(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】光偏向器、偏向装置、距離測定装置、画像投影装置、及び移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240611BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
B41J2/47 101P
(21)【出願番号】P 2020162066
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019214517
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】與田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸人
(72)【発明者】
【氏名】新川 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】赤沼 悟一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修一
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155798(JP,A)
【文献】特開2009-192967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0343795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08、26/10
B41J 2/47
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射するミラー部と、
前記ミラー部と一端が接続されており前記ミラー部を支持する1対の支持部と、
各々の前記支持部の他端と接続されており、前記支持部を変形させて前記ミラー部を第1軸を中心に回動させる1対の第1のアクチュエータ部と、
前記第1のアクチュエータ部を支持する可動枠と、
前記
第1軸を挟み前記第1のアクチュエータ部とは
反対側において、前記可動枠と接続されている第2のアクチュエータ部と、
を有し、
前記第2のアクチュエータ部は、前記支持部には接続されておらず、
前記ミラー部が回動可能な状態において、前記第1のアクチュエータ部と、前記第2のアクチュエータ部は、同じ方向に屈曲変形可能であることを特徴とする光偏向器。
【請求項2】
光を反射するミラー部と、
前記ミラー部と一端が接続されており前記ミラー部を支持する1対の支持部と、
各々の前記支持部の他端と接続されており、前記支持部を変形させて前記ミラー部を第1軸を中心に回動させる1対の第1のアクチュエータ部と、
前記第1のアクチュエータ部を支持する可動枠と、
前記第1軸を挟み前記第1のアクチュエータ部とは反対側において、前記可動枠と接続されている第2のアクチュエータ部と、
を有し、
前記第2のアクチュエータ部は、前記支持部には接続されていないことを特徴とする光偏向器。
【請求項3】
前記ミラー部が回動可能な状態において、前記第1のアクチュエータ部と、前記第2のアクチュエータ部は、同じ位相で屈曲変形することを特徴とする請求項1
または2に記載の光偏向器。
【請求項4】
前記可動枠と一端が接続されており、前記可動枠を支持する第3のアクチュエータ部と、
前記第3のアクチュエータ部の他端と接続されている固定枠と、
を有し、前記第3のアクチュエータ部は前記可動枠を、前記第1軸と直交する第2軸を中心に回動可能に支持していることを特徴とする請求項1
から3のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項5】
前記第2のアクチュエータ部は、前記第1軸を対称軸として、前記第1のアクチュエータ部と対称となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項6】
前記第1のアクチュエータ部と、前記第2のアクチュエータ部は、形状が異なっていることを特徴とする請求項
5に記載の光偏向器。
【請求項7】
前記第2のアクチュエータ部における前記ミラー部と最も近い辺の形状は、前記ミラー部の外周形状の少なくとも一部に沿った形状であることを特徴とする請求項
6に記載の光偏向器。
【請求項8】
前記第1軸を対称軸として、前記第1のアクチュエータ部と対称となる位置に設けられた前記可動枠に一端が接続された1対の第4のアクチュエータ部と、
前記
第1軸を挟み前記第4のアクチュエータ部とは反対側において、前記可動枠と接続されている第5のアクチュエータ部と、
を有し、
前記第4のアクチュエータ部の他端は、前記支持部に接続されており、
前記第5のアクチュエータ部は、前記支持部には接続されていないことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項9】
前記第1軸を対称軸として、前記第1のアクチュエータ部と対称となる位置に設けられた前記可動枠に一端が接続された1対の第4のアクチュエータ部と、
前記第1軸を挟み前記第4のアクチュエータ部とは反対側において、前記可動枠と接続されている第5のアクチュエータ部と、
を有し、
前記第4のアクチュエータ部の他端は、前記支持部に接続されており、
前記第5のアクチュエータ部は、前記支持部には接続されておらず、
前記第4のアクチュエータ部及び前記第5のアクチュエータ部は、前記第1のアクチュエータ部及び前記第2のアクチュエータ部と、180度異なる位相で屈曲変形することを特徴とする請求項
3に記載の光偏向器。
【請求項10】
前記可動枠と一端が接続されており、前記可動枠を支持する第3のアクチュエータ部と、
前記第3のアクチュエータ部の他端と接続されている固定枠と、
を有し、前記第3のアクチュエータ部は前記可動枠を、前記第1軸と直交する第2軸を中心に回動可能に支持していることを特徴とする請求項9に記載の光偏向器。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか1項に記載の光偏向器と、
光源と、
を備えた偏向装置。
【請求項12】
請求項1から
10のいずれか1項に記載の光偏向器を備える距離測定装置。
【請求項13】
請求項1から
10のいずれか1項に記載の光偏向器を備える画像投影装置。
【請求項14】
請求項
12に記載の距離測定装置、請求項
13に記載の画像投影装置の少なくとも1つを有する移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向器、偏向装置、距離測定装置、画像投影装置、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造技術を応用したマイクロマシニング技術の発達に伴い、シリコンやガラスを微細加工して製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの開発が進んでいる。
