(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】検出値補正システム、係数算出方法、及び検出値補正方法
(51)【国際特許分類】
G01R 35/00 20060101AFI20240611BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20240611BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20240611BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01R35/00 A
G01R33/02 X
G01R33/02 D
G01N23/04
G01N27/72
(21)【出願番号】P 2021504983
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009342
(87)【国際公開番号】W WO2020184361
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2019045780
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】ニデックアドバンステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】楠田 達文
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142568(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092336(WO,A1)
【文献】特開2013-079825(JP,A)
【文献】国際公開第2013/089155(WO,A1)
【文献】特開2007-85835(JP,A)
【文献】特開2010-190775(JP,A)
【文献】特開昭56-120916(JP,A)
【文献】特開2016-128825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 35/00
G01R 19/00
G01R 15/20
G01N 27/72
G01N 23/04
G01B 15/00
G01K 11/30
G01F 1/00
G01F 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサの検出値を補正する検出値補正システムであって、
前記複数のセンサのうち、補正対象となるセンサである注目センサの検出値を、少なくとも当該注目センサと隣接する第一センサの検出値に基づいて補正する補正処理を実行する補正処理部を備え
、
第二センサは、前記第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接し、
前記補正処理は、さらに、前記注目センサに対して前記第一センサが与える影響を表す第一係数に基づいて前記注目センサの検出値を補正し、前記注目センサに対して前記第二センサが与える影響を表す第二係数に基づいて前記注目センサの検出値を補正し、
前記第二係数は、前記第一係数よりも小さい検出値補正システム。
【請求項2】
前記第二係数は、前記第一係数の二乗である、請求項1に記載の検出値補正システム。
【請求項3】
前記補正処理は、前記注目センサの検出値をB
n、前記注目センサの一方の側に隣接する第一センサの検出値をB
n+1、前記注目センサの他方の側に隣接する第一センサの検出値をB
n-1、前記注目センサの一方の側に隣接する第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値をB
n+2、前記注目センサの他方の側に隣接する第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値をB
n-2、前記第一係数をk
1、前記第二係数をk
2とした場合に、前記注目センサの検出値の補正値C
nを、下記の式(1)に基づき算出する処理である請求項
1に記載の検出値補正システム。
C
n=k
2B
n-2-k
1B
n-1+B
n-k
1B
n+1+k
2B
n+2 ・・・(1)
【請求項4】
(a)前記一列に配置された複数のセンサに対して前記物理量が付与された状態で、前記各センサの検出値を取得する工程と、
(b)複数の前記第一係数k
1に対して互いに異なる値を仮に付与し、当該仮の値が付与された前記第一係数k
1のそれぞれに対応して、
(b1)前記複数のセンサに追い番を付してセンサ1~Qとし、センサ1~Qのうち任意のX番のセンサXの検出値をB
X、前記センサXの一方の側に隣接するX+1番のセンサ(X+1)の検出値をB
X+1、前記センサXの他方の側に隣接するX-1番のセンサ(X-1)の検出値をB
X-1、前記センサ(X+1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX+2番のセンサ(X+2)の検出値をB
X+2、前記センサ(X-1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX-2番のセンサ(X-2)の検出値をB
X-2、前記第二係数をk
2とし、Xが3~(Q-2)の場合について、下記の式(2)に基づいて値D
Xを算出し、
(b2)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるnについて、隣り合うセンサn及びセンサ(n-1)の値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗が最大となる値D(n)及び値D(n-1)を探索し、当該最大となる値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗をMAX[{D(n)-D(n-1)}
2]として算出し、
(b3)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるmについて、隣り合うセンサm及びセンサ(m-1)の値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗が最小となる値D(m)及び値D(m-1)を探索し、当該最小となる値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗をMIN[{D(m)-D(m-1)}
2]として算出し、
(b4)下記の式(3)に基づいて、複数の前記第一係数k
1の値に対応する複数の評価値U(k
1)を算出する工程と、
(c)前記複数の評価値U(k
1)のうち、最大の評価値U(k
1)を探索し、当該最大の評価値U(k
1)に対応する第一係数k
1と、その第一係数k
1から得られた第二係数k
2とを、前記補正処理で用いるための前記第一係数及び前記第二係数として確定する工程とを実行する係数算出処理部をさらに備える請求項
3に記載の検出値補正システム。
D(X)=k
2B
X-2-k
1B
X-1+B
X-k
1B
X+1+k
2B
X+2 ・・・(2)
U(k
1)=MAX[{D(n)-D(n-1)}
2]-MIN[{D(m)-D(m-1)}
2] ・・・(3)
【請求項5】
前記第二係数k
2は、下記の式(4)に基づき得られる請求項
3又は4に記載の検出値補正システム。
k
2=k
1
2 ・・・(4)
【請求項6】
前記第二係数k
2は、下記の式(5)に基づき得られる請求項
3又は4に記載の検出値補正システム。
k
2=k
1-1/2 ・・・(5)
【請求項7】
前記第二係数k
2は、下記の式(6)に基づき得られる請求項
3又は4に記載の検出値補正システム。
k
2=k
1/4 ・・・(6)
【請求項8】
前記第一係数k
1は0.5より大きく、1より小さい請求項
3~7のいずれか1項に記載の検出値補正システム。
【請求項9】
前記各センサは、前記物理量を検出する際に、当該各センサ周辺の他のセンサの検出値に対して影響を与える請求項
1~8のいずれか1項に記載の検出値補正システム。
【請求項10】
前記物理量は磁界であり、
前記各センサはMIセンサである請求項
1~9のいずれか1項に記載の検出値補正システム。
【請求項11】
前記物理量はX線であり、
前記各センサは、前記X線により発光する蛍光板と、前記蛍光板の発光を検出する光センサとを備えるX線センサである請求項
1~9のいずれか1項に記載の検出値補正システム。
【請求項12】
前記物理量は流体の流量又は流速であり、
前記各センサは、前記流体の流れる方向に対して交差する方向に前記列が延びるように配置されている請求項
1~9のいずれか1項に記載の検出値補正システム。
【請求項13】
前記複数のセンサをさらに備える請求項
1~12のいずれか1項に記載の検出値補正システム。
【請求項14】
