(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】単結晶製造装置
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20240611BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020205275
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】三原 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】三田村 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】高野 清隆
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152612(JP,A)
【文献】特開2008-285351(JP,A)
【文献】特開2013-256406(JP,A)
【文献】特開2011-105537(JP,A)
【文献】特開2011-057467(JP,A)
【文献】特開2018-140882(JP,A)
【文献】特開2010-013300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法によって単結晶を育成する単結晶製造装置であって、
天井部を備え、シリコン融液を収容するルツボを格納するメインチャンバと、
前記メインチャンバの前記天井部からゲートバルブを介して上方に連設し、前記シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を収容する引き上げチャンバと、
前記ルツボに収容された前記シリコン融液と対向するように配置された熱遮蔽部材と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を包囲するように前記熱遮蔽部材上に配置された整流筒と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を取り囲むように配置され、前記メインチャンバの前記天井部から前記シリコン融液に向かって延伸した部分を含み、冷却媒体で強制冷却される冷却筒と、
前記冷却筒の内側に嵌合された冷却補助筒と
を有し、
前記整流筒の上部は、前記冷却補助筒の前記冷却筒から下方に突き出した部分の前記冷却補助筒の下部を囲繞する構造を有するものであ
り、
前記整流筒の側面と前記冷却補助筒の前記冷却筒から下方に突き出した部分の冷却補助筒の側面との間の隙間を3mm以上15mm未満とすることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記整流筒は合成石英製であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記冷却補助筒の材質は、黒鉛部材、炭素複合部材、ステンレス鋼、モリブデン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
前記整流筒は、前記冷却補助筒の前記冷却筒から下方に突き出した部分の側面の全面積のうち、5%以上の領域を前記整流筒の上部で囲繞する構造を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の単結晶製造装置。
【請求項5】
前記整流筒は側面に開口部を有し、該整流筒の開口部の上端の高さが前記整流筒の全高の35%以下の高さの位置に形成されたものであることを特徴とする請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の単結晶製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話など通信用にRF(高周波)デバイスが用いられている。
【0003】
シリコン単結晶ウェーハを用いたRFデバイスにおいては、基板抵抗率が低いと高導電性のために損失が大きいため、1000Ωcm以上の高抵抗率、すなわち抵抗率に関わるBやPなどのドーパント濃度が非常に低いウェーハが用いられる。
【0004】
SOI(Silicon on Insulator)と呼ばれる、シリコン基板表層部に薄い酸化膜と薄いシリコン層が形成されたウェーハを用いることもあるが、この場合も高抵抗率が望まれる。
【0005】
またパワーデバイス用としても、高耐圧用として比較的高抵抗率ウェーハが望まれている上、IGBTなどでは良好な特性を得るために、炭素濃度が極めて低いシリコン単結晶ウェーハが要求されるようになってきている。つまり最新の半導体デバイスにおいては、重金属などの不純物はもとより、ドーパントや軽元素である炭素など、不純物の低減は必須の課題となっている。
【0006】
シリコン単結晶中に混入する炭素は、原料からの持ち込みに起因するものと、結晶製造プロセス中の炉内反応に起因したものの2つが挙げられ、これらの各導入過程別に炭素濃度低減を試みた技術が報告されている。
【0007】
原料からの持ち込みについては、原料シリコンの表面に付着した有機物の中に高温で気化せず炭化するものがあり、これが結晶中に取り込まれることで結晶中の炭素濃度が上昇するという問題がある。