【0003】
MEMSデバイスとして、反射面を設けたミラー部とトーションバー、梁部(弾性梁)をウエハ上に一体に形成し、梁部上に薄膜化した圧電材料を重ね合わせて構成した圧電アクチュエータにより、ミラー部を駆動(回動)させる2次元光偏向器が知られている。
【0004】
上記のような2次元光偏向器では、ミラー部の支持層は圧電梁部の支持層と異なる厚さで形成される構成が開示されている。(例えば、特許文献1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の2次元光偏向器では、トーションバーを挟んで対向配置された1対または2対の第1の圧電アクチュエータは、トーションバーの一方の側の圧電アクチュエータに印加される第1の交流電圧と、トーションバーの他方の側の圧電アクチュエータに印加される第2の交流電圧とは互いに180度位相が異なるため、180度位相の異なる第1の圧電アクチュエータ(主走査)の振動が、第1の圧電アクチュエータに接続された可動枠、および第2の圧電アクチュエータ(副走査)に伝搬し、可動枠において回動軸(第1軸)を中心に、意図しない回動(振動)が生じる場合があり、このような光偏向器を用いて画像を形成した場合、高画質な画像を形成することができなかった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、光偏向器を用いて画像を形成する際に、形成される画像を高画質にすることのできる光偏向器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の一態様に係る光偏向器は、光を反射するミラー部と、前記ミラー部と一端が接続されており前記ミラー部を支持する1対の支持部と、各々の前記支持部の他端と接続されており、前記支持部を変形させて前記ミラー部を第1軸を中心に回動させる1対の第1のアクチュエータ部と、前記第1のアクチュエータ部を支持する可動枠と、前記第1軸を挟み前記第1のアクチュエータ部とは反対側において、前記可動枠と接続されている第2のアクチュエータ部と、を有し、前記第2のアクチュエータ部は、前記支持部には接続されておらず、前記ミラー部が回動可能な状態において、前記第1のアクチュエータ部と、前記第2のアクチュエータ部は、同じ方向に屈曲変形可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、光偏向器を用いて画像を形成する際に、形成される画像を高画質にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】片持ち構造の光偏向器の一例を示す構造図である。
【
図2】両持ち構造の光偏向器の一例を示す構造図である。
【
図3】第1の実施形態における光偏向器の構造図(1)である。
【
図4A】第1の実施形態における光偏向器の構造図(2)である。
【
図4B】第1の実施形態における光偏向器の構造図(3)である。
【
図5】第1の実施形態における光偏向器の説明図(1)である。
【
図6】第1の実施形態における光偏向器の説明図(2)である。
【
図7】第1の実施形態における光偏向器の駆動波形の説明図である。
【
図8】第2の実施形態における光偏向器の構造図である。
【
図10】光走査システムの一例のハードウェア構成図である。
【
図12】光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
【
図13】ヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図14】ヘッドアップディスプレイ装置の一例の概略図である。
【
図15】光書込装置を搭載した画像形成装置の一例の概略図である。
【
図17】ライダ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図19】パッケージングされた光偏向器の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〔第1の実施形態〕
最初に、主走査方向に光偏向するための2つ又は4つの圧電アクチュエータのすべてがミラー部に接続されている構成の光偏向器について説明する。
【0012】
図1は、主走査方向に光偏向するための2つの圧電アクチュエータ部903a、903bのすべてがミラー部101に接続されている構成の片持ち構造の光偏向器である。
【0013】
ミラー部101は光を反射する反射面14を有している。トーションバー902a、902bは、ミラー部101と圧電アクチュエータ部903a、903bとを接続し、ミラー部101を第1軸を中心に回動可能な状態で支持している。可動枠104は、可動枠104の内側で、圧電アクチュエータ部903a、903bを支持している。
【0014】
可動枠104の外側には、第2軸を中心に可動枠104を回動可能な状態で支持する1対の圧電アクチュエータ部905a、905bが設けられている。圧電アクチュエータ部905a、905bは、可動枠104と固定枠106との間に設けられており、固定枠106は、圧電アクチュエータ部905a、905bを支持している。
【0015】
尚、圧電アクチュエータ部903a、903bには、不図示の下部電極、圧電部、上部電極が順に形成されている。可動枠104に支持され、トーションバー902a、902bが接続された圧電アクチュエータ部903a、903bは、上部電極及び下部電極を介し駆動電圧が印加されると変形する。圧電部の変形により、圧電アクチュエータ部903a、903bは屈曲変形し、トーションバー902a、902bがねじれる。
【0016】
また、
図2は、主走査方向に光偏向するための4つの圧電アクチュエータ部913a、913b、913c、913dのすべてがミラー部101に接続されている構成の両持ち構造の光偏向器である。
【0017】
トーションバー902a、902bは、ミラー部101と圧電アクチュエータ部913a、913b、913c、913dとを接続し、ミラー部101を第1軸を中心に回動可能な状態で支持している。可動枠104は、可動枠104の内側で、圧電アクチュエータ部913a、913b、913c、913dを支持している。
【0018】
尚、圧電アクチュエータ部913a、913b、913c、913dには、不図示の下部電極、圧電部、上部電極が順に形成されている。可動枠104に支持され、トーションバー902a、902bが接続された圧電アクチュエータ部913a、913b、913c、913dは、上部電極及び下部電極を介し駆動電圧が印加されると変形する。圧電部の変形により、圧電アクチュエータ部913a、913b、913c、913dは屈曲変形し、トーションバー902a、902bがねじれる。
