(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】エピタキシャル基板上への塗布膜形成方法及び接合型ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20240611BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20240611BHJP
H01L 33/22 20100101ALI20240611BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L21/312 Z
H01L21/314 Z
H01L33/22
H01L33/62
(21)【出願番号】P 2023172368
(22)【出願日】2023-10-03
【審査請求日】2024-02-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】石崎 順也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 智弘
(72)【発明者】
【氏名】古屋 翔吾
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-135340(JP,A)
【文献】国際公開第2008/102694(WO,A1)
【文献】特表2013-524537(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103456607(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
H01L 21/314
H01L 33/22
H01L 33/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発基板上に複数の化合物半導体層を成長または堆積させたエピタキシャル基板であって、前記化合物半導体層の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥または一辺が200μm以下の凹状欠陥を有するエピタキシャル基板の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜を形成する際に、
塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とすることを特徴とするエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
【請求項2】
前記塗布膜の厚さを1μm以下とすることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
【請求項3】
前記塗布膜を形成する際に前記エピタキシャル基板が収納される密閉容器内をパージガスで置換することにより前記塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とすることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
【請求項4】
前記パージガスとして、ヘリウム、水素、窒素、ネオン、アルゴンのいずれか一種類以上から選択したガスを用いることを特徴とする請求項3に記載のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
【請求項5】
前記塗布雰囲気を、10kPa以上の圧力雰囲気とすることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
【請求項6】
前記塗布膜を、熱硬化性樹脂とすることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂として、ベンゾシクロブテン、エポキシ樹脂、ワックス、シリコーン、アモルファスフッ素樹脂、スピンオンガラス、ポリイミドのいずれか一種類以上から選択される樹脂を用いることを特徴とする請求項6に記載のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
【請求項8】
前記凹状欠陥はエピタキシャル成長で生じるピットであり、前記凸状欠陥はエピタキシャル成長中に前記化合物半導体層に落下したパーティクルによって生じた欠陥であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
【請求項9】
出発基板上に複数の化合物半導体層を成長または堆積させたエピタキシャル基板であって、前記化合物半導体層の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥または一辺が200μm以下の凹状欠陥を有するエピタキシャル基板の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜を介して前記化合物半導体層と紫外線及び可視光透過性基板を接合あるいは接着して接合型ウェーハを作製する接合・接着工程とを含む接合型ウェーハの製造方法において、
前記塗布膜形成工程の塗布雰囲気を酸素濃度100ppm以下とすることを特徴とする接合型ウェーハの製造方法。
【請求項10】
前記接合・接着工程において、ベンゾシクロブテン、エポキシ樹脂、ワックス、シリコーン、アモルファスフッ素樹脂、スピンオンガラス、ポリイミドのいずれか一つ以上を用いて接合または接着することを特徴とする請求項9に記載の接合型ウェーハの製造方法。
【請求項11】
前記紫外線及び可視光透過性基板として、紫外線及び可視光透過性を有する、サファイア、石英、ガラス、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、ZnO、SiC、GaN、GaPのいずれかを用いることを特徴とする請求項9または10に記載の接合型ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル基板上への塗布膜形成方法及び接合型ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーリフトオフ(LLO)技術によりエピタキシャル層と支持基板を分離するμ-LED移載技術が開示されている。高輝度赤色LEDの出発基板は可視光吸収性のGaAsであり、紫外線及び可視光透過性の基板へエピタキシャル層を移載することでLLOが可能になる。
【0003】
紫外線及び可視光透過性基板へエピタキシャル層を移載する際、直接接合も可能であるが、LLOに対する熱犠牲層を設けておく方がエピタキシャル層への熱影響を最低限にすることができ、好適である。熱犠牲層と接合層を兼ねることでLED素子に影響を与えることなく、LLOを実現することができる。この接合層兼犠牲層として紫外線吸収性のベンゾシクロブテン(BCB)を選択する技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
BCBを接合層兼犠牲層として発光ダイオードを形成したEPW(エピタキシャルウェーハ)と異種材料基板とをBCBを介して接合する場合、BCBはスピンコート法にて塗布する。スピンコートによる塗布はフラットなウェーハに対する処理が大前提である。
【0005】
その一方で、発光ダイオード用のEPWは出発基板と異なる材料でエピタキシャル成長されるため、成長時の温度域あるいは常温域において、出発基板との格子定数が一致しないのが常である。さらに、エピタキシャル層においても異なる複数の材料からなり、格子不整合系で成長する構造を選択する場合もあり、そのような構造を選択した場合、格子不整合故にエピタキシャル層の表面は鏡面ではなく、いわゆる梨地と呼ばれるラフ表面になる。
【0006】