一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサのうちの一つについて、そのセンサに対して当該センサと隣接する第一センサが与える影響を表す第一係数k
1と、前記第一センサに対して前記一つのセンサと逆方向に隣接する第二センサが与える影響を表す第二係数k
2とを算出する係数算出方法であって、
(a)前記一列に配置された複数のセンサに対して不均一に前記物理量が付与された状態で、前記各センサの検出値を取得する工程と、
(b)複数の前記第一係数k
1に対して互いに異なる値を仮に付与し、当該仮の値が付与された前記第一係数k
1のそれぞれに対応して、
(b1)前記複数のセンサに追い番を付してセンサ1~Qとし、センサ1~Qのうち任意のX番のセンサXの検出値をB
X、前記センサXの一方の側に隣接するX+1番のセンサ(X+1)の検出値をB
X+1、前記センサXの他方の側に隣接するX-1番のセンサ(X-1)の検出値をB
X-1、前記センサ(X+1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX+2番のセンサ(X+2)の検出値をB
X+2、前記センサ(X-1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX-2番のセンサ(X-2)の検出値をB
X-2、前記第二係数をk
2とし、Xが3~(Q-2)の場合について、下記の式(2)に基づいて値D
Xを算出し、
(b2)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるnについて、隣り合うセンサn及びセンサ(n-1)の値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗が最大となる値D(n)及び値D(n-1)を探索し、当該最大となる値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗をMAX[{D(n)-D(n-1)}
2]として算出し、
(b3)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるmについて、隣り合うセンサm及びセンサ(m-1)の値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗が最小となる値D(m)及び値D(m-1)を探索し、当該最小となる値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗をMIN[{D(m)-D(m-1)}
2]として算出し、
(b4)下記の式(3)に基づいて、複数の前記第一係数k
1の値に対応する複数の評価値U(k
1)を算出する工程と、
(c)前記複数の評価値U(k
1)のうち、最大の評価値U(k
1)を探索し、当該最大の評価値U(k
1)に対応する第一係数k
1と、その第一係数k
1から得られた第二係数k
2と
を確定する工程とを含む係数算出方法。
D(X)=k
2B
X-2-k
1B
X-1+B
X-k
1B
X+1+k
2B
X+2 ・・・(2)
U(k
1)=MAX[{D(n)-D(n-1)}
2]-MIN[{D(m)-D(m-1)}
2] ・・・(3)
【請求項15】
一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサの検出値を補正する検出値補正方法であって、
前記検出値補正方法は、前記複数のセンサのうち、補正対象となるセンサである注目センサの検出値を、少なくとも当該注目センサと隣接する第一センサの検出値に基づいて補正する補正処理を実行
し、
前記補正処理は、さらに、前記注目センサに対して前記第一センサが与える影響を表す第一係数に基づいて前記注目センサの検出値を補正し、前記第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値に基づいて前記注目センサの検出値を補正し、前記注目センサに対して前記第二センサが与える影響を表す第二係数に基づいて前記注目センサの検出値を補正し、
前記第二係数は、前記第一係数よりも小さい。
【請求項16】
前記第二係数は、前記第一係数の二乗である、請求項15に記載の検出値補正方法。
【請求項17】
前記補正処理は、さらに、前記第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値と前記注目センサに対して前記第二センサが与える影響を表す第二係数とに基づいて、
前記注目センサの検出値をB
n、前記注目センサの一方の側に隣接する第一センサの検出値をB
n+1、前記注目センサの他方の側に隣接する第一センサの検出値をB
n-1、前記注目センサの一方の側に隣接する第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値をB
n+2、前記注目センサの他方の側に隣接する第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値をB
n-2
、第一係数をk
1
、第二係数をk
2とした場合に、前記注目センサの検出値の補正値C
nを、下記の式(1)に基づき算出する処理である請求項
15に記載の検出値補正方法。
C
n=k
2B
n-2-k
1B
n-1+B
n-k
1B
n+1+k
2B
n+2 ・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの検出値を補正する検出値補正システム、検出値補正方法、及び検出値の補正に用いられる係数を算出する係数算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アモルファスワイヤと、アモルファスワイヤの周囲に巻回されるコイルとを備えたMI(Magneto Impedance)センサが知られている。また、MIセンサを一列に並べた磁気センサアレイによって、磁気の分布を検出することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、上述のMIセンサによって磁気の分布を検出する場合、分布位置の分解能は、MIセンサの隣接ピッチで決まる。従って、分布位置の分解能を高めるためには、MIセンサの隣接ピッチを小さくする必要があると考えられる。しかしながら、MIセンサの隣接ピッチを小さくすると、MIセンサの動作原理に起因して、下記のような問題が発生することが考えられる。
【0005】
MIセンサのアモルファスワイヤにパルス電流を流すと、その電流により生じた磁界によって、アモルファスワイヤ内のスピンの向きが、アモルファスワイヤと直交する方向に揃えられる。この状態で電流がゼロになり、電流による磁界が消えると各スピンの向きは、外部磁界に応じた方向に向く。このように、アモルファスワイヤと直交する方向から外部磁界に応じた方向にスピンが変化することで、外部磁界に応じた強度の磁束が発生する。この磁束の変化に応じてコイルに起電力が発生する。従って、MIセンサは、外部磁界に応じた起電力がコイルに発生することによって、外部磁界を検出する。
【0006】
しかしながら、スピンの方向変化に伴う磁束は、ある程度、周辺に拡がって生じる。そのため、MIセンサの隣接ピッチが小さいと、あるMIセンサのスピンの方向変化に応じて生じた磁束が、その周辺のMIセンサまで到達し、そのMIセンサで検出される。その結果、隣接するMIセンサでの磁界の検出精度が低下するおそれがある。
【0007】
MIセンサと同様に、MIセンサ以外のセンサでも、複数のセンサを並べることによって各センサがその周辺の他のセンサの検出値に対して影響を与える場合、センサの隣接ピッチを小さくすると、センサの検出精度が低下するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、一列に配置された各センサの検出値を補正することが容易な検出値補正システム、検出値補正方法、及び検出値の補正に用いられる係数を算出する係数算出方法を提供することである。
【0009】
本発明の一例に係る検出値補正システムは、一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサの検出値を補正する検出値補正システムであって、前記複数のセンサのうち、補正対象となるセンサである注目センサの検出値を、少なくとも当該注目センサと隣接する第一センサの検出値に基づいて補正する補正処理を実行する補正処理部を備える。
【0010】
また、本発明の一例に係る検出値補正方法は、一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサの検出値を補正する検出値補正方法であって、前記複数のセンサのうち、補正対象となるセンサである注目センサの検出値を、少なくとも当該注目センサと隣接する第一センサの検出値に基づいて補正する補正処理を実行する。