【0008】
これを改善するために、例えば、特許文献1のパラフィン系炭化水素をはじめとする有機物汚染が少ないポリエチレン製収容袋に保管した多結晶原料を用いてCZ法で単結晶育成を行う方法、特許文献2の多結晶表面の有機物を同定して定量分析し、原料選別した後にCZ法で単結晶育成を行う方法が挙げられる。
【0009】
他方、結晶製造プロセスに起因した炭素の混入については、結晶育成中に引上げ機炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOの反応によって炉内に炭素含有ガスが生成され、この炭素含有ガスが融液中に混入することで炭素濃度が上昇するという問題がある。
【0010】
この問題を解決するために、例えば、特許文献3の黒鉛ルツボの上に円筒形状の整流部材を搭載し、炭素含有ガスの融液側への逆流を防ぐ方法がある。この方法の場合、黒鉛ルツボの上に整流部材が搭載されるため、直胴工程中にルツボの上下動のストロークを確保することができなくなってしまい、その結果として、欠陥分布や酸素濃度の軸方向分布が変わってしまうことや、引き上げ速度の低速化による生産性の低下を招くことが問題となっていた。
【0011】
また、整流部材を搭載して単結晶育成を行う他の例として、特許文献4のルツボの上方に石英製の整流筒とカーボン製の整流筒を搭載する方法や、特許文献5のルツボの上方に石英製の整流筒のみを搭載する方法がある。
【0012】
これらの方法に記載されている整流部材を用いることで、シリコン原料融液直上から石英ルツボ上端の方向に流れる不活性ガスの線速を上昇させることはできる。しかし、特許文献4及び5の装置は、十分な冷却機構を有していないため、熱遮蔽部材周りの空間が高温化してしまい、炉内反応によって生じる炭素含有ガスの生成を抑制することができない。このため、より低い炭素濃度の製品を製造できないことが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2016-113198号公報
【文献】特開2016-210637号公報
【文献】特開2012-201564号公報
【文献】特開2010-143776号公報
【文献】特開2010-184839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、従来技術に比べてより低い炭素濃度の単結晶を製造できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明では、チョクラルスキー法によって単結晶を育成する単結晶製造装置であって、
天井部を備え、シリコン融液を収容するルツボを格納するメインチャンバと、
前記メインチャンバの前記天井部からゲートバルブを介して上方に連接し、前記シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を収容する引き上げチャンバと、
前記ルツボに収容された前記シリコン融液と対向するように配置された熱遮蔽部材と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を包囲するように前記熱遮蔽部材上に配置された整流筒と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を取り囲むように配置され、前記メインチャンバの前記天井部から前記シリコン融液に向かって延伸した部分を含み、冷却媒体で強制冷却される冷却筒と、
前記冷却筒の内側に嵌合された冷却補助筒と
を有し、
前記整流筒の上部は、前記冷却補助筒の前記冷却筒から下方に突き出した部分の前記冷却補助筒の下部を囲繞する構造を有するものであることを特徴とする単結晶製造装置を提供する。
【0016】
本発明の単結晶製造装置を用いることで、冷却補助筒の周りの空間の温度を低下させることができ、炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOとの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を抑制することができる。
【0017】
加えて、上記反応が起こったとしても、熱遮蔽部材の上に整流筒を配置し、且つこの整流筒の上部が冷却補助筒の冷却筒から下方に突き出した部分の冷却補助筒の下部を囲繞する構造を採用することで、上記反応によって生じた炭素含有ガスがシリコン融液側に拡散することを抑制することもできる。
【0018】
したがって、本発明の単結晶製造装置によれば、これらの効果が組み合わさった結果として、従来技術に比べて低い炭素濃度の単結晶を効率よく製造することが可能となる。
【0019】
このとき、前記整流筒は合成石英製であることが好ましい。
【0020】
合成石英製の整流筒を用いることで、炭素濃度がより低い単結晶を製造することができる。
【0021】
また、前記冷却補助筒の材質は、黒鉛部材、炭素複合部材、ステンレス鋼、モリブデン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
このような冷却補助筒を有する単結晶製造装置であれば、より効率よく、炭素濃度がより低い単結晶を製造することができる。
