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特許7501517重合体、有機電界発光素子、有機EL表示装置及び有機EL照明
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】重合体、有機電界発光素子、有機EL表示装置及び有機EL照明
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240611BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240611BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240611BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240611BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240611BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240611BHJP
【FI】
C08G61/12
C09K11/06 690
H10K59/00
H05B33/10
H05B33/14 B
H05B33/22 D
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021502161
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006946
(87)【国際公開番号】W WO2020171190
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019027989
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019049585
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019158088
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 延軍
(72)【発明者】
【氏名】梶山 良子
(72)【発明者】
【氏名】庄田 孝行
(72)【発明者】
【氏名】弘 大輔
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031639(WO,A1)
【文献】特開2010-196040(JP,A)
【文献】国際公開第2009/110360(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/099531(WO,A1)
【文献】特開2012-104536(JP,A)
【文献】特開2010-034496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00-61/12
C09K 11/06
H05B 33/10
H10K 50/10、50/15、59/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体。
【化1】


(式(1)中、
GはN原子を表し、
Ar~Arは、それぞれ独立に、置換基として炭素数1~24のアルキル基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基として炭素数1~24のアルキル基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基として炭素数1~24のアルキル基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基として炭素数1~24のアルキル基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表し、
Arは、置換基として炭素数1~24のアルキル基を有していてもよい、二価の芳香族炭化水素基が1または複数連結した基を表し、複数連結する場合、該芳香族炭化水素基は同一であっても異なっていてもよく、
Arは、下記a-1~e-4のいずれかで表され、
Arは水素原子、置換基として炭素数1~24のアルキル基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基として炭素数1~24のアルキル基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar中の“-*”が式(1)中Gとの結合位置を表す。)
【化2】


(a-1~e-4において、“-*”はArとの結合位置を表わし、“-*”が複数ある場合はいずれか一つがArとの結合位置を表す。)
【請求項2】
前記式(1)が下記式(2)-1~(2)-3のいずれかで表わされる繰り返し単位である、請求項1に記載の重合体。
【化3】


(式(2)-1~式(2)-3中、
Arは前記式(1)のArと同じであり、
Xは、-C(R)(R)-、-N(R)-または-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-を表し、
~Rは、各々独立に、炭素数1~24のアルキル基を表し、
~R及びR11~R14は、各々独立に、炭素数1~24のアルキル基を表し、
a、bは、各々独立に、0~4の整数であり、
c1、c2は、各々独立に、1~3の整数であり、
d1、d2は、各々独立に、0~4の整数であり、
、R、R、Rが該繰り返し単位中に複数ある場合は、R、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
さらに、下記(3)-1~(3)-3のいずれかで表わされる繰り返し単位を含む、請求項1又は2に記載の重合体。
【化4】


(式(3)-1~(3)-3中、
Arは、それぞれの繰り返し単位において独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表し、
X、R、R、R、R、a、b、c1、c2、d1、d2は、それぞれ前記式(2)-1~(2)-3と同じである。)
【請求項4】
前記Arが、置換基として架橋性基を有する、請求項3に記載の重合体。
【請求項5】
前記重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000以上であり、且つ、分散度(Mw/Mn)が3.5以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の重合体を含有する、有機電界発光素子用組成物。
【請求項7】
基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極との間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、
請求項6に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法により、該有機層を構成する層のうち少なくとも1層を形成する成膜ステップを含む、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記有機層が正孔注入層及び正孔輸送層を有し、該正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つの層が、前記成膜ステップで形成される層である、請求項7に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記有機層がさらに、発光層を有し、
前記正孔注入層、正孔輸送層及び発光層が、前記成膜ステップで形成される層である、請求項8に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項10】
基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極との間に有機層を有し、該有機層が請求項1~5のいずれか1項に記載の重合体又は該重合体が架橋した重合体を含有する層を有する、有機電界発光素子。
【請求項11】
前記重合体又は該重合体が架橋した重合体を含有する層が正孔輸送層であり、前記有機層がさらに発光層を有し、該発光層が該正孔輸送層に接しており、該発光層に含まれる材料の少なくとも一つが下記式(CzP)で表わされる部分構造を有する化合物を含む、請求項10に記載の有機電界発光素子。
【化5】
【請求項12】
前記式(CzP)で表わされる部分構造を有する化合物を含む前記発光層に含まれる材料は、正孔輸送性または電子輸送性の少なくともいずれかを有するホスト材料、または、発光材料である、請求項11に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記ホスト材料の骨格は、トリアリールアミン構造、ジベンゾフラン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、フタロシアニン構造、ポルフィリン構造、チオフェン構造、ベンジルフェニル構造、フルオレン構造、キナクリドン構造、トリフェニレン構造、カルバゾール構造、ピレン構造、アントラセン構造、フェナントロリン構造、キノリン構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造、オキサジアゾール構造又はイミダゾール構造のいずれかを有するものである請求項12に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
前記発光層に含まれる、前記式(CzP)で表される部分構造を有する化合物が、下記式(14)~(16)のいずれかで表される低分子化合物であり、かつ、該低分子化合物の分子量が5,000以下である、請求項11~13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【化6】


(式(14)~(16)中、
Aは前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよい。
Bは単結合または任意の部分構造を表す。
Aが複数存在する場合、同一であっても互いに異なっていてもよい。
Bが複数存在する場合、同一であっても互いに異なっていてもよい。
na、nb及びncは、それぞれ独立に、1以上、5以下の整数を表す。)
【請求項15】
前記式(14)で表される低分子化合物が、下記式(17)で表される低分子化合物である、請求項14に記載の有機電界発光素子。
【化7】


(上記式(17)において、
Qは、窒素原子または、下記構造式(18-1)~(18-3)のいずれかで表される3価の置換基のいずれかを表し、
Xb、Yb、及びZbは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~3
0の二価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の複素芳香環基を表し、Xb、Yb、及びZbのそれぞれはが複数存在する場合は同一であっても異なっていてもよく、
Aは、前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよく、かつ、複数存在するAは互いに同一であっても異なっていてもよく、
p12、q12、及びr12は、各々独立に、0以上6以下の整数を表し、
q13、r13は、各々独立に、0または1を表し、
q13が0の場合のYb及び、r13が0の場合のZbは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~30の一価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の複素芳香環基を表し、
q13が1の場合のYbは直接結合であり、
r13が1の場合のZbは直接結合であり
式(18-1)~(18-3)において、一つの構造式中の3つの*は、それぞれXb、Yb、又はZbのいずれか基との結合位置を表す。)
【化8】
【請求項16】
前記式(16)で表される低分子化合物が、下記式(19)で表される低分子化合物である、請求項14に記載の有機電界発光素子。
【化9】


(上記式(19)中、
Xc及びYcは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の複素芳香環基を表し、
Xc及びYcは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい一価の炭素数6~30の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の複素芳香環基を表し、
Xc及びYcのそれぞれは複数存在する場合は同一であっても異なっていてもよく、
Aは前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよく、
s11及びt11は、各々独立に、0以上6以下の整数を表し、
ncは、1以上、5以下の整数を表す。)
【請求項17】
前記式(17)で表される低分子化合物が、下記式(17-1)~(17-6)のいずれかで表される化合物である、請求項15に記載の有機電界発光素子。
【化10】

【化11】


(上記一般式(17-1)~(17-6)中、
p12’は、1以上5以下の整数を表し、
r12’は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
p14は12であり、
q14はq13が1の場合は12であり、q13が0の場合は存在せず、
r14はr13が1の場合は12であり、r13が0の場合は存在せず、
q15及びr15は、各々独立に、4又は5であり、
31及びR32は、各々独立に、水素原子または置換基であり、
Xb、Yb、Zb、q13、r13は、それぞれ前記式(17)と同じである。)
【請求項18】
前記式(19)で表される低分子化合物が、下記式(19-1)で表される化合物である、請求項16に記載の有機電界発光素子。
【化12】


(上記一般式(19-1)において、
31は、水素原子または置換基であり、
u11は、11を表し、
Xc、Yc、Xc、Yc、t11、及びs11は、それぞれ前記式(19)と同じである。)
【請求項19】
請求項10~18のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を備える、有機EL表示装置。
【請求項20】
請求項10~18のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を備える、有機EL照明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、有機電界発光素子、並びに、該有機電界発光素子を有する有機EL表示装置及び有機EL照明に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL照明や有機ELディスプレイなど、有機EL素子を利用する各種電子デバイスが実用化されている。有機電界発光素子は、印加電圧が低いため消費電力が小さく、三原色発光も可能であるため、大型のディスプレイモニターだけではなく、携帯電話やスマートフォンに代表される中小型ディスプレイへの応用が始まっている。
有機電界発光素子は発光層や電荷注入層、電荷輸送層など複数の層を積層することにより製造される。現在、有機電界発光素子の多くは、有機材料を真空下で蒸着することにより製造されているが、真空蒸着法では、蒸着プロセスが煩雑となり、生産性に劣る。真空蒸着法で製造された有機電界発光素子では照明やディスプレイのパネルの大型化が極めて難しい。
【0003】
近年、大型のディスプレイや照明に用いることのできる有機電界発光素子を効率よく製造するプロセスとして、湿式成膜法(塗布法)が研究されている。湿式成膜法は、真空蒸着法に比べて安定した層を容易に形成できる利点があるため、ディスプレイや照明装置の量産化や大型デバイスへの適用が期待されている。
湿式成膜法の、真空蒸着法に対する利点として、1つの層により多くの材料種を使用することができる点が挙げられる。真空蒸着法では材料種が増加すると蒸着速度を一定にコントロールすることが困難になるのに対して、湿式成膜法では材料種が増加しても各材料が有機溶媒に溶解しさえすれば、一定の成分比のインクが作成可能である。
【0004】
しかしながら、湿式成膜法は積層化が困難であるため、真空蒸着法による素子に比べて駆動安定性に劣り、一部を除いて実用レベルに至っていないのが現状である。
【0005】
そこで、湿式成膜法による積層化を行うために、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーが所望され、またその開発が行われている。例えば、特許文献1~3には、特定の繰り返し単位を有する重合体を含有し、湿式成膜法によって、積層化された有機電界発光素子が開示されている。
【0006】
特許文献4及び5では、重合体の主鎖にフルオレン環またはカルバゾール環と置換基を有さないフェニレン環が結合した構造の正孔注入輸送性材料が開示されている。
【0007】
特許文献6では、トリアリールアミン繰り返し単位を有するポリマーにおいて、主鎖にフルオレン環を含むことが好ましいことが記載されており、さらに、ポリマー主鎖に、置換基を有するフェニレン基を含むことで捻れを生成させてポリマーの3重項エネルギーを増加させることが記載されている。
特許文献7では、アリールアミンポリマー又はオリゴマーの主鎖アミンの窒素原子間に、置換基を有するフェニレン基が連結されている化合物が開示されている。
特許文献8では、重合可能な置換基を有するアリールアミンポリマー又はオリゴマーを含む混合層を正孔輸送層とすることが開示されている。さらに、ポリマー又はオリゴマーを重合することによって層の熱的安定性を改善することができること、および、さらにその上に発光層を塗布する際に重合層が溶解しないことが効果として記載されている。
【0008】
また、特許文献9~12には、アリールアミン構造を有するポリマーの側鎖構造に、カルバゾール構造を有するポリマーが開示されている。特許文献9~11は側鎖構造のカルバゾールが1つのみであること、特許文献9及び12は側鎖構造のカルバゾールが、直接主鎖のアミンの窒素原子に結合していること、特許文献12は側鎖構造のカルバゾールが2つである構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2009/123269号
【文献】特開2013-045986号公報
【文献】国際公開第2013/191088号
【文献】特開2016-084370号公報
【文献】特開2017-002287号公報
【文献】特表2007-520858号
【文献】特表2013-531658号
【文献】特開2010-034496号
【文献】国際公開第2011/099531号
【文献】国際公開第2016/031639号
【文献】国際公開第2009/110360号
【文献】国際公開第2008/126393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の技術では、照明やディスプレイ用途に対して、有機電界発光素子の性能の点で十分とは言えず、さらなる駆動電圧の低減、駆動寿命の改善が求められていた。
【0011】
特許文献1~3に記載のこれらの素子は輝度が低く、駆動寿命が短いという問題点がある。そのため、電荷輸送性材料の電荷注入輸送能や耐久性の向上が求められる。
【0012】
特許文献4及び5に記載の重合体は、主鎖にπ共役系の広がりを有するために励起一重項エネルギー準位(S)及び励起三重項エネルギー準位(T)が低く、発光材料、発光励起子からのエネルギー移動による消光が生じ発光効率が低下するという問題点がある。そのため、S1準位およびT1準位が高い電荷輸送性材料が求められる。
【0013】
特許文献6には、主鎖にフルオレン環を含むアリールアミンポリマーとして実施例にF8-TFB(フルオレン+トリフェニルアミン系)が記載されているものの、F8-TFBはフルオレンとアミンの窒素原子間のフェニレンが置換基を有さないため捻れておらず、LUMOがアミンの窒素原子近傍まで広がっているため電子耐久性に劣るという問題がある。
特許文献7で開示されている化合物は、主鎖にフルオレン環またはカルバゾール構造を含まないため、電子耐久性に劣るという問題がある。
特許文献8には、主鎖にフルオレニル基またはカルバゾール基を有するアリールアミンポリマー又はオリゴマーが開示されているが、素子の耐久性は不十分であった。
【0014】
また、特許文献9~12に開示されているポリマーは、主鎖に捻れ芳香族環とフルオレンやカルバゾールと捻れの無い芳香族環とを含む共重合体ではないので、後述するように素子の耐久性が不十分であった。
【0015】
本発明は、正孔注入輸送能が高く、耐久性の高い重合体及び該重合体を含む有機電界発光素子用組成物を提供すること、及び、駆動電圧が低く、輝度が高いすなわち発光効率が高く、駆動寿命が長い有機電界発光素子を提供することを第1の課題とする。
また、本発明は、駆動電圧が低く、寿命が長い有機電界発光素子を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は鋭意検討し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の第1の要旨は、カルバゾール構造を含む特定の構造を側鎖に有する重合体を用いることで、上記第1の課題を解決し得ることである。本発明の第2の要旨は、基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層が正孔輸送層と正孔輸送層に隣接する発光層とを有し、正孔輸送層が前記カルバゾール構造を含む特定の構造を側鎖に有する重合体を含み、さらに、正孔輸送層に含まれる材料と発光層に含まれる材料がともにカルバゾール環を有する特定の構造を部分構造として有する材料を含むことで、有機電界発光素子の性能が向上することで、上記第1の課題を解決し得ることである。本発明の第3の要旨は、基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層が正孔輸送層と正孔輸送層に隣接する発光層とを有し、正孔輸送層がカルバゾール構造を含む特定の構造を側鎖に有するさらに別の重合体を含み、正孔輸送層に含まれる材料と発光層に含まれる材料がともにカルバゾール環を有する特定の構造を部分構造として有する材料を含むことで、有機電界発光素子の性能が向上することで、上記第2の課題を解決し得ることである。
【0017】
即ち、本発明の要旨は、次の[1]~[22]の通りである。
[1]下記式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体。
【化1】

(式(1)中、
Gは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又はC原子、N原子、B原子若しくはP原子を表し、
Ar~Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表し、
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した一価の基を表し、
Arは水素原子又は置換基を表す。Ar中の“-*”が式(1)中Gとの結合位置を表す。)
【0018】
[2]前記GはN原子である、[1]に記載の重合体。
[3]Arは、下記a-1~e-4のいずれかで表される、[1]または[2]に記載の重合体。
【化2】

(a-1~e-4において、“-*”はArとの結合位置を表わし、“-*”が複数ある場合はいずれか一つがArとの結合位置を表す。)
【0019】
[4]前記式(1)が下記式(2)-1~(2)-3のいずれかで表わされる繰り返し単位である、[1]又は[2]に記載の重合体。
【化3】

(式(2)-1~式(2)-3中、
Arは前記式(1)のArと同じであり、
Xは、-C(R)(R)-、-N(R)-または-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-を表し、
~Rは、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、
~R及びR11~R14は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
a、bは、各々独立に、0~4の整数であり、
c1、c2は、各々独立に、1~3の整数であり、
d1、d2は、各々独立に、0~4の整数であり、
、R、R、Rが該繰り返し単位中に複数ある場合は、R、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。)
【0020】
[5]さらに、下記(3)-1~(3)-3のいずれかで表わされる繰り返し単位を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の重合体。
【化4】

(式(3)-1~(3)-3中、
Arは、それぞれの繰り返し単位において独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表し、
X、R、R、R、R、a、b、c1、c2、d1、d2は、それぞれ前記式(2)-1~(2)-3と同じである。)
【0021】
[6]前記重合体が、置換基として架橋性基を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の重合体。
[7]前記重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000以上であり、且つ、分散度(Mw/Mn)が3.5以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の重合体。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の重合体を含有する、有機電界発光素子用組成物。
[9]基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極との間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、
[8]に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法により、該有機層を構成する層のうち少なくとも1層を形成する成膜ステップを含む、有機電界発光素子の製造方法。
[10]前記有機層が正孔注入層及び正孔輸送層を有し、該正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つの層が、前記成膜ステップで形成される層である、[9]に記載の有機電界発光素子の製造方法。
[11]前記有機層がさらに、発光層を有し、
前記正孔注入層、正孔輸送層及び発光層が、前記成膜ステップで形成される層である、[9]又は[10]に記載の有機電界発光素子の製造方法。
[12]基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極との間に有機層を有し、該有機層が[1]~[7]のいずれかに記載の重合体又は該重合体が架橋した重合体を含有する層を有する、有機電界発光素子。
【0022】
[13]前記重合体又は該重合体が架橋した重合体を含有する層が正孔輸送層であり、該有機層がさらに発光層を有し、該発光層が該正孔輸送層に接しており、前記発光層に含まれる材料の少なくとも一つが下記式(CzP)で表わされる部分構造を有する化合物を含む、[12]に記載の有機電界発光素子。
【化5】
【0023】
[14]前記式(CzP)で表わされる部分構造を有する化合物を含む前記発光層に含まれる材料は、正孔輸送性または電子輸送性の少なくともいずれかを有するホスト材料、または、発光材料である、[13]に記載の有機電界発光素子。
【0024】
[15]前記ホスト材料の骨格は、芳香族構造、芳香族アミン構造、トリアリールアミン構造、ジベンゾフラン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、フタロシアニン構造、ポルフィリン構造、チオフェン構造、ベンジルフェニル構造、フルオレン構造、キナクリドン構造、トリフェニレン構造、カルバゾール構造、ピレン構造、アントラセン構造、フェナントロリン構造、キノリン構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造、オキサジアゾール構造又はイミダゾール構造、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、トリアリールアミン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、ピレン構造のいずれかを有するものである、[14]に記載の有機電界発光素子。
【0025】
[16]前記発光層に含まれる、前記式(CzP)で表される部分構造を有する化合物が、下記式(14)~(16)のいずれかで表される低分子化合物であり、かつ、該低分子化合物の分子量が5,000以下である、[13]~[15]のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【化6】

(式(14)~(16)中、
Aは前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよい。
Bは単結合または任意の部分構造を表す。
Aが複数存在する場合、同一であっても互いに異なっていてもよい。
Bが複数存在する場合、同一であっても互いに異なっていてもよい。
na、nb及びncは、それぞれ独立に、1以上、5以下の整数を表す。)
【0026】
[17]前記式(14)で表される低分子化合物が、下記式(17)で表される低分子化合物である、[16]に記載の有機電界発光素子。
【化7】


(上記式(17)において、
Qは、窒素原子または、下記構造式(18-1)~(18-3)のいずれかで表される3価の置換基のいずれかを表し、
Xb、Yb、及びZbは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の複素芳香環基を表し、Xb、Yb、及びZbのそれぞれはが複数存在する場合は同一であっても異なっていてもよく、
Aは、前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよく、かつ、複数存在するAは互いに同一であっても異なっていてもよく、
p12、q12、及びr12は、各々独立に、0以上6以下の整数を表し、
q13、r13は、各々独立に、0または1を表し、
q13が0の場合のYb及び、r13が0の場合のZbは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~30の一価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の複素芳香環基を表し、
q13が1の場合のYb は直接結合であり、
r13が1の場合のZb は直接結合であり
式(18-1)~(18-3)において、一つの構造式中の3つの*は、それぞれXb、Yb、又はZbのいずれか基との結合位置を表す。)
【化8】


【0027】
[18]前記式(16)で表される低分子化合物が、下記式(19)で表される低分子化合物である、[16]に記載の有機電界発光素子。
【化9】

(上記式(19)中、
Xc及びYcは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の複素芳香環基を表し、
Xc及びYcは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい一価の炭素数6~30の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の複素芳香環基を表し、
Xc及びYcのそれぞれは複数存在する場合は同一であっても異なっていてもよく、
Aは前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよく、
s11及びt11は、各々独立に、0以上6以下の整数を表し、
ncは、1以上、5以下の整数を表す。)
【0028】
[19]前記式(17)で表される低分子化合物が、下記式(17-1)~(17-6)のいずれかで表される化合物である、[17]に記載の有機電界発光素子。
【化10】

【化11】

(上記一般式(17-1)~(17-6)中、
p12’は、1以上5以下の整数を表し、
q12’及びr12’は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
p14は12であり、
q14はq13が1の場合は12であり、q13が0の場合は存在せず、
r14はr13が1の場合は12であり、r13が0の場合は存在せず、
q15及びr15は、各々独立に、4又は5であり、
31及びR32は、各々独立に、水素原子または置換基であり、
Xb、Yb、Zb、q13、r13は、それぞれ前記式(17)と同じである。)
【0029】
[20]前記式(19)で表される低分子化合物が、下記式(19-1)で表される化合物である、[18]に記載の有機電界発光素子。
【化12】

