IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図1
  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図2
  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図3
  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図4
  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図5
  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図6
  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図7
  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240611BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G9/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020190951
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080021
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】不破 一興
(72)【発明者】
【氏名】重里 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 由佳
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-211790(JP,A)
【文献】特開2004-279591(JP,A)
【文献】特開2008-26675(JP,A)
【文献】特開平6-51553(JP,A)
【文献】特開2008-242473(JP,A)
【文献】特開2008-15087(JP,A)
【文献】特開2007-140139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃部材と、前記被清掃部材上に残留するトナーを除去するクリーニング部を備える画像形成装置であって、
前記クリーニング部は、前記被清掃部材の表面に当接して前記被清掃部材の表面に付着したトナーを除去する弾性部材を有するクリーニングブレードを備え、
前記弾性部材は、前記被清掃部材に当接する先端稜線部を有し、
前記弾性部材が、前記先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、平均分散径が0.1μm~5.0μmの、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有し、
前記トナーは、粒子径が3μm以下である粒子を20個数%以上含む画像形成装置。
【請求項2】
前記先端稜線部の表面から深さ20μmの位置における前記弾性部材のマルテンス硬度HMが、0.5N/mm2以上1.5N/mm2未満である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ポリシロキサン構造に由来するドメインの平均分散径が、0.5μm~2.0μmである請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記弾性部材が、単層構造又は多層構造である請求項1~3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナーは、前記粒子径が3μm以下である粒子を25個数%~55個数%含む請求項1~4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
像担持体と、
前記像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、
前記静電潜像を前記トナーを用いて現像して可視像を形成する現像部と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写部と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着部と、
を備え、
前記被清掃部材が、前記像担持体を含む請求項1~5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
被清掃部材の表面に残留するトナーをクリーニングブレードによって除去するクリーニング工程を含み、
前記クリーニングブレードは、前記被清掃部材の表面に当接して前記被清掃部材の表面に付着したトナーを除去する弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記被清掃部材に当接する先端稜線部を有し、
前記弾性部材が、前記先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、平均分散径が0.1μm~5.0μmの、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有し、
前記トナーは、粒子径が3μm以下である粒子を20個数%以上含む画像形成方法。
【請求項8】
像担持体の上に静電潜像を形成し、前記静電潜像を前記トナーを用いて現像して可視像を形成し、前記可視像を記録媒体に転写し、前記記録媒体に転写された転写像を定着し、
前記被清掃部材が、前記像担持体を含む請求項7に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置では、感光体ドラム(像担持体)、感光体ベルト、中間転写ベルト、中間転写ドラム等の被清掃部材の表面に残留した転写残トナーを除去するため、クリーニングブレードが用いられている。クリーニングブレードは、その当接部を像担持体の周面に押し当て、被清掃部材上に残留するトナーを掻き落とすことで除去している。
【0003】
クリーニングブレードとして、例えば、クリーニングブレードのエラストマー基材中にアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有する画像形成装置用クリーニングブレードがある(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、画像形成装置用クリーニングブレードを備える画像形成装置を高温及び多湿の環境下で長期間使用しても、クリーニング性を維持できることについては記載されていない。画像形成装置が高温及び多湿の環境下に長期間設置されている状態でクリーニングブレードを使用しても、像担持体上に残留するトナーを除去してクリーニング性を維持できる必要がある。
【0005】
本発明の一態様は、過酷な環境下においても、優れたクリーニング性を有することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置の一態様は、被清掃部材と、前記被清掃部材上に残留するトナーを除去するクリーニング部を備える画像形成装置であって、前記クリーニング部は、前記被清掃部材の表面に当接して前記被清掃部材の表面に付着したトナーを除去する弾性部材を有するクリーニングブレードを備え、前記弾性部材は、前記被清掃部材に当接する先端稜線部を有し、前記弾性部材が、前記先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、平均分散径が0.1μm~5.0μmの、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有し、前記トナーは、粒子径が3μm以下である粒子を20個数%以上含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様は、過酷な環境下においても、優れたクリーニング性を有することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る画像形成装置が備えるクリーニングブレードを示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る画像形成装置が備えるクリーニングブレードが感光体の表面に当接している状態を示す説明図である。
図3】先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域を説明するための図である。
図4】先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域を説明するための図である。
図5】先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域を説明するための図である。
図6】先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域を説明するための図である。
図7】一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
図8】画像形成装置が備える作像ユニットの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
<画像形成装置>
一実施形態に係る画像形成装置は、被清掃部材である像担持体と、像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像部と、可視像を記録媒体に転写する転写部と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着部と、像担持体上に残留するトナーを除去するクリーニング部とを備える。なお、一実施形態に係る画像形成装置は、クリーニング補助部として像担持体に潤滑剤を塗布する機構等、更に必要に応じて、その他の構成を有してもよい。
【0011】
なお、被清掃部材には、画像形成装置に備えられる、感光体ドラム(像担持体)以外に、感光体ベルト、中間転写ベルト、中間転写ドラム等を含む。
【0012】
以下、一実施形態に係る画像形成装置の各構成を説明するに当たり、クリーニング部を先に説明する。
【0013】
[クリーニング部]
クリーニング部は、像担持体上に残留するトナーを除去するものであり、クリーニングブレードを備える。クリーニングブレードについて説明する。
【0014】
(クリーニングブレード)
クリーニングブレードは、被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面に付着したトナーを除去する弾性部材を備え、弾性部材は、被清掃部材に当接する先端稜線部を有し、弾性部材が、先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、平均分散径が0.1μm~5.0μmの、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有し、トナーは、粒子径が3μm以下である粒子を20個数%以上含むものである。
【0015】
従来のクリーニングブレードは、高温(例えば、40℃以上)及び多湿(例えば、70RH以上)の環境下に長期間置かれると、トナーを除去する弾性部材が劣化して摺動性が低下し、クリーニング性が低下するという問題があった。本発明者らは、弾性部材の先端稜線部を含む表面から所定深さの領域における、ポリシロキサン構造に由来するドメインの平均分散径の大きさと、トナーに含まれる所定の大きさ以下の粒子の含有量とに着目した。弾性部材は、被清掃部材に当接する先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、平均分散径が0.1μm~5.0μmの、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有させる。そして、トナーは、粒子径が3μm以下である粒子を20個数%以上含む。これにより、クリーニングブレードは、高温及び多湿のような過酷な環境下でも耐性を向上させることができ、優れたクリーニング性を有することができることを見出した。
【0016】
一実施形態に係る画像形成装置が備えるクリーニングブレードの一例を図1及び図2に示す。図1は、クリーニングブレードを示す斜視図であり、図2は、クリーニングブレードが感光体の表面に当接している状態を示す説明図である。図1に示すように、クリーニングブレード1は、弾性部材2及び支持部材3を有している。図2に示すように、クリーニングブレード1は、弾性部材2の自由端側の一端である当接部2dが像担持体4の表面に像担持体4の長手方向に沿って当接するように配置されている。
【0017】
弾性部材2は、短冊形状に形成され、ブレード先端面2a、ブレード下面2b及び先端稜線部2cを有し、像担持体4の表面に当接する当接部2dを有している。当接部2dは、先端稜線部2cを含む領域であり、ブレード先端面2a及びブレード下面2bの少なくとも一方の一部を含んでもよい。
【0018】
ブレード先端面2aは、弾性部材2の先端面であり、像担持体4の進行方向(図2では、回転方向)上流側Aに位置する面である。
【0019】
ブレード下面2bは、像担持体4の進行方向(図2では、回転方向)下流側Bに位置する主面である。
【0020】
先端稜線部2cは、ブレード先端面2aとブレード下面2bとの角部であり、像担持体4の表面に当接する。弾性部材2の先端稜線部2cがめくれる場合、及び線圧が高い場合等では、ブレード先端面2aの角部以外の部分も先端稜線部となりうる。
【0021】
ブレード上面2eは、弾性部材2のブレード下面2bとは反対側の主面である。
【0022】
支持部材3は、短冊形状に形成され、弾性部材2のブレード上面2eの端部側に接着剤等により固定されている。
【0023】
クリーニングブレードは、弾性部材を有し、更に必要に応じて、支持部材等のその他の部材を有することができる。
