(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】シンチレータアレイ、放射線検出器、及び放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
G21K 4/00 20060101AFI20240611BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240611BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G21K4/00 A
A61B6/42 500Q
G01T1/20 D
G01T1/20 E
G01T1/20 G
(21)【出願番号】P 2019076649
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-04-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗和田 健
(72)【発明者】
【氏名】大森 健
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】松川 直樹
【審判官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-162001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T1/00-7/12
G21K4/00
A61B6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレータと反射層を有するシンチレータアレイであって
、
前記反射層は樹脂と、前記樹脂内に分散された反射粒子とを含有し
、
前記樹脂がカチオン重合開始剤による硬化物であり、
前記樹脂がエポキシシリコーン樹脂であり、
前記シンチレータアレイの中心と端の高さの差から求められる反りが150μm以下である、
シンチレータアレイ。
【請求項2】
前記樹脂は
、エポキシ当量が
100以上300以下である、請求項
1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項3】
前記シンチレータが、GOS蛍光体、CWO蛍光体、CsI蛍光体、およびガーネット系蛍光体からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1
又は2に記載のシンチレータアレイ。
【請求項4】
前記反射粒子が、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、およびシリカからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項5】
シンチレータが直線状に複数配置され、シンチレータの大きさが各々10mm
3以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のシンチレータアレイを具備する放射線検出器。
【請求項7】
請求項
6に記載の放射線検出器を具備する放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータ用反射材、シンチレータアレイ、放射線検出器、及び放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断や工業用非破壊検査を目的として、X線透過撮影による画像診断やX線CT(Computed Tomography)撮影による画像診断が利用されている。これらの画像診断装置では、X線を可視光に変換するために、プラセオジム賦活の酸硫化ガドリニウム(Gd2O2S:Pr)(以下、GOS:Prとも称する)等の希土類酸硫化物の焼結体からなるセラミックシンチレータを複数並べアレイ化したもの(シンチレータアレイ)が用いられている。
【0003】
これらX線の診断画像の解像度は、シンチレータアレイが具備する各セラミックシンチレータを小型化することで向上するが、一方でX線に対する感度が低下するといった課題があった。そこでシンチレータアレイが隣接するシンチレータブロック間に樹脂に酸化チタン等の反射粒子を分散させた反射層を設けることで、シンチレータアレイの光出力を向上させる手段が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、反射層の反射粒子の個数を制御することで、反射層部の反射効率を高めることによって、光出力を向上させる手法が開示されている。
また、特許文献2では、反射層に特定のガラス転移点と熱膨張係数を有する樹脂を用いることによって、光出力を維持した上で、セグメントのピッチや外形寸法の変化、反り等による寸法精度の低下や寸法精度のバラツキを抑制させる手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/080565号
【文献】国際公開第2017/082337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によると、シンチレータに用いられる反射層は、高エネルギーのX線を照射し続けることにより、着色し、光出力が低下するといった課題が明らかとなった。特許文献1及び特許文献2ではX線照射による反射層の劣化については検討されていない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、X線照射による反射層の反射率低下が軽減されたシンチレータアレイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ね、反射層の樹脂を硬化する適切な助剤を選択することで、X線照射による反射層の反射率低下が軽減され、X線照射後も高い光出力を維持するシンチレータアレイが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、以下のものを含む。
