(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】分娩進行状況評価装置、分娩進行状況評価方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2022539498
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027748
(87)【国際公開番号】W WO2022025062
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2020127409
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】入山 高行
(72)【発明者】
【氏名】矢野 絵里子
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110432929(CN,A)
【文献】特開2009-090107(JP,A)
【文献】特表2001-504380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、
前記表示部に表示された超音波画像上に、
恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第1の角度である第1の直線、
恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第2の角度である第2の直線、
および恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第3の角度である第3の直線
のうち少なくとも1本を描画する直線描画部と、
を備える分娩進行状況評価装置。
【請求項2】
ユーザが恥骨の上端および下端の位置を入力するための位置入力部を備え、
前記位置取得部は前記位置入力部に入力された恥骨の上端および下端の位置を取得することを特徴とする請求項
1に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項3】
前記表示部に表示された骨産道の画像から恥骨の上端および下端の位置を認識する画像認識部を備え、
前記位置取得部は前記画像認識部が認識した恥骨の上端および下端の位置を取得することを特徴とする請求項
1に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記第1の直線、前記第2の直線および前記第3の直線によって定義された各骨産道領域を表示することを特徴とする請求項
1から3のいずれかに記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項5】
分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、
恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第1の角度計算部と、
恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第2の角度計算部と、
恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第3の角度計算部と、
前記表示部に表示された超音波画像上に、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線を描画する接線描画部と、
を備える分娩進行状況評価装置。
【請求項6】
分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、
恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第1の角度計算部と、
恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第2の角度計算部と、
恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第3の角度計算部と、
前記表示部に表示された超音波画像上に、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口を描画する切り口描画部と、
を備える分娩進行状況評価装置。
【請求項7】
分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、
恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第1の角度計算部と、
恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第2の角度計算部と、
および恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第3の角度計算部と、
前記表示部に表示された超音波画像上に、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口における児頭内の中心点を描画する中心点描画部と、
を備える分娩進行状況評価装置。
【請求項8】
恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、恥骨下端と前記中心点とを結ぶ直線とのなす角である第4の角度を測定する第1の角度測定部を備える請求項
7に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項9】
前記第4の角度の時間変化率を計算する第1の角度変化率計算部を備える請求項
8に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項10】
前記第4の角度の時間変化率を時間の関数として表示する第1の角度変化率表示部を備える請求項
9に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項11】
恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線とのなす角である第5の角度を測定する第2の角度測定部を備える請求項
7に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項12】
前記第5の角度の時間変化率を計算する第2の角度変化率計算部を備える請求項
11に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項13】
前記第5の角度の時間変化率を時間の関数として表示する第2の角度変化率表示部を備える請求項
12に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項14】
恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、児頭の最大通過面を前記表示部の表示面に平行な平面で切った切り口とのなす角である第6の角度を測定する第3の角度測定部を備える請求項
11に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項15】
前記第6の角度の時間変化率を計算する第3の角度変化率計算部を備える請求項
14に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項16】
前記第6の角度の時間変化率を時間の関数として表示する第3の角度変化率表示部を備える請求項
15に記載の分娩進行状況評価装置。
【請求項17】
分娩中の骨産道の超音波画像を取得するステップと、
前記取得した超音波画像を表示部に表示するステップと、
前記表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得するステップと、
前記表示部に表示された超音波画像上に、
恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第1の角度である第1の直線と、
恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第2の角度である第2の直線と、
恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第3の角度である第3の直線とを描画するステップと
を備える分娩進行状況評価方法。
【請求項18】
分娩中の骨産道の超音波画像を取得するステップと、
前記取得した超音波画像を表示部に表示するステップと、
前記表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得するステップと、
