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特許7501805コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法及び藻場造成方法
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  • 特許-コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法及び藻場造成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法及び藻場造成方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 33/02 20060101AFI20240611BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20240611BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240611BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240611BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20240611BHJP
   A01K 61/70 20170101ALI20240611BHJP
【FI】
A01G33/02 101Z
B01J19/00 A
B28B11/24
C04B28/02
C04B40/02
A01K61/70
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024004019
(22)【出願日】2024-01-15
【審査請求日】2024-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】下川 吉信
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】國西 健史
(72)【発明者】
【氏名】秋山 達志
(72)【発明者】
【氏名】中村 丞吾
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-157094(JP,A)
【文献】特開2011-153924(JP,A)
【文献】藤倉祐介 外1名,高圧注入試験装置による硬化コンクリートのCO2固定化手法の検討,フジタ技術研究報告(2022年),第58号,日本,2022年,第13-18頁,https://www.fujita.co.jp/tech_center/img/up/2022/2022_03.pdf
【文献】取違剛,炭酸化養生によるコンクリートへのCO2固定に関する研究 ,九州大学学術情報リポジトリ,日本,2021年,第72―78頁、第167―168頁,https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/4496126/eng1620.pdf
【文献】李柱国,気泡コンクリートを用いる二酸化炭素固定技術に関する研究,日本建築学会構造系論文集,第81巻第721号,日本,2016年,第405―414頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/81/721/81_405/_pdf
【文献】李柱国 外1名,気泡コンクリートによる二酸化炭素固定技術に関する基礎的研究,コンクリート工学年次論文集,第37巻第1号,日本,2015年,第1369―1374頁,https://data.jci-net.or.jp/data_pdf/37/037-01-1223.pdf
【文献】張日紅 外3名,コンクリートの二酸化炭素吸収に及ぼす配合の影響,土木学会西部支部研究発表会,日本,1998年,第884―885頁,http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00074/1998/1998-0884.pdf
【文献】小川洋二 外3名,炭酸ガスを吸収したポーラスコンクリートの物性,コンクリート工学年次論文報告集,第15巻第1号,日本,1993年,第531―536頁,https://data.jci-net.or.jp/data_pdf/15/015-01-1088.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 33/02
B01J 19/00
B28B 11/24
C04B 28/02
C04B 40/02
A01K 61/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
早強セメントを260~310kg/mに水/セメント比(質量%)を55~67で配合しこれによりJIS A 1128による空気量(容量%)を5.0~12.0で含むコンクリート組成物を調製し該コンクリート組成物を、二酸化炭素を含む排ガスを用いて中性化養生をすることにより、二酸化炭素を20~80kg-CO/mで貯留し、28日圧縮強度が30~43N/mm、リニアトラバース法(ASTM C 457)を用いて算出した300μm以上の気泡量が3.0~8.9容量%であって、表面及び内部が多孔質で、得られるコンクリート体内部に形成される気泡空隙は独立空隙及び連続空隙である、多孔質コンクリート体を調製して、該多孔質コンクリート体の孔に、藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種し、該コンクリート体をコンクリート増殖礁基材として海底に設置して、該藻類が海中の二酸化炭素を吸収することを特徴とする、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法。