【0019】
図1又は
図2に示される光偏向器では、主走査側の圧電アクチュエータによる振動が、主走査側の圧電アクチュエータに接続された可動枠及び副走査側の圧電アクチュエータに伝搬し、可動枠において、回動軸(第1軸)を中心に意図しない余分な回動(振動)が生じる場合がある。このように、光偏向器において、意図しない余分な振動が加わると、所望とする光偏向を正確に行うことが困難となる。例えば、この光偏向器を用いて画像を形成した場合に、形成される画像に暗線等が生じ画質の低下を招く場合がある。このため、高画質な画像を形成することのできる光偏向器が求められている。
【0020】
第1の実施形態における光偏向器について説明する。本実施形態における光偏向器は、
図3に示されるように、圧電アクチュエータを用いた2次元光偏向器である。
【0021】
本実施形態における光偏向器は、ミラー部101、1対のトーションバー102a、102b、1対の第1の圧電アクチュエータ部103a、103b、第2の圧電アクチュエータ部103c、103d、可動枠104、第3の圧電アクチュエータ部105a、105b、固定枠106を有する。尚、本願においては、トーションバーを支持部と記載する場合がある。
【0022】
ミラー部101は光を反射する反射面14を有している。トーションバー102a、102bは、ミラー部101と第1の圧電アクチュエータ部103a、103bとを接続し、ミラー部101を第1軸を中心に回動可能な状態で支持している。具体的には、トーションバー102a、102bは、一端がミラー部101と接続されており、他端が第1の圧電アクチュエータ部103a、103bと接続されている。
【0023】
可動枠104は、可動枠104の内側で、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bと、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dを支持している。具体的には、可動枠104の内側の-X側で第1の圧電アクチュエータ部103a、103bを支持しており、+X側で第2の圧電アクチュエータ部103c、103dを支持している。第1の圧電アクチュエータ部103a、103bと、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dとは、第1軸について対向する位置に設けられており、より好ましくは第1軸を対称軸として略対称の位置に設けられている。第2の圧電アクチュエータ部103c、103dは、トーションバー102a、102bとは接続されてはいない。
【0024】
可動枠104の外側には、第2軸を中心に可動枠104を回動可能な状態で支持する1対の第3の圧電アクチュエータ部105a、105bが設けられている。第3の圧電アクチュエータ部105a、105bは、可動枠104と固定枠106との間に設けられており、固定枠106は、第3の圧電アクチュエータ部105a、105bを支持している。尚、第1軸と第2軸は直交している。また、第3の圧電アクチュエータ部105a、105bには、Y方向に延びる複数の梁部が設けられており、隣り合う梁部は接続部により接続されている。第3の圧電アクチュエータ部105a、105bに設けられた複数の梁部には、各々の圧電駆動部が設けられており、圧電駆動部群Aにおける圧電駆動部と、圧電駆動部群Bにおける圧電駆動部とが交互に設けられている。各々の圧電駆動部には、不図示の下部電極、圧電部、上部電極が順に形成されている。
【0025】
また、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bには、不図示の下部電極、圧電部、上部電極が順に形成されている。可動枠104に支持され、トーションバー102a、102bの他端が接続された第1の圧電アクチュエータ部103a、103bは、上部電極及び下部電極を介し駆動電圧が印加されると変形する。圧電部の変形により、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bは屈曲変形し、トーションバー102a、102bがねじれる。
【0026】
トーションバー102a、102bのねじれが回動力となり、ミラー部101は第1軸回りに往復回動する。第1の圧電アクチュエータ部103a、103bに印加される駆動電圧の波形は正弦波等であり、ミラー部101は、正弦波の駆動電圧波形の周期で共振駆動し、往復回動する。
【0027】
第2の圧電アクチュエータ部103c、103dは、上部電極、及び下部電極を通じて駆動電圧が印加されると変形する。圧電部の変形により、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dは、屈曲変形するが、トーションバー102a、102bには接続されてはいないため、ミラー部101を回動させるための回転トルクは発生しない。
【0028】
従って、可動枠104に支持されている第1の圧電アクチュエータ部103a、103b及び第2の圧電アクチュエータ部103c、103dは、駆動電圧が印加されると屈曲変形する。これにより、可動枠104及び第2の圧電アクチュエータ部103c、103dにも振動が伝搬する。
【0029】
本実施形態においては、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bに印加される交流電圧と、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dに印加される交流電圧の波形は、略同位相、好ましくは同位相に設定される。これにより、第1の圧電アクチュエータ部103a、103b、及び、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dから伝搬した振動により、可動枠104が第1軸を中心として回転する余分な動作が低減される。また、可動枠104の余分な動作が低減されることにより、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bの駆動力がミラー部101へ効率よく伝達されることから、ミラー部101の駆動感度を向上することができる。
【0030】
即ち、ミラー部101と、トーションバー102a、102b、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bにより構成される振動系のミラー回転固有振動数f1とすると、ミラー回転固有振動数f1に対して、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dにより構成される振動系の梁部曲げ固有振動数f2を調整し、ミラー回転固有振動数f1と梁部曲げ固有振動数f2とを等しくして、同位相で駆動する。これにより、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bから可動枠104へ伝搬する余分な動作を効率的に低減することが可能となる。