【0023】
また、前記整流筒は、前記冷却補助筒の前記冷却筒から下方に突き出した部分の側面の全面積のうち、5%以上の領域を前記整流筒の上部で囲繞する構造を有するものであることが好ましい。
【0024】
このような構造を用いることで、炭素含有ガスがシリコン融液側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【0025】
また、前記整流筒の側面と前記冷却補助筒の前記冷却筒から下方に突き出した部分の冷却補助筒の側面との間の隙間を3mm以上15mm未満とすることがより好ましい。
【0026】
このような構造を用いることで、炭素含有ガスがシリコン融液側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【0027】
更に、前記整流筒は側面に開口部を有し、該整流筒の開口部の上端の高さが前記整流筒の全高の35%以下の高さの位置に形成されたものであることが好ましい。
【0028】
このような側面に開口部を有する整流筒を用いることで、炭素含有ガスがシリコン融液側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の単結晶製造装置であれば、引上げ機炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOとの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を抑制する効果と、上記反応によって生じた炭素含有ガスがシリコン融液側に拡散することを抑制する効果とが得られ、これらの効果が組み合わさった結果として、従来技術に比べて低い炭素濃度の単結晶を効率よく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の単結晶製造装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示す単結晶製造装置の整流筒周辺部を拡大して示した概略断面図である。
【
図3】本発明の単結晶製造装置の他の一例の整流筒周辺部を拡大して示した概略断面図である。
【
図4】実施例1、比較例1及び比較例2における単結晶中炭素濃度の固化率依存性を示すグラフである。
【
図5】実施例2及び比較例1における単結晶中炭素濃度の固化率依存性を示すグラフである。
【
図6】実施例3及び比較例1における単結晶中炭素濃度の固化率依存性を示すグラフである。
【
図7】比較例1の単結晶製造装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、チョクラルスキー法(CZ法)や磁場印加CZ法(MCZ法)によって育成される単結晶、例えばシリコン単結晶等の製造装置に関するものである。
【0032】
上述のように、従来技術に比べて炭素濃度がより低い単結晶を製造できる方法の開発が求められていた。
【0033】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、引き上げ中のシリコン単結晶を包囲するように熱遮蔽部材上に整流筒を配置し、冷却筒の内側に冷却補助筒を嵌合させ、整流筒の上部で、冷却補助筒の冷却筒から下方に突き出した部分の冷却補助筒の下部を囲繞する構成を有する単結晶製造装置であれば、炉内の炭素部材とシリコン融液(原料融液)から蒸発するSiOの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を抑制することができ、更に、上記反応によって生じた炭素含有ガスがシリコン融液側に拡散することを抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0034】
即ち、本発明は、チョクラルスキー法によって単結晶を育成する単結晶製造装置であって、
天井部を備え、シリコン融液を収容するルツボを格納するメインチャンバと、
前記メインチャンバの前記天井部からゲートバルブを介して上方に連設し、前記シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を収容する引き上げチャンバと、
前記ルツボに収容された前記シリコン融液と対向するように配置された熱遮蔽部材と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を包囲するように前記熱遮蔽部材上に配置された整流筒と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を取り囲むように配置され、前記メインチャンバの前記天井部から前記シリコン融液に向かって延伸した部分を含み、冷却媒体で強制冷却される冷却筒と、
前記冷却筒の内側に嵌合された冷却補助筒と
を有し、
前記整流筒の上部は、前記冷却補助筒の前記冷却筒から下方に突き出した部分の前記冷却補助筒の下部を囲繞する構造を有するものであることを特徴とする単結晶製造装置である。
【0035】
なお、先に示した特許文献1及び2に記載された技術は単結晶中の炭素濃度に注目しているという点では本技術と関連性はあるものの、いずれも原料シリコンから持ち込まれる炭素汚染に注目した技術であり、結晶製造プロセスに起因した炭素汚染に注目した本発明とは異なる技術である。