(上記一般式(19-1)において、
31は、水素原子または置換基であり、
u11は、11を表し、
Xc、Yc、Xc、Yc、t11、及びs11は、それぞれ前記式(19)と同じである。)
【0030】
[21][12]~[20]のいずれかに記載の有機電界発光素子を備える、有機EL表示装置。
[22][12]~[20]のいずれかに記載の有機電界発光素子を備える、有機EL照明。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、正孔注入輸送能が高く、耐久性の高い重合体及び該重合体を含む有機電界発光素子用組成物を提供することができる。また、駆動電圧が低く、発光効率が高く、駆動寿命が長い有機電界発光素子を提供することができる。
【0032】
本発明の一実施形態である重合体が上記の効果を奏する理由について、以下のように考察する。
【0033】
正孔輸送層に含まれる重合体は、陽極から注入される正孔を発光層に輸送する。一方、対極である陰極側から発光層で正孔と再結合しなかった微量の電子が正孔輸送層にしみ出してくる。正孔輸送性材料は電子耐久性が低いものが多いため、この電子は、重合体を分解する原因となっている。特に、主鎖にアリールアミンを有する重合体に代表される、主鎖が正孔を輸送する重合体では主鎖の電子耐久性が低く、改善の余地があった。
【0034】
重合体の電子耐久性の向上を阻害する要因の一つとして、側鎖と、主鎖とが近いことが考えられる。本発明においては、正孔を輸送する主鎖が電子を受け取りにくい構造とすることで、上記問題の解決を試みた。前記式(1)のように、カルバゾールの9位に二つ以上芳香族環や芳香族複素環(Ar、Ar)を有する構造においては、カルバゾールの9位から延長した共役グループの電子求引性が高いため電子が側鎖の末端側に分布する。下記の実施形態に係る重合体においては、側鎖のカルバゾール構造が電子耐久性に劣るアミン近傍の主鎖から適度に離れていることにより、主鎖よりも側鎖にて電子を受け取りやすく、側鎖のカルバゾール構造は電子耐久性が高いため、重合体としての電子耐久性が向上していると考えられる。主鎖と側鎖のカルバゾールとの間に芳香族環や芳香族複素環(Ar)を有することでさらにこの効果は大きくなっていると考えられる。
【0035】
また、側鎖の末端側に電子が分布することで、主鎖を介して輸送される正孔が側鎖側にホッピングする割合を下げることができ、正孔注入輸送能が高くなっていると考えられる。
【0036】
本実施形態の重合体の主鎖にはフルオレン環またはカルバゾール環が含まれることが好ましく、この場合、これらのフルオレン環またはカルバゾール環の2,7位にフェニレン基が結合することが好ましい。フルオレン環またはカルバゾール環の2,7位にフェニレン基が結合することによって、フルオレン環またはカルバゾール環は電気的により安定となる。特に、電子耐久性が向上し、素子駆動寿命が長くなると考えられる。この時、フェニレン環に置換基を有する場合は、置換基による立体障害のために、置換基を有するフェニレン基の面は、隣接するフルオレン環又はカルバゾール環の面に対して、よりねじれた配置となる。この場合、置換基の立体障害によって、π共役系の広がりが阻害された主鎖構造を有するため、励起一重項エネルギー準位(S)および励起三重項エネルギー準位(T)が高い性質があり、発光励起子からのエネルギー移動による消光が抑制されるため発光効率に優れる。
【0037】
また、本実施形態の重合体の主鎖のフェニレン基が置換基を有する場合、置換基の立体障害により、置換基を有するフェニレン基の面は、隣接するフェニレン基、二価のフルオレン基、または二価のカルバゾール基の面に対してより捻じれた配置になるとともに、置換基による立体障害のため、結晶化が起きにくく、また、励起一重項エネルギー準位(S)および励起三重項エネルギー準位(T)が高い性質があり好ましい。
また、本実施形態の重合体の主鎖にフェニレンと酸素原子と交互結合する構造を含むことによりπ共役系の広がりが阻害された主鎖構造を有するため、励起一重項エネルギー準位(S)および励起三重項エネルギー準位(T)が高い性質があり、発光励起子からのエネルギー移動による消光が抑制されるため発光効率に優れる。
【0038】
有機電界発光素子においては各有機層間のエネルギー準位差が適正でないと、発光層へのキャリア注入が難しくなり、駆動電圧が上昇してしまう。または、発光層から隣接層へのキャリア漏洩が起こりやすくなり、素子効率が低下すると考えられる。
これに対して、本実施形態のように発光層にある発光材料の励起子のエネルギー準位より高いエネルギー準位を有する電荷輸送材料は、発光材料の励起子を閉じ込める効果が高く好ましい。
【0039】
また、本実施形態の重合体を含有する有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜することにより得られる層は、クラック等が生じることがなく、平坦である。結果、該層を有する本発明の実施形態の一つである有機電界発光素子は、輝度が高く、駆動寿命が長い。
【0040】
また、本実施形態の重合体は、電気化学的安定性に優れる為、該重合体を用いて形成された層を含む素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示、面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【0041】
また、第2の要旨及び第3の要旨における有機電界発光素子は、カルバゾールを有する特定の構造を部分構造として有する材料を正孔輸送層および発光層両方に含むため、正孔輸送層と発光層の界面での電荷授受がしやすく、従来よりも低い電圧での駆動が可能である。さらに、2層界面での電荷授受がしやすく電荷が蓄積しにくいことで、消光が抑えられ、従来よりも高効率および駆動寿命が長い素子が可能である。
【0042】
また、本発明の実施形態にかかる有機電界発光素子は、湿式成膜法によって作製することが可能である。
また、本発明の実施形態にかかる有機電界発光素子は、電気化学的安定性に優れる為、上記の重合体を用いて形成された層を含む素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本実施形態に係る有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図である。
図2】実施例における電子重合ユニット1の電子状態を示す図である(中間調画像)。
図3】実施例における電子重合ユニット2の電子状態を示す図である(中間調画像)。
図4】実施例における電子重合ユニット3~5の電子状態を示す図である(中間調画像)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明の実施形態に係る有機電界発光素子、並びに、該有機電界発光素子を有する有機EL表示装置及び有機EL照明の実施態様を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
また、本明細書において、2つ以上の対象を併せて説明する際に用いる「独立して」とは、それらの2つ以上の対象が同じであっても異なっていてもよいという意味で使用される。
【0045】
<第1の要旨に係る実施形態>
<重合体>
第1の要旨に係る実施形態の重合体は、下記式(1)で表される構造を含む重合体である。本明細書では、この重合体を重合体とも称する。
【化13】


式(1)中、
Gは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又はC原子、N原子、B原子若しくはP原子を表し、
Ar~Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表し、
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した一価の基を表し、
Arは水素原子又は置換基を表す。
なお、Ar中の“-*”が式(1)中Gと結合する部位(結合位置)である。

【0046】
(G)
前記式(1)で表される繰り返し単位中において、Gは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又はC原子、N原子、B原子若しくはP原子を表す。電荷輸送性が優れる点、カルバゾール環の9位に分布のLUMOと主鎖に分布したHOMOとが局在化される観点から、Gは置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいトリアジン環、置換基を有していてもよいフルオレン環、置換基を有していてもよいスピロフルオレン環、置換基を有していてもよいカルバゾール環が好ましく、下記スキーム1に示す構造がより好ましい。なお、下記構造は置換基を有していてもよい。また、図中、“-*”はArとの結合位置を表わす。
【化14】
【0047】
有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Z、炭素数7~40のアラルキル基、若しくは炭素数4~37のヘテロ環のアラルキル基のいずれか、またはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。それらの中でも、電子耐久性(単に「耐久性」とも称する)の点からは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、炭素数1~24のアルキル基、炭素数7~40のアラルキル基、炭素数3~37のヘテロ環のアラルキル基、炭素数10~24のアリールアミノ基、炭素数6~36の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3~36の芳香族複素環基であることが好ましく、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数3~27のヘテロ環のアラルキル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3~24の芳香族複素環基であることがより好ましく、
炭素数6~24のアリール基であることが更に好ましい。
電荷輸送性の観点からは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~24の芳香族複素環基であることが好ましく、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、インドロカルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、又はインデノフルオレニル基であることがさらに好ましい。
【0048】
また、電荷輸送性が優れる点からGはN原子(窒素原子)であることが好ましい。
【0049】
(Ar、Ar、Ar
前記式(1)で表される繰り返し単位中において、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表す。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5縮合環の二価の基またはこれらが複数連結した二価の基が挙げられる。
上記の二価の基が複数個連結される場合は、2~10連結した二価の基が挙げられ、2~5連結した二価の基であることが好ましい。
【0050】
芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましく、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5~6員環の単環若しくは2~4縮合環の二価の基またはこれらが複数連結した二価の基が挙げられる。
上記の二価の基が複数個連結される場合は、2~10連結した二価の基が挙げられ、2~5連結した二価の基であることが好ましい。
【0051】
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基としては、同じ基が複数連結した基でもよく、異なる基が複数連結した基でも構わない。
上記の二価の基が複数個連結される場合は、2~10連結した二価の基が挙げられ、2~5連結した二価の基であることが好ましい。
【0052】
Arは電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基から選ばれる1または複数の基が直接または連結基を介して結合した二価の基であることが好ましく、連結基としては酸素原子またはカルボニル基が好ましい。正孔輸送性が向上することから、窒素原子に直接結合する基としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基または置換基を有していてもよい二価のフルオレン基がさらに好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が特に好ましい。窒素原子に直接結合するフェニレン環には、フルオレン環またはカルバゾール環が結合することが好ましく、窒素原子に直接結合するフェニレン環と、フルオレン環またはカルバゾール環の間には、さらに1または複数のフェニレン基が連結している構造も好ましい。また、フェニレン環の間を酸素原子またはカルボニル基で連結している構造も好ましい。
【0053】
Arが有していてもよい置換基は、前述のGが芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である場合に有してもよい置換基と同様である。
【0054】
Arは、カルバゾール環の9位に分布のLUMOと主鎖に分布したHOMOと局在化される観点から置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基が1乃至6個連結した基が好ましく、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基が2乃至4個連結した基がさらに好ましく、中でも置換基を有していてもよいフェニレン環が1乃至4個連結した基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン環が2個連結したビフェニレンが特に好ましい。
【0055】
Arが有していてもよい置換基は、上記のArの置換基と同様である。
【0056】
Arは電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、同一であっても異なっていてもよい二価の芳香族炭化水素基が1または複数連結した基が好ましく、該二価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。前述の通り、-Ar-Arで表わされる構造にLUMOが分布する観点では連結する数が多い方が好ましいが、電荷輸送性および膜の安定性の観点からは連結する数は少ない方が好ましい。連結する場合は2以上10以下が好ましく、6以下がさらに好ましく、3以下が膜の安定性の観点からは特に好ましい。好ましい芳香族炭化水素構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環であり、より好ましくはベンゼン環およびフルオレン環である。複数連結した基としては、置換基を有していてもよいフェニレン環が1乃至4個連結した基、または、置換基を有していてもよいフェニレン環と置換基を有していてもよいフルオレン環が連結した基が好ましい。LUMOが広がる観点から置換基を有していてもよいフェニレン環が2個連結したビフェニレンが特に好ましい。
【0057】
Arが有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Zのいずれか、またはこれらの組み合わせを用いることができる。LUMOが広がることを阻害する観点からN-カルバゾリル基、インドロカルバゾリル基、インデノカルバゾリル基以外であることが好ましく、より好ましい置換基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基である。また、置換基を有さないことも好ましい。
【0058】
(Ar
Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び該置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した一価の基である。複数個連結する場合は、2~10連結した二価の基が挙げられ、2~5連結した二価の基であることが好ましい。芳香族炭化水素、芳香族複素環としては、前記Ar2~Ar4で挙げた芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造であって一価である構造を用いることができる。式(1)のArに明記されているカルバゾール環の9位に、下記スキーム2のいずれかで表される構造を有することが好ましい。更には、分子のLUMOを分布させる観点からa-1~a-4、b-1~b-9、c-1~c-5、d-1~d-16、及びe1~e4から選択される構造が好ましい。更に電子求引性基を有することにより分子のLUMOが広がることに促進する観点から、a-1~a-4、b-1~b-9、d-1~d-13、及びe1~e4から選択される構造が好ましい。更に三重項レベルが高い、発光層に形成された励起子を閉じ込む効果の観点から、a-1~a-4、d-1~d-13、及びe1~e4から選択される構造が好ましい。また、フェニル基であることも好ましい。更にこれら構造に置換基を有していてもよい。なお、図中“-*”はArとの結合位置を表わし、“-*”が複数ある場合はいずれか一つがArとの結合位置を表す。
【0059】
【化15】
【0060】
Arが有していてもよい置換基としては、後述する置換基群Zのいずれかまたは、これらの組み合わせを用いることができる。耐久性および電荷輸送性の観点から、上記のArが有してもよい置換基と同じ置換基から選ばれることが好ましい。
【0061】
(Ar
Arは、水素原子または置換基を表す。Arが置換基である場合、特に限定はされないが、好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。好ましい構造としては、前記Ar~Arで挙げた芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造と同様であって一価である構造である。
Arが置換基である場合、カルバゾールの3位に結合していることが、耐久性向上の観点から好ましい。Arは、合成のし易さ及び電荷輸送性の観点からは、水素原子であることが好ましい。Arは、耐久性向上及び電荷輸送性の観点からは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0062】
Arが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である場合の置換基としては、後述する置換基群Zに挙げられる置換基または後述の架橋性基と同様であり、好ましい置換基も同様であり、それら置換基がさらに有していてもよい置換基も同様である。また、不溶化の観点からは、置換基として、少なくとも一つの後述の架橋性基を含むことが好ましい。
【0063】
[好ましい繰り返し単位構造]
中でも、前記式(1)は、下記式(2)-1~式(2)-3のいずれかで表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0064】
【化16】
【0065】
式(2)-1~式(2)-3中、
Arは、式(1)のArと同じであり、
Xは、-C(R)(R)-、-N(R)-または-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-を表し、
~Rは、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、
~R及びR11~R14は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
a、bは、各々独立に、0~4の整数であり、
c1、c2は、各々独立に、1~3の整数であり、
d1、d2は、各々独立に、0~4の整数であり、
、R、R、Rが該繰り返し単位中に複数ある場合は、R、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
(X)
Xは、-C(R)(R)-、-N(R)-または-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-のいずれかである。耐久性の観点から好ましくは-C(R)(R)-、-N(R)-である。
【0067】
(R及びR
上記式(2)-1~式(2)-3で表される繰り返し単位中のR及びRは、各々独立に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状のアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、重合体の溶解性を維持するために、炭素数が1以上、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
及びRが該繰り返し単位中に複数ある場合は、R及びRは同一であっても異なっていてもよいが、電荷を均一的に窒素原子の周りに分布することができ、さらに合成も容易であることから、全てのR及びRは同一の基であることが好ましい。
【0068】
(R及びR
上記式(2)-1~式(2)-3で表される繰り返し単位中のR及びRは、各々独立に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状のアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、重合体の溶解性を維持するために、炭素数が1以上であることが好ましく、4以上がより好ましく、炭素数12以下が好ましく、さらに好ましくは8以下であり、ヘキシル基であることが特に好ましい。
【0069】
(R~R及びR11~R14
~R及びR11~R14は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0070】
前記アルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるためには長い方が好ましく、膜の安定性を向上させるため、および電荷輸送性を向上させるためには短い方が好ましく、炭素数が1以上、24以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下が特に好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、4以上が特に好ましい。また、直鎖、分岐又は環状の各構造であってもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0071】
前記アルコキシ基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数1以上、24以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下が特に好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、4以上が特に好ましい。
具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0072】
前記アラルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数5以上、60以下が好ましく、40以下がより好ましく、7以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、12以上が特に好ましい。
具体的には、1,1-ジメチル-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ブチル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ヘキシル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-オクチル)-1-フェニルメチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-n-ブチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、5-フェニル-1-n-プロピル基、6-フェニル-1-n-ヘキシル基、6-ナフチル-1-n-ヘキシル基、7-フェニル-1-n-ヘプチル基、8-フェニル-1-n-オクチル基、4-フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0073】
前記芳香族炭化水素基としては特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数が6以上、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、24以下がさらに好ましく、14以下が特に好ましい。
具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2~5縮合環の一価の基、またはこれらから選ばれる環構造が2~8連結した基が挙げられ、好ましくは単環又は2乃至4以下連結した基である。
【0074】
電荷輸送性及び耐久性向上の観点から、R~Rはアルキル基または芳香族炭化水素基が好ましく、R及びRはアルキル基であることがより好ましく、Rは芳香族炭化水素基であることがより好ましく、好ましい炭素数は前記の通りである。
溶解性を向上しつつ電荷輸送性に優れる点では、R及びRは炭素数3以上8以下のアルキル基又は炭素数9以上40以下のアラルキル基が好ましい。
【0075】
前記R~Rのアルキル基、R~R及びR11~R14のアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基は、前記R~R及びR11~R14のアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基の好ましい基として挙げた基、又は後述の架橋性基が挙げられる。
前記R~Rのアルキル基、R~R及びR11~R14のアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、低電圧化の観点からは、置換基を有さないことが最も好ましい。
【0076】
また、R~R及びR11~R14が有していてもよい置換基は、本実施形態の重合体を成膜後、さらに別の層を塗布成膜して積層する場合、溶媒に対する不溶性が向上する観点から、後述の架橋性基であることが好ましい。中でも、電荷輸送性を妨げにくいことから、R、R、及びR11~R14のいずれかが置換基として後述の架橋性基を有することが好ましく、RおよびRの少なくとも一方がさらなる置換基として後述の架橋性基を有することがさらに好ましい。
【0077】
(a、b、c1、c2、d1及びd2)
前記式(2)-1~式(2)-3で表される繰り返し単位中において、a及びbは各々独立に、0~4の整数である。また、a+bは1以上であることが好ましい。さらに、a及びbは、各々2以下であることが好ましく、aとbの両方が1であることがさらに好ましい。
【0078】
前記式(2)-1~式(2)-3で表される繰り返し単位中において、c1、c2は、各々独立に1~3の整数であり、d1、d2は、各々独立に0~4の整数である。c1、c2、d1、及びd2は、各々2以下であることが好ましく、c1、c2、d1及びd2は等しいことがさらに好ましく、c1、c2、d1、とd2の全てが1または2であることがさらに好ましく、c1、c2、d1、とd2の全てが1であることが特に好ましい。
【0079】
前記式(2)-1~式(2)-3で表される繰り返し単位中のc1、c2、d1及びとd2の全てが1であるか又はc1、c2、d1及びとd2の全てが2であり、且つ、aとbの両方が2又は1である場合、RとRは、互いに対称な位置に結合していることが最も好ましい。
ここで、RとRとが互いに対称な位置に結合するということについて、前記式(2)-1においてX=Cである場合を例にとり、下記式にて説明する。すなわち、下記式における主鎖のフルオレン環に対して、RとRの結合位置が対称であることをいう。このとき、主鎖を軸とする180度回転は同一構造とみなす。例えば、式(1a)において、RとRとが対称、R’とR’とが対称であり、式(1a)と式(1b)とは同一構造とみなす。

【0080】
【化17】
【0081】
有機電界発光素子に用いた場合の素子の耐久性または低電圧化の観点から、式(2)-1または式(2)-2で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0082】
[置換基群Z]
置換基群Zとして、以下の構造が挙げられる。
例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基;
例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基;
例えば、メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基;
例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基;
例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基;
例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基;
例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上であり、通常36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
例えば、フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常7以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基;
例えば、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアシル基;
例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
例えば、トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基;
例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基;
例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基;
例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基;
例えば、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基;
シアノ基;
例えば、フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基;
例えば、チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。
上記の置換基群Zの中でも、好ましくは、前記アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化
水素基、芳香族複素環基である。電荷輸送性の観点からは、置換基を有さないことがさらに好ましい。