【請求項2】
請求項1記載の二酸化炭素固定方法において、該コンクリート組成物は、更にAE剤又は発泡剤を含むことを特徴とする、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の海中の二酸化炭素固定方法において、上記中性化養生は、セメント工場からの排ガスを用いておこない、該排ガス中の二酸化炭素により、該多孔質コンクリート体が炭酸化されて、二酸化炭素が固定されることを特徴とする、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法。
【請求項4】
早強セメント260~310kg/m 水/セメント比(質量%)を55~67で配合しこれによりJIS A 1128による空気量(容量%)を5.0~12.0で含むコンクリート組成物を調製し該コンクリート組成物を、二酸化炭素を含む排ガスを用いて中性化養生をすることにより、二酸化炭素を20~80kg-CO/mで貯留し、28日圧縮強度が30~43N/mm、リニアトラバース法(ASTM C 457)を用いて算出した300μm以上の気泡量が3.0~8.9容量%であって、表面及び内部が多孔質で、得られるコンクリート体内部に形成される気泡空隙は独立空隙及び連続空隙である、多孔質コンクリート体を調製し、該多孔質コンクリート体の孔に藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種し、該コンクリート体をコンクリート増殖礁基材として海底に設置して、該藻類が海中の二酸化炭素を吸収して成長する藻場を造成することを特徴とする、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた藻場造成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法及び藻場造成方法に関し、特に、二酸化炭素を有効に吸収貯留することができ、また、藻類の生育が有効に促進され、CO吸収源(ブルーカーボン)として貢献できる藻場を構築できる、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法及び藻場造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動に伴う海水温の上昇等の影響により、従来の海藻類の藻場が縮小するとともに、ウニ等の食害によるいわゆる「磯焼け」海域が拡大している。
かかる「磯焼け」が拡大することにより、維持されてきた生物多様性が喪失されるほか、生態系へのダメージによる漁獲高の減少等、漁業への影響が問題となっている。
【0003】
このような現状に鑑み、周辺海域の藻場再生のための核藻場の形成をするために、藻場増殖礁が使用されて、藻場の形成に利用されてきた。
従来の藻場増殖礁の基本的な構成は、主として普通ポルトランドセメントを使用したコンクリート等の基材に、海藻類の種子(遊走子、受精卵)や根を設置して、魚類等による食害対策としてネットで囲ったものが一般的である。
【0004】
しかし、普通ポルトランドセメントを利用したコンクリートでは、一定以上の強度を得るために水セメント比を大きくできないことから、コンクリート混練中に連行される気泡量が少なくなってしまい、二酸化炭素(CO)の吸収貯留に十分に適するものではない。
また、気泡量を増加させると、コンクリート硬化体の強度が低下し、亀裂や割れ等が発生するなどの課題があった。
【0005】
従来のコンクリート増殖礁基材としては、特開2011-229489号公報(特許文献1)に、石炭灰を粒状化した石炭灰粒状材を骨材として形成され炭酸ガスによる中性化処理が行われたブロックであって、前記石炭灰粒状材が、石炭火力発電所において生成される石炭灰100質量部と、高炉セメント3~7重量部を含む原料から形成されたものであることを特徴とする魚礁・藻礁ブロックが開示されている。
【0006】
また、特開2006-081501号公報(特許文献2)には、骨材、セメントおよび、炭酸水を混練して混合物を得る混練工程と、前記混合物を型に注入して、少なくとも上部側がポーラス性状をなす成型体を得る成型工程と、前記成型体を炭酸と接触させる炭酸処理工程とを含み、セメントの一部を人工ゼオライトで置換することを特徴とする着生基盤の製造方法が記載されている。
【0007】
更に、特開2015-167524号公報(特許文献3)には、海藻の着生を促す複数の着生ブロックを有する着生部と、前記着生部を囲繞するようにして収容するかご部とを備え、前記着生部は、直方体形状に形成され、好ましくはポーラスコンクリートブロックであり、前記かご部は、前記着生部と相補的形状の内包形状を有する直方体形状に形成され、更にかご部の少なくとも1の面に、海底に定着させるための複数の突起を有している、藻場造成礁が開示されている。
【0008】
しかし、従来のものは、二酸化炭素(CO)吸収貯留性能を十分に発揮できるものではなく、特に藻場増殖礁基材として二酸化炭素吸収貯留が十分に考慮されているものではない。
【0009】