【0024】
[弾性部材]
弾性部材は、被清掃部材の表面に当接して像担持体の表面に付着した付着物を除去する。弾性部材は、自由端側の一端である先端稜線部を含む当接部が像担持体の表面に長手方向に沿って当接するように配置される。
【0025】
弾性部材は、単層構造であってもよいし、多層構造(例えば、2層構造)であってもよい。弾性部材は、単層構造である場合、弾性部材は、基材で構成される。弾性部材が多層構造である場合、弾性部材は、基材と表面層とを有することができる。
【0026】
弾性部材は、先端稜線部を有する。
【0027】
弾性部材は、先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、ドメインを含有する。前記ドメインの平均分散径は0.1μm以上5.0μm以下である。前記ドメインは、ポリシロキサン構造に由来する。弾性部材には、ドメインは、先端稜線部以外の箇所に含有されていてもよい。
【0028】
ドメインは、ポリシロキサン構造に由来する。ポリシロキサン構造は、例えば、シロキサン系化合物に由来する。ドメインは、例えば、シロキサン系化合物が凝集して形成される。その際、ドメインを形成するシロキサン系化合物は、マトリックス成分と結合していてもよいしい、結合していなくてもよい。
【0029】
シロキサン系化合物とは、シロキサン結合をもつ化合物のことを示しており、例えば、シリコーンである。シリコーンは、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、シリコーングリース等の形態で存在する。シロキサン結合は、炭素結合よりも結合エネルギーが大きく安定して存在できるという特徴を有し、シロキサン系化合物は、表面自由エネルギーが小さく離型性や潤滑性に優れている。
【0030】
シロキサン系化合物は、シリコーンからなる化合物であることが好ましく、後述するシリコーンを用いることができる。
【0031】
先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域におけるドメインの平均分散径は、0.1μm~5.0μmであり、耐久性がより優れる点から、0.5μm~2.0μmであることが好ましい。
【0032】
平均分散径の算出方法は、任意の先端稜線部を含む100μmの領域でドメインの分散径を複数個(例えば100個以上)測定し、個数平均値より求めることができる。
【0033】
例えば、クリーニングブレードを任意の箇所で切断して断面を露出させ、レーザ顕微鏡やSEMで先端稜線部を含む100μmの領域を撮影し、その画像から分散径を計測する。計測には、ImagePro等のソフトを用いて2値化画像から分散径を算出することができる。
【0034】
このとき、観察画像のドメインがポリシロキサン構造に由来することは、エネルギー分散型X線分析(EDS)等を用いて確認することができる。
【0035】
なお、先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域とは、図3に示すように、弾性部材2のブレード先端面2aとブレード下面2bとの角部の領域Yである。そして、領域Yには、ポリシロキサン構造に由来するドメインが含まれている。
【0036】
図4に示すように、ポリシロキサン構造に由来するドメインSは、領域Yの全体に分布していてもよいし、図5に示すように、領域Yの一部にのみ分布していてもよい。ただし、図5のように、ポリシロキサン構造に由来するドメインSが、領域Yの一部に分布している場合、ポリシロキサン構造に由来するドメインSは、領域Yにおける弾性部材2の表面側に分布していることが好ましい。
【0037】
弾性部材2は、図3に示すように、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。
【0038】
弾性部材2が多層構造である場合、例えば、図6に示すように、弾性部材2は、基材2-1と表面層2-2との2層構造とすることができる。この場合、先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域は、表面層2-2中に存在し、表面層2-2のブレード先端面2-2aとブレード下面2-2bとの先端稜線部2-2cを含む領域Yである。
【0039】
先端稜線部の表面から深さ20μmの位置における弾性部材の、荷重を1000μNとしたときのマルテンス硬度HMは、0.5N/mm2以上1.5N/mm2未満であり、0.8N/mm2~1.2N/mm2であることが好ましい。
【0040】
マルテンス硬度HMの測定方法は、以下のとおりである。
【0041】
測定には、例えば、フィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計 HM-2000を用いる。
【0042】
弾性部材の先端面に、ビッカース圧子を1.0mNの力で10秒間かけて押し込み、5秒間保持した後、1.0mNの力で10秒間かけて抜いて、測定する。
【0043】
測定場所は、弾性部材の下面の先端稜線部から20μmの位置とする。
【0044】
測定する方法としては、弾性部材の先端を約1cm幅で切断し、下面が上を向くようにスライドガラス等に接着剤や両面テープで固定し、下面の先端稜線部から20μmの位置を測定する。
【0045】
弾性部材は、例えば、層構成樹脂成分と、ドメイン成分とを含有する。弾性部材は、ポリシロキサン構造に由来するドメインを、層構成樹脂成分中に分散した状態で含むことができる。弾性部材は、層構成樹脂成分を海とし、ポリシロキサン構造の凝集により形成されたドメインを島とする海島構造を有してもよい。海島構造は、例えば、少なくとも、先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に存在する。
【0046】
なお、層形成樹脂成分とドメイン成分とは、化学結合によって結合していてもよいし、結合していなくてもよい。
【0047】
弾性部材において、領域Yの断面におけるドメインの面積割合は、目的に応じて適宜選択することができる。領域Yの断面におけるドメインの面積割合は、弾性部材の効果をより発揮できる点から、0.1%~40%であることが好ましく、0.5%~30%であることがより好ましい。
【0048】
前記領域の断面におけるドメインの面積割合は、例えば、以下の方法で求めることができる。ブレードを任意の箇所で切断し断面を露出させ、レーザー顕微鏡やSEMで先端稜線部を含む100μmの領域を撮影し、その画像からシロキサン系化合物の占める面積比率を算出する。ImagePro等のソフトを用いて2値化画像から面積比率を算出することにより求めることができる。
【0049】
弾性部材の平均厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、1.0mm~3.0mm以下であることが好ましく、1.5mm~2.0mmであることがより好ましい。
【0050】
なお、当接部の弾性部材の平均膜厚は、当接部における弾性部材の任意の箇所を10箇所測定した算術平均値により求めることができる。
【0051】
当接部の弾性部材の厚みの測定方法は、目的に応じて適宜選択することができ、当接部の弾性部材を含む切断面をマイクロスコープを用いて測定する方法等が挙げられる。例えば、クリーニングブレードの先端面を上向きにしてマイクロスコープで観察し、弾性部材の厚みを測定する。
【0052】
弾性部材は、上述の通り、単層構造又は複層構造を有することができる。
【0053】
弾性部材が単層構造の場合、弾性部材は、基材のみで構成することができ、基材は、例えば、以下の弾性部材形成用組成物を硬化させて得ることができる。
【0054】
(弾性部材形成用組成物)
弾性部材形成用組成物は、例えば、乳化状態の第1組成物に、活性水素化合物からなる硬化剤を含有させたものである。
【0055】
((第1組成物))
第1組成物は、以下の成分A及び成分Bの少なくともいずれかと、成分Cとを含有する。
成分A:NCO末端変性シリコーンプレポリマー
成分B:シリコーンオイル
成分C:NCO末端ウレタンプレポリマー
【0056】
-成分A:NCO末端変性シリコーンプレポリマー-
NCO末端変性シリコーンプレポリマーは、末端に少なくとも1つの水酸基を有する変性シリコーンに第1ポリイソシアネートを反応させた、末端がイソシアネート基となったプレポリマーである。
【0057】
変性シリコーンは、末端に少なくとも1つの水酸基を有するシリコーンであり、市販されているものを用いることができる。
【0058】
変性シリコーンは、第1ポリイソシアネートと反応して末端にNCO基を有するプレポリマーを形成できるものから選択される。具体的には、水酸基、アミノ基を末端に有するもので安定性の点から、水酸基変性シリコーンがより望ましい。
【0059】
市販品として、KF-6000,KF-6001,KF-6002,KF-6003,X-22-176F,X-22-176DX,X-22-176GX-A(信越シリコーン)等を例示できる。末端の変性の種類としては、片末端、両末端、側鎖等があるが、後述するように界面活性剤として機能させる効率の点から片末端変性がより望ましい。
【0060】
第1ポリイソシアネートは、変性シリコーンの末端にウレタン結合を介して結合し、末端をイソシアネート基(NCO)とする化合物であり、詳細は後述する。
【0061】
NCO末端変性シリコーンプレポリマーは、変性シリコーンと、第1ポリイソシアネートとの反応により得られる、末端にNCO基を有するシリコーンプレポリマーである。変性シリコーン側官能基の2倍当量程度の第1ポリイソシアネートを混合し、加熱攪拌することにより得ることができる。
【0062】
-成分B:シリコーンオイル-
シリコーンオイルは、常温で液状のシリコーンオイル(オルガノポリシロキサンであり、市販のものを用いることができる。
【0063】
シリコーンオイルとしては、一般のポリオルガノシロキサンを用いることができる。シリコーンオイルはポリウレタン/ウレアマトリックス中に安定に分散させるため、マトリックスとの相溶性は乏しいほうがより好ましく、かかるシリコーンオイルが、例えば、NCO末端変性シリコーンプレポリマーを界面活性剤としてNCO末端ウレタンプレポリマー中に乳化状態で分散される。最も好ましいのは、ジメチルシリコーンである。ジメチルシリコーンオイルは、最も汎用的なシリコーンオイルであり、各社の市販品を用いることができる。なお、上述した乳化の際、粘度が高いとより高エネルギーが必要となるため、1~10,000mPa・s/25℃程度のものが好適に用いることができる。
【0064】
-成分C:NCO末端ウレタンプレポリマー-
NCO末端ウレタンプレポリマーは、ポリオールと第2ポリイソシアネートとを反応させた、末端がイソシアネート基のプレポリマーである。
【0065】
ポリオールは、例えば、分子量が500~4000のポリオールであり、ポリウレタン樹脂の製造に用いられる、いわゆる長鎖ポリオールである。ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が好適に用いられる。
【0066】
第2ポリイソシアネートは、ポリオールの末端の水酸基と反応してウレタン結合を介して結合し、末端をイソシアネート基(NCO)とする化合物である。
【0067】
第1ポリイソシアネート及び第2ポリイソシアネートとして用いるポリイソシアネート化合物は、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-メトキシ-4,4'-ジフェニルジイソシアネート、3,3'-ジメチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、4,4'-ジフェニルプロパンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0068】
ここで、第1ポリイソシアネート及び第2ポリイソシアネートは、硬化剤に対する反応性が、第1ポリイソシアネートの方が第2ポリイソシアネートより高くなるように選択することが好ましい。イソシアネート基(R-NCO)の反応性は、置換基Rの電子吸引性が大きいほど大きくなる。具体的には、芳香族ポリイソシアネートの反応性は脂肪族ポリイソシアネートよりも大きく、側鎖のメチル基等の立体障害によって反応性は低下する。これらは、ウレタン関係の以下の文献から類推することができる。
【0069】
・Hepburn,C.: Polyurethane Elastomers, Applied Science Publishers,(1982)
・Saunders J. H., Frisch K. C. : Polyurethanes : Chemistry and technology, Part 1. Chemistry, New York : Interscience Publishers, 170 (1962)
・ポリウレタン樹脂ハンドブック、岩田敬二編、日刊工業新聞社 (1987)
・ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤、高仲善明、色材協会誌、49(1976)
【0070】
このように、一般的には、芳香族ポリイソシアネートの方が脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートより硬化剤との反応性が高いので、例えば、第1ポリイソシアネートを芳香族ポリイソシアネートとし、第2ポリイソシアネートを脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートとすればよい。両方とも、芳香族ポリイソシアネートとすることもでき、脂肪族ポリイソシアネート、又は脂環族ポリイソシアネートとすることもできる。
【0071】