前記表示部に表示された超音波画像上に、
恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第1の角度である第1の直線と、
恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第2の角度である第2の直線と、
恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第3の角度である第3の直線とを描画するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分娩進行状況評価装置、分娩進行状況評価方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分娩時の経会陰超音波法に関する技術として、CT画像を基に妊娠第3半期の妊婦の骨盤の角度を測定したものがある(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“Computed tomographic study of anatomical relationship between pubic symphysis and ischial spines to improve interpretation of intrapartum translabial ultrasound”、Ultrasound OBSTET Gynecol 2016; 48:779-785
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、陣痛開始後の分娩の進行状況の評価は、医師や助産師による内診(触診)により行われていた。こうした評価は、主に以下の2つの方法によって行われる。
【0005】
1つ目は「station」と呼ばれるものである。これは、児頭の下降度を示すのに児頭の先進部を用いる。すなわち児頭の先端が母体の坐骨棘のレベルに達しているときのstationを0とし、このとき児頭が骨盤入口部に陥入したと考える。ここで児頭の先端が坐骨棘間線より上方1cmにあるとき、station=-1とする。逆に児頭の先端が坐骨棘間線より下方1cmにあるとき、station=+1とする。同様に児頭の下降度に応じて、ステーションを+5、+4、+3、+2、+1、0、-1、-2、-3、-4、-5とする。医師や助産師は、内診により児頭先端と骨盤との位置関係を把握し、stationに従って分娩の進行状況を評価する。stationは、緊急での分娩が必要である際に、分娩方法を決定するための指標となる。すなわち、stationの値がある値より大きければ(すなわち児頭がある位置より下方にあれば)鉗子・吸引分娩により安全に経腟分娩が可能であるとか、stationの値がある値より小さければ(すなわち児頭がある位置より上方にあれば)鉗子・吸引分娩は児に対する危険を伴うため原則として帝王切開が必要である、などといった判断ができる。
【0006】
2つ目は、児頭の最大通過面が骨産道のどこに位置するかに基づくものである。ここで「最大通過面」とは、骨産道内を通過する児頭において、その周囲径が最大となる横断面のことをいう。
図1は、人の骨産道を体の左側から見た図である。骨産道の領域は、解剖学的に、恥骨下縁、恥骨中点、坐骨棘、仙骨先端、第2/第3仙骨癒合部をメルクマールとして分類される。これにより骨産道は上から順に、入口面、高在、高中在、低中在、低在、出口部と表記される。直線L1は、恥骨結合下縁と仙骨先端とを結ぶ直線で、低在と出口部との境界をなす。直線L2は、恥骨結合下縁と坐骨棘とを結ぶ直線で、低中在と低在との境界をなす。ここで直線L2は、前述のStaion=0を与えるものであることに注意する。直線L3は、恥骨結合後面の中点と第2/第3仙骨癒合部とを結ぶ直線で、高中在と低中在との境界をなす。分娩の経過とともに児頭は、入口面から出口部に向けて骨産道を下降する。医師や助産師は、内診により児頭の最大通過面と骨盤との位置関係を把握し、最大通過面の産道内における位置に従って分娩の進行状況を評価する。児頭の最大通過面が骨産道のどこに位置するかは、緊急の際に分娩方法を決定するための指標となる。すなわち最大通過面が、低在以下に位置すれば緊急時に鉗子・吸引分娩により安全に経腟分娩が可能であるとか、高中在以上に位置すれば帝王切開が必要であるとか、低中在に位置すれば分娩担当者の判断や技術に応じて分娩方法を選択する、などといった判断ができる。
【0007】
しかしながら、一般に上記のような内診による評価は習得が難しく、個人の技術や経験に左右される。このため内診だけでは正確性・客観性に欠けるという問題がある。特に内診は視覚化ができないため、安全性や正確性を客観的に評価することができない。
【0008】
内診を補完する技術として、妊婦の会陰に超音波プローブを当てて得られた画像を基に、断層法を用いることによって、分娩進行状況を客観的に評価する方法(経会陰超音波法)が普及してきている。経会陰超音波法において児頭下降を評価するパラメータの1つとして、Angle of Progression(AoP)がある。AoPは、恥骨上縁と恥骨下縁とを結んだ直線と、恥骨下端から児頭先端へ引いた接線とのなす角として定義される。AoPとstationとの間にはよい相関があり、例えばISUOG(International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology)のガイドラインでは両者の対応表が与えられている。しかしながら、AoPを用いてどこまで正確な評価ができるかについては議論が分かれている。
【0009】
一方児頭の最大通過面を用いた評価の場合、超音波には、その透過性に起因して恥骨以外の骨盤構造を描出できないという問題がある。すなわち超音波は内診のメルクマールとなる坐骨棘や仙骨を描出できないため、前述の骨産道領域の分類の定義を可視化することができない。このため、超音波装置では児頭と骨盤との解剖学的位置関係を正確に評価することができないことが課題となる。
【0010】
非特許文献1に記載の技術は、フランスにおける妊娠第3半期の妊婦(458人)に対し、恥骨上端と恥骨下端とを通る直線と、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る直線(前述の直線L2に相当)とのなす角を測定した。この角度は、前述のstation=0となるときの角度に相当する。この測定により、110°という結果が得られた。この結果は、経会陰超音波法の基準の1つとして適用可能な解剖学的指標を提供している。
【0011】
しかしながら非特許文献1では、「恥骨上端と恥骨下端とを通る直線と、前述の直線L1に相当する直線とのなす角」や「恥骨上端と恥骨下端とを通る直線と、前述の直線L3に相当する直線とのなす角」についての結果は得られていない。すなわち非特許文献1に記載の技術は、骨産道領域の分類を定義する角度を十分明らかにしていない。この点で当該技術は、最大通過面を用いた分娩進行状況評価のための技術として十分であるとはいえない。
【0012】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波画像上で骨産道内の領域を特定して視覚化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の分娩進行状況評価装置は、分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、表示部に表示された超音波画像上に、恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第1の角度である第1の直線と、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第2の角度である第2の直線と、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第3の角度である第3の直線とを描画する直線描画部と、を備える。
【0014】
第1の角度は109°以上123°以下であり、第2の角度は103°以上115°以下であり、第3の角度は94°以上108°以下であってもよい。
【0015】
本発明の別の態様もまた、分娩進行状況評価装置である。この装置は、分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、表示部に表示された超音波画像上に、恥骨の下端から骨産道方向に向けて直線状に延びる第1の直線と、恥骨の下端から骨産道方向に向けて直線状に延びる第2の直線と、恥骨の中点から骨産道方向に向けて直線状に延びる第3の直線と、を描画する直線描画部と、第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角である第1の角度と、第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角である第2の角度と、第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角である第3の角度と、を記憶する書き換え可能な角度情報記憶部と、を備える。角度情報記憶部は、第1の角度の初期値として109°以上123°以下を記憶し、第2の角度の初期値として103°以上115°以下を記憶し、第3の角度の初期値として94°以上108°以下を記憶する。