【0083】
また、上記置換基群Zの各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基(置換基群Z)と同じのもの又は後述の架橋性基が挙げられる。好ましくは、更なる置換基は有さないか、炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、フェニル基又は後述の架橋性基である。電荷輸送性の観点からは、さらなる置換基を有さないことがより好ましい。
【0084】
[末端基]
本実施形態において、末端基とは、重合体の重合終了時に用いたエンドキャップ剤によって形成された、重合体の末端部の構造のことを指す。本実施形態の重合体の末端基は、通常炭化水素基である。炭化水素基としては、電荷輸送性の観点から、炭素数1以上60以下が好ましく、1以上40以下がより好ましく、1以上30以下がさらに好ましい。
【0085】
好ましくは、
例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基;
例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基;
例えば、フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素環基;
が挙げられる。
これら炭化水素基はさらに置換基を有していてもよく、さらに有していてもよい置換基はアルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましく、これらさらに有していてもよい置換基が複数ある場合は互いに結合して環を形成していてもよい。
好ましくは、電荷輸送性および耐久性の観点から、アルキル基又は芳香族炭化水素基であり、更に好ましくは芳香族炭化水素基である。
【0086】
[可溶性基]
本実施形態の重合体は、溶媒への可溶性発現のため可溶性基を有することが好ましい。本実施形態における可溶性基は、炭素数3以上24以下、好ましくは炭素数12以下の、直鎖又は分岐のアルキル基またはアルキレン基を有する基である。これらの中でも好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、またはアラルキル基であり、例えば、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等である。より好ましくはn-ヘキシル基又はn-オクチル基である。可溶性基は置換基を有していてもよい。前記R~R及びR11~R14の一つ又は複数がこれらの構造である場合、それらの基は可溶性基であるとみなす。また、本実施形態における置換基が前記可溶性基の条件を満たす場合、それらの置換基は可溶性基であるとみなす。
【0087】
(可溶性基の数)
本実施形態の重合体が有する可溶性基は、湿式成膜法に利用可能な重合体溶液を得やすくなる点では、多い方が好ましい。一方で、成膜した層の上に湿式成膜法で他の層を形成した際に層が溶媒に溶解してしまうことによる膜厚減少が少ない点では、少ない方が好ましい。
【0088】
本実施形態の重合体が有する可溶性基の数は、重合体の1gあたりのモル数で表すことができる。
本実施形態の重合体が有する可溶性基の数を、重合体の1gあたりのモル数で表した場合、重合体1gあたり、通常4.0ミリモル以下、好ましくは3.0ミリモル以下、さらに好ましくは2.0ミリモル以下であり、また通常0.1ミリモル以上、好ましくは0.5ミリモル以上である。
可溶性基の数が上記範囲内であると、重合体が溶媒に溶解しやすく、湿式成膜法に適した重合体を含む組成物が得られ易い。また、可溶性基密度が適度であるため、加熱溶媒乾燥後の有機溶媒に対する難溶性が十分であるため、湿式成膜法での多層積層構造が形成可能となる。
【0089】
ここで、重合体の1gあたりの可溶性基の数は、重合体からその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出することができる。
以下に示す、後述の実施例1で合成した重合体1の場合で説明すると、重合体1において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均767であり、また可溶性基であるヘキシル基は、1繰り返し単位当たり平均2個である。これを単純比例により計算すると、分子量1gあたりの可溶性基の数は、2.09ミリモルと算出される。
【化18】
【0090】
[架橋性基]
本実施形態の重合体は、置換基として架橋性基を有していてもよい。本実施形態の重合体における架橋性基は、式(1)で表される繰り返し単位中に存在していてもよく、式(1)で表される繰り返し単位とは別の繰り返し単位中に存在していてもよい。特に、側鎖であるArに架橋性基を有することが、架橋反応が進行しやすいため好ましい。
架橋性基を有することで、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(難溶化反応)の前後で、有機溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。
【0091】
架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、該架橋性基の近傍に位置する他の分子を構成している基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。この場合、反応する基は架橋性基と同一の基でも異なった基でもよい。
架橋性基としては、芳香族環に縮環したシクロブテン環、芳香族環に結合したアルケニル基を含む基が好ましく、更に好ましくは下記架橋性基群Tから選ばれる基である。架橋性基は、前記各構造が有する置換基にさらに置換していることが好ましい。
【0092】
(架橋性基群T)
架橋性基群Tは、以下に示す構造である。
【化19】
【0093】
上記架橋性基群Tにおいて、
21~R23は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
24~R26は、各々独立に、アルキル基又はアルコキシ基を表す。pは1~4の整数、qは1~5の整数、rは1~7の整数を表す。
pが2以上のとき、複数のR24は同じであっても異なっていてもよく、隣接するR24同士が結合して環を形成してもよい。
qが2以上のとき、複数のR25は同じであっても異なっていてもよく、隣接するR25同士が結合して環を形成してもよい。
rが2以上のとき、複数のR26は同じであっても異なっていてもよい。
Ar21、Ar22は置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0094】
21~R26のアルキル基としては、炭素数が6以下である、直鎖又は分岐の鎖状アルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等である。より好ましくは、メチル基又はエチル基である。R21~R26の炭素数が6以下であることで、架橋反応を立体的に阻害することもなく、膜の不溶化が起こりやすい傾向にある。
【0095】
24~R26のアルコキシ基としては、炭素数が6以下である、直鎖又は分岐の鎖状アルコキシ基が挙げられる、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、2-プロポキシ基、n-ブトキシ基等である。より好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。R24~R26の炭素数が6以下であれば、架橋反応を立体的に阻害することもなく、膜の不溶化が起こりやすい傾向にある。
【0096】
また、Ar21及びAr22の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環等の6員環の単環又は2~5縮合環が挙げられる。特に1個の遊離原子価を有するベンゼン環が好ましい。
Ar22は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を2以上結合させた基であってもよい。このような基としては、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられ、4,4’-ビフェニレン基が好ましい。
Ar21、Ar22が有していてもよい置換基は前述の置換基群Zと同様である。
【0097】
架橋性基として、シンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、一価の遊離原子価を有するベンゾシクロブテン環、一価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環等の環化付加反応する基が、素子の電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
また、架橋性基の中でも、架橋後の構造が特に安定な点で、一価の遊離原子価を有する芳香族環に縮環したシクロブテン環、一価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環を含む基が好ましく、中でもベンゾシクロブテン環または一価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環が更に好ましく、架橋反応温度が低い点で一価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環が特に好ましい。
【0098】
(架橋性基の数)
本実施形態の重合体が有する架橋性基は、架橋することにより十分に不溶化し、その上に湿式成膜法で他の層を形成しやすくなる点では、多い方が好ましい。一方で、形成された層にクラックが生じ難く、未反応架橋性基が残りにくく、有機電界発光素子が長寿命になりやすい点では、架橋性基は少ないことが好ましい。
【0099】
本実施形態の重合体における、1つのポリマー鎖の中に存在する架橋性基は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、また好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。
また、本実施形態の重合体が有する架橋性基の数は、重合体の分子量1000あたりの数で表すことができる。
本実施形態の重合体が有する架橋性基の数を、重合体の分子量1000あたりの数で表した場合、分子量1000あたり、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0個以下であり、また通常0.01個以上、好ましくは0.05個以上である。
架橋性基の数が上記範囲内であると、クラック等が起き難く、平坦な膜が得られ易い。また、架橋密度が適度であるため、架橋反応後の層内に残る未反応の架橋性基が少なく、得られる素子の寿命に影響し難い。
さらに、架橋反応後の、有機溶媒に対する難溶性が十分であるため、湿式成膜法での多層積層構造が形成し易い。
【0100】
ここで、重合体の分子量1000あたりの架橋性基の数は、重合体からその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出することができる。
例えば、後述の実施例で合成した重合体3の場合で説明すると、重合体3において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均816であり、また架橋性基は、1繰り返し単位当たり0.138個である。これを単純比例により計算すると、分子量1000あたりの架橋性基の数は、0.15個と算出される。
【化20】
【0101】
[繰り返し単位の含有量]
本実施形態の重合体において、式(1)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、通常重合体中に50モル%以上含まれ、60モル%以上含まれることが好ましく、70モル%以上含まれることがさらに好ましく、80モル%以上含まれることが特に好ましい。本実施形態の重合体は、繰り返し単位が、式(1)で表される繰り返し単位のみから構成されていてもよいが、有機電界発光素子とした場合の諸性能をバランスさせる目的から、式(1)とは別の繰り返し単位を有していてもよく、その場合、重合体中の式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、通常、95モル%以上、好ましくは99モル%以上である。
【0102】
[他に含まれていてよい好ましい繰り返し単位]
本実施形態の重合体は、さらに下記(3)-1~式(3)-3のいずれかで表わされる繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化21】
【0103】
式(3)-1~(3)-3中、
Arは、それぞれの繰り返し単位において独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表し、
Xは、-C(R)(R)-、-N(R)-または-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-を表し、
~Rは、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、
~R及びR11~R14は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
a、bは、各々独立に、0~4の整数であり、
c1、c2は、各々独立に、1~3の整数であり、
d1、d2は、各々独立に、0~4の整数であり、
、R、R、Rが該繰り返し単位中に複数ある場合は、R、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0104】
(Ar
前記式(3)-1~(3)-3で表される繰り返し単位中において、Arは、それぞれの繰り返し単位において独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5縮合環またはこれらが複数連結した一価の基が挙げられる。
上記の二価の基が複数個連結される場合は、2~10連結した二価の基が挙げられ、2~5連結した二価の基であることが好ましい。
【0105】
芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましく、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5~6員環の単環若しくは2~4縮合環またはこれらが複数連結した一価の基が挙げられる。
上記の二価の基が複数個連結される場合は、2~10連結した二価の基が挙げられ、2~5連結した二価の基であることが好ましい。
【0106】
Arは、電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が好ましく、中でも置換基を有していてもよいベンゼン環又はフルオレン環の一価の基、すなわち、置換基を有していてもよいフェニル基又はフルオレニル基がより好ましく、置換基を有していてもよいフルオレニル基がさらに好ましく、置換基を有していてもよい2-フルオレニル基が特に好ましい。
【0107】
Arの芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、本実施形態の重合体の特性を著しく低減させないものであれば、特に制限はない。好ましくは、前記置換基群Z又は前記架橋性基から選ばれる基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又は前記架橋性基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0108】
Arは、塗布溶媒への溶解性の点から、炭素数1~24のアルキル基で置換されたフルオレニル基が好ましく、特に、炭素数4~12のアルキル基で置換された2-フルオレニル基が好ましい。さらに、2-フルオレニル基の9位にアルキル基が置換された9-アルキル-2-フルオレニル基が好ましく、特に、アルキル基が2置換された9、9-ジアルキル-2-フルオレニル基が好ましい。9位および9’位の少なくとも一方がアルキル基で置換されたフルオレニル基であることにより、溶媒に対する溶解性及びフルオレン環の耐久性が向上する傾向にある。さらに、9位および9’位の両方がアルキル基で置換されたフルオレニル基であることにより、溶媒に対する溶解性及びフルオレン環の耐久性がさらに向上する傾向にある。
また、Arは前述の架橋性基を含むことが、成膜後、積層塗布する際に溶媒に対する不溶性が向上するため好ましい。
【0109】
重合体は、不溶化の観点からは、さらなる置換基として少なくとも一つの前述の架橋性基を含む、式(3)-1~式(3)-3で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、該架橋性基が、Arで表される芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基に更に置換していることが好ましい。
有機電界発光素子に用いた場合の素子の耐久性または低電圧化の観点から、式(3)-1または式(3)-2で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0110】
[重合体の分子量]
本実施形態の重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、通常10,000以上、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上である。
【0111】
重合体の重量平均分子量が上記上限値以下であることで、溶媒に対する溶解性が得られ、成膜性に優れる傾向にある。また、重合体の重量平均分子量が上記下限値以上であることで、重合体のガラス転移温度、融点及び気化温度の低下が抑制され、耐熱性が向上する場合がある。加えて、架橋反応後の塗膜の有機溶媒に対する不溶性が十分である場合がある。
【0112】
また、本実施形態の重合体における数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、通常2,000以上、好ましくは4,000以上、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。
【0113】
さらに、本実施形態の重合体における分散度(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。尚、分散度は値が小さい程よいため、下限値は理想的には1である。該重合体の分散度が、上記上限値以下であると、精製が容易で、また溶媒に対する溶解性や電荷輸送能が良好である。
【0114】
通常、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量及び数平均分子量が算出される。
【0115】
[他の繰り返し単位]
本実施形態の重合体は、電荷輸送性及び耐久性の点で、さらに式(4)または式(5)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。下記式(4)で表される繰り返し単位は、上記式(1)、式(2)-1~式(2)-3及び式(3)-1~式(3)-3で表わされる繰り返し単位中の一部の構造部分と一致しうるが、それらとは別の繰り返し単位の構造である。
【化22】
【0116】
式(4)中、
Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Arは、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基、又は該置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び該置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる複数の基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表す。
【0117】
式(5)中、
Ar10は置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基、又は該置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び該置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる複数の基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表す。
【0118】
(Ar、Ar及びAr10
Ar、Ar及びAr10における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基としては、Arは式(1)のArが取ることのできる芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基と同様の基から選択される基であり、Ar及びAr10は式(1)Arが取ることのできる芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基と同様の基から選択される基であって二価である基を表す。これらの二価の基が複数個連結される場合も同様に2~10が好ましく、2~5がさらに好ましい。有していてもよい置換基は前記置換基群Zまたは前記架橋性基と同様の基が好ましい。
【0119】
[好ましい重合体]
本実施形態の重合体は、下記式(6)内のいずれかで示される繰り返し単位であることが最も好ましい。
【化23】
【0120】
式(6)の各重合体において、
Arは前記Arまたは前記Arを表し、各重合体中の複数のArは同じであっても異なっていてもよく、各重合体中のArの少なくとも一つは前記Arを表し、
X、R、R、R、Rは前記式(2)-1~式(2)-3と同様である。
n、mは繰り返し数を表す。
【0121】
本発明の第1の要旨の別の実施形態の重合体は、下記式(12)又は下記式(13)で表される構造を含む重合体である。
【0122】
【化24】
【0123】
式(12)中、
G、Ar、Ar、及びArは、式(1)におけるG、Ar、及びArとそれぞれ同様であり、
Ar55は、下記のスキーム2に示すa-1~a-4、b-1~b-9、c-1~c-5、d-1~d-16、及びe1~e4から選択されるいずれかの構造を表す。
なお、Ar12中の“-*”が式(12)中Gと結合する部位(結合位置)である。
【0124】
【化25】
【0125】
式(12)中、G、Ar、Ar、Arの好ましい範囲、有していてもよい置換基は、上述の式(1)中のG、Ar、Ar、Arとそれぞれ同様である。
【0126】
式(12)中、Ar55の好ましい範囲は、上述の式(1)中のArの好ましい範囲、及び有していてもよい置換基は、上述の式(1)中のArと同様である。
【0127】
【化26】
【0128】
式(13)中、
G、Ar、Ar、及びArは、上述の式(1)におけるG、Ar、及びArとそれぞれ同様であり、
Ar33、及びAr34は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表し、
Ar555は、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した一価の基を表す。
なお、Ar13中の“-*”が式(13)中Gと結合する部位(結合位置)である。
【0129】
式(13)中、G、Ar、Ar、及びArの好ましい範囲、及び有していてもよい置換基は、それぞれ上述の式(1)中のG、Ar、Ar、及びArとそれぞれ同様である。
【0130】
式(13)中、Ar33、及びAr34の好ましい範囲、及び有していてもよい置換基は、上述の式(1)中のAr、及びArと同様であり、複数個連結する場合の好ましい範囲も同様である。
【0131】
Ar555の好ましい範囲は、上述の式(1)中のArの好ましい範囲と同様である。有していてもよい置換基は、式(1)中のArと同様である。
【0132】
式(12)、式(13)の好ましい繰り返し単位構造、その末端基、可溶性基、架橋性基、繰り返し単位の含有量、他に含まれていてよい好ましい繰り返し単位、重合体の分子量、有していてもよい他の繰り返し単位、等は、上述の式(1)の重合体と同様である。
【0133】
式(12)では、Ar55が分子のLUMOを側鎖の末端側に分布させることができるため、正孔注入輸送能が高く、耐久性を高くすることができる。また、式(13)は、Ar33、Ar34、により主鎖とカルバゾールとの間の距離をとることで、HOMOとLUMOを分離することができるため、正孔注入輸送能、耐久性を改善することができる。式(1)は、Ar、Arを有するため、分子のLUMOを側鎖の末端側に分布させ、さらに、主鎖のHOMOと側鎖のLUMOを分離させることができるため、より好ましい。
【0134】
[具体例]
本実施形態の重合体の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、化学式中の数字は繰返し単位のモル比を表す。
これらの重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体等のいずれでもよく、単量体の配列順序は限定されない。
【0135】
【化27】
【0136】
[重合体の製造方法]
本実施形態の重合体の製造方法は特には制限されない。例えば、Suzuki反応による重合方法、Grignard反応による重合方法、Yamamoto反応による重合方法、Ullmann反応による重合方法、Buchwald-Hartwig反応による重合方法等などによって製造できる。
【0137】
Ullmann反応による重合方法及びBuchwald-Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、式(1a)で表されるジハロゲン化アリール(YはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を示す。)と式(1b)で表される1級アミノアリールとを反応させ、更に2aと反応させることにより、本実施形態の重合体が合成される。
【化28】
【0138】
上記式中、Ar、R~R、X、a、及びbは、前記式(2)-1~(2)-3とそれぞれ同義である。c及びdは、前記式(2)-1~(2)-3におけるc1又はc2、及びd1又はd2とそれぞれ同義である。n、mは繰り返し数を表す。
なお、前記の重合方法において、通常、N-アリール結合を形成する反応は、例えば炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。
【0139】
<第2の要旨に係る実施形態>
<同一の部分構造>
本発明の第2の要旨の実施形態である有機電界発光素子は、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、該有機層は、正孔輸送層と、正孔輸送層に隣接する発光層とを有し、正孔輸送層が前記式(1)で表される重合体又は該重合体が架橋した重合体を含み、該重合体又は該重合体が架橋した重合体と、発光層に含まれる材料の少なくとも一つとが、ともにカルバゾール環を有する下記式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料(下記式(CzP)で表わされる部分構造を有する化合物)を含む、有機電界発光素子であることが好ましい。なお、本明細書における「材料」の記載について、「化合物」と置き換えることができる記載は「化合物」と置き換えてもよい。

【0140】
【化29】
【0141】
より好ましくは、前記正孔輸送層に含まれる材料と前記発光層に含まれる材料とがともに式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料を含み、前記正孔輸送層に含まれる材料または前記発光層に含まれる材料のいずれか一方が式(CzP)で表わされる部分構造を2以上有する材料を含むことであり、さらに好ましくは、前記発光層に含まれる材料とが式(CzP)で表わされる部分構造を2以上有する材料(化合物)を含むことであり、特に好ましくは、前記正孔輸送層に含まれる材料と前記発光層に含まれる材料とがともに式(CzP)で表わされる部分構造を2以上有する材料(化合物)を含むことである。このような組合せであると、より低電圧駆動し、高効率発光し、長寿命化することが期待される。また、前記正孔輸送層または前記発光層の少なくとも一方が式(CzP)で表される部分構造を有する材料を2種以上含むことも好ましく、特に、発光層に式(CzP)で表される部分構造を有する材料を2種以上含むことが好ましい。このような組合せにおいても、より低電圧駆動し、高効率発光し、長寿命化することが期待される。
【0142】
式(CzP)で表わされる部分構造を有する正孔輸送層に含まれる材料は、特に制限はないが、好ましくは高分子化合物である。高分子化合物としては、好ましくはアリールアミン構造を有する高分子化合物である。アリールアミン高分子化合物としては、より好ましくは下記式(20)で表わされる繰り返し単位を有する重合体である。
【0143】
式(CzP)で表わされる部分構造を有する発光層に含まれる材料は、特に制限はないが、低分子化合物であることが好ましい。
式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料が高分子化合物である場合、高分子化合物に含まれる式(CzP)の数としては、高分子化合物の繰り返し単位中に含まれる式(CzP)の数以上であることが好ましい。繰り返し単位中に式(CzP)が二つ存在する場合、高分子化合物に含まれる式(CzP)の数は高分子化合物の繰り返し単位の2倍となる。高分子化合物が複数の繰り返し単位を有する場合、少なくとも一つの繰り返し単位が式(CzP)を有していればよい。式(CzP)は置換基を有していてもよい。
【0144】
また、正孔輸送層に含まれる材料または発光層に含まれる材料と、式(CzP)との結合方式は特に限られない。例えばカルバゾール部分と、正孔輸送層に含まれる材料または発光層に含まれる材料とが結合していてもよく、ベンゼン部分と、正孔輸送層に含まれる材料または発光層に含まれる材料とが結合していてもよい。
【0145】
<低分子化合物>
次に、本実施形態の素子に含まれる式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料が、低分子化合物である場合について説明する。発光層に用いられる発光材料またはホスト材料として用いられる低分子化合物に式(CzP)が用いることができ、ホスト材料の場合は、例えば以下である。
【0146】
式(CzP)として以下式(CzP-2)を有するホスト材料である。
【0147】
【化30】
【0148】
上記式(CzP-2)中、*1、*2、*3は、ホスト材料の骨格との結合位置であり、*1、*2、*3の少なくともいずれかが結合していればよい。ホスト材料の骨格とは直接結合していてもよく他の構造を介して結合していてもよい。式(CzP-2)は置換基を有していてもよい。この介してよい他の構造とは、特段制限されないが、好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる2以上の基が複数個連結した構造が挙げられ、具体的には後述の式(14)~式(16)におけるBとして用いることのできる、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる2以上の基が複数個連結した構造を用いることができ、有してよい置換基及び好ましい範囲も同様である。
置換基としては、前述の置換基群Zから選ばれる基を用いることができる。
正孔輸送層と正孔輸送層に隣接する発光層との間の電荷の授受は主に正孔輸送層を形成する材料と発光層中のホスト材料との間で行われるため、発光層に用いられるホスト材料が、式(CzP)、及び/又は式(CzP-2)を有することで特に界面での正孔輸送性を向上することができる。
【0149】
ホスト材料の骨格としては、電子輸送性、正孔輸送性、および電子輸送性と正孔輸送性の両方を有するものから選ばれることが好ましい。
電荷輸送性に優れる骨格としては、具体的には、芳香族構造、芳香族アミン構造、トリアリールアミン構造、ジベンゾフラン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、フタロシアニン構造、ポルフィリン構造、チオフェン構造、ベンジルフェニル構造、フルオレン構造、キナクリドン構造、トリフェニレン構造、カルバゾール構造、ピレン構造、アントラセン構造、フェナントロリン構造、キノリン構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造、オキサジアゾール構造又はイミダゾール構造等を有するものが挙げられる。
【0150】
電子輸送性材料としては、電子輸送性に優れ、かつ構造が比較的安定な材料である観点から、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造を有する化合物がより好ましく、ピリミジン構造、トリアジン構造を有する化合物であることがさらに好ましい。
正孔輸送性材料は、正孔輸送性に優れた構造を有する化合物であり、前記電荷輸送性に優れた骨格としては、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、トリアリールアミン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造又はピレン構造を有するものを用いることができ、この中でもカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造又はトリアリールアミン構造を有するものが特に好ましい。
【0151】
発光層のホスト材料は、3環以上の縮合環構造を有することが好ましく、3環以上の縮合環構造を2以上有する化合物または5環以上の縮合環を少なくとも1つ有する化合物であることがさらに好ましい。これらの化合物であることで、分子の剛直性が増し、熱に応答する分子運動の程度を抑制する効果が得られ易くなる。さらに、3環以上の縮合環及び5環以上の縮合環は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有することが電荷輸送性及び材料の耐久性の点で好ましい。
【0152】
3環以上の縮合環構造としては、具体的には、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、クリセン構造、ナフタセン構造、トリフェニレン構造、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、インデノフルオレン構造、インドロフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造等が挙げられる。電荷輸送性ならびに溶解性の観点から、フェナントレン構造、フルオレン構造、インデノフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造及びジベンゾチオフェン構造からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、電荷に対する耐久性の観点からカルバゾール構造又はインドロカルバゾール構造がさらに好ましい。
【0153】
有機電界発光素子の電荷に対する耐久性の観点から、発光層のホスト材料の内、少なくとも一つはピリミジン骨格又はトリアジン骨格を有する材料であることが好ましい。
ホスト材料の骨格と式(CzP-2)との間に用いられる構造としては、例えばアリーレン基を用いることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、トリフェニレンが挙げられ、分岐を有していてもよい。
【0154】
発光層のホスト材料は、可撓性に優れる観点では高分子材料であることが好ましい。可撓性に優れる材料を用いて形成された発光層は、フレキシブル基板上に形成された有機電界発光素子の発光層として好ましい。発光層に含まれるホスト材料が高分子材料である場合、分子量は、好ましくは5,000以上1,000,000以下、さらに好ましくは10,000以上、500,000以下、より好ましくは10,000以上100,000以下である。
【0155】
[好ましい低分子化合物]
発光層に含まれる、式(CzP)で表される部分構造を有する化合物、特に低分子化合物は、下記式(14)、下記式(15)、又は下記式(16)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【化31】
【0156】
上記式(14)~(16)中、
Aは前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよい。
Bは単結合または任意の部分構造を表す。
Aが複数存在する場合、同一であっても互いに異なっていてもよい。
Bが複数存在する場合、同一であっても互いに異なっていてもよい。
na、nb及びncはそれぞれ独立に1以上、5以下の整数を表し、
前記式(14)~(16)で表される化合物の分子量は5,000以下である。
【0157】
(A)
Aにおける有していてもよい置換基は、前記置換基群Zから選ばれることが好ましく、好ましい基およびさらに有してよい置換基も同様である。
【0158】
(B)
前記式(14)~(16)におけるBは、特に限定されないが、好ましくは置換基を有していてもよい機能性基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選ばれる2以上の基が複数個連結した構造を表す。これらの有していてもよい置換基としては、上述した置換基群Zのいずれかまたは、これらの組み合わせを用いることができる。
機能性基としては、正孔輸送性を有する構造、電子輸送性を有する構造、電荷輸送を抑制する構造、有機溶剤への可溶性を付与する構造、結晶化を阻害しアモルファス性を向上させる構造、又は発光性を有する構造が好ましい。
芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、芳香族炭化水素基および芳香族複素環基から選ばれる2以上の基が複数個連結した一価の基としては、上述の式(1)におけるArと同様の構造が好ましい。複数個連結する場合も同様に、2~10連結することが好ましく、2~5連結することがさらに好ましい。
Bが結合するAの位置としては、カルバゾール環の炭素原子またはカルバゾール環の窒素原子に結合しているベンゼン環であることが好ましく、少なくとも一つのBが部分構造Aにおけるカルバゾール環のNに結合しているベンゼン環であることがより好ましい。
式(CzP)で表される部分構造を有する低分子化合物は、好ましくは発光層中の電荷輸送材料である。
発光層に含まれる、式(CzP)で表される部分構造を有する低分子化合物は、好ましくは前記式(14)又は前記式(16)である。
さらに、前記式(14)で表される化合物は、下記式(17)で表される化合物であることが好ましく、また、式(16)で表される化合物は、後述の式(19)で表される化合物であることが好ましい。
【0159】
【化32】
【0160】
上記式(17)において、
Qは、窒素原子または、下記構造式(18-1)、(18-2)及び(18-3)で表される3価の置換基のいずれかを表し、
Xb、Yb、及びZbは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の複素芳香環基を表し、Xb、Yb、及びZbのそれぞれは複数存在する場合は同一であっても異なっていてもよく、
Aは前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよく、かつ、複数存在するAは互いに同一であっても異なっていてもよく、
p12、q12、及びr12は、各々独立に、0以上6以下の整数を表し、
q13、r13は、各々独立に、0または1を表し、
q13が0の場合のYb及び、r13が0の場合のZbは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~30の一価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の複素芳香環基を表し、
q13が1の場合のYb は直接結合であり、
r13が1の場合のZb は直接結合である。