また、昨今は、二酸化炭素等の温室効果ガスを低減させたカーボンニュートラルが注目され、温室効果ガス排出量の削減等の強化が必要とされており、特に藻場は光合成によりCO吸収源(ブルーカーボン)として位置づけられ、藻場の再生は気候変動対策上も重要な課題として捉えられている。
【0010】
かかる環境保護の点に鑑みて、特開2023-110190号公報(特許文献4)には、浚渫土と固化材とを混合し、500kN/m以上、9800kN/m以下の材令28日強度を発現する基盤材料が水中に投入されて設置され、次式から求められる空隙率が最大で20%である海藻の着生基盤であって、空隙率の式は、空隙率%=(1-前記基盤材料の投入量m/前記基盤材料による体積m)×100である。
【0011】
しかし、従来の藻場用増殖礁では、普通セメントを用いることが一般的であり、普通セメントを用いたコンクリート体は、気泡量が少ないことから、普通セメントの使用量が多くなってしまい、更に一定の強度を得るために、水/普通セメント比を大きくすることが難しく、また得られたコンクリートの表面積が十分ではないため、藻場増殖礁基材として十分に二酸化炭素を貯留することができるコンクリート増殖礁基材ではなかった。
現在、二酸化炭素を有効に固定でき、環境負荷低減に寄与することができ、また藻類が生育するのに有効な藻場を形成できる基材が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2011-229489号公報
【文献】特開2006-081501号公報
【文献】特開2015-167524号公報
【文献】特開2023-110190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記問題を解決し、二酸化炭素を十分に吸収貯留できるとともに、藻類の成長を促進して良好な藻場を造成することができることで、二酸化炭素を有効に固定することができ、水中においてもブルーカーボンを有効に貯留して、カーボンニュートラルの実現に寄与可能な、ポーラス(多孔質)なコンクリート藻場増殖礁基材を用いた、良好な二酸化炭素固定方法を提供することである。
また、好適には、セメント工場からの排ガスを有効に利用して二酸化炭素を固定したコンクリート藻場増殖礁基材を用いることで、二酸化炭素の排出量を低減して、有効に二酸化炭素を固定できる、二酸化炭素固定方法を提供することである。
【0014】
また本発明の他の目的は、多孔質であるコンクリート藻場増殖礁基材を利用することで、藻類の成長を有効に促進することができ、藻類がブルーカーボンを有効に貯留して、カーボンニュートラルの実現に寄与可能な、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた、藻場造成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、特定の材料及び配合を有するコンクリート組成物に中性化養生処理をすることで二酸化炭素を有効に吸収貯留した、特定の空気量を有するコンクリート体を、藻場増殖礁基材とすることで、豊かな藻場を形成することができ、ブルーカーボンを有効に貯留することができる、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法及び藻場造成方法に到ったものである。
【0016】
(1)本発明のコンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法は、早強セメントを260~310kg/mに水/セメント比(質量%)を55~67で配合しこれによりJIS A 1128による空気量(容量%)を5.0~12.0で含むコンクリート組成物を調製し該コンクリート組成物を、二酸化炭素を含む排ガスを用いて中性化養生をすることにより、二酸化炭素を20~80kg-CO/mで貯留し、28日圧縮強度が30~43N/mm、下記(3)の気泡量を有し、表面及び内部が多孔質で、得られるコンクリート体内部に形成される気泡空隙は独立空隙及び連続空隙である、多孔質コンクリート体を調製して、該多孔質コンクリート体の孔に、藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種し、該コンクリート体をコンクリート増殖礁基材として海底に設置して、該藻類が海中の二酸化炭素を吸収することを特徴とする、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法である。
【0017】
(2)好ましくは、上記(1)の二酸化炭素固定方法において、該コンクリート組成物は、更にAE剤又は発泡剤を含むことを特徴とする、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法である。
【0018】
(3)上記(1)の二酸化炭素固定方法多孔質コンクリート体の気泡量が、リニアトラバース法(ASTM C 457)を用いて算出した、300μm以上の気泡量が3.0~8.9容量%である、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法である。
【0019】
(4)また好ましくは、上記(1)又は(2)の海中の二酸化炭素固定方法において、上記中性化養生は、セメント工場からの排ガスを用いて行い、該排ガス中の二酸化炭素により、該多孔質コンクリート体が炭酸化されて、二酸化炭素が固定されることを特徴とする、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法である。