【0036】
また、特許文献3~5では、整流筒もしくは整流部材を用いて原料融液直上から石英ルツボ上端の方向に流れる不活性ガスの線速を上昇させ、炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOの反応によって生じた炭素含有ガスが原料融液側に逆流しにくくなることを示唆しているが、引き上げ中のシリコン単結晶を包囲するように熱遮蔽部材上に整流筒を配置し、冷却筒の内側に冷却補助筒を嵌合させ、整流筒の上部で、冷却補助筒の冷却筒から下方に突き出した部分の冷却補助筒の下部を囲繞する本発明の構成は開示されていない。
【0037】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
先に説明した構成を有する本発明の単結晶製造装置を用いることで、冷却補助筒の周りの空間の温度を低下させることができ、炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOとの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を抑制することができる。
【0039】
加えて、上記反応が起こったとしても、熱遮蔽部材の上に整流筒を配置し、冷却補助筒の冷却筒から下方に突き出した部分の冷却補助筒の下部を囲繞する構造を採用することで、上記反応によって生じた炭素含有ガスがシリコン融液側に拡散することを抑制することもできる。
【0040】
したがって、本発明の単結晶製造装置によれば、これらの効果が組み合わさった結果として、従来技術に比べて低い炭素濃度の単結晶を効率よく製造することが可能となる。
【0041】
以下、本発明の単結晶製造装置の各部材をより詳細に説明する。
【0042】
(1)メインチャンバ
メインチャンバは、天井部を備え、シリコン融液を収容するルツボを格納するものである。
【0043】
ルツボは、例えば、シリコン融液を収容する石英ルツボと、この石英ルツボを支持する黒鉛ルツボとから構成されていても良い。
【0044】
上記を含め、メインチャンバは、一般的なCZシリコンの単結晶製造装置のメインチャンバと同様の構造を有することができる。
【0045】
例えば、メインチャンバは、ヒーターを格納することもできる。ヒーターは、例えば、ルツボの周りを取り囲むように配置され、ルツボ内に収容される原料シリコンを溶融して、シリコン融液とすることができる。
【0046】
メインチャンバがヒーターを具備する場合、メインチャンバは、ヒーターを取り囲む断熱材を格納することができる。
【0047】
ルツボは、ルツボサポートに支持され得る。ルツボサポートには、ルツボ軸が取り付けられていてもよい。ルツボ軸は、ルツボサポートと、これに支持されたルツボを回転及び昇降させることができる。
【0048】
(2)引き上げチャンバ
引き上げチャンバは、メインチャンバの天井部からゲートバルブを介して上方に連設し、シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を収容するものである。
【0049】
上記を含め、引き上げチャンバは、一般的なCZシリコンの単結晶製造装置の引き上げチャンバと同様の構造を有することができる。
【0050】
(3)熱遮蔽部材
熱遮蔽部材は、ルツボに収容されたシリコン融液と対向するように配置されたものである。熱遮蔽部材は、シリコン融液の表面からの輻射をカットするとともにシリコン融液の表面を保温することができる。熱遮蔽部材は、例えば、内径が下方に向かって徐々に小さくなる形状でシリコン融液と対向するように配置させることができる。
【0051】
熱遮蔽部材は、例えば、メインチャンバ内に格納することができる。
【0052】
熱遮蔽部材の材質は特に限定されないが、熱遮蔽部材は、例えば、黒鉛製とすることができる。
【0053】
(4)冷却筒
冷却筒は、引き上げ中のシリコン単結晶を取り囲むように配置され、メインチャンバの天井部からシリコン融液に向かって延伸した部分を含み、冷却媒体で強制冷却されるものである。
【0054】
冷却筒は、シリコン融液に向かって延伸し、ゲートバルブの下部のメインチャンバ内に配置され得る。
【0055】
冷却筒を強制冷却する冷却媒体は、特に限定されない。
【0056】
(5)冷却補助筒
冷却補助筒は、冷却筒の内側に嵌合されたものである。このとき用いる冷却補助筒の材質は、黒鉛部材、炭素複合部材、ステンレス鋼、モリブデン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種とすることが好ましい。このように熱伝導率及び輻射率が高い材質の冷却補助筒を用いることで、ヒーター周りや熱遮蔽部材周りの高温部からの輻射熱を冷却筒に効率よく伝えることができ、その結果として、黒鉛部材から育成結晶への輻射熱が減って結晶成長速度が高速化すると同時に、炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOとの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を更に抑制する効果が得られる。