[1]シンチレータと反射層を有するシンチレータアレイであって、前記反射層は樹脂と、前記樹脂内に分散された反射粒子とを含有し、前記樹脂がカチオン重合開始剤、または
酸無水物硬化剤による硬化物である、シンチレータアレイ。
[2]前記樹脂が、エポキシシリコーン樹脂、水添エポキシ樹脂、ビスフェノール樹脂、および脂環式エポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上である[1]に記載のシンチレータアレイ。
[3]前記樹脂が、酸無水物硬化剤による硬化物である[1]または[2]に記載のシンチレータアレイ。
[4]前記樹脂が、エポキシシリコーン樹脂である[1]~[3]のいずれかに記載のシンチレータアレイ。
[5]前記シンチレータが、GOS蛍光体、CWO蛍光体、CsI蛍光体、およびガーネット系蛍光体からなる群から選択される1種以上を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のシンチレータアレイ。
[6]前記反射粒子が、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、およびシリカからなる群から選択される1種以上を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のシンチレータアレイ。[7]シンチレータが直線状に複数配置され、シンチレータの大きさが各々10mm3以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のシンチレータアレイ。
[8][1]~[7]のいずれかに記載のシンチレータアレイを具備する放射線検出器。[9][8]に記載の放射線検出器を具備する放射線検査装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、X線照射による反射層の反射率低下が軽減され、X線照射後も高い光出力を維持するシンチレータアレイ、放射線検出器、及び放射線検査装置を提供することができる。更に、反り等による変形を抑制し、寸法精度のバラツキを抑制することができるシンチレータアレイ、放射線検出器、及び放射線検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<シンチレータアレイ>
本発明の一実施形態は、シンチレータと反射層を有するシンチレータアレイであって、前記反射層は樹脂と、前記樹脂内に分散された反射粒子とを含有し、前記樹脂がカチオン系開始剤または、酸無水物硬化剤により硬化したものである、シンチレータアレイである。
【0012】
本発明のシンチレータアレイのシンチレータの種類は限定されるものではなく、蛍光体粒子と樹脂のコンポジットでもよいし、焼結体や単結晶であってもよい。シンチレータアレイのシンチレータに含有される蛍光体は、シンチレータ用途で使用可能な蛍光体であれば特に限定されず、Gd2O2Sで表されるGOS蛍光体、CdWO4で表されるCWO蛍光体、CsI(ヨウ化セシウム)蛍光体、GAGG(ガドリニウム・アルミニウム・ガリウム・ガーネット)で表されるガーネット系蛍光体、等があげられる。これらの蛍光体を、放射線の種類や用途に応じて適宜用いることができる。
【0013】
シンチレータアレイの反射層は、樹脂と、前記樹脂内に分散された反射粒子を含有するものである。反射層は、シンチレータの周囲や各シンチレータ間に配置されていることが好ましい。
反射層に用いられる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などがあげられる。より具体的には、(メタ)アクリル樹脂(ポリメタアクリル酸メチルなど)、スチレン樹脂(ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体など)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂(エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートなど)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、水添エポキシ樹脂、エポキシシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂環式樹脂などが例示される。中でも、良好なX線耐性を有するエポキシ基含有の樹脂を用
いることが好ましく、具体的には、エポキシシリコーン樹脂(エポキシ基含有シリコーン)、水添エポキシ樹脂、ビスフェノール樹脂、脂環式エポキシ樹脂が好ましく、X線耐性の観点からエポキシシリコーン樹脂がより好ましい。
【0014】
反射層の樹脂は、エポキシ当量が10~1000が好ましく、50~500がより好ましく、X線耐性の観点から100~300がさらに好ましい。
樹脂の25℃における粘度は特段限定されず、0.01~10000Pa・sが好ましく、0.1~1000Pa・sがより好ましい。エポキシシリコーン樹脂を用いる場合は、0.1~10Pa・s、水添エポキシ樹脂を用いる場合は、10~500Pa・s、ビスフェノール樹脂を用いる場合は、0.3~50Pa・s、脂環式樹脂を用いる場合は、0.05~5Pa・sが反射粒子の分散性の観点から好ましい。
【0015】
樹脂の分子量は特段限定されず、数平均分子量が通常150以上であり、通常1500以下、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下である。
【0016】
反射層中の反射粒子の含有量は、下限は通常1重量%以上であり、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。また、上限は通常95重量%以下であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでもよい。
【0017】
反射粒子としては、特に限定されず、例えば酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、およびシリカ等があげられる。
