(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】固定具及びパネル状部材の設置構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20240611BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240611BHJP
H02S 20/24 20140101ALI20240611BHJP
【FI】
E04D13/18 ETD
H02S20/23 B
H02S20/24
(21)【出願番号】P 2019231721
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187218
【氏名又は名称】堀 宏光
(72)【発明者】
【氏名】北野 貴寛
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-163794(JP,A)
【文献】特開2011-236590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0237386(US,A1)
【文献】国際公開第2016/024310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
H02S 20/23
H02S 20/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置部に設置される基部と、
前記基部に取り付けられ、パネル状部材を積載する積載部を備えた支持体と、を有し、
前記基部は、前記設置部に取り付けられる平板状の土台部と、前記土台部から立設して前記設置部から離れる方に延びる第1締結部材と、を有し、
前記支持体は、前記第1締結部材を取り付け可能な少なくとも3つの孔部を含む孔群を有し、
前記孔群に含まれる少なくとも3つの孔部は、第1方向において互いに間隔をあけて設けられている、固定具。
【請求項2】
前記孔群は、前記第1方向に実質的に等間隔に並んだ3つの前記孔部を有する、請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記基部は、前記設置部に取り付けられる土台部を有し、
前記孔群に含まれる前記孔部のうち前記第1方向における両端に位置する2つの孔部どうしの間の距離が、前記第1方向に沿った前記土台部の、前記設置部に当接する部分の長さよりも長い、請求項1又は2に記載の固定具。
【請求項4】
前記設置部は、前記固定具の設置が推奨される推奨領域と、前記固定具の設置が推奨されない非推奨領域と、を含み、
前記少なくとも3つの孔部のうち前記第1方向における両端に位置する孔部どうしの間隔は、前記第1方向における前記非推奨領域の長さ以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の固定具。
【請求項5】
前記支持体は、前記孔群を有する第1支持部材と、前記積載部を備えた第2支持部材と、を有し、
前記第1支持部材と前記第2支持部材は、第2締結部材によって互いに締結されており、
前記第1支持部材は、前記第2締結部材を通す穴部を有し、
前記穴部は、前記第1方向において、前記孔群に含まれる前記孔部のうちの両端に位置する孔部よりも内側に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の固定具。
【請求項6】
前記穴部は、前記孔群に含まれる前記孔部のうち前記第1方向における両端に位置する孔部よりも、前記孔群に含まれる前記孔部のうち前記第1方向における両端よりも内側に位置する孔部に近い位置に設けられている、請求項5に記載の固定具。
【請求項7】
前記第1方向における前記第1支持部材の長さは、前記第1方向に沿った前記パネル状部材の長さ以上であり、
前記第1支持部材は、前記第1方向における前記第1支持部材の両端領域に一対の前記孔群を有し、
前記第1支持部材は、一対の前記孔群によって一対の前記基部に取り付け可能に構成されている、請求項
5又は6に記載の固定具。
【請求項8】
前記積載部に積載された前記パネル状部材を下方に押さえるフランジ部を有する締め具を有し、
前記第2支持部材は、前記第1方向に互いに隣接する前記パネル状部材を積載する一対の前記積載部を有し、
前記締め具は、一対の前記積載部に対向する一対の前記フランジ部を有する、請求項
5から7のいずれか1項に記載の固定具。
【請求項9】
前記締め具は、一対の前記フランジ部どうしの間に、前記締め具を前記支持体に締結させる第3締結部材が取り付けられる底部を有し、
前記締め具の前記底部の底面は、一対の前記フランジ部のうちの一方が一対の前記フランジ部の他方よりも下方に傾斜するよう、段差を有する、請求項8に記載の固定具。
【請求項10】
前記土台部を覆うシートを有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の固定具。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の複数の固定具と、