【0031】
例えば、
図3に示されるように、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bよりも、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dの幅を広くするとともに、長さを長くする。これにより、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dの慣性モーメントを大きくし、梁部曲げ固有振動数f2を、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bを含む構成の振動系のミラー回転固有振動数f1に対して調整することができる。なお、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bと第2の圧電アクチュエータ部103c、103dは、略同等の特性を有する圧電素子であることが好ましい。略同等の特性を有する圧電素子を用いることにより、高画質な画像を形成することができる。
【0032】
また、
図4A及び
図4Bに示されるように、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dにおいて、可動枠104と接続されている側とは反対側の端部103e、103fの幅を他の部分よりも広くする形状にすることにより調整してもよい。これにより、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dの慣性モーメントを大きくすることができる。このようにして、梁部曲げ固有振動数f2を、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bを含む構成の振動系のミラー回転固有振動数f1に対して調整することができる。
【0033】
このとき、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dの端部103e、103fにおけるミラー部101と最も近い辺の形状は、ミラー部101の外周形状の少なくとも一部に沿った形状であることが好ましい。例えば、
図4Bのように、端部103e、103fにおけるミラー部101側に対向する辺S1、S2を、辺S1、S2に最も近いミラー部101の外周部分の形状に沿った形状とすることが好ましい。これにより、大きな慣性モーメントを稼ぎつつ、ミラー部101への接触を防止可能となることから、高画質な画像を形成できる。なお、
図4Bにおいては、ミラー部101の外周形状が円である場合について図示しているが、ミラー部101の外周形状が円以外の形状である場合についても同様である。
【0034】
次に、
図5及び
図6に基づき、本実施形態における光偏向器を駆動について説明する。
図5及び
図6は、
図3における一点鎖線3A-3Bにおいて切断した断面図である。
図5は、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dが非駆動の状態を示し、
図6は、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dが駆動している状態を示す。
【0035】
図5は、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dを駆動させることなく、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bを駆動した場合を示す。この場合、可動枠104の第1の圧電アクチュエータ部103a、103bに接続された側と、回動軸(第1軸)を挟み可動枠104の対向する側とは、反対方向に向かう力が働く。即ち、破線矢印で示されるように、可動枠104の第1の圧電アクチュエータ部103a、103bに接続された側に、上に向かう力が働いたときには、回動軸(第1軸)を挟み可動枠104の対向する側には、下に向かう力が働く。
【0036】
よって、可動枠104はミラー部101の回動軸(第1軸)を中心に、慣性モーメントが生じ回転動作するが、この場合、本来のミラー部101の回転動作に加えて、可動枠104に余分な回転動作が生じる。このため、光偏向器により描画された画像にずれが発生しやすくなる。
【0037】
本実施形態においては、
図6に示されるように、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bに印加される交流電圧と、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dに印加される交流電圧の波形を同位相にして印加する。この場合、
図6に示されるように、可動枠104の第1の圧電アクチュエータ部103a、103bに接続された側と、回動軸(第1軸)を挟み可動枠104の対向する側とは、同じ方向に向かう力が働く。即ち、破線矢印で示されるように、可動枠104の第1の圧電アクチュエータ部103a、103bに接続された側に、下に向かう力が働いたときには、回動軸(第1軸)を挟み可動枠104の対向する側にも、下に向かう力が働く。このため、第1の圧電アクチュエータ部103a、103b、及び、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dから伝搬した振動により、可動枠104が第1軸を中心として回転する余分な動作を低減することができる。
【0038】
即ち、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bを含む構成の振動系のミラー回転固有振動数f1に対して、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dにより構成される振動系の梁部曲げ固有振動数f2を調整する。これにより、ミラー回転固有振動数f1と梁部曲げ固有振動数f2とを等しくして、同位相で駆動する。これにより、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bから、可動枠104へ伝搬する余分な動作をより効率的に低減することが可能となる。
【0039】
このとき、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bと第2の圧電アクチュエータ部103c、103dを同位相で駆動するため、位相を調整する特別な駆動回路を増設する必要がなくなる。そのため、特別な駆動回路の増設による画質の劣化を抑制でき、高画質な画像を形成できる。また、特別な回路を増設する必要がなくなるため、装置の小型化や簡便な駆動が可能となる。
