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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】複層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20240611BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240611BHJP
   B05C 13/00 20060101ALI20240611BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240611BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20240611BHJP
   B65H 20/10 20060101ALI20240611BHJP
   B65H 23/32 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B05D3/00 C
B05C5/02
B05C13/00
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D7/00 A
B32B37/00
B65H20/10 A
B65H23/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021526937
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024207
(87)【国際公開番号】W WO2020262251
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019120455
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
(72)【発明者】
【氏名】平野 祐哉
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-214563(JP,A)
【文献】特開平2-211270(JP,A)
【文献】特開平5-7816(JP,A)
【文献】特開昭53-115754(JP,A)
【文献】特開2003-252502(JP,A)
【文献】特開2015-174747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B05C 5/00- 5/04
7/00-21/00
B32B 1/00-43/00
B65H20/00-20/40
23/24-23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面及び裏面を有する長尺の基材フィルムのおもて面に、機能性材料を含む塗布液を塗布する塗布工程を含む複層フィルムの製造方法であって、
前記塗布工程において、前記基材フィルムは、曲面を有する支持体を含む支持装置の前記曲面により規定される搬送経路に沿って搬送され、
前記支持体は、前記曲面から気体を噴出して、搬送される前記基材フィルムを、前記裏面側から非接触状態で支持する部材であり、
前記支持体は、前記搬送経路の上流から順に、第1支持部、第2支持部及び第3支持部を含み、
前記塗布液の塗布は、前記支持体の前記第2支持部に対向して設けられた塗布装置により、前記基材フィルムの前記おもて面に、前記塗布液の層を設けることにより行われ、
前記曲面からの前記気体の噴出は、下記式(1)を満たす、複層フィルムの製造方法:
F2<F1<F3 (1)
式中、F1は、前記第1支持部から噴出する気体の流量であり、
F2は、前記第2支持部から噴出する気体の流量であり、
F3は、前記第3支持部から噴出する気体の流量である。
【請求項2】
前記第2支持部が、搬送される前記基材フィルムの幅方向と平行な方向における、端部及び中央部を含み、
前記端部から噴出する気体の流量F2sが、前記中央部から噴出する気体の流量F2cよりも大きい、請求項1に記載の複層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第2支持部の前記端部が、搬送される前記基材フィルムの幅方向端部より内側に対応する位置に設けられ、
前記第2支持部が、搬送される前記基材フィルムの幅方向端部より外側に対応する外端部をさらに含み、
前記外端部から噴出する気体の流量F2osが、前記端部から噴出する気体の流量F2sよりも大きい、請求項2に記載の複層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記支持装置が、前記支持体へ前記気体を供給する、複数の供給管を含み、
前記複数の供給管のそれぞれは、前記支持体への前記気体の供給量を調整する調整弁を有し、
前記塗布工程において、前記曲面からの前記気体の噴出を、前記調整弁により、前記式(1)を満たすよう調整することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記支持体が多孔質部材を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記多孔質部材の孔径は、前記搬送経路において異なる、請求項5に記載の複層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記多孔質部材の孔径は、前記基材フィルムの幅方向において異なる、請求項5または6に記載の複層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記多孔質部材の平均孔径が0.1μm~30μmである、請求項5~7のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記塗布装置がダイコーターである、請求項1~8のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性材料を含む層を設けた複層フィルムは、長尺の基材フィルムを、バックアップロールで支持しながら、機能性材料を含む塗布液を塗布することにより製造しうる。このような複層フィルムの製造において、基材フィルムの非塗布面と接触して支持するバックアップロールを用いる場合、バックアップロールに付着したほこりなどの異物の上に配された基材フィルムが、部分的にふくらむことで、スポット状の塗布ムラが生じることがある。また、塗布液が吐出される部分では、基材フィルムが、吐出した塗布液により、バックアップロールに押し付けられて、強い摩擦力が生じ、速度ムラが発生し、塗布厚みのムラやしわ等が生じることがある。
このような問題を解決するものとして、基材フィルムを浮上搬送させながら塗布液を塗布する方法が検討されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-7816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材フィルムの浮上搬送は、表面から気体を噴出して、基材フィルムを非接触状態で支持する支持装置により行いうる。このような支持装置からの気体の噴出量が、基材フィルムの搬送方向において均一である場合、塗布液が塗布された直後の基材フィルムでは、基材フィルムの重量に塗布液の重量が加わる。そのため、塗布液の層を伴う基材フィルムの浮上量は、塗布液を塗布する前の基材フィルムに比べて変化し、浮上量が不均一になり、その結果、基材フィルムが支持装置と接触して傷が発生するおそれがあるということがわかった。
【0005】
また、支持装置からの気体の噴出量が、基材フィルムの搬送方向において均一である場合、塗布液が塗布される部分では、気体が逃げにくくなっているために、他の部分よりも基材フィルムの浮上量が大きくなりやすく、これにより、基材フィルムの浮上状態が不安定となり、基材フィルムの幅方向に生じる厚みの大きいスジ(横段)が生じうるということがわかった。
【0006】
