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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240611BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240611BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240611BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
C23C16/455
C23C16/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020015968
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2020167380
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】62/825441
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐樹
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/041283(WO,A1)
【文献】特開2003-017414(JP,A)
【文献】特開平10-237658(JP,A)
【文献】特開平07-135180(JP,A)
【文献】特開2016-149526(JP,A)
【文献】特表2010-517296(JP,A)
【文献】特開平11-260810(JP,A)
【文献】特開2006-222468(JP,A)
【文献】特開2005-056994(JP,A)
【文献】特開2003-188145(JP,A)
【文献】特開2002-246371(JP,A)
【文献】特開2002-110661(JP,A)
【文献】特開2002-100622(JP,A)
【文献】特開2002-100500(JP,A)
【文献】特開2002-056999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
C23C 16/455
C23C 16/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サセプタと、
前記サセプタを支持するシャフトと、
前記サセプタの側面との間に間隙を設けつつ前記サセプタを囲むフローコントロールリングと、
前記フローコントロールリングの直上にある排気ダクトと、
前記サセプタの上方にあるプレートと、
前記サセプタ、前記フローコントロールリング、前記排気ダクト及び前記プレートを囲むチャンバと、
前記シャフトを前記チャンバにつなぎ、少なくとも一部が絶縁体である接続部と、を備え
前記プレートは、前記サセプタの直上にある内側プレートと、前記内側プレートを囲み前記フローコントロールリングの直上にある外側プレートと、を有し、
前記内側プレートは絶縁体であり、前記外側プレートは金属であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記接続部は、前記シャフトにつながり前記シャフトよりも幅が大きく前記チャンバの外に位置する幅広部と、前記チャンバのうち前記シャフトを囲む部分である包囲部と前記幅広部との間に設けられたベローズと、を有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記絶縁体は、石英、アルミナ又はフッ素含有樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記プレートから、前記サセプタ、前記シャフト及び前記接続部を経由して、前記チャンバに至る経路の合成インピーダンスを500Ω以上としたことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記絶縁体は、前記シャフトを囲み、前記チャンバと前記シャフトの間に位置することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma(CCP))はプラズマ処理で広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8262923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、装置内で寄生容量が発生し、意図しないところに電圧がかかり得る。そのような意図しない電圧の印加は電力損失の原因となる。例えばベベルの周囲以外の部分に強い電界が生じると、プラズマの均一性が悪くなったり、ベベルのエッチレートが低下したりする。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、基板の一部に対してプラズマ処理を施す基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明に係る基板処理装置は、サセプタと、該サセプタを支持するシャフトと、該サセプタの側面との間に間隙を設けつつ該サセプタを囲むフローコントロールリングと、該フローコントロールリングの直上にある排気ダクトと、該サセプタの上方にあるプレートと、該サセプタ、該フローコントロールリング、該排気ダクト及び該プレートを囲むチャンバと、該シャフトを該チャンバにつなぎ、少なくとも一部が絶縁体である接続部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板の一部に対してプラズマ処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】基板処理装置の構成例を示す図である。
図2】包囲部の拡大図である。
図3図3Aは電気接続の例を示す回路図である。図3Bは電気接続の別の例を示す回路図である。
図4】電磁界シミュレーション結果を示す図である。
図5】別の電磁界シミュレーション結果を示す図である。
図6】別の例に係る基板処理装置の断面図である。
図7】さらに別の例に係る基板処理装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
基板処理装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態.
