(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】セラミックハニカム構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20240611BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20240611BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20240611BHJP
C04B 38/06 20060101ALI20240611BHJP
C04B 35/195 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
F01N3/022 C
C04B38/06 D
C04B35/195
(21)【出願番号】P 2021552281
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035603
(87)【国際公開番号】W WO2021075211
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2019189305
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】清水 健一郎
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171318(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046012(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/013509(WO,A1)
【文献】特開2015-71165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00
B01D 39/20
B01D 46/00
C04B 38/00
C04B 38/06
F01N 3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁で仕切られ軸方向に形成された多数の流路を有するセラミックハニカム構造体であって、前記隔壁は、
(a)気孔率が52~63%、
(b)水銀圧入法により測定された細孔分布において、
(i)細孔径100μm以上の細孔容積が全細孔容積の2.2~3.0%、
細孔径40μm以上の細孔容積が全細孔容積の4.2~5.0%、
細孔径30μm以上の細孔容積が全細孔容積の5.8~6.5%、
細孔径5μm以上8μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、
細孔径1μm以上4μm未満の細孔容積が全細孔容積の9.6%を超え13%以下、
細孔径3μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、
細孔径2μm未満の細孔容積が全細孔容積の4.5~7.0%、
細孔径1μm未満の細孔容積が全細孔容積の1.7~4.0%、
(ii)累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径d10が18~22μm、
25%となる細孔径d25が13.0~15.5μm、
50%となる細孔径(メジアン細孔径)d50が10~13μm、
75%となる細孔径d75が6~9μm、
(iii)累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径d20の対数と80%となる細孔径d80の対数との差σ
1=log(d20)-log(d80)が0.45以下であることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックハニカム構造体において、
累積細孔容積が全細孔容積の75%となる細孔径d75の対数と85%となる細孔径d85の対数との差σ
2=log(d75)-log(d85)が0.20~0.30 であることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミックハニカム構造体において、
前記気孔率が54~61%であることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体において、
40~800℃間の前記流路方向の熱膨張係数が3×10
-7/℃~11×10
-7/℃であることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項5】
セラミック原料粉末及び中空の樹脂粒子からなる造孔材を含む坏土を所定の成形体に押出成形し、前記成形体を乾燥及び焼成する工程を有するセラミックハニカム構造体の製造方法であって、
前記坏土に含まれる前記造孔材の割合が、前記セラミック原料粉末100質量部に対して1~8質量部であり、
前記セラミック原料粉末が、15~22質量%のシリカ、40~43質量%のタルク、15~30質量%のアルミナ、及び、1~13質量%のカオリンを含有し、
前記シリカは、メジアン径D50が13~25μm、D10が1~5μm、D90が30~40μm、10μm以下の粒子径を有する粒子の割合が20~35質量%、100μm以上の粒子径を有する粒子の割合が2質量%以下、粒度分布偏差SD2[ただし、SD2=log(D80)-log(D20)であり、D20は全体積の20%に相当する累積体積での粒子径、D80は全体積の80%に相当する累積体積での粒子径でありD20<D80である。]が0.40~0.65であり、
前記タルクは、メジアン径D50が5~15μmであり、
前記アルミナは、メジアン径D50が3~6μmであり、
前記造孔材は、メジアン径D50が20~55μm、粒子径と累積体積との関係を示す曲線において、全体積の10%に相当する累積体積での粒子径D10が15~30μm、90%に相当する累積体積での粒子径D90が60~80μm、粒度分布偏差SD1[ただし、SD1=log(D80)-log(D20)であり、D20は全体積の20%に相当する累積体積での粒子径、D80は全体積の80%に相当する累積体積での粒子径でありD20<D80である。]が0.20~0.35であることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質(パティキュレートマター(以下、「PM」という場合がある。))等を除去し、排ガスを浄化するためのセラミックハニカムフィルタ、特に粒径50 nm以下の微粒子(いわゆるナノ粒子)を除去するためのセラミックハニカムフィルタに用いられるセラミックハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中には、炭素質からなる煤と高沸点炭化水素成分からなるSOF分(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)とを主成分とするPM(Particulate Matter:粒子状物質)が含まれており、これが大気中に放出されると人体や環境に悪影響を与えるおそれがあるため、ディーゼルエンジンの排気管の途中に、PMを捕集するためのセラミックハニカムフィルタを装着することが従来から行われている。排気ガス中のPMを捕集し排気ガスを浄化するためのセラミックハニカムフィルタの一例を
図1及び
図2に示す。セラミックハニカムフィルタ10は、複数の流路3,4を形成する多孔質の隔壁2と外周壁1とからなるセラミックハニカム構造体と、流路3,4の排気ガス流入側端面8及び流出側端面9を市松模様に交互に封止する流入側封止部6a及び流出側封止部6cとからなる。セラミックハニカムフィルタ10は、金属メッシュ又はセラミックス製のマット等で形成された把持部材(図示せず)で外周壁1を把持することにより、使用中に動かないように固定され、金属製収納容器(図示せず)内に配置される。
【0003】
セラミックハニカムフィルタ10において、排気ガスは以下のようにして浄化される。排気ガスは、
図2に点線矢印で示すように、排気ガス流入側端面8に開口している流出側封止流路3からセラミックハニカムフィルタ10に流入し、隔壁2を通過し、排気ガス流出側端面9に開口している流入側封止流路4から流出し、大気中に放出される。排気ガスが隔壁2を通過する際に排気ガス中のPMが隔壁2の表面及び内部に存在する連通孔に捕集され、排気ガスの浄化が行われる。
【0004】
隔壁2にPMが捕集され続けると、隔壁の表面及び内部の連通孔がPMにより目詰まりしてしまい、排気ガスがセラミックハニカムフィルタを通過する際の圧力損失、つまりPMが捕集された際の圧力損失が上昇する。このため、PMが捕集された際の圧力損失が規定値に達する前にPMを燃焼除去してセラミックハニカムフィルタを再生する必要がある。PMが捕集された際の圧力損失が規定値に到達する頻度が多くなる、つまり、PMが捕集された際の圧力損失特性が良好でない場合、再生する頻度が増え、再生による燃焼によりセラミックハニカムフィルタの溶損が加速されて寿命が短くなる場合がある。セラミックハニカムフィルタは、微粒子の高い捕集率及び低圧力損失を満足する必要があるが、両者は相反する関係にあるため、気孔率、細孔容積、隔壁表面に存在する細孔の大きさ等を制御して両者を満足させる技術が従来から検討されている。
【0005】
PM中には、粒径50 nm以下の、いわゆるナノ粒子が数多く存在する。これらのナノ粒子を体内に吸入した場合、それより大きな同質量の粒子を吸入した場合に比べて、呼吸器系への沈着率が高い。また、ナノ粒子は体積当たりの表面積が相対的に大きいため、粒子表面に毒性を有する化学物質が吸着した場合、より強い毒性を有するPM粒子となるおそれがある。PM中に含まれるナノ粒子は質量的には少ないため、現行のPM質量基準の規制では不十分であり、今後の排出ガス規制として、排出される粒子数量に大きく影響するナノ粒子の排出を抑制するための基準(PM粒子数基準)の導入が進められている。この基準を満足させるためには、ハニカムフィルタには優れた圧力損失特性、なかでも使用開始時の初期圧力損失よりも、PMが捕集された際の優れた圧力損失特性が重要であることに加えて、現行のPM質量基準での捕集率ではなく、PM粒子数、とりわけナノ粒子数基準での捕集率を向上させることが必要となる。