AlGaInP系LEDの場合、エピタキシャル最終層にはGaPが選択される場合が多い。GaPを最終層とした場合、下地のAlGaInP系材料と格子不整合系での成長になるゆえ、エピタキシャル最終層の表面にはピット(凹部)を有する。
【0007】
また、エピタキシャル最終層の表面にはピットとは別に、エピタキシャル成長中に炉内析出物が落下したことによりエピタキシャル最終層の表面には凸部となるパーティクル(以下、インクルージョン部と呼称)が存在する。このようなピットやインクルージョン部は、塗布膜の膜厚の均一化を阻害し、かつ、接合不良を発生させ、その結果、接合歩留まりが低下する。
【0008】
凹部たるピット、あるいは凸部たるインクルージョン部の凹凸を解消するため、可視光に透明で紫外線に対して吸収率が少ないSiO2やSiNxなどを堆積し、凹凸を解消することを考慮することも可能ではある。
【0009】
しかし、SiO2やSiNxなどの堆積膜は設計構造上、必然的に犠牲層の一部となり、最終的には除去されるべきものである。堆積膜が厚くなればなるほど、犠牲層剥離後の除去処理の手間が増えることになる。
【0010】
具体的には除去処理プロセス時間が延びることにより処理コストの増大と歩留まりの低下を招く。そのため、堆積膜は薄いか全くない方が好ましい。以上の理由により、堆積膜の成膜を設計・選択した場合でも1μmを超えない膜厚である必要がある。この程度の堆積膜厚では凹凸の程度の緩和は可能であっても、凹凸が解消されるには程遠く、堆積膜で凹凸を解消するという手法を選択することはできない。
【0011】
エピタキシャル最終層の表面に存在するピットは凹状の形状を有しており、基本的に略角錐形状を有している。角錐部の辺の長さが大きくなるほど、深さは深くなる。塗布法は凹凸形状を有する表面に対し、膜厚均一性が本質的に得られ難い方法であり、ピットのような凹部やインクルージョン部のような凸部付近では膜厚均一性が得られにくい。凹部に対しては、深さが深い程、塗布液が侵入しにくくなる。
【0012】
特にBCBと塗布対象面との濡れ性が悪い場合、凹部へ塗布液が侵入しにくく、その結果、塗布膜と表面との間に雰囲気ガスを挟みやすくなる。ここではスピンコート法のみに関して詳述したが、ディップ法などの塗布法においても、発生事象は同様である。
【0013】
深さのある凹形状に対する塗布膜の充填改善に関しては、真空中でBCBを塗布し、充填を高める技術開示がある。特許文献2に記載の先行技術では、表面に形成したビア(凹状の穴)を埋めるために真空中で塗布する技術を開示している。
【0014】
しかしながら、BCBは溶剤を含み、真空中での時間の経過に伴い、その溶剤が揮発することにより濃度が変化する問題がある。BCBの濃度が変化した結果、粘度変化に伴い、BCB塗布膜の膜厚が変化する。凹部への充填という点で、真空中での塗布膜形成は有効だが、膜厚の再現性・安定性という点で、真空雰囲気での塗布は好ましくない。
【0015】
インクルージョン部は凸形状の不良部である。スピンコートにより塗布膜を形成する際、遠心力により滴下した塗布液を回転外周方向へ移動させるが、インクルージョン部が存在する場合、阻害部となるため回転外周方向の膜厚は必然的に他の場所と異なる膜厚を有する(多くの場合薄くなる)ことになる。
【0016】
また、凸部の高さが高い(例えば10μm以上の)場合、側面に塗布液を被覆させることは困難である。また凸形状であるインクルージョン部の側面と表面は、不定形の複雑な凹凸形状を有している。凹凸追随性が悪い被覆方法である塗布法では、塗布の際、インクルージョン部及びその周辺部を均一に被覆することは困難である。また、均一に被覆しないことからBCB層とインクルージョン部の界面に大気を含みやすい。
【0017】
特許文献2に示されるような真空中で塗布を行う方法は、上記のように膜厚の再現性・安定性に問題はあるものの、凹凸部の表面近傍に大気を含む問題に対しては有効である。しかし、薄く均一な膜厚のBCB層を形成したい場合、好ましい方法ではない。
【0018】
まずBCB層を薄くすべき理由について述べる。BCB層(以下、BCB膜ともいう)は設計構造上、犠牲層であり、最終的には除去されるべきものである。BCB層が厚くなればなるほど、犠牲層剥離後の除去処理の手間が増えることになる。具体的には除去処理プロセス時間が延びることにより処理コストの増大と歩留まりの低下を招く。
【0019】
そのため、BCB層は極力薄い方が好ましい。以上の理由により、BCB層は1μmを超えない膜厚であることが好ましく、厚くても3μm以下であることが好ましい。以上の理由により、BCB層の膜厚には上限を設けるのが好ましい。
【0020】
また、BCB層はLLOにてレーザーにてアブレーション処理される。その際、ウェーハ内の処理位置(部位)により膜厚が異なることはLLO処理効率を変化させ、アセンブリ時の歩留まりを低下させる原因となる。従って、面内の膜厚分布は言うに及ばず、ウェーハ間やバッチ間においても膜厚均一性が担保されていること、再現性のよい塗布法であることが好ましい。
【0021】
特許文献2に示されるような真空中での塗布を行った場合、真空中で溶剤が飛んでBCB濃度が濃くなる。真空製造時間は一般に製造時間にばらつきがあり、溶剤が飛ぶ量を再現性良く制御することは困難である。溶剤が飛ぶことにより、粘性が上昇するが、粘性が上昇すると膜厚は増加する方向に変化する。
【0022】
一定以上の厚さの塗布膜を形成したい場合、粘性が変化して膜厚が変化しても設計で吸収可能だが、1μm以下の薄膜状態を維持したい場合、大きな問題になる。従って、薄く、かつLLOに適した均一厚さのBCB膜形成方法として好ましい方法でない。
【0023】
BCBを硬化する際、真空中または酸素濃度100ppm以下の窒素雰囲気中で硬化・接合処理を行う技術が開示されている(特許文献3)。これはBCBの硬化(環状付加反応)の際、酸素が存在すると硬化を阻害するためである。
しかし、エピタキシャル層表面に凹凸が存在する場合は、特許文献3に記載の硬化時の低酸素濃度条件を満たしても硬化不良が発生し、エピタキシャル層が剥離してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】特開2023-066285号公報
【文献】特開2015-166736号公報
【文献】特開平7-14701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明者らはエピタキシャル層表面に凹凸が存在すると、BCBの硬化後にエピタキシャル層が剥離するのは、BCBを塗布する工程においてエピタキシャル層表面の凹凸部周辺に酸素が残存していることが原因であると推定した。
【0026】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、表面に凸状欠陥または凹状欠陥が存在する化合物半導体に紫外線及び可視光透過性基板を接合するための塗布膜を形成する際に、塗布膜を均一な膜厚にでき、かつ塗布膜の硬化不良を抑制できるエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法を提供することを目的とする。
【0027】
本発明はまた、エピタキシャル層の剥離が生じ難い接合型ウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、出発基板上に複数の化合物半導体層を成長または堆積させたエピタキシャル基板であって、前記化合物半導体層の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥または一辺が200μm以下の凹状欠陥を有するエピタキシャル基板の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜を形成する際に、塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とすることを特徴とするエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法を提供する。