図1は、基板処理装置10の構成例を示す図である。この基板処理装置10は基板のベベル処理装置として提供し得る。ベベル処理は、ベベルのエッチング、ベベルの成膜、ベベルの膜の改質を含む。この基板処理装置10は、接地電極として機能するチャンバ12を備えている。チャンバ12の材料は金属である。チャンバ12の中で、処理対象となる基板はサセプタ14にのせられる。サセプタ14は、基板よりも小さい形状を有することで、ベベルがサセプタ14から突出する。つまりベベルの全体が露出する。サセプタ14の材料は例えばAl又はTiである。
【0012】
サセプタ14はシャフト16によって支持されている。一例によれば、シャフト16につながりシャフト16よりも幅が大きい幅広部18が提供される。幅広部18はチャンバ12の外に位置させ得る。チャンバ12のうちシャフト16を囲む部分は包囲部12aという。包囲部12aと幅広部18との間にベローズ20が設けられている。このベローズ20が外部からの力で伸縮することで、サセプタ14を昇降させ得る。
【0013】
図2は、包囲部12aとその近傍の拡大図である。ベローズ20はチャンバ12内の真空を保つ。
【0014】
幅広部18とベローズ20は、シャフト16をチャンバ12につなぐ接続部として機能する。例えば、この接続部の少なくとも一部を絶縁体とすることができる。一例によれば幅広部18を絶縁体とすることができる。別の例によればベローズ20を絶縁体とすることができる。そのような絶縁体の材料は、誘電率が10未満の低誘電率材料とすることができる。例えば絶縁体は、石英、アルミナ又はフッ素含有樹脂である。幅広部18とベローズ20は接続部の一例である。別の例では、サセプタ14を昇降可能としつつ、シャフト16をチャンバ12につなぐ、任意の構成の接続部を提供し得る。
【0015】
図3A図3Bは、チャンバ12とシャフト16の間の電気的接続態様の一例を示す回路図である。包囲部12aとシャフト16を離すことでキャパシタC1が生じる。シャフト16とチャンバ12を接続部でつなぐことで接触抵抗などに起因する第1抵抗R1が生じる。図3AはキャパシタC1と第1抵抗R1を含む回路図である。図3Bは接続部の少なくとも一部が絶縁体である場合の回路図である。
【0016】
このように、包囲部12aとシャフト16を離し、接続部の少なくとも一部を絶縁体にすることで、サセプタ14をフローティングとすることができる。いいかえれば、サセプタ14とチャンバ12の間のインピーダンスを十分高くすることで、サセプタ14はチャンバ12と電気的に接しない。
【0017】
図1の構成の説明に戻る。サセプタ14の横にはフローコントロールリング(FCR)30が設けられている。FCR30は、サセプタ14の側面との間に間隙を設けつつサセプタ14を囲む。FCR30は例えばAl又はTiなどの金属とすることができる。一例によれば、FCR30の下面がチャンバ12に接することで、FCR30は接地させる。
【0018】
FCR30の直上には排気ダクト32がある。排気ダクト32は、FCR30と同様、平面視で環状に形成され得る。排気ダクト32は、プロセスに用いられたガスをチャンバ12の外部に排気する流路を提供する。排気ダクト32の材料は例えばセラミック又はアルミナとし得る。
【0019】
排気ダクト32の上には外側プレート40が乗せられている。外側プレート40の上には内側プレート42が乗せられている。一例によれば、外側プレート40は内側プレート42を囲みFCR30の直上にある。一例によれば、内側プレート42はサセプタ14の直上にある。内側プレート42の中央には貫通穴を設けることができる。外側プレート40と内側プレート42をまとめてプレートということがある。
【0020】
外側プレート40と内側プレート42が1つのプレートを構成している。これらは分離可能としてもよいし、一体不可分としてよい。例えば、内側プレート42は絶縁体であり、外側プレート40は金属である。内側プレート42は低誘電率材料とすることができる。低誘電率材料とは、例えば石英、アルミナ又はフッ素含有樹脂である。外側プレート40は高周波を印加する電極とすることができる。
【0021】
チャンバ12は、サセプタ14、FCR30、排気ダクト32、外側プレート40及び内側プレート42を囲む。チャンバ12の外部にはガス源50、52が提供されている。一例によれば、ガス源50は内側プレート42の貫通孔に不活性ガスを供給することで、内側プレート42とサセプタ14の間に平面視で放射状のガス流を生じさせる。このガス流は内側プレート42とサセプタ14の間に有意なプラズマが生じることを抑制する。また、ガス源52は、サセプタ14とFCR30の間に下側から反応ガスを供給する。反応ガスの供給によって、基板のベベル近傍のエッチングを可能とする。
【0022】
このようなガス流は一例である。別の例によれば、ベベル近傍にプラズマの生成を可能とするガスを供給し得るあらゆるガス源とガス流を採用し得る。したがって、ガスは基板の上側から提供してもよいし、基板の下側から提供してもよい。
【0023】
図4は、サセプタをフローティングとしたモデルにおける電磁界シミュレーション結果を示す図である。赤い部分で電界強度が高く、青い部分は電界強度が低い。このシミュレーションでは基板処理装置に基板を設けるモデルを採用した。外側プレート40に高周波電力を印加すると、外側プレート40とFCR30のあいだの空間における電界強度を高めることができる。他方、サセプタ14をフローティングとしたので、サセプタ14へのRFロスが減り、サセプタ14と内側プレート42の間の電界強度を抑制できる。内側プレート42を低誘電率材料としたことも、サセプタ14と内側プレート42の間の電界強度の抑制に貢献する。プレートから、サセプタ14、シャフト及び接続部を経由して、チャンバ12に至る経路の合成インピーダンスを500Ω以上とすることは、異常放電の抑制に貢献する。