【0057】
(6)整流筒
本発明の整流筒は、引き上げ中のシリコン単結晶を包囲するように熱遮蔽部材上に配置されたものである。整流筒は、引き上げ中のシリコン単結晶を、熱遮蔽部材と同芯として包囲することができる。
【0058】
また、整流筒は、その上部が冷却補助筒の冷却筒から下方に突き出した部分の冷却補助筒の下部を囲繞する構造を有する。そのため、整流筒の内径は、冷却補助筒の下部の外径よりも大きな構造とする必要がある。
【0059】
熱遮蔽部材上に配置され且つ上部が冷却補助筒の冷却筒から突き出した部分の下部を囲繞する構造を有する整流筒を用いることにより、炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOとの反応によって炭素含有ガスが生じても、この炭素含有ガスがシリコン融液側に拡散することを確実に抑制することができる。
【0060】
炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOとの反応によって生じる炭素含有ガスの発生量は炉内の黒鉛部材の表面積に比例して増加するため、整流筒は、石英製やセラミック製とすることが好ましく、合成石英製とすることが特に好ましい。
【0061】
このとき用いる整流筒は、冷却補助筒の冷却筒から下方に突き出した部分の側面の全面積のうち、5%以上の領域を該整流筒の上部で囲繞する構造を有するものであることが好ましい。
【0062】
このような構造を用いることで、より一層炭素含有ガスがシリコン融液側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【0063】
また、整流筒の側面と冷却補助筒の冷却筒から下方に突き出した部分の冷却補助筒の測面との間の隙間を3mm以上15mm未満とした構造とすることが好ましい。
【0064】
このような構造を用いることで、より確実に炭素含有ガスがシリコン融液側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【0065】
また、このとき用いる整流筒は、その側面に、開口部が形成されていることが好ましい。
【0066】
このような側面に開口部を有する整流筒を用いることで、整流筒開口部から整流筒の外側、例えば後述する筒部にある炉内監視用窓の方向に流れる不活性ガスの流速が上昇し、その結果として、筒部の内部や筒部の外側から炭素含有ガスが原料融液側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【0067】
加えて、前記整流筒の開口部は、開口部上端の高さが整流筒の全高の35%以下の高さに位置し、かつ、開口部の中心を整流筒の下端部からの高さ30mm以上、40mm以下の位置に設けた構造とすることが好ましい。また、開口部は、整流筒の側面に、円周方向に等間隔で形成されていることがより好ましく、例えば角度0°、120°及び240°の3つの軸上に開口部を設けた構造とすることができる。さらに、前記開口部は、開口部上端から下端までの長さを50mm以下とし、かつ、該整流筒の全側面積の15%以下の領域を開口した構造とすることが好ましい。
【0068】
このような側面に開口部を有する整流筒を用いることで、整流筒開口部から整流筒の外側、例えば後述する筒部にある炉内監視用窓の方向に流れる不活性ガスの流速が更に上昇し、その結果として、筒部の内側や筒部の外側から炭素含有ガスが原料融液側により一層逆流しにくくなる効果が得られる。
【0069】
(7)その他
上記以外のHZ(ホットゾーン)の構造は、一般的なCZシリコン単結晶製造装置と同じ構造とすることができる。
【0070】
例えば、磁場印加CZ法(MCZ法)を行う単結晶製造装置であれば、シリコン融液に磁場を印加する磁場印加装置を更に含むことができる。
【0071】
次に、図面を参照しながら、本発明の単結晶製造装置の具体例を説明する。なお、従来装置と同じものについては説明を適宜省略することがある。
【0072】
図1は、本発明の単結晶製造装置の一例を示す概略断面図である。
図2は、
図1に示す単結晶製造装置の整流筒周辺部を拡大して示した概略断面図である。
【0073】
図1及び
図2に示す単結晶製造装置1は、天井部21を備え、シリコン融液6を収容する石英ルツボ7及びこれを支持する黒鉛ルツボ8を格納するメインチャンバ2と、メインチャンバ2の上部に不図示のゲートバルブを介して連設された引き上げチャンバ3と、メインチャンバ2の天井部21からシリコン融液6に向かって延伸した部分13aを含む冷却筒13と、冷却筒13の内側に篏合された冷却補助筒15とを有する。
【0074】
図2に示すように、冷却補助筒15は、下方に延伸した部分15aと、冷却筒13の延伸した部分13a上に配置された部分15bとを含む。冷却補助筒15の下方に延伸した部分15aは、
図2に示すように、冷却筒13の延伸した部分13aの内側に位置し、部分15bから下方に延伸している。部分15aの厚さは、部分15bの厚さよりも薄い。
【0075】