【0020】
(5)本発明のコンクリート藻場増殖礁基材を用いた藻場造成方法は、早強セメント260~310kg/m 水/セメント比(質量%)を55~67で配合しこれによりJIS A 1128による空気量(容量%)を5.0~12.0で含むコンクリート組成物を調製し該コンクリート組成物を、二酸化炭素を含む排ガスを用いて中性化養生をすることにより、二酸化炭素を20~80kg-CO/mで貯留し、28日圧縮強度が30~43N/mm、リニアトラバース法(ASTM C 457)を用いて算出した300μm以上の気泡量が3.0~8.9容量%であって、表面及び内部が多孔質で、得られるコンクリート体内部に形成される気泡空隙は独立空隙及び連続空隙である、多孔質コンクリート体を調製し、該多孔質コンクリート体の孔に藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種し、該コンクリート体をコンクリート増殖礁基材として海底に設置して、該藻類が海中の二酸化炭素を吸収して成長する藻場を造成することを特徴とする、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた藻場造成方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法は、コンクリート藻場増殖礁基材となるコンクリート体を調製する際の養生に際して、コンクリート基材中に連行される気泡量が多く、コンクリート基材が多孔質化するために、コンクリート基材内部にも二酸化炭素が入り込みやすい構造であり、炭酸化が促進されて、二酸化炭素を十分に吸収貯留することができる。また、コンクリート基材に形成された孔に藻類の根や胞子が付着しやすく、藻類の成長を有効に促進することができるとともに、水中においてもブルーカーボンを有効に貯留してカーボンニュートラルの実現に寄与することが可能となる。
好ましくは、セメント工場からの排ガスを有効に用いてコンクリート藻場増殖礁基材を調製することで、二酸化炭素の大気中への排出量の低減を図ることができ、環境保護に寄与することが可能となる。
【0022】
また本発明のコンクリート藻場増殖礁基材を用いた藻場造成方法は、上記多孔質であるコンクリート藻場増殖礁基材を利用することで、藻類の成長を有効に促進することができるとともに、ブルーカーボンを有効に貯留してカーボンニュートラルの実現に寄与することができる藻場を造成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の方法で使用されるコンクリート藻場増殖礁基材に形成された孔を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を、以下の好適な実施形態により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のコンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法は、早強セメントを260~310kg/m、水/セメント比(質量%)を55~67、JIS A 1128による空気量(容量%)を5.0~12.0で含むコンクリート組成物を、二酸化炭素を含む中性化養生をすることにより、二酸化炭素を20~80kg-CO/mで貯留し、28日圧縮強度が30~43N/mmである多孔質コンクリート体を調製して、該多孔質コンクリート体の孔に、藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種し、該コンクリート体をコンクリート増殖礁基材として海底に設置して、該藻類が海中の二酸化炭素を吸収して藻類が成長する、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法である。
【0025】
また本発明のコンクリート藻場増殖礁基材を用いた藻場造成方法は、早強セメントを260~310kg/m、水/セメント比(質量%)を55~67、JIS A 1128による空気量(容量%)を5.0~12.0で含むコンクリート組成物を用いて、二酸化炭素を含む中性化養生硬化をすることにより、二酸化炭素が20~80kg-CO/mで貯留し、28日圧縮強度が30~43N/mmである多孔質コンクリート体を調製して、該多孔質コンクリート体の孔に藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種し、該コンクリート体をコンクリート増殖礁基材として海底に設置して、該藻類が海中の二酸化炭素を吸収して成長する藻場を造成する、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた藻場造成方法である。
【0026】
本発明の方法に使用する、多孔質(ポーラス状)コンクリート藻場増殖礁基材について、以下に説明する。
多孔質(ポーラス状)コンクリート藻場増殖礁基材を調製するためのコンクリート組成物は、早強セメント、水、細骨材、粗骨材、及び、好ましくは、AE剤又は発泡剤、更には必要に応じて配合される混和剤等を混合して混練りすることで、本発明に用いるコンクリート組成物(フレッシュコンクリート材)を製造することができる。
特に、AE剤又は発泡剤を含むことで、好ましくは、AE剤に代えて発泡剤を含むことで、得られるコンクリート体が一定の強度を維持しつつ、上記した十分な気泡量およびCO吸収量を、より有効に備えることができる。