スポット状のムラ、しわ、横段等の面状不良や、傷がフィルムに存在すると、機能性材料の機能に悪影響を引き起こす場合があるため、面状不良や傷が発生した部分はフィルムから除去される。したがって、面状不良や傷の発生を抑制したフィルムの製造方法が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたものであって、面状不良の発生及び傷の発生を抑制した、機能性材料を含む塗布液の層を有する複層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、基材フィルムに塗布液を塗布する塗布工程を含む複層フィルムの製造方法において、気体を噴出する曲面を有し、かつ、塗布液の塗布前、塗布中及び塗布後における、当該曲面からの気体の流量が所定の関係を満たす支持体により、基材フィルムを非接触状態で支持し搬送することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0009】
〔1〕 おもて面及び裏面を有する長尺の基材フィルムのおもて面に、機能性材料を含む塗布液を塗布する塗布工程を含む複層フィルムの製造方法であって、
前記塗布工程において、前記基材フィルムは、曲面を有する支持体を含む支持装置の前記曲面により規定される搬送経路に沿って搬送され、
前記支持体は、前記曲面から気体を噴出して、搬送される前記基材フィルムを、前記裏面側から非接触状態で支持する部材であり、
前記支持体は、前記搬送経路の上流から順に、第1支持部、第2支持部及び第3支持部を含み、
前記塗布液の塗布は、前記支持体の前記第2支持部に対向して設けられた塗布装置により、前記基材フィルムの前記おもて面に、前記塗布液の層を設けることにより行われ、
前記曲面からの前記気体の噴出は、下記式(1)を満たす、複層フィルムの製造方法:
F2<F1<F3 (1)
式中、F1は、前記第1支持部から噴出する気体の流量であり、
F2は、前記第2支持部から噴出する気体の流量であり、
F3は、前記第3支持部から噴出する気体の流量である。
〔2〕 前記第2支持部が、搬送される前記基材フィルムの幅方向と平行な方向における、端部及び中央部を含み、
前記端部から噴出する気体の流量F2sが、前記中央部から噴出する気体の流量F2cよりも大きい、〔1〕に記載の複層フィルムの製造方法。
〔3〕 前記第2支持部の前記端部が、搬送される前記基材フィルムの幅方向端部より内側に対応する位置に設けられ、
前記第2支持部が、搬送される前記基材フィルムの幅方向端部より外側に対応する外端部をさらに含み、
前記外端部から噴出する気体の流量F2osが、前記端部から噴出する気体の流量F2sよりも大きい、〔2〕に記載の複層フィルムの製造方法。
〔4〕 前記支持装置が、前記支持体へ前記気体を供給する、複数の供給管を含み、
前記複数の供給管のそれぞれは、前記支持体への前記気体の供給量を調整する調整弁を有し、
前記塗布工程において、前記曲面からの前記気体の噴出を、前記調整弁により、前記式(1)を満たすよう調整することを含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法。
〔5〕 前記支持体が多孔質部材を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法。
〔6〕 前記多孔質部材の孔径は、前記搬送経路において異なる、〔5〕に記載の複層フィルムの製造方法。
〔7〕 前記多孔質部材の孔径は、前記基材フィルムの幅方向において異なる、〔5〕または〔6〕に記載の複層フィルムの製造方法。
〔8〕 前記多孔質部材の平均孔径が0.1μm~30μmである、〔5〕~〔7〕のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法。
〔9〕 前記塗布装置がダイコーターである、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、面状不良の発生及び傷の発生を抑制した、機能性材料を含む塗布液の層を有する複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る複層フィルムの製造方法に用いる支持装置を模式的に示す正面図である。
図2図2は、支持装置を、側面方向から模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図1のY1-Y1線における断面を模式的に示す断面図である。
図4図4は、実施形態2に係る複層フィルムの製造方法に用いる支持装置を模式的に示す側面図である。
図5図5は、実施形態3に係る複層フィルムの製造方法に用いる支持装置を模式的に示す側面図である。
図6図6は、実施形態4に係る複層フィルムの製造方法に用いる支持装置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0013】
本発明において、長尺のフィルムの幅方向とは、フィルムの搬送方向に対して垂直な方向であって、フィルムの面に平行な方向をいう。フィルムの搬送方向とは、支持装置により支持された長尺のフィルムが搬送される方向であり、通常は長尺のフィルムの長手方向と平行である。
【0014】
以下の説明において、要素の方向が「平行」及び「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±4°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0015】
以下の説明において、「斜め方向」とは、内筒部材の長手方向に平行(長手方向に対して角度0°をなす方向)でも垂直(長手方向に対して角度90°をなす方向)でもない方向を表す。
【0016】
[本発明の複層フィルムの製造方法の概要]
本発明の複層フィルムの製造方法は、おもて面及び裏面を有する長尺の基材フィルムのおもて面に、機能性材料を含む塗布液を塗布する塗布工程を含む。塗布工程において、基材フィルムは、曲面を有する支持体を含む支持装置の曲面により規定される搬送経路に沿って搬送される。支持体は、曲面から気体を噴出して、搬送される基材フィルムを、裏面側から非接触状態で支持する部材であり、搬送経路の上流から順に、第1支持部、第2支持部及び第3支持部を含む。塗布液の塗布は、支持体の第2支持部に対向して設けられた塗布装置により、基材フィルムのおもて面に、塗布液の層を設けることにより行われる。曲面からの気体の噴出は、下記式(1)を満たす。
F2<F1<F3 (1)
(式中、F1は、第1支持部から噴出する気体の流量であり、F2は、第2支持部から噴出する気体の流量であり、F3は、第3支持部から噴出する気体の流量である。)
【0017】
[実施形態1]
以下、本発明に係る実施形態1の複層フィルムの製造方法について、図1~3を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いる支持装置を模式的に示す正面図である。図2は、支持装置を、側面方向から模式的に示す斜視図である。図3は、図1のY1-Y1線における断面を模式的に示す断面図である。図1は、搬送される基材フィルムの幅方向から観察した支持装置を図示しており、本願においてはかかる観察方向を正面方向と規定する。
【0018】
本実施形態の複層フィルムの製造方法は、おもて面及び裏面を有する長尺の基材フィルムのおもて面に、機能性材料を含む塗布液を塗布する塗布工程を含む。
塗布工程において、基材フィルム11は、図1に示すように、曲面110Tを有する支持体110の、曲面110Tにより規定される搬送経路に沿って搬送される。図1においてA1は搬送方向を示す。
【0019】
繰り出し装置(図示せず)から繰り出された基材フィルム11は、支持体110の曲面110Tと非接触状態を保ちながら、前記曲面110Tに沿ってA1で示す方向に搬送され、塗布装置160の直下に至ると、基材フィルム11のおもて面11Aに塗布液が塗布される。塗布液が塗布された基材フィルム11のおもて面11Aには、塗布液を含む層12が形成され、曲面110に沿って、図示下方に搬送される。
【0020】
基材フィルム11は、塗布装置160による塗布を行う前(塗布装置160よりも搬送経路の上流)においては、支持体110の第1支持部110Aから噴出する気体により、支持体110とは非接触状態で支持される。基材フィルム11は、塗布装置160による塗布を行うとき(塗布装置160の直下及びその近傍)には、支持体110の第2支持部110Bから噴出する気体により非接触状態で支持される。基材フィルム11は、塗布装置160による塗布後(塗布装置160よりも搬送経路の下流)においては、支持体110の第3支持部110Cから噴出する気体により非接触状態で支持される。塗布工程において、支持体110の曲面110Tからの気体の噴出は、式(1)を満たすように行う。