【0161】
【化33】
【0162】
式(18-1)~式(18-3)において、一つの構造式中の*は、それぞれXb、Yb、又はZbのいずれか基との結合位置を表す。
【0163】
【化34】
【0164】
上記式(19)において、
Xc及びYcは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の二価の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の二価の複素芳香環基を表し、
Xc及びYcは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい一価の炭素数6~30の炭化水素芳香環基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の一価の複素芳香環基を表し、
Xc及びYcのそれぞれは、複数存在する場合は同一であっても異なっていてもよく、
Aは前記式(CzP)で表される部分構造であり、置換基を有していてもよく、
s11及びt11は、各々独立に、0以上6以下の整数を表し、
ncは、1以上、5以下の整数を表す。
【0165】
前記式(17)及び前記式(19)において、炭素数6~30の炭化水素芳香環としては、6員環の単環、又は2~5縮合環が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等が挙げられる。さらに好ましくは、単環又は2~3縮合環であり、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環が挙げられる。中でも好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、フルオレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環またはフルオレン環である。
【0166】
前記式(17)及び前記式(19)において、炭素数3~30の複素芳香環としては、5又は6員環の単環、或いはこれらの2~5縮合環が好ましい。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、インドロカルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環等が挙げられる。
中でも好ましくはチオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インドロカルバゾール環、フェナントロリン環、又はインドロカルバゾール環であり、
さらに好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、又はインドロカルバゾール環であり、
さらに好ましくはカルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、又はインドロカルバゾール環である。
【0167】
また、前記式(17)におけるq13=0の場合のYb、及びr13=0の場合のZb、前記式(19)におけるXc、及びYcは、特に好ましい芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環又はフェナントレン環であり、特に好ましい芳香族複素環としては、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、又はインドロカルバゾール環である。
【0168】
前記Aで表される前記式(CzP)が有していてもよい置換基としては、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基である。耐久性向上及び電荷輸送性の観点からは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。また、部分構造Aの中のカルバゾールの3位または6位に置換基が結合していることが、耐久性向上の観点から好ましい。
【0169】
前記Xb、Yb、Zb、Yb、Zb、Xc、Xc、Yc、及びYcが有していてもよい置換基、上述した炭素数6~30の炭化水素芳香環が有していてもよい置換基、炭素数3~30の複素芳香環が有していてもよい置換基、及びAが有してもよい置換基がさらに有してもよい置換基は、上述の式(1)で表される重合体における前記置換基群Zに挙げられる置換基または前記架橋性基と同様であり、好ましい置換基及び、さらに有していてもよい置換基も同様である。
【0170】
前記式(17)で表される化合物は、下記式(17-1)~式(17-6)のいずれかで表される化合物であることがより好ましい。
【0171】
【化35】
【0172】
【化36】
【0173】
上記一般式(17-1)~(17-6)において、
p12’は、1以上5以下の整数を表し、
q12’及びr12’は、それぞれ独立に、0以上5以下の整数を表し、
p14は12であり、
q14はq13が1の場合は12であり、q13が0の場合は存在せず、
r14はr13が1の場合は12であり、r13が0の場合は存在せず、
q15及びr15は、それぞれ独立に、4又は5であり、
31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、
Xb、Yb、Zb、q13、r13は、それぞれ前記式(17)と同じである。
置換基であるR31としては、水素原子、又は前記Aが有してよい置換基と同様であり、好ましい置換基としても同様であり、さらに有していてもよい置換基も同様である。
置換基であるR32としては、水素原子、又は前記式(1)で表される重合体における前記置換基群Zに挙げられる置換基または前記架橋性基と同様であり、好ましい置換基及び、さらに有していてもよい置換基も同様である。
【0174】
前記式(19)で表される化合物は、下記一般式(19-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化37】
【0175】
上記一般式(19-1)において、
31は、水素原子または置換基であり、
u11は、11を表し、
Xc、Yc、Xc、Yc、t11、及びs11は、それぞれ前記式(19)と同じである。
置換基である場合のR31は、上述の式(1)で表される重合体における前記置換基群Zに挙げられる置換基または前記架橋性基と同様であり、好ましい置換基及び、さらに有していてもよい置換基も同様である。
【0176】
また、発光層のホスト材料(化合物)は、合成および精製のしやすさ、電子輸送性能および正孔輸送性能の設計のしやすさ、溶媒に溶解した時の粘度調整のしやすさの観点から、低分子であることが好ましい。発光層に含まれるホスト材料が低分子材料である場合、分子量は、5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
上述の式(CzP-2)を有するホスト材料としては例えば以下の化合物が挙げられる。
【0177】
【化38】
【0178】
低分子化合物としては、他に発光材料が挙げられ、発光材料が、式(CzP)を有するものを用いることができる。発光材料としては、この後言及する燐光発光材料を用いることができ、これら構造に式(CzP)を有するものを用いることができる。
【0179】
<第3の要旨に係る実施形態>
本発明の第3の要旨の実施形態は、基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、該有機層は、正孔輸送層と、正孔輸送層に隣接する発光層とを有し、正孔輸送層に含まれる材料と発光層に含まれる材料とがともにカルバゾール環を有する下記式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料を含む、有機電界発光素子である。
【0180】
【化39】
【0181】
より好ましくは、前記正孔輸送層に含まれる材料と前記発光層に含まれる材料がともに式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料を含み、前記正孔輸送層に含まれる材料または前記発光層に含まれる材料のいずれか一方が式(CzP)で表わされる部分構造を2以上有する材料を含むことであり、特に好ましくは、前記正孔輸送層に含まれる材料と前記発光層に含まれる材料がともに式(CzP)で表わされる部分構造を2以上有する材料を含むことである。このような組合せであると、より低電圧駆動し、長寿命化することが期待される。
【0182】
式(CzP)で表わされる部分構造を有する正孔輸送層に含まれる材料は、特に制限はないが、好ましくは高分子化合物である。高分子化合物としては、好ましくはアリールアミン構造を有する高分子化合物である。アリールアミン高分子化合物としては、より好ましくは下記式(20)で表わされる繰り返し単位を有する重合体、または後述の式(30)で表わされる繰り返し単位を有する重合体である。便宜上、下記式(20)で表される繰り返し単位を有する重合体を重合体とし、後述の式(30)を側鎖に有する重合体を重合体とする。

【0183】
式(CzP)で表わされる部分構造を有する発光層に含まれる材料は、特に制限はないが、好ましくは低分子化合物である。
式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料が高分子化合物である場合、高分子化合物に含まれる式(CzP)の数としては、高分子化合物の繰り返し単位中に含まれる式(CzP)の数以上であることが好ましい。繰り返し単位中に式(CzP)が二つ存在する場合、高分子化合物に含まれる式(CzP)の数は高分子化合物の繰り返し単位×2となる。高分子化合物が複数の繰り返し単位を有する場合、少なくとも一つの繰り返し単位が式(CzP)を有していればよい。式(CzP)は置換基を有していてもよい。
【0184】
また、正孔輸送層に含まれる材料または発光層に含まれる材料と、式(CzP)との結合方式は特に限られない。例えばカルバゾール部分と、正孔輸送層に含まれる材料または発光層に含まれる材料とが結合していてもよく、ベンゼン部分と、正孔輸送層に含まれる材料または発光層に含まれる材料とが結合していてもよい。
【0185】
<重合体
【化40】


【0186】
式(20)中、
Ar’は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar’の少なくとも一つは下記式(21)で表され、
Xは、-C(R’)(R’)-、-N(R’)-または-C(R11’)(R12’)-C(R13’)、(R14’)-を表し、
’及びR’は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
’~R’及びR11’~R14’は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
a、bは、各々独立に、0~4の整数であり、a+bは1以上であり、
cは1~3の整数であり、
dは0~4の整数であり、
’及びR’が該繰り返し単位中に複数ある場合は、R’及びR’は同一であっても異なっていてもよい。
【0187】
【化41】
【0188】
式(21)中、
Ar11’及びAr12’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
Ar13’~Ar15’は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*は結合位置を表す。
Ar11’~Ar15’の少なくとも一つは式(21)の他に式(CzP)として、下記式(CzP-1)を有するものであってもよい。
【0189】
【化42】
【0190】
上記式(CzP-1)中、*1、*2、*3は、重合体の骨格との結合位置であり、*1、*2、*3の少なくともいずれかが結合していればよい。重合体の骨格とは直接結合していてもよく他の構造を介して結合していてもよい。式(CzP-1)は置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、上述のAr13’~Ar15’と同様のものを用いることができる。
【0191】
(R’及びR’)
上記式(20)で表される繰り返し単位中のR1’及びR2’は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、重合体の溶解性を維持するために、炭素数が1以上、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。また、該アルキル基は、直鎖、分岐又は環状の各構造であってもよい。
【0192】
’及びR’が該繰り返し単位中に複数ある場合は、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよいが、電荷を均一的に窒素原子の周りに分布することができ、さらに合成も容易であることから、全てのR1及びR2は同一の基であることが好ましい。
【0193】
(R’~R’及びR11’~R14’)
’~R’及びR11’~R14は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。
【0194】
前記アルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数が1以上、24以下が好ましく、6以下がより好ましい。また、直鎖、分岐又は環状の各構造であってもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0195】
前記アラルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数5以上、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。
具体的には、1,1-ジメチル-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ブチル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ヘキシル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-オクチル)-1-フェニルメチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-n-ブチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、5-フェニル-1-n-プロピル基、6-フェニル-1-n-ヘキシル基、6-ナフチル-1-n-ヘキシル基、7-フェニル-1-n-ヘプチル基、8-フェニル-1-n-オクチル基、4-フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0196】
前記芳香族炭化水素環基としては特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数が6以上、60以下が好ましく、30以下がより好ましい。
具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2~5縮合環の一価の基、またはこれらが複数連結した基等が挙げられる。
【0197】
電荷輸送性及び耐久性向上の観点から、R’~R’はメチル基または芳香族炭化水素基が好ましく、R’及びR’はメチル基であることがより好ましく、R’はフェニル基であることがより好ましい。
溶解性を向上しつつ電荷輸送性に優れる点では、R’及びR’は炭素数3以上6以下のアルキル基又は炭素数9以上40以下のアラルキル基が好ましい。
【0198】
前記R’及びR’のアルキル基、R’~R’及びR11’~R14’のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基は、前記R’~R’及びR11’~R14’のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基の好ましい基として挙げた基、又は後述の架橋性基が挙げられる。
前記R’及びR’のアルキル基、R’~R’及びR11’~R14’のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、低電圧化の観点からは、置換基を有さないことが最も好ましい。
【0199】
また、上記R’~R’及びR11’~R14’のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、不溶化の観点からは、置換基として、少なくとも一つの後述の架橋性基を含む、上記の式(20)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0200】
(a’、b’、c’及びd’)
前記式(20)で表される繰り返し単位中において、a’及びb’は各々独立に、0~4の整数であり、a’+b’は1以上である。さらに、a’及びb’は、各々2以下であることが好ましく、a’とb’の両方が1であることがさらに好ましい。
前記式(20)で表される繰り返し単位中において、c’は1~3の整数であり、d’は0~4の整数である。c’及びd’は、各々2以下であることが好ましく、c’とd’は等しいことがさらに好ましく、c’とd’の両方が1であるか、又はc’とd’の両方が2であることがさらに好ましい。
【0201】
前記式(20)で表される繰り返し単位中のc’とd’の両方が1であるか又はc’とd’の両方が2であり、且つ、a’とb’の両方が2又は1である場合、R’とR’は、互いに対称な位置に結合していることが最も好ましい。
ここで、「R’とR’とが互いに対称な位置に結合する」とは、式(20)におけるフルオレン環またはカルバゾール環に対して、R’とR’の結合位置が対称であることをいう。例えば、式(20)に含まれる以下式(20a)において、R1a’とR2a’とが対称の位置、R1b’とR2b’とが対称の位置と言える。また、このとき、主鎖を軸とする180度回転は同一構造とみなす。例えば、以下、式(20a)と式(20b)とは同一構造とみなすことができる。

【0202】
【化43】
【0203】
(Ar’)
前記式(20)で表される繰り返し単位中において、Ar’は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は下記式(21)で表される基を表す。
芳香族炭化水素環基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2~5縮合環の一価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。
【0204】
芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましく、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5又は6員環の単環又は2~4縮合環の一価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。
【0205】
Ar’は、電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基が好ましく、中でも置換基を有していてもよいベンゼン環又はフルオレン環の一価の基、すなわち、置換基を有していてもよいフェニル基又はフルオレニル基がより好ましく、置換基を有していてもよいフルオレニル基がさらに好ましく、置換基を有していてもよい2-フルオレニル基が特に好ましい。
【0206】
Ar’の芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、本重合体の特性を著しく低減させないものであれば、特に制限はない。好ましくは、下記置換基群Z’又は後述の架橋性基から選ばれる基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基又は後述の架橋性基が好ましく、アルキル基がより好ましい。

【0207】
Ar’は、塗布溶媒への溶解性の点から、炭素数1~24のアルキル基で置換されたフルオレニル基が好ましく、特に、炭素数4~12のアルキル基で置換された2-フルオレニル基が好ましい。さらに、2-フルオレニル基の9位にアルキル基が置換された9-アルキル-2-フルオレニル基が好ましく、特に、アルキル基が2置換された9、9-ジアルキル-2-フルオレニル基が好ましい。9位および9’位の少なくとも一方がアルキル基で置換されたフルオレニル基であることにより、溶媒に対する溶解性及びフルオレン環の耐久性が向上する傾向にある。さらに、9位および9’位の両方がアルキル基で置換されたフルオレニル基であることにより、溶媒に対する溶解性及びフルオレン環の耐久性がさらに向上する傾向にある。
【0208】
(式(21)であるAr’)
前記式(20)で表される繰り返し単位におけるAr’の少なくとも一つは、下記式(21)で表される基である。
【0209】
【化44】
【0210】
式(21)中、
Ar11’及びAr12’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
Ar13’~Ar15’は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【0211】
[置換基群Z’]
置換基としては、例えば以下置換基群Z’から選択される置換基を用いることができる。置換基群Z’として、以下の構造が挙げられる。
【0212】
例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基;
例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基;
例えば、メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基;
例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールオキシ基;
例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基;
例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基;
例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上であり、通常36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
例えば、フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常7以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基;
例えば、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアシル基;
例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
例えば、トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基;
例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基;
例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基;
例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基;
例えば、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、
好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基;
シアノ基;
例えば、フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素環基;
例えば、チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。

【0213】
上記の置換基群Z’の中でも、好ましくは、前記アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基である。電荷輸送性の観点からは、置換基を有さないことがさらに好ましい。
また、上記置換基群Z’の各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基(置換基群Z’)と同じのもの又は後述の架橋性基が挙げられる。好ましくは、更なる置換基は有さないか、炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、フェニル基又は後述の架橋性基である。電荷輸送性の観点からは、さらなる置換基を有さないことがより好ましい。
【0214】
不溶化の観点からは、さらなる置換基として、少なくとも一つの後述の架橋性基を含む式(20)で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、該架橋性基が、Ar’で表される芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基に更に置換していることが好ましい。
【0215】
(Ar13’~Ar15’)
Ar13’~Ar15’は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Ar13’~Ar15’が置換基である場合、特に限定はされないが、好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。好ましい構造としては、前記Ar’で挙げた基と同様である。
【0216】
Ar13’~Ar15’が置換基である場合、各カルバゾールの3位または6位に結合していることが、耐久性向上の観点から好ましい。
Ar13’~Ar15’は、合成のし易さ及び電荷輸送性の観点からは、水素原子であることが好ましい。
Ar13’~Ar15’は、耐久性向上及び電荷輸送性の観点からは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0217】
Ar13’~Ar15’が置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である場合の置換基としては、前記置換基群Z’に挙げられる置換基または後述の架橋性基と同様であり、好ましい置換基も同様であり、それら置換基がさらに有していてもよい置換基も同様である。
また、不溶化の観点からは、置換基として、少なくとも一つの後述の架橋性基を含む式(21)で表される基を含むことが好ましい。
一方、成膜後の未架橋残基による発光層への悪影響が無い観点からは、置換基として架橋基を含まないことが好ましい。
【0218】
(Ar12’)
Ar12’は、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基と置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基とが任意に連結した二価の基であって、式(21)を構成する2つのカルバゾール環のうち少なくとも一方のカルバゾール環のNに結合する構造がフェニレン基である。
【0219】
芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、更に好ましくは炭素数10以上50以下であり、特に好ましくは炭素数12以上40以下である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2~5縮合環の二価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。これらが複数連結する場合、好ましくは複数連結した二価の芳香族炭化水素基が共役している基である。
【0220】
芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましく、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5又は6員環の単環又は2~4縮合環の二価の基またはこれらが複数連結した基等が挙げられる。
【0221】
これら芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基は、前記R’~R’及びR11’~R14’で挙げた、アルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。置換基の立体効果によってAr12’の構造のねじれが生じる場合は、置換基が無い方が好ましく、置換基の立体効果によってAr12’の構造のねじれが生じない場合は、置換基を有することが好ましい。
【0222】
具体的な好ましい構造は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環の二価の基又はこれらが複数連結した基であり、更に好ましくは、ベンゼン環の二価の基又はこれらが複数連結した基であり、特に好ましくは、ベンゼン環が1,4位の二価で連結した1,4フェニレン基、フルオレン環の2,7位の二価で連結した2、7フルオレニレン基、又はこれらが複数連結した基であり、最も好ましくは、1,4フェニレン基-2,7フルオレニレン基-1,4フェニレン基-を含む基である。これら好ましい構造において、フェニレン基は連結位置以外に置換基を有さないことが、置換基の立体効果によるAr12’のねじれが生じず好ましい。また、フルオレニレン基は、9,9’位に置換基を有している方が、溶解性及びフルオレン構造の耐久性向上の観点から好ましい。
【0223】
Ar12’は上記のような構造であることで、2つのカルバゾール構造の窒素原子間の芳香族炭化水素基が共役した構造となり、LUMOがこの共役した芳香族炭化水素基上に分布しやすくなる。そのため、電子や励起子に弱い主鎖の窒素原子周辺にLUMOが広がりにくいため、耐久性が向上すると考えられる。
また、芳香族複素環基を含む場合、電子吸引性が向上してLUMOが分布しやすいため、電子や励起子に弱い主鎖の窒素原子周辺にLUMOが広がりにくく、耐久性が向上すると考えられる。
【0224】
(Ar11’)
Ar11’は、式(20)における主鎖のアミンの窒素原子と連結する二価の基である。Ar11’は特に限定されないが、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基が好ましい。
Ar11’の芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、更に好ましくは炭素数10以上50以下であり、特に好ましくは炭素数12以上40以下である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2~5縮合環の二価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。
【0225】
Ar11’の芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましい。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5又は6員環の単環又は2~4縮合環の二価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。
【0226】
これら芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基は、R’~R’及びR11’~R14’で挙げた、アルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
これら二価の芳香族炭化水素基または二価の芳香族複素環基が複数連結する場合、好ましくは複数連結した二価の芳香族炭化水素基が共役しないように結合した基である。具体的には、1,3フェニレン基、又は置換基を有し置換基の立体効果によって捻じれ構造となる基を含むことが好ましい。このような連結基を含むことにより、Ar12’上に分布するLUMOが主鎖に広がりにくくなり、電子や励起子に弱い主鎖の窒素原子周辺にLUMOが分布しにくく、耐久性が向上すると考えられる。
【0227】
また、本実施形態の上記式(20)で表される繰り返し単位を有する重合体において、Ar’、R’、R’、X’が複数ある場合は、各々同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、重合体が、式(20)で表される繰り返し単位が同一構造である繰り返し単位を複数含むことである、この場合、同一構造の繰り返し単位を複数含むことで、繰り返し単位のHOMO、LUMOが同一となるため、特定の浅い準位に電荷が集中してトラップとなることが無く、電荷輸送性に優れ、耐久性も向上すると考えられる。
【0228】
[好ましい繰り返し単位]
前記式(20)で表される繰り返し単位は、下記式(20-I)内のいずれかで示される繰り返し単位であることが最も好ましい。
【0229】
【化45】
【0230】
上記式(20-I)において、R’及びR’は同一であり、且つ、R’とR’は互いに対称な位置に結合している。
【0231】
[末端基]
本実施形態において、末端基とは、重合体の重合終了時に用いたエンドキャップ剤によって形成された、重合体の末端部の構造のことを指す。式(20)で表される繰り返し単位を有する重合体の末端基は炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、電荷輸送性の観点から、炭素数1以上60以下が好ましく、1以上40以下がより好ましく、1以上30以下がさらに好ましい。
【0232】
好ましくは、
例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基;
例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基;
例えば、フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素環基;
が挙げられる。
【0233】
これら炭化水素基はさらに置換基を有していてもよく、さらに有していてもよい置換基はアルキル基又は芳香族炭化水素環基が好ましく、これらさらに有していてもよい置換基が複数ある場合は互いに結合して環を形成していてもよい。
好ましくは、電荷輸送性および耐久性の観点から、アルキル基又は芳香族炭化水素環基であり、更に好ましくは芳香族炭化水素環基である。
【0234】
[別の繰り返し単位]
上記式(20)で表される繰り返し単位を有する重合体は、上記式(20)で表される繰り返し単位とは別の繰り返し単位を、さらに含んでいてもよい。
別の繰り返し単位としては、電荷輸送性及び耐久性の点で、下記式(22)で表される繰り返し単位が好ましい。なお、ここで、下記式(22)で表される繰り返し単位は、上記式(20)の繰り返し単位中の一部の構造部分と一致しうるが、ここでは、あくまでも、式(20)で表される繰り返し単位以外の構造であることを意味する。
【0235】
【化46】
【0236】
式(22)中、
Ar’は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
Ar’は、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、二価の芳香族複素環基、又は該芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表す。
【0237】
(Ar’及びAr’)
Ar’及びAr’における芳香族炭化水素基及び芳香族炭化水素環基としては、Ar’は式(20)のAr’と同様の基、Ar’は式(20)におけるAr’と同様の基であって二価である基を表す。また、有していてもよい置換基は前記置換基群Z’または後述の架橋性基と同様の基が好ましく、さらに有していてよい置換基も前記置換基群Z’と同様である。
電荷輸送性、耐久性の他、陽極側からの正孔注入に優れる点で、上記式(22)中のAr’が、下記式(23)で表される基であることがさらに好ましい。