【0018】
反射粒子のd50重量中央粒径(メジアン径)は特段限定されないが、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、また通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでもよい。平均粒子径は、出力25W、時間60秒の条件で水中に超音波分散させた反射粒子粉をコールターカウンター法で測定した値をいう。
【0019】
反射層は、樹脂を硬化させる助剤として、カチオン重合開始剤または、酸無水物硬化剤を用いて製造されるため、反射層中にカチオン重合開始剤または、酸無水物硬化剤由来の成分を含んでいることが好ましい。
【0020】
カチオン系重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種またはルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン系重合開始剤、または熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤を用いることができる。カチオン重合開始剤としては、例えば、リン系熱重合開始剤、ホウ素系熱重合開始剤、アンチモン系熱重合開始剤が挙げられる。中でもリン系熱重合開始剤が好ましい。分子量は通常50以上、好ましくは80以上、より好ましくは100以上、通常500以下、好ましくは350以下であってよい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでもよい。
【0021】
酸無水物硬化剤としては、例えば、芳香族系酸無水物、脂環式系酸無水物(環状脂肪族系酸無水物)、鎖状脂肪族系酸無水物、ハロゲン化酸無水物が挙げられる。中でも脂環式系酸無水物が好ましい。芳香族系酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。脂環式系酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびメチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。分子量は通常50以上、好ましくは80以上、より好ましくは100以上、通常500以下、好ましくは350以下、より好ましくは250以下であってよい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでもよい。
【0022】
反射層の樹脂を硬化させるために助剤として用いられるカチオン重合開始剤または酸無水物硬化剤の添加量は、主剤の樹脂を100重量部として、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、通常100重量部以下、好ましくは70重量部以下である。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでもよい。
【0023】
助剤にカチオン重合開始剤を用いる場合、主剤の樹脂を100重量部として、10重量部以上100重量部以下であってよく、30重量部以上70重量部以下であってよい。
助剤に酸無水物硬化剤を用いる場合、主剤の樹脂を100重量部として、0.01重量部以上10重量部以下であってよく、0.1重量部以上5重量部以下であってよい。
【0024】
反射層のX線照射前に測定した反射率に対する、X線照射後24時間経過時に測定した反射率(反射維持率(%))は、通常96.5%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは97.5%以上、特に好ましくは98%以上である。
この範囲内であれば、X線照射後も高い光出力を維持するシンチレータアレイが得られる。
【0025】
反射層の製造方法は樹脂を硬化させる際に、カチオン重合開始剤または、酸無水物硬化剤を用いること以外は、特段限定されず、例えば、反射粒子及び樹脂を含有する反射粒子含有組成物を調製する調製工程、及び反射粒子組成物を流し込み、加熱等により硬化させる硬化工程、を含む製造方法により製造することができる。
【0026】
反射粒子含有組成物を調製する調製工程では、原料を混合や混練して、組成物を調製する。この際に、気泡を除去する脱泡処理により、製造した反射層中の空隙を調整することができる。
【0027】
硬化工程は、反射粒子含有組成物を硬化させる工程であり、カチオン重合開始剤または、酸無水物硬化剤を用いる。これらの助剤を用いることにより、X線耐性に優れた反射層を得ることができる。また、シンチレータアレイの反りを抑制する観点から酸無水物硬化剤を用いることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係るシンチレータアレイは、シンチレータを直線状に複数配置することで製造してもよい。また、二次元状に複数配置することで製造してもよい。
【0029】
また、本実施形態に係るシンチレータアレイは、様々な大きさのものを製造することができる。高解像度の画像を得る観点から、シンチレータアレイの各シンチレータのサイズは、10mm3以下が好ましく、2mm3以下が好ましく、1.5mm3以下のものがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態に係るシンチレータアレイのX線照射前に測定した輝度に対する、X線照射後24時間経過時に測定した輝度(輝度維持率(%))は、通常80%以上、好ましくは82%以上、より好ましくは85%以上である。
この範囲内であれば、長期間使用した後も十分な輝度を維持できる。
【0031】
<放射線検出器>
本発明の別の実施形態は放射線検出器である。放射線検出器は、光検出器と、上記シンチレータアレイを備えるものである。
光検出器は、シンチレータアレイに対向して光電変換部を備え、シンチレータアレイで発せられた蛍光を、電気信号等に変換する機能を有する。このような機能を有する限り光検出器は特段限定されず、既知の光検出器を適宜用いることができる。
【0032】
<放射線検査装置>