【0040】
図7は、本実施形態における光偏向器の第1の圧電アクチュエータ部103a、103bと、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dに印加される駆動波形を示す。固有振動数f1、f2を調整することが困難である場合には、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dの駆動電圧を調整することにより、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bから、可動枠104へ伝搬する余分な動作をより効率的に低減することが可能となり、高画質な画像を形成できる。
【0041】
具体的には、固有振動数f1と固有振動数f2とが大きくずれている場合には、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bに対して、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dの駆動電圧を調整する。これにより、可動枠104において、第1の圧電アクチュエータ部103a、103bが接続されている側と、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dが接続されている側において発生する力が同じとなるようにすることが可能である。この結果、可動枠104の余分な回転動作を低減することができる。可動枠104に発生する力が同じとなるのであれば、電圧の関係は逆であっても構わない。
【0042】
尚、本願発明の発明者は、有限要素シミュレーションにより、第2の圧電アクチュエータ部103c、103dの形状(幅、長さ)及び駆動電圧を調整することにより、可動枠104における余分な回転を半分以下に低減可能であることを確認している。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態における光偏向器について説明する。本実施形態における光偏向器は、
図8に示されるように、圧電アクチュエータを用いた2次元光偏向器である。
【0044】
本実施形態における光偏向器は、ミラー部101、1対のトーションバー102a、102b、1対の第1の圧電アクチュエータ部203a、203b、1対の第4の圧電アクチュエータ部203c、203d、第5の圧電アクチュエータ部203e、第2の圧電アクチュエータ部203f、可動枠104、第3の圧電アクチュエータ部105a、105b、固定枠106を有する。
【0045】
ミラー部101は光を反射する反射面14を有している。トーションバー102aは、一端がミラー部101と接続されており、他端が第1の圧電アクチュエータ部203a及び第4の圧電アクチュエータ部203cと接続されている。トーションバー102bは、一端がミラー部101と接続されており、他端が第1の圧電アクチュエータ部203b及び第4の圧電アクチュエータ部203dと接続されている。ミラー部101は、1対のトーションバー102a、102bにより、第1軸を中心に回動可能な状態で支持されている。
【0046】
可動枠104は、可動枠104の内側で、第1の圧電アクチュエータ部203a、203bと、第4の圧電アクチュエータ部203c、203dを支持している。具体的には、可動枠104の内側の-X側で第1の圧電アクチュエータ部203a、203bを支持しており、+X側で第4の圧電アクチュエータ部203c、203dを支持している。
【0047】
更に、可動枠104の内側の-X側では、第5の圧電アクチュエータ部203eを支持しており、可動枠104の内側の+X側では、第2の圧電アクチュエータ部203fを支持している。第5の圧電アクチュエータ部203e及び第2の圧電アクチュエータ部203fは、トーションバー102a、102bとは接続されてはいない。
【0048】
可動枠104の外側には、可動枠104が第2軸を中心に回動可能な状態で支持する1対の第3の圧電アクチュエータ部105a、105bが設けられている。第3の圧電アクチュエータ部105a、105bは、可動枠104と固定枠106との間に設けられており、固定枠106は、第3の圧電アクチュエータ部105a、105bを支持している。
【0049】
可動枠104に支持され、トーションバー102a、102bの他端が接続された第1の圧電アクチュエータ部203a、203b、第4の圧電アクチュエータ部203c、203dは、上部電極、及び下部電極を通じて駆動電圧が印加されると変形する。圧電部の変形により、第1の圧電アクチュエータ部203a、203b、及び、第4の圧電アクチュエータ部203c、203dは屈曲変形し、トーションバー102a、102bがねじれる。
【0050】
このようなトーションバー102a、102bのねじれが回動力となり、ミラー部101は、第1軸を中心に往復回動する。第1の圧電アクチュエータ部203a、203b、及び、第4の圧電アクチュエータ部203c、203dに印加される駆動電圧の波形は正弦波等である。第1の圧電アクチュエータ部203a、203bに印加される駆動波形と、第4の圧電アクチュエータ部203c、203dに印加される駆動波形は位相が180度異なっており、ミラー部101は、正弦波の駆動電圧波形の周期で共振駆動し、往復回動する。
【0051】
可動枠104に支持される第5の圧電アクチュエータ部203e、第2の圧電アクチュエータ部203fは、上部電極、及び下部電極を通じて駆動電圧が印加されると変形する。圧電部の変形により、第5の圧電アクチュエータ部203e、第2の圧電アクチュエータ部203fは屈曲変形するが、トーションバー102a、102bには接続されてはいないため、ミラー部101を回動させる回転トルクは発生しない。
【0052】
可動枠104に支持された第1の圧電アクチュエータ部203a、203b、第4の圧電アクチュエータ部203c、203d、第5の圧電アクチュエータ部203e、第2の圧電アクチュエータ部203fは、駆動電圧が印加されると屈曲変形する。この屈曲変形は、可動枠104、及び、第3の圧電アクチュエータ部105a、105bにも振動が伝搬する。
【0053】
本実施形態においては、第1の圧電アクチュエータ部203a、203bに印加される交流電圧と、第2の圧電アクチュエータ部203fに印加される交流電圧の波形を同位相にする。また、第4の圧電アクチュエータ部203c、203dに印加される交流電圧と、第5の圧電アクチュエータ部203eに印加される交流電圧の波形を同位相にする。これにより、第1の圧電アクチュエータ部203a、203b、及び、第4の圧電アクチュエータ部203c、203dより伝搬した振動により、可動枠104が第1軸を中心として回転する余分な動作を低減することが可能となる。