【0029】
このようなエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法によれば、塗布雰囲気の酸素濃度が100ppm以下の環境下で塗布を行うことで、塗布膜と凸状欠陥あるいは凹状欠陥に残留する気体から酸素を排除することができる。
【0030】
塗布膜とエピタキシャル基板の界面に存在する酸素が100ppm以上の場合、BCB等の塗布膜の環状付加反応を阻害し、塗布膜が熱硬化することを阻害するが、酸素以外の気体は環状付加反応を阻害しないため、塗布膜の熱硬化処理を設計通り行うことができる。つまり、樹脂を塗布する雰囲気から酸素を極力排除することで酸素の存在に起因する樹脂の硬化不良の発生を防止することができる。
【0031】
このとき、前記塗布膜の厚さを1μm以下とすることができる。
【0032】
これにより、LLO用に好適な厚さにできる。また、このような1μm以下の膜厚を塗布する場合、被覆率はより悪化する方向に変化するため、塗布膜を均一な膜厚にできる本発明の効果が特に高い。
【0033】
このとき、前記塗布膜を形成する際に前記エピタキシャル基板が収納される密閉容器内をパージガスで置換することにより前記塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とすることができる。
【0034】
これにより、樹脂の塗布時の塗布雰囲気を大気からパージガスに置換し、塗布を行うため、大気中に含まれる酸素を排除できる。
【0035】
このとき、前記パージガスとして、ヘリウム、水素、窒素、ネオン、アルゴンのいずれか一種類以上から選択したガスを用いることができる。
【0036】
これにより、パージガスとして、ヘリウム・水素・窒素・ネオン・アルゴンのように酸素を含まないガスを選択するため、塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下の濃度に、容易に維持できる。
【0037】
このとき、前記塗布雰囲気を、10kPa以上の圧力雰囲気とすることができる。
【0038】
これにより、塗布中にウェーハを真空チャックする場合にチャック力を維持でき、また樹脂の粘度調整のために加えている有機溶剤の揮発も抑制でき、粘度の変化も抑えられる。
【0039】
このとき、前記塗布膜を、熱硬化性樹脂とすることができる。
【0040】
これにより、塗布膜を硬化させるタイミングを温度で調整することができる。
【0041】
このとき、前記熱硬化性樹脂として、ベンゾシクロブテン、エポキシ樹脂、ワックス、シリコーン、アモルファスフッ素樹脂、スピンオンガラス、ポリイミドのいずれか一種類以上から選択される樹脂を用いることができる。
【0042】
これにより、エピタキシャル基板に支持基板を確実に接合することができる。
【0043】
このとき、前記凹状欠陥はエピタキシャル成長で生じるピットであり、前記凸状欠陥はエピタキシャル成長中に前記化合物半導体層に落下したパーティクルによって生じた欠陥であってもよい。
【0044】
これにより、ピットやパーティクルが表面に存在するエピタキシャル基板であっても、塗布膜を形成することができる。
【0045】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、出発基板上に複数の化合物半導体層を成長または堆積させたエピタキシャル基板であって、前記化合物半導体層の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥または一辺が200μm以下の凹状欠陥を有するエピタキシャル基板の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜を介して前記化合物半導体層と紫外線及び可視光透過性基板を接合あるいは接着して接合型ウェーハを作製する接合・接着工程とを含む接合型ウェーハの製造方法において、前記塗布膜形成工程の塗布雰囲気を酸素濃度100ppm以下とすることを特徴とする接合型ウェーハの製造方法を提供する。
【0046】
このような接合型ウェーハの製造方法によれば、エピタキシャル基板の凹凸欠陥部と塗布膜間の酸素を除外でき、塗布膜の硬化不良が発生するのを防止できるため、接合後に塗布膜からエピタキシャル層の剥離が生じ難い。
【0047】
このとき、前記接合・接着工程において、ベンゾシクロブテン、エポキシ樹脂、ワックス、シリコーン、アモルファスフッ素樹脂、スピンオンガラス、ポリイミドのいずれか一つ以上を用いて接合または接着することができる。
【0048】
これにより、エピタキシャル基板に紫外線及び可視光透過性基板を確実に接合することができる。
【0049】
このとき、前記紫外線及び可視光透過性基板として、紫外線及び可視光透過性を有する、サファイア、石英、ガラス、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、ZnO、SiC、GaN、GaPのいずれかを用いることができる。
【0050】
これにより、エピタキシャル基板にPD(フォトダイオード)、APD(アバランシェフォトダイオード)、LD(レーザーダイオード)、LED等の受発光素子を形成する場合でも、後工程で形成する支持基板を介して受発光素子と外部とで光の受発光ができる。
【発明の効果】
【0051】
以上のように、本発明のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法によれば、表面に凸状欠陥または凹状欠陥が存在する化合物半導体に紫外線及び可視光透過性基板を接合するための塗布膜を形成する際に、塗布膜を均一な膜厚にでき、かつ塗布膜の硬化不良を抑制できる。
【0052】
また、本発明の接合型ウェーハの製造方法によれば、エピタキシャル層の剥離が生じ難い接合型ウェーハを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法による塗布膜が形成される対象となるエピタキシャル基板を示す。
【
図2】エピタキシャル基板上に塗布膜を形成した状態であって、凸状欠陥と凹状欠陥は図示を省略したものを示す。
【
図3】塗布膜を介してエピタキシャル基板の化合物半導体層と紫外線及び可視光透過性基板を接合あるいは接着して接合型ウェーハを形成した状態を示す。
【
図4】
図3の状態から出発基板およびエッチングストップ層を除去した状態を示す。
【
図5】
図4の状態からICP(Inductively Coupled Plasma)加工を行った状態を示す。
【
図6】
図5の状態からSiO
2の成膜とパターン形成を行った状態を示す。
【
図7】
図6の状態から電極形成を行った状態を示す。
【
図9】接合型ウェーハの化合物半導体層にデバイスを形成する際に、工程ごとの実施例と比較例のエピタキシャル剥離の個数を比較した図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
上述のように、表面に凸状欠陥または凹状欠陥が存在する化合物半導体に紫外線及び可視光透過性基板を接合するための塗布膜を形成する際に、塗布膜を均一な膜厚にでき、かつ塗布膜の硬化不良を抑制できるエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法が求められていた。