【0011】
また、本発明の一例に係る係数算出方法は、一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサのうちの一つについて、そのセンサに対して当該センサと隣接する第一センサが与える影響を表す第一係数k1と、前記第一センサに対して前記一つのセンサと逆方向に隣接する第二センサが与える影響を表す第二係数k2とを算出する係数算出方法であって、(a)前記一列に配置された複数のセンサに対して不均一に前記物理量が付与された状態で、前記各センサの検出値を取得する工程と、(b)複数の前記第一係数k1に対して互いに異なる値を仮に付与し、当該仮の値が付与された前記第一係数k1のそれぞれに対応して、(b1)前記複数のセンサに追い番を付してセンサ1~Qとし、センサ1~Qのうち任意のX番のセンサXの検出値をBX、前記センサXの一方の側に隣接するX+1番のセンサ(X+1)の検出値をBX+1、前記センサXの他方の側に隣接するX-1番のセンサ(X-1)の検出値をBX-1、前記センサ(X+1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX+2番のセンサ(X+2)の検出値をBX+2、前記センサ(X-1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX-2番のセンサ(X-2)の検出値をBX-2、前記第二係数をk2とし、Xが3~(Q-2)の場合について、下記の式(2)に基づいて値DXを算出し、(b2)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるnについて、隣り合うセンサn及びセンサ(n-1)の値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗が最大となる値D(n)及び値D(n-1)を探索し、当該最大となる値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗をMAX[{D(n)-D(n-1)}2]として算出し、(b3)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるmについて、隣り合うセンサm及びセンサ(m-1)の値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗が最小となる値D(m)及び値D(m-1)を探索し、当該最小となる値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗をMIN[{D(m)-D(m-1)}2]として算出し、(b4)下記の式(3)に基づいて、複数の前記係数k1の値に対応する複数の評価値U(k1)を算出する工程と、(c)前記複数の評価値U(k1)のうち、最大の評価値U(k1)を探索し、当該最大の評価値U(k1)に対応する第一係数k1と、その第一係数k1から得られた第二係数k2とを、前記補正処理で用いるための前記第一係数及び前記第二係数として確定する工程とを含む。
【0012】
D(X)=k2BX-2-k1BX-1+BX-k1BX+1+k2BX+2 ・・・(2)
U(k1)=MAX[{D(n)-D(n-1)}2]-MIN[{D(m)-D(m-1)}2] ・・・(3)
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検出値補正方法を用いる磁気測定装置の構成の一例を概念的に示す説明図である。
【
図2】
図1に示す磁気測定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】係数k
2、-k
1、1、-k
1、k
2をグラフ化した説明図である。
【
図4】係数k
2、-k
1、1、-k
1、k
2をグラフ化した説明図である。
【
図5】係数k
2、-k
1、1、-k
1、k
2をグラフ化した説明図である。
【
図6】係数k
2、-k
1、1、-k
1、k
2をグラフ化した説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る係数算出方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る係数算出方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る検出値補正方法を用いるX線測定装置の構成の一例を概念的に示す説明図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る検出値補正方法を適用可能なセンサの構成の一例を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1に示す磁気測定装置1は、本発明に係る検出値補正システムの一例に相当している。
【0015】
図1に示す磁気測定装置1は、磁気センサアレイ2、電源3、複数の電圧測定部4、及び演算処理部5を備えている。磁気センサアレイ2は、アモルファスワイヤ21と、1~10のセンサ番号が付された複数のセンサM1~M10(センサ)とを備えている。以下、センサM1~M10を総称してセンサMと称する。センサMは、磁界の強度を検出する、いわゆるMIセンサ(磁気インピーダンスセンサ)である。
【0016】
アモルファスワイヤ21は、例えばCoFeSiB等の、線状の磁性導体である。アモルファスワイヤ21は、例えば直径100μm以下とされている。アモルファスワイヤ21の外周には、例えばアクリル系樹脂の絶縁体層が形成されている。なお、アモルファスワイヤ21に代えて、線状体に磁気異方性薄膜を被覆したもの、又は、Ni-Fe合金であるパーマロイ等のワイヤを採用することも可能である。
【0017】
アモルファスワイヤ21には、複数のコイルLが、互いに予め設定された間隔dずつ離間して一列に巻回されている。アモルファスワイヤ21と、その外周に巻回された一つのコイルLとによって、一つのセンサMが構成されている。
図1では、一本のアモルファスワイヤ21に、10個のコイルLが巻回されて、10個のセンサM1~M10が構成される例を示している。なお、センサMの数は、10に満たなくてもよく、10を超えていてもよい。
【0018】
アモルファスワイヤ21の両端部には、電源3が接続されている。電源3は、演算処理部5からの制御信号に応じて、アモルファスワイヤ21に、予め設定された電流値の電流をパルス状に出力する。
【0019】
なお、必ずしも一本のアモルファスワイヤ21に複数のコイルLが巻回されて複数のセンサMが構成される例に限らない。センサM毎にアモルファスワイヤ21が分離されていてもよい。そして、分離された各アモルファスワイヤ21に対して、それぞれ電源から電流を供給してもよい。しかしながら、一本のアモルファスワイヤ21に複数のコイルLを巻回することによって、各センサMに流れる電流が等しくなる。その結果、各センサMの検出値のバラツキが低減されるので、一本のアモルファスワイヤ21に複数のコイルLを巻回する構成がより好ましい。
【0020】
電圧測定部4は、例えばアンプ、ピークホールド回路、及びアナログデジタルコンバータ等を用いて構成されている。各電圧測定部4は、センサM1~M10における各コイルLに誘起された電圧を測定し、その測定結果を示す信号をセンサM1~M10の検出値B1~B10として演算処理部5へ送信する。
【0021】
演算処理部5は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、所定の制御プログラム等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)及び/又はフラッシュメモリ等の記憶部、及びこれらの周辺回路等を用いて構成されている。また、演算処理部5は、所定の制御プログラム等を実行することによって、検出処理部51、補正処理部52、及び係数算出処理部53として機能する。
【0022】
検出処理部51は、各電圧測定部4の出力を、センサM1~M10の検出値B1~B10として取得する。
【0023】
補正処理部52は、センサM1~M10のうち、補正対象となるセンサである注目センサMnの検出値Bnを、少なくとも、当該注目センサMnと隣接する第一センサの検出値に基づいて補正する補正処理を実行する。補正処理部52は、センサM1~M10を順次注目センサMnとして補正処理を実行することによって、センサM1~M10の検出値B1~B10を補正する。補正処理部52は、検出値B1~B10を補正して、補正値C1~C10を生成する。
【0024】
係数算出処理部53は、実験的に検出された検出値B1~B10に基づいて、後述する係数k1,k2を算出する。
【0025】