【0054】
以上に説明した本実施形態に係る光偏向器は、光走査システム、画像投影装置、光書込装置、距離測定装置に使用することができる。
【0055】
[光走査システム]
まず、
図9~
図12を参照して、本発明の実施形態に係る駆動装置を適用した光走査システムについて詳細に説明する。
【0056】
【0057】
図9に示すように、光走査システム10は、駆動装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を光偏向器13の有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。
【0058】
光走査システム10は、駆動装置11、光源装置12、及び反射面14を有する光偏向器13を含む。光走査システム10は、本発明に係る偏向装置の代表的な一例である。
【0059】
駆動装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。光偏向器13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
【0060】
駆動装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12および光偏向器13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12および光偏向器13に駆動信号を出力する。
【0061】
光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向または2軸方向の少なくともいずれかに可動させる。
【0062】
これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた駆動装置11の制御によって、光偏向器13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光を偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。
【0063】
なお、光偏向器の詳細および本実施形態の駆動装置による制御の詳細については後述する。
【0064】
次に、
図10を参照して、光走査システム10の一例のハードウェア構成について説明する。
【0065】
図10は、光走査システム10の一例のハードウェア構成図である。
【0066】
図10に示すように、光走査システム10は、駆動装置11、光源装置12および光偏向器13を備え、それぞれが電気的に接続されている。
【0067】
[駆動装置]
このうち、駆動装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26を備えている。
【0068】
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、駆動装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
【0069】
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
【0070】
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25および光偏向器ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。
【0071】
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
【0072】
光源装置ドライバ25は、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0073】
光偏向器ドライバ26は、入力された制御信号に従って光偏向器13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0074】
駆動装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、駆動装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、駆動装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
【0075】
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順や書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により物体認識を行う場合は、光走査情報は物体認識用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。
【0076】
本実施形態に係る駆動装置11は、CPU20の命令および
図10に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
【0077】
[駆動装置の機能構成]
次に、
図11を参照して、光走査システム10の駆動装置11の機能構成について説明する。
図11は、光走査システムの駆動装置の一例の機能ブロック図である。
【0078】
図11に示すように、駆動装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
【0079】
制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば、制御部30は、制御手段を構成し、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。
【0080】
駆動信号出力部31は、印加手段を構成し、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12または光偏向器13に駆動信号を出力する。駆動信号出力部31(印加手段)は、例えば、駆動信号を出力する対象ごとに設けられてもよい。
【0081】
駆動信号は、光源装置12または光偏向器13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミングおよび照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、光偏向器13においては、光偏向器13の有する反射面14を可動させるタイミングおよび可動範囲を制御する駆動電圧である。なお、駆動装置は、光源装置12や受光装置等の外部装置から光源の照射タイミングや受光タイミングを取得し、これらを光偏向器13の駆動に同期するようにしてもよい。