【0056】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、出発基板上に複数の化合物半導体層を成長または堆積させたエピタキシャル基板であって、前記化合物半導体層の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥または一辺が200μm以下の凹状欠陥を有するエピタキシャル基板の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜を形成する際に、塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とすることを特徴とするエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法により、表面に凸状欠陥または凹状欠陥が存在する化合物半導体に紫外線及び可視光透過性基板を接合するための塗布膜を形成する際に、塗布膜を均一な膜厚にでき、かつ塗布膜の硬化不良を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0057】
また上述のように、エピタキシャル層の剥離が生じ難い接合型ウェーハの製造方法が求められていた。
【0058】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、出発基板上に複数の化合物半導体層を成長または堆積させたエピタキシャル基板であって、前記化合物半導体層の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥または一辺が200μm以下の凹状欠陥を有するエピタキシャル基板の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜を介して前記化合物半導体層と紫外線及び可視光透過性基板を接合あるいは接着して接合型ウェーハを作製する接合・接着工程とを含む接合型ウェーハの製造方法において、前記塗布膜形成工程の塗布雰囲気を酸素濃度100ppm以下とすることを特徴とする接合型ウェーハの製造方法により、エピタキシャル層の剥離が生じ難い接合型ウェーハを製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0059】
以下、図面を参照して説明する。
以下、本発明の実施形態に係るエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法及び接合型ウェーハの製造方法について
図1~
図7を参照しながら説明する。
【0060】
まず
図1を参照して塗布膜が形成されるエピタキシャル基板の一例を説明する。
図1に示すようにエピタキシャル基板1は出発基板3及び複数の化合物半導体層2を備える。
出発基板3は化合物半導体層2を支持するとともに成長または堆積の際の下地となる基板であり、例えばGaAs基板が用いられる。
【0061】
化合物半導体層2は出発基板3上に成長または堆積させたエピタキシャル層である。
図1に示すエピタキシャル基板1は化合物半導体層2を出発基板3から分離して、デバイス層としてLED構造を形成する基板であるため、化合物半導体層2としてエッチングストップ層5、下部クラッド層7、活性層9、上部クラッド層11、及びGaP窓層13が順番に積層された構造を例示している。
【0062】
エピタキシャル基板1は例えば出発基板3としてのGaAs基板上に出発基板3と同一の材料であるGaAsバッファ層(不図示)をエピタキシャル成長し、その上にGaInPなどのエッチングストップ層5を形成し、さらにその上にAlGaInP系エピタキシャル機能層として、下部クラッド層7、活性層9、上部クラッド層11、及びGaP窓層13を成長させることで製造できる。
【0063】
このように
図1では第一導電型のGaAsの出発基板3上に、第一導電型のGaAsバッファ層積層後、GaInP/GaAsのエッチングストップ層5、AlGaInPの下部クラッド層7、AlGaInPの活性層9、AlGaInPの上部クラッド層11、GaInP中間層(不図示)、GaP窓層13から成る発光機能層を積層したエピタキシャル基板1を作製した場合を例示した。
【0064】
本実施形態においては、
図1でクラッド層として下部クラッド層7と上部クラッド層11を各一層で図示したが、ドーピング水準が一定に限られるものではなく、2段以上のドーピング水準を有していても良いし、傾斜ドーピングを有していてもよく、また、これらを組み合わせたドーピングプロファイルを有していても良い。
【0065】
また、
図1ではクラッド層として下部クラッド層7と上部クラッド層11を各一層で図示したが1種類の組成に限定されるものではなく、2種類以上の組成からなるクラッド層であっても良い。
【0066】
活性層9は単一の組成に限定されるものではなく、バリア層と井戸層を有するいわゆる多重量子井戸構造を有していてもよく、バリア層あるいは/及び井戸層の厚さが量子効果の低い10nm以上の厚さを有していても良い。
【0067】
窓層はGaP窓層13で記載したが、GaPに限定されるものではなく、発光波長に対して透明であればよいため、AlGaAsやAlAsを選択してもGaPと同様の窓層としての効果が得られる。
【0068】
本実施形態においては、エピタキシャル機能層はAlGaInP系から成るLED構造を例示したが、この構造に限定されるものではなく、InGaP/GaAs系から成る太陽電池構造、InGaP/GaAs系から成るHBT構造、AlGaAs/GaAs系からなるHEMT構造などが選択可能である。
【0069】
これらの機能層構造は例示であり、出発基板3に略格子整合するのであれば、どのような構造でも選択可能である。また、ここではエッチングストップ層5を挿入する場合を例示したが、基板とエピタキシャル機能層の剥離の選択方法によっては必ずしも必要ではなく、出発基板3とエピタキシャル層を選択的なウェットエッチング処理する場合、エッチングストップ層5ではなくAlAsなどの犠牲層を挿入しても同様の構造が最終的に得られる。
【0070】
本実施形態においては、出発基板3がGaAsである場合を例示したが、GaAsに限定されるものではなく、エピタキシャル成長するのであればどのような基板でも選択可能である。例えば、出発基板3(Si)上にGeなどのバッファ層を成長後、GaAs第一バッファ層、AlAsなどの犠牲層を形成、その上に第二GaAsバッファ層をエピタキシャル成長し、その上にエピタキシャル機能層を成長しても良い。このとき、バッファ層としてGe層を積層した場合を示したが、Ge層が無くても同様の効果が得られる。
【0071】
また、出発基板3の表面の面方位は(001)面であることが好適である。エピタキシャル機能層はAlGaInP系から成るLED構造、InGaP/GaAs系から成る太陽電池構造、InGaP/GaAs系から成るHBT構造、AlGaAs/GaAs系からなるHEMT構造などが選択可能である。
【0072】
この機能層構造は例示であり、出発基板3に略格子整合するのであれば、どのような構造でも選択可能である。また、ここでは犠牲層を挿入する場合を例示したが、基板とエピタキシャル層の剥離の選択方法によっては必ずしも必要ではなく、エピタキシャル成長後の出発基板3全てを化学的にエッチングオフするのであれば、犠牲層を挿入しなくても同様の効果が得られる。
【0073】
あるいは、GaAsやSiを出発基板とせず、InPを出発基板3としても良い。この場合、出発基板3(InP)上にInGaAsなどの犠牲層を形成し、その上に出発基板と同一の材料であるInPバッファ層をエピタキシャル成長し、その上にエピタキシャル機能層を成長する。
【0074】
このエピタキシャル機能層は、InGaAs/InP系から成る受光素子構造、InGaAsP/InP系から成る受光素子(PD、APD)構造、InGaAsP/InP系から成る発光素子(LD、LED)構造、InAlAs/InGaAs系から成る受光素子(PD、APD)構造、InAlAs/InGaAs系からなる電界効果トランジスタ構造などが選択可能である。
【0075】
これらの機能層構造は例示であり、出発基板3に略格子整合するのであれば、どのような構造でも選択可能である。また、ここでは犠牲層を挿入する場合を例示したが、基板とエピタキシャル機能層の剥離の選択方法によっては必ずしも必要ではなく、化学的に出発基板3をエッチングオフする場合、犠牲層を挿入せず、犠牲層に代えてInGaAsなどのエッチングストップ層を挿入しても同様の構造が最終的に得られる。