前記複数の固定具により固定された複数のパネル状部材と、を含む、パネル状部材の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池モジュールのようなパネル状部材用の固定具、及び当該固定具を含むパネル状部材の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建造物の屋根等に設置される太陽電池モジュールのようなパネル状部材が知られている。このようなパネル状部材は、設置される屋根の種類に応じた適切な固定具によって設置部に固定される。
【0003】
特許文献1は、陸屋根の上面に太陽電池モジュールを設置するための支持具を開示する。支持具は、陸屋根の上面上に固定される被固定部と、この被固定部上に設けられるとともにモジュール係止具を取付可能な被取付部と、を有する。被固定部は、平面視で円板形状を有するアンカーディスクと、このアンカーディスクの中心から垂直に立設されたアンカーボルトと、を有する。被取付部は、このアンカーボルトに取り付けられる。被取付部に取り付けられたモジュール係止具は、太陽電池モジュールの端辺に沿って延びており、太陽電池モジュールの端辺を係止している。一対のモジュール係止具が、太陽電池モジュールの互いに対向する両辺を保持している。前述したアンカーディスクは、複数のビスにより陸屋根の上面に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば軽量気泡コンクリート(ALC)の下地材を含む陸屋根では、複数の下地材が、一列又は複数列に並んで配置されることがある。この場合、互いに隣接する下地材は、互いに重なり合わず、互いに接して配置されるか、互いに間隔をあけて配置される。
【0006】
本願の発明者は、このような下地材を有する設置部上に、太陽電池モジュールのようなパネル状部材を固定する際に、以下のような課題を見出した。まず、固定具の固定強度等の観点から、パネル状部材を支持する固定具は、下地材どうしの境界又は間隔のところを避けて設置されることが望ましい。したがって、固定具、例えば特許文献1に記載の被固定部(アンカーディスク)の設置位置に制約が生じる。この制約により、パネル状部材の設置位置にも制約が生じることになる。
【0007】
一方、複数のパネル状部材を密に配列するという観点からは、固定具の設置可能位置に合わせてパネル状部材の設置位置を決定するのではなく、パネル状部材の設置位置に合わせて固定具が設置可能であることが望ましい。
【0008】
したがって、パネル状部材の設置位置に合わせて設置可能な固定具、及びパネル状部材の設置構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係る固定具は、設置部に設置される基部と、前記基部に取り付けられ、パネル状部材を積載する積載部を備えた支持体と、を有する。前記基部は、前記設置部から離れる方に延びる第1締結部材を有する。前記支持体は、前記第1締結部材を取り付け可能な少なくとも3つの孔部を含む孔群を有する。前記孔群に含まれる少なくとも3つの孔部は、第1方向において互いに間隔をあけて設けられている。
【0010】
一態様に係るパネル状部材の設置構造は、複数の前述の固定具と、当該複数の固定具により固定された複数のパネル状部材と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、パネル状部材の設置位置に合わせて設置可能な固定具、及びパネル状部材の設置構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】パネル状部材の設置構造を示す模式的平面図である。
【
図2】
図1の矢印2A方向から見たパネル状部材の設置構造の側面図である。
【
図6】
図4の領域6Aの部分における固定具の分解斜視図である。
【
図8】固定具の位置と固定具の設置が推奨される推奨領域との関係を示す模式図である。
【
図9】固定具の位置と固定具の設置が推奨される推奨領域との関係を示す模式図である。
【
図10】固定具の位置と固定具の設置が推奨される推奨領域との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実6のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0014】
図1は、パネル状部材の設置構造を示す模式的平面図である。
図2は、
図1の矢印2A方向から見たパネル状部材の設置構造の側面図である。
図3は、
図2の領域3Aの拡大図である。
【0015】
パネル状部材の設置構造は、少なくとも1つのパネル状部材10と、複数の固定具100と、を有していてよい。各々のパネル状部材10は、例えば太陽電池モジュールであってよい。パネル状部材10は、建造物の屋根のような設置部50に設置されていてよい。
【0016】
本実施形態では、一例として、パネル状部材10は、略平坦な設置部50に設置されている。そのような設置部50として、例えば陸屋根がある。陸屋根は、例えばACLのような複数の下地材52が、一列又は複数列に並んで配列されている。複数の下地材52は、間隔を開けて配列されていてよい(
図1参照)。なお、複数の下地材52上にはシートが設けられていてもよい。
【0017】
