(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】微生物保持担体、微生物保持担体の製造方法、汚水処理方法および汚水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/10 20230101AFI20240611BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20240611BHJP
【FI】
C02F3/10 Z
C02F3/06
(21)【出願番号】P 2020200251
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 隆
(72)【発明者】
【氏名】荻野 暁史
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭広
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-246276(JP,A)
【文献】実開昭60-063496(JP,U)
【文献】特開2015-229131(JP,A)
【文献】特開2011-147886(JP,A)
【文献】特開平01-135593(JP,A)
【文献】特表2009-521329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00
C02F 3/02- 3/10
C02F 3/28- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線と、前記幹線にそれぞれ連続する複数のループと、前記幹線および前記ループにそれぞれ連続し、前記幹線に対する前記ループの位置をそれぞれ固定する複数の結び目と、を含む炭素繊維を含む糸と、
前記幹線および前記複数の結び目を覆う被覆シートと、
を有し、
前記複数のループの少なくとも一部は、前記被覆シートにより覆われずに外部に露出している、
微生物保持担体。
【請求項2】
前記被覆シートおよび前記複数のループは、縫い合わされている、請求項1に記載の微生物保持担体。
【請求項3】
前記複数のループは、前記幹線の延在方向に垂直な方向において、前記幹線に対して同一方向に配置されている、請求項1または請求項2に記載の微生物保持担体。
【請求項4】
前記被覆シートは、樹脂製の布である、請求項1または請求項2に記載の微生物保持担体。
【請求項5】
炭素繊維を含む糸を結んで、幹線と、前記幹線にそれぞれ連続する複数のループと、前記幹線および前記ループにそれぞれ連続し、前記幹線に対する前記ループの位置をそれぞれ固定する複数の結び目とを形成する工程と、
前記複数のループの少なくとも一部が覆われないように、前記幹線および前記複数の結び目を被覆シートで覆う工程と、
前記被覆シートと前記被覆シートで覆われた前記糸とを固定する工程と、
を有する、微生物保持担体の製造方法。
【請求項6】
前記固定する工程は、前記被覆シートと前記複数のループとを縫い合わせて固定する、請求項5に記載の微生物保持担体の製造方法。
【請求項7】
前記形成する工程において、前記複数のループは、前記幹線の延在方向に垂直な方向において、前記幹線に対して同一方向に配置される、
請求項5または6に記載の微生物保持担体の製造方法。
【請求項8】
前記被覆シートは、樹脂製の布である、請求項5~7のいずれか一項に記載の微生物保持担体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の微生物保持担体が汚水に接触するように配置された汚水処理槽内において、汚水に酸素を供給する工程を有する、汚水処理方法。
【請求項10】
汚水を収容する汚水処理槽と、
前記汚水処理槽内の前記汚水に酸素を供給する酸素供給装置と、
前記汚水処理槽内の前記汚水に接触するように配置された、請求項1~4のいずれか一項に記載の微生物保持担体と、
を有する、汚水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物保持担体、微生物保持担体の製造方法、汚水処理方法および汚水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水処理は、畜産農家にとって畜舎から出る廃水を処理するために不可欠な技術である。現在、活性汚泥法などの微生物を用いる汚水処理方法が、広く普及している。
【0003】
微生物を用いる汚水処理方法として、炭素繊維を含む微生物保持担体を用いた汚水処理方法が知られている。この汚水処理方法では、炭素繊維に大量の微生物を付着させることができ、曝気処理などを行うことで、炭素繊維に付着した微生物により汚水中の有機物が分解される。汚水処理に用いられる微生物保持担体としては、汚水処理性能や耐久性などの目的に応じて様々なものが存在する。
【0004】
例えば、特許文献1には、汚水を固定床型炭素繊維存在下で曝気処理に供する工程を含む、汚水処理方法が開示されている。特許文献1によれば、上記汚水処理方法によって、汚水からの一酸化二窒素の放出を抑制して、汚水処理を行うことができたとされている。
【0005】