【0016】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、ユーザが恥骨の上端および下端の位置を入力するための位置入力部を備えてもよい。位置取得部は位置入力部に入力された恥骨の上端および下端の位置を取得してもよい。
【0017】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、表示部に表示された骨産道の画像から恥骨の上端および下端の位置を認識する画像認識部を備えてもよい。位置取得部は画像認識部が認識した恥骨の上端および下端の位置を取得してもよい。
【0018】
画像認識部は、機械学習により恥骨の上端および下端の位置を学習してもよい。
【0019】
表示部は、第1の直線、第2の直線および第3の直線によって定義された各骨産道領域を表示してもよい。
【0020】
直線描画部は、恥骨下端から表示部に表示された児頭の先端へ引いた接線を描画してもよい。
【0021】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線が、第1の直線、第2の直線および第3の直線のいずれかに達したとき、これをユーザに通知する通知部を備えてもよい。
【0022】
直線描画部は、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口を描画してもよい。
【0023】
直線描画部は、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口における児頭内の中心点を描画してもよい。
【0024】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、恥骨下端と前述の中心点とを結ぶ直線とのなす角である第4の角度を測定する第1の角度測定部を備えてもよい。
【0025】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、第4の角度の時間変化率を計算する第1の角度変化率計算部を備えてもよい。
【0026】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、第4の角度の時間変化率を時間の関数として表示する第1の角度変化率表示部を備えてもよい。
【0027】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、第4の角度の時間変化率が予め定められた値より小さくなったとき、これをユーザに警告する第1の警告部を備えてもよい。
【0028】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線とのなす角である第5の角度を測定する第2の角度測定部を備えてもよい。
【0029】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、第5の角度の時間変化率を計算する第2の角度変化率計算部を備えてもよい。
【0030】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、第5の角度の時間変化率を時間の関数として表示する第2の角度変化率表示部を備えてもよい。
【0031】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、児頭の最大通過面を表示部の表示面に平行な平面で切った切り口とのなす角である第6の角度を測定する第3の角度測定部を備えてもよい。
【0032】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、第6の角度の時間変化率を計算する第3の角度変化率計算部を備えてもよい。
【0033】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、第6の角度の時間変化率を時間の関数として表示する第3の角度変化率表示部を備えてもよい。
【0034】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置は、第6の角度の第5の角度に対する比が予め定められた値より小さくなったとき、これをユーザに警告する第2の警告部を備えてもよい。
【0035】
本発明のさらに別の態様もまた、分娩進行状況評価装置である。この装置は、分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、表示部に表示された超音波画像上に、恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第1の角度である第1の直線、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第2の角度である第2の直線、および恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第3の角度である第3の直線のうち少なくとも1本を描画する直線描画部と、を備える。
【0036】
本発明のさらに別の態様もまた、分娩進行状況評価装置である。この装置は、分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第1の角度計算部と、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第2の角度計算部と、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第3の角度計算部と、表示部に表示された超音波画像上に、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線を描画する接線描画部と、を備える。
【0037】
本発明のさらに別の態様もまた、分娩進行状況評価装置である。この装置は、分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第1の角度計算部と、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第2の角度計算部と、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第3の角度計算部と、表示部に表示された超音波画像上に、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口を描画する切り口描画部と、を備える。
【0038】
本発明のさらに別の態様もまた、分娩進行状況評価装置である。この装置は、分娩中の骨産道の超音波画像を表示する表示部と、表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する位置取得部と、恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第1の角度計算部と、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第2の角度計算部と、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する第3の角度計算部と、表示部に表示された超音波画像上に、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口における児頭内の中心点を描画する中心点描画部と、を備える。
【0039】
本発明のさらに別の態様は、分娩進行状況評価方法である。この方法は、分娩中の骨産道の超音波画像を取得するステップと、取得した超音波画像を表示部に表示するステップと、表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得するステップと、表示部に表示された超音波画像上に、恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第1の角度である第1の直線と、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第2の角度である第2の直線と、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第3の角度である第3の直線とを描画するステップと、を備える。