なお、検出値補正システムは、必ずしも複数のセンサと、補正処理部52及び係数算出処理部53とが、単一の装置として構成される例に限らない。例えば、磁気測定装置は、補正処理部52及び係数算出処理部53を備えていなくてもよい。そして、磁気測定装置とは別体の、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータによって、補正処理部52及び係数算出処理部53を備える補正装置が構成されていてもよい。そして、磁気測定装置で検出された検出値B1~B10を、補正装置で補正させる構成であってもよい。この場合、磁気測定装置と補正装置とによって検出値補正システムが構成される。
【0026】
また、検出値補正システムは、必ずしも複数のセンサを備える必要はない。検出値補正システムは、補正処理部52及び係数算出処理部53を備えた補正装置であってもよい。また、検出値補正システムは、補正処理部52を備える補正処理装置と、係数算出処理部53を備える係数算出処理装置とによって構成されていてもよい。
【0027】
また、磁気測定装置1は、補正処理部52によって生成された補正値C1~C10に基づいて測定対象物の検査を行う検査部をさらに備えた検査装置として構成されていてもよい。例えば、磁気測定装置1は、検査部が、例えば予め記憶部に記憶された基準値と補正値C1~C10とを比較することによって、検査対象物の良否を判定したり、磁性を有する異物の混入を検出したりする検査装置であってもよい。より具体的には、磁気測定装置1は、電池表面の磁界を磁気センサアレイ2によって検出することによって、電池に混入した金属異物を検出する検査装置として構成されていてもよい。
【0028】
次に、上述のように構成された磁気測定装置1の動作について説明する。まず、ユーザは、磁界を測定しようとする測定対象物に磁気センサアレイ2を近接対向させたり、磁界を測定したい場所に磁気センサアレイ2を配置させたりする。その後、磁気測定装置1の動作を開始させる。
【0029】
図2を参照して、まず、検出処理部51は、電源3によって、アモルファスワイヤ21に、予め設定された電流値の電流をパルス状に流させる(ステップS1)。
【0030】
電流による磁束は、アモルファスワイヤ21の周囲に同心円状に発生する。コイルLはアモルファスワイヤ21の外周に巻回されているから、電流により生じる磁束とコイルLの巻き線の向きは、略同一方向となる。コイルLには、巻き線と交差する磁束が変化した場合に電磁誘導により電圧が発生する。しかしながら、電流により生じる磁束はコイルLの巻き線と交差しないから、アモルファスワイヤ21に流れた電流に対しては、コイルLには電圧は発生しない。
【0031】
一方、アモルファスワイヤ21に電流が流れると、その電流が流れている期間、その電流により生じた磁界によって、アモルファスワイヤ21内のスピンの向きが、アモルファスワイヤ21と直交する方向に揃えられる。その後、パルスが立ち下がって電流がゼロになり、電流により生じた磁界が消失すると、アモルファスワイヤ21の各スピンの向きは、外部磁界に応じた方向に向く。このように、アモルファスワイヤ21と直交する方向から外部磁界に応じた方向にスピンが変化することで、外部磁界に応じた強度の磁束が発生する。このスピンの方向変化に伴う磁束にはコイルLの巻き線と交差する方向の成分が含まれるから、スピンの方向変化に伴う磁束の変化に応じてコイルLに電圧が発生する。
【0032】
このようにして各コイルLに発生した電圧は、センサM1~M10の各位置における外部磁界の強度を表している。各電圧測定部4は、センサM1~M10のコイルLで発生したピーク電圧をそれぞれ測定する。各電圧測定部4は、その測定電圧を示す信号を、センサM1~M10の検出値B1~B10として演算処理部5へ出力する。
【0033】
検出処理部51は、各電圧測定部4によって測定された電圧を、検出値B1~B10として取得する(ステップS2)。
【0034】
ここで、センサM1~M10の検出値B1~B10には、他のセンサMの影響による誤差が含まれている。例えば、センサM5のコイルLは、センサM5の位置のアモルファスワイヤ21におけるスピンで生じる磁束以外にも、センサM5と隣接するセンサM4,M6の位置のスピンで生じる磁束を検出する。また、センサM5のコイルLは、さらに、それらセンサM4,M6に隣接するセンサM3,M7の位置のスピンで生じる磁束を検出するおそれもある。そのため、センサM1~M10の検出値B1~B10には、他のセンサMの影響による誤差が含まれることになる。
【0035】
そこで、補正処理部52は、他のセンサMの影響による誤差を低減するように、検出処理部51により取得された検出値B1~B10を補正する補正処理を実行する。下記のステップS3~S6が、補正処理の一例に相当する。
【0036】
まず、補正処理部52は、変数nを1に初期化する(ステップS3)。
【0037】
次に、補正処理部52は、補正対象となる注目センサMnの検出値をBn、注目センサMnの一方の側に隣接する第一センサに相当するセンサM(n+1)の検出値をBn+1、注目センサMnの他方の側に隣接する第一センサに相当するセンサM(n-1)の検出値をBn-1、センサM(n+1)に対して注目センサMnと逆方向に隣接する第二センサに相当するセンサM(n+2)の検出値をBn+2、センサM(n-1)に対して注目センサMnと逆方向に隣接する第二センサに相当するセンサM(n-2)の検出値をBn-2とした場合に、注目センサMnの検出値Bnの補正値Cnを、下記の式(1)に基づき算出する(ステップS4)。
【0038】
Cn=k2Bn-2-k1Bn-1+Bn-k1Bn+1+k2Bn+2 ・・・(1)
係数k1(第一係数),及び係数k2(第二係数)は、例えば後述する係数算出方法によって予め算出され、記憶部に記憶されている。
【0039】
補正処理部52は、n=1のときはBn-1=Bn-2=0、n=2のときはBn-2=0、n=9のときはBn+2=0、n=10のときはBn+1=Bn+2=0として、式(1)の計算を実行する。
【0040】
式(1)によれば、注目センサの検出値に対して、第一係数を第一センサの検出値に乗じた値を加算し、第一係数より小さい第二係数を第二センサの検出値に対して乗じた値を減算することによって、注目センサであるセンサMnの検出値を補正することが出来る。
【0041】
次に、補正処理部52は、センサMの数である10と変数nとを比較する(ステップS5)。変数nが10でなければ(ステップS5でNO)、補正処理部52は、変数nに1を加算し(ステップS6)、再びステップS4,S5を繰り返す。
【0042】
一方、変数nが10であれば(ステップS5でYES)、補正値C1~C10が算出され、全ての検出値を補正し終えたことになるから、補正処理部52は補正処理を終了する。
【0043】
次に、上述の式(1)によって、検出値B1~B10を、他のセンサMの影響による誤差を低減するように補正可能である理由について説明する。
【0044】
センサMnの正しい検出値、すなわちセンサMnが他のセンサMの影響を受けない場合の検出値をAnとし、センサMnが隣接するセンサM(n-1),M(n+1)から受ける影響の度合いを数値化して示す係数をk1とし、センサMnがセンサM(n-1),M(n+1)にさらに隣接するセンサM(n-2),M(n+2)から受ける影響の度合いを数値化して示す係数を、後述する式(4)に従いk2=k1
2とした場合、センサMnの検出値Bnは、下記の式(A)で表される。
【0045】
Bn=k1
2An-2-k1An-1+An-k1An+1+k1
2An+2 ・・・(A)
従って、上述の式(1)によって算出される補正値Cnが正しければ、式(1)に式(A)を代入すると、補正値Cn=Anとなるはずである。
【0046】
そこで、式(1)に式(A)を代入すると、下記となる。但し、k2=k1
2、0.5<k1<1とする。
【0047】
Cn=k1
2Bn-2-k1Bn-1+Bn-k1Bn+1+k1
2Bn+2
=k1
2(k1
2An-4+k1An-3+An-2+k1An-1+k1
2An)
-k1(k1
2An-3+k1An-2+An-1+k1An+k1
2An+1)
+k1
2An-2+k1An-1+An+k1An+1+k1
2An+2
-k1(k1
2An-1+k1An+An+1+k1An+2+k1
2An+3)
+k1
2(k1
2An+k1An+1+An+2+k1An+3+k1
2An+4)
ここで、0.5<k1<1であるから、k1
3≒k1
4は非常に小さい。
【0048】
そこで、k1
3=k1
4=0と近似すると、
Cn=k1
2An-2
-k1
2(An-2+An)-k1An-1
+k1
2An-2+k1An-1+An+k1An+1+k1
2An+2
-k1
2(An+An+2)-k1An+1
+k1
2An+2
=k1
2(An-2-2An+An+2)
+k1(-An-1+An-1+An+1-An+1)
+An
ここで、(-An-1+An-1+An+1-An+1)はゼロであるから、
Cn=k1
2(An-2-2An+An+2)+An ・・・(B)
となる。
【0049】