【0006】
特許文献1(国際公開第2016/152709号)は、多孔質の隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体であって、前記隔壁は、(a)気孔率が50~60%、(b)水銀圧入法により測定された細孔分布において、(i)累積細孔容積が全細孔容積の5%となる細孔径d5が22μm以上55μm未満、10%となる細孔径d10が15~35μm、50%となる細孔径(メジアン細孔径)d50が10~20μm、85%となる細孔径d85が5~9μm、90%となる細孔径d90が3~8μm、98%となる細孔径d98が2.5μm以下、(d10-d90)/d50が1.3~1.8、(d50-d90)/d50が0.45~0.75、及び(d10-d50)/d50が0.75~1.1であり、(ii)累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径d20の対数と80%となる細孔径d80の対数との差σ=log(d20)-log(d80)が0.39以下であるセラミックハニカム構造体を開示しており、このセラミックハニカム構造体は、使用開始初期のPMが堆積する前の状態であっても、排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集することができ、PM粒子数基準での捕集率が改善され、PMが捕集された際の圧力損失特性が低下しないと記載している。なお、本発明において「使用開始初期のPMが堆積する前の状態」とは、セラミックハニカムフィルタを未使用の状態から使用する時、又は再生処理した後再び使用する時をいうものとする。
【0007】
特許文献2(国際公開第2016/152727号)は、多孔質の隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体であって、前記隔壁は、(a)気孔率が50~63%、(b)水銀圧入法により測定された細孔分布において、(i)累積細孔容積が全細孔容積の2%となる細孔径d2が180μm超250μm以下、5%となる細孔径d5が55~150μm、10%となる細孔径d10が17~40μm、50%となる細孔径(メジアン細孔径)d50が10~20μm、85%となる細孔径d85が5.5~10μm、90%となる細孔径d90が3.5~9μm、98%となる細孔径d98が2.5μm以下、(d10-d90)/d50が1.3~2、(d50-d90)/d50が0.45~0.75、及び(d10-d50)/d50が0.75~1.4であり、(ii)累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径d20の対数と80%となる細孔径d80の対数との差σ=log(d20)-log(d80)が0.39以下であり、(iii)100μm超の細孔容積が0.03 cm3/g以下であるセラミックハニカム構造体を開示しており、このセラミックハニカム構造体は、使用開始初期のPMが堆積する前の状態であっても、排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集することができ、PM粒子数基準での捕集率が改善され、PMが捕集された際の圧力損失特性が低下しないと記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載されたセラミックハニカム構造体においては、使用開始初期のPMが堆積する前の状態であっても、排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集することができ、PM粒子数基準での捕集率の改善、及びPMが捕集された際の圧力損失特性が低下しないといった効果が認められる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されたセラミックハニカム構造体は50%以上の高気孔率であることから、ハンドリング等における衝撃に対する強度に関して、さらなる改善が望まれている。
【0009】
従って、本発明の目的は、使用開始初期のPMが堆積する前の状態であっても、排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集するPM捕集率と、ハニカムフィルタとしての圧力損失特性である使用開始時の初期圧力損失よりも重要となる、PMが捕集された際の圧力損失特性とを良好に維持しつつ、強度がさらに改善されたセラミックハニカム構造体及びそのようなセラミックハニカム構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明者等は、セラミックハニカム構造体の細孔分布において、細孔径5μm以上8μm未満の細孔容積がセラミックハニカム構造体の強度に影響を与え、さらに細孔径1μm以上4μm未満の細孔容積がPMが捕集された際の圧力損失特性に影響を与えることを見いだし、本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明のセラミックハニカム構造体は、多孔質の隔壁で仕切られ軸方向に形成された多数の流路を有し、前記隔壁は、(a)気孔率が52~63%、(b)水銀圧入法により測定された細孔分布において、細孔径100μm以上の細孔容積が全細孔容積の2.2~3.0%、細孔径40μm以上の細孔容積が全細孔容積の4.2~5.0%、細孔径30μm以上の細孔容積が全細孔容積の5.8~6.5%、細孔径5μm以上8μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、細孔径1μm以上4μm未満の細孔容積が全細孔容積の9.6%を超え13%以下、細孔径3μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、細孔径2μm未満の細孔容積が全細孔容積の4.5~7.0%、細孔径1μm未満の細孔容積が全細孔容積の1.7~4.0%、累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径d10が18~22μm、25%となる細孔径d25が13.0~15.5μm、50%となる細孔径(メジアン細孔径)d50が10~13μm、75%となる細孔径d75が6~9μm、累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径d20の対数と80%となる細孔径d80の対数との差σ=log(d20)-log(d80)が0.45以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明のセラミックハニカム構造体において、累積細孔容積が全細孔容積の75%となる細孔径d75の対数と85%となる細孔径d85の対数との差σ=log(d75)-log(d85)が0.20~0.30であるのが好ましい。
本発明のセラミックハニカム構造体において、前記気孔率が54~61%であるのが好ましい。
【0013】
本発明のセラミックハニカム構造体において、40~800℃間の前記流路方向の熱膨張係数が3×10-7/℃~11×10-7/℃であるのが好ましい。
【0014】
セラミックハニカム構造体を製造する本発明の方法は、セラミック原料粉末及び中空の樹脂粒子からなる造孔材を含む坏土を所定の成形体に押出成形し、前記成形体を乾燥及び焼成する工程を有し、前記坏土に含まれる前記造孔材の割合が、前記セラミック原料粉末100質量部に対して1~8質量部であり、前記セラミック原料粉末が、15~22質量%のシリカ、40~43質量%のタルク、15~30質量%のアルミナ、及び1~13質量%のカオリンを含有し、前記シリカは、メジアン径D50が13~25μm、D10が1~5μm、D90が30~40μm、10μm以下の粒子径を有する粒子の割合が20~35質量%、100μm以上の粒子径を有する粒子の割合が2質量%以下、及び粒度分布偏差SD2[ただし、SD2=log(D80)-log(D20)であり、D20は全体積の20%に相当する累積体積での粒子径、D80は全体積の80%に相当する累積体積での粒子径でありD20<D80である。]が0.40~0.65であり、前記タルクは、メジアン径D50が5~15μmであり、前記アルミナは、メジアン径D50が3~6μmであり、前記造孔材は、メジアン径D50が20~55μm、並びに粒子径と累積体積との関係を示す曲線において、全体積の10%に相当する累積体積での粒子径D10が15~30μm、90%に相当する累積体積での粒子径D90が60~80μm、及び粒度分布偏差SD1[ただし、SD1=log(D80)-log(D20)であり、D20は全体積の20%に相当する累積体積での粒子径、D80は全体積の80%に相当する累積体積での粒子径でありD20<D80である。]が0.20~0.35であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用開始初期のPMが堆積する前の状態であっても、排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集でき、PMが捕集され蓄積した場合の圧力損失特性を良好に維持できるとともに、強度が改善されたセラミックハニカム構造体及びそのようなセラミックハニカム構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】セラミックハニカムフィルタの一例を模式的に示す正面図である。
【
図2】セラミックハニカムフィルタの一例を模式的に示す軸方向に平行な断面図である。
【
図3】水銀圧入法によって測定した実施例1のセラミックハニカム構造体の隔壁の細孔径と累積細孔容積との関係を示す累積細孔容積曲線である。
【
図4】
図3に示す累積細孔容積曲線での全細孔容積に対する割合を示した細孔容積曲線で、d20を求める方法を説明するためのグラフである。
