反対側に位置する第2主面とを有し、面方向に沿って凹部が形成されている非磁性材料からなる板状の第1部材と、第1部材の凹部に設けられている軟磁性材料からなる板状の第2部材と、を有する台板である。
【0008】
態様2において、凹部は、第1部材の第1主面に形成されている、態様1に記載の台板である。
【0009】
態様3において、少なくとも第2部材の第1主面側の面上に保護層を有する、態様2に記載の台板である。
【0010】
態様4において、凹部は複数形成され、第2部材は複数の凹部のそれぞれに設けられている態様1乃至態様3のいずれかに記載の台板である。
【0011】
上記の点に鑑みてなされた本開示の焼結磁石の製造方法は、例示的な態様5において、
態様1乃至態様4に記載の台板を用いた焼結磁石の製造方法であって、磁石用粉末を準備する粉末準備工程と、磁石粉末を成形して成形体を得る成形工程と、成形体を第2部材の第1主面側上に段積みする段積み工程と、成形体を加熱して焼結する焼結工程と、を含む焼結磁石の製造方法である。
【0012】
態様6において、成形体はアーチ状、ブロック状、リング状から選ばれる形状である、態様5に記載の焼結磁石の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本開示の台板および焼結磁石の製造方法によれば、生産性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る台板を示す図であり、(a)は台板の断面図を示し、(b)は保護層を省略した台板の上面図を示す。
図2】他の実施形態に係る台板を示す図であり、(a)は第2部材が複数設けられている台板の断面図を示し、(b)は第1部材内に第2部材が設けられている台板の断面図を示す。
図3】実施形態に係る台板上に成形体を段積みした時の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、例示的な実施形態である台板1について、図1、2を参照して説明する。図1は実施形態に係る台板を示す図であり、(a)は台板の断面図を示し、(b)は保護層を省略した台板の上面図を示している。台板1は、第1部材2と、第2部材3と、保護層4とを有している。
【0016】
第1部材2は、板状形状であり、第1主面M1と第1主面M1と反対側の第2主面M2を有している。第1主面M1には凹部2aが形成されている。また、凹部2aは第1主面M1の面方向に沿って形成されており、後述する成形体Gが配置される位置に形成されている。
【0017】
第1部材2の材質は非磁性材料であり、より好ましくは、例えばAl等の常磁性材料を使用するとよい。
【0018】
台板1は、成形体Gが成形されるとすぐに段積みできるよう成形装置の近くに配置される。そのため、成形装置から発生する漏洩磁場の強い影響を受ける。この時、第1部材2の材質を漏洩磁場の影響を受けやすい材質にすると、台板1が動いてしまい、段積みした成形体Gが倒れたり位置ずれしたりすることで欠けが発生しやすくなる。しかし、第1部材2の材質を非磁性材料にすることにより、漏洩磁場の影響を小さくすることが出来るため、台板1が動きにくくなる。そのため、段積みした成形体Gが倒れにくくなり、位置ずれもし難くなる。その結果、欠けの発生を抑制でき、段積み数を多くすることができるため生産性を向上させる事が可能となる。
【0019】
第2部材3は、板状形状であり、第1部材2の凹部2aに設けられている。第2部材3の材質は軟磁性材料であり、例えばFe等を使用することができる。
【0020】
第2部材3は第1部材2の凹部2aに固定されていればよく、例えば、接着剤による固定、ボルトによる固定、あるいは嵌入による固定など、その手段は特に問わない。
【0021】
実施形態の様に第2部材3の材質を軟磁性材料にすると、漏洩磁場の影響を第2部材3で受けるため、成形体Gの動きを抑制でき、倒れや位置ずれによる欠けの発生を抑制することができる。そして、第2部材3が漏洩磁場の影響を受けたとしても、第1部材2の重さや成形体Gの重さが加わることにより、台板1が動きにくくなるため、倒れや位置ずれによる欠けの発生を抑制することが出来る。その結果、段積み数を多くすることができるため生産性を向上させることができる。
【0022】
また、第2部材3の材質を軟磁性材料にすると、成形体Gの磁力によって第2部材3に弱くくっつく。そのため、ハンドリング性やメンテナンス性が向上し、倒れや欠けの発生を抑制することが出来る。更に、成形体Gを段積みする際、磁力を持った成形体G同士が引き寄せあって位置ずれをおこし、倒れや欠けを引き起こすことがあるが、第2部材3に弱くくっつくため、段積みする成形体Gが既に配置された成形体Gを引き寄せ難くなる。そのため、位置ずれし難くなり、倒れや欠けの発生を抑制でき、段積み数を多くすることができるため生産性を向上させることができる。