さらに、本発明に係る検出値補正システム及び検出値補正方法は、センサの隣接ピッチを小さくすると、センサの検出精度が低下するおそれがあるという課題の解決を目的としている。そのため、磁界等の検出対象の物理量の空間的な拡がり範囲に対して、センサの隣接ピッチが充分に小さい。その結果、互いに隣接するセンサMn,M(n+1)、又はセンサMn,M(n-1)の配置位置で、検出対象の物理量の差が、センサMnの位置での物理量であるAnの例えば1%以下になるように、センサの隣接ピッチが設定されている。
【0050】
そうすると、An+2及びAn-2は、センサMnの隣の隣のセンサ位置での磁界強度(物理量)であるから、センサMnの位置での磁界強度(物理量)との差は、1%+1%=2%程度である。従って、An≒An-2≒An+2と近似できるから、(An-2-2An+An+2)≒0と近似できる。加えて、0.5<k1<1であるから、k1
2(An-2-2An+An+2)はさらにゼロに近くなり、k1
2(An-2-2An+An+2)≒0と近似できるから、上記式(B)は、Cn≒Anと近似できる。
【0051】
従って、上述の式(1)によって算出される補正値Cnは、センサMnが他のセンサMの影響を受けない場合の正しい検出値Anと近似できることがわかる。
【0052】
従って、式(1)によって算出される補正値Cnは、センサMnが他のセンサMの影響を受けない場合の正しい検出値Anと近似できるから、ステップS1~S6の処理により、全ての検出値B1~B10を補正して補正値C1~C10が得られる。従って、一列に配置された各センサMの検出値を補正することが容易である。
【0053】
次に、係数k1,k2について説明する。係数k1,k2は、センサMの製造バラツキ等による感度の違い、各センサMの間隔、磁気センサアレイ2から測定対象物までの距離等によって変化する。従って、例えば磁気センサアレイ2の製造後にその磁気センサアレイ2の係数k1,k2を算出して演算処理部5の記憶部に記憶させたり、あるいは磁気センサアレイ2を磁気測定装置1に取り付けた後に、その磁気センサアレイ2の係数k1,k2を算出して演算処理部5の記憶部に記憶させたりすることが好ましい。
【0054】
上記式(1)において、Bn-2、Bn-1、Bn、Bn+1、Bn+2の係数は、符号も含めてk2、-k1、1、-k1、k2となっており、この係数は一種のフィルタとして機能する。注目センサMnが、その左右のセンサMから受ける影響度は略等しいので、検出値Bnを中心に左右対称に係数が配置される。
【0055】
図3はk
1=0.6、k
2=0.1の場合、
図4はk
1=0.7、k
2=0.2の場合を示している。
【0056】
係数k1は、第一センサであるセンサM(n+1),M(n-1)が、注目センサMnに対して与える影響の度合いを数値化して示している。係数k2は、第二センサであるセンサM(n+2),M(n-2)が、注目センサMnに対して与える影響の度合いを数値化して示している。センサM(n+2),M(n-2)は、センサM(n+1),M(n-1)よりも注目センサMnから離れているから、センサM(n+2),M(n-2)が注目センサMnに対して与える影響は、センサM(n+1),M(n-1)が注目センサMnに対して与える影響より小さい。従って、係数k2が表す影響は、係数k1が表す影響よりも小さくなるから、k1>k2となる。
【0057】
影響とは、エネルギーに他ならない。例えば、あるセンサMが他のセンサMに影響を与えた場合、影響を与えたセンサから影響を受けたセンサへエネルギーが移動したことになる。
【0058】
従って、
図3,
図4の係数を表すバーは、他から受けたエネルギーをプラス、他に与えたエネルギーをマイナスとして、エネルギーのやりとりを表しているとみなすことができる。このようなエネルギーのやりとりがあったとしても、エネルギーの総量は変化しないから、k
2、-k
1、1、-k
1、k
2の合計は略ゼロとなる。すなわち、係数k
2の合計に1を加算した値から、係数k
1の合計を減算した値が略ゼロとなる。
【0059】
その結果、
図3、
図4におけるプラスの値の合計と、マイナスの値の合計とは等しくなる。従って、プラスの係数k
2,1,k
2と、マイナスの係数k
1,k
1とから、下記の式(5)が得られる。
【0060】
k
2+1+k
2=k
1+k
1=2k
1
2k
2+1=2k
1
2k
2=2k
1-1
k
2=k
1-1/2 ・・・(5)
図5は、係数k
1が1の場合を示している。
【0061】
係数k1が1を超えると、注目センサMnから出るエネルギーよりも隣接する両側のセンサMが受け取るエネルギーの方が大きくなって矛盾する。従って、k1<1となる。
【0062】
図6は、係数k
1が0.5の場合を示している。係数k
1が0.5の場合、式(5)から係数k
2は0になり、係数k
2が消えてしまう。従って、係数k
1の範囲は、0.5<k
1<1となる。
【0063】
なお、係数k1と、係数k2との関係は、必ずしも式(5)で表される例に限らない。係数k1と係数k2との関係式は、使用するセンサの特性に応じて適宜設定される。例えば、注目センサから離れるにつれて、その離れたセンサが注目センサに与える影響が急激に小さくなる特性を有するセンサの場合、下記の式(4)の関係式が適している。
【0064】
k2=k1
2 ・・・(4)
また、例えば、注目センサからの距離の二乗に反比例して影響が小さくなる特性を有するセンサの場合、下記の式(6)の関係式が適している。
【0065】
k
2=k
1/4 ・・・(6)
次に、本発明の一実施形態に係る係数算出方法について
図7、
図8を参照しつつ説明する。まず、例えばユーザが、磁石をQ個のセンサM1~MQの一部、例えばセンサM5付近に配置する。これにより、センサM1~MQに対して、不均一な磁界が印加される(ステップS101)。
図1に示す例では、Q=10である。センサM1~MQに印加される磁界は、各センサMで検出される検出値の差がなるべく大きくなるように、センサM1~MQの各位置に対する変化が大きいことが好ましい。センサM1~MQはセンサ1~Qに相当している。
【0066】
センサM1~MQに対して不均一な磁界が印加された状態で、係数算出処理部53は、センサM1~MQの検出値B1~BQを取得する(ステップS102:工程(a))。
【0067】
次に、係数算出処理部53は、仮に、係数k1=0.51とする(ステップS103)。次に、係数算出処理部53は、初期値としてセンサ番号Xを3とする(ステップS104)。次に、係数算出処理部53は、センサMXの検出値をBX、センサMXの一方の側に隣接するセンサM(X+1)の検出値をBX+1、センサMXの他方の側に隣接するセンサM(X-1)の検出値をBX-1、センサM(X+1)に対してセンサMXと逆方向に隣接するセンサM(X+2)の検出値をBX+2、センサM(X-1)に対してセンサMXと逆方向に隣接するセンサM(X-2)の検出値をBX-2とし、下記の式(2)及び上述の式(5)に基づき、値D(X)を算出する(ステップS105:工程(b1))。
【0068】
D(X)=k2BX-2-k1BX-1+BX-k1BX+1+k2BX+2 ・・・(2)
なお、ステップS105において、係数k1から係数k2を求めるために、式(5)の代わりに、式(4)を用いてもよく、式(6)を用いてもよい。あるいは、例えば実験的に求められた、式(4)~(6)以外の関係式を用いて係数k1から係数k2を求めてもよい。
【0069】
次に、係数算出処理部53は、センサ番号XとQ-2とを比較する(ステップS106)。センサ番号XがQ-2と等しくなければ(ステップS106でNO)、係数算出処理部53は、センサ番号Xに1を加算して(ステップS107)、再びステップS105,S106を繰り返す。
【0070】
一方、センサ番号XがQ-2と等しければ(ステップS106でYES)、値D(3)~D(Q-2)を算出し終えたことになるから、係数算出処理部53は、ステップS108へ処理を移行する。
【0071】
ステップS108において、係数算出処理部53は、値D(3)~D(Q-2)のうち、隣り合うセンサMn及びセンサM(n-1)の値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗が最大となる値D(n)及び値D(n-1)を探索し、当該最大となる値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗をMAX[{D(n)-D(n-1)}2]として算出する(ステップS108:工程(b2))。nは、4~(Q-2)の整数である。
【0072】
ステップS108によれば、隣り合うセンサM相互間の検出値Bの差が、最も大きいセンサMnとセンサM(n-1)とを探し出したことになる。
【0073】