【
図5(a)】本発明のセラミックハニカム構造体の断面において、隔壁交差部に形成された角R部を模式的に示す断面図である。
【
図5(b)】本発明のセラミックハニカム構造体の断面において、隔壁交差部に形成された扇状凸部を模式的に示す断面図である。
【
図6(a)】本発明のセラミックハニカム構造体の隔壁交差部における扇状凸部の一例を示す模式図である。
【
図6(b)】本発明のセラミックハニカム構造体の隔壁交差部における扇状凸部の他の例を示す模式図である。
【
図6(c)】本発明のセラミックハニカム構造体の隔壁交差部における扇状凸部のさらに他の例を示す模式図である。
【
図7】ハニカム成形用金型の押出方向に平行な断面を示す模式図である。
【
図8(a)】ハニカム成形用金型におけるスリット交差部の一例を示す模式図である。
【
図8(b)】ハニカム成形用金型におけるスリット交差部の他の例を示す模式図である。
【
図8(c)】ハニカム成形用金型におけるスリット交差部のさらに他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
[1]セラミックハニカム構造体
本発明のセラミックハニカム構造体は、多孔質の隔壁で仕切られ軸方向に形成された多数の流路を有し、前記隔壁は、(a)気孔率が52~63%、(b)水銀圧入法により測定された細孔分布において、細孔径100μm以上の細孔容積が全細孔容積の2.2~3.0%、細孔径40μm以上の細孔容積が全細孔容積の4.2~5.0%、細孔径30μm以上の細孔容積が全細孔容積の5.8~6.5%、細孔径5μm以上8μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、細孔径1μm以上4μm未満の細孔容積が全細孔容積の9.6%を超え13%以下、細孔径3μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、細孔径2μm未満の細孔容積が全細孔容積の4.5~7.0%、細孔径1μm未満の細孔容積が全細孔容積の1.7~4.0%、累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径d10が18~22μm、25%となる細孔径d25が13.0~15.5μm、50%となる細孔径(メジアン細孔径)d50が10~13μm、75%となる細孔径d75が6~9μm、累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径d20の対数と80%となる細孔径d80の対数との差σ=log(d20)-log(d80)が0.45以下である。
【0019】
このような構成を有することにより、使用開始初期のPMが堆積する前の状態においても、排出される粒子数量に大きく影響する微小なPMを有効に捕集することができ、PM粒子数基準でのPM捕集率と、PMが捕集され蓄積した際の圧力損失特性とを良好に維持しつつ、強度が改善されたセラミックハニカム構造体を得ることができる。
【0020】
(a)隔壁の気孔率
隔壁の気孔率は52~63%である。前記気孔率が52%未満の場合、PMが捕集され蓄積した際の低い圧力損失を維持し難くなり、一方、前記気孔率が63%を超えると、ナノサイズのPM捕集率が低下する。前記気孔率の上限は、好ましくは61%、さらに好ましくは60%であり、下限は、好ましくは54%、さらに好ましくは55%である。なお隔壁の気孔率は後述の水銀圧入法で測定する。
【0021】
(b)隔壁の細孔分布
本発明のセラミックハニカム構造体は、前記効果を得るため隔壁の細孔分布を従来以上に狭い範囲に限定している。細孔分布曲線は、
図4に示すように微細な細孔領域及び粗大な細孔領域とその中間の領域
で傾きが異なるため、(i)特定の細孔径範囲の細孔容積割合を規定する方法と、(ii)特定の細孔容積割合となる細孔径を規定する方法の2通りの方法を用いて細孔分布を規定した。細孔径4μm未満の微細細孔領域及び細孔径30μm以上の粗大細孔領域には(i)を用い、その中間の領域には(ii)を用いた。
【0022】
(i)細孔径100μm以上、40μm以上、30μm以上、5μm以上8μm未満、1μm以上4μm未満、3μm未満、2μm未満、及び1μm未満の細孔容積
水銀圧入法により測定された隔壁の細孔分布曲線(例えば、
図4)において、細孔径100μm以上の細孔容積が全細孔容積の2.2~3.0%、細孔径40μm以上の細孔容積が全細孔容積の4.2~5.0%、細孔径30μm以上の細孔容積が全細孔容積の5.8~6.5%、細孔径5μm以上8μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、細孔径1μm以上4μm未満の細孔容積が全細孔容積の9.6%を超え13%以下、細孔径3μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、細孔径2μm未満の細孔容積が全細孔容積の4.5~7.0%、細孔径1μm未満の細孔容積が全細孔容積の1.7~4.0%である。ここで、水銀圧入法により測定された隔壁の細孔分布曲線とは、例えば
図3に示すように、細孔径に対して累積細孔容積をプロットした曲線(累積細孔容積曲線)であり、細孔径の大きい側から小さい側に向かって積算して表したもので、
図4は、
図3に示す累積細孔容積曲線を基に、その全細孔容積を100%として、規格化して示したグラフである。これらのグラフにおいて、細孔径100μm以上の細孔容積が全細孔容積に占める割合<細孔径40μm以上の細孔容積が全細孔容積に占める割合<細孔径30μm以上の細孔容積が全細孔容積に占める割合となる。同様に、細孔径3μm未満の細孔容積が全細孔容積に占める割合>細孔径2μm未満の細孔容積が全細孔容積に占める割合>細孔径1μm未満の細孔容積が全細孔容積に占める割合となる。
【0023】
100μm以上の細孔容積は全細孔容積の2.2~3.0%である。100μm以上の細孔容積が全細孔容積の3.0%超の場合、ナノサイズのPM捕集率が低下するとともに、粗大な細孔の割合が多くなるので、セラミックハニカム構造体の機械的強度が良好でなくなる場合がある。一方、100μm以上の細孔容積が全細孔容積の2.2%未満の場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなる。100μm以上の細孔容積の上限は、好ましくは2.9%である。
【0024】
40μm以上の細孔容積は全細孔容積の4.2~5.0%である。40μm以上の細孔容積が全細孔容積の5.0%超の場合、粗大な細孔の割合が多くなるので、セラミックハニカム構造体の強度の改善が望めない場合があるとともに、ナノサイズのPMを有効に捕集することが難しくなる。一方、40μm以上の細孔容積が全細孔容積の4.2%未満の場合、PM捕集後の圧力損失を低く維持することが難しくなる。40μm以上の細孔容積の上限は、好ましくは4.9%であり、下限は、好ましくは4.3%である。
【0025】
30μm以上の細孔容積は全細孔容積の5.8~6.5%である。30μm以上の細孔容積が全細孔容積の6.5%超の場合、粗大な細孔の割合が多くなるので、セラミックハニカム構造体の強度の改善が望めない場合があるとともに、ナノサイズのPMを有効に捕集することが難しくなる。一方、30μm以上の細孔容積が全細孔容積の5.8%未満の場合、PM捕集後の圧力損失を低く維持することが難しくなる。30μm以上の細孔容積の上限は、好ましくは6.4%であり、下限は、好ましくは5.9%である。
【0026】
5μm以上8μm未満の細孔容積は全細孔容積の8~12%である。5μm以上8μm未満の細孔容積をこのような範囲とすることにより、使用開始初期のPMが堆積する前の状態であっても、排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集でき、PMが捕集され蓄積した場合の圧力損失特性を良好に維持できるとともに、強度の改善が達成できる。5μm以上8μm未満の細孔容積が全細孔容積の12%超の場合、セラミックハニカム構造体の強度の改善が望めない場合がある。一方、5μm以上8μm未満の細孔容積が全細孔容積の8%未満の場合、相対的に粗大な細孔の割合が多くなり、ナノサイズのPMを有効に捕集することが難しくなる。5μm以上8μm未満の細孔容積の上限は、好ましくは11.5%、さらに好ましくは11.0%であり、下限は、好ましくは8.5%、さらに好ましくは9.0%である。
【0027】
1μm以上4μm未満の細孔容積は全細孔容積の9.6%を超え13%以下である。1μm以上4μm未満の細孔容積をこのような範囲とすることにより、使用開始初期のPMが堆積する前の状態であっても、排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集でき、PMが捕集され蓄積した場合の圧力損失特性を良好に維持できるとともに、強度の改善が達成できる。1μm以上4μm未満の細孔容積が全細孔容積の13%超の場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなる。一方、1μm以上4μm未満の細孔容積が全細孔容積の9.6%以下の場合、相対的に粗大な細孔の割合が多くなるので、セラミックハニカム構造体の強度の改善が望めない場合があるとともに、ナノサイズのPMを有効に捕集することが難しくなる。1μm以上4μm未満の細孔容積の上限は、好ましくは12.5%、さらに好ましくは12.0%であり、下限は、好ましくは9.8%、さらに好ましくは10%である。
【0028】
3μm未満の細孔容積は全細孔容積の8~12%である。3μm未満の細孔容積が全細孔容積の12%超の場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなる。一方、3μm未満の細孔容積が全細孔容積の8%未満の場合、ナノサイズのPMを有効に捕集することが難しくなる。3μm未満の細孔容積の上限は、好ましくは11%、さらに好ましくは10.5%であり、下限は、好ましくは8.2%である。
【0029】