メインチャンバ2は、黒鉛ルツボ8を支持するルツボサポート16と、ルツボサポート16を支持したルツボ軸17と、黒鉛ルツボ8を取り囲むように配置されたヒーター9と、ヒーター9を取り囲むように配置された断熱材10とを更に格納している。ルツボ軸17は、シリコン融液6、石英ルツボ7、黒鉛ルツボ8及びルツボサポート16を、回転軸18を中心として自転させることができると共に、これらを昇降させることができる。
【0076】
メインチャンバ2の天井部21には、筒部11が配置されている。筒部11は、天井部21からシリコン融液6に向けて延伸しており、端部に、シリコン融液と対向するように例えば黒鉛製の熱遮蔽部材12が設けられている。
【0077】
熱遮蔽部材12は、内径が下方に向かって徐々に小さくなる形状でシリコン融液6と対向するように配置され、シリコン融液6の表面からの輻射をカットするとともにシリコン融液6の表面を保温するようにしている。
【0078】
熱遮蔽部材12の上に、整流筒14が、引き上げるシリコン単結晶を熱遮蔽部材12と同芯に包囲するように配置されている。
【0079】
また、整流筒14の上部14aは、
図2に示すように、冷却補助筒15の下部15cを囲繞する構造を有する。
【0080】
先に説明したように、冷却補助筒15と、熱遮蔽部材12上に配置され且つ上部14aが冷却補助筒15の下部15cを囲繞する構造を有する整流筒14とを用いることにより、単結晶製造装置1内の炭素部材とシリコン融液6から蒸発するSiOとの反応によって炭素含有ガスが生じても、この炭素含有ガスがシリコン融液6側に拡散することを抑制することができる。
【0081】
このとき用いる整流筒14は、冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の側面15dの全面積のうち、5%以上の領域を該整流筒14の上部14aで囲繞する構造とし、なおかつ、整流筒14の側面14bと冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の側面15dとの隙間cを3mm以上15mm未満とした構造とすることが好ましい。このような構造を用いることで、原料融液6直上の領域や筒部11の内面付近に存在している炭素含有ガスが原料融液側に逆流しにくくなる効果が得られる。
【0082】
冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の側面15dの全面積は、
図2に示す長さbに対応する。冷却補助筒15の突き出した部分の側面15dのうち整流筒14の上部14aに囲繞されている(覆われている)領域の面積は、
図2に示す長さaに対応する。すなわち、比a/bが5%以上であることが好ましい。
【0083】
また、このとき用いる整流筒14は、
図3に示すように、側面14bに開口部14cが円周方向に等間隔で形成されていることが好ましく、例えば角度0°、120°、240°の3つの軸上に開口部を設けた構造とすることができる。さらに、前記開口部14cは、開口部上端から下端までの長さを50mm以下とし、かつ、該整流筒14の全側面積の15%以下の領域を開口した構造とすることが好ましい。加えて、前記整流筒14の開口部14cは、開口部上端の高さが整流筒14の全高の35%以下の高さに位置し、かつ、開口部の中心は整流筒14の下端部からの高さ30mm以上40mm以下の位置に設けた構造とすることが好ましい。開口部14cの開口した領域の、整流筒14の側面14bの全面積に対する割合は、
図3に示す開口部面積dの全面積eに対する割合、すなわち比d/eに対応する。
【0084】
このような側面14bに開口部14cを有する整流筒14を用いることで、整流筒14の開口部14cから筒部11にある炉内監視用窓の方向に流れる不活性ガスの流速が上昇し、その結果として、筒部11の内部や筒部11の外側から炭素含有ガスがシリコン融液6側に逆流しにくくなる効果が得られる。
【0085】
以上のような整流筒14と冷却補助筒15を用いることで、シリコン融液6直上や筒部11の内部や外側に存在している炭素含有ガスがシリコン融液6側に逆流しにくくなる効果と、炉内の炭素部材とシリコンメルトから蒸発するSiOとの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を抑制する効果とが同時に得られ、これらの効果が組み合わさった結果としてより一層の単結晶中の炭素濃度の低減が可能となる。
【0086】
次に、本発明の単結晶製造装置を用いた単結晶製造方法の例を、
図1及び
図2を参照しながら説明する。ただし、本発明の単結晶製造装置は、
図1及び
図2に示した単結晶製造装置には限定されないし、本発明の単結晶製造装置を用いた単結晶製造方法は、以下に例示するものに限定されない。
【0087】
まず、種結晶4をシリコン融液6に浸漬し、種結晶4と石英ルツボ7及び黒鉛ルツボ8とを回転軸18を中心に自転させながら種結晶4を静かに上方に引上げて棒状のシリコン単結晶5を成長させる一方、所望の直径と結晶品質を得るため融液面の高さが常に一定に保たれるように結晶の成長に合わせて石英ルツボ7及び黒鉛ルツボ8を上昇させる。石英ルツボ7及び黒鉛ルツボ8の上昇、並びに石英ルツボ7及び黒鉛ルツボ8の回転は、ルツボ軸17を用いて行うことができる。
【0088】
シリコン融液6は、石英ルツボ7内に原料シリコンを投入し、この原料シリコンをヒーター9を用いて溶融させることによって得ることができる。