また、特許文献2には、軸となる素材に、水中で正に帯電しうる突出物が存在する微生物担体が開示されている。また、上記突出物は、微生物を付着させるものであり、微生物担体の軸に対して挟み込みまたは接着などにより固定されている。また、上記突出物の素材として、炭素繊維などが例示されている。特許文献2によれば、上記微生物保持担体により、突出物上に微生物を捕捉しやすく、微生物の増殖環境が好適に維持されるなどの効果が生じるとされている。
【0006】
特許文献3には、処理水の流れる方向に平行に配置された、棒状の支持体と、炭素繊維からなる繊維部材と、紐状又は帯状の可撓性部材と、を有する水処理部材が開示されている。また、上記水処理部材の繊維部材(繊維状担体)は、微生物を付着させるものであり、軸となる可撓性部材(基幹材)に、接着または溶着などによって固定されているか、繊維部材と可撓性部材とが一体的に形成されている、とされている。特許文献3によれば、上記水処理部材は、汚泥を効率的に補修でき、濾床閉塞しにくく、かつ槽内水排出時の荷重負荷に耐えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-205136号公報
【文献】特開平9-252770号公報
【文献】特開2011-147886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
汚水処理において、汚水処理槽内の汚水に曝気処理を行うとき、特に空気が微生物保持担体に直接接触するときは、汚水処理槽内の汚水の流れが非常に速く、微生物保持担体に負担がかかる。そのため、微生物を付着させる担体部分を接着などで固定している特許文献2および特許文献3に記載の微生物保持担体を曝気処理の下で用いると、微生物を保持する担体部分が脱落または破損してしまうおそれがある。
【0009】
また、特許文献3に記載の水処理部材を、繊維状担体と基幹材とを一体的に形成すると、手間がかかり、製造コストが高くなる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、微生物を保持する担体部分が脱落し難く、かつ低コストで製造できる微生物保持担体およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記微生物保持担体を用いる汚水処理方法および汚水処理装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一実施の形態に関する微生物保持担体は、幹線と、前記幹線にそれぞれ連続する複数のループと、前記幹線および前記ループにそれぞれ連続し、前記幹線に対する前記ループの位置をそれぞれ固定する複数の結び目と、を含む炭素繊維を含む糸と、前記幹線および前記複数の結び目を覆う被覆シートと、を有し、前記複数のループの少なくとも一部は、前記被覆シートにより覆われずに外部に露出している。
【0012】
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に関する微生物保持担体の製造方法は、炭素繊維を含む糸を結んで、幹線と、前記幹線にそれぞれ連続する複数のループと、前記幹線および前記ループにそれぞれ連続し、前記幹線に対する前記ループの位置をそれぞれ固定する複数の結び目とを形成する工程と、前記複数のループの少なくとも一部が覆われないように、前記幹線および前記複数の結び目を被覆シートで覆う工程と、前記被覆シートと前記被覆シートで覆われた前記糸とを固定する工程と、を有する。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に関する汚水処理方法は、上記微生物保持担体が汚水に接触するように配置された汚水処理槽内において、汚水に酸素を供給する工程を有する。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に関する汚水処理装置は、汚水を収容する汚水処理槽と、前記汚水処理槽内の前記汚水に酸素を供給する酸素供給装置と、前記汚水処理槽内の前記汚水に接触するように配置された、上記微生物保持担体と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、微生物を保持する担体部分が脱落し難く、かつ低コストで製造できる微生物保持担体およびその製造方法、ならびに上記微生物保持担体を用いる汚水処理方法および汚水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る微生物保持担体の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る微生物保持担体の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る微生物保持担体の製造方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る微生物保持担体の製造方法を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る汚水処理装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0018】
1.微生物保持担体およびその製造方法
(微生物保持担体の構成)
図1および
図2は、本発明の一実施の形態に係る微生物保持担体100の構成を示す模式図である。
図2では、微生物保持担体100の見えない部分の構成を破線で示している。
【0019】
図1および