2μm未満の細孔容積は全細孔容積の4.5~7.0%である。2μm未満の細孔容積が全細孔容積の7.0%超の場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなる。一方、2μm未満の細孔容積が全細孔容積の4.5%未満の場合、ナノサイズのPMを有効に捕集することが難しくなる。2μm未満の細孔容積の上限は、好ましくは6.5%、さらに好ましくは6.2%であり、下限は、好ましくは4.7%、さらに好ましくは4.9%である。
【0030】
1μm未満の細孔容積は全細孔容積の1.7~4.0%である。1μm未満の細孔容積が全細孔容積の4.0%超の場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなる。一方、1μm未満の細孔容積が全細孔容積の1.7%未満の場合、ナノサイズのPMを有効に捕集することが難しくなる。1μm未満の細孔容積の上限は、好ましくは3.5%、さらに好ましくは3.0%である。
【0031】
(ii) d10、d25、d50及びd75
水銀圧入法により測定された隔壁の細孔分布曲線において、累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径d10が18~22μm、25%となる細孔径d25が13.0~15.5μm、50%となる細孔径(メジアン細孔径)d50が10~13μm、75%となる細孔径d75が6~9μmである。ここで、水銀圧入法により測定された隔壁の細孔分布曲線とは、前述したように、細孔径に対して累積細孔容積をプロットした曲線(累積細孔容積曲線;例えば
図3を参照)であり、細孔径の大きい側から小さい側に向かって積算して表したものなので、d10>d25>d50>d75となる。
【0032】
累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径d10は18~22μmである。細孔径d10が18μm未満である場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなり、22μm超である場合、ナノサイズのPM捕集率が低下する。d10の上限は好ましくは21.5μm、さらに好ましくは21.0μmであり、下限は、好ましくは18.5μm、さらに好ましくは19.0μmである。
【0033】
累積細孔容積が全細孔容積の25%となる細孔径d25は13.0~15.5μmである。細孔径d25が13.0μm未満である場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなり、15.5μm超である場合、ナノサイズのPM捕集率が低下する。d25の上限は好ましくは15.0μm、さらに好ましくは14.5μmであり、下限は、好ましくは13.5μm、さらに好ましくは14.0μmである。
【0034】
メジアン細孔径d50は10~13μmである。前記メジアン細孔径d50が10μm未満である場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなる。一方、前記メジアン細孔径d50が13μm超の場合、PM捕集に有効な細孔径10~20μmの細孔が少なくなり、ナノサイズのPM捕集率が低下する。前記メジアン細孔径d50の上限は好ましくは12.5μm、さらに好ましくは12.0μmであり、下限は、好ましくは10.5μm、さらに好ましくは11.0μmである。
【0035】
累積細孔容積が全細孔容積の75%となる細孔径d75は6~9μmである。細孔径d75が6μm未満である場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなり、9μm超である場合、ナノサイズのPM捕集率が低下する。d75の上限は好ましくは8.5μm、さらに好ましくは8.0μmであり、下限は、好ましくは6.5μm、さらに好ましくは7.0μmである。
【0036】
(iii) d20の対数と及びd80の対数との差σ1
水銀圧入法により測定された隔壁の細孔分布曲線において、累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径d20の対数と80%となる細孔径d80の対数との差σ1=log(d20)-log(d80)は0.45以下である。σ1が0.45超の場合、使用開始時の初期圧力損失を低く維持することが難しくなる。σ1は好ましくは0.42以下であり、さらに好ましくは0.39以下であり、下限は好ましくは0.30以上である。なお、本発明において対数とは、10を底とする常用対数をいう。
【0037】
(iv) d75の対数と及びd85の対数との差σ2
水銀圧入法により測定された隔壁の細孔分布曲線において、累積細孔容積が全細孔容積の75%となる細孔径d75の対数と85%となる細孔径d85の対数との差σ2=log(d75)-log(d85)は0.20~0.30であるのが好ましい。σ2をこのような範囲とすることにより、使用開始初期のPMが堆積する前の状態であっても、排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集するPM捕集率と、PMが捕集され蓄積された場合の圧力損失特性とを良好に維持しつつ、強度の改善が達成できる。σ2が0.30超の場合、PMが捕集され蓄積された場合の圧力損失特性を良好に維持することが難しくなる。σ2は好ましくは0.29以下であり、さらに好ましくは0.28以下である。一方、σ2が0.20未満の場合、相対的に微細な細孔の割合が小さくなり、粗大な細孔の割合が多くなるので、セラミックハニカム構造体の強度の改善が望めない場合があるとともに、ナノサイズのPMを有効に捕集することが難しくなる。σ2は好ましくは0.21以上であり、さらに好ましくは0.22以上である。なお、本発明において対数とは、10を底とする常用対数をいう。
【0038】
(iv)水銀圧入法
水銀圧入法による累積細孔容積の測定は、Micromeritics社製のオートポアIII 9410を使用して測定することができる。この測定は、セラミックハニカム構造体から切り出した試験片(10 mm×10 mm×10 mm)を測定セル内に収納し、セル内を減圧した後、水銀を導入して加圧したときに、試験片内に存在する細孔中に押し込まれた水銀の体積を求めることによって行う。この時加圧力が大きくなればなるほど、より微細な細孔にまで水銀が浸入するので、加圧力と細孔中に押し込まれた水銀の体積との関係から、細孔径と累積細孔容積(最大の細孔径から特定の細孔径までの細孔容積を累積した値)の関係を求めることができる。水銀の浸入は細孔径の大きいものから小さいものへと順次行われ、前記圧力を細孔径に換算し、細孔径の大きい側から小さい側に向かって積算した累積細孔容積(水銀の体積に相当)を細孔径に対してプロットし、例えば、
図3に示すように、細孔径と累積細孔容積との関係を示すグラフを得る。本願において、水銀を導入開始する圧力は0.5 psi(0.35×10
-3 kg/mm
2、細孔径約362μmに相当)とし、水銀の加圧力が1800 psi(1.26 kg/mm
2、細孔径約0.1μmに相当)に達した時の累積細孔容積を全細孔容積とする。
【0039】
得られた水銀圧入法の測定結果から、全細孔容積、気孔率、累積細孔容積が全細孔容積に対して規定の割合となる細孔径(d20、d25、d50・・・等)、及び規定の細孔径範囲にある細孔容積の全細孔容積に対する割合を求め、さらにσ1=log(d20)-log(d80)及びσ2=log(d75)-log(d85)を算出する。
【0040】
気孔率は、全細孔容積と、隔壁材質の真比重とから計算によって求めることができる。例えば、セラミックハニカム構造体の隔壁の材質がコーディエライトである場合は、コーディエライトの真比重2.52g/cm3を用いて、全細孔容積をVとすると、[2.52V/(1+2.52V)]×100(%) から計算する。
【0041】
(c)熱膨張係数
セラミックハニカム構造体は、40~800℃間の流路方向の熱膨張係数が13×10-7/℃以下であるのが好ましい。このような熱膨張係数を有するセラミックハニカム構造体は、高い耐熱衝撃性を有するので、ディーゼル機関の排出ガス中に含まれる微粒子を除去するためのセラミックハニカムフィルタとして、十分に実用に耐えることができる。前記熱膨張係数は、好ましくは3×10-7/℃~11×10-7/℃、さらに好ましくは5×10-7/℃~10×10-7/℃である。
【0042】
(d)隔壁構造
(i)隔壁厚さ、セル密度
セラミックハニカム構造体は、平均隔壁厚さが9~15 mil(0.229~0.381 mm)、平均セル密度が150~300 cpsi(23.3~46.5セル/cm2)であるのが好ましい。このような隔壁構造を有することで、使用開始時において圧力損失を低く維持でき、粒子数基準でのPM捕集率を改善することができるとともに、PMが捕集され蓄積した際の圧力損失特性が改良される。平均隔壁厚さが9 mil未満の場合、隔壁の強度が低下し、一方15 milを超える場合、低い圧力損失を維持することが難しくなる。平均セル密度が150 cpsi未満の場合、隔壁の強度が低下し、一方、300 cpsiを超える場合、低い圧力損失を維持することが難しくなる。セラミックハニカム構造体の流路方向に直交する断面での流路形状は、四角形、六角形、八角形等の多角形、円、楕円等のいずれでもよく、流入側端面と流出側端面とで大きさや形状が異なる(例えば流入側八角形、流出側四角形)非対称形状であっても良い。
【0043】
(ii)隔壁交差部の形状
セラミックハニカム構造体の強度を改善するため、隔壁交差部に円弧状或いは直線状等の膨大部を形成するのが好ましい。例えば、流路方向に直交する断面での流路形状が四角形の場合、流路方向に直交する断面において、
図5(a)に示すように、隔壁2が交差する隔壁交差部14に、角R部13a、13b、13c、13dを有していること、又は
図5(b)に示すように、隔壁2が交差する隔壁交差部14に、流路3、4へ扇状に突出する扇状凸部15a、15b、15c、15dを有しているのが好ましい。これらのうち、
図5(b)に示す扇状凸部を有しているほうが、強度をより改善できる。扇状凸部は隔壁交差部の中心C