具体的には、例えば、第1ポリイソシアネートとして芳香族ポリイソシアネートを用い、第2ポリイソシアネートとして脂肪族ポリイソシアネートを用いることができる。また、両者を芳香族ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネートから選定することができる。例えば、第1ポリイソシアネートとしてキシリレンジイソシアネート(脂肪族高反応性)、第2ポリイソシアネートとしてジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアネート(脂肪族低反応性)等の組み合わせが例示できる。
【0072】
NCO末端ウレタンプレポリマーは、ウレタン樹脂硬化物のマトリックスを形成する主成分であり、目的とする物性に応じて適宜合成又は市販品から選択することができる。例えば、分子量が500~4000である、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の長鎖ポリオールに、ポリオール側水酸基の2倍当量程度の第2ポリイソシアネートを混合して加熱攪拌することにより、得ることができる。NCO末端変性シリコーンプレポリマーの第1ポリイソシアネートとの相対的反応性の要件をみたせば、市販品から選択することができる。
【0073】
第1組成物は、成分A及び成分Bの少なくともいずれかと、成分Cとを含有するが、混合することにより乳化状態となるものであることが好ましい。すなわち、成分AのNCO末端変性シリコーンプレポリマーは界面活性剤として働き、成分Bのシリコーンオイルを成分CのNCO末端ウレタンプレポリマー中に乳化状態で保持することができる。シリコーンオイルの微粒子の周りにNCO末端変性シリコーンプレポリマーが配位してミセルを形成し、これがNCO末端ウレタンプレポリマー中に分散している乳化物となる。
【0074】
第1組成物は、上述したとおり、例えば、分散装置を用いて、NCO末端ウレタンプレポリマーにNCO末端変性シリコーンプレポリマー及びシリコーンオイルを分散させた乳化物とすることができる。
【0075】
分散装置としては、高速攪拌機、ホモジナイザー等の一般的な乳化装置を用いることができる。
【0076】
NCO末端ウレタンプレポリマーにNCO末端変性シリコーンプレポリマーを分散させた後、シリコーンオイルを分散させることで、速やかに均一乳白色の分散液を製造することができる。
【0077】
((硬化剤))
硬化剤は、NCO基と反応性を有する活性水素含有化合物であるが、具体的には多価ヒロドキシ化合物又はポリアミン化合物である。硬化剤として多価ヒドロキシ化合物を用いた場合には、マトリックス樹脂(層構成樹脂)は、ポリウレタン樹脂となり、硬化剤としてポリアミンを用いた場合には、マトリックス樹脂はポリウレタンウレア樹脂となる。シェルとなるNCO末端シリコーンプレポリマーと硬化剤との反応を迅速に進めることは効果的であるため、シリコーンプレポリマーのNCO当量以上のポリアミンを含有する硬化剤がより好適に用いられる。多価ヒドロキシ化合物は、鎖長延長剤としてポリアミン化合物と共に用いてもよい。また、硬化反応を適切に進めるため、公知のウレタン硬化触媒(アミン類、有機金属類)を併用することもできる。
【0078】
ここで、多価ヒドロキシ化合物としては、脂肪族多価アルコールが好適に用いられ、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等を例示することができる。
【0079】
ポリアミン化合物としては、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン等を挙げることができる。
【0080】
弾性部材形成用組成物は、所定の金型等で熱硬化させることにより、ポリウレタン樹脂硬化物及びウレア樹脂硬化物の何れか一方又は両方となる。
【0081】
弾性部材形成用組成物は、NCO末端変性シリコーンプレポリマーと、NCO末端ウレタンプレポリマーと、NCO基と反応性を有する活性水素含有化合物である硬化剤を含有するので、NCO基と硬化剤とを反応させることにより、ポリウレタン樹脂硬化物となる。
【0082】
NCO末端変性シリコーンプレポリマーの末端に付加している第1ポリイソシアネートと、NCO末端ウレタンプレポリマーの末端に付加している第2ポリイソシアネートとは、硬化剤に対する反応性が、第1ポリイソシアネートの方が第2ポリイソシアネートより高いものを用いることが好ましい。その場合、ミセルを形成しているNCO末端変性シリコーンプレポリマーが先に硬化剤と反応し、シリコーンオイルがコアとなり、NCO末端変性シリコーンプレポリマーの硬化物がシェルとなるコアシェル構造を形成される。すなわち、ミセルを形成しているNCO末端変性シリコーンプレポリマーが先に硬化剤と反応すると、シリコーンオイルがミセル内に固定化された擬似カプセルが生成する。その後、マトリックスとなるNCO末端ウレタンプレポリマーが硬化剤と反応して硬化するので、コアシェル構造がウレタンマトリックス及びウレアマトリックスの何れか一方又は両方の中に安定に分散した状態のウレタン樹脂硬化物となる。
【0083】
弾性部材が複層構造を有する場合、弾性部材は、基材と表面層とを有することができる。
【0084】
(基材)
基材としては、その形状、材質、大きさ、構造等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0085】
形状としては、例えば、平板状、短冊状、シート状、等が挙げられる。
【0086】
大きさとしては、特に制限はなく、前記被清掃部材の大きさに応じて適宜選択することができる。
【0087】
基材の材料としては、目的に応じて適宜選択することができ、上述の弾性基材形成用組成物を用いることができる。また、基材の材料は、高弾性が得られ易い点から、ポリウレタンゴム、ポリウレタンエラストマー等が好適である。
【0088】
基材の形状としては、例えば、基材の厚み方向において対向する一対の板面と、板面と直交し、板面の面内方向において対向する二対の端面からなる形状が挙げられる。
【0089】
基材の構造としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1種の材質からなる単層構造、2種の異なる材質を一体成形した2層構造、数種の異なる材質を一体成形した多層構造等が挙げられる。
【0090】
なお、2層以上を積層した基材を製造する際は、混合率の異なる原材料を各層が完全に硬化する前に、遠心成形金型に連続的に注入することにより、層間剥離が起こらないように一体的に成形することが可能である。
【0091】
基材の製造方法は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを用いてポリウレタンプレポリマーを調製し、該ポリウレタンプレポリマーに硬化剤と、必要に応じて硬化触媒を加えて、所定の型内にて架橋する。炉内にて後架橋させたものを遠心成型によりシート状に成型した後、常温で放置して熟成したものを所定の寸法に平板状に裁断する。これに基材が製造される。
【0092】
ポリオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子量ポリオール、低分子量ポリオール等が挙げられる。
【0093】
高分子量ポリオールとしては、例えば、アルキレングリコールと脂肪族二塩基酸との縮合体であるポリエステルポリオール;エチレンアジペートエステルポリオール、ブチレンアジペートエステルポリオール、ヘキシレンアジペートエステルポリオール、エチレンプロピレンアジペートエステルポリオール、エチレンブチレンアジペートエステルポリオール、エチレンネオペンチレンアジペートエステルポリオール等のアルキレングリコールとアジピン酸とのポリエステルポリオール等のポリエステル系ポリオール;カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンエステルポリオール等のポリカプロラクトン系ポリオール;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等のポリエーテル系ポリオール、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
低分子量ポリオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノン-ビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン等の二価アルコール;1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、1,1,1-トリス(ヒドロキシエトキシメチル)プロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の三価又はそれ以上の多価アルコール、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
ポリイソシアネート化合物としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
硬化触媒としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0097】
硬化触媒の含有量は、目的に応じて適宜選択することができ、0.01質量%~0.5質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.3質量%であることがより好ましい。
【0098】
基材のJIS-A硬度は、目的に応じて適宜選択することができ、60度以上が好ましく、65度~80度であることがより好ましい。JIS-A硬度が60度以上であると、ブレード線圧が得られやすく、像担持体との当接部の面積が拡大し難いため、クリーニング不良が発生し難くなる。
【0099】
ここで、基材のJIS-A硬度は、例えば、高分子計器社製、マイクロゴム硬度計MD-1等を用いて測定することができる。
【0100】
基材のJIS K6255規格に準拠した反発弾性率は、目的に応じて適宜選択することができる。なお、基材の反発弾性係数は、例えば、JIS K6255規格に準拠し、23℃において、東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用いて測定することができる。
【0101】
基材の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0mm以上3.0mm以下が好ましい。
【0102】
((表面層))
表面層は、例えば、上述の弾性部材形成用組成物を硬化させて得られる。弾性部材が表面層と基材とを有する場合では、表面層が先端稜線部を有する。そして、表面層が、先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、平均分散径が0.1μm~5.0μmの、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有する。更に、先端稜線部の表面から深さ20μmの位置における表面層の、荷重1000μNにおけるマルテンス硬度HMが0.5N/mm2~1.5N/mm2未満である。
【0103】
表面層の平均厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、30μm~800μmであることが好ましく、50μm~500μmであることがより好ましい。平均厚みが50μm以上であれば、長期使用時に摩耗しても、摩耗後に露出する面もポリシロキサン構造に由来するドメインを含有しており、摩耗しても感光体と接触する部分は常にポリシロキサン構造に由来するドメインが存在し低摩擦係数を維持することできる。平均厚みが500μm以下であれば、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有した表面層の影響による加工時の寸法精度の悪化をより抑えることができる。
【0104】
<支持部材>
クリーニングブレードは、支持部材を有することができる。支持部材は、弾性部材の一端に、他端に所定長さの自由端部を有するように連結されることが好ましい。
【0105】
支持部材は、弾性部材を支持する部材であれば、その形状、大きさ、及び材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0106】
支持部材の形状としては、例えば、平板状、短冊状、シート状、等が挙げられる。
【0107】
支持部材の大きさとしては、被清掃部材の大きさに応じて適宜選択することができる。
【0108】
支持部材の材質としては、金属、プラスチック、セラミックス等が挙げられる。これらの中でも、強度の点から金属板が好ましく、ステンレススチール等の鋼板、アルミニウム板、リン青銅板が特に好ましい。
【0109】
[トナー]
トナーは、粒子径が3μm以下の粒子を20個数%以上含有する。粒子径が3μm以下の粒子は比表面積が大きいため、付着力に大きく影響する。粒子径が3μm以下の粒子の割合を上記範囲内にすることで、クリーニングニップにおけるトナー間の付着力が高くなり、そのトナーとクリーニングブレードによって、被清掃部材上の異物が掻き取られ易くなる。
【0110】
クリーニングブレードは、ポリシロキサンのドメインを含んでおり、常に、弾性部材の先端稜線部を含む当接部付近のポリシロキサン量が多くなっている。そのため、トナー中における粒子径が3μm以下の粒子の割合が20個数%以上であれば、3μm以下の粒子が当接部付近のポリシロキサンと凝集して強固なダム層を築くことができる。また、クリーニングブレードは摺動性が非常に高いため、クリーニングブレードの姿勢が常時安定しており、このダム層を長く維持することができる。これにより、過酷な状況で発生した像担持体上のトナー等の付着物も掻き取ることができる。
【0111】
なお、粒子径の測定方法は、特に限定されず、精密粒度分布測定装置等を用いて適宜任意の測定方法を用いることができる。精密粒度分布測定装置としては、コールターマルチサイザーIII(コールター社製)等を用いることができる。粒子径の測定方法の一例を以下に示す。
【0112】