【0089】
このとき使用する原料シリコンは、半導体グレードの高純度原料であることが好ましい。本発明は、熱遮蔽部材上に配置した整流筒によって冷却補助筒の冷却筒から下方に突き出した部分の下部を囲繞する構造を採用することで結晶製造プロセスに起因した炭素の汚染を低減する技術であるが、高純度の原料を使用することにより、原料からの持ち込みによる汚染量を低減でき、それにより、炭素濃度が低い単結晶をより確実に製造することができる。よって、使用する原料シリコンは半導体グレードの高純度原料であることが好ましい。
【0090】
図1及び
図2に示す単結晶製造装置1の一例を用いることにより、冷却筒13に、シリコン単結晶5からの輻射熱やヒーター9等の高温部からの輻射熱を十分に伝えることができ、伝わった熱を、冷却媒体による強制冷却で除去できる。それにより、シリコン単結晶5をより効率的に製造できる。
【0091】
そして、
図1及び
図2に示す単結晶製造装置1の一例では、冷却補助筒15の周りの、例えばシリコン融液6直上のシリコン単結晶5の周りの空間や、冷却補助筒15と筒部11とで囲まれた空間の温度を低下させることができる。それにより、製造装置1内の炭素部材とシリコン融液6から蒸発するSiOとの反応を抑制でき、ひいては炭素含有ガスの発生を抑制できる。加えて、上記反応が起きて炭素含有ガスが生じても、熱遮蔽部材12上に配置され、且つ上部14aで冷却補助筒15の下部15cを囲繞した整流筒14により、この炭素含有ガスがシリコン融液6に逆流するのを防ぐことができる。
【0092】
すなわち、
図1及び
図2に示す単結晶製造装置1の一例を用いれば、炭素濃度が低い単結晶を効率よく製造することができる。
【0093】
また、
図1及び
図2に示す単結晶製造装置1の一例において、整流筒14を、
図3に示すような側面14bに開口部14cを有するものとすることで、先に説明したように、炭素含有ガスがシリコン融液に逆流するのを更に防ぐことができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
各実施例及び比較例では、以下に説明する単結晶製造装置を用いて、以下の共通条件で、単結晶の製造を行なった。ルツボとして、口径32インチ(81.28cm)を用いた。このルツボに360kgの原料シリコンを入れて、これをヒーターで溶融して、シリコン融液を得た。シリコン融液に水平磁場を印加しながら、結晶直径300mmの結晶の引き上げを行った。引き上げ後の直径300mmの結晶について、各直胴位置からサンプルを切り出し、PL法を用いて炭素濃度の定量を実施した。
【0096】
(実施例1)
実施例1では、
図1及び
図2を参照しながら説明した単結晶製造装置1と同様の構造を有する単結晶製造装置を用いた。すなわち、実施例1では、引き上げ中のシリコン単結晶5を同芯に包囲するように、熱遮蔽部材12上に整流筒14を配置した。また、熱遮蔽部材12上の整流筒14の上部14aによって、冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の下部15cを覆って囲繞した。このような整流筒と冷却補助筒とを有する単結晶製造装置1を用いて単結晶の製造を行った。
【0097】
なお、このときの整流筒14の材質は合成石英とし、冷却補助筒15の材質は、熱伝導率が金属と比較して同等以上であり、かつ輻射率が金属より高い黒鉛材を使用した。
【0098】
図2に示す通り、冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の側面15dの全面積と冷却補助筒下部15cの整流筒14で覆われている部分の面積の比をa/b、冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の側面15dと整流筒14の側面14bとの間隔をc、整流筒側面14bの開口部14cの開口部面積dと整流筒側面14bの全面積eの比をd/e(
図3に示す)とし、実施例1では、c=3mm、d/e=0%(全閉構造)に固定して、a/b=5%、a/b=45%の2水準を用意して単結晶の製造を行った。
【0099】
(比較例1)
比較例1では、
図7に示すような構造を有する単結晶製造装置200を用いた。すなわち、比較例1では、熱遮蔽部材12の上に整流筒を搭載せずに、冷却補助筒15のみを用いた点で実施例1の単結晶製造装置と異なる単結晶製造装置200を用いて単結晶の製造を行った。
【0100】
(比較例2)
比較例2では、a/b=0%とした、すなわち冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の下部15cが整流筒14の上部14aで覆われていない点以外は実施例1で用いたものと同じ単結晶製造装置を用いて単結晶の製造を行った。
【0101】
実施例1、比較例1及び比較例2の結果を
図4に示す。本発明に係る単結晶製造装置の一例を用いた実施例1の冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の側面15bの全面積と冷却補助筒下部15cの整流筒14の上部14aで覆われている部分の面積の比a/bを45%とした場合は、