Wを中心点とする円16に重なるように形成した円弧状であるのが好ましく、扇状凸部の突出長さXは隔壁厚さの0.05倍~0.5倍であるのが好ましい。また、扇状凸部15a、15b、15c、15dの全てが同一の突出長さを有している必要はなく、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、隔壁交差部の中心C
Wから距離S離間した点C
Rを中心とする円16にに重なるように形成した円弧16a、16b、16c、16dを有する扇状凸部15a、15b、15c、15dを形成しても良い。ここで、セラミックハニカム構造体の軸方向断面中心における距離SをSc、外周部における距離SをSoとしたとき、So-Sc=F
1×ΔX[但し、F
1は0.05~0.4の定数、ΔXはセラミックハニカム構造体の軸方向断面中心から外周部までの距離(mm)]、とすることにより、外周側からの衝撃に対する強度が改善されるのでより好ましい。尚、距離Sは、光学顕微鏡で観察して撮影した光学顕微鏡の画像データから、画像測定機(株式会社ミツトヨ製クイックビジョン)で計測することができる。
【0044】
(e)隔壁の材質
隔壁の材質としては、セラミックハニカム構造体の用途がディーゼルエンジンから排出される排気ガスを浄化するためのフィルタであることから、耐熱性を有するセラミックス、すなわちアルミナ、ムライト、コーディエライト、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、チタン酸アルミニウム、リチウムアルミニウムシリケート等を主結晶とするセラミックスであるのが好ましい。中でも耐熱衝撃性に優れる低熱膨張のコーディエライト又はチタン酸アルミニウムを主結晶とするものが好ましい。主結晶相がコーディエライトである場合、スピネル、ムライト、サフィリン等の他の結晶相を含有しても良く、さらにガラス成分を含有しても良い。主結晶相がチタン酸アルミニウムである場合、チタン酸アルミニウム結晶相中にMg、Si等の元素が固溶していても良く、ムライト等の他の結晶相を含有していても良く、また粒界相としてガラス成分を含有していても良い。
【0045】
[2]セラミックハニカムフィルタ
セラミックハニカムフィルタは、例えば
図1及び
図2に示すように、本発明のセラミックハニカム構造体の流路の排気ガス流入側又は排気ガス流出側を交互に目封止してなるものが好ましい。本発明のセラミックハニカム構造体を使用することで、使用開始時においては、低い圧力損失を維持できるとともに粒子数基準でのPM捕集率を改善することができ、さらにPMが捕集され蓄積した際の圧力損失特性が改良されたセラミックハニカムフィルタとすることができる。ここで、流路に形成される目封止は、流路の排気ガス流入側又は排気ガス流出側の端面部に形成しても良く、流入側端面又は流出側端面から流路内部に入った位置に形成してもよい。
【0046】
[3]セラミックハニカム構造体の製造方法
本発明のセラミックハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料粉末及び中空の樹脂粒子からなる造孔材を含む坏土を所定の成形体に押出成形し、前記成形体を乾燥及び焼成する工程を有し、前記坏土に含まれる前記造孔材の割合が、前記セラミック原料粉末100質量部に対して1~8質量部であり、前記セラミック原料粉末が、15~22質量%のシリカ、40~43質量%のタルク、15~30質量%のアルミナ、及び、1~13質量%のカオリンを含有し、前記シリカは、メジアン径D50が13~25μm、D10が1~5μm、D90が30~40μm、10μm以下の粒子径を有する粒子の割合が20~35質量%、100μm以上の粒子径を有する粒子の割合が2質量%以下、粒度分布偏差SD2[ただし、SD2=log(D80)-log(D20)であり、D20は全体積の20%に相当する累積体積での粒子径、D80は全体積の80%に相当する累積体積での粒子径でありD20<D80である。]が0.40~0.65であり、前記タルクは、メジアン径D50が5~15μmであり、前記アルミナは、メジアン径D50が3~6μmであり、前記造孔材は、メジアン径D50が20~55μm、粒子径と累積体積との関係を示す曲線において、全体積の10%に相当する累積体積での粒子径D10が15~30μm、90%に相当する累積体積での粒子径D90が60~80μm、粒度分布偏差SD1[ただし、SD1=log(D80)-log(D20)であり、D20は全体積の20%に相当する累積体積での粒子径、D80は全体積の80%に相当する累積体積での粒子径でありD20<D80である。]が0.20~0.35である。
【0047】
このような方法により、(a)気孔率が52~63%であり、(b)水銀圧入法により測定された細孔分布において、(i)細孔径100μm以上の細孔容積が全細孔容積の2.2~3.0%、細孔径40μm以上の細孔容積が全細孔容積の4.2~5.0%、細孔径30μm以上の細孔容積が全細孔容積の5.8~6.5%、細孔径5μm以上8μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、細孔径1μm以上4μm未満の細孔容積が全細孔容積の9.6%を超え13%以下、細孔径3μm未満の細孔容積が全細孔容積の8~12%、細孔径2μm未満の細孔容積が全細孔容積の4.5~7.0%、細孔径1μm未満の細孔容積が全細孔容積の1.7~4%、(ii)累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径d10が18~22μm、25%となる細孔径d25が13.0~15.5μm、50%となる細孔径(メジアン細孔径)d50が10~13μm、75%となる細孔径d75が6~9μm、(iii)累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径d20の対数と80%となる細孔径d80の対数との差σ=log(d20)-log(d80)が0.45以下であるセラミックハニカム構造体を得ることができる。
【0048】
セラミックスに形成される細孔は、焼成過程においてセラミック原料粉末の溶融によって生じる細孔と、造孔材が焼失して生じる細孔とからなる。従って、セラミック原料粉末及び造孔材のメジアン径及び粒度分布を上述した範囲とすることにより、セラミックスが焼成された際に生じる細孔を制御することができる。
【0049】
本発明の製造方法においては、造孔材として中空の樹脂粒子を使用することにより、セラミック原料粉末及び造孔材を含む成形体を焼成した時に、樹脂粒子が燃焼して空隙となるとともに、セラミック原料粉末が焼成して細孔が形成される。中実樹脂粒子に比べて燃焼による発熱量が少ない中空樹脂粒子を使用することにより成形体を焼成する過程での焼成割れが発生し難くなる。このとき、セラミック原料粉末が焼成して生じる細孔と樹脂粒子によって形成される細孔とが連通するため、隔壁表面から内部にかけての細孔の連通性が改良されるとともに、水銀圧入法で測定された隔壁の細孔径を上記の範囲とすることができる。
【0050】
このように、セラミック原料粉末が焼成して生じる細孔と造孔材から形成される細孔とを連通性良く所定の細孔径範囲に形成することにより、ナノサイズのPM捕集率と、PMが捕集された場合の圧力損失特性とを良好に維持しつつ、強度が改善された本発明のセラミックハニカム構造体を得ることができる。
【0051】
(1)セラミック原料粉末
セラミック原料粉末は、15~22質量%のシリカ、40~43質量%のタルク、15~30質量%のアルミナ、及び1~13質量%のカオリンを含有する。前記セラミック原料粉末はコーディエライト化原料であるのが好ましい。コーディエライト化原料は、主結晶がコーディエライト(主成分の化学組成が42~56質量%のSiO2、30~45質量%のAl2O3及び12~16質量%のMgO)となるように、シリカ源成分、アルミナ源成分及びマグネシア源成分を有する各原料粉末を配合したものであり、例えば、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、水酸化アルミニウム等からなる。コーディエライトを主結晶とするセラミックスに形成される細孔は、セラミック原料のシリカ及びタルクが焼成されて生じる細孔と、造孔材が燃焼されて生じる細孔によるものである。従って、前述の造孔材とともに、シリカ、タルク等のセラミック原料粉末の粒径及び粒度分布を調節することにより、コーディエライト質セラミックスが焼成された際に生じる細孔を制御することができる。中でもシリカと造孔材は、形成される細孔の大部分を占めることから、細孔構造に対する寄与が大きい。
【0052】
(a)シリカ
シリカは、高温まで安定に存在し、1300℃以上で他の原料との反応により融点が下がり液相となって拡散し、細孔を形成することが知られている。このため、15~22質量%のシリカを含有すると、所望の量の細孔が得られる。22質量%を超えてシリカを含有させると、主結晶をコーディエライトに維持するために、他のシリカ源成分であるカオリン及び/又はタルクを低減させなければならず、その結果、カオリンによって得られる低熱膨張化の効果(押出し成形時にカオリンが配向されることで得られる効果)が低減し耐熱衝撃性が低下する。一方、15質量%未満の場合、隔壁に形成される細孔の数が少なくなるので、PMが捕集され蓄積した際の低い圧力損失が得られなくなる場合がある。シリカの含有量は、好ましくは17~21質量%である。
【0053】
シリカは、メジアン径D50が13~25μm、粒子径と累積体積との関係を示す曲線において、全体積の10%に相当する累積体積での粒子径D10が1~5μm、同じく全体積の90%に相当する累積体積での粒子径D90が30~40μm、10μm以下の粒子径を有する粒子の割合が20~35質量%、100μm以上の粒子径を有する粒子の割合が2質量%以下、粒度分布偏差SD2[ただし、SD2=log(D80)-log(D20)であり、D20は全体積の20%に相当する累積体積での粒子径、D80は全体積の80%に相当する累積体積での粒子径でありD20<D80である。]が0.40~0.65の粒子分布のものを使用する。このような粒子分布を有するシリカや後述するタルクを前記造孔材と組合せて使用することにより、特定の細孔分布を有する本発明のセラミックハニカム構造体が得られる。