【0040】
本発明のさらに別の態様は、プログラムである。このプログラムは、分娩中の骨産道の超音波画像を取得するステップと、取得した超音波画像を表示部に表示するステップと、表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得するステップと、表示部に表示された超音波画像上に、恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第1の角度である第1の直線と、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第2の角度である第2の直線と、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角が第3の角度である第3の直線とを描画するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0041】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、超音波画像上で骨産道内の領域を特定して視覚化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図3】第1の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図3の分娩進行状況評価装置の表示部に表示された超音波画像である。
【
図5】
図4の超音波画像において取得された恥骨の上端および下端を示す図である。
【
図6】
図4の超音波画像の上に描画された第1、第2および第3の直線を示す図である。
【
図7】
図4の超音波画像の上に描画された各骨産道領域を示す図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図9】第3の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図10】第4の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図11】恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線を示す図である。
【
図12】第6の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図13】児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口を示す図である。
【
図14】児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口における児頭内の中心点を示す図である。
【
図15】第9の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図16】角度測定部によって測定された第4の角度を示す図である。
【
図17】角度測定部によって測定された第5の角度および第6の角度を示す図である。
【
図19】第10の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図20】第11の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図21】第12の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図22】第20の実施の形態に係る分娩進行状況評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図23】第22の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図24】第23の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【
図25】第24の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項の中で「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するだけのためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0045】
具体的な実施の方法を述べる前に、基礎となる知見を説明する。本発明者らは、日本人の妊娠第3半期の妊婦(69人)のMRI画像を用いて、以下の3種類の角度を測定することに成功した。
(a)恥骨上端と恥骨下端とを通る直線と、恥骨下端と仙骨先端とを通る直線(前述の直線L1に相当)のなす角。
(b)恥骨上端と恥骨下端とを通る直線と、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る直線(前述の直線L2に相当)とのなす角(Staton=0に相当)。
(c)恥骨上端と恥骨下端とを通る直線と、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る直線(前述の直線L3に相当)とのなす角。
図2および表1に測定結果を示す(
図2は、
図1と逆に骨産道を体の右側から見たものである点に注意する)。
【表1】
表1において、[114.2°-117.4°]等は、実測で得られた値の範囲を示す。また115.9°±6.5°等は、平均値±1.96×標準偏差を示す(信頼区間95%)。
【0046】
(b)は、非特許文献1で開示された結果に相当する。一方(a)および(b)は、本研究者らが世界で初めて得た値である。上記のいずれの測定結果においても、サンプルとなった妊婦の年齢、身長、経腟分娩歴との相関は見られなかった。従ってこれらの結果は、すべての妊婦に普遍的なものであると考えられる。また、(b)の測定結果は、非特許文献1で得られた測定結果(110°)にほぼ一致する。従ってこれは、人種によらない絶対的なメルクマールと考えられる。
【0047】
(a)の測定結果から直線L1を引くことができ、骨産道の低在と出口部との境界を定義することができる。(b)の測定結果から直線L2を引くことができ、骨産道の低中在と低在との境界を定義することができる。(c)の測定結果から直線L3を引くことができ、骨産道の高中在と低中在との境界を定義することができる。従って、これらの測定結果により、経会陰超音波を用いた分娩の進行状況評価のために必要な骨産道領域の分類を定義することができる。
【0048】
[第1の実施の形態]
以下、
図3から
図6を参照して、第1の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置1を説明する。
図3は、分娩進行状況評価装置1の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置1は、表示部10と、位置取得部20と、直線描画部30と、を備える。
【0049】
表示部10は画像を表示するためのディスプレイであり、例えば液晶ディスプレイ、ビデオプロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイといった任意の好適なディスプレイであってよい。表示部10には、分娩中の骨産道の超音波画像が表示される。この超音波画像は、例えば妊婦の会陰に超音波プローブを当てることによって得られる。
【0050】
図4は、表示部10に表示された超音波画像である。この超音波画像は、母体の右側から見た骨産道を映し出しており、画面に向かって上方が腹側、下方が背中側、左方が頭側、右方が足側である。この超音波画像の上方には母体の恥骨が、下方の大きな領域には児頭が映っている。
【0051】
位置取得部20は、表示部10に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得する。
恥骨の上端および下端の位置は、ユーザが表示部10に表示された超音波画像を観察しながら目視で判断してもよいし、画像認識装置が表示部10に表示された超音波画像を基に自動で認識してもよい。
【0052】
図5に、表示部10に表示された超音波画像において位置取得部20が取得した恥骨の上端および下端を示す。恥骨の画面に向かって左端が上端、右端が下端である。また一般に超音波画像上に描出された児頭は、特にその後側において不鮮明となる傾向がある。実際
図4の超音波画像でも、児頭の後側(画面上では左下側)の輪郭は明瞭でない。そこで
図5では、児頭の縦断面を楕円(短軸をL5、長軸をL6で表す)として近似し、この楕円を描画している(以下の図面でも同様)。このような楕円近似は、ユーザが表示部10に表示された超音波画像を観察しながら目視で行ってもよいし、画像認識装置が表示部10に表示された超音波画像を基に自動で行ってもよいし、それらを組み合わせてもよい。