まず、電解液中に分散剤として界面活性剤を少量加える。なお、電解液は、例えば、1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液に調製した水溶液でよい。電解液に界面活性剤を加えた混合液に、更に測定試料を固形分にして加え、試料が懸濁した電解積を得る。試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で数分間分散処理を行い、精密粒度分布測定装置により、アパーチャーを用いて、トナーの体積及び個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径Dv、個数平均粒径Dpを求める。トナーの粒子径は、体積平均粒径Dv及び個数平均粒径Dpの少なくとも一方に基づいて決定できる。
【0113】
次に、体積平均粒径Dv及び個数平均粒径Dpの少なくとも一方に基づいて算出した、粒子径が所定の範囲内(例えば、2.00μm以上40.30μm未満)である粒子を対象にして、粒子径が3μm以下の粒子の割合を求めることができる。「粒子径が3μm以下の粒子の割合」とは、粒子径が3.00μm以下の個数割合(個数%)である。粒子径が3.00μm以下の個数割合とは、粒子径が所定の範囲内(例えば、2.00μm以上40.30μm未満)の粒子の個数の、粒子径3.00μm以下の粒子の個数に対する割合である。例えば、粒子径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とした時、「粒子径が3μm以下の粒子の割合」は、粒子径3.17μm未満の粒子の個数の、粒子径2.00μm以上40.30μm未満の粒子の個数に対する割合である、3.17μm未満の個数割合(個数%)としてよい。
【0114】
このとき、粒子を振り分けるチャンネルとしては、例えば2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用できる。
【0115】
トナーは、粒子径が3μm以下である粒子を25個数%~55個数%含むことが好ましく、30個数%~50個数%含むことがより好ましい。粒子径が3μm以下の粒子が55個数%以上になると、トナーの帯電分布が悪化してしまい、飛散等の品質課題が発生してしまう。粒子径が3μm以下である粒子の含有割合を上記の好ましい範囲内とすれば、より強固なダム層を長く維持することができるため、像担持体上のトナーをより確実に掻き取ることができる。
【0116】
トナーは、結着樹脂としてバインダー樹脂を含み、必要に応じて、着色剤、離型剤等の他の成分を含有してもよい。
【0117】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、フルカラートナーとして使用されるバインダー樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系共重合体樹脂、エポキシ系樹脂、環状オレフィン樹脂(COC(例えば、TOPAS-COC(Ticona社製)))等を用いることができるが、現像器内での耐ストレス性の観点から、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
【0118】
好ましく使用されるポリエステル系樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られたポリエステル樹脂が使用可能である。多価アルコール成分のうち、2価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0119】
また、多価カルボン酸成分のうち、2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステルが挙げられる。
【0120】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0121】
また、ポリエステル系樹脂として、ポリエステル樹脂の原料モノマーと、ビニル系樹脂の原料モノマーと、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとの混合物を用い、同一容器中でポリエステル樹脂を得る縮重合反応及びビニル系樹脂を得るラジカル重合反応を並行して行わせて得られた樹脂(以下、単に「ビニル系ポリエステル樹脂」という)も好適に使用可能である。なお、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとは、換言すれば縮重合反応及びラジカル重合反応の両反応に使用し得るモノマーである。即ち縮重合反応し得るカルボキシ基とラジカル重合反応し得るビニル基を有するモノマーであり、例えばフマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0122】
ポリエステル樹脂の原料モノマーとしては、上述した多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分が挙げられる。またビニル系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-クロルスチレン等のスチレン又はスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸3-(メチル)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸3-(メチル)ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル及びビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。ビニル系樹脂の原料モノマーを重合させる際の重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0123】
バインダー樹脂としては、上記のような各種ポリエステル系樹脂が好ましく使用されるが、中でも、オイルレス定着用トナーとしての分離性及び耐オフセット性をさらに向上させる観点から、以下に示す第1バインダー樹脂及び第2バインダー樹脂を使用することがより好ましい。
【0124】
第1バインダー樹脂は、上述した多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させて得られたポリエステル樹脂、特に多価アルコール成分としてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を用い、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸及びフマル酸を用いて得られたポリエステル樹脂である。
【0125】
第2バインダー樹脂は、ビニル系ポリエステル樹脂、特にポリエステル樹脂の原料モノマーとしてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸及びコハク酸を用い、ビニル系樹脂の原料モノマーとしてスチレン及びブチルアクリレートを用い、両反応性モノマーとしてフマル酸を用いて得られたビニル系ポリエステル樹脂である。
【0126】
第1バインダー樹脂の合成時に炭化水素系ワックスを内添してもよい。第1バインダー樹脂に炭化水素系ワックスを予め内添するには、第1バインダー樹脂を合成する際に、第1バインダー樹脂を合成するためのモノマー中に炭化水素系ワックスを添加した状態で第1バインダー樹脂の合成を行えばよい。例えば、第1バインダー樹脂としてのポリエステル系樹脂を構成する酸モノマー及びアルコールモノマーに炭化水素系ワックスを添加した状態で縮重合反応を行えば良い。第1バインダー樹脂がビニル系ポリエステル樹脂の場合には、ポリエステル樹脂の原料モノマーに炭化水素系ワックスを添加した状態で、当該モノマーを撹拌及び加熱しながら、これにビニル系樹脂の原料モノマーを滴下して重縮合反応及びラジカル重合反応を行えばよい。
【0127】
(ワックス)
一般に、ワックスの極性が低いほうが定着部材ローラとの離型性に優れている。本実施形態で用いられるワックスは、極性の低い炭化水素系ワックスであり、ヘキサンに溶解するものである。添加量はトナー100質量%に対して3.0%~10.0%がよく、好ましくは4.0%~8.0%である。
【0128】
(ワックス分散剤)
本発明のトナーには、ワックスの分散を助けるワックス分散剤を含有させても良い。
【0129】
ワックス分散剤としては、特に限定はなく、公知のものを使用することができる。ワックス分散剤としては、例えば、ワックスとの相溶性の高いユニットと樹脂との相溶性の高いユニットがブロック体として存在するポリマーやオリゴマー、ワックスとの相溶性の高いユニットと樹脂との相溶性の高いユニットのうち一方に他方がグラフトしているポリマー又はオリゴマー、エチレン・プロピレン・ブテン・スチレン・α-スチレン等の不飽和炭化水素と、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はそのエステル若しくはその無水物との共重合体、ビニル系樹脂とポリエステルとのブロック又はグラフト体等が挙げられる。
【0130】
上記のワックスとの相溶性の高いユニットとしては、炭素数が12以上の長鎖アルキル基や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエンとそれらの共重合体がある。
【0131】
上記の樹脂との相溶性の高いユニットとしては、ポリエステル、ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0132】
(着色剤)
着色剤としては、フルカラートナーの着色剤として使用されている顔料及び染料が使用可能である。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を挙げることができる。
【0133】
トナー粒子中における着色剤の含有量は、全バインダー樹脂100質量部に対して2質量部~15質量部の範囲であることが好ましい。着色剤は、使用される第1バインダー樹脂と第2バインダー樹脂との混合バインダー樹脂中に分散されたマスターバッチの形態で使用されることが分散性の観点から好ましい。マスターバッチの添加量は含有される着色剤の量が上記範囲内となるような量であればよい。マスターバッチ中の着色剤含有率は、20質量%~40質量%が好適である。
【0134】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、フルカラートナーで使用されている一般的な荷電制御剤を用いることができる。
【0135】
荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及びサリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0136】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナーの製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部~10質量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2質量部~5質量部の範囲がよい。
【0137】
(外添剤)
本発明では、流動性や現像性を補助するための外添剤として無機微粒子が用いることができる。
【0138】
無機微粒子の具体例としては、例えば酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、酸化チタン、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を挙げることができる。
【0139】
トナーは、重合法や粉砕法等の様々な方法で製造することができる。
【0140】
次に、クリーニング部以外の、画像形成装置を構成する各構成を説明する。
【0141】
[像担持体]
像担持体(静電潜像担持体、電子写真感光体、感光体と称することがある)の材質、形状、構造、大きさ等としては、特に制限されず、公知のものの中から適宜選択することができる。像担持体の材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)等が挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点で、アモルファスシリコンが好ましい。
【0142】
アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃~400℃に加熱し、支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa-Siからなる光導電層を有する感光体を用いることができる。これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa-Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0143】
像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。円筒状の像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm~100mmが好ましく、5mm~50mmがより好ましく、10mm~30mmが特に好ましい。
【0144】
[静電潜像形成部]
静電潜像形成部としては、像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。静電潜像形成部は、例えば、前記像担持体の表面を一様に帯電させる帯電装置(帯電器)と、前記像担持体の表面を像様に露光する露光装置(露光器)とを備える。
【0145】
帯電器としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