【0054】
シリカのメジアン径D50が13μm未満の場合、隔壁に形成される細孔のうち微小細孔の割合が多くなり、PMが捕集され蓄積した際に圧力損失を上昇させる原因となる。一方、25μmを超える場合、粗大細孔が多くなり、ナノサイズのPM捕集率を低下させる。シリカのメジアン径D50は、上限は好ましくは24μm、さらに好ましくは23μm、下限は、好ましくは14μm、さらに好ましくは15μmである。
【0055】
シリカのD10が1μm未満の場合、隔壁に形成される細孔のうち圧力損失特性を悪化させる微小細孔の割合が多くなるので好ましくない。一方、5μmを超える場合、隔壁の細孔径1μm以上4μm未満の細孔容積が相対的に少なくなって、全細孔容積の9.6%を超え13%以下の範囲を満たすことができなくなって、粗大な細孔の割合が多くなり、セラミックハニカム構造体の強度の改善が望めなくなる場合がある。さらに、ナノサイズのPM捕集率を低下させる粗大細孔の割合が多くなるので好ましくない。シリカのD10は、上限は好ましくは4.5μm、さらに好ましくは4μm、下限は、好ましくは1.5μm、さらに好ましくは2.0μmである。
【0056】
シリカのD90が30μm未満の場合、隔壁に形成される細孔のうち圧力損失特性を悪化させる微小細孔の割合が多くなるので好ましくない。一方、40μmを超える場合、ナノサイズのPM捕集率を低下させるとともに、セラミックハニカム構造体の強度を低下させる粗大細孔の割合が多くなるので好ましくない。シリカのD90は、上限は好ましくは39.5μm、下限は、好ましくは21μm、さらに好ましくは22μmである。
【0057】
10μm以下の粒子径を有するシリカの割合が20質量%未満の場合、隔壁の細孔径1μm以上4μm未満の細孔容積が相対的に少なくなって、全細孔容積の9.6%を超え13%以下の範囲を満たすことができなくなって、粗大な細孔の割合が多くなり、セラミックハニカム構造体の強度の改善が望めなくなる場合がある。さらに、ナノサイズのPM捕集率を低下させる粗大細孔の割合が多くなるので好ましくない。一方、35質量%を超える場合、隔壁に形成される細孔のうち微小細孔の割合が多くなり、PMが捕集され蓄積した際に圧力損失を上昇させる原因となる。粒子径10μm以下のシリカ粒子の割合は、上限は好ましくは34μm、さらに好ましくは33μm、下限は、好ましくは21μm、さらに好ましくは22μmである。
【0058】
100μm以上の粒子径を有するシリカの割合が2質量%を超える場合、粗大細孔が多くなりナノサイズのPM捕集率を低下させる。粒子径100μm以上のシリカの割合は、好ましくは1.8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
【0059】
粒度分布偏差SD2が0.65を超える場合、ナノサイズのPM捕集率を低下させる粗大細孔の割合が多くなるので好ましくない。一方0.40未満の場合、隔壁に形成される細孔のうち微小細孔の割合が多くなり、PMが捕集され蓄積した際に圧力損失を上昇させる原因となる。上限は、好ましくは0.64、さらに好ましくは0.63であり、下限は、好ましくは0.42、さらに好ましくは0.44である。
【0060】
前記シリカの真球度は、0.5以上であるのが好ましい。シリカの真球度が、0.5未満である場合、破壊の起点となり易い鋭角部を有する細孔が多くなりハニカム構造体の強度が低下する場合があるので好ましくない。シリカの真球度は、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。シリカ粒子の真球度は、シリカ粒子の投影面積を、シリカ粒子の重心を通り粒子外周の2点を結ぶ直線の最大値を直径とする円の面積で割った値であり、電子顕微鏡写真から画像解析装置で求めることができる。
【0061】
前記シリカは結晶質のもの、又は非晶質のものを用いることができるが、粒度分布を調整する観点から非晶質のものが好ましい。非晶質シリカは高純度の天然珪石を高温溶融して製造したインゴットを粉砕して得ることができる。シリカは不純物としてNa2O、K2O、CaOを含有しても良いが、熱膨張係数が大きくなるのを防止するため、前記不純物の含有量は合計で0.1%以下であるのが好ましい。
【0062】
真球度の高いシリカは、高純度の天然珪石を微粉砕し高温火炎の中に溶射することにより得られる。高温火炎の中への溶射によりシリカ粒子の溶融と球状化とを同時に行い、真球度の高い非晶質シリカを得ることができる。さらに、この球状シリカの粒度を分級等の方法により調整するのが好ましい。
【0063】
(b)カオリン
カオリンは1~13質量%含有する。カオリンを13質量%を超えて含有すると、セラミックハニカム構造体の細孔分布において、1μm未満の細孔容積を全細孔容積の1.7~4.0%に調整することが困難になる場合があり、1質量%未満の場合は、セラミックハニカム構造体の熱膨張係数が大きくなる。カオリンの含有量は、好ましくは4~8質量%である。
【0064】
カオリンの板状結晶は、押出成形時に金型を通過する際に整流作用を受け、結晶のc軸がハニカム構造体の隔壁面に垂直に配向する。コーディエライトが生成する焼成過程でコーディエライト結晶はカオリン結晶のc軸の垂直方向に熱膨張が負であるc軸が成長し、ハニカム構造体の熱膨張係数を小さくすることができる。従って、カオリンの配向には、その形状が大きく影響する。カオリンの形状を定量的に示す指数である、カオリンのへき開指数は0.80以上であるのが好ましく、0.85以上であるのがさらに好ましい。カオリンのへき開指数は、特開2006-265034号に記載されているように、一定量のカオリンを容器内にプレス充填し、プレスした面のX線回折測定を行い、得られた(200)面、(020)面及び(002)面の各ピーク強度I(200)、I(020)及びI(002)から、次式:
へき開指数 = I(002)/[I(200)+I(020)+I(002)]
により求めることができる。へき開係数が大きいほどカオリン粒子の配向が良好であると言える。
【0065】
(c)タルク
タルクは40~43質量%含有する。タルクとしては、メジアン径D50が5~15μmのものを用いる。また粒子径と累積体積(特定の粒子径以下の粒子体積を累積した値)との関係を示す曲線において、全体積の10%に相当する累積体積での粒子径D10が10μm以下、及び同様に全体積の90%に相当する累積体積での粒子径D90が25μm以上であるタルクを用いるのが好ましい。タルクはMgOとSiO2を主成分とする化合物であり、焼成過程において周囲に存在するAl2O3成分と反応して溶融し、細孔を形成することが知られている。従って、Al2O3源原料と共に、粒子径の小さいタルクを配合することで、多数の小径細孔を隔壁中に分散させ、隔壁内の細孔の連通性を向上させることができる。タルクのメジアン径D50が5μm未満の場合、細孔の連通性が低くなり、PMが捕集され蓄積した際の圧力損失特性が低下する。一方、タルクのメジアン径D50が15μmを超える場合、粗大細孔が多くなり、ナノサイズのPM捕集率を低下させる。タルクのメジアン径D50は、好ましくは6~14μmであり、さらに好ましくは8~13μmである。
【0066】
タルクのD10は、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは7μm以下である。またタルクのD90は、より好ましくは25~45μmであり、さらに好ましくは25~40μm以下である。
【0067】
タルクは結晶相の主成分がコーディエライトであるセラミックハニカム構造体の熱膨張係数を低減する観点から、板状粒子であるのが好ましい。タルクの平板度を示す形態係数は、0.5以上であるのが好ましく、0.6以上であるのがより好ましく、0.7以上であるのが最も好ましい。前記形態係数は、米国特許第5,141,686号に記載されているように、板状粒子のタルクをX線回折測定し、得られた(004)面の回折強度Ix、及び(020)面の回折強度Iyから次式:
形態係数 = Ix/(Ix+2Iy)
により求めることができる。形態係数が大きいほどタルクの平板度が高い。
【0068】
タルクは、不純物としてFe2O3、CaO、Na2O、K2O等を含有しても良い。Fe2O3の含有率は、所望の粒度分布を得るために、マグネシア源原料中、0.5~2.5質量%であるのが好ましく、Na2O、K2O及びCaOの含有率は、熱膨張係数を低くするという観点から、合計で0.5質量%以下であるのが好ましい。
【0069】
(d)アルミナ
アルミナは15~30質量%含有する。前記アルミナとして、メジアン径D50が3~6μmのものを用いる。また粒子径と累積体積との関係を示す曲線において、全体積の90%に相当する累積体積での粒子径D90が20μm以下であり、25μm以上の粒子径を有する粒子の割合が0.4質量%以下であるアルミナを用いるのが好ましい。このようなメジアン径及び粒径分布を有するアルミナを配合することで、多数の小径細孔を隔壁中に分散させることができるため、隔壁内の細孔の連通性を向上させることができ、本発明のセラミックハニカム構造体が有する細孔分布の形成に貢献する。アルミナのメジアン径D50の上限は、さらに好ましくは5.5μmであり、下限は、さらに好ましくは3.5μmである。また、D90の上限は、好ましくは19μm、さらに好ましくは18μmであり、下限は、好ましくは1μm、さらに好ましくは3μmである。また、25μm以上の粒子径を有する粒子の割合は、好ましくは0.3質量%以下ある。アルミナ源成分を有する原料としては、アルミナに加えて水酸化アルミニウムを使用するのが好ましい。アルミナ及び水酸化アルミニウム中の不純物であるNa2O、K2O及びCaOの含有量の合計は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下である。
【0070】
(2)造孔材