次に、係数算出処理部53は、値D(3)~D(Q-2)のうち、隣り合うセンサMm及びセンサM(m-1)の値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗が最小となる値D(m)及び値D(m-1)を探索し、当該最小となる値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗をMIN[{D(m)-D(m-1)}2]として算出する(ステップS109:工程(b3))。mは、4~(Q-2)の整数である。
【0074】
ステップS109によれば、隣り合うセンサM相互間の検出値Bの差が、最も小さいセンサMmとセンサM(m-1)とを探し出したことになる。
【0075】
次に、係数算出処理部53は、下記の式(3)に基づいて、評価値U(k1)を算出する(ステップS110:工程(b4))。
【0076】
U(k1)=MAX[{D(n)-D(n-1)}2]-MIN[{D(m)-D(m-1)}2] ・・・(3)
評価値U(k1)は、ステップS103又はS112で設定した係数k1のときに、隣り合うセンサM相互間の検出値Bの差が最も大きいセンサMnとセンサM(n-1)とについて、それぞれの検出値Bを式(1)で補正した値の差の二乗であるMAX[{D(n)-D(n-1)}2]と、隣り合うセンサM相互間の検出値Bの差が最も小さいセンサMmとセンサM(m-1)とについて、それぞれの検出値Bを式(1)で補正した値の差の二乗であるMIN[{D(m)-D(m-1)}2]との差である。
【0077】
言い換えると、評価値U(k1)は、磁気センサアレイ2に対して印加された不均一な磁界に対して、仮の係数k1のときに、隣接するセンサM間で検出値Bの補正値の差が最も大きくなったその補正値の差と、隣接するセンサM間で検出値Bの補正値の差が最も小さくなったその補正値の差との差を表している。
【0078】
すなわち、評価値U(k1)が大きいほど、その係数k1のときに得られる補正値が、位置に対する変化が大きい部分と小さい部分とで差が大きくなるような値が得られることを意味する。
【0079】
評価値U(k1)は、係数k1が、センサMが隣接する他のセンサMに与える影響を正しく表しているほど、磁気センサアレイ2に対して印加された磁界の不均一さが正しく評価値U(k1)に現れる結果、評価値U(k1)が大きな値になる。一方、係数k1が、センサMが隣接する他のセンサMに与える影響と乖離しているほど、磁気センサアレイ2に対して印加された磁界の不均一さが拡散されて、評価値U(k1)が小さな値になる。
【0080】
従って、ステップS103~S123に記載の処理は、係数k1を変化させながら、評価値U(k1)を算出し、最も大きな評価値U(k1)が得られたときの係数k1を、センサMが隣接する他のセンサMに与える影響を最も正確に表した係数k1、すなわち正しい係数k1として取得するものである。
【0081】
次に、係数算出処理部53は、係数k1と0.99とを比較する。係数k1と0.99とが等しくなければ(ステップS111でNO)、係数算出処理部53は、係数k1に0.01を加算して再びステップS104~S111を繰り返す。一方、係数k1と0.99とが等しければ(ステップS111でYES)、複数の評価値U(0.51),U(0.52),U(0.53),・・・,U(0.99)を算出し終えたことになるから、ステップS121へ移行する。
【0082】
なお、ステップS112は、複数の係数k1に対して互いに異なる値を設定できればよく、必ずしも0.01ずつ異なる値にする必要はない。ステップS112で加算する値、すなわち異ならせる値は、小さくするほど係数k1を求める精度が向上する一方、演算処理量が増大する。従って、ステップS112で加算する値は、精度と処理量とを勘案して適宜設定すればよい。
【0083】
ステップS121において、係数算出処理部53は、評価値U(0.51)~U(0.99)の中から、最大の評価値U(k1)を探索する(ステップS121)。次に、係数算出処理部53は、最大の評価値U(k1)に対応する係数k1を補正処理用の係数k1として取得する(ステップS122)。例えば、評価値U(0.77)が最大で有った場合、0.77が正しい係数k1であると推定できるので、係数算出処理部53は、補正処理用の係数k1=0.77とする。この係数k1が、上述のステップS4で用いられる。
【0084】
次に、係数算出処理部53は、ステップS105で用いられたのと同じ関係式、例えば式(5)を用いて、最大の評価値U(k1)に対応する係数k1から補正処理用の係数k2を算出する(ステップS123)。例えば、係数k1=0.77であった場合、係数k1=0.77を式(5)に代入すると、係数k2=0.27となる。
【0085】
以上、ステップS101~S123の処理により、係数k1,k2を算出することができる。
【0086】
なお、係数k1,k2は、必ずしも上述の係数算出方法によって算出される例に限らない。係数k1,k2は、注目センサに対して他のセンサが与える影響を示す値であるから、例えば実験的に、注目センサ単独で他のセンサの影響を受けない状態での検出値Aを測定し、注目センサと第一センサのみによって第二センサの影響を受けない状態での注目センサの検出値B及び第一センサの検出値Cを測定し、さらに実際に用いられる構成と同じように注目センサ、第一センサ、及び第二センサによって検出された検出値D,E,Fを測定し、検出値A~Fに基づいて、係数k1,k2を求めてもよい。
【0087】
すなわち、検出値Dを検出値Bnとし、検出値Eを検出値Bn+1,Bn-1とし、検出値Fを検出値Bn+2,Bn-2として式(1)に代入し、検出値Aと略等しい補正値Cnが得られるように、係数k1,k2を求めてもよい。
【0088】
このように、他のセンサの影響を受けない状態で測定を行うためには、例えば
図1に示すセンサM1~M10を、センサ毎に分離されたアモルファスワイヤで構成し、このように分離されたセンサを用いて、上述の実験的な測定を行えばよい。後述する
図9に示すセンサE1~E10の場合は、シンチレータSCをセンサ毎に分離し、必要なセンサのみを配置して上述の実験的な測定を行えばよい。後述する
図10に示すセンサF1~FQの場合は、必要なセンサのみを流体内に配置して上述の実験的な測定を行えばよい。
【0089】
しかしながら、係数k1,k2は、各センサ間の距離、各センサの特性バラツキ等の影響を受ける。そのため、実際に測定に用いられるセンサの組み立て精度による距離の変化や、センサ特性のバラツキのため、上述のように各センサをバラバラにした状態で実験的な測定により係数k1,k2を得ると、係数の精度が低下するおそれがある。
【0090】
一方、上述の係数算出方法によれば、実際の測定に用いるセンサが組み立てられた状態で、係数k1,k2を算出することができるので、係数k1,k2の精度を向上することが容易である。従って、係数算出方法を用いて係数k1,k2を算出することがより好ましい。
【0091】
図9に示すX線測定装置1aは、
図1に示す磁気測定装置1とは、センサM1~M10の代わりにセンサE1~E10を備える点で異なる。X線測定装置1aは、その他の点では磁気測定装置1と同様に構成されているのでその説明を省略し、以下、X線測定装置1aの特徴的な点について説明する。
【0092】
X線測定装置1aは、一列に配列された複数のフォトダイオードPDと、X線により発光する蛍光板であるシンチレータSCとを備えている。複数のフォトダイオードPDは、シンチレータSCに対して対向配置されている。そして、各フォトダイオードPDと、シンチレータSCの各フォトダイオードPDに対向する部分とから、センサE1~E10が構成されている。このように一列に配列されたセンサE1~E10から、X線センサアレイ2aが構成されている。
【0093】
測定対象のX線がシンチレータSCに当たると、シンチレータSCがそのX線強度に応じた発光量で発光する。シンチレータSCの発光は、その発光位置と対応する位置に配置されたフォトダイオードPDによって検出され、その発光量に応じた電圧が、そのフォトダイオードPDから出力される。
【0094】
例えば
図9に示すX線100がセンサE5のシンチレータSCに当たってシンチレータSCが発光すると、その光は、センサE5のフォトダイオードPDのみならず、その周辺のセンサE4,E6等でも検出されるおそれがある。すなわち、センサE1~E10は、X線(物理量)を検出する際に、センサE1~E10周辺の他のセンサの検出値Bに対して影響を与えるセンサの一例に相当している。
【0095】
各電圧測定部4は、センサE1~E10における各フォトダイオードPDの出力電圧を測定し、その測定結果を示す信号をセンサE1~E10の検出値B1~B10として演算処理部5へ送信する。
【0096】
演算処理部5は、センサE1~E10の検出値B
1~B
10に基づいて
図1に示す演算処理部5と同様に動作する。具体的には、ステップS101でセンサE1~E10に不均一なX線を照射する点を除いて上述と同様の係数算出方法を実行する。また、ステップS1を除く検出値補正方法を実行する。これにより、各センサE1~E10の検出値B