【0082】
[光走査処理]
次に、
図12を参照して、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について説明する。
図12は、光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
【0083】
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。
【0084】
ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。
【0085】
ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12および光偏向器13に出力する。
【0086】
ステップS14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12および光偏向器13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
【0087】
なお、上記光走査システム10では、1つの駆動装置11が光源装置12および光偏向器13を制御する装置および機能を有しているが、光源装置用の駆動装置および光偏向器用の駆動装置と、別体に設けてもよい。
【0088】
また、上記光走査システム10では、一つの駆動装置11に光源装置12および光偏向器13の制御部30の機能および駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した駆動装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射面14を有した光偏向器13と駆動装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
【0089】
本実施形態に係る光偏向器を光走査システムに用いることにより、高画質での光走査が可能となる。
【0090】
[画像投影装置]
次に、
図13及び
図14を参照して、本実施形態の駆動装置を適用した画像投影装置について詳細に説明する。
【0091】
図13は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態に係る概略図である。また、
図14はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
【0092】
画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
【0093】
図13に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。
【0094】
これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
【0095】
図14に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R,501G,501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメートレンズ502,503,504と、2つのダイクロイックミラー505,506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する光偏向器13にて偏向される。
【0096】
そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。
【0097】
なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R,501G,501B、コリメートレンズ502,503,504、ダイクロイックミラー505,506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
【0098】
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
【0099】
レーザ光源501R,501G,501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメートレンズ502,503,504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505,506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する光偏向器13によって二次元走査される。光偏向器13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
【0100】
光偏向器13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この光偏向器13の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0101】
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した光偏向器13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。
【0102】
例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
【0103】
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
【0104】
本実施形態に係る光偏向器を画像投影装置に用いることにより、高画質での画像投影が可能となる。
【0105】
[光書込装置]
次に、
図15及び
図16を参照して、本実施形態の駆動装置11を適用した光書込装置について詳細に説明する。
【0106】
図15は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また、
図16は、光書込装置の一例の概略図である。
【0107】
図15に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本または複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
【0108】
図16に示すように、光書込装置600において、レーザ素子などの光源装置12からのレーザ光は、コリメートレンズなどの結像光学系601を経た後、反射面14を有する光偏向器13により1軸方向または2軸方向に偏向される。
【0109】