F2<F1<F3 (1)
【0021】
式(1)中、F1は、第1支持部から噴出する気体の流量であり、F2は、第2支持部から噴出する気体の流量であり、F3は、第3支持部から噴出する気体の流量である。つまり、塗布工程において、曲面からの気体の噴出を、第2支持部110Bから噴出する気体の流量F2、第1支持部110Aから噴出する気体の流量F1、第3支持部110Cから噴出する気体の流量F3の順で大きくなるように行う。
以下、本実施形態の製造方法について、さらに具体的に説明する。
【0022】
[基材フィルム]
本実施形態で用いる基材フィルム11は、おもて面11A及び裏面11Bを有する長尺のフィルムである。
【0023】
基材フィルムとしては、例えば熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂は、重合体を含む。当該重合体としては、脂環式構造含有重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル重合体、メタクリル重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、アラミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうち、配向規制力が高く、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れるという観点から、脂環式構造含有重合体が好ましい。脂環式構造含有重合体としては、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
【0024】
基材フィルムとしては、塗布液の塗布の前に、所定の処理を行ったものを用いうる。例えば塗布液として、重合性を有する液晶化合物を含む塗布液を用いる場合、重合性液晶化合物の配向を促進するため、基材フィルムとして配向規制力を付与するための処理が施されているものを用いることが好ましい。配向規制力とは、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物等の液晶化合物を配向させることができる、面の性質をいう。支持面に配向規制力を付与するため処理としては、例えば、配向膜形成処理、光配向処理、ラビング処理、イオンビーム配向処理、延伸処理などが挙げられる。
【0025】
[塗布液]
機能性材料を含む塗布液は、塗布液は機能性材料を含む。例えば、塗布液は、重合性を有する液晶性化合物、重合開始剤、架橋剤、モノマー、酸化防止剤、界面活性剤などの機能性材料を含みうる。また塗布液は、有機溶媒、水などの溶媒を含みうる。塗布液は、分散媒中に、機能性材料が分散した分散液であってもよく、コロイド状液であってもよい。
【0026】
[塗布装置]
塗布装置は、塗布液を基材フィルム11に塗布する装置である。塗布装置としては、ダイコーター、グラビアコーター等が挙げられる。これらのうちダイコーターが好ましい。本実施形態では、塗布装置160としてダイコーターを用いた例について説明する。
【0027】
塗布装置160(ダイコーター)は、塗布液を押し出す押出装置と連結されている。ダイコーターは、支持体110の第2支持部110Bと対向するリップを備え、リップ先端に形成された吐出口161から、塗布液を吐出し、搬送される基材フィルム11のおもて面11Aに連続的に塗布液を塗布する。これにより、基材フィルム11のおもて面11Aに、塗布液の層12が形成される。
【0028】
[支持装置]
塗布工程において基材フィルム11を支持する支持装置100は、曲面110Tを有する支持体110を含む。また、本実施形態において、支持装置100は、支持体110へ気体を供給する供給管151A,151B(151B1~151B5),151C(複数の供給管)を含む。
【0029】
[支持体]
支持体110は、曲面110Tから気体を噴出して、搬送される基材フィルム11を裏面11B側から非接触状態で支持する部材である。支持体110は円筒状の部材の上に、正面視C字状の部材を重ねた形状である(図1参照)。図2に示すように、支持体110の長手方向(X1方向)の長さは、基材フィルム11の幅寸法よりも長く、基材フィルム11の幅寸法は、C字状の部材の長手方向の長さとほぼ同じである。C字状の部材の上面は支持体110の曲面110Tであり、当該曲面110Tの形状は、図1に示すように、円弧状である。支持体の曲面110Tにより、基材フィルム11の搬送経路が規定される。
【0030】
支持体110の抱き角は、好ましくは80°以上、より好ましくは120°以上であり、好ましくは250°以下、より好ましくは240°以下である。本実施形態において、抱き角とは、曲面11Aと同じカーブを描く円において、基材フィルム11と曲面110Aとの間隔が1mm以下となった部分の角度をいう。図1において110Pは円(曲面110Aと同じカーブを描く円)の中心である。
【0031】
支持体110は、搬送経路の上流から順に、第1支持部110A、第2支持部110B及び第3支持部110Cを含む。図1に示すように、第2支持部110Bは、塗布装置160と対向する位置に設けられている。第1支持部110Aは、塗布装置160よりも搬送経路の上流の位置に設けられ、第3支持部110Cは塗布装置160よりも搬送経路の下流の位置に設けられている。本実施形態において、第2支持部110Bは、支持体曲面の、塗布装置の直下の部分、及び、当該塗布装置の直下の部分から搬送方向(支持体曲面)に沿って±25mmの部分であるが、本発明はこれに限定されない。例えば支持体曲面の塗布装置の直下の部分、及び、当該塗布装置の直下の部分から搬送方向に沿って±60mmの部分または±40mmの部分であってもよい。
【0032】
第1支持部110A、第2支持部110B及び第3支持部110Cは、仕切り壁112A,112Bにより仕切られている。第1支持部110A、第2支持部110B及び第3支持部110Cには、それぞれ、供給管151A,151B,151Cが連結される。供給管151A,151B,151Cのそれぞれは、その内腔が、第1支持部110A、第2支持部110B及び第3支持部110Cのそれぞれの内部の空隙に連通するよう設けられる。かかる構成により、支持体110の外部から、供給管151A,151B,151Cを介して、第1支持部110A、第2支持部110B及び第3支持部110Cに独立に気体が供給されるようになっている。供給管151A,151B,151Cは、それぞれ、第1支持部110A、第2支持部110B及び第3支持部110Cへの気体の供給量を調整する調整弁150A,150B,150Cを有する。本実施形態では、塗布工程においては、曲面110Tからの気体の噴出を、調整弁150A,150B,150Cにより上記式(1)を満たすように調整することを含む。図1においては、第1支持部110A、第2支持部110B、第3支持部110Cから気体が噴出する様子を、それぞれ、1A、1B、1Cの矢印で示している。
【0033】
本実施形態において、第2支持部110Bは、図3に示すように、搬送される基材フィルム11の幅方向と平行な方向(X1方向)における、端部110S1及び110S2と中央部110BCと、を含む。第2支持部110Bの端部110S1及び110S2は、それぞれ、基材フィルム11の幅方向端部11S1,11S2より内側に対応する位置に設けられている。第2支持部110Bは、搬送される基材フィルム11の幅方向端部11S1,11S2より外側に対応する外端部110SO1,110SO2をさらに含む。つまり第2支持部110Bは、外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2、外端部110SO2を含む。本実施形態においては、第2支持部110Bの端部110S1および110S2は、基材フィルム11の幅方向端部11S1,11S2に対応する位置から、幅方向内側へ100mm~200mmまでの部分としうる。
【0034】
第2支持部110Bは、図3に示すように、4つの仕切り壁112C1、112C2、112C3、および112C4により、5つの部分(外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2および外端部110SO2)に仕切られている。