【0023】
保護層4は、特に第2部材3の錆の抑制や、第2部材3がわずかに磁性を帯びた際に付着した磁粉のメンテナンス性を向上させるために設けられる。実施形態では、第1部材2の第1主面M1と第2部材3の第1主面M1側の面上に設けられている。この様に設けることで、錆による成形体Gの倒れや欠けの発生の抑制や、磁粉が成形体Gに付着することによる製品外観不良を抑制でき、生産性を向上させることができる。なお、保護層4の設け方はこれに限られることは無いが、少なくとも第2部材3上に設けた方がよい。
【0024】
保護層4の材質は、例えばウレタンゴム等の樹脂材料であるが、これに限られることはなく、錆の抑制や付着した磁粉のメンテナンス性が向上する材質であればどの様な材質でもよい。
【0025】
なお、台板1の実施形態はこれに限られない。図2は他の実施形態に係るに係る台板を示す図であり、(a)は第2部材13が複数設けられている台板11の断面図を示し、図2(b)は第1部材22内に第2部材23が設けられている台板21の断面図を示す。実施形態と同じ構成については同じ符号を付与している。
【0026】
図2(a)に示すように、第1部材12の凹部12aを複数設け、第2部材13をそれぞれの凹部12aに配置してもよい。この場合、第2部材13同士の間が開き過ぎると、第2部材13同士の間から漏洩磁場が通過し、成形体Gが漏洩磁場の影響を受けやすくなるため、狭くすることが望ましい。そのため、図2(a)では凹部12aを複数設けているが、凹部12aを一つ設け、複数の第2部材13を設けて第2部材13同士が接する様に設けてもよい。
【0027】
また、図2(b)に示すように、第1部材22内に凹部22aを形成し、第2部材23が第1主面M3側および第2主面4側に露出しないように設けてもよい。この場合、第2部材23が錆びても成形体Gに影響がないため、成形体Gを配置する第1主面M3上に保護層4を設けなくてもよい。なお、保護層4は磁粉の付着によるメンテナンス性を向上させるために第1主面M3上に設けてもよいが、その場合は少なくとも第2部材23上に設けるとよい。また、第1部材22の凹部22aを複数設け、第2部材23をそれぞれの凹部22aに配置してもよいし、凹部22aを一つ設け、複数の第2部材23を設けてもよい。
【0028】
次に、図3を用いて台板1を用いた焼結磁石の製造方法について説明する。まず、磁石用粉末を準備する(粉末準備工程)。磁石用粉末は、目的の焼結磁石に応じて適宜合金を準備する。例えば、フェライト焼結磁石であれば仮焼体を微粉砕した粉末、希土類系焼結磁石であれば希土類系合金(Nd-Fe-B合金など)を微粉砕した粉末を準備する。
【0029】
次に、磁石用粉末を成形して成形体Gを得る(成形工程)。成形では、生産効率を高めるために成形体Gを多数個取りできる成形装置を使用し、磁石用粉末に磁場をかけておこなう。なお、成形装置はこれに限られず1個取りでもよい。この時、成形体Gが成形されるとすぐに段積みできるよう成形装置の近くに台板1を配置することが望ましい。また、成形体Gは弓形形状に形成されているがこれに限られることはなく、例えばアーチ状、ブロック状、リング状など段積み可能な形状に形成されていればどの様な形状であってもよい。
【0030】
図3は、実施形態に係る台板1上に成形体Gを段積みした時の概略断面図を示す。図3に示すように、成形体Gを第2部材3の第1主面M1側上に段積みする(段積み工程)。この様に段積みすることで、成形体Gの倒れや位置ずれによる欠けの発生を抑制することができ、段積み数を多くすることができるため生産性を向上させることができる。なお、生産性を向上させる効果は1個ずつ段積みする場合でも効果が得られるが、1度に多数個を段積みする場合に効率よく多くの成形体Gを段積みできるため、より大きな効果を得ることが出来る。
【0031】
そして、成形体Gを加熱して焼結(焼成)する(焼結工程)。この時、段積みされた成形体Gは、焼結用部材に置き換えをしてから焼結をおこなう。成形体Gを焼結することで焼結磁石ができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示は、生産性を向上させることが可能な台板および焼結磁石の製造方法を提供できる点において、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0033】
1、11、21…台板
2、12、22…第1部材
2a、12a、22a…凹部
3、13、23…第2部材
4…保護層
M1、M3…第1主面
M2、M4…第2主面
G…成形体

図1
図2
図3