【0238】
【化47】
【0239】
式(23)中、
k’及びn’は、各々独立に、0~3の整数を表し、k’+n’は1以上であり、
m’は、0又は1の整数を表す。
X’は、式(20)と同様であり、*1、*2は隣接する構造との結合位置を表す。
【0240】
(k’、n’及びm’)
式(23)において、電子耐久性に優れる点で、k’+n’は2が好ましく、3が更に好ましい。
【0241】
また、k’は1以上であることが好ましく、*1において前記式(22)におけるNと結合していることが好ましい。また、k’とn’の両方が1であるか、k’とn’の両方が2以上であることがさらに好ましい。
重合体の溶媒への溶解性が優れる点で、m’は1であることがより好ましい。
前記式(22)において、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が、連結基を介して複数個連結したものである場合の連結基としては、具体的には、例えば、-O-基、-C(=O)-基、及び水素原子が置換されていてもよい-CH2-基から選ばれる基を任意の順番で1~30個、好ましくは1~5個、更に好ましくは1~3個連結してなる二価の連結基等が挙げられる。
【0242】
中でも、発光層への正孔注入に優れる点で、式(22)中のAr4’が、下記式(24)で表される連結基を介して複数個連結された、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であることが好ましい。
【0243】
【化48】
【0244】
式(24)中、
p’は1~10の整数を表し、
’及びR’は、各々独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基を表す。
’及びR’が複数個存在する場合、同じであっても異なっていてもよい。
【0245】
(R’及びR’)
’及びR’におけるアルキル基は、前記R’で挙げたアルキル基と同様の基であり、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、前記Ar’で挙げた芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基と同様の基である。また、これらの基が有していてもよい置換基は、前記置換基群Z’又は後述の架橋性基と同様の基が好ましく、さらに有していてよい置換基も前記置換基群Z’と同様である。
【0246】
式(20)で表される繰り返し単位を有する重合体が含む別の繰り返し単位としては、下記式(25)で示される繰り返し単位であることが好ましい。式(25)で示される繰り返し単位は、芳香環のねじれにより、励起一重項エネルギー準位及び励起三重項エネルギー準位が高くなる傾向にある。また、芳香環のねじれの立体障害によって、重合体の溶媒への溶解性が優れると共に、湿式成膜法で形成し加熱処理された塗膜は溶媒への不溶性に優れる傾向にある。
【0247】
【化49】
【0248】
式(25)中、
Ar’は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
17’~R19’は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
f’、g’、h’は、各々独立して、0~4の整数を表し、f’+g’+h’は1以上であり、
e’は0~3の整数を表す。
【0249】
(Ar’及びR17’~R19’)
Ar’及びR17’~R19’における芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、各々独立に、前記Ar’で挙げたものと同様の基である、また、これらの基が有していてもよい置換基は、前記置換基群Z’又は後述の架橋性基と同様の基が好ましい。
17’~R19’におけるアルキル基及びアラルキル基は、前記R’で挙げたものと同様の基が好ましく、さらに有していてもよい置換基も前記R’と同様の基が好ましい。
17’~R19’におけるアルコキシ基は、前記置換基群Z’で挙げたアルコキシ基が好ましく、さらに有していてもよい置換基も前記置換基群Z’と同様である。
【0250】
(h’~j’)
f’、g’、h’は、各々独立して、0~4の整数を表し、f’+g’+h’は1以上である。
f’+h’は1以上であることが好ましく、
f’+h’は1以上、且つ、f’、g’及びh’は2以下であることがより好ましく、
f’+h’は1以上、且つ、f’、h’は1以下であることがさらに好ましく、
f’、h’はいずれも1であることが最も好ましい。
f’及びh’がいずれも1である場合、R17’とR19’は互いに対称な位置に結合していることが好ましい。
【0251】
また、R17’とR19’とは同一であることが好ましく、
g’は2であることがより好ましい。
g’が2である場合、2つのR18’は互いにパラ位に結合していることが最も好ましく、
g’が2である場合、2つのR18’は同一であることが最も好ましい。
ここで、R17’とR19’が互いに対称な位置に結合するとは、下記の結合位置のことを言う。ただし、表記上、主鎖を軸とする180度回転は同一構造とみなす。
【0252】
【化50】
【0253】
また、前記式(22)で表される繰り返し単位は、下記式(26)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
【0254】
【化51】
【0255】
前記式(26)で表される繰り返し単位の場合、g’=0または2であることが好ましい。g’=2の場合、結合位置は2位と5位である。g’=0の場合はR18’による立体障害が無い場合、及びg’=2であり結合位置は2位と5位である場合は、立体障害が2つのR18’が結合するベンゼン環の対角位置となり、R17’とR19’とが互いに対称な位置に結合することが可能である。
また、前記式(26)で表される繰り返し単位は下記式(27)で示される繰り返し単位であることがさらに好ましい。
【0256】
【化52】
【0257】
前記式(27)で表される繰り返し単位の場合、g’=0または2であることが好ましい。g’=2の場合、結合位置は2位と5位である。g’=0の場合はR18’による立体障害が無い場合、及びg’=2であり結合位置は2位と5位である場合は、立体障害が2つのR18’が結合するベンゼン環の対角位置となり、R ’とR ’とが互いに対称な位置に結合することが可能である。

【0258】
[繰り返し単位の含有量]
式(20)で表される繰り返し単位を有する重合体において、式(20)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、通常重合体中に10モル%以上含まれ、30モル%以上含まれることが好ましく、40モル%以上含まれることがさらに好ましく、50モル%以上含まれることが特に好ましい。式(20)で表される繰り返し単位を有する重合体は、繰り返し単位が、式(20)で表される繰り返し単位のみから構成されていてもよいが、有機電界発光素子とした場合の諸性能をバランスさせる目的から、式(20)とは別の繰り返し単位を有していてもよく、その場合、重合体中の式(20)で表される繰り返し単位の含有量は、通常、99モル%以下、好ましくは95モル%以下である。
【0259】
式(25)で表される繰り返し単位を含む場合、式(20)で表される繰り返し単位と(25)で表される繰り返し単位との割合は、((25)で表される繰り返し単位のモル数)/(式(20)で表される繰り返し単位のモル数)が、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.9以上がよりさらに好ましく、1.0が特に好ましい。また、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。

【0260】
[好ましい繰り返し単位の組み合わせ]
重合体の繰り返し単位の組み合わせは特に限定されないが、式(20)で表される繰り返し単位及び式(22)のAr4が式(23)である繰り返し単位をと含む、下記式(28)で表される繰り返し単位を有することが、電荷輸送性向上および耐久性向上の観点から好ましい。
【0261】
【化53】
【0262】
式(28)中、
Ar’、Ar’、X’、R’、R’、a’、b’、c’、d’、k’、m’及びn’は、式(20)、式(22)及び式(23)におけるものと各々同様である。
好ましい構造、範囲等も、式(20)、式(22)及び式(23)におけるものと同様である。
更に好ましくは、c’=d’=k’=n’及びm’=1である。
【0263】
式(28)において、置換基を有するフェニレンに近いフルオレン環、カルバゾール環、またはエチレン基で連結したビフェニル骨格をA、置換基をさないフェニレンに近いフルオレン環、カルバゾール環、またはエチレン基で連結したビフェニル骨格をBとしたとき、アミンと共役していない結合を有するAはアミンと共役していないため、LUMOが分布しにくく耐久性が向上する傾向にある。さらに、アミンと共役しているBはより共役が広いため、正孔輸送性が向上し、かつ安定となる傾向にある。

【0264】
また、さらに好ましくは、AのX’及びBのX’が-C(R’)(R’)-であるか、AのX’およびBのX’が、-N(R’)-であるか、又はAのX’及びBのX’が-C(R11’)(R12’)-C(R13’)(R14’)-である。このとき、AとBの、R’、R’、R’、R11’、R12’、R13’及びR14’は、同一であっても異なっていてもよい。
AのX’及びBのX’が-C(R’)(R’)-であるか、AのX’およびBのX’が-NR’-であるか、又はAのX’及びBのX’が-C(R11’)(R12’)-C(R13’)(R14’)-であることによって、重合体中に含まれる繰り返しの基本骨格が同じであることから、電荷のトラップとなるような準位が形成されにくく、電荷輸送性に優れ、かつ耐久性に優れると考えらえる。

【0265】
さらに好ましくはAとBとが同一であることであり、よりさらに好ましくはA及びBのX’が、-C(R’)(R’)-であり、特に好ましくはAのX’とBのX’が-C(R’)(R’)-であり、且つ同一となる場合である。
【0266】
<重合体
本実施形態において正孔輸送層に用いることができる重合体は、側鎖に下記式(30)で表される構造を有するものである。

【0267】
【化54】
【0268】
式(30)中、
Ar31’は主鎖と連結する二価の基を表し、
Ar12’は、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基を表し、
Ar13’~Ar15’は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。
*は結合位置を表す。
【0269】
Ar31’は主鎖と連結する二価の基を表す。特に限定されないが、好ましくは式(21)のAr11’と同じであり、好ましい範囲、有していてもよい置換基等も同じである。Ar12’~Ar15’は、式(21)のAr12’~Ar15’と同じであり、好ましい範囲、有していてもよい置換基等も同じである。
【0270】
【化55】
【0271】
式(21)中、
Ar11’及びAr12’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
Ar13’~Ar15’は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
上記側鎖に式(21)で表される構造を有する重合体は、下記式(31)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【0272】
【化56】
【0273】
式(31)中、
Ar13’~Ar15’、Ar31’は式(21)と同様であり、
Ar16’は、重合体の主鎖を構成する構造を表す。
【0274】
上記側鎖に式(21)で表される構造を有する重合体は、前記式(22)で表される繰り返し単位を含む重合体であってAr’が式(20)で表わされる構造である重合体、または前記式(25)で表される繰り返し単位を含む重合体であってAr’が式(20)で表わされる構造である重合体であることも好ましい。
【0275】
[可溶性基]
式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体は、溶媒への可溶性発現のため可溶性基を有することが好ましい。本実施形態における可溶性基は、炭素数3以上24以下、好ましくは炭素数12以下の、直鎖又は分岐のアルキル基またはアルキレン基を有する基である。これらの中でも好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、またはアラルキル基であり、例えば、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等である。より好ましくはn-ヘキシル基又はn-オクチル基である。可溶性基は置換基を有していてもよい。
【0276】
(可溶性基の数)
式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体が有する可溶性基は、湿式成膜法に利用可能な重合体溶液を得やすくなる点では、多い方が好ましい。一方で、成膜した層の上に湿式成膜法で他の層を形成した際に層が溶媒に溶解してしまうことによる膜厚減少が少ない点では、少ない方が好ましい。
【0277】
式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体が有する可溶性基の数は、重合体の1gあたりのモル数で表すことができる。
式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体が有する可溶性基の数を、重合体の1gあたりのモル数で表した場合、重合体1gあたり、通常4.0ミリモル以下、好ましくは3.0ミリモル以下、さらに好ましくは2.0ミリモル以下であり、また通常0.1ミリモル以上、好ましくは0.5ミリモル以上である。
【0278】
可溶性基の数が上記範囲内であると、重合体が溶媒に溶解しやすく、湿式成膜法に適した重合体を含む組成物が得られ易い。また、可溶性基密度が適度であるため、加熱溶媒乾燥後の有機溶媒に対する難溶性が十分であるため、湿式成膜法での多層積層構造が形成可能となる。
ここで、重合体の1gあたりの可溶性基の数は、重合体からその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出することができる。
【0279】
例えば、後述の実施例1で合成した重合体1の場合で説明すると、重合体1において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均650であり、また可溶性基は、1繰り返し単位当たり平均1個である。これを単純比例により計算すると、分子量1gあたりの可溶性基の数は、1.54ミリモルと算出される。
【0280】
【化57】
【0281】
[架橋性基]
式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体は、架橋性基を有していてもよい。式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体が有してもよい架橋性基は、式(20)で表される繰り返し単位中に存在していてもよく、式(20)で表される繰り返し単位とは別の繰り返し単位中に存在していてもよい。特に、側鎖であるAr’に架橋性基を有することが、架橋反応が進行しやすいため好ましい。
【0282】
架橋性基を有することで、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(難溶化反応)の前後で、有機溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。
架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、該架橋性基の近傍に位置する他の分子を構成している基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。この場合、反応する基は架橋性基と同一の基でも異なった基でもよい。
架橋性基としては、芳香族環に縮環したシクロブテン環、芳香族環に結合したアルケニル基を含む基が好ましく、更に好ましくは下記架橋性基群T’から選ばれる基である。
架橋性基は、前記各構造が有する置換基にさらに置換していることが好ましい。
【0283】
(架橋性基群T’)
架橋性基群T’は、以下に示す構造である。
【0284】
【化58】
【0285】
上記架橋性基群T’において、R21’~R23’は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。R24’、R25’、及びR26’は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。p’は1~4の整数、q’は1~5の整数、r’は1~7の整数を表す。
p’が2以上のとき、複数のR24’は同じであっても異なっていてもよく、隣接するR24’同士が結合して環を形成してもよい。
【0286】
q’が2以上のとき、複数のR25’は同じであっても異なっていてもよく、隣接するR25’同士が結合して環を形成してもよい。
r’が2以上のとき、複数のR26’は同じであっても異なっていてもよい。
Ar21’、Ar22’は置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0287】
21’~R26’のアルキル基としては、炭素数が6以下である直鎖又は分岐の鎖状アルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等である。より好ましくは、メチル基又はエチル基である。R21’~R26’の炭素数が6以下であることで、架橋反応を立体的に阻害することもなく、膜の不溶化が起こりやすい傾向にある。
【0288】
25’及びR26’のアルコキシ基としては、炭素数が6以下である直鎖又は分岐の鎖状アルコキシ基が挙げられる、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、2-プロポキシ基、n-ブトキシ基等である。より好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。R25’及びR26’の炭素数が6以下であれば、架橋反応を立体的に阻害することもなく、膜の不溶化が起こりやすい傾向にある。
【0289】
また、R21’及びR22’の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環等の6員環の単環又は2~5縮合環が挙げられる。特に1個の遊離原子価を有するベンゼン環が好ましい。
Ar22’は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を2以上結合させた基であってもよい。このような基としては、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられ、4,4’-ビフェニレン基が好ましい。
【0290】
Ar21’、Ar22’が有していてもよい置換基は前述の置換基群Z’と同様である。
架橋性基として、シンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、一価の遊離原子価を有するベンゾシクロブテン環、一価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環等の環化付加反応する基が、素子の電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
【0291】
また、架橋性基の中でも、架橋後の構造が特に安定な点で、一価の遊離原子価を有する芳香族環に縮環したシクロブテン環、一価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環を含む基が好ましく、中でもベンゾシクロブテン環または一価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環が更に好ましく、架橋反応温度が低い点で一価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環が特に好ましい。
【0292】
(架橋性基の数)
式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体が有する架橋性基は、架橋することにより十分に不溶化し、その上に湿式成膜法で他の層を形成しやすくなる点では、多い方が好ましい。一方で、形成された層にクラックが生じ難く、未反応架橋性基が残りにくく、有機電界発光素子が長寿命になりやすい点では、架橋性基は少ないことが好ましい。
【0293】
式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体における、1つのポリマー鎖の中に存在する架橋性基は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、また好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。
また、式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体が有する架橋性基の数は、重合体の分子量1000あたりの数で表すことができる。
【0294】
式(CzP)で表わされる部分構造を有する本実施形態の重合体が有する架橋性基の数を、重合体の分子量1000あたりの数で表した場合、分子量1000あたり、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0以下であり、また通常0.01以上、好ましくは0.05以上である。
架橋性基の数が上記範囲内であると、クラック等が起き難く、平坦な膜が得られ易い。また、架橋密度が適度であるため、架橋反応後の層内に残る未反応の架橋性基が少なく、得られる素子の寿命に影響し難い。
【0295】
さらに、架橋反応後の、有機溶媒に対する難溶性が十分であるため、湿式成膜法での多層積層構造が形成し易い。
ここで、重合体の分子量1000あたりの架橋性基の数は、重合体からその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出することができる。
例えば、後述の実施例で合成した重合体3の場合で説明すると、重合体3において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均868であり、また架橋性基は、1繰り返し単位当たり0.114個である。これを単純比例により計算すると、分子量1000あたりの架橋性基の数は、0.132個と算出される。
【0296】
【化59】
【0297】
[重合体の分子量]
式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体の重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、通常2,500以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、特に好ましくは30,000以上である。
【0298】
重合体の重量平均分子量が上記上限値以下であることで、溶媒に対する溶解性が得られ、成膜性に優れる傾向にある。また、重合体の重量平均分子量が上記下限値以上であることで、重合体のガラス転移温度、融点及び気化温度の低下が抑制され、耐熱性が向上する場合がある。加えて、架橋反応後の塗膜の有機溶媒に対する不溶性が十分である場合がある。
【0299】
また、式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体における数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、通常2,000以上、好ましくは4,000以上、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。
【0300】
さらに、式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体における分散度(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。尚、分散度は値が小さい程よいため、下限値は理想的には1である。該重合体の分散度が、上記上限値以下であると、精製が容易で、また溶媒に対する溶解性や電荷輸送能が良好である。
【0301】
通常、重合体の重量平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量が算出される。
【0302】
[具体例]
式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体の具体例を以下に示すが、式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体はこれらに限定されるものではない。なお、化学式中の数字は繰返し単位のモル比を表す。
これらの重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体等のいずれでもよく、単量体の配列順序には限定されない。
【0303】
【化60】
【0304】
【化61】
【0305】
[重合体の製造方法]
式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体の製造方法は特には制限されず、式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体が得られる限り任意である。例えば、Suzuki反応による重合方法、Grignard反応による重合方法、Yamamoto反応による重合方法、Ullmann反応による重合方法、Buchwald-Hartwig反応による重合方法等などによって製造できる。
【0306】
Ullmann反応による重合方法及びBuchwald-Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、式(1a’)で表されるジハロゲン化アリール(X’はI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を示す。)と式(1b’)で表される1級アミノアリールとを反応させることにより、式(CzP)で表わされる部分構造を有する重合体が合成される。
【0307】
【化62】
【0308】
上記式中、Yはハロゲン原子を示し、Ar’、R’~R’、Xは前記式(20)と同義であ
る。
なお、前記の重合方法において、通常、N-アリール結合を形成する反応は、例えば炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。
【0309】
<低分子化合物>
本発明の第3の要旨における、発光層に含まれるカルバゾール環を有する特定の構造である前記式(CzP)を部分構造として含む材料が低分子材料である場合、本発明の第2の要旨における発光層に含まれる上述の低分子化合物と同様である。すなわち、前記式(CzP-2)を有するホスト材料であることが好ましく、好ましい範囲も同様である。
【0310】
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の第2の要旨及び第3の要旨の実施形態である有機電界発光素子の正孔輸送層および正孔輸送層に隣接する発光層は、式(CzP)を部分構造として有する材料を溶媒に溶解した組成物を用いて、湿式成膜することができる。
正孔輸送層を形成するための有機電界発光素子用組成物は、上述の重合体~重合体のいずれかを含有することが好ましく、発光層を形成するための有機電界発光素子用組成物は、上述の低分子化合物を含有することが好ましい。