【0053】
直線描画部30は、表示部10に表示された超音波画像上に、第1の直線L1と、第2の直線L2と、第3の直線L3と、を描画する。ここで、恥骨の上端と下端とを通る直線をL0とする。第1の直線L1は、恥骨下端と仙骨先端とを通る直線である。第1の直線L1と直線L0とのなす角を第1の角度θ1とする。第2の直線L2は、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る直線である。第2の直線L2と直線L0とのなす角を第2の角度θ2とする。第3の直線L3は、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る直線である。第3の直線L3と直線L0とのなす角を第3の角度θ3とする。
【0054】
図6に、
図4の超音波画像の上に直線描画部30が描画した第1、第2および第3の直線L1、L2およびL3を示す。
【0055】
前述の説明から分かる通り、第1の直線L1は、骨産道の低在と出口部との境界を定義する。第2の直線L2は、骨産道の低中在と低在との境界を定義する。そして第3の直線L3は、骨産道の高中在と低中在との境界を定義する。従ってこれら3本の直線により、経会陰超音波を用いた分娩の進行状況評価のために必要な骨産道領域の分類を超音波画面上で視覚化できる。これにより医師や助産師は、児頭と骨産道領域との位置関係を視覚的に確認しながら分娩の進行を評価できる。特に緊急時に分娩方針を決定する必要がある場合、正確かつ客観的に適切な分娩方法を選択することができる。
【0056】
ある実施の形態では、直線描画部30は、必ずしも第1の直線、第2の直線および第3の直線のすべてを描画しなくてもよい。例えば直線描画部30は、第1の直線、第2の直線および第3の直線の少なくとも1本を描画してもよい。
【0057】
例えば児頭の中心が高中在の位置にあるときには、最大通過面が高中在に位置するか、低中在に位置するかが重要となる。この場合、第3の直線(高中在と低中在との境界線)が描画されていれば、最大通過面が高中在に位置することが判断できるため、帝王切開が必要であることが分かるので有用である。
【0058】
一方児頭の中心が低中在の位置にあるときには、熟練した(すなわち、低中在で鉗子分娩ができる能力がある)医師にとっては、最大通過面が高中在に位置するか、低中在に位置するかが重要となる。この場合、第3の直線が描画されていれば、最大通過面が高中在に位置しないことが判断できるため、鉗子分娩ができることが分かるので極めて有用である。また第2の直線(低中在と低在との境界線)が描画されていれば、最大通過面が低在にないことが判断できるため、難しい鉗子分娩になることが分かるのでやはり有用である。
【0059】
児頭の中心が低中在の位置にあるとき、若い(すなわち、低中在で鉗子分娩ができる能力がない)医師にとっては、最大通過面が低中在に位置するか、低在に位置するかが重要となる。この場合、第2の直線が描画されていれば、最大通過面が低在にないことが判断できるため、難しい鉗子分娩になることが分かり、帝王切開を選択することができるので極めて有用である。また第3の直線が描画されていれば、最大通過面が高中在に位置しないことが判断できるため、鉗子分娩が選択肢になることが分かるのでやはり有用である。
【0060】
ある実施の形態では、第1の角度θ1は109°以上123°以下であり、第2の角度θ2は103°以上115°以下であり、第3の角度θ3は94°以上108°以下である。前述のようにこれらの角度の値は、妊婦の骨盤MRI上の各メルクマールの測定を用いて、本発明者らが世界で初めて同定した指標である。本実施の形態によれば、具体的な数値を定めて第1、第2および第3の直線L1、L2および直線L3を描画することができる。なお上記の数値範囲は、測定で得られた平均値を中心として95%信頼区間に含まれるものである。
【0061】
ある実施の形態では、表示部10は、第1の直線L1、第2の直線L2および第3の直線L3によって定義された各骨産道領域を表示してもよい。
図7に、
図4の超音波画像の上に表示部10が描画した骨産道領域を示す。このように、第1、第2および第3の直線L1、L2および直線L3に追加して骨産道領域を表示することにより、ユーザの使い勝手がさらに向上する。また
図7には、児頭内の中心点P0が描画されている。後述するように中心点P0は、児頭の最大通過面が通る軌跡を直感的に把握するのに有用な情報を与える。従ってこのように中心点P0を描画することにより、児頭の最大通過面と骨産道の各領域との位置関係に関する情報が得られるため、ユーザの使い勝手がさらに向上する。
【0062】
[第2の実施の形態]
図8は、第2の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置2の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置2は、表示部10と、位置取得部20と、直線描画部30と、角度情報記憶部40と、を備える。すなわち分娩進行状況評価装置2は、
図3の分娩進行状況評価装置1の構成に追加して、角度情報記憶部40を備える。分娩進行状況評価装置2のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置1の構成に共通するので、重複する説明は省略する。
【0063】
角度情報記憶部40は、書き換え可能な記憶媒体で構成され、第1の角度θ1と、第2の角度θ2と、第3の角度θ3と、を角度情報として記憶する。すなわち、角度情報記憶部40には、初期状態で第1、第2および第3の角度θ1、θ2およびθ3の初期値を記憶し、以後これらの角度の値を適宜書き換えることができる。直線描画部30は、角度情報記憶部40に記憶された第1、第2および第3の角度θ1、θ2およびθ3を読み出し、これらの値に基づいて、第1、第2および第3の直線L1、L2およびL3を描画する。
【0064】
特に本実施の形態では、角度情報記憶部40は、第1の角度θ1の初期値として109°以上123°以下を記憶し、第2の角度θ2の初期値として103°以上115°以下を記憶し、第3の角度θ3の初期値として94°以上108°以下を記憶する。そして新たな測定等により、より適切な角度の情報が得られた場合は、これらの角度情報を書き換える。
【0065】
本実施の形態によれば、本発明者らが見出した指標を基に第1、第2および第3の直線L1、L2および直線L3を描画しつつ、これらの指標としてより適切なものが得られたときは、これらを更新することができる。
【0066】
ある実施の形態では、分娩進行状況評価装置2は、人種に応じた第1、第2および第3の角度θ1、θ2およびθ3に関するデータを蓄積した角度データベースを備えてもよい。この場合、角度情報記憶部40は、第1の角度θ1、第2の角度θ2および第3の角度θ3の初期値を記憶した後、前述の角度データベースから人種に応じた角度のデータを取得し、初期値の値を変更してもよい。本実施の形態によれば、第1、第2および第3の角度θ1、θ2およびθ3が人種間で異なった場合であっても、正確な初期値に基づいて分娩進行状況を評価することができる。
【0067】
[第3の実施の形態]
図9は、第3の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置3の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置3は、
図3の分娩進行状況評価装置1の構成に追加して、位置入力部50を備える。分娩進行状況評価装置3のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置1の構成に共通するので、重複する説明は省略する。位置入力部50は、ユーザが恥骨の上端および下端の位置を入力するためのものである。位置入力部50は、タッチパネル、マウス、キーボードといった任意の好適な入力インターフェースであってよい。位置取得部20は、位置入力部50に入力された恥骨の上端および下端の位置を取得する。
【0068】
本実施の形態によれば、ユーザは、表示部10に表示された超音波画像を観察しながら目視で恥骨の上端をおよび下端の位置を判断し、これを位置入力部50に入力することができる。
【0069】
[第4の実施の形態]
図10は、第4の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置4の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置4は、