【0024】
図5は、図4のモデルを基本としつつ、内側プレート42を金属とし、サセプタ14を接地された金属とした場合における電磁界シミュレーション結果を示す図である。この場合、内側プレート42とサセプタ14の間に強い電界が発生しているので、異常放電が懸念される。
【0025】
このように、プラズマの生成を意図しない部分においてインピーダンスを高めるハード構成を採用することで、電界強度を緩和し、プラズマを生成したいエリアに効率良くRFを給電する。電界強度の緩和の方法としては、低誘電率材料を用いることと、該当部分をフローティング電位とすることを挙げた。図1-3の構成は例示であり、図1-3とは異なる構成の基板処理装置についても、同様の考え方で、異常放電を抑制し安定した放電を得る事ができる。
【0026】
図6は別の例に係る基板処理装置の断面図である。この例では、サセプタ14をフローティングにするために、包囲部12aを絶縁体で構成した。包囲部12aは例えば石英、アルミナ又はフッ素含有樹脂である。この場合、包囲部12aは金属のチャンバ12とは区別される。包囲部12aを低誘電率材料とすることは、金属のチャンバ12とシャフト16の電気距離を増大させるとともに、金属のチャンバ12とシャフト16を電気的に絶縁することを可能とする。よって、サセプタ14を経由してチャンバ12に至る経路のインピーダンスをさらに高めることができる。
【0027】
図7は、さらに別の例に係る基板処理装置の断面図である。FCR30は、チャンバ12に接する金属部分30aと、排気ダクト32の直下にある絶縁体部分30bと、を有する。一例によれば、FCR30の上面には金属部分30aと絶縁体部分30bが露出し、FCR30の下面には金属部分30aだけが露出する。FCR30の上面は、排気ダクト32に向かうガス流を妨げないように、平面とし得る。例えば、絶縁体部分30bは石英、アルミナ又はフッ素含有樹脂である。
【0028】
排気ダクト32は絶縁体である。排気ダクト32の材料は例えば石英、アルミナ又はフッ素含有樹脂である。
【0029】
外側プレート40とFCR30を低いインピーダンスで結合することで、この経路に効率的に高周波エネルギが提供される。しかし、FCR30と排気ダクト32の間に高い電界が生じるとこの部分に濃度の高いプラズマが生じてしまう。そこで、上述のとおり、FCR30に絶縁体部分30bを設けることで、外側プレート40とFCR30を低いインピーダンスで結合しつつ、排気ダクト32とFCR30のインピーダンスを高めることができる。これにより、排気ダクト32の直下における放電を抑制し得る。
【0030】
プレートがサセプタ14とFCR30の上方にある場合、以下のインピーダンスを定義することができる。
(1)プレートとサセプタ14をとおる経路のインピーダンスである第1インピーダンス
(2)プレートとFCR30をとおる経路のインピーダンスである第2インピーダンス
(3)排気ダクト32をとおる経路のインピーダンスである第3インピーダンス
一例によれば、第1~第3インピーダンスのうち第2インピーダンスを最小にし得る。これにより、外側プレート40とFCR30の間に局所的なプラズマを生じさせて基板のベベルにプラズマ処理を施すことができる。
【0031】
例えば、内側プレート42とサセプタ14の間の距離をd、内側プレート42とサセプタ14が対向する面積をS、内側プレート42とサセプタ14の間にある物質の誘電率をε、外側プレート40に印加するプラズマ励起周波数をfとしたときの第1インピーダンスd/2πfεを50Ωより大きくすることができる。これを実現するためには、例えば内側プレート42として石英などを採用したり、d1、S1を調整したりする。なお、fは13.56MHzであり、εを空気の誘電率であるとした場合にはd/Sを0.3777より大きくする。
【0032】
例えば、排気ダクト32とFCR30の間の距離をd、排気ダクト32とFCR30が対向する面積をS、排気ダクト32とFCR30の間にある物質の誘電率をε、外側プレート40に印加するプラズマ励起周波数をfとしたときの第3インピーダンスd/2πfεを50Ωより大きくすることができる。これを実現するためには、例えば排気ダクト32として石英を採用したり、d、Sを調整したり、図7の絶縁体部分30bとして石英を採用したりする。なお、fは13.56MHzであり、εを空気の誘電率であるとした場合にはd/Sを0.3777より大きくする。排気ダクト32とチャンバ12をとおる経路のインピーダンスである別の第3インピーダンスは、50Ωより大きくすることができる。
【0033】
別の例によれば、d/2πfεは500Ωより大きくし、d/2πfεを500Ωより大きくし、別の第3インピーダンスを500Ωより大きくすることができる。他の例では他の数値とし得る。
【0034】
このように、第1インピーダンスと第3インピーダンスを高い値としつつ、第2インピーダンスは例えば50Ω未満とすることで、外側プレート40とFCR30の間に十分なプラズマを生成しうる。異常放電の懸念がある場所は装置構成によって変わる。よって、ベベルが位置する空間でインピーダンスを小さくし、それ以外の場所でインピーダンスを高くする任意の構成を採用し得る。
【符号の説明】
【0035】
12 チャンバ、 12a 包囲部、 14 サセプタ、 16 シャフト、 18 幅広部、 20 ベローズ、 30 FCR、 32 排気ダクト、 40 外側プレート、 42 内側プレート、 50,52 ガス源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7