【0311】
[式(CzP)を部分構造として有する材料の含有量]
前記組成物中の式(CzP)を部分構造として有する材料の含有量は、通常0.01~70質量%、好ましくは0.1~60質量%、さらに好ましくは0.5~50質量%である。
上記範囲内であると、形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
【0312】
[溶媒]
前記組成物は、通常、溶媒を含有する。この溶媒は、式(CzP)を部分構造として有する材料を溶解するものが好ましい。具体的には、式(CzP)を部分構造として有する材料を、室温で通常0.05質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上溶解する溶媒が好適である。
【0313】
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒;1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族エステル系溶媒;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等のエステル系溶媒;等の有機溶媒、その他、後述の正孔注入層形成用組成物や正孔輸送層形成用組成物に用いられる有機溶媒が挙げられる。
【0314】
なお、溶媒は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
中でも、有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒としては、20℃における表面張力が、通常40dyn/cm未満、好ましくは36dyn/cm以下、より好ましくは33dyn/cm以下である溶媒が好ましい。
【0315】
湿式成膜法に用いる前記組成物には、よりレベリング性が高く均一な塗膜を形成しうるように表面張力が低いことが求められる。そこで前記のような低い表面張力を有する溶媒を使用することにより、式(CzP)を部分構造として有する材料を含有する均一な層を形成することができ好ましい。
低表面張力の溶媒の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、アニソール等のエーテル系溶媒、トリフルオロメトキシアニソール、ペンタフルオロメトキシベンゼン、3-(トリフルオロメチル)アニソール、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等が挙げられる。
【0316】
また一方で、前記組成物に含有される溶媒としては、25℃における蒸気圧が、通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下であり、通常0.1mmHg以上であるものが好ましい。このような溶媒を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適で、式(CzP)を部分構造として有する材料の性質に適した有機電界発光素子用組成物を調製することができる。
【0317】
このような溶媒の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が挙げられる。
ところで、水分は有機電界発光素子の性能劣化を引き起こす可能性があり、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性がある。そこで、湿式成膜中に残留する水分をできる限り低減するために、前記の溶媒の中でも、25℃における水の溶解度が1質量%以下であるものが好ましく、0.1質量%以下である溶媒がより好ましい。
【0318】
有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒の含有量は、通常10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。溶媒の含有量が上記下限以上であることにより、形成される層の平坦さ及び均一さを良好にすることができる。
【0319】
[電子受容性化合物]
有機電界発光素子用組成物は、低抵抗化する点で、さらに電子受容性化合物を含有することが好ましい。特に、有機電界発光素子用組成物を正孔注入層を形成するために用いる場合には電子受容性化合物を含有することが好ましい。
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、上述の重合体から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、及び、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。
【0320】
具体的には、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号)、(国際公開第2017/164268号);塩化鉄(III)(特開平11-251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003-31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体及びヨウ素等が挙げられる。
【0321】
有機電界発光素子用組成物は、上記のような電子受容性化合物の1種を単独で含んでいてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で含んでいてもよい。
有機電界発光素子用組成物が電子受容性化合物を含む場合、有機電界発光素子用組成物の電子受容性化合物の含有量は、通常0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。また、有機電界発光素子用組成物中の重合体に対する電子受容性化合物の割合は、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
有機電界発光素子用組成物中の電子受容性化合物の含有量が上記下限以上であると重合体から電子受容体が電子を受容し、形成した有機層が低抵抗化するため好ましく、上記上限以下であると形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
【0322】
[カチオンラジカル化合物]
有機電界発光素子用組成物は、更にカチオンラジカル化合物を含有していてもよい。
カチオンラジカル化合物としては、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンとからなるイオン化合物が好ましい。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
また、カチオンラジカルとしては、後述の正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であることが好ましい。正孔輸送性化合物として好ましい化合物から一電子取り除いた化学種であることが、非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、及び溶解性等の点から好適である。
【0323】
ここで、カチオンラジカル化合物は、後述の正孔輸送性化合物と前述の電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンとからなるカチオンイオン化合物が生成する。
【0324】
有機電界発光素子用組成物がカチオンラジカル化合物を含む場合、有機電界発光素子用組成物のカチオンラジカル化合物の含有量は、通常0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上であり、通常40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。カチオンラジカル化合物の含有量が下限以上であると形成した有機層が低抵抗化するため好ましく、上限以下であると形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
なお、有機電界発光素子用組成物には、上記の成分以外に、後述の正孔注入層形成用組成物や正孔輸送層形成用組成物に含まれる成分を、後述の含有量で含有していてもよい。
【0325】
<有機電界発光素子>
本発明における有機電界発光素子は、基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子である。本発明の第1の要旨の実施形態における有機電界発光素子は、有機層が、上述の重合体又は該重合体が架橋した重合体を含有する層を有する。本発明の第2の要旨の実施形態における有機電界発光素子は、該有機層が、正孔輸送層と、正孔輸送層に隣接する発光層とを有し、該正孔輸送層が上述の重合体又は該重合体が架橋した重合体を含有し、該発光層が上述の式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料を含む。本発明の第3の要旨の実施形態における有機電界発光素子は、正孔輸送層と、正孔輸送層に隣接する発光層とを有し、該正孔輸送層と、該発光層に含まれる材料の少なくとも一つとがともにカルバゾール環を有する上述の式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料(化合物)を含む。第3の要旨の実施形態においては、正孔輸送層に含まれる式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料が、前記重合体又は前記重合体が架橋した重合体、又は、前記重合体又は前記重合体が架橋した重合体であることが好ましい。
上記の各実施形態に係る有機電界発光素子におけるそれぞれの条件や態様は任意に組み合わせることができる。これらの有機電界発光素子に適用し得る製造方法や特性の具体的な説明を以下に示す。

【0326】
本発明の実施形態における該有機電界発光素子の製造方法は、特段制限されないが、有機層を構成する層のうち少なくとも1層を、上述の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成させる成膜ステップを含む方法により製造することが好ましい。有機層が複数の層からなる場合、該複数の層を積層する方法等は公知の方法を用いることができる。
【0327】
有機電界発光素子において、有機層が正孔注入層及び正孔輸送層を有し、これらの正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一つの層が、湿式成膜法により形成された層(成膜ステップで形成される有機層)であることが好ましく、特に、有機層が正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を有し、これらの正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成された層であることが好ましい。
【0328】
本実施形態における湿式成膜法とは、成膜方法、即ち、塗布方法として、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の湿式で成膜させる方法を採用し、この塗布膜を乾燥させて膜形成を行う方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法等が好ましい。
【0329】
有機電界発光素子の構造の一例として、図1に有機電界発光素子10の構造例の模式図(断面)を示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
以下、有機電界発光素子の層構成及びその一般的形成方法等の実施の形態の一例を、図1を参照して説明する。
【0330】
[基板]
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものであり、通常、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。これらのうち、ガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。基板は、外気による有機電界発光素子の劣化が起こり難いことからガスバリア性の高い材質とするのが好ましい。このため、特に合成樹脂製の基板等のようにガスバリア性の低い材質を用いる場合は、基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を上げるのが好ましい。
【0331】
[陽極]
陽極2は、発光層5側の層に正孔を注入する機能を担う。
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック及びポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0332】
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式法により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより形成することもできる。また、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0333】
陽極2は、通常、単層構造であるが、適宜、積層構造としてもよい。陽極2が積層構造である場合、1層目の陽極上に異なる導電材料を積層してもよい。
陽極2の厚みは、必要とされる透明性と材質等に応じて決めればよい。特に高い透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率が60%以上となる厚みが好ましく、80%以上となる厚みが更に好ましい。陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下とするのが好ましい。一方、透明性が不要な場合は、陽極2の厚みは必要な強度等に応じて任意に厚みとすればよく、この場合、陽極2は基板と同一の厚みでもよい。
陽極2の表面に他の層を成膜する場合は、成膜前に、紫外線/オゾン、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ等の処理を施すことにより、陽極2上の不純物を除去すると共に、そのイオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させておくことが好ましい。
【0334】
[正孔注入層]
陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層は、通常、正孔注入輸送層又は正孔輸送層と呼ばれる。そして、陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層が2層以上ある場合に、より陽極側に近い方の層を正孔注入層3と呼ぶことがある。正孔注入層3は、陽極2から発光層5側に正孔を輸送する機能を強化する点で、形成することが好ましい。正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層3は、陽極2上に形成される。
【0335】
正孔注入層3の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
正孔注入層の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。成膜性が優れる点では、湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3は、正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがより好ましい。更には、正孔注入層中にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことが特に好ましい。
以下に、一般的な正孔注入層の形成方法について説明するが、有機電界発光素子において、正孔注入層は、有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成されることが好ましい。
【0336】
[正孔輸送性化合物]
正孔注入層形成用組成物は、通常、正孔注入層3となる正孔輸送性化合物を含有する。また、湿式成膜法の場合は、通常、更に溶媒も含有する。正孔注入層形成用組成物は、正孔輸送性が高く、注入された正孔を効率よく輸送できるのが好ましい。このため、正孔移動度が大きく、トラップとなる不純物が製造時や使用時等に発生し難いことが好ましい。また、安定性に優れ、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対する透明性が高いことが好ましい。特に、正孔注入層が発光層と接する場合は、発光層からの発光を消光しないものや発光層とエキサイプレックスを形成して、発光効率を低下させないものが好ましい。
【0337】
正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から、4.5eV~6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、キナクリドン系化合物等が挙げられる。
【0338】
上述の例示化合物のうち、非晶質性及び可視光透過性の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は、特に制限されないが、表面平滑化効果により均一な発光を得やすい点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)を用いることが好ましい。
【0339】
正孔注入層3には、正孔輸送性化合物の酸化により、正孔注入層の導電率を向上させることができるため、前述の電子受容性化合物や、前述のカチオンラジカル化合物を含有していることが好ましい。
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)することによっても生成する。
【0340】
ここでいう酸化重合は、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、又は、電気化学的に酸化するものである。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
【0341】
[湿式成膜法による正孔注入層の形成]
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層となる材料を可溶な溶媒(正孔注入層用溶媒)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥させることにより形成する。
【0342】
正孔注入層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点では、低い方が好ましく、また、一方、正孔注入層に欠陥が生じ難い点では、高い方が好ましい。具体的には、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのが更に好ましく、0.5質量%以上であるのが特に好ましく、また、一方、70質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのが更に好ましく、50質量%以下であるのが特に好ましい。
【0343】
溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル及び1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。
【0344】
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3-イソプロピルビフェニル、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0345】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
これらの他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
正孔注入層3の湿式成膜法による形成は、通常、正孔注入層形成用組成物を調製後に、これを、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより行われる。
正孔注入層3は、通常、成膜後に、加熱や減圧乾燥等により塗布膜を乾燥させる。
【0346】
[真空蒸着法による正孔注入層の形成]
真空蒸着法により正孔注入層3を形成する場合には、通常、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種類又は2種類以上を真空容器内に設置された坩堝に入れ(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々を別々の坩堝に入れ)、真空容器内を真空ポンプで10-4Pa程度まで排気した後、坩堝を加熱して(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々の坩堝を加熱して)、坩堝内の材料の蒸発量を制御しながら蒸発させ(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々独立に蒸発量を制御しながら蒸発させ)、坩堝に向き合って置かれた基板上の陽極上に正孔注入層を形成する。なお、2種類以上の材料を用いる場合は、それらの混合物を坩堝に入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
【0347】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10-6Torr(0.13×10-4Pa)以上、9.0×10-6Torr(12.0×10-4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上、50℃以下で行われる。
なお、正孔注入層3は、後述の正孔輸送層4と同様に架橋されていてもよい。
【0348】
[正孔輸送層]
正孔輸送層4は、陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層である。本実施形態においては正孔輸送層4と発光層5は接しており、正孔輸送層4が式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料を含む層である。正孔輸送層4を形成する場合、通常、正孔輸送層4は、陽極2と発光層5の間に形成される。また、上述の正孔注入層3がある場合は、正孔注入層3と発光層5の間に形成される。
【0349】
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、一方、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
正孔輸送層4の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。成膜性が優れる点では、湿式成膜法により形成することが好ましい。
以下に一般的な正孔輸送層の形成方法について説明するが、有機電界発光素子において、正孔輸送層は、有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成されることが好ましい。
【0350】
有機電界発光素子における、式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料を含む正孔輸送層は、式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料以外の正孔輸送性化合物を含んでもよい。
正孔輸送層4は、通常、正孔輸送性化合物を含有する。正孔輸送層4に含まれる正孔輸送性化合物としては、上述の重合体、または上述の重合体が架橋性基を有する場合は重合体が架橋した重合体が好ましい。さらに、重合体の他に、前記正孔輸送性化合物、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニルで代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5-234681号公報)、4,4’,4’’-トリス(1-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72-74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2’,7,7’-テトラキス-(ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4’-N,N’-ジカルバゾールビフェニル等のカルバゾール誘導体等が好ましいものとして挙げられる。また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7-53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等を含んでもよい。
【0351】
[湿式成膜法による正孔輸送層の形成]
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、通常、上述の正孔注入層を湿式成膜法で形成する場合と同様にして、正孔注入層形成用組成物の代わりに正孔輸送層形成用組成物を用いて形成させる。
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、通常、正孔輸送層形成用組成物は、更に溶媒を含有する。正孔輸送層形成用組成物に用いる溶媒は、上述の正孔注入層形成用組成物で用いる溶媒と同様の溶媒を使用することができる。
正孔輸送層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度は、正孔注入層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度と同様の範囲とすることができる。
正孔輸送層の湿式成膜法による形成は、前述の正孔注入層成膜法と同様に行うことができる。
【0352】
[真空蒸着法による正孔輸送層の形成]
真空蒸着法で正孔輸送層を形成する場合についても、通常、上述の正孔注入層を真空蒸着法で形成する場合と同様にして、正孔注入層形成用組成物の代わりに正孔輸送層形成用組成物を用いて形成させることができる。蒸着時の真空度、蒸着速度及び温度等の成膜条件などは、前記正孔注入層の真空蒸着時と同様の条件で成膜することができる。
【0353】
[発光層]
発光層5は、一対の電極間に電界が与えられた時に、陽極2から注入される正孔と陰極9から注入される電子が再結合することにより励起され、発光する機能を担う層である。発光層5は、陽極2と陰極9の間に形成される層であり、発光層は、陽極の上に正孔注入層がある場合は、正孔注入層と陰極の間に形成され、陽極の上に正孔輸送層がある場合は、正孔輸送層と陰極の間に形成される。
【0354】
発光層5の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜に欠陥が生じ難い点では厚い方が好ましく、また、一方、薄い方が低駆動電圧としやすい点で好ましい。このため、3nm以上であるのが好ましく、5nm以上であるのが更に好ましく、また、一方、通常200nm以下であるのが好ましく、100nm以下であるのが更に好ましい。
【0355】
発光層5は、後述する発光材料、または、上述した式(CzP)で表わされる部分構造を有する化合物等の正孔輸送性または電子輸送性の少なくともいずれかを有するホスト材料を含むことが好ましく、特に、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、電荷輸送性を有する材料(ホスト材料)とを含むことが好ましい。
発光材料は燐光発光材料または蛍光発光材料を用いることができる。
本発明の第2の要旨及び第3の要旨にかかる実施形態における有機電界発光素子においては、発光層は式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料を含む。発光層は、式(CzP)で表わされる部分構造を有する材料以外の材料を含んでもよい。
発光層が燐光発光層である場合、燐光発光材料としては以下の材料が好ましい。

【0356】
<燐光発光材料>
燐光発光材料とは、励起三重項状態から発光を示す材料をいう。例えば、Ir、Pt、Euなどを有する金属錯体化合物がその代表例であり、材料の構造として、金属錯体を含むものが好ましい。
【0357】
金属錯体の中でも、三重項状態を経由して発光する燐光発光性有機金属錯体として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7~11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。このような燐光発光材料としては、下記式(201)で表わされる化合物、または式(205)で表わされる化合物が好ましく、より好ましくは式(201)で表わされる化合物である。
【0358】
【化63】
【0359】
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造または置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
201、R202は各々独立に式(202)で表わされる構造であり、式(202)における“*”は環A1または環A2との結合を表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよく、R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0360】
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、または置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A201に結合する置換基どうし、環Aに結合する置換基どうし、または環A1に結合する置換基と環Aに結合する置換基どうしは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0361】
201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201およびB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、または、B201およびB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0362】
i1、i2はそれぞれ独立に、0以上12以下の整数を表す。
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
jは、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
k1、k2はそれぞれ独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
vは1~3の整数である。
式(201)及び(202)における各基について、特に指定が無い場合、有していてもよい置換基としては、次の置換基群Z2から選ばれる基が好ましい。
【0363】
<置換基群Z2>
・アルキル基、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基。
・アルコキシ基、好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基。
・アリールオキシ基、好ましくは炭素数6~20のアリールオキシ基、より好ましくは炭素数6~14のアリールオキシ基、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールオキシ基、特に好ましくは炭素数6のアリールオキシ基。
・ヘテロアリールオキシ基、好ましくは炭素数3~20のヘテロアリールオキシ基、より好ましくは炭素数3~12のヘテロアリールオキシ基。
・アルキルアミノ基、好ましくは炭素数1~20のアルキルアミノ基、より好ましくは炭素数1~12のアルキルアミノ基。
・アリールアミノ基、好ましくは炭素数6~36のアリールアミノ基、より好ましくは炭素数6~24のアリールアミノ基。
・アラルキル基、好ましくは炭素数7~40のアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のアラルキル基、さらに好ましくは炭素数7~12のアラルキル基。
・ヘテロアラルキル基、好ましくは炭素数7~40のヘテロアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のヘテロアラルキル基、
・アルケニル基、好ましくは炭素数2~20のアルケニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基、特に好ましくは炭素数2~6のアルケニル基。
・アルキニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルキニル基。
・アリール基、好ましくは炭素数6~30のアリール基、より好ましくは炭素数6~24のアリール基、さらに好ましくは炭素数6~18のアリール基、特に好ましくは炭素数6~14のアリール基。
・ヘテロアリール基、好ましくは炭素数3~30のヘテロアリール基、より好ましくは炭素数3~24のヘテロアリール基、さらに好ましくは炭素数3~18のヘテロアリール基、特に好ましくは炭素数3~14のヘテロアリール基。
・アルキルシリル基、好ましくはアルキル基の炭素数が1~20であるアルキルシリル基、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~12であるアルキルシリル基。
・アリールシリル基、好ましくはアリール基の炭素数が6~20であるアリールシリル基、より好ましくはアリール基の炭素数が6~14であるアリールシリル基。
・アルキルカルボニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキルカルボニル基。
・アリールカルボニル基、好ましくは炭素数7~20のアリールカルボニル基。
【0364】
以上の基は一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられているか、若しくは1つ以上の水素原子が重水素原子で置き換えらえられていてもよい。
特に断りのない限り、アリールは芳香族炭化水素であり、ヘテロアリールは芳香族複素環である。
・水素原子、重水素原子、フッ素原子、シアノ基、または、-SF5。
【0365】
(置換基群Z2の中の好ましい基)
これら置換基群Z2のうち、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、およびこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、または、-SF5であり、より好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、およびこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、または、-SF5であり、さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基であり、特に好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、最も好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。
【0366】
これら置換基群Z2にはさらに置換基群Z2から選ばれる置換基を置換基として有していてもよい。有していてもよい置換基の好ましい基、より好ましい基、さらに好ましい基、特に好ましい基、最も好ましい基は置換基群Z2の中の好ましい基と同様である。
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造または置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
【0367】
芳香族炭化水素環としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環であり、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましい。
芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環が好ましく、さらに好ましくは、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環である。
【0368】
環A1としてより好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、特に好ましくはベンゼン環またはフルオレン環であり、最も好ましくはベンゼン環である。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
芳香族複素環としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環が挙げられ、さらに好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、より好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、最も好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環である。
【0369】
環A1と環A2の好ましい組合せとしては、(環A1-環A2)と表記すると、(ベンゼン環-ピリジン環)、(ベンゼン環-キノリン環)、(ベンゼン環-キノキサリン環)、(ベンゼン環-キナゾリン環)、(ベンゼン環-イミダゾール環)、(ベンゼン環-ベンゾチアゾール環)である。
環A1、環A2が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Z2から選ばれる1種または複数種の置換基である。
【0370】
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、または置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造である場合、芳香族炭化水素環構造としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環であり、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましく、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環が好ましく、最も好ましくはベンゼン環である。
【0371】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいフルオレン環である場合、フルオレン環の9位および9’位は、置換基を有するかまたは隣接する構造と結合していることが好ましい。
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいベンゼン環である場合、少なくとも一つのベンゼン環がオルト位またはメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましく、少なくとも一つのベンゼン環がメタ位で隣接する構造と結合していることがより好ましい。
【0372】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族複素環構造である場合、芳香族複素環構造としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環が挙げられ、さらに好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
【0373】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいカルバゾール環である場合、カルバゾール環のN位は、置換基を有するかまたは隣接する構造と結合していることが好ましい。
Arが置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造である場合、直鎖、分岐鎖、または環状構造を有する脂肪族炭化水素構造であり、好ましくは炭素数が1以上24以下であり、さらに好ましくは炭素数が1以上12以下であり、より好ましくは炭素数が1以上8以下である。
【0374】
i1は0~12の整数を表し、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。この範囲であることにより、溶解性向上、電荷輸送性向上が見込まれる。
i3は好ましくは0~5の整数を表し、さらに好ましくは0~2、より好ましくは0または1である。
【0375】
jは好ましくは0~2の整数を表し、さらに好ましくは0または1である。
k1、k2は好ましくは0~3の整数を表し、さらに好ましくは1~3であり、より好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
Ar201、Ar202、Ar203が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Z2から選ばれる1種または複数種の置換基であり、好ましい基も前記置換基群Z2の通りであるが、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、であり、最も好ましくは無置換(水素原子)である。
【0376】
前記式(202)であらわされる構造のなかでも、以下の構造を有する材料が好ましい。ベンゼン環が連結した基を有する構造。すなわち、Ar201がベンゼン環構造、i1が1~6、少なくとも一つの前記ベンゼン環がオルト位またはメタ位で隣接する構造と結合している。この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0377】
環A1または環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造、すなわち、Ar201が芳香族炭化水素構造または芳香族複素環構造、i1が1~6、Ar202が脂肪族炭化水素構造、i2が1~12、好ましくは3~8、Ar203がベンゼン環構造、i3が0または1。好ましくは、Ar201は前記芳香族炭化水素構造であり、さらに好ましくはベンゼン環が1~5連結した構造であり、より好ましくはベンゼン環1つである。この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0378】
環A1または環A2に、デンドロンが結合した構造。例えば、Ar201、Ar202がベンゼン環構造、Ar203がビフェニルまたはターフェニル構造、i1、i2が1~6、i3が2、jが2。この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201およびB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、または、B201およびB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
201-L200-B202であらわされる構造のうち、好ましくは下記式(203)または(204)であらわされる構造である。
【0379】
【化64】
【0380】
式(203)において、R211、R212、R213は置換基を表す。この置換基としては、上述の置換基群Z2から選ばれる基が好ましい。
【0381】
【化65】
【0382】
式(204)において、環B3は、置換基を有していてもよい、窒素原子を含む芳香族複素環構造を表す。環B3は好ましくはピリジン環である。この有していてもよい置換基としては、上述の置換基群Z2から選ばれる基が好ましい。
【0383】
式(201)で表わされる燐光発光材料としては特に限定はされないが、具体的には以下の構造が挙げられる。
【0384】
【化66】
【0385】
【化67】
【0386】
【化68】
【0387】
燐光発光材料として、式(201)の他に式(205)で表される化合物を用いることもできる。
【0388】
【化69】
【0389】
式(205)中、Mは金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92~R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。
式(205)中、Mは金属を表す。具体例としては、周期表第7~11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金または金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の二価の金属が挙げられる。
【0390】
また、式(205)において、R92およびR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0391】
更に、Tが炭素原子の場合、R94およびR95は、それぞれ独立に、R92およびR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は該Tに直接結合するR94またはR95は存在しない。また、R92~R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記の置換基とすることができる。更に、R92~R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0392】
燐光発光材料の分子量は、好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。また、燐光発光材料の分子量は、通常800以上、好ましくは1000以上、更に好ましくは1200以上である。この分子量範囲であることによって、燐光発光材料どうしが凝集せず電荷輸送材料と均一に混合し、発光効率の高い発光層を得ることができると考えられる。
【0393】
燐光発光材料の分子量は、Tgや融点、分解温度等が高く、燐光発光材料及び形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーション等に起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇等が起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、燐光発光材料の分子量は、有機化合物の精製が容易である点では小さいことが好ましい。
重合体を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する電荷輸送性材料として用いた有機電界発光素子において、発光層が燐光発光材料である場合、ホスト材料としては以下の材料が好ましい。
【0394】
<ホスト材料(化合物)>
発光層のホスト材料(化合物)としては、前述した、式(CzP)、式(CzP-2)を有するものを用いることができる。また、発光材や、他のホスト材料が式(CzP)を有している場合は、適宜、式(CzP)、式(CzP-2)を有さないホスト材料を用いることもできる。この場合、骨格、分子量、置換基等は前述と同様である。
【0395】
重合体を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する電荷輸送性材料として用いた有機電界発光素子において、発光層が蛍光発光材料である場合、下記の青蛍光発光材料であることが好ましい。
青蛍光発光層用発光材料としては特に限定されないが、下記式(211)で表される化合物が好ましい。
【0396】
【化70】
【0397】
上記式(211)において、
Ar241は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素縮合環構造を表し、
Ar242、Ar243は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、芳香族炭化水素基またはこれらが結合した基を表す。
n41は1~4である。
【0398】
Ar241は好ましくは炭素数10~30の芳香族炭化水素縮合環構造を表し、具体的な構造としては、ナフタレン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナトレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレン等があげられる。
さらに好ましくは炭素数12~20の芳香族炭化水素縮合環構造であり、具体的な構造としては、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナトレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレンがあげられる。より好ましくは炭素数16~18の芳香族炭化水素縮合環構造であり、具体的な構造としては、フルオランテン、ピレン、クリセンがあげられる。