本発明で使用する造孔材は、中空の樹脂粒子からなり、その添加量は、セラミック原料粉末100質量部に対して1~8質量部である。前記造孔材の添加量がこの範囲を外れると、前記細孔構造を有する隔壁が得られ難くなる。前記造孔材の添加量が1質量%未満である場合、気孔率52%以上の隔壁が得られ難くなるので、PMが捕集され蓄積した際の圧力損失特性が悪化する。造孔材の添加量が8質量%を超えると、隔壁の気孔率が63%を超える場合があり、ナノサイズのPM捕集率が低下する。前記造孔材の添加量の上限は、好ましくは7質量部、さらに好ましくは6質量部、さらに一層好ましくは5.4質量部、最も好ましくは5質量部であり、下限は、好ましくは1.5質量部、さらに好ましくは2質量部である。
【0071】
前記造孔材のメジアン径D50は20~55μmである。前記メジアン径D50が20μm未満の場合、PMが捕集され蓄積した際の低い圧力損失が維持できない。前記メジアン径D50が55μmを超えると、形成される細孔が粗大になるので、ナノサイズのPM捕集率が低下する。前記造孔材のメジアン径D50の上限は、好ましくは53μm、さらに好ましくは50μmであり、下限は、好ましくは25μm、さらに好ましくは30μmである。
【0072】
前記造孔材は、その粒子径と累積体積(特定の粒子径以下の粒子体積を累積した値)との関係を示す曲線において、全体積の10%に相当する累積体積での粒子径D10が15~30μm、全体積の90%に相当する累積体積での粒子径D90が60~80μm、粒度分布偏差SD1[ただし、SD1=log(D80)-log(D20)であり、D20は全体積の20%に相当する累積体積での粒子径、D80は全体積の80%に相当する累積体積での粒子径でありD20<D80である。]が0.20~0.35である。前記造孔材がこのような粒径分布を有するとともに、後述するセラミック原料粉末の粒径及び粒度分布を調節することにより、前記細孔構造を有する隔壁が得られ易くなる。前記全体積の10%に相当する累積体積での粒子径D10の上限は、好ましくは28μm、さらに好ましくは26μmであり、下限は、好ましくは17μm、さらに好ましくは19μmである。前記全体積の90%に相当する累積体積での粒子径D90の上限は、好ましくは77μm、さらに好ましくは75μmであり、下限は、好ましくは63μm、さらに好ましくは65μmである。粒度分布偏差SD1の上限は、好ましくは0.33、さらに好ましくは0.32、下限は、好ましくは0.22、さらに好ましくは0.23である。また、全体積の5%に相当する累積体積での粒子径D5が10~25μm、全体積の95%に相当する累積体積での粒子径D95が70~95μmであるのが好ましい。なお、D5<D10<D20<D50<D80<D90<D95である。造孔材の粒子径は、日機装(株)製マイクロトラック粒度分布測定装置(MT3000)を用いて測定することができる。
【0073】
前記造孔材の真球度は、0.5以上であるのが好ましい。前記造孔材の真球度が0.5未満である場合、破壊の起点となり易い鋭角部を有する細孔が多くなりハニカム構造体の強度が低下する場合があるので好ましくない。前記造孔材の真球度は、好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。なお、造孔材の真球度は、造孔材の投影面積を、造孔材の重心を通り粒子外周の2点を結ぶ直線の最大値を直径とする円の面積で割った値であり、電子顕微鏡写真から画像解析装置で求めることができる。
【0074】
中空の樹脂粒子としては発泡させた樹脂粒子が好ましい。造孔材として用いる樹脂としては、(ポリ)メタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体等が好適である。中空の樹脂粒子は、外殻厚さが0.1~3μm、炭化水素等のガスを内包させているもの、前記樹脂粒子の表面に70~95%の水分を含有し、真比重が0.01~0.05であるものを用いるのが好ましい。
【0075】
(3)製造方法
セラミックハニカム構造体は、セラミック原料粉末及び造孔材に、バインダーを加えて乾式で混合した後、水、及び、必要に応じて分散剤、界面活性剤等の添加剤を加えて混練し、得られた可塑性の坏土を、ハニカム構造体成形用の金型から、公知の押出成形法、例えば、プランジャー式、スクリュー式等の押出成形法により押出してハニカム構造の成形体を形成し、この成形体を乾燥した後、必要に応じて端面及び外周等の加工を施し、焼成することによって製造する。
【0076】
ここで、ハニカム構造体成形用金型は、公知の押出成形用金型を用いるが、セラミックハニカム構造体の隔壁交差部に扇状凸部を有しているセラミックハニカム構造体の成形には、次のような金型を用いる。金型の断面を
図7に、金型の格子状のスリットが交差するスリット交差部の拡大図を
図8(a)~
図8(c)に示す。金型20は、
図8(a)に示すように、格子状のスリット21が交差するスリット交差部23における4箇所の金型部材26a、26b、26c、26dの角部に、押出方向視で円弧状凹部24a、24b、24c、24dを有する。ここで、前記4箇所の円弧状凹部24a、24b、24c、24dは、これらの円弧状凹部24a、24b、24c、24dに内接する内接円24の半径が、金型20の全てのスリット交差部において一定となるように構成する。ここで、前述したように、セラミックハニカム構造体の隔壁交差部に形成される各扇状凸部15a、15b、15c、15dが異なる大きさになるようにハニカム構造体を成形する場合は、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、内接円24の中心点Caとスリット交差部23の中心点Csとを距離Sd離間させて金型20を作製する。例えば、
図8(b)の例では円弧状凹部24b、24cの大きさを大きくすることができ、
図8(c)の例では円弧状凹部24c、24dの大きさを大きくすることができる。
【0077】
このようなハニカム成形用金型20は、まず供給孔22を形成し、次に供給孔22が形成された穴形成面の反対面に孔240を形成した後、スリット21を形成することによって製造できる。このとき、この孔240の中心の位置が内接円24の中心点Caの位置となり、ハニカム成形用金型20のスリット交差部23における金型部材の4箇所の角部に、押出方向視で凹状に面取部が形成される。孔240の中心の位置(内接円24の中心点Caの位置)が、スリット交差部23の中心点Csの位置に対して、中心点間距離Sdだけ離間するように孔240及びスリット21を形成する。ここで、孔240は、例えば、精密なXYステージを有するボール盤を用いて、孔の位置を制御しながらドリルで穴開け加工を行うことで形成することができる。尚、距離Sdの測定には、光学顕微鏡で観察して撮影した光学顕微鏡の画像データを、画像測定機(株式会社ミツトヨ製クイックビジョン)で計測することができる。
【0078】
焼成は、連続炉又はバッチ炉を用いて、昇温及び冷却の速度を調整しながら行う。セラミック原料がコーディエライト化原料である場合、1350~1450℃で1~50時間保持し、コーディエライト主結晶が十分生成した後、室温まで冷却する。前記昇温速度は、特に外径150 mm以上、及び全長150 mm以上の大型のセラミックハニカム構造体を製造する場合、焼成過程で成形体に亀裂が発生しないよう、バインダーが分解する温度範囲(例えば150~350℃)では0.2~10℃/hr、コーディエライト化反応が進行する温度域(例えば1150~1400℃)では5~20℃/hrであるのが好ましい。冷却は、特に1400~1300℃の範囲では20~40℃/hの速度で行うのが好ましい。
【0079】
得られたハニカム構造体は、公知の方法で所望の流路の端部を目封止することによりセラミックハニカムフィルタとすることができる。なお、この目封止部は、焼成前に形成してもよい。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
実施例1~5及び比較例1~3
表1~表5に示す粒子形状(粒径、粒度分布等)を有するシリカ、タルク及びアルミナ、水酸化アルミニウム及びカオリンを、セラミックス原料粉末の合計量が100質量%となるように表7に示す添加量で配合して、焼成後に化学組成がコーディエライトとなるコーディエライト化原料粉末を得た。
【0082】
このコーディエライト化原料粉末に対し、表6に示す粒度分布及び真比重の造孔材を表7に示す量で添加し、メチルセルロースを添加して混合した後、水を加えて混練し、可塑性のセラミック坏土を作製した。造孔材粒子の真球度は、電子顕微鏡により撮影した粒子の画像から画像解析装置で求めた、投影面積A1、及び重心を通り粒子外周の2点を結ぶ直線の最大値を直径とする円の面積A2から、式:A1/A2で算出した値であり、20個の粒子についての平均値で示した。
【0083】
【0084】
表1(続き)
注(1):SD2=log(D80)-log(D20)
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
表6(続き)
注(1):SD1=log(D80)-log(D20)
【0091】
【0092】
【0093】
シリカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン及び造孔材の粒径及び粒度分布は日機装(株)製マイクロトラック粒度分布測定装置(MT3000)を用いて測定し、粒度分布からメジアン径D50、粒子径10μm以下の割合、25μm以上の割合、100μm以上の割合、D90、D80、D20、D10等を求めた。
【0094】
得られた坏土を金型で押出してハニカム構造の成形体を作製した。実施例1、比較例1及び2は、セラミックハニカム構造体の隔壁交差部の形状が
図5(a)に示す角R部のRが100μmとなるよう、金型のスリット交差部にRを形成した金型を用いた。また、実施例2~5及び比較例3は、隔壁交差部の形状が
図5(b)に示す扇状凸部の突出高さXが60μm(壁厚さの0.2倍)となるよう、金型に孔240を形成した後、スリット交差部が孔240と一致するようにスリットを形成して製造した金型を用いた。
【0095】