【0146】
帯電器の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
【0147】
帯電器としては、像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって像担持体表面を帯電するものが好ましい。また、帯電器が、像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0148】
帯電器としては、接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られる点から、接触式の帯電装置を用いることが好ましい。
【0149】
露光器としては、帯電器により帯電された像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、等の各種露光器が挙げられる。
【0150】
露光器に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般等が挙げられる。
【0151】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0152】
なお、像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0153】
[現像部]
現像部は、像担持体に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成できれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。現像部は、例えば、トナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を備えるものを好適に用いることができ、トナー入り容器を備えた現像器等が好ましい。
【0154】
現像器は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。現像器として、例えば、トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生部とを有し、表面にトナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0155】
現像部は、5つ備えることができる。現像部は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのカラートナーと、一実施形態に係るトナーとを備える。一実施形態に係るトナーは何色でもよいが、無色又は白色であることが好ましい。また、現像部は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのカラートナーの一部又は全部を一実施形態に係るトナーとしてもよい。
【0156】
[転写部]
転写部としては、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写部と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写部とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限されず、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0157】
転写部(第一次転写手段及び第二次転写部)は、像担持体(感光体)上に形成されたトナー像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。転写部は1つであってもよいし、2以上であってもよい。
【0158】
転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
【0159】
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0160】
[定着部]
定着部としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部が好適である。加熱加圧部としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ等が挙げられる。
【0161】
定着部は、発熱体を具備する加熱体と、加熱体と接触するフィルムと、フィルムを介して加熱体と圧接する加圧部材とを有し、フィルムと加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着できる加熱加圧部であることが好ましい。
【0162】
加熱加圧部における加熱は、通常、80℃~200℃が好ましい。
【0163】
加熱加圧部における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm~80N/cmであることが好ましい。
【0164】
なお、本実施形態においては、目的に応じて、定着部と共に又はこれに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0165】
[その他]
一実施形態に係る画像形成装置は、その他、例えば、除電部、リサイクル部、制御部等を備えることができる。
【0166】
(除電部)
除電部としては、特に制限されず、像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0167】
(リサイクル部)
リサイクル部としては、特に制限されず、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0168】
(制御部)
制御部は、上記の各部の動きを制御することができる。制御部としては、上記の各部の動きを制御できれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の制御機器が挙げられる。
【0169】
以上のように、一実施形態に係る画像形成装置は、クリーニングブレードを備えるクリーニング部を有する。クリーニングブレードは、被清掃部材の表面に付着したトナーを除去する弾性部材を備える。弾性部材は、被清掃部材に当接する先端稜線部を有し、先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、平均分散径が0.1μm~5.0μmの、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有している。弾性部材は、その先端稜線部を含む当接部付近にポリシロキサン量を多くしていることと、トナーが粒子径が3μm以下である粒子を20個数%以上含むことで、トナーに含まれる粒子が当接部付近のポリシロキサンと凝集して強固な堆積層(ダム層)を形成することができる。また、弾性部材は摺動性が非常に高いため、弾性部材の姿勢が常時安定することができる。そのため、弾性部材に形成されるダム層を長く維持することができる。
【0170】
よって、クリーニングブレードは、上記構成を有する弾性部材と、粒子径が3μm以下である粒子を20個数%以上含むトナーとを組み合わせることで、弾性部材の当接部付近のポリシロキサンと凝集し易く、より強固なダム層を形成することができる。そのため、一実施形態に係るクリーニングブレードは、高温(例えば、40℃以上)及び多湿(例えば、70RH以上)の環境下における耐性を向上させることができるので、過酷な環境下においても、優れたクリーニング性を有することができる。
【0171】
したがって、一実施形態に係る画像形成装置は、クリーニング装置で上記構成を有するクリーニングブレードを用いることで、過酷な使用環境下で被清掃部材上に発生したトナー等の付着物を除去することができる。そのため、一実施形態に係る画像形成装置は、過酷な環境下においても、優れたクリーニング性を有することができるため、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0172】
一実施形態に係る画像形成装置では、クリーニングブレードは、先端稜線部の表面から深さ20μmの位置における弾性部材のマルテンス硬度HMを、0.5N/mm2以上1.5N/mm2未満にできる。これにより、クリーニングブレードは、高温(例えば、40℃以上)及び多湿(例えば、70RH以上)の環境下においても高い硬度を有することができる。
【0173】
一実施形態に係る画像形成装置では、クリーニングブレードは、ポリシロキサン構造に由来するドメインの平均分散径を0.5μm~2.0μmにできる。これにより、クリーニングブレードは、耐久性を高めることができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、過酷な環境下においても、より高いクリーニング性を有することができる。
【0174】
一実施形態に係る画像形成装置では、クリーニングブレードは、弾性部材を、単層構造又は多層構造にできる。これにより、被清掃部材の種類に応じて、クリーニングブレードは、任意の剛性を有する弾性部材を用いることができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、クリーニング性を確実に発揮することができる。
【0175】
なお、本実施形態では、一実施形態に係る画像形成装置において、クリーニングブレードによる除去対象となる付着物は、トナー以外に、被清掃部材の表面に付着する、潤滑剤、ゴミ、埃等を含んでよい。
【0176】
<画像形成方法>
一実施形態に係る画像形成方法について説明する。一実施形態に係る画像形成方法は、一実施形態に係る画像形成装置を用いて行う。
【0177】
一実施形態に係る画像形成方法は、被清掃部材である担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着する定着工程と、像担持体上に残留するトナーをクリーニングブレードによって除去するクリーニング工程とを含む。一実施形態に係る画像形成方法では、クリーニングブレードとして、上述した構成を有するクリーニングブレードを用いる。トナーは、粒子径が3μm以下である粒子を20個数%以上含むものを用いる。一実施形態に係る画像形成方法は、像担持体に潤滑剤を塗布するクリーニング補助工程等、更に必要に応じて、その他の工程を含むことができる。
【0178】
一実施形態に係る画像形成方法は、上述の通り、一実施形態に係る画像形成装置により行うことができる。静電潜像形成工程は静電潜像形成部により好適に行うことができ、現像工程は現像部により好適に行うことができ、転写工程は転写部により行うことができ、定着工程は定着部により行うことができ、クリーニング工程はクリーニング部により行うことができ、その他の工程は、その他の部により好適に行うことができる。
【0179】
静電潜像形成工程は、像担持体上に静電潜像を形成する工程であり、像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程とを含む。帯電は、例えば、帯電器を用いて像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。露光は、例えば、前記露光器を用いて前記像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。静電潜像の形成は、例えば、像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成部により行うことができる。
【0180】
現像工程は、静電潜像を複数色のトナーにより順次現像してトナー像を形成する工程である。トナー像の形成は、例えば、静電潜像を前記トナーを用いて現像することにより行うことができ、現像器により行うことができる。
【0181】
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて像担持体(感光体)の表面にトナーによるトナー像が形成される。
【0182】
転写工程は、トナー像を記録媒体に転写する工程である。転写工程は、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、トナー像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。転写工程は、二色以上のトナー、好ましくはフルカラートナーを用い、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。転写は、例えば、トナー像を転写帯電器を用いて像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写部により行うことができる。
【0183】
定着工程は、記録媒体に転写されたトナー像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色の現像剤に対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色の現像剤に対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0184】
クリーニング工程は、像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング部により好適に行うことができる。
【0185】
一実施形態に係る画像形成方法は、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリサイクル工程等を含むことができる。
【0186】
除電工程は、像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電部により好適に行うことができる。
【0187】
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像部にリサイクルさせる工程であり、リサイクル部により好適に行うことができる。