図1に示す例では、パネル状部材の設置構造は、横方向(以下、「第1方向」と称することもある。)に並んだ複数のパネル状部材10を含む。この設置構造は、
図1に示す例に限定されず、1つのパネル状部材10のみを含んでいてもよい。なお、以下において、縦方向に直交し、かつ設置部の上面に平行な方向を「縦方向」と称することがある。
【0018】
各々のパネル状部材10は、固定具100によって設置部50に固定されている。
図1に示すように、各々のパネル状部材10は、複数の固定具100によって固定されていてよい。
【0019】
パネル状部材10は、パネル部12及びフレーム部14を有していてよい。パネル状部材10が太陽電池モジュールである場合、パネル部12は、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換パネルに相当し、フレーム部14は光電変換パネルの周囲に設けられた枠に相当する。
【0020】
図4は、一実施形態に係る固定具の斜視図である。
図5は、
図4の領域5Aの部分の拡大図である。
図6は、
図4の領域6Aの部分における固定具の分解斜視図である。
図7は、固定具を構成する基部の分解斜視図である。なお、
図5では、便宜上、後述する積載部370上に、1つのパネル状部材10の端部が取り付けれている様子が示されている。
【0021】
固定具100は、設置部50に設置される基部200と、支持体300と、締め具500と、を有していてよい。基部200は、設置部50に取り付けられる土台部210と、設置部50から離れる方に延びる第1締結部材290と、を有していてよい。第1締結部材290は、土台部210から上方に立設している。
【0022】
本実施形態では、基部200は、平板状の第1ディスク212と、平板状の第2ディスク214と、シート216と、を有していてよい(
図7参照)。シート216は、土台部210と、第1ディスク212及び第2ディスク214との間に設けられていてよい。シート216は、上方から見て、土台部210よりも大きくてよい。すなわち、シート216は、土台部210を覆っていてよい。第1締結部材290は、土台部210から、シート216、第1ディスク212及び第2ディスク214を通って、上方に延びている。
【0023】
土台部210には、設置部50に固定するための締結部材900を取り付けるための孔部215が設けられている。締結部材900は、孔部215を通って設置部50に達する。締結部材900は、例えばビス、釘、又はボルトのような部材であってよい。基部200の土台部210は、締結部材900により設置部50に取り付ける。
【0024】
支持体300は、基部200に取り付けられ、パネル状部材10を積載する積載部370を備えている。支持体300は、第1締結部材290を取り付け可能な少なくとも3つの孔部314を含む孔群312を有する。
【0025】
具体的には、支持体300は、第1支持部材310と、第2支持部材350と、を有していてよい。本実施形態では、第1支持部材310は、横方向に延びていてよい。横方向における第1支持部材310の長さは、横方向に沿ったパネル状部材10の長さ以上であってよい。各々の第1支持部材310は、一対の基部200によって設置部50に取り付けられる。
【0026】
第1支持部材310は、横方向から見て、略H字型の形状を有していてよい(
図5参照)。具体的には、第1支持部材310は、横方向に延びた固定板311と、横方向に直交する縦方向における固定板311の両端で高さ方向に延びた一対の側部320と、を有していてよい。略H字型の形状は、この固定板311と一対の側部320により構成されている。
【0027】
第1支持部材310は、上部330及び下部340を有していてよい。上部330は、一対の側部320の上部から縦方向に突出した部分により構成されている。下部340は、一対の側部320の下部から縦方向に突出した部分により構成されている。上部330及び下部340は、固定板311と同様に横方向に延びていてよい。
【0028】
各々の第1支持部材310は、ある基部200の土台部210から上方に延びた第1締結部材290を取り付け可能な少なくとも3つの孔部314を含む孔群312を有していてよい。孔群312は、第1支持部材310の固定板311に設けられていてよい。
【0029】
本実施形態では、第1支持部材310は、横方向における第1支持部材310の両端領域に一対の孔群312を有している。本実施形態では、第1支持部材310は、第1支持部材310の両端領域に設けられた一対の孔群312によって一対の基部200に取り付け可能に構成されている。それぞれの孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314は、横方向において互いに間隔をあけて設けられている(
図6参照)。好ましくは、孔群312は、横方向に実質的に等間隔に並んだ3つの孔部314を有する。
【0030】