【0027】
上記コンクリート組成物に用いるセメントは、早強セメントであり、従来から使用されてきた普通ポルトランドセメント等は使用されない。
早強セメントの配合量は、単位量(kg/m:コンクリート組成物1m当たりの質量)で260~310kg/mであり、好ましくは260~290kg/mとすることが望ましい。
かかる含有量で早強セメントを使用することにより、一定の強度を維持しながら、水セメント比を大きくすることができるため、含有される気泡量を上記範囲に増加させることができ、得られるコンクリート体表面のみならず内部も多孔質化できることとなる。
【0028】
また、配合する水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。
水/セメント比(質量%)は55~67質量%であり、好ましくは60~65質量%とすることが望ましい。
上記したように、早強セメントを使用することで、一定の強度を維持しながら水セメント比を大きくすることができ、気泡量が増加し、炭酸化も促進され、CO吸着量が大きくすることが可能となる。
【0029】
細骨材は、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される山砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ等のスラグ由来の砂、再生骨材、人工軽量骨材、回収骨材等を例示することができ、これらの1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
その配合量は、得られるコンクリート体が、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲での配合量であれば特に限定されず、例えば、単位量(kg/m:コンクリート組成物1m当たりの質量)で、約650kg/m~1000kg/mとすることができる。
【0031】
粗骨材は、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、再生骨材等を例示することができ、これらの1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
その配合量は、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲での配合量であれば特に限定されず、例えば、単位量(kg/m:コンクリート組成物1m当たりの質量)で、約800kg/m~1250kg/mとすることができる。
【0032】
またAE剤又は発泡剤は、特に限定されるものではなく、公知の任意のAE剤や発泡剤を利用することができる。例えば、AE剤としては、陰イオン系、陽イオン系、非イオン系および両性系の界面活性剤を例示することができ、樹脂系、アルキルベンゼンスルホン酸系、アルコールエステル系などの陰イオン系界面活性剤を好適に使用することができる。また、発泡剤としては、例えば、アルミニウム粉末等を使用することができる。
【0033】
AE剤の配合量は、上記セメント(C)の含有量に対して、0.001~0.01質量%(C×%)が好ましい。また発泡剤の配合量としては、0.3~0.6kg/m(kg/m:コンクリート組成物1m当たりの質量)、好ましくは0.4~0.5kg/mとすることが望ましい。
AE剤又は発泡剤をコンクリート組成物に含有させることで、空気量(容量%)を5.0~12.0で含むコンクリート組成物を有効に得ることができ、また、該コンクリート組成物を用いて製造したコンクリート増殖礁基材が、リニアトラバース法(ASTM C 457)を用いて算出した、300μm以上の気泡量が3.0~8.9容量%とすることが可能となる。
【0034】
更に必要に応じて、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で、上記以外の混和剤を配合することが可能である。混和剤としては、例えば、AE減水剤、起泡剤、防水剤等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。また、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で、人工炭酸カルシウム鉄鋼スラグ、高炉スラグ、フライアッシュ等の混和材を混合することも可能である。
【0035】
必要に応じて配合される人工炭酸カルシウムは、好ましくは、排ガス中に含まれる二酸化炭素を用いて合成される人工炭酸カルシウムを用いることができる。これにより、石灰岩の資源保護を図れるとともに、廃棄物等の有効利用を図ることが可能である。
例えば、セメント工場、生コンクリート工場、コンクリート製品工場などから排出されるスラッジ水に、工業品としての二酸化炭素、空気、工場からの二酸化炭素を含む排ガス、例えばセメントクリンカの焼成時に生成する二酸化炭素等を含む排ガスを吹き込んで、スラッジ水中の水和生成物と反応させ、炭酸カルシウムを生成させて、スラッジ水を回収することで、人工炭酸カルシウムを調製し、得られた人工炭酸カルシウムを用いることができるが、かかる調製方法に限定されず、任意の公知の方法により調製される人工炭酸カルシウムを用いることができる。
【0036】