図3の分娩進行状況評価装置1の構成に追加して、画像認識部60を備える。分娩進行状況評価装置4のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置1の構成に共通するので、重複する説明は省略する。画像認識部60は、表示部10に表示された骨産道の画像から恥骨の上端および下端の位置を認識する。例えば画像認識部60は、既知の画像認識ソフトウェアを用いて、骨産道の超音波画像の中から恥骨を特定し、その上端および下端を認識してよい。位置取得部20は、画像認識部60が認識した恥骨の上端および下端の位置を取得する。
【0070】
本実施の形態によれば、恥骨の上端および下端の位置は、ユーザが目視で判断して入力することなく、自動的に取得することができる。
【0071】
特に画像認識部60は、機械学習により恥骨の上端および下端の位置を学習してもよい。学習は、既知のAIにより行われてよい。AIの具体的な手法は特に限定されないが、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)、再帰形ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)、LSTMネットワーク(Long Short Term Memory:LSTM)などのニューラルネットワークを用いてもよく、この場合入力層を共通にした上で計算モデルごとに異なるニューラルネットワークを混在させてもよい。
【0072】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態では、直線描画部30は、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線を描画する。
図11に、表示された超音波画像において、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線L4を示す。このように接線を描画することにより、児頭の先端と骨産道の各領域との位置関係が明確となるため、ユーザの使い勝手がさらに向上する。
【0073】
[第6の実施の形態]
図12は、第6の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置5の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置5は、
図3の分娩進行状況評価装置1の構成に追加して、通知部70を備える。直線描画部30は、第1、第2および第3の直線L1、L2およびL3に追加して、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線を描画する。分娩進行状況評価装置5のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置1の構成に共通するので、重複する説明は省略する。
【0074】
通知部70は、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線が、第1の直線L1、第2の直線L2および第3の直線L3のいずれかに達したとき、これをユーザに通知する。
通知の方法は、ランプの点灯、通知音、バイブレータの振動、表示部10の点滅や色の変化など任意の好適なものであってよい。本実施の形態によれば、児頭が骨産道内のある領域から別の領域に移るとき、これをユーザに通知することができるので、ユーザの使い勝手や安全性がさらに向上する。
【0075】
[第7の実施の形態]
第7の実施の形態では、直線描画部30は、児頭の最大通過面を表示部10の表示面に平行な平面で切った切り口を描画する。また表示面とは、表示部10において画像が表示される面のことである。例えば表示部10が液晶ディスプレイであれば、ディスプレイの面である。
図13に、表示された超音波画像において、児頭の最大通過面を表示部10の表示面に平行な平面で切った切り口L5を示す。前述の通り最大通過面は、骨産道内で周囲径が最大となる児頭の横断面である。ここでは児頭の縦断面を楕円(短軸をL5、長軸をL6で表す)で近似するので、最大通過面は楕円の短軸L5を含む横断面であると考えてよい。すなわち児頭の最大通過面を表示部10の表示面に平行な平面で切った切り口L5は、楕円の短軸L5に一致する。このように児頭の最大通過面の切り口を描画することにより、児頭の最大通過面と骨産道の各領域との位置関係が明確となるため、ユーザの使い勝手がさらに向上する。
【0076】
[第8の実施の形態]
第8の実施の形態では、直線描画部30は、児頭の最大通過面を表示部10の表示面に平行な平面で切った切り口における児頭内の中心点を描画する。
図14に、児頭の最大通過面を表示部10の表示面に平行な平面で切った切り口L5における児頭内の中心点P0を示す。中心点P0は、切り口L5と児頭の輪郭線との2つの交点P1およびP2の中点である。ここでは児頭の縦断面を楕円(短軸をL5、長軸をL6で表す)で近似するので、中心P0は短軸L5と長軸L6との交点に一致する。中心点P0は切り口L5と異なり最大通過面そのものを示すわけではないが、最大通過面が通る軌跡を直感的に判断するために有用な情報を与えることができる。また切り口L5には、骨盤の境界線を示す表示と縮尺の度合いが一致しないとか、描画時の誤差が発生しやすいなどといった面もあり、臨床における使用では中心点P0方が使いやすい場合もある。このように中心点P0を描画することにより、児頭の最大通過面と骨産道の各領域との位置関係に関する情報が得られるため、ユーザの使い勝手がさらに向上する。
【0077】
[第9の実施の形態]
図15は、第9の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置6の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置6は、
図3の分娩進行状況評価装置1の構成に追加して、角度測定部80を備える。分娩進行状況評価装置6のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置1の構成に共通するので、重複する説明は省略する。角度測定部80は、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、恥骨下端と前述の中心点とを結ぶ直線とのなす角である第4の角度を測定する。
【0078】
図16に、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線L0と、恥骨下端と中心点P0とを結ぶ直線L7とのなす角の角度θ4を示す。例えば角度測定部80は、既知の画像認識ソフトウェアを用いて、恥骨下端と中心点P0を特定し、角度θ4を計算してよい。角度θ4は、児頭の最大通過面の骨産道内における位置を定量的に示す数値であると考えられる。従って本実施の形態によれば、ユーザは、児頭の最大通過面の位置に基づいて、分娩の進行状況を定量的に評価することができる。
【0079】
[第10の実施の形態]
図19は、第10の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置7の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置7は、
図15の分娩進行状況評価装置6の構成に追加して、角度変化率計算部90を備える。分娩進行状況評価装置7のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置6の構成に共通するので、重複する説明は省略する。角度変化率計算部90は、第4の角度θ4の時間変化率を計算する。前述のように角度θ4は児頭の最大通過面の骨産道内における位置を示すので、角度θ4の時間変化率は最大通過面の骨産道内における速度を定量的に示す数値であると考えられる。従って本実施の形態によれば、ユーザは、児頭の最大通過面の速度に基づいて、分娩の進行状況を定量的に評価することができる。
【0080】
[第11の実施の形態]
図20は、第11の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置8の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置8は、
図19の分娩進行状況評価装置7の構成に追加して、角度変化率表示部92を備える。分娩進行状況評価装置8のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置7の構成に共通するので、重複する説明は省略する。角度変化率表示部92は、前述の第4の角度の時間変化率を時間の関数として表示する。表示は、数字、折れ線グラフ、ヒストグラムなど任意の好適な方法でされてよい。本実施の形態によれば、ユーザは、児頭の最大通過面の速度を視認できるので、分娩の進行状況をリアルタイムに評価することができる。
【0081】
[第12の実施の形態]