具体的には、基部200の土台部210から上方に延びた第1締結部材290は、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうちのいずれか1つに選択的に挿通される。第1締結部材290は、第1支持部材310の固定板311の上方にまで達しており、固定板311の上部でナット292のような部材により締結される。これにより、第1支持部材310は、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうちのいずれか1つを用いて、第1締結部材290によって基部200に固定される。ここで、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうち横方向における両端より内側に位置する孔部314は、基部200との固定に対して通常使用されるものであってよい。
【0031】
第2支持部材350は、第1支持部材310の上部330に当接する底部360を有していてよい。すなわち、第2支持部材350は、第1支持部材310の上部330に支えられる。
【0032】
第2支持部材350は、第2締結部材600によって、第1支持部材310、具体的には第1支持部材310の上部330に取り付けられていてよい。具体的には、第1支持部材310の上部330は、第2締結部材600を通す穴部334を有する。また、第2支持部材350の底部360は、第2締結部材600を通す穴部364を有する。第2支持部材350の底部360に設けられた穴部364は、第1支持部材310の上部330に設けられた孔部334と同じ位置にある。したがって、第2締結部材600は、穴部334及び穴部364を通っており、第1支持部材310と第2支持部材350とを互いに締結する。これにより、第1支持部材310に関する第2支持部材350の位置は所定の位置に固定される。
【0033】
好ましくは、第2支持部材350は、横方向において、孔群312に含まれる孔部314のうちの両端に位置する孔部314よりも内側で、第1支持部材310に取り付けられる。言い換えると、第2締結部材600を通す穴部334は、横方向において孔群312に含まれる孔部314のうちの両端よりも内側に設けられる。この場合、孔群312に含まれる孔部314のうち横方向における両端よりも内側に位置する孔部314に基部200を取り付けた場合、基部200は、第2支持部材350から受ける荷重を近い位置で支えることができる。したがって、パネル状部材の設置構造が安定し易い。
【0034】
より好ましくは、穴部334は、孔群312に含まれる孔部314のうち横方向における両端に位置する孔部よりも、孔群312に含まれる孔部314のうち横方向における両端よりも内側に位置する孔部314に近い位置に設けられる。さらに好ましくは、孔群312は3つの孔部314を有しており、かつ第2締結部材600を通す穴部334は、縦方向(横方向に直交する方向)から見て、3つの孔部314のうち横方向における中央に位置する孔部314に重なる位置に設けられる。すなわち、3つの孔部314のうち横方向における中央に位置する孔部314は、上方から見て、一対の穴部334どうしの間に位置していてよい。この場合、孔群312に含まれる孔部314のうち横方向における中央の孔部314に基部200を取り付けたときに、パネル状部材の設置構造がより安定し易くなる。
【0035】
第2支持部材350は、パネル状部材10の端部を下方から支える積載部370を有する。好ましくは、第2支持部材350は、横方向に互いに隣接するパネル状部材10の端部を下方から支える一対の積載部370を有する。一対の積載部370は、底部360よりも上方に位置し、第2支持部材350の上部により構成されていてよい。
【0036】
第2支持部材350は、第3締結部材700が取り付けられる溝部380を有していてよい。第3締結部材700は、締め具500を第2支持部材350に取り付けるために用いられる。
【0037】
溝部380は、第2支持部材350の積載部370を構成する板に設けられていてよい。第3締結部材700は、溝部380の内部から第2支持部材350の上方に向かって延びていてよい。
【0038】
第3締結部材700は、ボルトとナットのような部材により構成されていてよい。この場合、ボルトの頭部の径は、ボルトの芯部(ねじ部)の径よりも大きい。これにより、溝部380がボルトの頭部を収容しつつ、ボルトの芯部が溝部380から突出している。
【0039】
溝部380は、横方向に延びていてよい。一例として、溝部380は、横方向における第2支持部材350の一端から他端まで延びていてよい。これにより、第3締結部材700を緩めた状態で、第3締結部材700は、後述する締め具500とともに、第2支持部材350に関して横方向にスライド可能に構成される。これにより、パネル状部材10へ締め具500を取り付け易くすることができる。
【0040】
本実施形態では、第2支持部材350の縦方向における端部が、積載部370から下方に曲げられ、積載部370よりも下方に位置する板部390を構成する。板部390には、結束バンドのような不図示の紐部材を通す孔部392が設けられていてよい。ここで、パネル状部材10が太陽電池モジュールである場合、パネル状部材10には配線が連結されている。この配線は、孔部392に通された紐部材によって板部390のところに括り付けることができる。
【0041】
締め具500は、積載部370上に置かれたパネル状部材10の端部、例えばフレーム部14を、上方から下方へ押圧するよう構成されている。本実施形態では、締め具500は、底部510と、底部510から立設する一対の側部520と、一対の側部520の上部から側方に突出するフランジ部530と、を有していてよい。