上記早強セメント、細骨材、粗骨材、AE剤又は発泡剤、及び、水を上記特定の配合割合で、また必要に応じて配合される上記混和剤や混和材を混合して混練りし、JIS A 1128により測定した空気量(容量%)を5.0~12.0容量%、好ましくは5~11容量%で含むコンクリート組成物を調製する。その調製手順は、予め早強セメント、細骨材、粗骨材等を調製してこれに水を混合しても、全ての原材料を一度に混合しても、均一に混練できる方法であれば特に限定されない。
また、混練機の種類などに限定はなく、慣用の混練機を使用することが可能であるが、十分に攪拌できて空気量が5.0~12.0容量%となるように混練できる混練機を用いる。
【0037】
空気量を上記範囲、特に5.0容量%以上としたのは凍害性低下を抑制するためであり(コンクリート標準示方書規定)、また空気量が一定量を超えると、硬化したコンクリート体の28日圧縮強度が急激に低下して耐久性が損なわれるため、20N/mm以上に維持することが可能なように、空気量を12容量%以下とする。
【0038】
次いで、得られたコンクリート組成物を、例えば蒸気養生、封緘養生、中性化養生、オートクレーブ養生等の公知の養生方法を用いて硬化することができ、これらの養生方法を組合わせて養生硬化して成形体を得ることが可能であるが、少なくとも二酸化炭素を含むガスを用いた中性化養生による養生を実施して、該中性化養生により炭酸化を促進させながら硬化させて硬化コンクリート体を製造する。
得られるコンクリート体は、海流等によって水中で移動しない成形体であれば、形状は特に限定されず、例えば直方体や四角柱体等の形状として養生硬化させ、硬化コンクリート体を製造することができる。
【0039】
中性化養生を促進する二酸化炭素を含むガスとしては、得られるコンクリート体の炭酸化が促進できれば特に限定されず、二酸化炭素を例えば約10~約30容量%含むように調整したガスを用いることができる。好ましくは、例えば排ガス、セメント設備等から排出される排ガスを有効に使用することができる。かかる排ガスには、一般的に二酸化炭素が10~30容量%含まれ、炭酸化を促進する中性化養生の際に、該排ガスを用いることで、コンクリート体の炭酸化を有効に実施することが可能である。
【0040】
具体的には、コンクリートの炭酸化を促進するために、オートクレーブ養生(高温高圧蒸気養生)(JIS A 0203)を利用し、その際にセメント工場から排出された二酸化炭素を含む排ガスを、180~190℃、10~11気圧内で投入して、炭酸化の促進を図る手法を、一例として例示することができる。
【0041】
このように、本発明においては、二酸化炭素を含む排ガスを好適に使用するため、セメント工場のみならず、発電所、焼却炉、製鉄所、工場設備等の各種設備等において、操業により発生する二酸化炭素を含む排ガスの大気の放出量を低減し、二酸化炭素の固定化が図られ、カーボンニュートラルの実現に寄与することが可能となる。
【0042】
コンクリート体を製造するための上記コンクリート組成物は、空気量を上記割合で含むため、養生硬化して得られるコンクリート体は多孔質(ポーラス状)となり、コンクリート体の表面だけではなく、その内部も多孔質(ポーラス状)となり、該コンクリート体中の気泡空隙は、独立空隙だけではなく、空隙中に更に孔が存在する連続空隙も形成されることとなる。これにより、コンクリート体の内部まで二酸化炭素が導入されることができ、炭酸化が促進される。
なお、形成される気泡(空隙)の状態の一例を、図1に模式的に示す。
【0043】
好ましくは、コンクリート体に含まれる気泡量は、例えば、気泡の面積割合を計算により求めるリニアトラバース法(ASTM C 457)を用いて、得られたデータからの300μm以上の気泡量が3.0~8.9容量%となるものである。
気泡量(≧300μm)を3.0容量%以上とすることにより、コンクリート基材のCO吸収量が、下記するように、20kg-CO/m以上とすることができ、優れたCO吸収能力を示すことが可能となる。
【0044】
このように極めて多孔質のコンクリート体であるため、中性化養生の際の二酸化炭素を含むガスが、コンクリート体の表面の孔のみならず、内部に形成されている空隙(孔)まで入り込み、コンクリート体表面だけではなく、コンクリート体内部においても炭酸化を促進することができ、二酸化炭素の固定化を有効に実現する。
【0045】
該コンクリート体の二酸化炭素の吸収量は、下記試験例に記載の方法で測定して、20~80kg-CO/m(コンクリート体1mあたりの二酸化炭素吸収量(kg))となり、多量の二酸化炭素を固定することができる。
【0046】
該コンクリート体は、多孔質(ポーラス状)ではあるが、材齢28日後の圧縮強度(JIS A 1108)は30~43N/mmを有し、強度発現性に優れており、コンクリート体を藻場増殖礁として設置した際に、海流等によって破壊されたり、亀裂や割れ等が発生せず、また水中で移動するものではなく、藻場増殖礁としての利用に優れるものである。
【0047】
かかるコンクリート体を、コンクリート藻場増殖礁基材として利用して、藻場、特に核藻場を造成するのに用いる。
かかるコンクリート藻場増殖礁基材は多孔質であるため、該孔に藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種し、該コンクリート増殖礁基材として使用して、海底に設置することができる。
かかるコンクリート藻場増殖礁基材は、海底に設置した際に、海流等により移動することがない程度の重量と強度とを備えるものである。
【0048】