図21は、第12の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置9の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置9は、
図19の分娩進行状況評価装置7の構成に追加して、警告部94を備える。分娩進行状況評価装置9のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置7の構成に共通するので、重複する説明は省略する。警告部94は、前述の第4の角度θ4の時間変化率が予め定められた値より小さくなったとき、これをユーザに警告する。前述のように角度θ4の時間変化率は児頭の最大通過面の骨産道内における速度を示す。従って角度θ4の時間変化率が低下したときは、分娩の進行に何らかの問題が生じたことが示唆される。そこで角度θ4の時間変化率に特定の値(閾値)を予め定めておき、分娩中にθ4がこの値より小さくなったときに、これをユーザに警告することにより、リスクを回避することができる。本実施の形態によれば、さらに分娩の安全性を高めることができる。
【0082】
[第13の実施の形態]
図15および
図17を参照して、第13の実施の形態を説明する。この実施の形態では、
図15の分娩進行状況評価装置6の角度測定部80は、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線とのなす角である第5の角度を測定する。
【0083】
図17に、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線L0と、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線L4とのなす角の角度θ5を示す。前述の通り角度θ5は、児頭下降を評価するパラメータの1つであるAoP(Angle of Progression)である。例えば角度測定部80は、既知の画像認識ソフトウェアを用いて、恥骨下端と中心点P0を特定し、角度θ5を計算してよい。本実施の形態によれば、ユーザは、AoPに基づいて、分娩の進行状況を定量的に評価することができる。
【0084】
[第14の実施の形態]
図15および
図17を参照して、第14の実施の形態を説明する。この実施の形態では、
図15の分娩進行状況評価装置6の角度測定部80は、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線と、児頭の最大通過面を表示部の表示面に平行な平面で切った切り口とのなす角である第6の角度を測定する。
【0085】
図17に、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線L0と、児頭の最大通過面を表示部の表示面に平行な平面で切った切り口L5とのなす角の角度θ6を示す。前述のようにここでは児頭の縦断面を楕円で近似するので、切り口L5は当該楕円の短軸に一致する。
【0086】
図18を参照して、第6の角度θ6について説明する。一般に、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線の垂線L8と、児頭の進む方向とのなす角の角度HDは、Head Directionとして知られている。ここでは児頭の縦断面を楕円で近似するので、児頭の進む方向は楕円の長軸L6に一致する。
図18から容易に分かるように、角度HDと角度θ6とは等しい。すなわち第6の角度θ6は、Head Direction(以下「HD」と呼ぶ)を表す。
【0087】
一般に分娩中に回旋異常があるほど、吸引分娩や鉗子分娩の難度が高いことが知られている。すなわち正常な分娩経過では、胎児は先ず顎を引く(第一回旋)、次に徐々に顔を下に向ける(第二回旋)といった動きをする。これにより、胎児は顔を下(母体の背側)に向けた状態で降りてくることができる。このときHDは十分大きな値を持つ。このような場合、吸引分娩や鉗子分娩の難易度は低い。これに対し回旋異常がある場合、すなわち胎児がうまく下を向けていなかったり、胎児の顔が上(母体の腹側)を向いていたり、あるいは斜めに向いていたりした場合、吸引分娩や鉗子分娩の難度は高くなる。このときHDはAoPに対して小さくなる傾向がある。このようにHDの値を知ることにより、分娩の進行状況を評価することができる。特にHDの絶対値は、分娩が進む(AoPが大きくなる)とともに増大する。従って回旋異常に気付くためには、AoPに対するHDの比を評価することが特に重要となる。
【0088】
なお本明細書では、第6の角度θ6(HD)は、
図18に示されるもので定義した。しかしながら、例えばISUOG(International society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology:国際産婦人科超音波学会)のガイドラインでは、HDは上記の第6の角度θ6から90°を引いた角度として定義されている。HDをこれらのどちらの角度で定義するかは、学会的にも一義的に定まっていない状況である。言うまでもないが、これらの相違は単なる定義上の相違に過ぎず、両者は臨床的には同等である。従って、本実施の形態は、HDを上記の第6の角度θ6から90°を引いた角度で定義した場合であっても全く同様に成立することを注意しておく。
【0089】
以上述べたように本実施の形態によれば、HDの値を知ることにより回旋異常の検知が可能となる。従って緊急での分娩が必要の際、吸引分娩や鉗子分娩か可能かに関し、安全な分娩方法の判断が可能となる。これにより、より分娩の安全性を高めることができる。
【0090】
[第15の実施の形態]
図19を参照して、第15の実施の形態を説明する。この実施の形態では、
図19の角度変化率計算部90は、第5の角度θ5の時間変化率を計算する。前述のように角度θ5はAoPを示すので、角度θ5の時間変化率は分娩の進行速度を定量的に示す数値であると考えられる。従って本実施の形態によれば、ユーザは、AoPの時間変化率に基づいて、分娩の進行状況を定量的に評価することができる。
【0091】
[第16の実施の形態]
図20を参照して、第16の実施の形態を説明する。この実施の形態では、
図20の角度変化率表示部92は、第5の角度θ5の時間変化率を時間の関数として表示する。表示は、数字、折れ線グラフ、ヒストグラムなど任意の好適な方法でされてよい。本実施の形態によれば、ユーザは、AoPの時間変化率を視認できるので、分娩の進行状況をリアルタイムに評価することができる。
【0092】
[第17の実施の形態]
図19を参照して、第17の実施の形態を説明する。この実施の形態では、
図19の角度変化率計算部90は、第6の角度θ6の時間変化率を計算する。前述のように角度θ6はHDを示すので、角度θ6の時間変化率は胎児の頭の上下の向きの時間変化を定量的に示す数値であると考えられる。従って本実施の形態によれば、ユーザは、胎児の頭の上下の向きの時間変化に基づいて、分娩の進行状況を定量的に評価することができる。
【0093】
[第18の実施の形態]
図20を参照して、第18の実施の形態を説明する。この実施の形態では、
図20の角度変化率表示部92は、第6の角度θ6の時間変化率を時間の関数として表示する。表示は、数字、折れ線グラフ、ヒストグラムなど任意の好適な方法でされてよい。本実施の形態によれば、ユーザは、HDの時間変化率を視認できるので、分娩の進行状況をリアルタイムに評価することができる。
【0094】
[第19の実施の形態]
図21を参照して、第19の実施の形態を説明する。この実施の形態では、
図21の警告部94は、第6の角度θ6の第5の角度θ5に対する比が予め定められた値より小さくなったとき、これをユーザに警告する。前述のように、AoP(角度θ5)に対するHD(角度θ6)の比が低下したときは、分娩の進行において回旋異常などの問題が生じたことが示唆される。そこで角度θ6の角度θ5に対する比(θ6/θ5)に特定の値(閾値)を予め定めておき、分娩中にθ6/θ5がこの値より小さくなったときに、これをユーザに警告することにより、リスクを回避することができる。本実施の形態によれば、さらに分娩の安全性を高めることができる。
【0095】
[第20の実施の形態]
図22は、第20の実施の形態に係る分娩進行状況評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0096】
ステップS1で、分娩中の骨産道の超音波画像が取得される。この超音波画像は、例えば妊婦の会陰に超音波プローブを当てることによって得られたものである。取得された超音波画像は表示部に送信され、処理はステップS2に移行する。
【0097】
ステップS2で超音波画像が表示部に表示され、処理はステップS3に移行する。
【0098】
ステップS3で表示部に表示された超音波画像における恥骨の上端および下端の位置が取得され、処理はステップS4に移行する。