【0042】
本実施形態では、締め具500は、縦方向から見て略U字型の形状を有する。具体的には、底部510と一対の側部520とによって略U字型の形状が形成されている。
【0043】
第3締結部材700は、締め具500の底部510を貫通して、底部510より上方に延びている。第3締結部材700は、締め具500の底部510上側で例えばナット720により締め具500に取り付けられる。
【0044】
締め具500のフランジ部530は、第2支持部材350の積載部370に対向して配置される。一対のフランジ部530が、横方向に並んで設けられている。フランジ部530は、積載部370に置かれたパネル状部材10の端部、具体的にはフレーム部14の上部を下方に押さえる(
図3も参照)。また、一対の側部520は、積載部370に置かれたパネル状部材10の端部、具体的にはフレーム部14の側部と当接していてよい。
【0045】
本実施形態では、締め具500の底部510は、上方から見て、一対のフランジ部530どうしの間に位置している。また、締め具500の底部510の下面は、一対のフランジ部530のうちの一方が、一対のフランジ部530の他方よりも下方に傾斜するよう段差518を有することが好ましい(
図5及び
図6参照)。より具体的には、締め具500の一対の側部520のうちの一方が、一対の側部520のうちの他方よりもより下方に突出しており、これにより締め具500の底部510の下面に段差518が構成されている。
【0046】
締め具500が第3締結部材700により、支持体300、具体的には第2支持部材350に締結されると、締め具500は、段差518によって、一方のフランジ部530が他方のフランジ部530よりも下方に向かうよう傾斜しようとする。したがって、互いに隣接するパネル状部材10のうちの一方がフランジ部530によってより強く押圧されることになる。
【0047】
この場合、互いに隣接するパネル状部材10の一方の端部に締め具500を取り付けた後に、互いに隣接するパネル状部材10の他方の端部を、締め具500のフランジ部530と積載部370との間に挿入し易くなる。すなわち、パネル状部材10の施工時には、まず、より強く押圧することができる方のフランジ部530を利用して一方のパネル状部材10の端部に締め具500を取り付け、それからもう一方のフランジ部530と積載部370との間に別のパネル状部材10の端部に挿入すればよい。これにより、複数のパネル状部材10を一方向に順番に設置し易くなる。また、複数のパネル状部材10を取り外す際には、逆方向から順番に取り外し易くなる。
【0048】
前述した固定具100では、支持体300に基部200を取り付けるための孔群312は、横方向に間隔をあけて配置された少なくとも3つの孔部314を有する。したがって、基部200は、支持体300、具体的に第1支持部材310に関して、横方向において少なくとも3か所のうちのいずれか1か所に取り付けることができる。そのため、少なくとも3つの孔部314のうちの中央の孔部314に基部200を取り付けると、基部200、特に土台部210が、例えば設置部50を構成する下地材52どうしの境界又は間隔に位置する場合には、基部200を別の孔部314に取り付ければよい。これにより、基部200、特に土台部210を、屋根材52どうしの境界又は間隔から避けて設置することができる。特に、土台部210が締結部材900によって設置部50に固定される場合には、下地材52どうしの境界又は間隔から避けて締結部材900を下地材52に刺すことが可能になる。
【0049】
好ましくは、孔群312に含まれる孔部314のうち横方向における両端に位置する2つの孔部312どうしの間の距離L1が、横方向に沿った土台部210の長さL2よりも長い。この場合、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のいずれかを利用することにより、土台部210全体を下地材52どうしの境界又は間隔から避けて配置することができる。
【0050】
次に、
図8、
図9及び
図10を参照して、より好ましい態様について説明する。
図8、
図9及び
図10は、固定具の位置と固定具の設置が推奨される推奨領域との関係を示す模式図である。
【0051】
例えばALCのような下地材52は、一般に、固定具の設置が推奨される推奨領域(
図8~10の塗りつぶしの領域)R1と、固定具の設置が推奨されない非推奨領域R2と、を含む。具体的には、各々の下地材52の端から所定の幅Wの領域は、下地材52の破損防止等の観点から、固定具の設置が推奨されない非推奨領域R2となる。この所定の幅W、言い換えると推奨領域R1及び非推奨領域R2の大きさは、一般に、下地材52ごとに製造会社により定められている。
【0052】
好ましい態様では、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうち横方向における両端に位置する孔部314どうしの間隔L1は、横方向における非推奨領域R2の長さL3以上である。この場合、少なくとも3つの孔部314のうちのいずれか孔部314を利用して、支持体300に固定する基部200を推奨領域R1内に位置させることができる。
【0053】