【0188】
一実施形態に係る画像形成方法は、一実施形態に係る画像形成装置を用いて、上述した構成を有するクリーニングブレード及びトナーを用いることで、像担持体上に残留するトナーを除去しつつ画像形成を行うことができる。そのため、一実施形態に係る画像形成方法によれば、過酷な環境下においても、優れたクリーニング性を有することができるため、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0189】
[画像形成装置の一態様]
次に、一実施形態に係る画像形成装置の一態様について、図7を参照しながら説明する。図7は、一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。なお、電子写真方式の画像形成装置として、プリンタ、複写機、ファクシミリ等があるが、図7では、プリンタである場合について説明する。
【0190】
図7に示すように、電子写真方式の画像形成装置(プリンタ)100は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック(以下、それぞれ、Y、C、M及びKと記す)用の四つの作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kと、転写部である転写ユニット20と、潜像形成部である光書込ユニット30と、給紙ユニット40と、レジストローラ対50と、定着部である定着ユニット60と、トナーカートリッジ70Y、70C、70M及び70Kと、二次転写ローラ80とを備えている。なお、これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY、C、M及びKトナーを用いるが、それ以外は同様の構成である。
【0191】
作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kは、ドラム状の感光体11Y、11C、11M及び11Kを備える。
【0192】
図8は、四つの作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kの概略構成を示す構成図である。なお、作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kは、トナーの種類が異なること以外、同様であるため、図8では、作像ユニット10Yの構成について説明し、他の作像ユニット10C、10M及び10Kの構成についての説明は省略する。図8に示すように、作像ユニット10Yは、感光体11Y、帯電装置12Y、現像装置13Y、クリーニング装置15Y、潤滑剤塗布装置16Y、クリーニングローラ17Y、除電ランプ等を枠体18内に備える。感光体11Yの周囲に、帯電装置12Y、現像装置13Y、クリーニング装置15Y、潤滑剤塗布装置16Y、除電ランプ等が配置されている。
【0193】
感光体11Yは、ドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0194】
帯電装置12Yとしては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)等の公知の構成を用いることができる。これらの帯電方式のうち、特に、接触帯電方式及び非接触の近接配置方式がより望ましく、帯電効率を高くし、オゾン発生量を少なくすると共に、装置の小型化等が可能である等のメリットを有する。
【0195】
本実施形態では、帯電装置12Yは、帯電部材である帯電ローラ121Yを備える。帯電装置12Yは、帯電ローラ121Yを感光体11Yに近接させた非接触の近接配置方式を用いる。
【0196】
帯電ローラ121Yは、感光体11Yに所定の距離を持って非接触で配置され、感光体11Yを所定の極性、所定の電位に帯電する。帯電ローラ121Yによって一様帯電された感光体11Yの表面は、潜像形成手段である光書込ユニット30から画像情報に基づいてレーザ光Lが照射され、静電潜像が形成される。
【0197】
現像装置13Yは、感光体11Yの表面上に形成された潜像をトナー像にする。現像装置13Yは、現像剤担持体としての現像ローラ131Y、供給スクリュ132Y、攪拌スクリュ133Y及びドクタ134Yを有している。
【0198】
現像ローラ131Yは、電源から現像バイアスが印加される。
【0199】
供給スクリュ132Y及び攪拌スクリュ133Yは、現像装置13Yのケーシング内に設けられ、ケーシング内に収容された現像剤を互いに逆方向に搬送しながら攪拌する。
【0200】
ドクタ134Yは、現像ローラ131Yに担持された現像剤を規制する。
【0201】
現像装置13Yでは、供給スクリュ132Y及び攪拌スクリュ133Yの二本スクリュによって撹拌・搬送された現像剤中のトナーは、所定の極性に帯電される。そして、現像剤は、現像ローラ131Yの表面上に汲み上げられ、汲み上げられた現像剤は、ドクタ134Yにより規制され、感光体11Yと対向する現像領域でトナーが感光体11Y上の潜像に付着する。
【0202】
クリーニング装置15Yは、トナー像を転写ユニット20が備える中間転写ベルト21に転写した後の感光体11Y上に残留するトナーをクリーニングする。クリーニング装置15Yは、ファーブラシ151Y、クリーニングブレード152Y等を有している。
【0203】
ファーブラシ151Yは、感光体11Yの回転方向に対して連れ回り方向に回転し、潤滑剤塗布装置16Yが備える固形潤滑剤161を削って、感光体11Y上に固形潤滑剤161を塗布する。
【0204】
クリーニングブレード152Yは、感光体11Yの表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体11Yに当接している。なお、クリーニングブレード152Yは、上述した、一実施形態に係る画像形成装置に備えられるクリーニングブレードである。
【0205】
潤滑剤塗布装置16Yは、クリーニング装置15Yがクリーニングした後の感光体11Yの表面上に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段である。潤滑剤塗布装置16Yは、固形潤滑剤161、ブラケット162、潤滑剤加圧スプリング163等を備える。
【0206】
固形潤滑剤161は、ファーブラシ151Yを用いて感光体11Y上に塗布される。ブラケット162は、固形潤滑剤161を保持している。潤滑剤加圧スプリング163は、ブラケット162に保持されている固形潤滑剤161をファーブラシ151Y側に加圧する。
【0207】
潤滑剤塗布装置16Yでは、ファーブラシ151Yにより固形潤滑剤161が削られて、感光体11Y上に固形潤滑剤161を塗布する。感光体11Yへの固形潤滑剤161の塗布により、感光体11Yの表面の静止摩擦係数は、非画像形成時に0.2以下に維持されることが好ましい。
【0208】
クリーニングローラ17Yは、帯電ローラ121Yをクリーニングするものである。
【0209】
不図示の除電ランプは、クリーニング後の感光体11Yの表面電位を除電する。
【0210】
図7に示すように、転写ユニット20は、四つの作像ユニット1Y、1C、1M及び1Kの上方に配置されている。転写ユニット20は、中間転写体である中間転写ベルト21、ベルトクリーニングユニット22、第一ブラケット23、第二ブラケット24、一次転写ローラ25Y、25C、25M及び25K、二次転写バックアップローラ26、駆動ローラ27、補助ローラ28、テンションローラ29等を備えている。転写ユニット20は、感光体11Y、11C、11M及び11Kの表面上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト21の表面上に重ね合わせて転写する。
【0211】
中間転写ベルト21は、内側に配置されている8個のローラで張架されている無端ベルトであり、駆動ローラ27の回転駆動によって、矢印方向に無端移動可能に設計されている。
【0212】
第一ブラケット23は、内部に、一次転写ローラ25Y、25C及び25Mを収容しており、ソレノイドの駆動のオンオフに伴って、補助ローラ28の回転軸線を中心にして所定の回転角度で揺動するようになっている。
【0213】
第二ブラケット24は、内部に、一次転写ローラ25Kを収容している。
【0214】
一次転写ローラ25Y、25C、25M及び25Kは、感光体11Y、11C、11M及び11Kの表面上のトナー像を中間転写ベルト21に転写する一次転写手段としての一次転写装置が備える一次転写部材である。一次転写ローラ25Y、25C、25M及び25Kは、中間転写ベルト21を感光体11Y、11C、11M及び11Kとの間に挟み込んでそれぞれ一次転写ニップを形成している。そして、一次転写ローラ25Y、25C、25M及び25Kは、中間転写ベルト21の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト21の無端移動に伴って、Y、C、M及びK用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、中間転写ベルト21の表面に感光体11Y、11C、11M及び11K上の、Y、C、M及びKトナー像を重ね合わせて一次転写する。これにより、中間転写ベルト21上に四色重ね合わせトナー像(以下、四色トナー像という)が形成される。
【0215】
二次転写バックアップローラ26は、中間転写ベルト21のループ外側に配設された二次転写ローラ80との間に中間転写ベルト21を挟み込んで二次転写ニップを形成している。
【0216】
駆動ローラ27は、中間転写ベルト21を回転駆動させるローラである。
【0217】
補助ローラ28及びテンションローラ29は、中間転写ベルト21の内側に配置され、中間転写ベルト21を無端移動させるためのローラである。
【0218】
光書込ユニット30は、四つの作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kの下方に配設されている。光書込ユニット30は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lを、感光体11Y、11C、11M及び11Kに照射する。これにより、感光体11Y、11C、11M及び11K上に、Y、C、M及びK用の静電潜像が形成される。
【0219】
なお、光書込ユニット30は、光源から発したレーザ光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー31を備える。光書込ユニット30は、ポリゴンミラー31によって、レーザ光Lを偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体11Y、11C、11M及び11Kに照射する。なお、光書込ユニット30は、このような構成のものに代えて、LEDアレイによる光走査を行うものを備えてもよい。
【0220】
光書込ユニット30のレーザ光Lの光源や除電ランプ等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を用いることができる。
【0221】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0222】
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザは照射エネルギーが高く、また600~800nmの長波長光を有するため、良好に使用される。
【0223】
給紙ユニット40は、第一給紙カセット41A及び第二給紙カセット41Bと、第一給紙ローラ42A及び第二給紙ローラ42Bと、給紙路43と、複数の搬送ローラ対44とを有する。
【0224】
第一給紙カセット41A及び第二給紙カセット41Bは、光書込ユニット30の下方に、第一給紙カセット41A及び第二給紙カセット41Bが鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録媒体である転写紙Pが複数枚重ねられた紙束の状態で収容されている。
【0225】
第一給紙ローラ42A及び第二給紙ローラ42Bは、それぞれ、第一給紙カセット41A及び第二給紙カセット41B内の一番上の転写紙Pに当接するように配置されている。
【0226】
給紙路43は、第一給紙カセット41A及び第二給紙カセット41B内の転写紙Pが排出される経路である。
【0227】
複数の搬送ローラ対44は、それぞれ、給紙路43を介して転写紙Pを挟み込むように配置され、転写紙Pを図7中下側から上側に向けて搬送する。
【0228】
給紙ユニット40では、第一給紙ローラ42Aが、駆動手段によって、図中、反時計回りに回転駆動すると、第一給紙カセット41A内の一番上の転写紙Pが、第一給紙カセット41Aの図7右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路43に向けて排出される。また、第二給紙ローラ42Bが、駆動手段によって、図7中、反時計回りに回転駆動すると、第二給紙カセット41B内の一番上の転写紙Pが、給紙路43に向けて排出される。
【0229】
給紙路43内には、複数の搬送ローラ対44が配設されている。給紙路43に送り込まれた転写紙Pは、これら搬送ローラ対44のローラ間に挟み込まれながら、給紙路43内を図7中下側から上側に向けて搬送される。
【0230】
レジストローラ対50は、給紙路43の搬送方向下流側端部に配設されている。レジストローラ対50は、搬送ローラ対44から送られてくる転写紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、レジストローラ対50は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを、中間転写ベルト21上の四色トナー像に同期させ得るタイミングで、二次転写ニップに向けて送り出す。
【0231】