図2に示されるように、微生物保持担体100は、炭素繊維を含む糸110と、被覆シート120と、を有する。
【0020】
糸110は、炭素繊維を含み、微生物を付着させる担体として機能する。糸110は、幹線111、複数のループ112、および複数の結び目113を有する。幹線111、ループ112、および結び目113は、同一の一本の糸110により構成されている。すなわち、複数のループ112は幹線111にそれぞれ連続しており、複数の結び目113は、幹線111および複数のループ112にそれぞれ連続している。たとえば、一本の糸110においてループ112を形成し、ループ112の根元を結んで結び目113を作ってループ112の位置を固定することを繰り返すことで、幹線111、複数のループ112、および複数の結び目113が形成される。
【0021】
糸110の種類は、炭素繊維を含み、微生物を付着させることができれば特に限定されない。糸110は、炭素繊維以外の繊維を含んでいてもよいし、炭素繊維のみを含んでいてもよい。一本の糸110に含まれる炭素繊維(フィラメント)の数も特に限定されない。また、糸110は表面処理がなされていてもよい。
【0022】
糸110の延在方向に直交する断面の形状は、特に限定されず、例えば、略円形や略矩形である。糸110の太さは、特に限定されないが、3mm以上7mm以下であることが好ましい。ここで、「糸110の太さ」とは、糸110の上記断面の形状が、例えば略円形であるときは、糸110の最大外径のことを指し、上記断面の形状が、例えば略矩形であるときは、糸110の延在方向に直交する方向の幅(長辺の長さ)のことを指す。糸110の太さが3mm以上であると、汚水の流れに耐え得る、糸110の強度を確保しやすい。糸110の太さが7mm以下であると、糸の比表面積が大きくなり、微生物を十分に付着させやすい。また、複数の微生物保持担体100を用いて汚水処理を行うときに、隣接する微生物保持担体100との間隔を空けやすくなる。糸110の市販品としては、例えば、T700SC-24000(東レ株式会社製)などが挙げられる。
【0023】
幹線111は、糸110のループ112および結び目113以外の部分であり、ループ112および結び目113に対する軸として機能する。幹線111の長さは、汚水処理に用いる汚水処理槽の大きさや使用方法などに応じて、適宜調整される。
【0024】
複数のループ112は、それぞれ幹線111の所定の位置から突出しており、汚水処理を行う際に微生物を担持するリング状の部分である。この後説明するように、複数のループ112の根元(幹線111との接続部分)には、それぞれ結び目113がある。ループ112の周の長さは、微生物を付着させることができれば特に限定されないが、60cm以上90cm以下であることが好ましく、60cm以上70cm以下であることがより好ましい。ループ112の周の長さが60cm以上であると、ループ112に微生物を十分に付着させやすい。90cm以下であると、複数の微生物保持担体100を用いて汚水処理を行うときに、隣接する微生物保持担体100と絡まりにくくしやすい。なお、複数のループ112の周の長さは、それぞれ、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0025】
幹線111の延在方向に垂直な方向(幹線111の径方向)において、幹線111に対して複数のループ112が配置される方向は、特に限定されない。たとえば、複数のループ112は、幹線111に対して一方向のみに配置されていてよいし、互いに反対向きの二方向に配置されていてもよい。本実施の形態では、複数のループ112は、幹線111に対して同一方向に配置されている。複数のループ112を上記のように配置することで、複数の微生物保持担体100を用いて汚水処理を行う際、隣接する微生物保持担体100と絡まりにくくなる。また、複数のループ112および複数の結び目113を、1枚の被覆シート120(後述)で容易に覆うこともできる。
【0026】
複数の結び目113は、幹線111と複数のループ112との接続部にそれぞれ配置されており、幹線111に対する複数のループ112の位置をそれぞれ固定する。結び目113の形成方法(糸110の結び方)は、上記の機能が発揮されれば特に限定されない。結び目113の形状および大きさも、上記の機能が発揮されれば特に限定されない。
【0027】
互いに隣接する2つの結び目113の中心間距離は、特に限定されないが、1cm以上2cm以下であることが好ましい。2つの結び目の中心間距離が1cm以上であると、汚水処理槽内で、複数のループ112が絡まりにくくなる。2つの結び目の中心間距離が2cm以下であると、微生物を付着させた複数のループ112の密度が高まるため、汚水処理の効率を向上させやすい。なお、複数の結び目113において、互いに隣接する2つの結び目113の中心間距離は、それぞれ、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0028】
被覆シート120は、幹線111と複数の結び目113を覆うシートである。被覆シート120の種類は、上記の機能が発揮され、複数の糸110を固定することができれば、特に限定されない。被覆シート120の例には、布、樹脂フィルム、革などが含まれる。耐久性とコスト低減の観点からは、被覆シート120は、樹脂製の布であることが好ましい。樹脂製の布の例には、帝人フロンティア株式会社のハリケーン(登録商標)などのポリエステル製の布などが含まれる。