【0399】
n41は1~4であり、好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、最も好ましくは2である。
Ar241、Ar242、Ar243が有していてもよい置換基は、前記置換基群Z2から選ばれる基が好ましく、より好ましくは置換基群Z2に含まれる、炭化水素基であり、さらに好ましくは置換基群Z2として好ましい基の中の炭化水素基である。
【0400】
重合体を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する電荷輸送性材料として用いた有機電界発光素子において、発光層が燐光発光材料である場合、ホスト材料としては以下の材料が好ましい。
青蛍光発光層用ホスト材料としては特に限定されないが、下記式(212)で表される化合物が好ましい。
【0401】
【化71】
【0402】
[上記式(212)において、
241、R242はそれぞれ独立に式(213)で表わされる構造であり、
243は置換基を表し、R243は複数ある場合同一であっても異なっていてもよく、
n43は0~8である。]
【0403】
【化72】
【0404】
Ar244、Ar245はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、または置換基を有していてもよい複素芳香環構造を表し、
Ar244、Ar245はそれぞれ、複数存在する場合、同一であっても異なっていてもよく、
n44は1~5、n45は0~5である。
【0405】
Ar244は好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~30の単環または縮合環である芳香族炭化水素構造であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~12の単環または縮合環である芳香族炭化水素構造である。
Ar245は好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~30の単環または縮合環である芳香族炭化水素構造、または、置換基を有していてもよい、炭素数6~30の縮合環である芳香族複素環構造であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~12の単環または縮合環である芳香族炭化水素構造、または、置換基を有していてもよい、炭素数12の縮合環である芳香族複素環構造である。
【0406】
n44は好ましくは1~3であり、より好ましくは1または2であり、
n45は好ましくは0~3であり、より好ましくは0~2である。
置換基であるR243および、Ar244およびAr245が有していてもよい置換基は、前記置換基群Zから選ばれる基が好ましく、より好ましくは置換基群Zに含まれる、炭化水素基であり、さらに好ましくは置換基群Zとして好ましい基の中の炭化水素基である。
【0407】
青蛍光発光層用発光材料およびホスト材料の分子量は5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
【0408】
[湿式成膜法による発光層の形成]
発光層の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよいが、成膜性に優れることから、湿式成膜法が好ましく、スピンコート法及びインクジェット法が更に好ましい。特に、有機電界発光素子用組成物を用いて、発光層の下層となる正孔注入層又は正孔輸送層を形成すると、湿式成膜法による積層化が容易であるため、湿式成膜法を採用することが好ましい。湿式成膜法により発光層を形成する場合は、通常、上述の正孔注入層を湿式成膜法で形成する場合と同様にして、正孔注入層形成用組成物の代わりに、発光層となる材料を可溶な溶媒(発光層用溶媒)と混合して調製した発光層形成用組成物を用いて形成する。
【0409】
溶媒としては、例えば、正孔注入層の形成について挙げたエーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒の他、アルカン系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、脂環族アルコール系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒及び脂環族ケトン系溶媒等が挙げられる。以下に溶媒の具体例を挙げるが、本発明の効果を損なわない限り、これらに限定されるものではない。
【0410】
例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル系溶媒;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル系溶媒;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、3-イプロピルビフェニル、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;n-デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール系溶媒;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール系溶媒;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン系溶媒;シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン系溶媒等が挙げられる。これらのうち、アルカン系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒が特に好ましい。

【0411】
[正孔阻止層]
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
【0412】
このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メチル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-(2-メチル-8-キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11-242996号公報)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10-79297号公報)等が挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
【0413】
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上であり、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0414】
[電子輸送層]
電子輸送層7は素子の電流効率をさらに向上させることを目的として、発光層5と電子注入層8との間に設けられる。
電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し、注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
【0415】
電子輸送層に用いる電子輸送性化合物としては、具体的には、例えば、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体(特開昭59-194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3-ヒドロキシフラボン金属錯体、5-ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6-207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5-331459号公報)、2-t-ブチル-9,10-N,N’-ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
電子輸送層7の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子輸送層7は、前記と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により正孔阻止層6上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0416】
[電子注入層]
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率よく、電子輸送層7又は発光層5へ注入する役割を果たす。
電子注入を効率よく行うには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10-270171号公報、特開2002-100478号公報、特開2002-100482号公報等に記載)ことも、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。
【0417】
電子注入層8の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層8は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層5又はその上の正孔阻止層6や電子輸送層7上に積層することにより形成される。
湿式成膜法の場合の詳細は、前述の発光層の場合と同様である。
【0418】
[陰極]
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たす。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なう上では、仕事関数の低い金属を用いることが好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属又はそれらの合金等が用いられる。具体例としては、例えば、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、アルミニウム-リチウム合金等の低仕事関数の合金電極等が挙げられる。
【0419】
素子の安定性の点では、陰極の上に、仕事関数が高く、大気に対して安定な金属層を積層して、低仕事関数の金属からなる陰極を保護することが好ましい。積層する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。
【0420】
[その他の層]
有機電界発光素子は、本発明の効果を著しく損なわなければ、更に他の層を有していてもよい。すなわち、陽極と陰極との間に、上述の他の任意の層を有していてもよい。
【0421】
[その他の素子構成]
有機電界発光素子は、上述の説明とは逆の構造、即ち、基板上に陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に積層することも可能である。
有機電界発光素子を有機電界発光装置に適用する場合は、単一の有機電界発光素子として用いても、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成にして用いても、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構成にして用いてもよい。
【0422】
<有機EL表示装置>
本発明のさらに別の実施形態である有機EL表示装置(有機電界発光素子表示装置)は、上述の有機電界発光素子を備えたものである。有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、有機EL表示装置を形成することができる。
【0423】
<有機EL照明>
本発明のさらに別の実施形態である有機EL照明(有機電界発光素子照明)は、上述の有機電界発光素子を備えたものである。有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例
【0424】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
【0425】
<実験I>
<中間体の合成>
[化合物3の合成]
【化73】
【0426】
窒素気流下、化合物1(10.3g、36.58mmol)、化合物2(5.2g、24.39mmol)、リン酸カリウム(13.0g、60.98mmol)、トルエン(60ml)、エタノール(30ml)及び水(30ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.086g、0.122mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=85/15)により精製し、化合物3(4.4g、収率55.8%)を得た。
【0427】
[化合物4の合成]
【化74】
【0428】
窒素気流下、200mlのフラスコに50mlのジメチルスルホキシド、化合物3(4.4g、13.6mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(4.2g、16.34mmol)、酢酸カリウム(4.0g、40.83mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。その後、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジ
クロリド-ジクロロメタン〔PdCl(dppf)CHCl〕(0.56g、0.
68mmol)を加え、85℃で4時間反応した。
純水を滴下して反応液を減圧濾過し、濾液がトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=90/10)により精製し、化合物4(5.0g、収率98%)を得た。

【0429】
[化合物6の合成]
【化75】
【0430】
窒素気流下、化合物4(5.0g、13.5mmol)、化合物5(6.48g、14.46mmol)、リン酸カリウム(8.8g、41.31mmol)、トルエン(40ml)、エタノール(20ml)及び水(20ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.048g、0.069mmol)を加え、60℃で2時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=85/15)により精製し、化合物6(6.3g、収率81.0%)を得た。
【0431】
[化合物7の合成]
【化76】
【0432】
3-ニトロフェニルボロン酸(30.1g、180.3mmol)、1-ブロモ-3-イオドベンゼン(56.0g、197.94mmol)、リン酸カリウム(95.5g、450mmol)、及びトルエン(350ml)、エタノール(150ml)、水(225ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5.2g、4.5mmol)を加え、85℃で5時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=3/1)により精製し、化合物7(20.3g、収率41%)を得た。
【0433】
[化合物8の合成]
【化77】
【0434】
窒素気流下、500mlのフラスコに260mlの1,4-ジオキサン、化合物7(20.3g、72.99mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(22.2g、89.6mmol)、酢酸カリウム(35.9g、365.8mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。その後、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン〔PdCl(dppf)CHCl〕(1.8g、2.19mmol)を加え、85℃で3.5時間反応した。
純水を滴下して反応液を減圧濾過し、濾液がトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=1/1)により精製し、化合物8(19.1g、収率84%)を得た。
【0435】
[化合物9の合成]
【化78】
【0436】
化合物6(3.6g、6.4mmol)、化合物8(2.3g、7.03mmol)、リン酸カリウム(4.1g、19.21mmol)、及びトルエン(40ml)、エタノール(20ml)、水(10ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.2g、0.19mmol)を加え、85℃で3.5時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=1/1)により精製し、化合物9(3.5g、収率80.2%)を得た。
【0437】
[化合物10の合成]
【化79】
【0438】
窒素気流下、500mlのフラスコに350mlのテトラヒドロフラン、20mlのエタノール、化合物9(3.5g、5.13mmol)、パラジウム/炭素(10%、約55%水湿品、0.4g)を入れ、50℃で10分間攪拌した。その後、ヒラジン一水和物(1.8g)を滴下し、この温度で3時間反応した。
反応液を水湿のセライトで減圧濾過し、濾液を濃縮し、メタノールで洗って精製し、化合物10(3.0g、収率91%)を得た。

【0439】
[化合物12の合成]
【化80】
【0440】
窒素気流下、化合物11(5.0g、9.27mmol)、フェニルボロン酸(1.2g、9.46mmol)、リン酸カリウム(5.9g、27.8mmol)、トルエン(30ml)、エタノール(15ml)及び水(14ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.033g、0.046mmol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=85/15)により精製し、化合物12(4.1g、収率90.3%)を得た。
【0441】
[化合物13の合成]
【化81】
【0442】
窒素気流下、200mlのフラスコに35mlのジメチルスルホンキシド、化合物12(4.1g、8.38mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(3.2g、12.6mmol)、酢酸カリウム(2.5g、25.1mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。その後、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン〔PdCl(dppf)CHCl〕(0.34g、0.42mmol)を加え、85℃で3時間反応した。
反応液を減圧濾過し、濾液がトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=90/10)により精製し、化合物13(4.5g、収率97%)を得た。
【0443】
[化合物14の合成]
【化82】
【0444】
窒素気流下、化合物13(4.5g、8.39mmol)、3-ブロモ-9-(4-ヨードフェニル)-9H-カルバゾール(3.95g、8.81mmol)、リン酸カリウム(4.5g、20.98mmol)、トルエン(30ml)、エタノール(10ml)及び水(10.5ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.030g、0.042mmol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=75/25)により精製し、化合物14(2.2g、収率35.9%)を得た。
【0445】
[化合物15の合成]
【化83】
【0446】
次いで、化合物14(2.2g、3.01mmol)、化合物8(1.2g、3.61mmol)、リン酸カリウム(1.6g、7.5mmol)、及びトルエン(10ml)、エタノール(5ml)、水(4ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g、0.09mmol)を加え、85℃で4時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=50/50)により精製し、化合物15(1.75g、収率68.5%)を得た。
【0447】
[化合物16の合成]
【化84】
【0448】
窒素気流下、100mlのフラスコに20mlのテトラヒドロフラン、10mlのエタノール、化合物15(1.75g、2.06mmol)、パラジウム/炭素(10%、約55%水湿品、0.18g)を入れ、52℃で10分間攪拌した。その後、ヒトラジン一水和物(0.7g)を滴下し、この温度で8時間反応した。
反応液を水湿のセライトで減圧濾過し、濾液を濃縮し、エタノールで再結晶により精製し、化合物16(0.9g、収率53.3%)を得た。
【0449】
[化合物17の合成]
【化85】
【0450】
窒素気流下、300mlのフラスコに4-ブロモフェノール(11.6g、67.21mmol)、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(6.67g、30.55mmol)、100mlのN,N’-ジメチルホルムアミド、炭酸カリウム(16.9g、122.29mmol)を入れ、140℃で3時間攪拌した。その後、40℃の反応液を500mlの純水に入れ、10分間撹拌して減圧濾過し、ろ取物をエタノール、メタノールの順で懸洗して濾過し、乾燥し、化合物17(12.6g、収率78.6%)を得た。
【0451】
[化合物19の合成]
【化86】
【0452】
1Lフラスコにトルエンを270ml、エタノールを135ml、化合物18(20.0g、44.8mmol)、5-ブロモ-2-ヨードトルエンを50.72g(179.3mmol)、りん酸カリウム水溶液(2M、すなわち2モル/リットル濃度)191mlを入れた溶液を真空脱気後に窒素置換した。窒素気流下に加熱し、30分間攪拌した。その後ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.63g(0.90mmol)を加え、6時間還流した。反応液に水を入れ、トルエンで抽出し、MgSO4および活性白土で処理した。トルエン溶液を加熱還流したのち不溶物をろ過し、再結晶して無色固体の化合物19を得た(収量14.2g、収率60.2%)。
【0453】
[化合物20の合成]
【化87】
【0454】
5-ブロモ-2-ヨードトルエンに代えて1-ブロモ-4-イオドベンゼンを用いて、化合物19の合成と同様の方法で化合物20を合成した。
【0455】
[化合物22の合成]
【化88】