【0035】
外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2及び外端部110SO2には、それぞれ、供給管151B1、151B2、151B3、151B4及び151B5が連結される。供給管151B1、151B2、151B3、151B4及び151B5のそれぞれは、その内腔が、外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2及び外端部110SO2のそれぞれの内部の空隙に連通するよう設けられる。かかる構成により、支持体110の外部から、これらの供給管を介して端部、中央部及び外端部に独立に気体が供給されるようになっている。供給管151B1、151B2、151B3、151B4及び151B5は、それぞれ、外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2及び外端部110SO2への気体の供給量を調整する調整弁150B1、150B2、150B3、150B4及び150B5を有している。これにより、外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2及び外端部110SO2への気体の供給量の調整が可能となっている。図2及び図3においては、第2支持部110Bの、外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2及び外端部110SO2から気体が噴出する様子を、それぞれ、1B1、1B2、1B3、1B4、1B5の矢印で示している。
【0036】
本実施形態において、第2支持部110Bは、5つの部分を有し、各部分に供給管が取り付けられているが、式(1)を満たすように調整する際には、第2支持部の中央部110BCから噴出する気体の流量を、第1支持部及び第3支持部から噴出する気体の流量よりも小さくなるようにする。
【0037】
第2支持部110Bの端部110S1,110S2は、基材フィルム11の幅方向の端部に対応する部分であるため、当該端部110S1,110S2から噴出する気体は、基材フィルム11の端部から逃げやすくなっている。塗布工程において基材フィルム11の幅方向の端部から噴出気体が逃げると、複層フィルム10の幅方向の端部において、他の部分よりも塗布液の層の厚みが大きくなることがある。上述したように、本実施形態では、第2支持部の各部分(外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2及び外端部110SO2)への気体の供給量の調整は、調整弁150B1、150B2、150B3、150B4及び150B5により行うことができる。したがって、曲面110Tからの気体の噴出を、端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量F2sが、中央部110BCから噴出する気体の流量F2cよりも大きくなるように行うことで、基材フィルム11の端部から噴出する気体が逃げるのを抑制し、複層フィルム10の幅方向の端部における塗布液の層の厚みが大きくなるのを抑制することができる。2つの端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量は同一であるのが好ましいが相違していてもよい。相違している場合、その差は小さいほうが好ましい。
【0038】
また、本実施形態では、第2支持部110Bは端部110S1,110S2の外側に外端部を含んでおり、上述したように外端部110SO1,110SO2への気体の供給量の調整も可能である。したがって、曲面110Tからの気体の噴出を、外端部110SO1及び110SO2から噴出する気体の流量F2osを、端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量F2sよりも大きくなるように行うことで、基材フィルム11の端部から噴出する気体が逃げるのを抑制し、複層フィルム10の幅方向の端部における塗布液の層の厚みが大きくなるのを抑制することができる。
【0039】
曲面110Tからの気体の噴出を、端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量F2sが、中央部110BCから噴出する気体の流量F2cよりも大きく、外端部110SO1及び110SO2から噴出する気体の流量F2osが、端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量F2sよりも大きくなるように行うことが、好ましい。かかる流量の調節を行うことにより、複層フィルム10の幅方向の端部における塗布液の層の厚みが大きくなるのをより有効に抑制し、膜厚の均一性が優れる複層フィルムの製造を行うことができる。2つの端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量は同一であるのが好ましいが相違していてもよい。相違している場合その差は小さいほうが好ましい。2つの外端部110SO1及び110SO2から噴出する気体の流量についても同一であるのが好ましいが、相違していてもよい。相違している場合、その差は小さいほうが好ましい。
【0040】
支持体110は多孔質部材を含むことが好ましい。支持体110は、一部(例えば、第1支持部、第2支持部、第3支持部)が、多孔質材料からなる部材で構成されていてもよく、全体が多孔質材料からなる部材で構成されていてもよい。
【0041】
多孔質部材を構成する多孔質材料としては、ポーラスカーボン、ポーラスアルミナ等が挙げられる。このような多孔質材料からなる部材を含む内筒部材を用いると、支持体110の曲面110Tから噴出する気体の圧力により、基材フィルム11を、支持体110との間に間隙をあけた状態(離隔状態)で支持することができる。
【0042】
支持体110が多孔質部材を含む場合、多孔質部材の平均孔径は好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは3.0μm以下である。孔径が大きすぎる場合、一部の孔がふさがれて、他の孔から気体の漏れが生じることがあるが、孔径を上限値以下とすると、一部の孔がふさがれたとしても、気体の漏れを防止することができ、基材フィルム11が、支持体110に均一な力で、離隔状態で支持されうる。このことは、以下のメカニズムによるものと推測される。孔径が大きすぎる場合、一部の孔が基材フィルム11で覆われたときに、圧力の変動が支持体110の内部構造を伝わって、基材フィルム11で覆われていない部分から多量の気体が漏れ出てしまい、基材フィルム11を、離隔状態で支持できなくなくなることがある。孔径を上限値以下とすると、一部の孔が基材フィルム11で覆われたときにも、圧力の変動が支持体110の内部構造に伝わりにくく、基材フィルム11で覆われていない部分への大量の気体の漏れが抑制され、基材フィルム11が支持体110に均一な力で、離隔状態で支持されうる。多孔質部材の平均孔径は、例えば光学顕微鏡観察や、SEM観察により測定しうる。
【0043】
支持体110から、支持体110と基材フィルム11との間の隙間S1に供給される気体は、高圧空気であることが好ましい。気体が高圧空気である場合、その圧力は好ましくは0.10MPa以上、より好ましくは0.30MPa以上であり、好ましくは0.70MPa以下、より好ましくは0.50MPa以下である。支持体110が供給する気体の圧力が前記範囲であると、基材フィルム11を非接触状態で支持しうる。
【0044】
[作用及び効果]
本実施形態の複層フィルムの製造方法の作用及び効果について説明する。
繰り出し装置から繰り出された基材フィルム11は、曲面110Tにより規定される搬送経路の最も上流の位置に至ると、曲面110Tから噴出する気体により、非接触状態に支持され、曲面110Tに沿って搬送される。基材フィルム11は、第1支持部110と対向する位置では第1支持部110Aから噴出する気体により非接触状態で支持され、第2支持部110Bと対向する位置に至ると、第2支持部110Bから噴出する気体により非接触状態で支持される。
【0045】