【0029】
本実施の形態では、ループ112の少なくとも一部は、被覆シート120に覆われずに外部に露出しており、微生物が付着する担体として機能する。これにより、ループ112に付着した微生物による、汚水中の有機物の分解を効率的に行うことができる。ループ112の被覆シート120に覆われる部分の割合は、小さいほど好ましく、例えば50%以下であり、25%以下であり、10%以下である。
【0030】
被覆シート120は、幹線111の、複数の結び目113が形成されている部分を含む一部のみを覆っていてもよいし、全部を覆っていてもよい。複数の微生物保持担体100を連結させて使用する場合は、被覆シート120は、結び目113が形成されている部分を含む一部のみを覆うことが好ましい。このようにすることで、幹線111の、被覆シート120に覆われていない部分を、他の微生物保持担体100の幹線111と結ぶことができる。
【0031】
被覆シート120の形状および大きさは、幹線111と複数の結び目113を覆うことができれば特に限定されない。被覆シート120の形状は、例えば、略矩形や略円形である。本実施の形態では、被覆シート120の形状は矩形である。また、被覆シート120の厚さは、特に限定されず、被覆シート120の種類や必要な強度などに応じて適宜設定すればよい。
【0032】
なお、
図1および
図2に示されるように、本実施の形態では、糸110は、一枚の被覆シート120で覆われているが、複数枚の被覆シート120で覆われていてもよい。たとえば、糸110は、2枚の被覆シート120により挟み込まれていてもよい。
【0033】
被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110とは、互いに固定されている。ここで「固定」とは、被覆シート120に対して糸110が全く移動できないように固定されることのみを意味するのではなく、被覆シート120に対して糸110がある程度移動できるものの被覆シート120から糸110が抜け落ちないように固定されていることも含む。被覆シート120と糸110とを固定する方法は、特に限定されない。たとえば、被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110とを縫い合わすことで固定してもよいし、被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110とをステープラーで綴じて固定してもよいし、被覆シート120と糸110とを接着剤などで固定してもよいし、これらを組み合わせてもよい。
図1および
図2に示されるように、本実施の形態では、被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110(ループ112の一部)とが、縫糸130で縫い合わされて固定されている。これにより、汚水処理の際、ループ112の位置が汚水の流動により大きくずれることを抑制できる。また、汚水の流れが速い条件下でも、ループ112が幹線111から脱落することを抑制することができるため、微生物保持担体100を用いた汚水処理を安定して行うことができる。縫糸130の種類は、特に限定されず、公知の糸から適宜選択される。
【0034】
本実施の形態に係る微生物保持担体100の製造方法は、特に限定されない。たとえば、次に説明する方法により微生物保持担体100を製造することができる。
【0035】
(微生物保持担体の製造方法)
図3は、微生物保持担体100の製造方法のフローチャートである。
図4A~Cは、微生物保持担体100の製造方法を示す模式図である。
【0036】
図3および
図4A~Cに示すように、本実施の形態に係る微生物保持担体100の製造方法は、(1)炭素繊維を含む糸110を結んで、幹線111と、複数のループ112と、結び目113とを形成する工程(工程S10、
図4A)(2)幹線111および複数の結び目113を被覆シート120で覆う工程(工程S20、
図4B)、(3)被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110とを固定する工程(工程S30、
図4C)、を有する。以下、各工程について説明する。
【0037】
(1)幹線、ループおよび結び目を形成する工程(工程S10)
まず、
図4Aに示されるように、一本の糸110を結んで、幹線111と、複数のループ112と、結び目113とを形成する。
【0038】
幹線111と、複数のループ112と、結び目113とを形成する方法は、特に限定されない。例えば、糸110で輪を形成し、輪の中に糸110を通すことで、幹線111とループ112が形成される。さらに、上記輪の中に通した糸110と幹線111とを固結びすることで、ループ112の根元(幹線111とループ112との接続部)に結び目113が形成される。これを繰り返すことで、ループ112および結び目113が複数形成される。これにより、一本の糸110のみを用いて、かつ、糸110を切ることなく、幹線111、ループ112、および結び目113をそれぞれ形成することができる。
【0039】
(2)幹線および複数の結び目を被覆シートで覆う工程(工程S20)
次に、
図4Bに示されるように、幹線111および複数の結び目113を被覆シート120で覆う。
【0040】