コンクリート藻場増殖礁基材を、藻類を増殖させるための藻場として利用する際には、藻類の根を紐等で該コンクリート増殖礁基材に固定したり、藻類の胞子を備える種糸を巻き付けて固定する等、任意の公知の方法を採用して、藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種して固定することが望ましい。
必要に応じて、該コンクリート増殖礁基材に、別途種子発芽プレート、例えば、特開2016-19469号公報に記載されている種子発芽プレート等を設置して、藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種して、藻場増殖礁とすることも可能である。
【0049】
藻類としては、特に限定されず、任意の藻類を対象とすることができ、例えば海藻である、アントクメ類の海藻又はホンダワラ類の海藻、アマモ類の海藻、ガマモ類の海藻、コンブ類の海藻を例示することができる。
【0050】
該コンクリート藻場増殖礁基材は、多数の凹凸状の孔を有しているため、該コンクリート藻場増殖礁基材から成長した藻類から種子・胞子が放出されて、該コンクリート藻場増殖礁基材の孔に、更に該種子・胞子が着生して、藻類の根の定着が容易となり、藻類の育成を図ることができ、核藻場を形成して藻類を有効に生育させることができる。
【0051】
核藻場を形成した藻類による光合成により、海水中のCOが藻場の海藻葉緑体内部に取り込まれ、吸収貯留される。これによる海水中のCO量の減少に伴い、大気中のCOが海水に吸収され、水中の藻類等の海洋植物が大気から海水に溶けた二酸化炭素を吸収して、光合成反応によって海藻中に有機炭素化合物として蓄積する。この有機炭素化合物は浅海底の泥の中に貯留され、無酸素状態のためバクテリアによる分解を受けにくく、長期間にわたってCOが海底に貯留されることができることとなり、二酸化炭素の固定化を図ることができる。
【0052】
好ましくは、コンクリート藻場増殖礁基材で生育する藻類を、海洋生物の食害から守るため、該藻場増殖礁基材の周囲に、または、必要に応じて別途種子取付プレート体が設置された場合には、前記種子取付プレート体を含むコンクリート藻場増殖礁基材の周囲に、海流を妨げない囲い、例えば網状の囲いを設置することも可能である。
【0053】
上記したように、藻場形成のためのコンクリート藻場増殖礁基材は、セメント工場等からの排ガス中や大気中のCOを吸収し、また藻類による海水中のCO吸収等しながら、カーボンニュートラルに寄与するとともに核藻場を形成し、漁業の育成、生産性向上にも寄与することが可能となる。
【実施例
【0054】
本発明を下記実施例及び比較例により説明するが、これらに限定されるものではない。
使用材料
本発明の二酸化炭素固定方法を用いて、藻場造成に有効なコンクリート増殖礁基材を調製し、試験するにあたり、以下の表1に示す材料を使用した。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例1~4・比較例1~2)
上記表1の各材料を用い、下記表2に示す配合割合で各材料を20℃の恒温室内で強制練りパン型ミキサを用いて均一に混練してコンクリート組成物(フレッシュコンクリート材料)を調製した。
具体的には、上記表1のセメント、細骨材、粗骨材を配合して、約30秒の間、空練りをし、次いでAE剤及び発泡剤と、水とを配合して、更に90秒間混練りして、各コンクリート組成物(フレッシュコンクリート材料)を調製した。
【0057】
上記のようにして調製した各コンクリート組成物(フレッシュコンクリート材料)を、それぞれφ10×20cmの円柱状の型枠に流し込み、材齢1日で脱型し、次いで、材齢7日まで常温で封緘養生した後、空気を、二酸化炭素含有量が10容量%となるように調整した気体(排ガス中に含まれる二酸化炭素量に相当)を用いて、温度20℃、湿度60%の中性化養生槽にて更に7日間養生して、φ10×20cmの円柱状の各コンクリート供試体を得た。
【0058】
また、別途、上記のようにして調製した各コンクリート組成物(フレッシュコンクリート材料)を、それぞれ30cm×30cm×30cmの直方体の型枠に流し込み、材齢1日で脱型し、次いで、材齢7日まで常温で封緘養生した後、空気を、二酸化炭素含有量が10容量%となるように調整した気体(排ガス中に含まれる二酸化炭素量に相当)を用いて、温度20℃、湿度60%の中性化養生槽にて更に7日間養生して、30cm×30cm×30cmの直方体状の各コンクリート供試体を得た。
【0059】
試験例
(試験例1)コンクリート組成物(フレッシュコンクリート材料)中の空気量
コンクリート組成物(フレッシュコンクリート材料)に含まれる空気量を、JIS A 1128により測定し、その結果を下記表2に示す。
【0060】
(試験例2)コンクリート供試体の気泡量
上記各30cm×30cm×30cmの直方体状の硬化コンクリート供試体をスライスして、10cm×10cm×10cmの試験体を切り出し、各試験体中の気泡の面積割合を計算により求めるリニアトラバース法(ASTM C 457)を用いて、得られたデータより300μm以上の気泡量を算出した。具体的には、切断した各コンクリート供試体の切断面を研磨し、該研磨面を光学顕微鏡で走査して、所定の走査全長に対する気泡を横断した線分の長さより、気泡を単一寸法系と仮定して、気泡の数と長さから、コンクリートの気泡間隔係数を推定し、平均300μm以上の気泡量を算出した。
その結果を下記表2に示す。
【0061】
(試験例3)圧縮強度