定着ユニット60は、二次転写ニップの図中上方に配設されている。定着ユニット60は、加圧加熱ローラ61と、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ベルトユニット62とを備えている。
【0232】
定着ベルトユニット62は、定着部材である定着ベルト621、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ622、テンションローラ623、駆動ローラ624、温度センサ等を有している。定着ベルトユニット62では、無端状の定着ベルト621を加熱ローラ622、テンションローラ623及び駆動ローラ624によって張架しながら、図中反時計回り方向に無端移動させる。この無端移動の過程で、定着ベルト621は加熱ローラ622によって裏面側から加熱される。このようにして加熱される定着ベルト621の加熱ローラ622への掛け回し箇所には、図中時計回り方向に回転駆動される加圧加熱ローラ61が表面側から当接している。これにより、加圧加熱ローラ61と定着ベルト621とが当接する定着ニップが形成されている。
【0233】
定着ベルト621のループ外側には、温度センサが定着ベルト621の表面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、定着ニップに進入する直前の定着ベルト621の表面温度を検知する。この検知結果は、不図示の定着電源回路に送られる。定着電源回路は、温度センサによる検知結果に基づいて、加熱ローラ622に内包される発熱源や、加圧加熱ローラ61に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。
【0234】
上述した二次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト21から分離した後、定着ユニット60内に送られる。そして、定着ユニット60内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト621によって加熱され、押圧されることによりフルカラートナー像が転写紙Pに定着される。
【0235】
このようにして定着処理が施された転写紙Pは、排紙ローラ対91のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ100本体の筺体の上面には、スタック部92が形成されており、排紙ローラ対91によって機外に排出された転写紙Pは、このスタック部92に順次スタックされる。
【0236】
トナーカートリッジ70Y、70C、70M及び70Kは、転写ユニット20の上方に設けられ、それぞれ、Y、C、M及びKトナーを収容している。トナーカートリッジ70Y、70C、70M及び70K内の、Y、C、M及びKトナーは、作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kの現像装置に適宜供給される。これらトナーカートリッジ70Y、70C、70M及び70Kは、作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
【0237】
二次転写ローラ80は、二次転写バイアスが印加される。二次転写ローラ80は、中間転写ベルト21上の四色トナー像を転写紙Pに一括で二次転写させる二次転写部材である。中間転写ベルト21上の四色トナー像は、二次転写ローラ80と二次転写バックアップローラ26との間に形成される二次転写電界及びニップ圧の影響等により、二次転写ニップ内で転写紙Pに一括で二次転写される。そして、転写紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
【0238】
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。転写残トナーは、ベルトクリーニングユニット22によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニングユニット22は、ベルトクリーニングブレード221を備える。ベルトクリーニングブレード221を中間転写ベルト21の表面に当接させることによって、中間転写ベルト21上の転写残トナーを掻き取って除去する。ベルトクリーニングブレード221は、一実施形態に係るクリーニングブレードを用いることができる。
【0239】
プリンタ100は、モノクロ画像を形成する場合には、上述のソレノイドの駆動によって第一ブラケット23を図中反時計回りに少しだけ回転させる。この回転により、補助ローラ28の回転軸線を中心にして、Y、C及びM用の一次転写ローラ25Y、25C及び25Mを図中反時計回りに公転させることで、中間転写ベルト21をY、C及びM用の感光体11Y、11C及び11Mから離間させる。そして、四つの作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kのうち、K用の作像ユニット10Kだけを駆動して、モノクロ画像を形成する。これにより、モノクロ画像形成時に、Y、C及びM用の作像ユニットを無駄に駆動させることによる作像ユニットを構成する各部材の消耗を回避することができる。
【0240】
次に、プリンタ100における画像形成動作を説明する。
【0241】
操作部等からプリント実行の信号を受信したら、帯電ローラ121Y、121C、121M及び121Kと、現像ローラ131Y、131C、131M及び131Kとにそれぞれ所定の電圧又は電流が順次所定のタイミングで印加される。同様に、光書込ユニット30及び除電ランプ等の光源にもそれぞれ所定の電圧又は電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段である不図示の感光体駆動モータにより感光体11Y、11C、11M及び11Kが図中矢印方向に回転駆動される。
【0242】
感光体11Y、11C、11M及び11Kが図中矢印方向に回転すると、まず感光体11Y、11C、11M及び11Kの表面が、帯電ローラ121Y、121C、121M及び121Kによって所定の電位に一様帯電される。そして、光書込ユニット30から画像情報に対応したレーザ光Lが感光体11Y、11C、11M及び11K上に照射され、感光体11Y、11C、11M及び11Kの表面上のレーザ光Lが照射された部分が除電され静電潜像が形成される。
【0243】
静電潜像の形成された感光体11Y、11C、11M及び11Kの表面は、現像装置13Y、13C、13M及び13Kとの対向部で現像ローラ131Y上に形成された現像剤の磁気ブラシによって摺擦される。このとき、現像ローラ131Y、131C、131M及び131K上の負帯電トナーは、現像ローラ131Y、131C、131M及び131Kに印加された所定の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。各作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kにおいて、同様の作像プロセスが実行され、各作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kの各感光体11Y、11C、11M及び11Kの表面上に各色のトナー像が形成される。
【0244】
このように、プリンタ100では、感光体11Y、11C、11M及び11K上に形成された静電潜像は、現像装置13Y、13C、13M及び13Kによって、負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。なお、本実施形態では、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
【0245】
各感光体11Y、11C、11M及び11Kの表面上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト21の表面上で重なるように、順次一次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に四色トナー像が形成される。
【0246】
中間転写ベルト21上に形成された四色トナー像は、第一給紙カセット41A又は第二給紙カセット41Bから給紙され、レジストローラ対50のローラ間を経て、二次転写ニップに給紙される転写紙Pに転写される。このとき、転写紙Pはレジストローラ対50に挟まれた状態で一旦停止し、中間転写ベルト21上の画像先端と同期を取って二次転写ニップに供給される。トナー像が転写された転写紙Pは中間転写ベルト21から分離され、定着ユニット60へ搬送される。そして、トナー像が転写された転写紙Pが定着ユニット60を通過することにより、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙P上に定着されて、トナー像が定着された転写紙Pはプリンタ100装置外に排出され、スタック部92にスタックされる。
【0247】
一方、二次転写ニップで転写紙Pにトナー像を転写した中間転写ベルト21の表面は、ベルトクリーニングユニット22によって表面上の転写残トナーが除去される。
【0248】
また、一次転写ニップで中間転写ベルト21に各色のトナー像を転写した感光体11Y、11C、11M及び11Kの表面は、クリーニング装置15Y、15C、15M及び15Kによって転写後の残留トナーが除去され、潤滑剤塗布装置16Yによって潤滑剤が塗布された後、除電ランプで除電される。
【0249】
プリンタ100の作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kは、プロセスカートリッジとしてプリンタ100本体から一体的に着脱可能となっている。プリンタ100では、作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kがプロセスカートリッジとしての感光体11Y、11C、11M及び11Kとプロセス手段とを一体的に交換するようになっている。なお、作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kは、感光体11Y、11C、11M及び11K等の作像ユニット10Y、10C、10M及び10Kを構成する各部材を交換してもよい。
【実施例
【0250】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0251】
<クリーニングブレードの作製>
[基材の成形]
弾性部材を構成する基材としては、膜厚、JIS-A硬度、反発弾性率、マルテンス硬度(HM)が以下のようなポリウレタンエラストマーのシートを遠心成形することで作製した。
・膜厚:1.5mm
・JIS-A硬度:70°
・反発弾性率:50%
・マルテンス硬度(HM):1.0N/mm
【0252】
基材の、膜厚、JIS-A硬度、反発弾性率、マルテンス硬度(HM)の測定方法を以下に示す。
【0253】
(膜厚)
基材を切断して、その切断面の厚さをマイクロスコープで測定し、基材の膜厚を求めた。
【0254】
(基材のJIS-A硬度)
基材のJIS-A硬度は、高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD-1を用い、JIS K6253に準じて、23℃±2℃で測定した。
【0255】
(反発弾性率)
基材の反発弾性率は、23℃で、東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用い、JIS K6255に準じて測定した。試料は厚み4mm以上となるように厚み2mmのシートを2枚重ね合わせたものを用いた。
【0256】
(マルテンス硬度)
基材のマルテンス硬度(HM)は、ISO14577に基づいて、エリオニクス社製ナノインデンターENT-3100を用いて、バーコビッチ圧子を1000μNの荷重で10秒間押し込み、5秒間保持し、同じ荷重速度で10秒間抜いて測定した。測定場所は、成型後のシートをブレード化した先端稜線部から20μmの位置とした。基材のマルテンス硬度(HM)は、1.0N/mmであった。
【0257】
<弾性部材の形成>
弾性部材である基材を形成するための弾性部材形成用組成物に使用した材料を以下に示す。
【0258】
-イソシアネート-
・4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート)(MDI):「ミリオネートMT」、東ソー社製、
・HMDI(ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアナート(水添MDI)):東京化成工業社製
・2,4-トリレンジイソシアネート(TDI):「コロネートT-100」、東ソー社製
【0259】
-ポリオール-
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG):「PTMG1000」、三菱ケミカル社製
・ポリカプロラクトンジオール(PCL):ダイセル製「プラクセル205」
【0260】
-硬化剤-
・DETDA(エタキュアー100):三井化学ファイン社製
・1,4-ブタンジオール(BD):三菱ケミカル社製
・トリメチロールプロパン(TMP):三菱ガス化学社製
【0261】
-シロキサン系化合物-
・片末端カルビノール変性シリコーンオイル:X-22-176DX、信越シリコーン社製
・ジメチルシリコーンオイル:KF96-3000cs、信越シリコーン社製
【0262】
-NCO末端シリコーンプレポリマーの合成(プレポリマーA1)-
下記表1に示すように、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、東ソー製)と片末端カルビノール変性シリコーンオイル(X-22-176DX、信越化学製)を60℃、90分間反応させることによって、イソシアネート(NCO)含有量が3.2%のNCO末端シリコーンプレポリマー(プレポリマーA1)を得た。
【0263】
【表1】
【0264】
-NCO末端ウレタンプレポリマーの合成(プレポリマーB)-