図7のような比較例1の製造装置を用いて製造を行った場合に比べて、単結晶中の炭素濃度が68%程度減少するという結果が得られた。また、
図4から判るように、実施例1のa/bを5%以上とすれば、比較例1に比べて単結晶中の炭素濃度が顕著に減少することが確認できている。一方で、比較例2のa/bを0%とした場合は、比較例1の場合と比べて単結晶中の炭素濃度が18%程度減少するという結果が得られているが、実施例1の結果に比べると不十分であった。
【0102】
(実施例2)
実施例2では、a/b=5%、d/e=0%(全閉構造)に固定して、c=3mm、c=15mmの2水準を用意して単結晶の製作を行った。
【0103】
実施例2及び比較例1の結果を
図5に示す。本発明に係る単結晶製造装置の一例を用いた実施例2の冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の側面15dと整流筒側面14bとの間隔cを3mmとした場合、
図7のような比較例1の製造装置を用いて製造を行った場合に比べて、単結晶中の炭素濃度が58%程度減少するという結果が得られた。また、
図5から判るように、実施例2において間隔cを15mm以下とすれば、比較例1に比べて単結晶中の炭素濃度が顕著に減少することが確認できている。また、これらの結果から、実施例2の間隔cを15mm以下とすることにより、より低い炭素濃度を達成できたことが分かる。
【0104】
なお、実施例2とは別に、c=2mmとなるような整流筒14を用いて単結晶の製造を行った。間隔cを3mm以上とした実施例2では、間隔cを2mmとした場合と比べ、整流筒14のセット時の整流筒14と冷却補助筒15の下部15cとの干渉が少なく、容易に操業を継続することができた。このため、冷却補助筒15の冷却筒13から下方に突き出した部分の側面15bと整流筒側面14bとの間隔の下限値は3mmとすることが好ましいことが分かる。
【0105】
(実施例3)
実施例3では、a/b=5%、c=3mmに固定して、
図3に示す、d/e=0%、d/e=9%、d/e=15%の3水準を用意して単結晶の製作を行った。なお、d/e=9%、d/e=15%の整流筒14は角度0°,120°,240°の3つの軸上に開口部14cを設けた構造となっている。
【0106】
上記の条件に加えて、d/e=9%の整流筒では、開口部14cの上端の高さが整流筒14の全高の24%の高さに位置しており、前記開口部14cは開口部14cの上端から下端までの長さ30mmの領域を開口した構造とした。
【0107】
上記の条件に加えて、d/e=15%の整流筒では、開口部14cの上端の高さが整流筒14の全高の35%の高さに位置しており、前記開口部14cは開口部14cの上端から下端までの長さ50mmの領域を開口した構造とした。
【0108】
実施例3及び比較例1の結果を
図6に示す。本発明に係る単結晶製造装置の一例を用いた実施例3のd/eを9%として開口部14cの上端の高さを整流筒14の全高の24%の高さに位置させた場合、
図7のような比較例1の製造装置を用いて製造を行った場合に比べて、単結晶中の炭素濃度が76%程度減少するという結果が得られた。また、
図6から判るように、実施例3のd/eを15%以下として開口部14cの上端の高さを整流筒14の全高の35%以下の高さに位置させた場合、比較例1に比べて単結晶中の炭素濃度が顕著に減少することが確認できている。
【0109】
また、これらの結果から、実施例3の比d/eを15%以下とし、且つ開口部14cの上端の高さを整流筒14の全高の35%以下の高さとすることにより、より低い炭素濃度を達成できたことが分かる。これは、実施例3の比d/eを15%以下とし、且つ開口部14cの上端の高さを整流筒14の全高の35%以下の高さとすることにより、整流筒14の開口部14cから筒部11の炉内監視用窓への方向に流れる不活性ガスの流速が上昇し、筒部11の内部に存在する炭素含有ガスが原料融液6側に逆流する現象が抑制され、その結果として単結晶中の炭素濃度を更に低減できたものと考えられる。すなわち、実施例3の結果から、本発明の単結晶製造装置1の整流筒側面14bの開口部14cの開口部面積dと整流筒側面14bの全面積eとの比d/eを15%以下とし、開口部14cの上端の高さを整流筒14の全高の35%以下の高さとすることで、整流筒14の開口部14cから筒部11の炉内監視用窓への方向に流れる不活性ガスの流速を十分に保つことができ、好ましいことが分かる。
【0110】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0111】
1、200…単結晶製造装置、 2…メインチャンバ、 3…引き上げチャンバ、 4…種結晶、 5…シリコン単結晶、 6…シリコン融液、 7…石英ルツボ、 8…黒鉛ルツボ、 9…ヒーター、 10…断熱材、 11…筒部、12…熱遮蔽部材、 13…冷却筒、 13a…冷却筒の一部分、 14…整流筒、 14a…上部、 14b…側面、 14c…開口部、 15…冷却補助筒、 15a…冷却補助筒の突き出した部分、 15b…冷却補助筒の一部分、 15c…下部、 15d…側面、 16…ルツボサポート、 17…ルツボ軸、 18…回転軸、 21…天井部。