【0076】
なお、
図1に示すように、エピタキシャル基板1(EPW)のエピタキシャル最上層、ここではGaP窓層13の表面または表面近傍にはエピタキシャル成長の際に格子不整合あるいは異なるストイキオメトリーに起因して生じた凹状欠陥33(ピット)が形成されている。
【0077】
AlGaInP系エピタキシャル機能層がLED構造の場合、凹状欠陥33(ピット)は角錐状の凹形状となっている。ピットの角錐面は多くの場合、(11x)面(x=1~7)を有しており、角錐部の頂部の多くは鋭角である。また、角錐部の深さはエピタキシャル層の総厚を超えることはないため、一辺が200μm以下の長さを有しており、深さも同様に50μm以下である。
【0078】
またGaP窓層13の表面または表面近傍にはエピタキシャル成長中に成長炉の内壁から落下したパーティクルに起因する一辺が100μm以上の凸状欠陥31(インクルージョン部)が多数存在する。
以上が、塗布膜15が形成されるエピタキシャル基板1の一例の説明である。
【0079】
次に、
図1及び
図2を参照してエピタキシャル基板1上への塗布膜形成方法について説明する。
本発明の塗布膜形成方法では
図1に示すエピタキシャル基板1を雰囲気ガスで満たされた環境下でエピタキシャル最上層、ここではGaP窓層13の表面に樹脂を塗布して、
図2に示すように塗布膜15を形成する。この際に、塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とする。理由は以下の通りである。
【0080】
BCBなどの熱硬化性樹脂を塗布して、塗布膜15を形成する場合、塗布時の濡れ性が悪く、50μm程度の深さの凹状欠陥33であっても、凹状欠陥33への被覆性の向上は難しい。従って、凹状欠陥33における塗布膜15との界面、特に角錐部の頂部には、塗布時の雰囲気ガスが残留しやすい。
【0081】
また、凸状欠陥31(インクルージョン部)は、元々のパーティクルの大きさもさることながら、その後の異常成長により、1μm以上の高さを有する場合が大半である。(エピタキシャル成長終了直前で落下したパーティクルは異常成長の時間が短いため、高さは高くない。)凸状欠陥31は側面が不定形で表面積が非常に大きく、高さも高い。
【0082】
さらに、塗布膜15は一般にスピンコートで形成されるが、スピンコートによる塗布法では、回転中心からみて凸状欠陥31が存在する位置から外周方向への膜厚均一性が非常に悪くなる成膜方法である。凸状欠陥31の高さが高くなればなるほど、その傾向は顕著である。
【0083】
その上、塗布膜15はBCBのように塗布時の濡れ性が悪いものがあり、凸状欠陥31の側面の表面積が大きくなればなるほど、被覆率は悪化する。従って、凸状欠陥31およびその周辺部の被覆率および塗布膜均一性を向上させることは難しく、凸状欠陥31の側面と塗布膜15との界面には、塗布時の雰囲気ガスが残留しやすい。
【0084】
以上の問題を解決するため、ピット(凹状欠陥33)部あるいはインクルージョン部(凸状欠陥31)部と塗布膜15との界面に、塗布処理時の雰囲気ガスが残留しても問題が生じないように、塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とする。
【0085】
塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とした環境下で塗布を行うことで、塗布膜15と凸状欠陥31の界面あるいは凹状欠陥33に残留する気体から酸素を排除することができる。この界面に存在する気体の酸素濃度が100ppm超の場合、特に塗布膜15がBCBである場合に環状付加反応を阻害し、BCBが熱硬化することを阻害するが、酸素以外の気体は環状付加反応を阻害しないため、酸素濃度を100ppm以下とすることで、塗布膜15の硬化処理を設計通り行うことができる。以上が塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とする理由である。
【0086】
塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下にする具体的な方法は特に限定しないが、例えば以下の方法を例示できる。
まずエピタキシャル基板1を酸素濃度100ppm以下のグローブボックスにロードロックを介して導入する。本実施形態においては、グローブボックスを例示したが、グローブボックスに限定されるものではなく、他の気密性を有する設備であればどのような設備でも選択可能である。
【0087】
例えば、ロードロックからのエピタキシャル基板1の移動を機械的に行い、後述するスピンコーターへの移動を機械的に行って処理することが可能な設備であれば、グローブを有する必要はなく、金属製のチャンバーやデシケータのような気密樹脂容器を用いても良い。ただし、パーティクルが少ない環境であることが好ましく、塗布膜15の樹脂には有機溶剤が含まれることから全樹脂容器よりは金属部分が主である気密容器であるのが好ましい。
【0088】
酸素濃度を100ppm以下にする方法としてはパージガスの連続フローを例示できる。つまり、塗布膜15を形成する際にエピタキシャル基板1が収納される密閉容器内をパージガスで置換することにより塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とする方法が挙げられる。
【0089】
このように、樹脂の塗布時の塗布雰囲気を大気から、パージガスに置換して塗布を行うことで、大気中に含まれる酸素を排除できる。
【0090】
パージガスの種類は特に限定しないが、例えばヘリウム、水素、窒素、ネオン、アルゴンのいずれか一種類以上から選択したガスを用いることができる。
【0091】
これにより、パージガスとして、ヘリウム・水素・窒素・ネオン・アルゴンのように酸素を含まないガスを選択するため、塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下の濃度に、容易に維持できる。
【0092】
なお塗布膜15を形成するプロセス中もパージガスの連続フローを行ってもよいが、連続フローに限定されるものではなく、酸素濃度100ppm以下の環境が得られた後、連続フローを停止し、気密環境下で塗布膜15を形成するプロセスを実施しても、連続フロー環境下で塗布膜15を形成した場合と同様に、エピタキシャル層(化合物半導体層2)と塗布膜15の界面に酸素が存在しない効果が得られる。
【0093】
塗布膜15を形成する方法も特に限定しないが、例えばグローブボックス内に導入したエピタキシャル基板1を真空吸着し、スピンコート法により熱硬化性樹脂等の塗布膜15を塗布する方法を例示できる。グローブボックス内は大気圧付近の圧力雰囲気のため、従来型のスピンコーターをそのまま使用することができる。
【0094】
一方で、塗布膜の形成は雰囲気ガスで満たされた環境下で行われる。つまり真空のような雰囲気ガスを除いた環境では行わない。これらは真空中で塗布膜を形成すると、塗布膜中の溶剤が揮発することにより濃度が変化して粘度が変化し膜厚が変化するため、膜厚の再現性・安定性が悪くなるためである。
このような環境を得るために、塗布時の圧力雰囲気は0.1気圧(10kPa)以上、大気圧つまり1気圧(100kPa)付近であることが望ましい。
【0095】
圧力雰囲気をこの範囲にすることで、塗布する樹脂の粘度を調整している溶剤が揮発し難くなり、粘度が変化することにより塗布設計膜厚が変わるのを防ぐことができる。これにより設計膜厚を変化させないために、低酸素雰囲気の管理と共に環境温度の管理が必要なくなり、製造工程管理がより単純になり、工程能力が向上し、歩留まりも向上する。
【0096】