基材フィルム11が塗布装置160の直下に至ると、基材フィルム11のおもて面11Aに塗布口161から吐出された塗布液が塗布される。塗布液が塗布される間も、基材フィルム11は第2支持部110Bから噴出する気体により非接触状態で支持される。塗布液が塗布された後の基材フィルム11は、第3支持部110Cから噴出する気体により非接触状態で支持され、さらに搬送経路の下流に搬送される。塗布液の層12が設けられた基材フィルム11は、搬送経路の最下流まで搬送された後、必要に応じ、次の工程(たとえば配向処理工程、重合工程、巻取工程等)に供され、複層フィルム10が得られる。
【0046】
つまり本実施形態によれば、基材フィルム11が、塗布工程において、支持体110と非接触状態で支持されるので、支持体に異物が付着することに起因するスポット状の塗布ムラの発生を防止することができる。
【0047】
また、本実施形態では、塗布工程において、曲面110Tからの気体の噴出を、第2支持部110Bから噴出する気体の流量F2、第1支持部110Aから噴出する気体の流量F1、第3支持部110Cから噴出する気体の流量F3の順で大きくなるように(式(1)を満たすように)行う。つまり、本実施形態によれば、塗布液塗布後の基材フィルムを支持する第3支持部110Cから噴出する気体の流量F3は、他の部分よりも大きいので、基材フィルム11に塗布液の重みが加わることによる基材フィルム11と支持体110との接触を防止し、接触に起因する傷の発生を抑制することができる。また、本実施形態によれば、気体が逃げにくい部分である第2支持部110Bから噴出する気体の流量F2が他の部分よりも小さいので、基材フィルム11の浮上量が大きくなることを抑制することができ、基材フィルムの浮上量が大きくなることに起因する、基材フィルムの幅方向に生じる厚みの大きいスジ(横段)の発生を抑制することができる。
従って、本実施形態によれば、面状不良の発生及び傷の発生を抑制した塗布液の層を有する複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【0048】
また本実施形態において、支持装置100は、支持体110へ気体を供給する複数の供給管151A,151B,151Cを含み、複数の供給管151A,151B,151Cのそれぞれは、支持体110への気体の供給量を調整する調整弁150A,150B,150Cを有し、塗布工程において、曲面110Tからの気体の噴出を、調整弁150A,150B,150Cにより、上記式(1)を満たすよう調整する。その結果、本実施形態によれば、調整弁150A,150B,150Cの操作により、式(1)を満たすように気体の供給量を調整することができるので、簡易な方法により、面状不良の発生及び傷の発生を抑制した塗布液の層を有する複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【0049】
さらに、本実施形態において、第2支持部110Bの、外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2及び外端部110SO2には、それぞれ、供給管151B1、151B2、151B3、151B4及び151B5が連結される。供給管151B1、151B2、151B3、151B4及び151B5のそれぞれは、その内腔が、外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2及び外端部110SO2のそれぞれの内部の空隙に連通するよう設けられる。かかる構成により、支持体110の外部から、これらの供給管を介して端部、中央部及び外端部に独立に気体が供給されるようになっている。供給管151B1、151B2、151B3、151B4及び151B5は、それぞれ、気体の供給量を調整する調整弁150B1、150B2、150B3、150B4及び150B5を有している。これにより、第2支持部110Bの各部分への気体の供給量の調整を容易に行いうる。したがって、曲面110Tからの気体の噴出を、端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量F2sが、中央部110BCから噴出する気体の流量F2cよりも大きくなるように行うことにより、基材フィルム11端部から噴出する気体が逃げるのを抑制し、複層フィルム10の幅方向の端部における塗布液の層の厚みが大きくなるのを抑制することができる。その結果、幅方向における、膜厚の均一性が優れる複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【0050】
また、曲面110Tからの気体の噴出を、外端部110SO1及び110SO2から噴出する気体の流量F2osを、端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量F2sよりも大きくなるように行うことにより、基材フィルム11の端部から噴出する気体が逃げるのを抑制し、複層フィルム10の幅方向の端部における塗布液の層の厚みが大きくなるのを抑制することができる。その結果、幅方向における、膜厚の均一性が優れる複層フィルムの製造方法を提供することができる。さらに、曲面110Tからの気体の噴出を、端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量F2sが、中央部110BCから噴出する気体の流量F2cよりも大きく、外端部110SO1及び110SO2から噴出する気体の流量F2osが、端部110S1及び110S2から噴出する気体の流量F2sよりも大きくなるように行うことにより、より膜厚の均一性が優れる複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【0051】
[実施形態2]
以下、本発明に係る実施形態2の複層フィルムの製造方法について、図4を参照しつつ説明する。図4は、本実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いる支持装置を模式的に示す側面図である。
【0052】
本実施形態の複層フィルムの製造方法は、塗布工程で用いる支持装置の構成が実施形態1と相違する。以下において、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付し、重複した説明は省略する。
【0053】
本実施形態の支持装置200において、支持体210は円筒状である。支持体210の長手方向(X1方向)の長さは基材フィルム11の幅寸法と同じであるので、支持体210の長手方向の端部は、基材フィルム11の幅方向の端部と対応する位置に配される。図4において、塗布装置は図示していないが、塗布装置は基材フィルム11の上方に配置される。円筒状の支持体210の周面は曲面に対応し、当該曲面により搬送経路が規定される。
【0054】
本実施形態において、支持体210は4つの仕切り壁212A,212B,212C,212Dにより、支持体の210の長手方向に並ぶ5つの部分211A,211B,211C,211D,211Eに仕切られている。図4では第1支持部側を示しているが、第2支持部および第3支持部についても、4つの仕切り壁212A,212B,212C,212Dにより5つの部分に仕切られている。また、詳細は図示しないが、本実施形態でも実施形態1と同様に、第1支持部、第2支持部及び第3支持部を仕切る仕切り壁が設けられている。仕切り壁(212A,212B,212C,212D)ならびに各支持部を仕切る仕切り壁により、仕切られた各部分(211A,211B,211C,211D,211Eなど)には、それぞれ、供給管251A、251B、251C、251D及び251Eが連結される。供給管251A、251B、251C、251D及び251Eのそれぞれは、その内腔が、各部分(211A,211B,211C,211D,211Eなど)のそれぞれの内部の空隙に連通するよう設けられる。かかる構成により、支持体210の外部から、これらの供給管251A、251B、251C、251D及び251Eを介して気体が供給されるようになっている。供給管251A、251B、251C、251D及び251Eは、それぞれ、各部分(211A,211B,211C,211D,211Eなど)への気体の供給量を調整する調整弁250A、250B、250C、250D及び250Eを有している。これにより、各部分(211A,211B,211C,211D,211Eなど)への気体の供給量の調整が可能となっている。図4においては、図示上部に配される第2支持部から気体が噴出する様子を、それぞれ、2B1、2B2、2B3、2B4、2B5の矢印で示している。