【0099】
ステップS4で、表示部に表示された超音波画像上に、第1の直線、第2の直線および第3の直線が描画される。ここで、第1の直線は、恥骨下端と仙骨先端とを通る直線である。第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角は第1の角度である。第2の直線は、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る直線である。第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角は第2の角度である。第3の直線は、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る直線である。第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角は第3の角度である。ステップS4が実行されると、処理は終了する。
【0100】
第1の角度は109°以上123°以下であってよく、第2の角度は103°以上115°以下であってよく、第3の角度は94°以上108°以下であってよい。
【0101】
[第21の実施の形態]
第21の実施の形態のプログラムは、第20の実施の形態で説明した処理をコンピュータに実行させる。
【0102】
[第22の実施の形態]
第1の実施の形態において、直線描画部30は、必ずしも第1の直線、第2の直線または第3の直線を描画しなくてもよく、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線のみを描画してもよい。言い換えれば分娩進行状況評価装置は、直線描画部30に代えて、上述の接線を描画する接線描画部を備えるものであってもよい。
【0103】
図23は、第22の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置101の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置101は、表示部10と、位置取得部20と、第1の角度計算部111と、第2の角度計算部112と、第3の角度計算部113と、接線描画部121と、を備える。すなわち分娩進行状況評価装置101は、
図3の分娩進行状況評価装置1の直線描画部30に代えて、接線描画部121を備える。さらに分娩進行状況評価装置101は、分娩進行状況評価装置1の構成に追加して、第1の角度計算部111と、第2の角度計算部112と、第3の角度計算部113と、を備える。分娩進行状況評価装置101のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置1の構成に共通するので、重複する説明は省略する。
【0104】
第1の角度計算部111は、恥骨下端と仙骨先端とを通る第1の直線であって、当該第1の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する。第2の角度計算部112は、恥骨下端と坐骨棘中点とを通る第2の直線であって、当該第2の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する。第3の角度計算部113は、恥骨中点と第2/第3仙骨癒合部とを通る第3の直線であって、当該第3の直線と、恥骨の上端と下端とを結ぶ直線とのなす角の角度を計算する。接線描画部121は、表示部に表示された超音波画像上に、恥骨下端から児頭の先端へ引いた接線を描画する。
【0105】
本実施の形態によれば、児頭の先端と骨産道の各領域との位置関係を明確に把握しつつ、分娩の進行を評価できる。
【0106】
[第23の実施の形態]
第1の実施の形態において、直線描画部30は、必ずしも第1の直線、第2の直線または第3の直線を描画しなくてもよく、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口のみを描画してもよい。言い換えれば分娩進行状況評価装置は、直線描画部30に代えて、上述の切り口を描画する切り口描画部を備えるものであってもよい。
【0107】
図24は、第23の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置102の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置102は、表示部10と、位置取得部20と、第1の角度計算部111と、第2の角度計算部112と、第3の角度計算部113と、切り口描画部122と、を備える。すなわち分娩進行状況評価装置102は、
図23の分娩進行状況評価装置101の接線描画部121に代えて、切り口描画部122を備える。分娩進行状況評価装置102のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置101の構成に共通するので、重複する説明は省略する。
【0108】
切り口描画部122は、表示部に表示された超音波画像上に、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口を描画する。
【0109】
本実施の形態によれば、児頭の最大通過面と骨産道の各領域との位置関係を明確に把握しつつ、分娩の進行を評価できる。
【0110】
[第24の実施の形態]
第1の実施の形態において、直線描画部30は、必ずしも第1の直線、第2の直線または第3の直線を描画しなくてもよく、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口における児頭内の中心点のみを描画してもよい。言い換えれば分娩進行状況評価装置は、直線描画部30に代えて、上述の中心点を描画する中心点描画部を備えるものであってもよい。
【0111】
図25は、第24の実施の形態に係る分娩進行状況評価装置103の機能ブロック図である。分娩進行状況評価装置103は、表示部10と、位置取得部20と、第1の角度計算部111と、第2の角度計算部112と、第3の角度計算部113と、中心点描画部123と、を備える。すなわち分娩進行状況評価装置103は、
図23の分娩進行状況評価装置101の接線描画部121に代えて、中心点描画部123を備える。分娩進行状況評価装置103のそれ以外の構成は、分娩進行状況評価装置101の構成に共通するので、重複する説明は省略する。
【0112】
中心点描画部123は、表示部に表示された超音波画像上に、児頭の最大通過面を表示面に平行な平面で切った切り口における児頭内の中心点を描画する。
【0113】
本実施の形態によれば、児頭の最大通過面と骨産道の各領域との位置関係に関する情報を得つつ、分娩の進行を評価できる。
【0114】
以上、本発明を実施例を基に説明した。これらの実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0115】
表示部は、第1の直線、第2の直線および第3の直線によって定義された各骨産道領域を表示するときに、領域ごとに異なる色で表示してもよい。これにより、ユーザの視認性が増す。
【0116】
変形例は実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0117】
上述した各実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる各実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、分娩進行状況評価装置、分娩進行状況評価方法およびプログラムに関する。
【符号の説明】
【0119】
1・・分娩進行状況評価装置
2・・分娩進行状況評価装置
3・・分娩進行状況評価装置
4・・分娩進行状況評価装置
5・・分娩進行状況評価装置
6・・分娩進行状況評価装置
7・・分娩進行状況評価装置
8・・分娩進行状況評価装置
9・・分娩進行状況評価装置
101・・分娩進行状況評価装置
102・・分娩進行状況評価装置
103・・分娩進行状況評価装置
10・・表示部
20・・位置取得部
30・・直線描画部
40・・角度情報記憶部
50・・位置入力部操作対象物
60・・画像認識部
70・・通知部
80・・角度測定部
90・・角度変化率計算部
90・・角度変化率表示部
94・・警告部
111・・第1の角度計算部
112・・第2の角度計算部
113・・第3の角度計算部
121・・接線描画部
122・・切り口描画部
123・・中心点描画部
S1・・分娩中の骨産道の超音波画像を取得するステップ
S2・・超音波画像を表示部に表示するステップ
S3・・表示部に表示された恥骨の上端および下端の位置を取得するステップ
S4・・表示部に表示された超音波画像上に、第1の直線、第2の直線および第3の直線を描画するステップ