また、スピンコート処理で塗布膜15を形成する場合、一般にはエピタキシャル基板1を真空チャックし、エピタキシャル基板1を回転させて樹脂を塗布するが、圧力雰囲気を0.1気圧以上とすることで、相対圧力差を維持でき、エピタキシャル基板1への真空チャック力を維持できる。これにより、回転中のエピタキシャル基板1の保持力も維持できる。そのことにより、エピタキシャル基板1が回転中に破損し難くなる。そのため、0.1気圧以上の圧力環境でスピンコート処理を行うのが好ましい。
【0097】
なお、圧力雰囲気が大気圧より高い分には大きな問題は生じにくいが、加圧雰囲気で処理する必然性は無い。大気の混入を防ぐため、多少の加圧雰囲気で行うことは効果的ではあるものの、圧力雰囲気の上限は例えば3気圧(300kPa)程度である。
【0098】
塗布膜15の厚さは特に限定しないが、熱硬化性樹脂としてBCBを用いる場合、スピンコートしたBCB塗布膜厚は例えば0.5μm程度である。ただし膜厚は0.5μmに限定されるものではなく、0.01μm以上、3μm以下であってもよい。
【0099】
特に、膜厚が1μm以下であると、LLO用に好適な厚さにできる。また、このような1μm以下の膜厚で塗布する場合、被覆率はより悪化する方向に変化するため、塗布膜15を均一な膜厚にできる本発明の効果が特に高い。
【0100】
塗布膜15の種類も特に限定しないが、熱硬化性樹脂とすることで、塗布膜15を硬化させるタイミングを温度で調整することができる。
【0101】
塗布膜15を熱硬化性樹脂とする場合、ベンゾシクロブテン、エポキシ樹脂、ワックス、シリコーン、アモルファスフッ素樹脂、スピンオンガラス、ポリイミドのいずれか一種類以上から選択される樹脂を用いることができる。
これにより、エピタキシャル基板1に後工程で支持基板を確実に接合することができる。
【0102】
なお、塗布膜15の形成前に塗布膜15を塗布する面に接着増強処理材を塗布する、あるいは/及び、
図2に示すようにSiO
2膜17aなどの接着増強層を形成しても同様な塗布膜15が得られる。また、エピタキシャル層(化合物半導体層2)上の凸状欠陥31を公知のスパイククラッシュ法にて除去した後、塗布膜15を塗布しても同様な塗布膜15が得られる。
以上がエピタキシャル基板1上への塗布膜形成方法の手順の説明である。
【0103】
次にエピタキシャル基板1を用いた接合型ウェーハの製造方法の手順について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0104】
まず
図1に示すエピタキシャル基板1の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で
図2に示すように樹脂を塗布して塗布膜15を形成する(塗布膜形成工程)。具体的な塗布膜形成工程は上記の塗布膜形成方法の手順の説明で述べた通りであり、特に塗布雰囲気を酸素濃度100ppm以下とする必要がある。
【0105】
次に、
図3に示すように塗布膜15を介してエピタキシャル基板1の化合物半導体層2と支持基板である紫外線及び可視光透過性基板19を接合あるいは接着して接合型ウェーハ41を作製する(接合・接着工程)。
【0106】
具体的にはBCB等の塗布膜15を塗布後、紫外線及び可視光透過性基板19を塗布膜15に圧着しつつ熱を印加して硬化させ、エピタキシャル基板1と、被接合ウェーハ(支持基板)である紫外線及び可視光透過性基板19を接合・接着する。
【0107】
より具体的には塗布膜形成後、P-CVD(プラズマCVD)法でSiO2膜17bを成膜した紫外線及び可視光透過性基板19と塗布膜15を対向させ、圧力を減圧して真空中で熱圧着する。紫外線及び可視光透過性基板19としてサファイアを用いた場合、接合圧力は例えば60N/cm2であり、塗布膜15としてBCBを用いた場合、接着(硬化)条件は例えば250℃で30分、減圧雰囲気中で保持して硬化処理を行えばよい。
【0108】
ただし接合圧力は60N/cm2に限定されない、例えば5N/cm2以上、300N/cm2以下でも同様の効果が得られる。
【0109】
硬化処理は0.01atmの減圧雰囲気で行うことができるが、減圧雰囲気に限定されない。1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気中で実施してもよく、酸素濃度100ppm以下の雰囲気中で実施しても同様の効果が得られる。
【0110】
なお、接合・接着工程では、塗布膜形成方法の手順の説明で述べた塗布膜15、具体的にはベンゾシクロブテン、エポキシ樹脂、ワックス、シリコーン、アモルファスフッ素樹脂、スピンオンガラス、ポリイミドのいずれか一つ以上を用いて接合または接着することが好ましい。
【0111】
また、紫外線及び可視光透過性基板19として、紫外線及び可視光透過性を有する、サファイア、石英、ガラス、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、ZnO、SiC、GaN、GaPのいずれかを用いることができる。
以上がエピタキシャル基板1を用いた接合型ウェーハ41の製造方法の手順の説明である。
【0112】
次に、接合型ウェーハにデバイス層を形成する手順について、
図4~
図7を参照して、簡単に説明する。
接合・接着工程後、
図4に示すように出発基板3を除去する。
図1のようにエッチングストップ層5を設けた構造の場合、エッチングストップ層5も除去する。
【0113】
具体的には出発基板3がGaAsの場合、熱圧着後、アンモニア過水で出発基板3をエッチングオフする。出発基板3の除去後、塩酸水でInGaP等の第一エッチングストップ層を除去する。次いで、硫酸過水でGaAs第二エッチングストップ層を除去し、発光機能層のみを紫外線及び可視光透過性基板19上に残留させる。
【0114】
発光機能層のみを紫外線及び可視光透過性基板19上に残留させた後、フォトリソグラフィ法にてエッチングマスクを形成し、ICP等の塩素系ガスを用いたドライエッチング法にて、
図5に示すように素子分離領域および電極コンタクト領域のエピタキシャル層を部分的に除去する。
【0115】
その際、エピタキシャル層(SiO2膜17aを形成した場合はSiO2膜17a)と塗布膜15との界面に酸素が残留していた場合、熱圧着時に部分的に硬化不良が発生する。この硬化不良部はプラズマにより帯電し、ガスを放出するため、ドライエッチング時に気体が発生し、エピタキシャル層が剥離する。しかし、本技術を用いることで、原理的に塗布膜15とエピタキシャル層との間に酸素が残留しないため、硬化不良が発生せず、エピタキシャル層の剥離発生を防止することができる。
【0116】
ドライエッチング処理後、
図6に示すようにエピタキシャル層にSiO
2層21を成膜後、フォトリソグラフィ法と蒸着、リフトオフ法により、
図7に示すようにオーミック用電極23を金属で形成し、熱処理を施すことでオーミックコンタクトを形成する。
【0117】
オーミックコンタクト形成時の温度は350~450℃程度であり、BCBのガラス転移点である350℃より高い温度の処理を行うことが一般的である。BCB硬化処理が不十分な個所がある場合は酸素の介在により硬化不良が発生していることが考えられる。ガラス転移点以上の熱処理環境下で硬化不良部はガスを放出するため、エピタキシャル層剥離が発生する。
【0118】
より具体的には、塗布膜15を形成する際に塗布雰囲気を100ppm以下にしなかった場合、ピット(凹状欠陥33)の角錐頂部に酸素が残留したままとなり、塗布膜15が例えばBCBの場合は環状付加反応が阻害され、BCBが硬化しない状態で保持される硬化不良部が生じる。
【0119】
インクルージョン部(凸状欠陥31)も側面に酸素が残留したままだと塗布膜15が例えばBCBの場合は環状付加反応が阻害され、BCBが硬化しない状態で保持される硬化不良部が生じる。
【0120】