下表2に示すように、所望のNCO%となるように、イソシアネートとポリオールを混合し、スズ触媒ジブチルチンジラウリレート0.01gと共に80℃、90分間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーB1及びB2を調製した。
【0265】
【表2】
【0266】
-硬化剤の調製-
下記表3に示すように、硬化剤1及び2を調製した。
【0267】
【表3】
【0268】
[クリーニングブレード1の作製]
プレポリマーA1及びB2、シリコーンオイル(KF96、信越化学工業社製)を表4に示す配合で混合し、ホモジナイザー(15000rpm)で撹拌し、第1組成物を得た。
【0269】
80℃に加熱した、シリコーンオイルが乳化している第1組成物に硬化剤2を添加した後、165℃に加温した遠心ドラムに注入して30分間反応させ、1.8mm厚の弾性部材であるゴムシートを得た。なお、第1組成物と硬化剤2とは、R値(NCO基/OH基モル比)が0.925になるように混合した。
【0270】
このゴムシートを、カラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)に搭載できるように短冊形状を切り出して、弾性部材を得た。その弾性部材を板金ホルダー(支持部材)に接着剤で固定した。これにより、クリーニングブレード1を得た。
【0271】
[ポリシロキサン構造に由来するドメインの平均分散径]
得られた弾性部材を長手方向に対して直交する面で輪切りにし、この断面を上向きにして、先端稜線部を含む100μmの領域をレーザ顕微鏡(OLS4100、オリンパス社製)で観察した。
【0272】
弾性部材を輪切りにする方法としては、弾性部材の長手方向の厚みが3mmとなるように、垂直スライサーを用いて弾性部材の長手方向に対して垂直に剃刀を用いて切断した。
【0273】
観察した画像について、ImagePro ver5.1を用いてドメインの分散径を計測した。断面において観察されるドメインの外周の2点を結ぶ線分でありかつ前記ドメインの重心を通る線分の長さを2度刻みに測定した。測定した線分の長さの平均値をそのドメインの分散径とした。100個から200個のドメインの分散径を計測し、個数平均値を算出し、それを平均分散径とした。
【0274】
[ドメインの面積割合]
弾性部材を当該箇所で切断して断面を露出させ、レーザ顕微鏡(OLS4100、オリンパス社製)で先端稜線部を含む100μmの領域を撮影した。得られた画像をImageProを用いて2値化処理し、シロキサン系化合物の占める面積比率(単位:%)を算出することで、先端稜線部を含む100μmの領域の断面におけるドメインの面積割合を求めた。
【0275】
[弾性部材の平均厚み]
クリーニングブレード1の先端面を上向きにして、デジタルマイクロスコープ(VHX-2000、キーエンス社製)で10箇所を観察し、その算術平均値を平均厚みとした。
【0276】
[クリーニングブレードのマルテンス硬度]
クリーニングブレード1のマルテンス硬度は、上記の基材のマルテンス硬度と同様にして行った。
【0277】
[クリーニングブレード2~6の作製]
クリーニングブレード1において、第1組成物及び硬化剤の種類、ホモジナイザーの時間、並びに硬化温度を、表4に示すように変更したこと以外は、クリーニングブレード1の作製と同様に行い、クリーニングブレード2~6を作製した。なお、第1組成物と硬化剤1又は2とは、R値(NCO基/OH基モル比)が0.925になるように混合した。
【0278】
クリーニングブレード1~6の組成、ゴムシートの厚み及び作製条件を表4に示す。
【0279】
【表4】
【0280】
<実施例1>
[トナーの作製]
(第1バインダー樹脂の作製)
ビニル系モノマーとして、スチレン600g、アクリル酸ブチル110g、アクリル酸30gと、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド30gとを滴下ロートに入れた。ポリオールとして、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1230g、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン290g、イソドデセニル無水コハク酸250g、テレフタル酸310g、無水1,2,4-ベンゼントリカルボン酸180g及びエステル化触媒としてジブチル錫オキシド7gを、温度計、ステンレス製攪拌機、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットル四つ口フラスコに入れた。四つ口フラスコをマントルヒーター中に入れて、四つ口フラスコ中の混合液を、窒素雰囲気下、160℃で、撹拌しつつ、滴下ロートよりビニル系モノマーと重合開始剤の混合液を四つ口フラスコ内の混合液に一時間かけて滴下した。160℃に保持したまま2時間付加重合反応を熟成させた後、四つ口フラスコ内に含まれる混合液を230℃に昇温して縮重合反応を行わせた。重合度は、定荷重押出し形細管式レオメータを用いて測定した軟化点により追跡を行い、所望の軟化点に達したときに反応を終了させた。これにより、第1バインダー樹脂を得た。
【0281】
(第2バインダー樹脂の作成)
ポリオールとして、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン2210g、テレフタル酸850g、無水1,2,4-ベンゼントリカルボン酸120g及びエステル化触媒としてジブチル錫オキシド0.5gを、温度計、ステンレス製攪拌機、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットル四つ口フラスコに入れた。四つ口フラスコをマントルヒーター中に入れて、四つ口フラスコ中の混合液を、窒素雰囲気下、230℃に昇温して縮重合反応を行わせた。重合度は、定荷重押出し形細管式レオメータを用いて測定した軟化点により追跡を行い、所望の軟化点に達したときに反応を終了させた。これにより、第2バインダー樹脂を得た。
【0282】
第1バインダー樹脂及び第2バインダー樹脂を含むバインダー樹脂100質量部に対して、C.I.Pigment Red 57-1を4質量部含有相当のマスターバッチ、所望の量のパラフィンワックス及びホウ素系荷電制御剤をヘンシェルミキサーで十分混合した。その後、混合物を2軸押し出し混練機(PCM-30:池貝鉄工社製)を使用して、溶融混練した。得られた混練物を冷却プレスローラーで2mm厚に圧延し、冷却ベルトで冷却した後、フェザーミルで粗粉砕した。その後、機械式粉砕機(KTM:川崎重工業社製)で体積平均粒径10μm~12μmまで粉砕し、さらに、ジェット粉砕機(IDS:日本ニューマチックエ業社製)で粉砕し、体積平均粒径3μm以下の粒子が22個数%の着色樹脂粒子を得た。この着色樹脂粒子100質量部に対してH20TM(一次粒子径12nm、クラリアント社製)0.8質量部をヘンシェルミキサーを用いて、周速40m/sで5min混合した。これにより、トナーを得た。
【0283】
[トナーの、粒子径が3μm以下の粒子の割合]
まず、トナーの粒子径を求めた。トナーの粒子径は、コールターマルチサイザーIII(コールター社製)で測定した。トナー粒子径の測定は、以下の通り行った。
【0284】
まず、電解液100mL中に分散剤として界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、東京化成社製)を2mL加えた。なお、電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したものであり、ISOTON-II(コールター社製)を用いた。電解液に界面活性剤を加えた混合液に、更に測定試料を固形分にして10mg加え、試料が懸濁した電解積を得た。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIIにより、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナーの体積及び個数を測定して、体積分布と個数分布を算出した。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dp)を求めた。
【0285】
次に、トナーの、粒子径が3μm以下の粒子の割合を求めた。本実施例では、粒子径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とした。「粒子径が3μm以下の粒子の割合」は、粒子径3.17μm未満の粒子の個数の、粒子径2.00μm以上40.30μm未満の粒子の個数に対する割合である、3.17μm未満の個数割合(個数%)を示す。
【0286】
粒子を振り分けるチャンネルとしては、例えば2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用した。
【0287】
<画像形成装置の作製>
作製したクリーニングブレード1をカラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)のプロセスカートリッジに取り付けて画像形成装置を組み立てた。なお、クリーニングブレード1は、線圧20g/cm、クリーニング角78°となるように、カラー複合機に取り付けた。
【0288】
<評価>
画像形成装置のクリーニング性及びトナー飛散具合を評価した。
【0289】
[クリーニング性]
上記の画像形成装置を用い、23℃/50%RH、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、1000枚(A4サイズ横)を出力した。この画像形成装置を40℃、70%で30日間保管した。
【0290】
(評価項目1)
上記の通り保管した画像形成装置を用いて、27℃、80%RHの条件下で縦帯画像を出力した。出力した画像や感光体表面を目視及びレーザ顕微鏡で観察し、以下の評価基準で評価した。なお、「◎」及び「○」を許容可とし、「×」を許容不可とした。
((評価基準))
◎:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できず、感光体上を長手方向に顕微鏡で観察してもトナーのスジ状のすり抜けが確認できない。
○:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できない。
×:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できる。
【0291】
(評価項目2)
上記の通り保管した画像形成装置を用いて、27℃、80%RHの条件下で全ベタ画像を出力した。出力した画像を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。なお、「◎」、「○」及び「△」を許容可とし、「×」を許容不可とした。
((評価基準))
◎:1枚目から横スジが見られない。
○:画像に白い横スジが発生したが、5枚目までには消えた。
△:画像に白い横スジが発生したが、6枚目~10枚目で消えた。
×:画像に白い横スジが発生し、10枚目までで消えなかった
【0292】
[トナー飛散具合]
前記画像形成装置を用い、27℃/80%RH、通紙条件:画像面積率15%チャートを20プリント/ジョブで50,000枚(A4サイズ横)を出力した。その後10枚白紙を出力し、画像及びプロセスカートリッジの汚染状態を確認した。
◎:画像及びプロセスカートリッジにトナー飛散が見られない。
○:画像にはトナー飛散が無いが、プロセスカートリッジにはトナー飛散の跡が確認できる。
×:画像にトナー飛散が見られる。
【0293】
<実施例2~実施例5>
実施例1において、表5に示すように、トナーの粉砕工程における条件を変更して、トナーの3μm以下の個数%を変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0294】
<実施例6~実施例10、比較例1~比較例3>
実施例1において、表5に示すように、クリーニングブレード1をクリーニングブレード2~8に変更し、トナーの粉砕工程における条件を変更して、トナーの3μm以下の個数%を変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0295】
各実施例及び比較例で用いた、クリーニングブレードの、種類、ポリシロキサンドメインの平均分散径及びマルテンス硬度と、トナーの3μm以下の個数%と、評価結果を表5に示す。
【0296】
【表5】
【0297】
表5より、実施例1~8の画像形成装置は、クリーニング性及びトナー飛散具合がいずれも使用上の条件を満たしていたことが確認された。これに対して、比較例1~3の画像形成装置は、クリーニング性が使用上の条件を満たさず、実用上問題を有することが確認された。
【0298】
よって、実施例1~8の画像形成装置は、比較例1~3の画像形成装置と異なり、クリーニングブレードが、弾性部材の、先端稜線部を含む表面から100μmの深さまでの領域に、平均分散径が0.μm~5.0μmの、ポリシロキサン構造に由来するドメインを含有する。そして、トナーは、3μm以下の粒子の割合を20個数%以上とする。これにより、実施例1~8の画像形成装置は、過酷な環境下においても、優れたクリーニング性を有することができるといえる。したがって、実施例1~8の画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置として有効に用いることができるといえる。
【0299】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0300】
1 クリーニングブレード
2 弾性部材
4 像担持体
100 画像形成装置(プリンタ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0301】
【文献】特開2004-279591号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8