そして、光偏向器13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、反射ミラー部602cからなる走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。
【0110】
また、光源装置12および反射面14を有する光偏向器13は、駆動装置11の制御に基づき駆動する。
【0111】
このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。
【0112】
また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
【0113】
上記光書込装置に適用される反射面14を有した光偏向器13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。
【0114】
また、光偏向器13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また光偏向器13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である。
【0115】
本実施形態に係る光偏向器を光書込装置に用いることにより、高画質での光書込みが可能となる。
【0116】
[距離測定装置]
次に、
図17及び
図18を参照して、上記本実施形態の駆動装置を適用した距離測定装置について詳細に説明する。
【0117】
図17は、距離測定装置の一例であるライダ(LiDAR;Laser Imaging Detection and Ranging)装置を搭載した自動車の概略図である。また、
図18はライダ装置の一例の概略図である。
【0118】
物体認識装置は、対象方向の物体を認識する装置であり、例えばレーザレーダ装置である。
【0119】
図17に示すように、ライダ装置700は、例えば自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702を認識する。また、ライダ装置700は、進行方向の情報を収集することを目的として、自動車の前照灯を搭載する灯部ユニットに搭載してもよいし、車両の前後左右のそれぞれに計4つ以上のライダ装置を設けてもよい。尚、ライダ装置700が搭載されるものとしては、自動車に限定されず、道路情報や地物に関する情報を収集することを目的とする計測車両であってもよいし、搭乗者の移動や旅客輸送、運送を目的とした一般車両等といった移動体であってもよい。
【0120】
図18に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と、平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射面14を有する光偏向器13で1軸もしくは2軸方向に走査される。そして、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12および光偏向器13は、駆動装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。
【0121】
すなわち、反射光は受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。信号処理回路708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
【0122】
測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、または受光した撮像素子707の画素ごとの位相差によって、被対象物702の有無を認識し、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
【0123】
反射面14を有する光偏向器13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。
【0124】
このようなライダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を認識することができる。上記距離測定装置では、一例としてのライダ装置700の説明をしたが、距離測定装置は、反射面14を有した光偏向器13を駆動装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702を認識する装置であればよく、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0125】
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材などにも同様に適用することができる。
【0126】
本実施形態に係る光偏向器を距離測定装置に用いることにより、高精度での物体認識及び高精度での物体との距離情報の算出が可能となる。
【0127】
[パッケージング]
次に、
図19を参照して、本実施形態の駆動装置により制御される光偏向器のパッケージングについて説明する。
【0128】
図19は、パッケージングされた光偏向器の一例の概略図である。
【0129】
図19に示すように、光偏向器13は、パッケージ部材801の内側に配置される取付部材802に取り付けられ、パッケージ部材の一部を透過部材803で覆われて、密閉されることでパッケージングされる。
【0130】
さらに、パッケージ内は窒素等の不活性ガスが密封されている。これにより、光偏向器13の酸化による劣化が抑制され、さらに温度等の環境の変化に対する耐久性が向上する。
【0131】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0132】
10 光走査システム
11 駆動装置
12、12b 光源装置
13 光偏向器
14 反射面
15 被走査面
25 光源装置ドライバ
26 光偏向器ドライバ
30 制御部
31 駆動信号出力部
50 レーザヘッドランプ
51 ミラー
52 透明板
60 ヘッドマウントディスプレイ
60a フロント
60b テンプル
61 導光板
62 ハーフミラー
63 装着者
101 ミラー部
102a、102b トーションバー
103a、103b 第1の圧電アクチュエータ部
103c、103d 第2の圧電アクチュエータ部
104 可動枠
105a、105b 第3の圧電アクチュエータ部
400 自動車(車両の一例)
500 ヘッドアップディスプレイ装置(画像投影装置の一例、ヘッドアップディスプレイの一例)
650 レーザプリンタ
700 ライダ装置(距離測定装置の一例)
701 自動車
702 被対象物
801 パッケージ部材
802 取付部材
803 透過部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】