1~B
10を補正することが容易となる。
【0097】
図10は、本発明の一実施形態に係る検出値補正方法を適用可能なセンサの構成の一例を概念的に示す説明図である。
図10に示すQ個のセンサF1~FQは、流体の流量又は流速を測定する流量センサである。センサF1~FQは、例えば電磁式流量計、カルマン渦式流量計、羽根車式流量計、浮き子式流量計、熱式流量計、ダイヤフラム式流量計、超音波式流量計、コリオリ式流量計等として知られている種々の流量計であってもよい。
【0098】
図10に示す例では、川Rの中に、流体である川の水の流れる方向に対して交差する方向に列が延びるように、センサF1~FQが一列に配置されている。以下、センサF1~FQを総称してセンサFと称する。
【0099】
川Rの川岸には、演算処理部5が、例えば図略の筐体に収容されて設置されている。センサF1~FQは、各センサの設置位置における流量又は流速を測定し、その検出値B1~B10を、図略の有線又は無線通信回路を用いて演算処理部5へ送信する。
【0100】
演算処理部5は、センサF1~FQの検出値B
1~B
Qに基づいて
図1に示す演算処理部5と同様に動作する。具体的には、ステップS101でセンサF1~FQに不均一な水量を流す点を除いて上述と同様の係数算出方法を実行する。また、ステップS1を除く検出値補正方法を実行する。これにより、各センサF1~FQの検出値B
1~B
Qを補正することが容易となる。センサF1~FQ及び演算処理部5によって、検出値補正システムの一例である流量測定システム1bが構成されている。
【0101】
川Rの流れは、センサF1~FQにぶつかると、
図10に矢印で示すように、その流れが乱れる。川の流れの乱れは、隣接するセンサFで測定される流れにも影響を与える。すなわち、センサF1~FQは、流体の流量又は流速(物理量)を検出する際に、各センサF周辺の他のセンサFの検出値Bに対して影響を与える。演算処理部5は、このようなセンサFの検出値Bを容易に補正することができる。
【0102】
なお、式(1)に基づいて、注目センサであるセンサMnの検出値を補正する例を示したが、必ずしも式(1)を用いる例に限らない。
【0103】
また、補正処理は、注目センサの検出値を、求められる補正精度に応じて、第一及び第二センサの検出値と、第一及び第二係数とに基づいて補正すればよく、例えば第一及び第二センサの検出値、第一及び第二係数以外のパラメータをさらに加味して補正を行ってもよい。
【0104】
補正処理は、少なくとも第一センサの検出値に基づいて補正を行えばよく、求められる補正精度に応じて、例えば第一センサの検出値のみに基づいて補正を行ってもよく、第一センサの検出値と第一係数のみに基づいて補正を行ってもよく、第一及び第二センサの検出値と第一係数のみに基づいて補正を行ってもよく、第一及び第二センサの検出値と第二係数のみに基づいて補正を行ってもよい。
【0105】
また、注目センサの両側に、第一センサが二つ設けられ、さらにその外側両側に、第二センサが二つ設けられる例を示したが、第一及び第二センサは、注目センサの片側に一つずつ設けられる構成であってもよい。第一及び第二センサが注目センサの片側に一つずつ設けられる構成であっても、ある程度の補正効果は得られる。
【0106】
すなわち、本発明の一例に係る検出値補正システムは、一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサの検出値を補正する検出値補正システムであって、前記複数のセンサのうち、補正対象となるセンサである注目センサの検出値を、少なくとも当該注目センサと隣接する第一センサの検出値に基づいて補正する補正処理を実行する補正処理部を備える。
【0107】
また、本発明の一例に係る検出値補正方法は、一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサの検出値を補正する検出値補正方法であって、前記複数のセンサのうち、補正対象となるセンサである注目センサの検出値を、少なくとも当該注目センサと隣接する第一センサの検出値に基づいて補正する補正処理を実行する。
【0108】
この構成によれば、複数のセンサが一列に配置されている場合において、補正対象となるセンサである注目センサの検出値が、当該注目センサと隣接する第一センサの検出値に基づいて補正されるので、第一センサが注目センサに及ぼす影響を低減するように補正することが可能となる。従って、一列に配置された各センサの検出値を補正することが容易となる。
【0109】
また、前記補正処理は、さらに、前記注目センサに対して前記第一センサが与える影響を表す第一係数に基づいて前記注目センサの検出値を補正することが好ましい。
【0110】
この構成によれば、第一センサの検出値と、注目センサに対して第一センサが与える影響を表す第一係数とに基づいて注目センサの検出値が補正されるので、補正精度を向上させることが容易である。
【0111】
また、前記補正処理は、さらに、前記第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値に基づいて前記注目センサの検出値を補正することが好ましい。
【0112】
この構成によれば、注目センサの検出値を、第一センサのみならず、第二センサが注目センサに与える影響を低減するように補正することが可能となる。
【0113】
また、前記補正処理は、さらに、前記注目センサに対して前記第二センサが与える影響を表す第二係数に基づいて前記注目センサの検出値を補正し、前記第二係数は、前記第一係数よりも小さいことが望ましい。
【0114】
この構成によれば、さらに、注目センサに対して第二センサが与える影響を表す第二係数を加味して注目センサの検出値が補正されるので、補正精度を向上させることが容易である。
【0115】
また、前記補正処理は、前記注目センサの検出値をBn、前記注目センサの一方の側に隣接する第一センサの検出値をBn+1、前記注目センサの他方の側に隣接する第一センサの検出値をBn-1、前記注目センサの一方の側に隣接する第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値をBn+2、前記注目センサの他方の側に隣接する第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値をBn-2、前記第一係数をk1、前記第二係数をk2とした場合に、前記注目センサの検出値の補正値Cnを、下記の式(1)に基づき算出する処理であることが好ましい。
【0116】
Cn=k2Bn-2-k1Bn-1+Bn-k1Bn+1+k2Bn+2 ・・・(1)
この構成によれば、式(1)を用いた数値演算によって、注目センサの検出値を補正することができる。
【0117】
また、(a)前記一列に配置された複数のセンサに対して前記物理量が付与された状態で、前記各センサの検出値を取得する工程と、(b)複数の前記第一係数k1に対して互いに異なる値を仮に付与し、当該仮の値が付与された前記第一係数k1のそれぞれに対応して、(b1)前記複数のセンサに追い番を付してセンサ1~Qとし、センサ1~Qのうち任意のX番のセンサXの検出値をBX、前記センサXの一方の側に隣接するX+1番のセンサ(X+1)の検出値をBX+1、前記センサXの他方の側に隣接するX-1番のセンサ(X-1)の検出値をBX-1、前記センサ(X+1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX+2番のセンサ(X+2)の検出値をBX+2、前記センサ(X-1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX-2番のセンサ(X-2)の検出値をBX-2、前記第二係数をk2とし、Xが3~(Q-2)の場合について、下記の式(2)に基づいて値DXを算出し、(b2)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるnについて、隣り合うセンサn及びセンサ(n-1)の値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗が最大となる値D(n)及び値D(n-1)を探索し、当該最大となる値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗をMAX[{D(n)-D(n-1)}2]として算出し、(b3)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるmについて、隣り合うセンサm及びセンサ(m-1)の値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗が最小となる値D(m)及び値D(m-1)を探索し、当該最小となる値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗をMIN[{D(m)-D(m-1)}2]として算出し、(b4)下記の式(3)に基づいて、複数の前記第一係数k1の値に対応する複数の評価値U(k1)を算出する工程と、(c)前記複数の評価値U(k1)のうち、最大の評価値U(k1)を探索し、当該最大の評価値U(k1)に対応する第一係数k1と、その第一係数k1から得られた第二係数k2とを、前記補正処理で用いるための前記第一係数及び前記第二係数として確定する工程とを実行する係数算出処理部をさらに備えることが好ましい。