【0055】
[作用及び効果]
本実施形態においても、実施形態1と同様に、基材フィルム11は、第1支持部、第2支持部、第3支持部からそれぞれ噴出する気体により非接触状態で支持され、塗布工程が行われる。つまり本実施形態においても、基材フィルム11が、塗布工程において、支持体110と非接触状態で支持されるので、支持体に異物が付着することに起因するスポット状の塗布ムラの発生を防止することができる。
【0056】
また、本実施形態によっても、塗布工程において、支持体210の曲面からの気体の噴出は、上記式(1)を満たすように行うので、実施形態1と同様に、面状不良の発生及び傷の発生を抑制した、複層フィルムの製造方法を提供することができる。本実施形態において、各支持部は5つの部分を有し、各部分に供給管が取り付けられているが、式(1)を満たすように調整する際には、第2支持部の中央の部分から噴出する気体の流量を、第1支持部の中央の部分及び第3支持部の中央の部分から噴出する気体の流量よりも小さくなるようにする。
【0057】
支持体210の長手方向の端部からは、2B6および2B7の矢印で示すように気体が逃げやすくなっているが、本実施形態においては、調製弁250A1、250B、250C、250D及び250Eにより、各部分(211A,211B,211C,211D,211Eなど)への気体の供給量の調整が可能であるので、曲面からの気体の噴出を、中央部分211Cで最も小さくなるようにし、端部へ行くほど大きくなるようにすることを容易に行いうる。その結果、本実施形態によれば、基材フィルム11端部から噴出する気体が逃げるのを抑制し、複層フィルム10の幅方向の端部における塗布液の層の厚みが大きくなるのを抑制することができるので、幅方向における、膜厚の均一性が優れる複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【0058】
[実施形態3]
以下、本発明に係る実施形態3の複層フィルムの製造方法について、図5を参照しつつ説明する。図5は、本実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いる支持装置を模式的に示す側面図である。
【0059】
本実施形態の複層フィルムの製造方法は、塗布工程で用いる支持装置の構成が実施形態1と相違する。以下において、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付し、重複した説明は省略する。
【0060】
本実施形態の支持装置300において、支持体310は円筒状である。支持体310の長手方向(X1方向)の長さは基材フィルム11の幅寸法と同じであるので、支持体310の長手方向の端部は、基材フィルム11の幅方向の端部と対応する位置に配される。図5において、塗布装置は図示していないが、塗布装置は基材フィルム11の上方に配置される。円筒状の支持体310の周面は曲面に対応し、当該曲面により搬送経路が規定される。
【0061】
詳細は図示しないが、本実施形態でも実施形態1と同様に、支持体310には、第1支持部、第2支持部及び第3支持部を仕切る仕切り壁が設けられている。仕切り壁により仕切られた第1支持部、第2支持部及び第3支持部には、それぞれ、供給管が連結される。
供給管のそれぞれは、その内腔が、各支持部のそれぞれの内部の空隙に連通するよう設けられる。かかる構成により、支持体310の外部から、これらの供給管を介して気体が供給されるようになっている。供給管は、それぞれ、各支持部への気体の供給量を調整する調整弁を有している。これにより、各支持部への気体の供給量の調整が可能となっている。
【0062】
本実施形態において、支持体310は多孔質部材を含み、多孔質部材の孔径が、基材フィルムの幅方向において異なる。本発明において、「多孔質部材の孔径が基材フィルムの幅方向において異なる」とは、基材フィルムの幅方向における位置(例えば幅方向の端部と中央部)により、多孔質部材の平均孔径の大きさが相違していることをいう。このように基材フィルムの幅方向における位置により孔径が相違する多孔質部材を用いることにより、仕切り壁で仕切らなくても、基材フィルムの幅方向における位置により気体の噴出量を変えることが可能である。
【0063】
本実施形態では、支持体310の5つの部分311A,311B、311C,311D,311Eのうち、中央に配される中央部311Cにおいて平均孔径が最も小さく、端部に行くに従い平均孔径が大きくなっている。つまり311C、311Bおよび311D、311Aおよび311Eの順で孔径が大きくなっている。311Bと311Dの孔径は同一であるのが好ましいが相違していてもよい。相違している場合、その差は小さいほうが好ましい。311Aと311Eの孔径は同一であるのが好ましいが、相違していてもよい。相違している場合、その差は小さいほうが好ましい。
【0064】
図5においては、5つの部分311A,311B,311C,311D,311Eから気体が噴出する様子を、それぞれ、3B1、3B2、3B3、3B4及び3B5の矢印で示している。
【0065】
[作用及び効果]
本実施形態においても、実施形態1と同様に、基材フィルム11は、第1支持部、第2支持部、第3支持部からそれぞれ噴出する気体により非接触状態で支持され、塗布工程が行われる。つまり本実施形態においても、基材フィルム11が、塗布工程において、支持体310と非接触状態で支持されるので、支持体に異物が付着することに起因するスポット状の塗布ムラの発生を防止することができる。
【0066】
また、本実施形態によっても、塗布工程において、支持体310の曲面からの気体の噴出は、上記式(1)を満たすように行うので、実施形態1と同様に、面状不良の発生及び傷の発生を抑制した塗布液の層を有する複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【0067】
支持体310の長手方向の端部からは、3B6および3B7の矢印で示すように気体が逃げやすくなっているが、本実施形態においては、支持体310が、中央部311Cにおいて孔径が最も小さく、端部に行くに従い孔径が大きい多孔質部材を含むので、支持体の端部の部分311Aおよび311Eから噴出する気体の流量を中央の部分311Cよりも大きくすることができる。これにより、本実施形態によれば、基材フィルム11の幅方向の端部から噴出する気体が逃げるのを抑制し、複層フィルム10の幅方向の端部における塗布液の層の厚みが大きくなるのを抑制することができる。また、本実施形態においては、基材フィルム11の幅方向において多孔質部材の孔径が異なっているので、幅方向の部分を仕切るための仕切り壁を設ける必要がない。その結果、本実施形態によれば、支持装置の構造の簡素化が可能で、かつ、幅方向における、膜厚の均一性が優れる複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【0068】
[実施形態4]
以下、本発明に係る実施形態4の複層フィルムの製造方法について、図6を参照しつつ説明する。図6は、本実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いる支持装置を模式的に示す斜視図である。
【0069】
本実施形態の複層フィルムの製造方法は、塗布工程で用いる支持装置の構成が実施形態1と相違する。以下において、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付し、重複した説明は省略する。
【0070】
本実施形態の支持装置において、支持体410は円筒状である。図6において塗布装置は図示していないが、塗布装置は第2支持部411B1,411B2,411B3と対向する位置に配置される。円筒状の支持体410の周面は曲面に対応し、当該曲面により搬送経路が規定される。
【0071】