上記各φ10×20cmの円柱状のコンクリート供試体を調製するにあたり、φ10×20cmの円柱状の型枠に流し込み、材齢1日で脱型し、次いで、材齢7日まで常温で封緘養生した後、上記中性化養生槽内で7日間養生を実施し、更に常温で14日封緘養生を実施し(合計28日間の養生)て得られた各コンクリート供試体の28日圧縮強度を、JIS A 1108により測定し、その結果を下記表2に示す。
【0062】
(試験例4)二酸化炭素(CO)吸収量
上記各φ10×20cmの円柱状の各コンクリート供試体を調製する養生の際、上記中性化養生槽への投入時及び該中性化養生7日後(材齢14日後)状態の炭酸カルシウム(CaCO)量を、TG-DTA装置を用いてTG-DTA反応性解析することにより定量し、下記式を用いて、二酸化炭素の吸収量の差を算出して、中性化養生7日間あたりの二酸化炭素の吸収量を求めた。
吸収されたCO量(kg-CO/m)=(中性化養生7日後に定量されたCaCO(kg/m)×CO分子量/CaCO分子量)-((中性化養生開始の際に定量されたCaCO(kg/m)×CO分子量/CaCO分子量)
【0063】
(試験例5)藻場増殖礁基材
上記各30cm×30cm×30cmの直方体状のコンクリート供試体に、海藻の根を、該各コンクリート供試体の上面に、同様の量(面積)で巻き付けて固定し、各コンクリート供試体を藻場増殖礁基材として海底に設置して、20日間経過後の、各増殖礁基材の海藻の育成状況を観察した。
【0064】
各増殖礁基材の育成状況は、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(令和5年3月)によるJブルークレジット(登録商標)認証申請の手引き(Ver.2.2.1)のP26に記載された「被度の把握方法」により評価した。
具体的には、海底に設置して20日経過後の各増殖礁基材の上面に占める海藻の面積割合を、景観被度として5段階で、以下の評価基準で評価した。
なお、根を巻き付けた状態の各増殖礁基材を海底に設置する際の状況は、下記評価基準で「1」の状態であった。
被度階級
5(濃生)・・・被度75%以上
4(密生)・・・被度50%以上75%未満
3(疎生)・・・被度25%以上50%未満
2(点生)・・・被度5%以上25%未満
1(極点生)・・被度5%未満
その結果を下記表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
上記表2の結果より、本発明によるコンクリート増殖礁基材は、早強セメント(HC)を使用していることにより、一定強度を保持する際にも、水セメント比が大きくなり、それと同時にCOの吸収量が大きくなっているとともに、良好な強度を有している。すなわち、本発明によるコンクリート増殖礁基材は、COの吸収貯留機能が高まっている。
また、実施例2~4は実施例1に比べて空気量、特に300μm以上の気泡量が増しており、該空気量が増加するにつれて、COの吸収量も増加することがわかる。
【0067】
比較例1は、早強セメント(HC)を使用し、空気量も高めているが、空気量が本発明の範囲外となっており過多であるため、強度低下が生じており、海底での増殖礁基材としては、実用に耐え得ることができない。
比較例2は従来の藻場増殖礁に使用される一般的なコンクリートである普通ポルトランドセメント(NC)を使用しているため、一定以上の強度を保持するためには、本発明に使用するコンクリート増殖礁基材と比較して、水セメント比が小さくなってしまい、炭酸化が進行し辛くなるので、COの吸収量が小さくなってしまうことがわかる。
【0068】
このように、早強セメントを使用し、空気量を5.0~12.0容量%等とするコンクリート組成物を用いて、300μm以上の気泡量が3.0~8.9容量%等のコンクリート藻場増殖礁体とすることで、COを有効に吸収・貯留することができる、コンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法及び藻場造成方法となる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のコンクリート藻場増殖礁基材を用いた二酸化炭素固定方法及び藻場形造成方法は、コンクリート増殖礁基材を調製するにあたり、二酸化炭素を吸収して貯留できるとともに、藻類が有効に育成できる藻場の造成を可能とし、ブルーカーボンを有効に貯留してカーボンニュートラルの実現に寄与をすることに利用することができ、コンクリート藻場増殖礁基材を、更に浮体式、着床式洋上風力発電の風車列内側又は外側に設置することにより、沿岸部だけではなく沖合での魚礁、藻場増殖礁の形成に用いることが可能となる。

【要約】      (修正有)
【課題】二酸化炭素を吸収貯留して、藻類の成長を有効に促進することができるとともに、水中においてもブルーカーボンを有効に貯留してカーボンニュートラルの実現に寄与可能な、多孔質のコンクリート藻場増殖礁基材を製造することによる、二酸化炭素固定方法及び前記コンクリート藻場増殖礁基材を用いた藻場造成方法を提供する。
【解決手段】早強セメントを260~310kg/m、水/セメント比を55~67、JIS A 1128により空気量を5.0~12.0で含むコンクリート組成物を、二酸化炭素を含む中性化養生をすることにより、二酸化炭素が20~80kg-CO/mで貯留し、28日圧縮強度が30~43N/mmである多孔質コンクリート体を調製し、該多孔質コンクリート体の孔に、藻類の根を植付け及び/又は胞子を撒種し、該コンクリート体をコンクリート増殖礁基材として海底に設置して、該藻類が海中の二酸化炭素を吸収する。
【選択図】図1
図1