またオーミックコンタクト形成時のようにデバイス作製時の熱処理温度は一般に350℃以上であり、多くの場合、400℃以上である。また、BCBの耐熱温度(ガラス転位点)は350℃であり、350℃以上の温度ではBCBの分解が始まる。
【0121】
そのため、硬化不良部が生じた状態で化合物半導体層2にデバイスを大気中で形成する場合、ピット(凹状欠陥33)の角錐頂部(ピット底部)のエピタキシャル厚が薄くなっているため、クラックを生じて開口し、大気にBCBが接触する状態になる。これがきっかけとなって、先の熱処理温度(350℃以上)に達すると、BCB角錐頂部(ピット底部)から大気が侵入し、硬化不良部と爆発的な反応を生じ、エピタキシャル層が剥離する。
【0122】
さらに、硬化不良部が生じた状態で化合物半導体層2にデバイスを大気中で形成する場合、インクルージョン部(凸状欠陥31)は凸状となっているため、応力によりエピタキシャル層にクラックを生じて開口し、大気にBCBが接触する状態になる。これがきっかけとなって、先の熱処理温度(350℃以上)に達すると、インクルージョン部(凸状欠陥31)周辺の硬化不良部と、クラックから侵入した大気が爆発的な反応を生じ、エピタキシャル層が剥離する。
【0123】
しかし、本発明では塗布膜15を形成する際に塗布雰囲気を100ppm以下にしており、ピット(凹状欠陥33)やインクルージョン部(凸状欠陥31)と隣接する領域のBCBに熱硬化不良が生じることが無く、デバイスプロセスにおける熱処理でエピタキシャル層が剥離することを回避することができる。
【0124】
このように本発明では塗布膜15とエピタキシャル層(化合物半導体層2)の間に酸素がほとんど存在せず、その結果、硬化不良が発生しないため、オーミックコンタクト形成時のガラス転移点以上の熱処理条件下で熱処理を施しても、エピタキシャル層の剥離が発生することが無い。
【0125】
以上、本発明においては、エピタキシャル層である化合物半導体層2の表面または表面近傍に一辺200μm以下のピット(凹状欠陥33)または一辺100μm以上の凸状欠陥31を有するエピタキシャル基板1上に、特に1μm以下の膜厚でベンゾシクロブテン(BCB)等の塗布膜15を塗布する際、設計膜厚に対して安定した膜厚を得ることができる共に、塗布膜15とエピタキシャル層の界面から酸素を排除した状態を得ることもできる。
【0126】
また、本発明の接合型ウェーハの製造方法によれば、エピタキシャル層の表面または表面近傍に一辺200μm以下のピット(凹状欠陥33)または一辺100μm以上の凸状欠陥31を有するエピタキシャル基板1上に、特に1μm以下の膜厚でベンゾシクロブテン(BCB)等の塗布膜15を形成し、塗布膜15を介して紫外線及び可視光透過性基板19と接合する際、設計膜厚に対して安定した接合後の塗布膜15の膜厚を得ることができると共に、塗布膜15とエピタキシャル層の界面から酸素を排除した状態を得ることで、デバイス形成の際にエピタキシャル層が剥離しない安定した接合型ウェーハ41を製造できる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0128】
エピタキシャル基板1上に塗布膜15を形成して支持基板と接合することで接合型ウェーハを製造し、さらに出発基板3を除去し、デバイス層を形成し、デバイス層の形成の際の各工程でのエピタキシャル層の剥離個数を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
【0129】
【0130】
まず
図1に示すように、第一導電型のGaAsの出発基板3上に、第一導電型のGaAsバッファ層積層後、Ga
0.5In
0.5P第一エッチングストップ層を0.3μm、GaAs第二エッチングストップ層を各0.3μm、(Al
xGa
1-x)
yIn
1-yP(0<x≦1、0.4≦y≦0.6)下部クラッド層7を1μm、(Al
xGa
1-x)
yIn
1-yP(0≦x<0.6、0.4≦y≦0.6)活性層9を0.6μm、(Al
xGa
1-x)
yIn
1-yP(0<x≦1、0.4≦y≦0.6)上部クラッド層11を0.6μm、Ga
yIn
1-yP(0.5≦y≦1)中間層(不図示)を0.05μm、GaP窓層13を8μm成膜した発光機能層を積層したエピタキシャル基板1(EPW)を作製した(
図8のS1)。
【0131】
出発基板3から下部クラッド層7までの導電型は、実施例ではN型で、上部クラッド層11からGaP窓層13まではP型とした。下部クラッド層7の平均ドーピング濃度は5.0×1017/cm3、上部クラッド層11の平均ドーピング濃度は1.0×1017/cm3とした。活性層9を除くクラッド層以外の層の平均ドーピング濃度は0.8~3.0×1018/cm3とした。
【0132】
エピタキシャル基板1の作製後、P-CVD法にて厚さ0.02μmのSiO
2膜17aをエピタキシャル基板1上に成膜した(
図8のS2)。P-CVD成膜ではTEOS(テトラエトキシシラン)と酸素を原料として用いた。
【0133】
次に、SiO
2膜17aを成膜したエピタキシャル基板1を、ロードロックを介して酸素濃度100ppm以下に保たれたグローブボックス内に導入した(
図8のS3)。グローブボックス内を酸素濃度100ppm以下にするため、パージガスとして窒素を連続フローで導入し、8時間以上パージした。酸素濃度が100ppm以下であることは酸素濃度計で計測し、プロセス中に連続的に計測した。
【0134】
次に1気圧程度に保持されたグローブボックス内に設置したスピンコーター上にエピタキシャル基板1を移動し、回転式のステージに真空吸着し、エピタキシャル基板1を回転させながら熱硬化性樹脂としてBCBを滴下し、BCBの塗布膜15をスピンコートした(
図8のS4)。回転速度は5,000rpm、滴下したBCB液量は0.5mlとした。スピンコートしたBCBの厚さは0.5μmであった。
【0135】
BCBの塗布膜15をスピンコート後、グローブボックス内に設けたホットプレート上にエピタキシャル基板1を移動し、溶剤揮発処理(溶剤飛ばし処理)を行った(
図8のS5)。揮発処理の温度は80℃とした。この状態が
図2に示す状態である。
【0136】
揮発処理後、ロードロックを介してエピタキシャル基板1をグローブボックス内から取り出した(
図8のS6)。一方、支持基板として、サファイアウェーハを用意して(
図8のS7)、P-CVD法にてSiO
2膜17b(厚さ0.02μm)を成膜した(
図8のS8)。この支持基板とエピタキシャル基板1を対向させて重ね合わせ(
図8のS9)、真空チャンバー内に導入して(
図8のS10)熱圧着し(
図8のS11)、
図3に示すようにエピタキシャル層(化合物半導体層2)と支持基板(紫外線及び可視光透過性基板19)を接合した。
【0137】
接合圧力は60N/cm2とし、BCBの接着(硬化)条件は250℃で30分の保持とし、0.01atmの減圧雰囲気中で硬化処理を行った。
【0138】
支持基板と接合後、アンモニア過水で出発基板3をエッチングオフし、出発基板3を除去した(
図8のS12)。その後、塩酸水でInGaPエッチングストップ層を除去し、次いで、硫酸過水でGaAsエッチングストップ層を除去し、
図4に示すように発光機能層のみを支持基板上に残留させたデバイス作製用のエピタキシャル接合基板を作製した。
【0139】
エピタキシャル接合基板作製後、ハードマスク用SiO2膜をP-CVD法にて1.2μmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィ法にてレジストパターンを形成した。レジストパターンの開口部をフッ酸系溶液でエッチングしてパターン化しレジストを剥離した。
【0140】
レジストの剥離後、エピタキシャル接合基板をICP装置に導入し、塩素系プラズマにてドライエッチング処理し、開口部のエピタキシャル層を除去し、素子分離加工した(