乾燥後、周縁部を除去加工し、焼成炉にて210時間のスケジュール(室温~150℃は10℃/h、150~350℃は2℃/hr、350~1150℃は20℃/h及び1150~1410℃は15℃/hrの平均速度で昇温、最高温度1410℃で25 hr保持、並びに1400~1300℃は30℃/hr、及び1300~100℃は80℃/hrの平均速度で冷却)で焼成した。焼成したセラミックハニカム体の外周に、非晶質シリカとコロイダルシリカとからなる外皮材をコーティングして乾燥させ、外径266.7 mm、全長304.8 mm、隔壁厚さ12 mil(0.30 mm)及びセル密度260 cpsi(40.3セル/cm2)を有する実施例1~5及び比較例1~3のセラミックハニカム構造体を得た。
【0096】
これらのセラミックハニカム構造体の流路端部に、交互に目封止されるように、コーディエライト化原料からなる目封止材スラリーを充填した後、目封止材スラリーの乾燥及び1400℃で焼成を行い、実施例及び比較例の各コーディエライト質セラミックハニカムフィルタを作製した。焼成後の目封止材の長さは7~10 mmの範囲であった。各セラミックハニカムフィルタは、それぞれ同じものを2個ずつ作製した。
【0097】
得られた実施例1~5及び比較例1~3のセラミックハニカムフィルタの1個を用いて、下記の方法で水銀圧入法による細孔分布の測定、熱膨張係数、及びA軸圧縮破壊強度の測定を行った。
【0098】
(a)細孔分布の測定
水銀圧入法による細孔分布の測定は、セラミックハニカムフィルタから切り出した試験片(10 mm×10 mm×10 mm)を、Micromeritics社製オートポアIIIの測定セル内に収納し、セル内を減圧した後、水銀を導入して加圧し、加圧時の圧力と試験片内に存在する細孔中に押し込まれた水銀の体積との関係を求めることにより行った。前記圧力を細孔径に換算し、細孔径の大きい側から小さい側に向かって積算した累積細孔容積(水銀の体積に相当)を細孔径に対してプロットし、
図3に示すように、細孔径と累積細孔容積との関係を示すグラフを得た。水銀を導入する圧力は0.5 psi(0.35×10
-3 kg/mm
2)とし、圧力から細孔径を算出する際の常数は、接触角=130°及び表面張力=484 dyne/cmの値を使用した。そして、水銀の加圧力が1800 psi(1.26 kg/mm
2、細孔径約0.1μmに相当)での累積細孔容積を全細孔容積とした。
【0099】
得られた水銀圧入法の測定結果から、全細孔容積、気孔率、累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径d10、20%となる細孔径d20、25%となる細孔径d25、50%となる細孔径(メジアン細孔径)d50、75%となる細孔径d75、80%となる細孔径d80、85%となる細孔径d85、100μm以上の細孔容積、40μm以上の細孔容積、30μm以上の細孔容積、5μm以上8μm未満の細孔容積、1μm以上4μm未満の細孔容積、3μm未満の細孔容積、2μm未満の細孔容積、及び1μm未満の細孔容積を求め、さらに累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径d20の対数と80%となる細孔径d80の対数との差σ
1=log(d20)-log(d80)、累積細孔容積が全細孔容積の75%となる細孔径d75の対数と85%となる細孔径d85の対数との差σ
2=log(d75)-log(d85)を算出した。ここで細孔径d10、d20、d25、d50、d75、d80及びd85の値は、水銀圧入法の測定で得られた測定点のうち、各細孔径に最も近い前後の2つの測定点を内挿して求めた。例えば、d20の場合、
図4に示すように、水銀圧入法の測定で得られた測定点のうち、累積細孔容積が全細孔容積の20%となる細孔径の値に最も近い前後の2つの測定点A及び点Bを直線で結び、その直線上で累積細孔容積が全細孔容積の20%となる点における細孔径をd20とした。また気孔率は、全細孔容積の測定値から、コーディエライトの真比重を2.52 g/cm
3として計算によって求めた。これらの結果を表8及び表9に示す。
【0100】
(b)熱膨張係数の測定
熱膨張係数は、4.5 mm×4.5 mmの断面形状及び50 mmの長さの試験片を、長手方向が流路方向にほぼ一致するように切り出し、熱機械分析装置(TMA、リガク社製ThermoPlus、圧縮荷重方式/示差膨張方式)を用いて、一定荷重20 gをかけながら、昇温速度10℃/minで室温から800℃まで加熱した時の全長方向の長さの増加量を測定して、40~800℃間の平均熱膨張係数として求めた。結果を表9に示す。
【0101】
(c)A軸圧縮破壊強度
A軸圧縮破壊強度は、社団法人自動車技術会が定める規格M505-87「自動車排気ガス浄化触媒用セラミックモノリス担体の試験方法」に従い、セラミックハニカム構造体から直径24.5 mm及び長さ24.5 mmの試料片を採取して行った。A軸圧縮破壊強度の測定は、各セラミックハニカム構造体から18個ずつ採取した試料片を用いて行い、それらの平均値を求め、比較例1の値を1.0とした相対値で示した。結果を表10に示す。
【0102】
実施例1~5及び比較例1~3で作製したもう1個のセラミックハニカムフィルタを用いて、PM捕集後圧力損失(煤2g/リットル捕集した時の圧力損失)及び捕集開始初期の粒子数基準でのPM捕集率を下記の方法で測定した。結果を表10に示す。
【0103】
(d)PM捕集後圧力損失
PM捕集後圧力損失は、圧力損失テストスタンドに固定したセラミックハニカムフィルタに、空気流量10 Nm3/minで、平均粒径0.11μmの燃焼煤を1.3 g/hの速度で投入し、フィルタ体積1リットルあたりの煤付着量が2 gとなった時の流入側と流出側との差圧(圧力損失)で表した。圧力損失が、
1.5kPaを越える場合を(×)、
1.3kPaを超え1.5 kPa以下の場合を(△)、
1.1kPaを超え1.3 kPa以下の場合を(○)、
0.9kPaを超え1.1 kPa以下の場合を(◎)、及び
0.9kPa以下の場合を(◎◎)
として煤捕集圧力損失を評価した。
【0104】
(e)捕集開始初期の粒子数基準でのPM捕集率
捕集開始初期の粒子数基準でのPM捕集率は、圧力損失テストスタンドに固定したセラミックハニカムフィルタに、空気流量10 Nm3/minで、平均粒径0.11μmの燃焼煤を1.3 g/hの速度で投入しながら、1分毎にハニカムフィルタに流入する燃焼煤の粒子数とハニカムフィルタから流出する燃焼煤の粒子数とをSMPS(Scanning Mobility Particle Sizer)(TIS社製モデル3936)を用いて計測し、投入開始40分後から41分後までの1分間にハニカムフィルタに流入する燃焼煤の粒子数Nin、及びハニカムフィルタから流出する燃焼煤の粒子数Noutから、式:(Nin-Nout)/Nin により求めた。PM捕集率が、
99%以上の場合を(◎◎)、
98%以上99%未満の場合を(◎)、
97%以上98%未満の場合を(○)、
96%以上97%未満の場合を(△)、及び
96%未満の場合を(×)
としてPM捕集率を評価した。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表9(続き)
注(1):σ
1=log(d20)-log(d80)
注(2):σ
2=log(d75)-log(d85)
【0109】
表10
注(1):比較例1の強度を1.0とした相対値で示した。
【0110】
表10より、実施例1~5の本発明のセラミックハニカムフィルタは、比較例1~3に対して排ガス中の粒子数量に大きく影響するナノサイズのPMを有効に捕集するPM捕集率と、PMが捕集され蓄積された場合の圧力損失特性とを良好に維持しつつ、強度が改善されていることがわかる。
【0111】
比較例1のセラミックハニカム構造体は、PMが捕集された際の圧力損失は良好に維持されているものの、細孔径5μm以上8μm未満の細孔容積の割合が12.5%であり、本発明の規定範囲(8~12%)を超えているため、セラミックハニカム構造体の強度が低い。また40μm以上の細孔容積の割合、及び30μm以上の細孔容積の割合がそれぞれ5.1及び6.6であり、本発明の規定範囲(それぞれ、4.2~5.0%及び5.8~6.5%)を超えているとともに、1μm以上4μm未満の細孔容積の割合が8.5%と本発明の規定範囲(9.6%を超え13%以下)を下回っているため、セラミックハニカム構造体の強度が低く、かつPM捕集率が低い。
【0112】
比較例2のセラミックハニカム構造体は、PMが捕集された際の圧力損失は良好に維持されているものの、細孔径100μm以上の細孔容積、40μm以上の細孔容積、及び30μm以上の細孔容積(それぞれ、3.4%、6.3%及び8.4%)が本発明の規定範囲(それぞれ、2.2~3.0%、4.2~5.0%及び5.8~6.5%)を超えているとともに、5μm以上8μm未満の細孔容積、1μm以上4μm未満の細孔容積、3μm未満の細孔容積、及び2μm未満の細孔容積(それぞれ、7.8%、6.3%、6.0%及び3.7%)が本発明の規定範囲(それぞれ、8~12%、9.6%を超え13%以下、8~12%及び4.5~7.0%)を下回っているため、セラミックハニカム構造体の強度が改善されず、かつPM捕集率が低い。
【0113】
これに対して、比較例3のセラミックハニカム構造体は、細孔径100μm以上の細孔容積、40μm以上の細孔容積、及び30μm以上の細孔容積(それぞれ、2.1%、4.1%及び5.7%)が本発明の規定範囲(それぞれ、2.2~3.0%、4.2~5.0%及び5.8~6.5%)を下回っているため、PMが捕集された際の圧力損失が良好に維持されていない。さらに、細孔径5μm以上8μm未満の細孔容積の割合が7.6%と本発明の規定範囲(8~12%)より低いため、強度的には改善効果が見られるが、5μm以上8μm未満の細孔容積の割合が低すぎることと、1μm以上4μm未満の細孔容積、3μm未満の細孔容積、及び2μm未満の細孔容積(それぞれ、8.8%、7.6%及び4.4%)が本発明の規定範囲(それぞれ、9.6%を超え13%以下、8~12%及び4.5~7.0%)を下回っているためPM捕集率が低い。