本実施形態では、支持体400は、円筒状の多孔質部材を含む。この多孔質部材の孔径は、基材フィルムの幅方向において異なり、かつ、搬送経路においても異なる。本発明において、「多孔質部材の孔径が搬送経路において異なる」とは、搬送経路における位置(第1支持部、第2支持部及び第3支持部)により、多孔質部材の平均孔径の大きさが相違していることをいう。より具体的には、第1支持部の平均孔径、第2支持部の平均孔径及び第3支持部の平均孔径のうちの、1が他の2と異なるか、またはこれらがいずれも互いに異なるものとしうる。このように、搬送経路における位置により平均孔径が相違する多孔質部材を用いることにより、仕切り壁で仕切らなくても、搬送経路における位置により気体の噴出量を変えることが可能である。本実施形態では、多孔質部材の孔径は、基材フィルムの幅方向において異なり、かつ、搬送経路においても異なるので、支持体を基材フィルムの幅方向において複数の部分に仕切る仕切り壁も、搬送経路に沿って並ぶ3つの支持部を仕切る仕切り壁も不要である。
【0072】
本実施形態では、支持体410の図示下側に並ぶ3つの部分411A1,411A2,411A3が第1支持部であり、第1支持部の上に並ぶ3つの部分411B1,411B2,411B3が第2支持部であり、第2支持部の上に並ぶ3つの部分411C1,411C2,411C3が第3支持部である。
【0073】
本実施形態では、多孔質部材の孔径は、搬送経路の方向にならぶ3つの部分、たとえば、411A2,411B2,411C2を比較すると、411B2,411A2、411C2の順、つまり第2支持部、第1支持部、第3支持部の順で大きい。多孔質部材の孔径は、基材フィルム11の幅方向に並ぶ3つの部分、たとえば、411A1,411A2,411A3を比較すると、中央の部分411A2よりも、端部411A1および411A3のほうが大きい。基材フィルム11の幅方向の2つの端部の孔径は同一であるのが好ましいが相違していてもよい。相違している場合、その差は小さいほうが好ましい。
【0074】
[作用及び効果]
本実施形態においても、実施形態1と同様に、基材フィルム11は、第1支持部、第2支持部、第3支持部からそれぞれ噴出する気体により非接触状態で支持され、塗布工程が行われる。つまり本実施形態においても、基材フィルム11が、塗布工程において、支持体410と非接触状態で支持されるので、支持体に異物が付着することに起因するスポット状の塗布ムラの発生を防止することができる。
【0075】
本実施形態では、支持体410が、第2支持部、第1支持部、第3支持部の順で孔径が大きい多孔質部材を含む。その結果本実施形態によれば、第1支持部、第2支持部および第3支持部を仕切る仕切り壁、各支持部に気体を供給する供給管および調製弁を設けなくても、塗布工程において、支持体410の曲面からの気体の噴出を、上記式(1)を満たすように行うことができるので、支持装置の構造を簡素化することができ、かつ、面状不良の発生及び傷の発生を抑制した塗布液の層を有する複層フィルムの製造方法を提供することができる。
【0076】
また、本実施形態では、各支持部において、基材フィルム11の幅方向の中央部よりも端部において孔径が大きい多孔質部材を含むので、たとえば第2支持部においては、基材フィルム11の幅方向の端部411B1および411B3から噴出する気体の流量を中央部411B2よりも大きくすることができる。その結果、本実施形態によれば、支持体内を仕切る仕切り壁、各部分ごとに気体を供給する供給管および調製弁を設けなくても、曲面における気体の噴出を前記中央部411B2よりも前記端部411B1および411B3において大きくすることができるので、簡易な構造により、幅方向における、膜厚(塗布液の層の厚み)の均一性が優れる複層フィルムを製造しうる。
【実施例
【0077】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0078】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0079】
[評価方法]
(1.面状評価方法)
各例で製造した複層フィルムから、幅1.33m×長さ1.0mの大きさのフィルム片を切り出した。切り出しの際は、フィルム片の各辺が、複層フィルムの搬送方向又は幅方向に平行となるようにした。切り出したフィルム片を、パラニコル状態に配した一対の偏光板の間に配して、評価サンプルを作成した。評価サンプルに光源を当て、他の部分と比べて、色味が違うスポット状のムラ(直径2mm~20mmの円形状のムラ)の有無、フィルム幅方向のスジ(横段)の有無を肉眼により観察し、以下の評価基準により評価した。
【0080】
(スポット状のムラの評価基準)
良:スポット状のムラの発生がない。
不良:スポット状のムラの発生がある。
【0081】
(横段の評価基準)
A:パラニコル状態の目視観察で横段が確認できない。
B:パラニコル状態の目視観察で横段が確認でき、かつ、横段の隣接する山と谷の厚み差が0.01μm未満である。
C:横段の発生がある。パラニコル状態の目視観察で横段が確認でき、かつ、横段の隣接する山と谷の厚み差が0.01μm以上、0.02μm未満である。
D:横段の発生がある。パラニコル状態の目視観察で横段が確認でき、かつ、横段の隣接する山と谷の厚み差が0.02μm以上である。
【0082】
(2.傷の発生の有無の評価)
各例で製造した複層フィルムから、幅1.33m×長さ1.0mの大きさのフィルム片を切り出した。切り出しの際は、フィルム片の各辺が、複層フィルムの搬送方向又は幅方向に平行となるようにした。切り出したフィルム片にポラリオンライト(ポラリオン社製、NP-1)を当てて、肉眼により、複層フィルムのおもて面及び裏面の傷の発生の有無を観察した。特に、塗布面とは反対側の面(裏面)について、支持体との接触により発生した傷の有無について確認した。
A:傷の発生がなかった。
B:複層フィルムの裏面に、部分的に支持体との接触により発生した傷が認められた。
C:複層フィルムの裏面に、連続的に支持体との接触により発生した傷が認められた。
【0083】
(3.塗布液の層の厚みの均一性の評価)
各例で製造した複層フィルムについて、フィルムの幅方向の9地点における塗布液の層の厚みを、干渉式膜厚計(フィルメトリクス社製、F20膜厚測定システム、機種名:F20-EXR)を用いて測定し、塗布液の層の最大値と最小値の差を算出し、以下の基準によりフィルム幅方向における塗布液の層の厚みの均一性を評価した。
A:塗布液の層の厚みの最大値と最小値の差が0.1μm未満である。
B:塗布液の層の厚みの最大値と最小値の差が0.1μm以上0.2μm未満である。
C:塗布液の層の厚みの最大値と最小値の差が0.2μm以上1.0μm未満である。
D:塗布液の層の厚みの最大値と最小値の差が1.0μm以上である。
【0084】
[実施例1]
(1-1.支持装置の準備)
支持装置として実施形態1で説明した形状の支持装置100を準備した。支持体の材料として平均孔径が1.0μmの多孔質カーボンを用いた。支持体110の内部に、第1支持部110A、第2支持部110Bおよび第3支持部110Cを仕切る仕切り壁112A,112Bと、第2支持部110Bを、基材フィルム11の幅方向に5つの部分(外端部110SO1、端部110S1、中央部110BC、端部110S2、外端部110SO2)に仕切る仕切り壁112C1,112C21,112C3,112C4と、を設けた。支持体曲面の塗布装置の直下の部分および当該塗布装置の直下の部分から支持体曲面(搬送方向)に沿って±25mmの部分を第2支持部とし、第2支持部よりも搬送経路の上流の部分を第1支持部とし、第2支持部よりも搬送経路の下流の部分を第3支持部とした。また、第2支持部の端部110S1、110S2は、基材フィルム11の幅方向端部11S1,11S2に対応する位置から、幅方向内側へ200mmまでの部分とした。仕切り壁により仕切られた部分には、それぞれ気体の流量を独立して調整する調整弁付きの供給管を取り付けた。
【0085】
(1-2.塗布液の調製)
重合性液晶化合物として、下記式(A-1)で表される化合物を19.18部、架橋剤(商品名「NKエステルA-DCP」、新中村化学工業社製)1.92部(重合性液晶化合物100部に対して10部)、界面活性剤(商品名「メガファックF-562」、DIC社製)0.06部、光重合開始剤(商品名「IrgacureOXE04」、BASF社製)0.84部(重合性液晶化合物100部に対して4部)、及びシクロペンタノンおよび1,3-ジオキソランの混合溶媒78部を混合し、液晶組成物(X)を調製した。
【0086】
【化1】
【0087】
(1-3.液晶組成物の塗布工程)