ここで、横方向における非推奨領域R2の長さL3は、前述したように下地材52等に応じて変わるが、例えば100mm~300mmの範囲内であることが多い。この場合、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうち横方向における両端に位置する孔部314どうしの間隔L1は、例えば50mm~150mmの範囲内であることが好ましい。
【0054】
例えば、
図8に示すように、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうち横方向における中央の孔部314が推奨領域R1内に位置していれば、当該中央の孔部314を用いて第1支持部材310に基部200を固定すればよい。
【0055】
図9に示すように、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうち横方向における一端の孔部314が推奨領域R1内に位置していれば、当該一端の孔部314を用いて第1支持部材310に基部200を固定すればよい。
【0056】
また、
図10に示すように、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうち横方向における別の一端の孔部314が推奨領域R1内に位置していれば、当該別の一端の孔部314を用いて第1支持部材310に基部200を固定すればよい。
【0057】
なお、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314の全てが推奨領域R1内に位置していれば、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうち横方向における中央の孔部314を用いて第1支持部材310に基部200を固定することが好ましい。この場合、前述したように、第2支持部材350の荷重がかかる位置に近接する位置に基部200が配置されるため、パネル状部材の設置構造が安定し易い。
【0058】
また、前述したように、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうちの中央の孔部314を挟んで両側に孔部314が設けられている。この場合、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうち横方向における両端に位置する孔部314どうしの間隔L1を大きくしつつも、第1支持部材310に対する第2支持部材350の設置位置と、孔群312に含まれる少なくとも3つの孔部314のうちの両端の孔部314との距離をなるべく短くすることができる。これにより、両端の孔部314を用いて第1支持部材310に基部200を取り付けた場合であっても、パネル状部材の設置構造を比較的安定化させることができる。
【0059】
次に、
図1及び
図2を参照し、パネル状部材10と固定具100の好ましい配置の一例について説明する。前述したように、パネル状部材10は横方向に複数配置されていてよい。各々のパネル状部材10の横方向における両端部が、第2支持部材350の積載部370と締め具500のフランジ部530との間に挟まれている。この場合、第1支持部材310は、あるパネル状部材10の下に配置されており、別のパネル状部材10の下には配置されていなくてよい。具体的には、第1支持部材310は、横方向において1つおきに配置されたパネル状部材10の下に配置されている。
【0060】
この場合、直下に第1支持部材310が配置されていないパネル状部材10は、それに隣接するパネル状部材10の直下に配置された第1支持部材310に取り付けられた第2支持部材350の積載部370上に積載される。
【0061】
第1支持部材310がすべてのパネル状部材10の直下に配置されるわけではないため、設置部50にかかる負荷を抑制することができる。さらに、第1支持部材310どうしの干渉を抑制することができるため、横方向におけるパネル状部材10どうしの間の間隔を最小限に狭くすることができる。すなわち、横方向におけるパネル状部材10どうしの間の間隔は、締め具500の一対の側部520どうしの間の距離と同程度にできる。
【0062】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0063】
例えば、前述した実施形態では、支持体300は、互いに分離可能な第1支持部材310と第2支持部材350とを含んでいる。この代わりに、第1支持部材310と第2支持部材350は一体不可分に構成されていてもよい。
【0064】
また、前述した実施形態では、第1支持部材310は、横方向において長く構成されている。この代わりに、第1支持部材310は、基部200に対して局所的に設けられていてもよい。この場合、1つの基部200に対して1つの第1支持部材310が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0065】
10 パネル状部材
50 設置部
100 固定具
200 基部
210 土台部
290 第1締結部材
300 支持体
310 第1支持部材
312 孔群
314 孔部
350 第2支持部材
370 積載部
500 締め具
510 底部
518 段差
530 フランジ部
600 第2締結部材
700 第3締結部材