【0118】
D(X)=k2BX-2-k1BX-1+BX-k1BX+1+k2BX+2 ・・・(2)
U(k1)=MAX[{D(n)-D(n-1)}2]-MIN[{D(m)-D(m-1)}2] ・・・(3)
この構成によれば、上述の補正処理に適した第一係数k1と、第二係数k2とを算出することができる。
【0119】
また、前記第二係数k2は、下記の式(4)に基づき得られることが好ましい。
【0120】
k2=k1
2 ・・・(4)
この構成によれば、注目センサから離れるにつれて、その離れたセンサが注目センサに与える影響が急激に小さくなる場合に適した第二係数k2を得ることができる。
【0121】
また、前記第二係数k2は、下記の式(5)に基づき得られるものであってもよい。
【0122】
k2=k1-1/2 ・・・(5)
第一係数k1と第二係数k2とは、センサ間の影響を表しており、影響とはエネルギーのやりとりに他ならない。この構成によれば、注目センサ、第一センサ、及び第二センサ相互間でエネルギーのやりとりがなされ、これらのセンサ全体のエネルギーが一定である場合に適した第二係数k2を得ることができる。
【0123】
また、前記第二係数k2は、下記の式(6)に基づき得られるものであってもよい。
【0124】
k2=k1/4 ・・・(6)
この構成によれば、注目センサからの距離の二乗に反比例して影響が小さくなる場合に適した第二係数k2を得ることができる。
【0125】
また、前記第一係数k1は0.5より大きく、1より小さいことが好ましい。
【0126】
この構成によれば、第一係数k1を適切な値とすることが容易である。
【0127】
また、前記各センサは、前記物理量を検出する際に、当該各センサ周辺の他のセンサの検出値に対して影響を与えるものであってもよい。
【0128】
上述の補正処理によれば、このようなセンサの検出値を補正することが容易である。
【0129】
また、前記物理量は磁界であり、前記各センサはMIセンサであってもよい。
【0130】
上述の補正処理によれば、このようなMIセンサの検出値を補正することが容易である。
【0131】
また、前記物理量はX線であり、前記各センサは、前記X線により発光する蛍光板と、前記蛍光板の発光を検出する光センサとを備えるX線センサであってもよい。
【0132】
上述の補正処理によれば、このようなX線センサの検出値を補正することが容易である。
【0133】
また、前記物理量は流体の流量又は流速であり、前記各センサは、前記流体の流れる方向に対して交差する方向に前記列が延びるように配置されていてもよい。
【0134】
上述の補正処理によれば、このようなセンサの検出値を補正することが容易である。
【0135】
また、前記複数のセンサをさらに備えることが好ましい。
【0136】
この構成によれば、上述の検出値補正システムは、上述の物理量の検出と補正とを行うことができる。
【0137】
また、本発明の一例に係る係数算出方法は、一列に配置された、物理量を検出する複数のセンサのうちの一つについて、そのセンサに対して当該センサと隣接する第一センサが与える影響を表す第一係数k1と、前記第一センサに対して前記一つのセンサと逆方向に隣接する第二センサが与える影響を表す第二係数k2とを算出する係数算出方法であって、(a)前記一列に配置された複数のセンサに対して不均一に前記物理量が付与された状態で、前記各センサの検出値を取得する工程と、(b)複数の前記第一係数k1に対して互いに異なる値を仮に付与し、当該仮の値が付与された前記第一係数k1のそれぞれに対応して、(b1)前記複数のセンサに追い番を付してセンサ1~Qとし、センサ1~Qのうち任意のX番のセンサXの検出値をBX、前記センサXの一方の側に隣接するX+1番のセンサ(X+1)の検出値をBX+1、前記センサXの他方の側に隣接するX-1番のセンサ(X-1)の検出値をBX-1、前記センサ(X+1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX+2番のセンサ(X+2)の検出値をBX+2、前記センサ(X-1)に対して前記センサXと逆方向に隣接するX-2番のセンサ(X-2)の検出値をBX-2、前記第二係数をk2とし、Xが3~(Q-2)の場合について、下記の式(2)に基づいて値DXを算出し、(b2)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるnについて、隣り合うセンサn及びセンサ(n-1)の値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗が最大となる値D(n)及び値D(n-1)を探索し、当該最大となる値D(n)及び値D(n-1)の差の二乗をMAX[{D(n)-D(n-1)}2]として算出し、(b3)前記(b1)工程で算出された値D(3)~D(Q-2)のうち、4~(Q-2)の整数であるmについて、隣り合うセンサm及びセンサ(m-1)の値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗が最小となる値D(m)及び値D(m-1)を探索し、当該最小となる値D(m)及び値D(m-1)の差の二乗をMIN[{D(m)-D(m-1)}2]として算出し、(b4)下記の式(3)に基づいて、複数の前記係数k1の値に対応する複数の評価値U(k1)を算出する工程と、(c)前記複数の評価値U(k1)のうち、最大の評価値U(k1)を探索し、当該最大の評価値U(k1)に対応する第一係数k1と、その第一係数k1から得られた第二係数k2とを、前記補正処理で用いるための前記第一係数及び前記第二係数として確定する工程とを含む。
【0138】
D(X)=k2BX-2-k1BX-1+BX-k1BX+1+k2BX+2 ・・・(2)
U(k1)=MAX[{D(n)-D(n-1)}2]-MIN[{D(m)-D(m-1)}2] ・・・(3)
この構成によれば、上述の補正処理に適した第一係数k1と、第二係数k2とを算出することができる。
【0139】
また、上述の検出値補正方法において、前記補正処理は、さらに、前記第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値と前記注目センサに対して前記第二センサが与える影響を表す第二係数とに基づいて、前記注目センサの検出値をBn、前記注目センサの一方の側に隣接する第一センサの検出値をBn+1、前記注目センサの他方の側に隣接する第一センサの検出値をBn-1、前記注目センサの一方の側に隣接する第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値をBn+2、前記注目センサの他方の側に隣接する第一センサに対して前記注目センサと逆方向に隣接する第二センサの検出値をBn-2、前記第一係数をk1、前記第二係数をk2とした場合に、前記注目センサの検出値の補正値Cnを、下記の式(1)に基づき算出することが好ましい。
【0140】
Cn=k2Bn-2-k1Bn-1+Bn-k1Bn+1+k2Bn+2 ・・・(1)
この構成によれば、式(1)を用いた数値演算によって、注目センサの検出値を補正することができる。
【0141】
このような検出値補正システム、及び検出値補正方法は、複数のセンサが一列に配置されている場合であっても、各センサの検出値を補正することが容易である。また、このような係数算出方法は、上記検出値補正システム、及び検出値補正方法における補正処理に適した係数を算出することができる。
【0142】
この出願は、2019年3月13日に出願された日本国特許出願特願2019-045780を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0143】
1 磁気測定装置(検出値補正システム)
1a X線測定装置(検出値補正システム)
1b 流量測定システム(検出値補正システム)
2 磁気センサアレイ
2a X線センサアレイ
3 電源
4 電圧測定部
5 演算処理部
21 アモルファスワイヤ
51 検出処理部
52 補正処理部
53 係数算出処理部
A,B,B1~B10,Bn,BQ 検出値
C1~C10,Cn 補正値
E1~E10,F,F1~FQ,M ,M1~M10 センサ
L コイル
PD フォトダイオード
R 川
SC シンチレータ
U 評価値
X センサ番号
d 間隔
k1 係数(第一係数)
k2 係数(第二係数)