図8のS13)。本実施例では塩素系ガスとして塩素を用い、基板温度は30℃にて処理を行った。同様の処理を繰り返して下部クラッド層7と活性層9、上部クラッド層11を除去し、
図5に示すように上部クラッド層11を露出させた。
【0141】
次にSiO
2層21をP-CVD法にて0.5μm厚で成膜し、フォトリソグラフィ法にてレジストパターンを形成した。レジストパターンの開口部をフッ酸系溶液でエッチングして
図6に示すようにパターン化してレジストを剥離した(
図8のS14)。
【0142】
さらに、フォトリソグラフィ法にてレジストパターンを形成し、開口部に金属を蒸着し、リフトオフ法にてパターンニングした(
図8のS15)。
図7に示すように金属パターンを形成後、窒素雰囲気中RTA処理(400℃で5分)を行い、金属パターン部と半導体層との間にオーミック接触を形成する処理(オーミック処理)を行った(
図8のS16)。以上の工程でデバイス構造が形成された。
【0143】
(比較例)
BCBのスピンコートを酸素濃度が100ppm以下の雰囲気ではなく、大気中で実施したこと以外は実施例と同じ条件でエピタキシャル基板1上へ塗布膜15を形成して支持基板と接合することで接合型ウェーハを製造し、さらに出発基板3を除去してデバイス構造を形成した。
【0144】
[エピタキシャル層剥離個数評価]
図9に、実施例における窒素中(酸素濃度100ppm以下)にてBCBをスピンコートして接合した実施例における、デバイス形成の際の基板除去(
図8のS12)、ICP加工(
図8のS13)、SiO
2成膜(
図8のS14)、電極蒸着(
図8のS15)、オーミック処理(
図8のS16)の各工程で発生したエピタキシャル層剥離の個数と、大気中でBCBをスピンコートした比較例の各工程で発生したエピタキシャル層剥離の個数との比較を示す。
【0145】
図9に示すように比較例では基板除去後のICP加工およびSiO
2成膜、オーミック処理などプラズマ雰囲気または加熱処理を行う工程毎にエピタキシャル層剥離が発生(増加)したが、実施例においてはエピタキシャル層剥離が発生せず、かつ、増加もしなかった。
【0146】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:出発基板上に複数の化合物半導体層を成長または堆積させたエピタキシャル基板であって、前記化合物半導体層の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥または一辺が200μm以下の凹状欠陥を有するエピタキシャル基板の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜を形成する際に、
塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とすることを特徴とするエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
[2]:前記塗布膜の厚さを1μm以下とすることを特徴とする上記[1]のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
[3]:前記塗布膜を形成する際に前記エピタキシャル基板が収納される密閉容器内をパージガスで置換することにより前記塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とすることを特徴とする上記[1]または上記[2]のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
[4]:前記パージガスとして、ヘリウム、水素、窒素、ネオン、アルゴンのいずれか一種類以上から選択したガスを用いることを特徴とする上記[3]のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
[5]:前記塗布雰囲気を、10kPa以上の圧力雰囲気とすることを特徴とする上記[1]から上記[4]のいずれかのエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
[6]:前記塗布膜を、熱硬化性樹脂とすることを特徴とする上記[1]から上記[5]のいずれかのエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
[7]:前記熱硬化性樹脂として、ベンゾシクロブテン、エポキシ樹脂、ワックス、シリコーン、アモルファスフッ素樹脂、スピンオンガラス、ポリイミドのいずれか一種類以上から選択される樹脂を用いることを特徴とする上記[6]のエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
[8]:前記凹状欠陥はエピタキシャル成長で生じるピットであり、前記凸状欠陥はエピタキシャル成長中に前記化合物半導体層に落下したパーティクルによって生じた欠陥であることを特徴とする上記[1]から上記[7]のいずれかのエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法。
[9]:出発基板上に複数の化合物半導体層を成長または堆積させたエピタキシャル基板であって、前記化合物半導体層の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥または一辺が200μm以下の凹状欠陥を有するエピタキシャル基板の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜を介して前記化合物半導体層と紫外線及び可視光透過性基板を接合あるいは接着して接合型ウェーハを作製する接合・接着工程とを含む接合型ウェーハの製造方法において、
前記塗布膜形成工程の塗布雰囲気を酸素濃度100ppm以下とすることを特徴とする接合型ウェーハの製造方法。
[10]:前記接合・接着工程において、ベンゾシクロブテン、エポキシ樹脂、ワックス、シリコーン、アモルファスフッ素樹脂、スピンオンガラス、ポリイミドのいずれか一つ以上を用いて接合または接着することを特徴とする上記[9]の接合型ウェーハの製造方法。
[11]:前記紫外線及び可視光透過性基板として、紫外線及び可視光透過性を有する、サファイア、石英、ガラス、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、ZnO、SiC、GaN、GaPのいずれかを用いることを特徴とする上記[9]または上記[10]の接合型ウェーハの製造方法。
【0147】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0148】
1…エピタキシャル基板、 2…化合物半導体層、 3…出発基板、 5…エッチングストップ層、 7…下部クラッド層、 9…活性層、 11…上部クラッド層、 13…GaP窓層、 15…塗布膜、 17a…SiO2膜、 17b…SiO2膜、 19…可視光透過性基板、 21…SiO2層、 23…オーミック用電極、 31…凸状欠陥、 33…凹状欠陥、 41…接合型ウェーハ。
【要約】
【課題】
表面に凸状欠陥または凹状欠陥が存在する化合物半導体に紫外線及び可視光透過性基板を接合するための塗布膜を形成する際に、塗布膜を均一な膜厚にでき、かつ塗布膜の硬化不良を抑制できるエピタキシャル基板上への塗布膜形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
出発基板3上に複数の化合物半導体層2を成長または堆積させたエピタキシャル基板1であって、化合物半導体層2の表面または表面近傍に形成された一辺が100μm以上の凸状欠陥31または一辺が200μm以下の凹状欠陥33を有するエピタキシャル基板1の表面上に、雰囲気ガスで満たされた環境下で樹脂を塗布して塗布膜15を形成する際に、塗布雰囲気の酸素濃度を100ppm以下とすることを特徴とするエピタキシャル基板1上への塗布膜形成方法。
【選択図】
図2