本発明の別の実施形態は放射線検査装置である。放射線検査装置の一例としては、X線CT装置が挙げられる。X線CT装置としては、被検体にX線を照射するX線照射部と、前記被検体を介して前記X線照射部と対向し、前記被検体を透過した透過X線のうちの前記被検体の内部の検査対象物に応じた特定のエネルギー範囲における前記透過X線の個数を測定するX線測定部(放射線検出器)と、前記X線測定部で測定した前記透過X線の個数に基づいて前記検査対象物の厚さを演算する厚さ演算部と、前記厚さ演算部で演算された前記検査対象物の厚さに基づいてCT画像を再構成する画像再構成部とを備える。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について、実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
<反射層の製造>
シンチレータ反射層の樹脂の主剤として表1に記載の樹脂とd50重量中央粒径(メジアン径)0.3μmの酸化チタンを混練機で混合した後、樹脂の助剤として表1に記載の助剤を、樹脂の主剤100重量部に対し表1に記載の重量部添加し、混練機でよく混合した後、混合物を鋳型に注ぎ、熱硬化させ、10mm×10mm×2mmの反射層1~9を得た。
【0035】
【0036】
シンチレータ反射層1~9に対し、以下の評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0037】
<反射層のX線耐性試験>
X線照射前の反射層の10mm×10mm面の波長531nmの反射率を測定し、次いで反射率測定面にX線を照射し、X線照射後、1時間経過後および24時間経過後の反射率を測定した。
【0038】
X線照射前に測定した反射率に対する、X線照射後24時間経過時に測定した反射率を、反射率維持率(%)として評価した。
評価基準
A:反射率維持率が99%以上
B:反射率維持率が98%以上99%未満
C:反射率維持率が97%以上98%未満
D:反射率維持率が97%未満
【0039】
・X線照射条件
X線発生装置:JOB社製XC-0758R0
出力:75KV-4mA
照射時間:3時間(50kGy)
線源とサンプル間距離:54mm
・反射率の測定
反射率の値は、硫酸バリウム製の標準白板の波長531nmの反射率を100%として、相対値で示した。
分光光度計(日立製U-3310)を用いて、測定波長450~600nm、スキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔1nmの条件で、まず硫酸バリウム白板の表面反射率を測定し、その結果を基準とし、分光光度計を校正した。次に、硫酸バリウム白板をサンプルに入れ替え、同様に測定する。この測定結果の波長531nmの反射率を読みとった。
【0040】
<シンチレータアレイの反り>
シンチレータアレイの反りは、以下の方法で測定した。
100μmの幅の溝を深さ2mmで、2mm×2mmの碁盤目パターンでスリット加工された35mm×20mm×3mmのGOS焼結体のスリット、周囲及び背面を反射層1~9で覆われたシンチレータアレイの中心と端の高さの差を測定し、反りとして算出した。
評価基準
A:反りが50μm未満
B:反りが50μm以上100μm未満
C:反りが100μm以上150μm未満
D:反りが150μm以上
【0041】
【0042】
反射層の樹脂を硬化させる助剤として、カチオン重合開始剤または酸無水物硬化剤を用いた反射層1~6は、反射層のX線耐性が良好であり、特に樹脂としてエポキシ基含有シリコーンを用いた反射層1~2の場合は、よりX線耐性が良好であることが分かった。
また、反射層の樹脂を硬化させる助剤として、酸無水物硬化剤を用いた反射層1、3~5を有するシンチレータアレイは、反りが少なく、特に樹脂としてエポキシ基含有シリコーンを用いた反射層1の場合は、よりシンチレータアレイの反りが少なくなることが分かった。
【0043】
<実施例1~4、比較例1~2>
蛍光体としてGOS:Pr(d50重量中央粒径9μm、20ms残光100ppm以下)粉末を軟鋼カプセルに封入し、温度1300℃、2時間、圧力100MPaにてHIP処理を行い、Gd2O2S:Prの焼結体を得た。得られたGOS焼結体をスリット加工し、GOS焼結体のスリット、GOS焼結体の周囲及び背面を以下表3に記載の反射層で覆った、25mm×2.5mm×1.5mmシンチレータアレイを作成した。反射層の厚みは0.2mmであった。
【0044】
<参考例1>
シンチレータシート(三菱ケミカル株式会社製DRZ-high)を準備した。
【0045】
実施例1~4、比較例1~2及び参考例1のシンチレータに対し、以下の評価試験を行った。その結果を表3に示す。
【0046】
<シンチレータアレイのX線耐性試験>
それぞれのシンチレータアレイの反射膜面(25mm×2.5mm)に耐性試験のためにX線を照射し、X線照射後24時間経過時に、X線照射面の裏側を検出器に当てて、輝度を評価した。
X線照射前に測定した輝度に対する、X線照射後24時間経過時に測定した輝度を、輝度維持率(%)として評価した。
評価基準
A:反射率維持率が85%以上
B:反射率維持率が80%以上85%未満
C:反射率維持率が75%以上80%未満
D:反射率維持率が75%未満
【0047】
・X線照射条件
X線発生装置:JOB社製XC-0758R0
出力:75KV-4mA
照射時間:6時間(100kGy)
線源とサンプル間距離:54mm
【0048】
・輝度測定条件
X線発生装置:JOB社製PORTA 100HF
線量:100kGy
出力:80KV-1.6mAs
線源とサンプル間距離:600mm
ファントム:厚さ75mmの水
検出器:Rayence CMOS Flat Panel Sensor Model 1215A
感度計算用ソフト:ImageJ
【0049】
【0050】
本発明に用いられる反射層1~3及び6を有するシンチレータアレイは、輝度維持率が高く、X線耐性が良好であることが分かった。また、酸無水物系硬化剤を用いた反射層1及び3を有するシンチレータアレイは反りも抑制できることが分かった。