被覆シート120で、幹線111および複数の結び目113を覆う方法は、特に限定されない。本実施の形態では、一枚の被覆シート120を折りたたみつつ幹線111および複数の結び目113を挟むことで、一枚の被覆シート120で幹線111および複数の結び目113を覆っている。この場合は、複数のループ112は、幹線111の延在方向に垂直な方向において、幹線111に対して同一方向に配置される。前述のとおり、二枚の被覆シート120で幹線111および複数の結び目113を挟んでもよい。この場合は、複数のループ112は、幹線111の延在方向に垂直な方向において、幹線111に対して同一方向に配置されてもよいし、互いに逆向きの二方向に配置されてもよい。
【0041】
(3)被覆シートと糸とを固定する工程(工程S30)
最後に、
図4Cに示されるように、被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110とを固定する。
【0042】
前述のとおり、被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110とを固定する方法は、特に限定されない。本実施の形態では、被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110とを、縫糸130で縫い合わせることで固定している。被覆シート120と被覆シート120で覆われた糸110とを縫い合わせる場所は、糸110が脱落しなければ特に限定されない。
【0043】
2.汚水処理方法
次に、本実施の形態に係る微生物保持担体100を用いた汚水処理方法について説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0044】
本発明の一実施の形態に係る汚水処理方法は、微生物保持担体100が汚水に接触するように配置された汚水処理槽内において、汚水に酸素の供給する工程を有する。
【0045】
微生物保持担体100は、汚水処理槽内において、汚水に接触するように配置されていればよく、例えば、汚水処理槽の上方から吊り下げられて設置されている。汚水処理の効率を向上させる観点から、微生物保持担体100は、汚水に浸漬されて配置されていることが好ましい。微生物保持担体100が汚水に接触するように配置されることで、汚水中の微生物をループ112に付着させることができる。
【0046】
また、微生物保持担体100は、単体で用いてもよく、複数の微生物保持担体100を連結させて用いてもよい。汚水処理槽内の汚水の容量が大きいときは、汚水処理の効率を向上させる観点から、微生物保持担体100を複数用いることが好ましい。
【0047】
汚水に酸素を供給する方法は、特に限定されず、例えば、曝気装置を用いて曝気する方法、酸素ボンベから供給する方法などが含まれる。汚水に酸素が供給されることで、ループ112に付着した微生物が、汚水中の有機物などを分解することができる。微生物保持担体100は、汚水に酸素を供給する際、供給される酸素が微生物保持担体100に直接接触してもよい。
【0048】
3.汚水処理装置
最後に、上記汚水処理方法を実施する際に用いることができる汚水処理装置について説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0049】
図5は、本実施の形態に係る汚水処理装置200の構成を示す模式図である。
図5に示すように、汚水処理装置200は、汚水処理槽210、酸素供給装置220、微生物保持担体100、を有する。
【0050】
汚水処理槽210は汚水を収容する。汚水処理槽210の形状、大きさは特に限定されない。汚水処理槽の形状は、例えば、略直方体状、略円柱状である。
【0051】
酸素供給装置220は、汚水処理槽210内の汚水240に酸素を供給する。酸素供給装置220の構成は、汚水処理槽内の汚水240に酸素を供給することができれば、特に限定されない。酸素供給装置220の例には、曝気装置や酸素ボンベなどが含まれる。本実施の形態では、酸素供給装置220は、曝気装置である。
【0052】
微生物保持担体100は、汚水処理槽210内の汚水240に接触するように配置されている。本実施の形態では、複数個連結された微生物保持担体100が、ブラケット230に吊された状態で、汚水240に浸漬されている。
【0053】
なお、本実施の形態において、汚水処理装置200は、
図5に示すように、汚水を供給する汚水供給装置250、汚水処理後の汚水240を排水する排水管260をさらに有していてもよい。
【0054】
(効果)
本実施の形態に係る微生物保持担体100は、一本の糸を用いて、微生物を保持する担体部分となる複数のループ112を形成しているため、微生物を保持する担体部分が脱落し難く、かつ低コストで容易に製造されうる。したがって、本実施の形態に係る微生物保持担体100を用いることで、低コストで安定して汚水処理をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る微生物保持担体、汚水処理方法および汚水処理装置は、例えば畜舎汚水や下水などの汚水の処理に有用である。
【符号の説明】
【0056】
100 微生物保持担体
110 炭素繊維を含む糸
111 幹線
112 ループ
113 結び目
120 被覆シート
130 縫糸
200 汚水処理装置
210 汚水処理槽
220 酸素供給装置
230 ブラケット
240 汚水
250 汚水供給装置
260 排水管