日本ゼオン(株)製の斜め延伸フィルム(厚み77μm、幅1330mm、長さ2000m)から保護フィルムを剥離したものを、基材フィルムとして用いた。
(1-1)で準備した支持装置を用いて、基材フィルムを非接触状態で支持しながら搬送し、基材フィルムの保護フィルムが貼合されていた側の面に、(1-2)で得られた塗布液を、ダイコーターにより直接塗布し、塗布液の層を形成した。塗布工程においては、噴出する気体の流量を、以下のように調整した。
第1支持部から噴出する気体の流量F1:0.090mL/分・cm
第2支持部から噴出する気体の流量F2(第2支持部の中央部110BCから噴出する気体の流量F2c):0.030mL/分・cm
第2支持部の端部110S1,110S2から噴出する気体の流量F2s:0.060mL/分・cm
第2支持部の外端部110SO1,110SO2から噴出する気体の流量F2os:0.085mL/分・cm
第3支持部から噴出する気体の流量F3:0.160mL/分・cm
つまり本例では塗布工程を式(1)を満たす条件で行った。
【0088】
(1-4.配向処理)
(1-3)で形成した、基材フィルム上の塗布液の層を、110℃の乾燥炉中で2.5分間乾燥させた。これにより、基材フィルム上の塗布液の層が配向処理された。
【0089】
(1-5.重合工程)
その後、窒素雰囲気下で、(1-4)の処理を行った後の塗布液の層に、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)以上の紫外線をアイグラフィックス社製「水銀ランプ」より照射して、塗布液中の重合性液晶化合物を重合させて、硬化液晶分子を形成した。これにより、乾燥膜厚2.4μmの、ホモジニアス配向した組成物の硬化物で形成された重合体層を得て、(基材)/(重合体層)の層構成を有する複層フィルムを得た。得られた複層フィルムについて評価試験を行ったところ、面状不良(横段およびスポットムラ)の発生も傷の発生もなく、幅方向の膜厚の均一性も優れていた。
【0090】
(実施例2)
実施例1の(1-3)において、F2osを0.060mL/分・cmとしたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、複層フィルムを得た。本例でも、塗布工程を式(1)を満たす条件で行った。得られた複層フィルムについて評価試験を行ったところ、面状不良(横段およびスポットムラ)の発生も傷の発生もなかった。フィルムの幅方向の端部がわずかに膜厚であったが、膜厚の均一性は良好であった。
【0091】
(実施例3)
実施例1の(1-3)において、F2sを0.030mL/分・cm、F2osを0.030mL/分・cmとしたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、複層フィルムを得た。本例でも、塗布工程を式(1)を満たす条件で行った。得られた複層フィルムについて評価試験を行ったところ、面状不良(横段およびスポットムラ)の発生も傷の発生もなかった。フィルムの幅方向の端部が少し膜厚であったが、使用において問題のない範囲であった。
【0092】
(実施例4)
実施例1の(1-3)において、(1-1)で準備した支持装置に代えて、以下に説明する支持装置を用いたこと、F1を1.0mL/分・cm、F2(F2c)を0.50mL/分・cm、F2sを0.50mL/分・cm、F2osを0.50mL/分・cm、F3を1.8mL/分・cmとしたこと以外は実施例1と同じ操作を行い、複層フィルムを得た。本例でも、塗布工程を式(1)を満たす条件で行った。得られた複層フィルムについて評価試験を行ったところ、傷の発生はなく、面状不良はなかったが、搬送方向において、少しムラが認められた。フィルムの幅方向の端部が少し膜厚であったが、使用において問題のない範囲であった。
支持装置:材料としてステンレス鋼(SUS)を用い、直径2mmの孔を均一に設けた支持体を備える支持装置を準備した。支持体110の構造は、実施例1と同じ構造とした。
【0093】
(比較例1)
実施例1の(1-3)において、F2sを0.03mL/分・cm、F2osを0.03mL/分・cm、F3を0.09mL/分・cmとしたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、複層フィルムを得た。得られた複層フィルムについて評価試験を行ったところ、面状不良の発生はなかったが、第3支持部において浮上量が小さいことに起因する傷の発生が認められた。また、フィルムの幅方向の端部の浮上量が小さいことに起因して端部の膜厚が大きくなり、膜厚の均一性が悪かった。
【0094】
(比較例2)
実施例1の(1-3)において、F2(F2c)を0.09mL/分・cm、F2sを0.09mL/分・cm、F2osを0.09mL/分・cm、F3を0.09mL/分・cmとしたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、複層フィルムを得た。得られた複層フィルムについて評価試験を行ったところ、第2支持部において浮上量が大きいことに起因して横段が発生した。また第3支持部において浮上量が小さいことに起因する傷が発生し、フィルムの幅方向の端部の浮上量が小さいことに起因して端部の膜厚が大きくなり、膜厚の均一性が悪かった。
【0095】
(比較例3)
実施例1の(1-3)の工程に代えて以下の(C3-3)の工程を行ったこと以外は実施例1と同じ操作を行い、複層フィルムを得た。得られた複層フィルムについて評価試験を行ったところ、傷の発生は認められず、膜厚の均一性は良好であったが、横段およびスポット状の塗布ムラが発生した。
【0096】
(C3-3.液晶組成物の塗布工程)
日本ゼオン(株)製の斜め延伸フィルム(厚み77μm、幅1330mm、長さ2000m)から保護フィルムを剥離したものを、基材フィルムとして用いた。
炭素鋼製のバックアップロールを用いて、基材フィルムを接触状態で支持しながら搬送し、基材フィルムの保護フィルムが貼合されていた側の面に、(1-2)で得られた塗布液を、ダイコーターにより直接塗布し、塗布液の層を形成した。本例で用いたバックアップロールは、孔が形成されていない円筒状のコーティングロールである。
【0097】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、各例における各支持部および第2支持部の各部分における気体の供給量とともに下記の表1に示す。表中、「基材フィルムの支持状態」欄の「非接触」とは、支持装置により、基材フィルムが非接触状態で支持されていることを示し、「接触」とは、バックアップロールにより、基材フィルムが接触状態で支持されていることを示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
[結果]
以上の結果によれば、塗布工程を、式(1)を満たす条件で行った実施例1~4では、比較例1~3と比較して、面状不良の発生及び傷の発生を抑制できるということが分かる。上記結果から、本発明によれば、面状不良の発生及び傷の発生を抑制できる複層フィルムの製造方法を実現しうる。
【符号の説明】
【0101】
10…複層フィルム
11…基材フィルム
11A…おもて面
11B…裏面
12…塗布液を含む層
100,200,300…支持装置
110,210,310,410…支持体
110A…第1支持部
110B…第2支持部
110BC…中央部
110S1,110S2…端部
110SO1,110S2…外端部
110C…第3支持部
110T…曲面
112A、112B、112C1、112C2、112C3、112C4…仕切り壁
150A、150B(150B1~150B5)、150C…調製弁
151A、151B(151B1~151B5)、151C…供給管
211A、211B、211C、211D、211E…(支持体の)部分
212A、212B、212C、212D…仕切り壁
250A,250B、250C、250D、250E…調整弁
251…供給管
311A、311B、311C、311D、311E…(支持体の)部分
411A1、411A2、411A3…第1支持部
411B1、411B2、411B3…第2支持部
411C1、411C2、411C3…第3支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6