窒素気流下、化合物21(17.8g、33.0mmol)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニルボロン酸(9.5g、33.0mmol)、リン酸カリウム(21.0g、99.0mmol)、トルエン(100ml)、エタノール(50ml)及び水(50ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.12g、0.17mmol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=80/20)により精製し、化合物22(18.4g、収率85.2%)を得た。
【0456】
[化合物23の合成]
【化89】
【0457】
窒素気流下、300mlのフラスコに100mlのジメチルスルホンキシド、化合物22(18.2g、27.8mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(10.6g、41.7mmol)、酢酸カリウム(8.2g、83.4mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。その後、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン〔PdCl(dppf)CHCl〕(2.3g、2.78mmol)を加え、85℃で4.5時間反応した。
反応液を減圧濾過し、濾液がトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=90/10)により精製し、化合物23(17.7g、収率90.7%)を得た。
【0458】
[化合物24の合成]
【化90】
【0459】
次いで、化合物23(5.3g、7.49mmol)、3-ブロモ-9-(4-ヨードフェニル)-9H-カルバゾール(3.3g、7.34mmol)、リン酸カリウム(4.2g、19.82mmol)、トルエン(30ml)、エタノール(15ml)及び水(10ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.052g、0.073mmol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=75/25)により精製し、化合物24(4.8g、収率76.0%)を得た。
【0460】
[化合物26の合成]
【化91】
【0461】
次いで、化合物24(4.6g、5.13mmol)、化合物25(2.2g、6.67mmol)、炭酸カリウム(2.1g、15.4mmol)、及びトルエン(24ml)、エタノール(8ml)、水(8ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.18g、0.154mmol)を加え、85℃で3.5時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=60/40)により精製し、化合物26’(3.9g、収率74.9%)を得た。
【0462】
【化92】
【0463】
窒素気流下、300mlのフラスコに40mlのテトラヒドロフラン、40mlのエタノール、化合物26’(3.9g、3.84mmol)、パラジウム/炭素(10%、約55%水湿品、0.29g)を入れ、52℃で10分間攪拌した。その後、ヒトラジン一水和物(1.3g)を滴下し、この温度で5時間反応した。
反応液を水湿のセライトで減圧濾過し、濾液を濃縮し、エタノールで再結晶により精製し、化合物26(3.3g、収率87.2%)を得た。
【0464】
[化合物27の合成]
【化93】
【0465】
次いで、化合物3-ブロモ-3’-イオド-1,1-ビフェニル(29.4g、81.9mmol)、市販の化合物26(20.0g、81.9mmol)、リン酸カリウム(2M水溶液、103g、205mmol)、及びトルエン(200ml)、エタノール(100ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(2.37g、2.05mmol)を加え、85℃で6時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=950/50)により精製し、化合物27(23.1g、収率81%)を得た。
【0466】
[化合物28の合成]
【化94】
【0467】
化合物27(23.1g、66.1mmol)、市販の3-アミノフェニルボロン酸(9.8g、63.0mmol)、リン酸カリウム(2M水溶液、79g、158mmol)、及びトルエン(160ml)、エタノール(80ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.85g、1.6mmol)を加え、85℃で4時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=8/2)により精製し、化合物28(22.2g、収率92.9%)を得た。
【0468】
[化合物30の合成]
【化95】
【0469】
化合物26に代えて化合物29を用いて、化合物27の合成と同様の方法で化合物30を合成した。
【0470】
[化合物31の合成]
【化96】
【0471】
化合物27に代えて化合物30を用いて、化合物28の合成と同様の方法で化合物31を合成した。
【0472】
[化合物32の合成]
【化97】
【0473】
窒素気流下、東京化成市販品の2-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(4.5g、8.39mmol)、3-ブロモ-9-(4-ヨードフェニル)-9H-カルバゾール(3.95g、8.81mmol)、リン酸カリウム(4.5g、20.98mmol)、トルエン(30ml)、エタノール(10ml)及び水(10.5ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.030g、0.042mmol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=75/25)により精製し、化合物32(2.2g、収率35.9%)を得た。
【0474】
[化合物33の合成]
【化98】
【0475】
次いで、化合物32(2.2g、3.01mmol)、化合物8(1.2g、3.61mmol)、リン酸カリウム(1.6g、7.5mmol)、及びトルエン(10ml)、エタノール(5ml)、水(4ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g、0.09mmol)を加え、85℃で4時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=50/50)により精製し、化合物33(1.75g、収率68.5%)を得た。
【0476】
[化合物34の合成]
【化99】
【0477】
窒素気流下、100mlのフラスコに20mlのテトラヒドロフラン、10mlのエタノール、化合物33(1.75g、2.06mmol)、パラジウム/炭素(10%、約55%水湿品、0.18g)を入れ、52℃で10分間攪拌した。その後、ヒトラジン一水和物(0.7g)を滴下し、この温度で8時間反応した。
反応液を水湿のセライトで減圧濾過し、濾液を濃縮し、エタノールで再結晶により精製し、化合物34(0.9g、収率53.3%)を得た。
【0478】
[化合物35の合成]
【化100】
【0479】
3-ブロモ-9-フェニルー9H-カルバゾール(3.6g、6.4mmol)、化合物8(2.3g、7.03mmol)、リン酸カリウム(4.1g、19.21mmol)、及びトルエン(40ml)、エタノール(20ml)、水(10ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.2g、0.19mmol)を加え、85℃で3.5時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=1/1)により精製し、化合物35(3.5g、収率80.2%)を得た。
【0480】
[化合物36の合成]
【化101】
【0481】
窒素気流下、500mlのフラスコに350mlのテトラヒドロフラン、20mlのエタノール、化合物35(3.5g、5.13mmol)、パラジウム/炭素(10%、約55%水湿品、0.4g)を入れ、50℃で10分間攪拌した。その後、ヒトラジン一水和物(1.8g)を滴下し、この温度で3時間反応した。
反応液を水湿のセライトで減圧濾過し、濾液を濃縮し、メタノールで洗って精製し、化合物36(3.0g、収率91%)を得た。
【0482】
<実施例1>
[重合体1の合成]
以下の反応式に従い、重合体1を合成した。
【化102】
【0483】
化合物19(1.8g、3.4mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(1.89g、5.4mmol)、化合物10(0.883g、1.4mmol)、tert-ブトキシナトリウム(2.51g、26.1mmol)及びトルエン(32g、37ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A1)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.062g、0.07mmol)のトルエン11ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.14g、0.5mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B1)。
【0484】
窒素気流中、溶液A1に溶液B1を添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物19が消失したことを確認し、化合物20(1.49g、2.95mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.66g、4.2mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷し、トルエン73mlを添加して、エタノール/水(500ml/90ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
【0485】
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体1を得た(2.2g)。得られた重合体1の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=40000
数平均分子量(Mn)=29850
分散度(Mw/Mn)=1.34
【0486】
<実施例2>
[重合体2の合成]
以下の反応式に従い、重合体2を合成した。
【化103】
【0487】
化合物19(1.8g、3.4mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(1.3g、3.7mmol)、化合物10(1.99g、3.0mmol)、tert-ブトキシナトリウム(2.51g、26.1mmol)及びトルエン(32g、37ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A2)。
【0488】
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.062g、0.07mmol)のトルエン11ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.14g、0.5mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B2)。
【0489】
窒素気流中、溶液A2に溶液B2を添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物19が消失したことを確認し、化合物20(1.51g、2.99mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.66g、4.2mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷し、トルエン73mlを添加して、エタノール/水(500ml/90ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
【0490】
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体2を得た(2.6g)。得られた重合体2の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=39000
数平均分子量(Mn)=27080
分散度(Mw/Mn)=1.44
【0491】
<実施例3>
[重合体3の合成]
以下の反応式に従い、重合体3を合成した。
【化104】
【0492】
化合物19(1.2g、2.25mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(1.056g、3.02mmol)、化合物16(0.739g、0.90mmol)、化合物31(0.233g、0.59mmol)、tert-ブトキシナトリウム(1.67g、17.4mmol)及びトルエン(30g、35ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A3)。
【0493】
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.041g、0.045mmol)のトルエン11ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.096g、0.36mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B3)。
【0494】
窒素気流中、溶液A3に溶液B3を添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物19が消失したことを確認し、化合物17(0.91g、1.74mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.83g、5.3mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(200ml/20ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
【0495】
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体3を得た(1.2g)。得られた重合体3の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=19500
数平均分子量(Mn)=14770
分散度(Mw/Mn)=1.32
【0496】
<実施例4>
[重合体4の合成]
以下の反応式に従い、重合体4を合成した。
【化105】
【0497】
化合物19(2.0g、3.76mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(1.79g、5.12mmol)、化合物28(0.60g、1.66mmol)、化合物34(0.45g、0.75mmol)、tert-ブトキシナトリウム(2.78g、28.93mmol)及びトルエン(52g、60ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A4)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.069g、0.075mmol)のトルエン11.9ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.16g、0.6mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B4)。
【0498】
窒素気流中、溶液A4に溶液B4を添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物19が消失したことを確認し、化合物20(1.33g、2.6mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(1.77g、11.3mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷して、エタノール/水(315ml/50ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
【0499】
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体4を得た(2.8g)。得られた重合体4の分子量等は以下の通りであった。
【0500】
重量平均分子量(Mw)=15100
数平均分子量(Mn)=11100
分散度(Mw/Mn)=1.36
【0501】
<実施例5>
[重合体5の合成]
以下の反応式に従い、重合体5を合成した。
【化106】
【0502】
化合物19(1.7g、3.19mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(1.12g、3.20mmol)、化合物34(1.93g、3.19mmol)、tert-ブトキシナトリウム(2.37g、24.66mmol)及びトルエン(34g、39ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A5)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.059g、0.06mmol)のトルエン10ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.136g、0.51mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B5)。
【0503】
窒素気流中、溶液A5に溶液B5を添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物19が消失したことを確認し、化合物20(0.81g、1.61mmol)を添加して、1.5時間加熱還流後、化合物19(0.63g、1.18mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.65g、4.14mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷後、トルエン58mlを添加し、エタノール/水(270ml/43ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
【0504】
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体5を得た(2.7g)。得られた重合体5の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=38840
数平均分子量(Mn)=28990
分散度(Mw/Mn)=1.34
【0505】
[不溶化実験]
実施例で調製した重合体を用いて、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸ブチルに対する不溶化実験を行った。重合体1、2及び5をアニソールに溶解し塗布組成物を調製した。塗布組成物を用いてスライドガラス基板上でスピンコートにより110nm~130nmの膜を作製した。さらに、該膜を230℃、30分間熱処理した。その後、室温でそれぞれの膜の厚みを測定した。
さらに、それぞれの膜をシクロヘキシルベンゼンまたは安息香酸ブチルでリンス処理した。リンス処理は、溶媒130μlを塗布膜上に滴下して90秒静置した後、基板をスピンして実施した。リンス処理した膜をスライドガラス基板ごと加熱処理し、スライドガラス基板上の残留膜の膜厚を測定した。リンス処理前後の膜厚の比率(不溶化率)を表1に示した。
【0506】
【表1】
【0507】
表1に示された通り、加熱処理後の重合体1、2、5の有機膜は、シクロヘキシルベンゼンや安息香酸ブチルに溶解せず、湿式成膜可能であることが示された。
【0508】
<実験II>
<実施例6>
[重合体6の合成]
以下の反応式に従い、重合体6を合成した。
【化107】
【0509】
化合物19(1.3g、2.44mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(0.79g、2.25mmol)、化合物36(1.08g、2.64mmol)、tert-ブトキシナトリウム(1.81g、18.83mmol)及びトルエン(23g、27ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A6)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.045g、0.05mmol)のトルエン7ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.11g、0.42mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B6)。
【0510】
窒素気流中、溶液A6に溶液B6を添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物19が消失したことを確認し、化合物20(1.12g、2.22mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.35g、2.23mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷し、トルエン57mlを添加して、エタノール/水(240ml/50ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
【0511】
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体6を得た(1.8g)。得られた重合体6の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=41300
数平均分子量(Mn)=30150
分散度(Mw/Mn)=1.37
【0512】
<実施例7>
[重合体7の合成]
以下の反応式に従い、重合体7を合成した。
【0513】
【化108】
【0514】
化合物19( 1.5g、2.8mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(0.59g、1.7mmol)、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(0.59g、2.8mmol)、化合物28(1.11g、1.1mmol)、tert-ブトキシナトリウム(2.09g、21.7mmol)及びトルエン(24g、27.7ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A3)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.052g、0.06mmol)のトルエン3.3ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.12g、0.5mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B3)。
窒素気流中、溶液A3に溶液B3を添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物19が消失したことを確認し、化合物20(1.30g、2.6mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.44g、2.8mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷し、トルエン40mlを添加して、エタノール/水(500ml/90ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体7を得た(1.7g)。得られた重合体7の分子量等は以下の通りであった。
【0515】
重量平均分子量(Mw)=40000
数平均分子量(Mn)=29600
分散度(Mw/Mn)=1.35
【0516】
[素子実施例]
以下、重合体1、5、6、7および、重合体HT-1を用いて素子を作成しその性能を評価した結果を示す。本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
【0517】
<実施例8>
有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を50nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。このようにITOをパターン形成した基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0518】
正孔注入層形成用組成物として、下記式(P1)の繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子化合物3.0重量%と、酸化剤(HI-1)0.6重量%とを、安息香酸エチルに溶解させた組成物を調製した。
【0519】
【化109】
【0520】
この溶液を、大気中で上記基板上にスピンコートし、大気中ホットプレート240℃、30分で乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、正孔注入層とした。
次に、下記の重合体5を有する電荷輸送性高分子化合物100質量部を、シクロヘキシルベンゼンに溶解させ、1.5wt%の溶液を調製した。
【化110】
【0521】
この溶液を、上記正孔注入層を塗布成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで230℃、30分間乾燥させ、膜厚25nmの均一な薄膜を形成し、正孔輸送層とした。
【0522】
引続き、発光層の材料として、下記の構造式(H-1)を95質量部、(D-1)を5質量部秤量し、シクロヘキシルベンゼンに溶解させ4.0wt%の溶液を調製した。
【化111】
【0523】
この溶液を、上記正孔輸送層を塗布成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで120℃、20分間乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、発光層とした。
発光層までを成膜した基板を真空蒸着装置に設置し、装置内を2×10-4Pa以下になるまで排気した。
次に、下記の構造式(HB-1)および8-ヒドロキシキノリノラトリチウムを2:3の膜厚比で、発光層上に真空蒸着法にて1Å/秒の速度で共蒸着し、膜厚30nmの正孔阻止層を形成した。
【化112】
【0524】
続いて、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように基板に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置した。そし陰極として、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度1~8.6Å/秒で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極を形成した。以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。

【0525】
<実施例9>
正孔輸送層を、重合体1としたこと以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【化113】
【0526】
<比較例1>
正孔輸送層を、(HT-1)としたこと以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【化114】
【0527】
[素子の評価]
得られた実施例8、9、および比較例1の有機電界発光素子の特性を表にまとめた。相対発光効率は、輝度1000cd/mで発光させたときの電流発光効率(cd/A)を測定し、比較例の電流発光効率で実施例の電流発光効率を除して相対値を求め、比較例を100としたときの相対値とした。100を超えていることは電流発光効率が高いこと
を示す。相対電圧は、電流密度10mA/cmで発光させたときの電圧(V)を測定し、比較例1の電圧を基準としたときの差(V)である。負の値であることは低電圧化していることを示す。本発明の要旨1の重合体を含む正孔輸送層を有する有機電界素子は、比較例の有機電界素子より、効率が向上し、かつ低電圧化することが分かった。

【0528】
【表2】
【0529】
<実施例10>
正孔輸送層を重合体5とし、発光層組成を(H-2):(H-3):(D-2)=60:40:15の膜厚75nmの薄膜としたこと以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。(H-2)、(H-3)および(D-2)を下記に示す。
【化115】
【0530】
<比較例2>
正孔輸送層を(HT-1)としたこと以外は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0531】
[素子の評価]
得られた実施例10、および比較例2の有機電界発光素子の特性を表にまとめた。相対電流効率および相対電圧は、表と同義である。表の結果に表すが如く、第2の要旨である、本発明の正孔輸送層および発光層組成を有する有機電界素子は、比較例の有機電界素子より、効率が向上し、かつ低電圧化することが分かった。

【0532】
【表3】
【0533】
<実施例11>
正孔注入層を(P1):(HI-1)=100:20の膜厚60nmの薄膜とし、正孔輸送層を重合体5の膜厚25nmの薄膜とし、発光層組成を(H-4):(H-5):(D-2)=60:40:15の膜厚70nmの薄膜としたこと以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。(H-4)、(H-5)を下記に示す。
【化116】
【0534】
<比較例3>
正孔輸送層を重合体6とし、発光層組成を(H-6):(H-7):(D-2)=60:40:15の膜厚70nmの薄膜としたこと以外は、実施例4と同様にして素子を作製した。(H-6)、(H-7)を下記に示す。
【化117】
【0535】
<参考例1>
正孔輸送層を重合体6とし、発光層組成を実施例4と同様にしたこと以外は、実施例4と同様にして素子を作製した。
【0536】
<参考例2>
正孔輸送層を重合体5とし、発光層組成を比較例3と同様にしたこと以外は、実施例4と同様にして素子を作製した。
【0537】
[素子の評価]
得られた実施例10と参考例1の有機電界発光素子の特性を表にまとめた。相対電流効率は、輝度1000cd/mで発光させたときの電流効率(cd/A)を測定し、参考例1を100としたときの相対値とした。相対電圧は、電流密度10mA/cmで発光させたときの電圧(V)を測定し、参考例1の電圧を基準としたときの差(V)とした。表の結果に表すが如く、本発明の第1の要旨である重合体を正孔輸送層に含む有機電界素子は、効率が向上することが分かった。
【表4】


【0538】
得られた参考例2と比較例3の有機電界発光素子の特性を表にまとめた。相対電流効率は、輝度1000cd/mで発光させたときの電流効率(cd/A)を測定し、比較例3を100としたときの相対値とした。相対電圧は、電流密度10mA/cmで発光させたときの電圧(V)を測定し、比較例3の電圧を基準としたときの差(V)とした。表の結果に表すが如く、本発明の第1の要旨である重合体を正孔輸送層に含む有機電界素子は、効率が向上することが分かった。
【表5】


【0539】
得られた実施例10と参考例2の有機電界発光素子の特性を表にまとめた。相対電流効率は、輝度1000cd/mで発光させたときの電流効率(cd/A)を測定し、参考例2を100としたときの相対値とした。相対電圧は、電流密度10mA/cmで発光させたときの電圧(V)を測定し、参考例2の電圧を基準としたときの差(V)とした。表の結果に表すが如く、本発明の第1の要旨である重合体を正孔輸送層に含む有機電界素子において、本発明の第2の要旨を満たす発光層を有する場合、効率が向上することが分かった。

【0540】
【表6】
【0541】
得られた実施例10、参考例1、及び比較例3の有機電界発光素子の特性を表にまとめた。相対電流効率は、輝度1000cd/mで発光させたときの電流効率(cd/A)を測定し、比較例3を100としたときの相対値とした。相対電圧は、電流密度10mA/cmで発光させたときの電圧(V)を測定し、比較例3の電圧を基準としたときの差(V)とした。表の結果に表すが如く、本発明の第1の要旨である重合体を正孔輸送層に含む有機電界素子の発光効率が向上することが分かるとともに、比較例3と、実施例10及び参考例1の比較から本発明の第3の要旨を満たす有機電界発光素子の発光効率が向上することが分かった。

【0542】
【表7】
【0543】
<実施例12>
[重合体8の合成]
以下の反応式に従い、重合体8を合成した。
【化118】
【0544】
化合物19(1.5g、2.8mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(1.245g、3.6mmol)、化合物28(0.342g、0.9mmol)、化合物26(1.11g、1.1mmol)、tert-ブトキシナトリウム(2.09g、21.7mmol)及びトルエン(24g、27.7ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A8)。
【0545】
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.052g、0.06mmol)のトルエン3.3ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.12g、0.5mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B8)。
【0546】
窒素気流中、溶液A8に溶液B8を添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物19が消失したことを確認し、化合物20(1.22g、2.4mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(1.24g、7.9mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷し、トルエン40mlを添加して、エタノール/水(500ml/90ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
【0547】
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体8を得た(2.1g)。得られた重合体8の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=39800
数平均分子量(Mn)=29920
分散度(Mw/Mn)=1.33
【0548】
[重合体の励起一重項エネルギー準位(S1)および励起三重項エネルギー準位(T1)の測定]
各重合体1と重合体8を2-メチルテトラヒドロフランに溶解させて濃度1重量%溶液を調製した。この溶液試料を蛍光分光光度計(日立 蛍光分光光度計F-4500)で励起波長350nm、液体窒素による冷却条件下で蛍光発光スペクトルおよびリン光発光スペクトルを測定した。得られた蛍光発光スペクトル、リン光発光スペクトルにおいて最も短波長側にある発光ピークのピークトップ波長からS1準位、T1準位を得た。測定結果を表に示す。
Arの末端がカルバゾールである重合体8よりもカルバゾールでない重合体1の方が、T1順位が高い結果となった。これは、カルバゾールが一つの場合、2つのカルバゾール同士が共役している場合と比較して共役長が短くなることにより、分子のエネルギーキャップが広くなり、T1レベルが高くなると考えられる。T1が高いことで、発光層からのエネルギーが正孔輸送層に移りにくく、発光効率が高い有機EL素子を実現できると考えられる。

【0549】
【表8】
【0550】
[計算による電子状態の確認]
計算により、以下重合体ユニット1~5の電子状態を確認した。
電子状態の計算には、ソフトウェアGaussian 09, Revision B.01,(下記※参照)を用いた。その際、量子化学計算法として、密度汎関数法(Density Functional Theory)を採用し、汎関数にはB3LYPを用い、基底関数としては6-31Gを用いて基底状態の構造最適化計算を実施した。HOMO、LUMOの表示(関数値0.03 a.u.)にはソフトウェア MolStudio R4.0 Rev 2.0 Pprogram(NEC Corporaion)を利用した。
本計算の結果は、図2~4に示す。図2、3から、重合体ユニット1、2では、HOMOが主鎖のN近傍に存在し、LUMOが側鎖の末端側に局在していることがわかる。また、図4から、HOMOは、ユニット3~ユニット5いずれも主鎖のN近傍に存在しており、LUMOは、式(1)のArが存在し、環が多いほど、カルバゾール環よりもより末端側に分布し、局在化することがわかる。
【0551】
※Gaussian 09, Revision B.01,
M.J.Frisch, G.W.Trucks, H.B.Schlegel, G.E.Scuseria, M.A.Robb, J.R.Cheeseman, G.Scalmani, V.Barone, B.Mennucci, G.A.Petersson, H.Nakatsuji, M.Caricato, X.Li, H.P.Hratchian, A.F.Izmaylov, J.Bloino, G.Zheng, J.L.Sonnenberg, M.Hada, M.Ehara, K.Toyota, R.Fukuda, J.Hasegawa, M.Ishida, T.Nakajima, Y.Honda, O.Kitao, H.Nakai, T.Vreven, J.A.Montgomery,Jr., J.E.Peralta, F.Ogliaro, M.Bearpark, J.J.Heyd, E.Brothers, K.N.Kudin, V.N.Staroverov, T.Keith, R.Kobayashi, J.Normand, K.Raghavachari, A.Rendell, J.C.Burant, S.S.Iyengar, J.Tomasi, M.Cossi, N.Rega, J.M.Millam, M.Klene, J.E.Knox, J.B.Cross, V.Bakken, C.Adamo, J.Jaramillo, R.Gomperts, R.E.Stratmann, O.Yazyev, A.J.Austin, R.Cammi, C.Pomelli, J.W.Ochterski, R.L.Martin, K.Morokuma, V.G.Zakrzewski, G.A.Voth, P.Salvador, J.J.Dannenberg, S.Dapprich, A.D.Daniels, O.Farkas, J.B.Foresman, J.V.Ortiz, J.Cioslowski, and D.J.Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2010.
【0552】
[重合体ユニット1]
【化119】
【0553】
[重合体ユニット2]
【化120】
【0554】
[重合体ユニット3、4、5]
【化121】
【0555】
<実験III>
<実施例13>
有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を130nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。このようにITOをパターン形成した基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0556】
正孔注入層形成用組成物として、下記式(P1)の繰り返し構造を有する正孔輸送性重合体100重量部と、下記式(HI-1)で表わされる化合物10重量部を秤量し、安息香酸エチルに溶解させ3.0wt%の組成物を調整した。
【0557】
【化122】
【0558】
この溶液を、大気中で上記基板上にスピンコートし、大気中ホットプレート230℃、30分で乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、正孔注入層とした。
次に、重合体7である電荷輸送性重合体100質量部を、シクロヘキシルベンゼンに溶解させ、3.0wt%の溶液を調製した。
この溶液を、上記正孔注入層を塗布成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで230℃、30分間乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、正孔輸送層とした。
【0559】
引続き、発光層の材料として、下記の構造式(H-2)を40質量部、下記の構造式(H-5)を60質量部、および下記構造式(D-2)を20重量部秤量し、シクロヘキシルベンゼンに溶解させ7.8wt%の溶液を調製した。
【0560】
【化123】
【0561】
この溶液を、上記正孔輸送層を塗布成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで130℃、20分間乾燥させ、膜厚80nmの均一な薄膜を形成し、発光層とした。
発光層までを成膜した基板を真空蒸着装置に設置し、装置内を2×10-4Pa以下になるまで排気した。
【0562】
次に、下記の構造式(HB-1)および8-ヒドロキシキノリノラトリチウムを2:3の膜厚比で、発光層上に真空蒸着法にて1Å/秒の速度で共蒸着し、膜厚30nmの正孔阻止層を形成した。
【0563】
【化124】
【0564】
続いて、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように基板に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置した。そし陰極として、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度1~8.6Å/秒で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極を形成した。以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この素子は、正孔輸送層および発光層に、式(CzP)を部分構造として有する材料を含有する。

【0565】
<比較例4>
正孔輸送層化合物を、重合体7からHT-2に変更したこと以外は、実施例13と同様にして素子を作製した。
【0566】
【化125】
【0567】
[素子の評価]
実施例13および比較例4で得られた有機電界発光素子の電圧および駆動寿命の評価を行った結果を表に示す。電圧は10mA/cm 通電した時の電圧を測定し、比較例4の素子の電圧を基準として実施例13の素子の電圧と比較例4の素子の電圧との差を求め、相対電圧[V]とした。また、素子を40mA/cm で駆動させ、15%輝度減衰寿命(LT85)を測定し、比較例4の15%減衰寿命を基準として1とした場合の比を相対寿命として求めた。それらを、表に示す。表の結果に表すが如く、正孔輸送層(HTL)および発光層(EML)の両方に式(CzP)を部分構造として有する材料を含有
する材料を用いた有機電界発光素子では、電圧が低く、寿命が長いことが分かる。

【0568】
【表9】
【0569】
<実施例14>
発光層組成を(H-8):(H-5):(D-2)=40:60:20としたこと以外は、実施例13と同様にして素子を作製した。(H-3)の構造式を下記に示す。
【0570】
【化126】
【0571】
<比較例5>
発光層組成を(H-8):(H-9):(D-2)=40:60:20としたこと以外は、実施例13と同様にして素子を作製した。
【0572】
【化127】
【0573】
<比較例6>
正孔輸送層をHT-2、発光層組成を(H-8):(H-9):(D-2)=40:6
0:20としたこと以外は、実施例13と同様にして素子を作製した。
【0574】
[素子の評価]
得られた実施例14、比較例5、および比較例6の有機電界発光素子を、実施例13、比較例4と同様にして相対電圧、相対寿命を求めた。このとき、比較例6を基準とした。それらを、表10に示す。表10の結果に表すが如く、正孔輸送層および発光層の両方に式(CzP)を部分構造として有する材料を含有する材料を用いた有機電界発光素子では、電圧が低く、かつ寿命が長いことが分かる。

【0575】
【表10】
【0576】
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0577】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 有機電界発光素子
図1
図2
図3
図4